dec. & jan. 2017/2018 ocajidec. & jan. 2017/2018 vol.42 / no.12 & 1 特集...

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一般社団法人 海外建設協会 12 & 1 Dec. & Jan. 2017/2018 Vol.42 / No.12 & 1 特集 OCAJI 新年アンケ 海外建設──今後の見通しをこう思う’18

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Page 1: Dec. & Jan. 2017/2018 OCAJIDec. & Jan. 2017/2018 Vol.42 / No.12 & 1 特集 OCAJI新年アンケート 海外建設 今後の見通しをこう思う ’18 12&1 特集 OCAJI新年アンケート

一般社団法人 海外建設協会

12&1Dec. & Jan. 2017/2018Vol.42 / No.12 & 1

特集 OCAJI新年アンケート 海外建設──今後の見通しをこう思う ’18

Page 2: Dec. & Jan. 2017/2018 OCAJIDec. & Jan. 2017/2018 Vol.42 / No.12 & 1 特集 OCAJI新年アンケート 海外建設 今後の見通しをこう思う ’18 12&1 特集 OCAJI新年アンケート

12&1特集

OCAJI新年アンケート海外建設──今後の見通しをこう思う ’18

年頭所感 白石 達[海外建設協会]…01

青木 由行[国土交通省]…02

OCAJI新年アンケート 国貞 寛[IHI]…04

徳田 晃一[IHIインフラシステム]…05

西尾 朗[安藤・間]…06

森田 正好[岩田地崎建設]…08

岸田 誠[大林組]…09

越島 啓介[鹿島建設]…11

井上 保之[きんでん]…13

渡辺 裕之[熊谷組]…14

永石 元[鴻池組]…15

都甲 明彦[五洋建設]…16

玉木 芳和[佐藤工業]…17

安藤 靖人[JFEエンジニアリング]…18

北 直紀[清水建設]…19

井上 善尊[大成建設]…20

波多野 秀美[大日本土木]…22

田村 利和[大豊建設]…23

澁田 祥一郎[竹中工務店]…24

坂井 剛太郎[竹中土木]…26

青木 稚治[TSUCHIYA]…27

中川 泰[鉄建建設]…28

石井 誠一郎[東亜建設工業]…29

中村 浩[東亜道路工業]…30

酒井 邦登[東急建設]…31

井上 卓郎[東洋建設]…33

古賀 孝三[戸田建設]…34

佐藤 新一郎[飛島建設]…35

松本 章[西松建設]…37

村田 和之[NIPPO]…38

山本 喜裕[日本国土開発]…39

河津 知則[日立造船]…40

菅沼 広夫[フジタ]…41

奥田 眞也[不動テトラ]…42

藤藁 昭[前田建設工業]…43

辻 良樹[三井住友建設]…44

馬場 千尋[横河ブリッジ]…45

佐藤 邦彦[ワールド開発工業]…46

姫野 雅之[若築建設]…47

2018年 新年アンケート〈総括〉…48

海外受注実績…49

主要会議・行事…51

編集後記…51

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012017 12-2018 1

平成30年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。旧年中は、当協会活動に対しまして、格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます、

 昨年の経済情勢は、世界的な保護主義の台頭、金融市場や政治・経済をめぐる先行き不透明感などさまざまなリスク要因の拡大が見みられたものの、新興国経済の安定した成長、先進国経済の持ち直しを背景に、穏やかに回復の傾向が続きました。とりわけ、世界の財・サービスの取り引きに加え、国境を越えた活発な投資活動などに見られるグローバル化の動きは、世界各地域における経済活動を促進させている状況にあります。

 こうした情勢の中、わが国建設企業の海外建設活動は、アジア各国の高成長を背景とした旺盛なインフラ需要を背景に順調に推移し、平成29年度の受注は10月時点で7年連続1兆円超を確保しております。今後の建設需要全体を中長期的に見据えますと、経営基盤の安定化のためには、収益基盤の多様化による安定した成長戦略を描くことは不可欠であり、海外建設事業の戦略をより一層強化していく必要があると考えられます。海外建設市場としては、住宅・社会資本整備に対する建設需要が極めて大きいアジア、老朽化したインフラ再整備を必要とする先進国・地域や、さらには「質の高いインフラ」を必要とする国・地域を中心に、建設活動をますます拡大していくことが予想されます。

しかしながら、海外建設事業を取り巻く環境の変化は著しく、海外プロジェクトの大型化、契約形態や資機材調達の多様化が進む中、事業が抱える課題も増加し、複雑化してきております。当協会としては、会員各社が抱えるこれら各種問題の解決に対し、従前にも増して積極的に取り組むとともに、特に喫緊の課題である「海外人材の育成・確保」については、海外各地において、コミュニケーション力、ネゴシエーション力を発揮できる即戦力のある人材育成に向けて、当協会の研修・人材育成事業の強化・拡充を図ることとしています。また、「安全セキュリティ対策」は、海外建設活動の持続的発展のための絶対条件であり、危機・安全対策に関する活動は重要課題として引き続き推し進めてまいります。さらに、グローバル競争力強化に向け、国土交通省はじめ関係省庁および関係機関・団体、さらには海外の関係機関・団体との協力連携を図りながら、海外建設事業におけるさまざまな課題の解決に努めてまいりたいと考えております。

 本年もわが国建設企業の海外展開を促進するさまざまな活動に取り組んでまいりたく、関係各位の引き続きのご支援ご協力をお願い申し上げますとともに、皆様方のますますのご発展をお祈りいたしまして、新年のご挨拶といたします。

白石 達一般社団法人 海外建設協会 会長

年頭所感

012017 12-2018 1

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02 特集 OCAJI新年アンケート

新しい年の始まりにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。2017年は、わが国建設業の海外展開にとって、新たな方向性や可能性が見えた年となりました。まず、全

体を見てみますと、2017年度上半期の海外建設受注額の実績は、過去最高となる9,350億円に達しており、「2020年に新規海外建設受注高2兆円を目指す」との政府目標の達成にいよいよ近づいてまいりました。また、個 の々案件についてみますと、入札にあたり価格面では下位であったものの、品質面を高く評価されて、中国・韓国などの競合他社をおさえて受注を獲得した案件や政府間の枠組みを生かし、官民一体で提案を行い、事業着手に至った案件も見られたところです。海外には、旺盛なインフラ需要を背景としたビジネスチャンスが数多く存在しており、わが国建設企業がグローバルに活躍していくためには、こうした機会をしっかりと掴むことが必要であり、特に、政府全体の戦略とも連携しながら、新たな海外市場や新たな分野へ進出していくことが重要となってまいります。また、よく「川上からのアプローチ」と言いますが、さらに遡ってもはや「森林からのアプローチ」が求められていると言っても過言ではありません。このため、国土交通省では、官民一体となったトップセールスをはじめ、情報収集・発信、ビジネスマッチング、人材育成、制度整備支援などの幅広い取り組みを実施することにより、海外ビジネスチャンスの拡大に努めてまいります。具体的には、アフリカなどにおける官民インフラ会議をはじめ、今後成長が期待される国へのトップセールスを積極的に実施するとともに、新興国におけるPPPプロジェクトの組成促進などを進めてまいります。その一例となりますが、昨年バングラデシュPPP庁との間で、選定したPPPプロジェクトについて、わが国企業が競争入札を経ずに優先的に交渉権を得られる枠組みを構築したところです。今年は、日バPPP協議会を通じ、個々のプロジェクト組成に向けて取り組みを加速してまいります。また、新市場の経験・ネットワークを有し、わが国建設企業と補完関係にあるトルコなどの外国企業との連携も促進してまいります。さらに、これまでわが国が提唱する「質の高いインフラ」が具体的にどのようなものであるか、日本の強みを発揮した「質の高いインフラ」とは何かということについては、必ずしも広く認識が共有されていませんでした。そこで、「質の高いインフラ」を象徴する建設プロジェクトや「質の高いインフラ」の普及に貢献している中堅・中小建設関連企業を表彰する「JAPANコンストラクション国際賞」(国土交通大臣表彰)を創設したところであり、この表彰を通じて日本がつくる「質の高いインフラ」とは何かを国内外に目に見える形で示していきたいと考えています。一方で、「川下」にあたる取り組みも重要と考えており、わが国建設企業が工事を施工しているプロジェクトについて、不払いなどのトラブルが発生した場合などのトップクレームもしっかり行っていきたいと思います。また、近年、建設業の外資規制などを強化しようという動きが見られる国もあることから、会員企業の皆さま、大使館と連携しつつ、トップレベルでの交渉も含めてしっかり対応してまいります。このほか、昨年交渉妥結いたしました日EU経済連携協定に加え、現在RCEP(東アジア地域包括的経済連携協

定)交渉をはじめとした二国間・多国間交渉を進めているところであり、こうした国際交渉を通じて、建設業に係わるさらなる規制緩和や法的安定性の向上を目指してまいります。このように、国土交通省といたしましても、建設業の海外展開のさらなる拡大に向けて、最大限の支援をさせていただく所存ですので、貴協会ならびに会員企業の皆さまにおかれましては、引き続きのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。最後になりましたが、2018年が皆さまにとって大きな飛躍の年となりますことを祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

青木 由行国土交通省 大臣官房建設流通政策審議官

年頭所感

02

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032017 12-2018 1

特集

OCAJI新年アンケート海外建設──今後の見通しをこう思う ’18

世界経済が新年を迎え、

今後、会員各社がどのような海外市場戦略を推進するか、

その見通しを各社の海外事業部門の幹部にうかがいました

(掲載:会社名 50音順、敬称略、寄稿者の肩書きは投稿時時点のものです)。

質問項目

Q1貴社の海外建設事業の見通しについてうかがいます。  ─  a. 2018年の見通しは?

  ─  b. 今後3~5年の見通しは?

  ─  c. 今後有望と思われる海外市場(地域)を3つ挙げ、その理由をお聞かせ下さい。

Q2貴社の海外建設事業の展開に対する今後の構想をお聞かせください。

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04 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

海外建設事業の見通しについては、当社グループ会社で海外のインフラ建設事業を担う株式会社IHI

インフラシステムの新年アンケートで触れているので、株式会社IHIにおいて新たなビジネスモデルの構築を目指すソリューション統括本部の視点で、当社海外事業の見通しについてお答えする。世界経済への不安要素としては、中国の景気減速、米国でのトランプ政権の混乱、英国のEU脱退による悪影響などが挙げられるものの、2018年の世界経済は2017年より若干の良化と予測されており、海外インフラ建設事業は2017年並みに堅調に推移すると見込む。

b. 今後3~5年の見通し

インフラ案件の事業規模が大きくなっており、PPP方式での整備ニーズが高まる。また、ODA対象国でも国家債務増加を避けるためにPPPを志向する国がますます増えるものと期待している。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 北米理由:PPP市場が機能しており、グリーンフィールド・ブラウンフィールド共に継続的に具体的案件が検討され、引き続き安定的な需要が想定されるため。

2. アジア理由:円借款の供与実績が豊富であり、現地側ではいまだ多くのインフラ整備事業が必要とされ、今後も長期的かつ堅調な需要が見込めるため。

3. 欧州理由: PPP市場が機能しており、グリーンフィー

ルド・ブラウンフィールド共に継続的に具体的案件が検討され、引き続き安定的な需要が想定されるため。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想道路橋梁をはじめとしたIHIグループ製品による社会インフラへの貢献と、事業出資者としての貢献ができる案件を今まで以上に積極的に手掛けていく。

(株)IHI執行役員 ソリューション統括本部長

国貞 寛

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052017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

橋梁および水門案件について、手持ち受注工事を着実に履行すると共に、注力市場であるアジア地域、トルコおよび周辺国、北米にて、新規案件の受注を目指して引き続き取り組んでいく。

b. 今後3~5年の見通し

先進諸国ではインフラの新設や老朽化対策に自国予算のみならずPPPが活用される事例がますます増加し、また途上国でもこれまでの政府予算やODAを活用したインフラ整備に加え、PPPによる新たな取り組みが見られるようになってきた。これら市場への参画や近年増加しているDesign Buildの実績を積み上げていくことで、大型案件への取り組みの幅を広げていく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 北米理由:橋梁の老朽化に伴う、大型補修や架け替え需要が継続しているため。

2. 東南アジア理由:インフラ整備の需要が今後も見込まれ、日本からのODA支援の継続も期待できるため。

3. トルコ、欧州および中東理由:イズミット橋(オスマン・ガーズィー橋)および第一/第二ボスポラス橋補修工事を含め、当社が継続的に工事を実施している地域であり、今後も計画されている大型橋梁案件を含め積極的に取り組んでいきたい市場であるため。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想有望地域として挙げた3地域を中心に拠点化し、

各拠点が独立採算で運営することを目標とする。このため、下記の点に注力し、今後の海外事業の展開を行っていく考えである。(1)コスト競争力の強化:既存の海外生産拠点(ベトナム、ミャンマー、台湾、上海など)の活用と現地施工管理能力の向上を図り、コスト競争力を強化していく。

(2)海外工事運営のための人材の育成:海外工事要員の育成のため、各プロジェクトの中核を担う人材の育成を行うと共に、国内要員とのローテーションによる裾野拡大が必要と考えており、IHI

グループ内の他部門との人材交流も含めて積極的に実施していく。

(3)対応機種の拡大:従来当社では、海外において技術的難易度の高い長大橋を中心に工事を行ってきたが、上述のコスト競争力の強化を推進し、長大橋以外の鋼橋、PC橋についても取り組んでいきたい。

(4)補修工事への対応:長大橋の補修を中心に、既設橋梁の補修工事への対応を拡大していきたい。

(5)パッケージ輸出への対応:交通インフラシステムとしての、道路・橋梁工事のパッケージプロジェクトにも対応できるよう検討を進めると共に、IHI本社との協業でコンセッションプロジェクトへの参画も進めていく。

(株)IHIインフラシステム取締役 営業本部 本部長

徳田 晃一

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06 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年の世界経済は、金融市場の不透明さがあるものの、緩やかな回復が続くと予想している。トランプショックは徐々に遠のいているが、引き続き注意が必要だ。当社の海外事業の主要市場であるアジアは、建設市場としての成長が期待される。安定感を増す各国の政治的背景もあり、社会資本の整備・拡充に向け、ODAをはじめ公共投資も堅調に推移すると考えている。また、日系製造業・非製造業や外資系多国籍企業にとっては、経済成長に加え、市場開拓・労働力の確保という面でも魅力的な地域であり、新規投資も活発化するだろう。当社の海外建築事業のもうひとつの柱である北米では、トランプショックによって自動車関連メーカーのメキシコ投資の停滞が見られたが、北米全体への日系製造業の投資意欲は旺盛であり、年度後半には回復に向かうと思われる。

b. 今後3~5年の見通し

海外建設市場を長期的に見通すことは難しいが、途上国での旺盛な社会資本需要や外国資本誘致、多国籍企業の世界レベルでの販売・生産戦略の見直し、リスクマネーによる不動産投資を考慮すると、市場成長の余地は高い。【土木】

ODAを軸に事業展開している国を橋頭堡に、周辺国への取り組みを拡大する。地域的には施工実績の豊富なアジア、中南米を中心に、交通・水力・上下水道・防災などの得意分野の社会資本整備に取り組む。さらに、海外土木事業の成長戦略として、各国公共事業やPPP事業への参画も視野に入れていく。【建築】

日系製造業を中心に、施工実績の豊富なASEAN

諸国、北米を主要エリアとして展開し、南アジアの市場開拓も強化していく。ホテルやコンドミニアム・商業施設などの生産施設以外のプロジェクト、外資系企業案件、ODAなどに参画していく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ASEAN諸国理由:社会資本整備の需要が旺盛で、ODAをはじめ、各国公共事業、PPP案件など、多くのプロジェクトが予定されている。民需面では、多くの企業が経済成長への期待や事業戦略の見直しを背景に投資を推進している。経営資源からのアプローチでも、現地パートナーとの協働や外国人エンジニアの定着・成長が進み有望である。

2. 南アジア理由:ODAなどによる社会資本整備が高水準で進むものと予想される。経済成長は特に都市部で顕著であり、日系製造業の進出のほか、ホテルやコンドミニアムなどの不動産関連投資が活発化している。

3. 米国、メキシコ、中南米理由:トランプショックの影響はあったが回復に向かいつつある。米国への日系製造業の投資意欲は高く、多くの産業からの引き合いが期待できる。中南米は当面ODAが中心となるが、PPP事業も活発化しており建設市場としての成長を期待している。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想国内市場の再縮小を懸念しており、その備えとして海外事業をコアビジネス化すべく、事業領域の拡大、人材の多様化・若返り、生産システムの改善を

(株)安藤・間国際事業本部 本部長

西尾 朗

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072017 12-2018 1

推進し、収益の向上と海外事業の魅力化を両立させたい。 土木では、進出エリアの拡張や新しい事業領域の開拓を進める。海外人材の確保がキーとなるが、外国人の雇用・育成やパートナーとの協働を推進し、ダイナミックにグローバル化していく。建築では、国内外で培ってきた技術やノウハウを

活かし、日系非製造業(ホテル、コンドミニアム、商業施設など)や外資系多国籍企業案件、ODAなどにもチャレンジしていく。工事契約や法務・税務などを含むリスク管理能力の強化、土建協働、国際調達の推進も必要であり、国際感覚を備えた管理人材の育成にも注力したい。

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08 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

世界経済は米中の堅調な経済成長状況に下支えされ、緩やかな回復が継続し、国内経済は2020年に向けた回復基調は続くと思われるが、一方では米国外交政策による急激な世界情勢変化やテロ、北朝鮮問題などの下振れリスクも依然として懸念される。建設事業としては、好調の国内事業に人的資源を割かざるを得ず、それぞれの企業の得意な分野での海外進出が継続され、横ばい状態となるのではないか。当社としても、実績のある地域での受注を重点的に目指す。

b. 今後3~5年の見通し

国内の建設需要の縮小化が始まり、海外事業へと大きく舵を切る必要があるが、技術者の高齢化や不足などから、急激な拡大は難しいのではないか。また、開発途上国における中国の存在感が増す中、われわれが担うODA建設事業に求められるものも変化してきていると感じている。数や金額ではなく、より一層「質の高いインフラ」が求められるだろう。当社としては前述の通り、実績国での受注を確実に維持しつつ、近隣地域への規模拡大を目指す。また、現地および第三国技術者の関与を高め、事業運営の効率化を一層進めたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. アフリカ理由:インフラ未整備地域や地下資源、人口などの潜在的な経済発展要因が豊富であり、TICADの実施計画の履行を目的とした支援が期待できる。

2. 中央アジア理由:市場規模は小さく、物流面での不利がある

ものの、参入している企業が少ないニッチ市場として、当社の展開が可能と考える。

3. 中南米・カリブ理由:経済成長の停滞が見られる国が多いが、世界的な気候変動による自然災害の発生頻度も高まっており、防災事業や教育・医療に関連した整備事業が見込まれる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想台湾土木事業、ODA建築、ODA土木の3本柱で展開してきたが、台湾土木事業は契約の片務性や採算性から見直しが必要となっている。したがって、今後の展開としては、台湾民間建築、ODA建築、ODA土木を新たな3本柱としてバランスよく展開する方針である。台湾民間建築に関しては、市場動向を注視しながら、長年の経験を活かした営業展開を考えていく。

ODA事業に関しては、先に述べた通り、実績のあるアフリカ、中央アジア、中南米を軸に受注拡大を目指す。また、事業協力企業の拡大や技術者の育成、組織の国際化を図り、海外事業が成長しながら継続できる基盤を固めたい。

岩田地崎建設(株)執行役員 海外支店長

森田 正好

Page 11: Dec. & Jan. 2017/2018 OCAJIDec. & Jan. 2017/2018 Vol.42 / No.12 & 1 特集 OCAJI新年アンケート 海外建設 今後の見通しをこう思う ’18 12&1 特集 OCAJI新年アンケート

092017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社の海外建設事業の基盤である北米、東南アジアおよびオセアニアにおいては、都市開発やインフラ整備をはじめとする建設投資が堅調に推移しているものの、欧米諸国の政治・経済面での不透明な動向および、一部地域の地政学的リスクの顕在化により、世界経済全体の先行きは不透明である。そのような状況下において、受注高の大幅な拡大を見込むことは難しく、2018年度は2017年度と同程度の受注高を見込む。

b. 今後3~5年の見通し

法制度や商慣習、社会・経済インフラが一定レベルで整備された地域を中心に事業基盤を強化し、安定した受注高の確保を見込む(詳細はc参照)。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 北米理由:米国では、国内の雇用創出を目指すトランプ政権が、インフラ投資を拡大する方向性に変わりはないものと見られる。また、民間においても、実質GDP成長率の好調な伸びに支えられ、集合住宅・ホテル・オフィス需要を中心に引き続き堅調に推移すると見込んでいる。カナダでは、政府が長期的なインフラ投資を明言していることから、公共事業に強みを持つ現地グループ会社による安定的な受注高確保のため、当社が技術面および財務面から支援していく。

2. 東南アジア理由:ASEAN諸国において全般的に個人消費が伸びていることから、設備投資の拡大が期待される。高成長は見込まれないまでも、国内需要の堅

調な動きが目立つことから、今後も底堅い経済成長が続くと見込まれる。日系企業案件に加えて、外資系グローバル企業やローカルクライアントからの受注を拡大し、受注の安定化を目指す。また、現地法人の競争力を高めるため、タイ、ベトナム、インドネシアなどの現地法人では、現地および日本での研修を継続的に実施し、ローカルスタッフの育成に取り組んでいる。

3. オセアニア理由:オーストラリアでは、移民政策による人口増を背景に、インフラ整備が重要な課題のひとつとなっており、政府による交通、インフラ投資、民間による住宅、医療・福祉分野への投資が拡大すると考えている。2017年9月には、一昨年業務協力協定を締結したローカルパートナーとのJVで建築事業再進出の第1号案件を受注した。引き続き現地企業とのパートナーシップによる積極的な受注活動を展開し、市場の拡大を図っていく。土木事業についても、現地事情に精通したローカルパートナーと協働し、安定した受注・施工体制の確立に向けて取り組んでいる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想日本国内においては建設市場の堅調な推移や生産性の向上を背景に業績が上向いてはいるものの、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを境に国内の建設需要は縮小していくことが予想されることから、国内建設事業以外の収益基盤を強化することが必須であると考えている。昨年策定した「中期経営計画2017」の基本方針で、海外建設事業を強化・拡大することとしており、進出エリアでのさらなるローカル化の推進やICTを活用した品質・安全管理の向上、技術・人材交流によ

(株)大林組取締役専務執行役員 海外支店長

岸田 誠

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10 特集 OCAJI新年アンケート

る最大利益の追求などを事業戦略として掲げている。ローカル化の推進については、現地法人におけるローカルスタッフの幹部登用を積極的に進めると共に、当社若年職員の海外留学や海外派遣、海外子会社との人材交流を通じてグローバル人材の育成を進めていく。

ICTについては、国内と同様に次世代生産システムの導入に力を入れていく。シンガポールでは、BIMを用いた設計施工の実績を積んでおり、今後も活用の幅を広げていきたい。上記事業戦略を着実に実施し、海外建設事業を当社の収益基盤として成長させたい。

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112017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

【建築・開発】米国経済は、雇用環境が改善し、生産と輸出も回復傾向にあり、設備投資も堅調に推移しているが、政治情勢による影響を注視する必要がある。欧州経済は、緩やかな景気回復が持続する一方で、英国のEU離脱やドイツの政治情勢など、懸念材料も存在する。アジア経済は、中国の景気減速がやや強まるものの、全体的には2018年も堅調に成長していくと見込まれている。

2018年の当社の建築事業に関しては、引き続き受注機会の多様化のために非日系、新分野の案件や、未進出国への新規参入に取り組む。開発事業に関しては、米国や欧州での流通倉庫開発事業を継続して育成すると共に、アジアを中心に自社のノウハウを活かした大型開発案件などを進めるほか、それぞれの市場に合わせた新規プラットフォームの構築に取り組む。【土木】土木工事については、ODA案件に対する取り組みを継続していく一方、民間の資金を活用したインフラ整備などが継続的に期待できるため、これまでの経験を踏まえ、当社が得意とする分野・地域に絞り込んで対応したい。

b. 今後3~5年の見通し

【建築・開発】建築事業においては、実績のあるアジア新興国と北米、近年参入した豪州において着実な事業展開を推進しつつ、アジアの開発途上国や中欧で未進出の国など今後有望な市場への参入にも取り組み、受注機会の多様化を図っていきたい。

開発事業においては、プラットフォームを構築し新たな収益源を育成しつつ、長期賃貸事業、短期回転型事業、分譲型事業など事業基盤をバランスよく拡充していきたい。【土木】各国それぞれ状況が異なる中で、安定的に利益を創出できるよう現地に根差した運営を行うための土台づくりを行っていきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

【建築・開発】1. 米国理由:安定した経済成長を背景に、当社の得意分野・重点分野の受注拡大の機会がある。建築事業と開発事業の相乗効果が期待できる。

2. 東南アジア諸国理由:域内の日系企業の投資は継続している。非日系企業からの受注増加も見込まれ、主力の工場建設以外にも、商業施設など、受注機会の多様化を図ることができる。シンガポールは日系GCの総合力が評価される市場。今後成長が期待できる新市場での事業展開の可能性がある。

3. 欧州・豪州理由:欧州域内経済は潜在的な波乱要因を抱えるものの安定を取り戻し、企業投資が回復傾向にある。また、英国を含め開発事業の機会が多くある。先進国の一員として経済政策の安定した豪州では、近年買収した企業を通じた事業拡大が見込まれる。

【土木】1. 東南アジア諸国理由:経済成長に伴うインフラ整備の需要が見込まれる。

鹿島建設(株)専務執行役員 海外事業本部長

越島 啓介

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12 特集 OCAJI新年アンケート

2. 台湾理由:これまでの実績を裏付けとした事業基盤がある。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想【建築・開発】成長市場である海外で安定的に一定の利益を生み出す体制の構築は、今後も積極的に取り組んでいく。

そのために海外現地法人の間の連携や建築と開発の協働を促進し、M&Aや現地企業との提携によりグローバルに厚みのあるネットワーク構築を進める。【土木】長期的にアジアのインフラ需要に大きな期待をしており、蓄積してきた経験とノウハウを基に、当社の強みを生かしたこれまでの枠にとらわれない事業展開ができるよう事業基盤の整備を行っていきたい。

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132017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

東南アジアの新興国向け日系製造業の投資は、引き続き低迷状態が続くと予想する。少なくとも一時期のチャイナ+1の時のような状態への復活はまだ期待できない。その一方、商業施設やホテル、高級住宅、高機能事務所ビルといった不動産関連投資は、日系・外資系を問わず堅調を維持すると期待したい。

b. 今後3~5年の見通し

東南アジアでの日系製造業は輸出加工型から、現地消費型へさらにシフトしていくと予想する。また新たな動きとして、EV関連の投資が一時的に増加すると期待する。他の地域では、グアム、ハワイにおける沖縄からの米軍移転事業、アラブ首長国連邦の2020年のEXPO開催に向けた特需、またインドでは日系製造業の投資や、交通インフラ、新エネ関連の公共事業の増加が期待できると考える。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. グアム、ハワイ理由:沖縄からの米軍移転関連事業に期待。

2. インド理由:市場の大きさ、人口ボーナス、インフラ投資増がキーとなる。

3. ミャンマーを含む東南アジア理由:商業施設や高機能不動産投資の増加に期待。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想東南アジアの新興国では、地元設備業者の台頭や日系業者同士の競合が厳しく、従来の日系案件中心、

日本人主導型では採算性が下がる一方である。長期的な事業展開のためには、さらなるローカル化の促進や業態の見直しも検討していかなければならないと考えている。一方当社のもうひとつのビジネスモデルであるアジア圏以外での非日系顧客との仕事をさらに強化拡大し、当該地におけるシェアの上積みを図っていきたい。また進出エリアの統廃合・追加も中長期的なテーマのひとつに挙げている。ただインド、ミャンマーといまだ立ち上げ半ばの拠点もある上、好調な国内事業との人材の配置バランスもあるため、外国人エンジニアの登用も含め、慎重に検討していく。

(株)きんでん執行役員 国際支店長

井上 保之

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14 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

米国トランプ政権の誕生により、世界経済にはさまざまな波紋が広がり不透明感が増しているが、当社の海外事業のプラットフォームであるアジア地域では成長が継続され昨年と同様のインフラ投資が見込まれると予想する。

b. 今後3~5年の見通し

既進出国においてODA案件、日系企業の案件を中心に取り組みを継続するが、近隣国についても機会があれば積極的に取り組んでいく。加えてPPP/

PFI事業の分野にも再挑戦して行きたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 台湾理由:比較的安定した日系企業の投資先のひとつとの見方が広がり、日系企業の案件も増加している。また、台湾企業の海外進出も盛んで、現地企業の関係維持も重要と考える。

2. 東南アジア理由:東南アジア諸国については継続的なインフラ需要があり、厳しい競争環境にあるものの、日系企業の海外投資も引き続き見込まれる。また、新たな事業形態に挑戦する地域と考える。

3. 南アジア理由:南アジア新興国の経済成長は堅調で、今後のインフラ需要も維持されるものと思われる。厳しい受注競争が予想されるが、有望な市場として注目する。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想これまで進めてきた海外工事の基盤整備については、さらなる充実に向けた取り組みを行っていく。既進出国での事業拡大に向け、現地パートナー企業との連携、日本人職員、ナショナルスタッフの人材確保と育成を進めていく。海外事業での収益力強化を図る上でも、新たな事業形態に積極的に挑戦していきたい。

(株)熊谷組国際支店 支店長

渡辺 裕之

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152017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

昨年初に懸念された米国の追加利上げや中国景気の下振れの影響はそれほどの影響はなく、堅調に推移した。2018年の世界経済は、昨年の堅調を背景に拡大基調を維持すると思われる。アジアにおいても、先進国の景気が底堅いことに引っ張られ成長軌道に乗るとともに、インフラ整備が進むことによる域内需要の拡大が期待される。このような中、昨年継続体制が決まった日本政府は、昨年同様戦略的外交の手段としてのODAや政府主導の海外への民間進出支援を積極的に推進することが予想され、アジアにとどまらず世界各国への「質の高いインフラ輸出」を展開すると思われる。一方、懸念材料としては、北朝鮮の有事問題や欧州政治の混乱、これに加えてエルサレム問題に起因する中東情勢の悪化がある。北朝鮮情勢の悪化は円高リスクを高めるとともに、有事の事態になればサプライチェーンを通じた世界経済の減速を引き起こすであろう。

b. 今後3~5年の見通し

複雑に絡み合った世界経済のため、また世界情勢を揺るがせかねない北朝鮮問題や民族対立問題があり、3

~5年先の海外建設市場の見通しを立てることは非常に難しい。それでも欧米市場は緩やかながらも成長が期待され、当社も含めた日系建設業が注目するASEAN

市場はインフラ整備を伴って引き続き高い成長が期待される。加えて、ASEAN統合を背景とした域内向けの輸出と直接投資が上昇傾向にあることを踏まえて、新たな市場としての存在感が高まっているミャンマー、カンボジアおよびラオスへの期待が高まっている。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア

理由:東南アジアは日本企業からの民間投資が期待されるとともにインフラ整備を中心としたODA案件の出件も期待できると考える。

2. 南西アジア理由:人口の多さが日本の製造業にとって魅力となり、それらの設備投資に期待が持てるとともに政府主導で大型インフラ案件が進行している。

3. アフリカ理由:資源頼りではない国々において、投資を利用することによって経済成長を遂げようとしている。これらに国々には日本政府も注目しており、従来のODAだけでなく政府主導でアフリカへの民間投資を推進している。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想昨年同様、建築は東南アジアの民間案件とターゲットを絞ってのODA案件を、土木はアフリカとその他地域(東南アジア、大洋州ほか)のODA案件を目標におき、数年後には当社の事業全体の10%が海外工事で担える体制を確立したいと考える。東南アジアにおいてはタイ、ベトナムおよびミャンマーに加えて、市場開拓の可能性が高まっているカンボジアおよびラオスへ、アフリカにおいては西部諸国への展開を図っていきたい。一方で、国内建設における受注環境は民間工事が牽引し堅調に推移している上に、相次ぐオリンピック関連の都市再開発事業に加え2020年以降の大型案件の発注も見えてきており、海外への配置職員の確保が難しい状況は続くであろう。そのため、限られた人的資源を活用しつつ外国人社員の採用も検討し事業拡大に備えたい。あわせて、働き方改革も重要な課題であるため、収益性のみならず生産性も重視した選別営業ならびに現場マネジメントを推進していく。

(株)鴻池組執行役員 海外支店長

永石 元

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16 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社が主に事業展開をしている東南アジアにおいて、中国の経済成長の鈍化の影響はあるものの、ASEAN5カ国(シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン)は、それに対応しつつもさらに力強く成長すると期待している。東南アジア全体では今後も大型インフラ投資案件の出件が見込まれ、当社の得意とする海上土木案件を中心に継続的に取り組む。

b. 今後3~5年の見通し

シンガポールは、今後も現状程度の投資は続くものと考えている。その他のアジア地域、アフリカなどの新興国においても今後、都市化に伴う旺盛なインフラ需要が見込まれている。それを踏まえた日本政府主導の「質の高いインフラ輸出」の推進による大規模なインフラ案件の出件も今後続くものと考えている。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. シンガポール理由:引き続き大型インフラ案件が見込まれ、この国で当社が得意とする海上土木、陸上土木、建築分野での出件も予想されることから、当社のこれまでの経験と信頼を基に営業活動できる市場である。

2. ODA案件出件地域理由:日本政府主導の「質の高いインフラ輸出」による大型インフラ案件の出件が多数見込まれる中、当社のターゲットとする港湾インフラ整備案件、エネルギー施設整備案件に付随した海上土木案件などの出件も今後期待される。

3. ミャンマー理由:ODA案件を中心としたインフラ整備の需要増加だけではなく、日系企業を含めた民間投資案件の市場拡大も今後見込まれると予想している。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想今後も競争激化による厳しい事業環境が続くと予想されるが、利益重視の基本原則は堅持しつつ、営業力、現場力、技術力、船舶力、人材力の5つの分野を強化し、緩やかな事業量拡大に伴う収益力の強化を目指す。

2015年度より国際部門の本部を事業量があるシンガポールに移転し、さらなるグローバル化、ローカル化を推進している。香港を含め基盤が確立した東南アジアの拠点においても引き続き、これまでの経験と信頼を基に受注を目指す。

2017年4月にはアフリカ営業所を設立し、大型海上ODA案件の営業に注力している。埋め立て浚渫案件については、アジアから中東エリアまで視野に入れながら、引き続き取り組んでいく。省力化、効率化を追求した技術力、生産性向上などの施策を基に受注強化、施工力強化に繋げていく。また、シンガポール、香港において外国人・日本人マネジメント層を対象とした新人事評価制度を立ち上げ、人事制度面からもグローバル化、ローカル化を促進する。また、国際部門においても、働き方改革に積極的に取り組んでいく。

五洋建設(株)取締役 執行役員副社長 国際部門担当

都甲 明彦

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172017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社の海外事業の基盤であるシンガポールを中心に、手持ち工事の確実な施工を行うと同時に、リスクを見極めながら、新規受注に向けた挑戦をしていくとの思いは変わらない。しかしながら、特にシンガポールにおける土木工事の受注競争が厳しさを増している。顧客からの信頼継続はもとより、アイデアを駆使した思い切った施工方法をコスト縮減に組み入れ、従前と同等の受注規模を確保していきたい。

b. 今後3~5年の見通し

施工体制やリスクを考慮し、東南アジアの限られた地域で、事業展開しているが、建設各社の激しい受注競争が続くであろう。土木はシンガポールの地下鉄・空港、各国の日系のプラント工事、ODA工事をターゲットとしているが、クアラルンプール-シンガポール間の高速鉄道工事の出件にも期待している。建築は日系企業やシンガポールの地元と欧米系企業からの受注をターゲットとしている。今までの当社実績を新規顧客にアピールし、目標とする受注量・採算性を確保していく。それらの取り組みをしながら、日本国内の建設動向を見極め、将来を見据えた有効な海外戦略を打ち出していく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. カンボジア理由:すぐには大きな発展は望めないが、経済成長率が高く、豊富な労働人口がある。外国投資の規制も少なく、タイ+1やベトナム+1を期待できる。

2. ミャンマー理由:インフラ整備と法整備が進むと、外国投資が飛躍的に拡大すると期待している。

3. バングラデシュ理由:日本の友好国であり、日本からの堅調な投資も期待できる。しかし、一方ではテロがあったように、日本人の常駐には不安が残る。まずは、治安の安定を取り戻していくことを期待したい。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想東南アジアの既存拠点が安定した経営を維持することを第一に考える。進出間もない拠点については、本社の営業支援を強化し、企業の投資情報をいち早くキャッチし、有利な状況で新規工事を獲得していきたい。また、不採算の拠点については、閉鎖などの思い切った手段を用いてきたが、現在の拠点については、粘り強く、地に足の付いた事業展開をしていく。そして、次に踏み出す有望な国を慎重に精査していきたい。そのために、海外経験者の絶対数の増加と次世代の社員の育成をする必要があるため、各事業部主導の下、各種教育を実施していく。

佐藤工業(株)取締役 常務執行役員

玉木 芳和

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18 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2017年に続き、東南アジアの新興国は中国経済が堅調、資源価格の回復で資源国中心に経済が好調に推移していくだろう。また、ユーロ圏経済も、雇用・所得増により消費が増加し、緩やかな回復が予想される。こういった環境の下、当社が得意とする廃棄物発電施設、上下水処理施設および橋梁などのインフラ建設分野の海外受注は、2018年も2017年に続き拡大していく見込みである。 一方、日本経済は2018年度も2017年度に続いて景気は穏やかに回復基調が続く見通しだが、建設業界では政府建設投資と民間建設投資とも一巡した感があり、対前年度伸び率はマイナスに転じるとの見方が強くなっている。日系の建設会社の海外進出が今まで以上に活発になるだろう。

b. 今後3~5年の見通し

廃棄物発電施設、上下水処理施設、橋梁およびエネルギーなど、複数の商品間での協働を促進させることで、「都市インフラソリューション」のプロバイダとして当社の総合力を発揮していきたい。そのために、プロジェクト計画段階から当社が関与して案件を形成する能力の強化が必要である。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:日本の「質の高いインフラ輸出」がこの地域では認知度が比較的高く、廃棄物発電施設、上下水処理施設、エネルギー関連および橋梁などを中心とした当社の受注も着実に伸びている。当該地域の今後の経済発展に伴い、当社が得意とする分野のインフラ案件が堅調に増えていくことは間

違いなく、当社として最重要地域である認識は変わりない。

2. 南西アジア理由:当該地域の人口と経済規模および円借款、ODAなど日本政府からの援助の増加に伴い、当社としては東南アジアに次ぐ市場として認識している。引き続き、橋梁のODA案件を軸に取り組んでいきたい。

3. 欧州理由:欧州圏経済の緩やかな回復により廃棄物発電施設および廃熱回収発電施設の出件が確実に増えてきており、当社2017年の受注は好調であった。2018年以降もこの流れをしっかりとらえ、受注を積み上げていきたい。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想これまで数年間整備し続けてきた複数の海外エンジニアリング拠点を活用し、今後は当社商品の営業活動、PJ遂行の現地化をさらに強化していく予定である。インフラ整備は世界的に民間資金活用型事業が主流となっており、EPCにとどまらないPPP事業への積極的な取り組みも重要である。当社の商品群を活用したインフラソリューションを提供しながら、事業投資も含めた海外事業の拡大を図っていきたい。

JFEエンジニアリング(株)常務執行役員 海外統括本部長

安藤 靖人

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192017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

北朝鮮有事や中東情勢の不透明化などの不安要素はあるが、世界経済はおおむね堅調さを維持している。こうした中、新興国を中心としたインフラ需要は、急速な都市化と経済発展を背景に拡大が続いている。とりわけ当社が主戦場とする東南アジア地域では、今年も現地政府・民間資本による大型工事案件の継続を見込んでいる。ODA案件は政府の「質の高いインフラ輸出戦略」によって、規模・地域共に拡大していくことが期待される。アジア・アフリカを中心に各国のインフラニーズを踏まえ、戦略的に取り組んでいきたい。

b. 今後3~5年の見通し

中期的には将来に向けた成長力を背景に東南アジアを中心とする新興国での建設投資は、現地企業・多国籍企業の投資案件、都市インフラ案件共に堅調に推移するだろう。加えて、新規エリアにおいての建設需要や投資開発・エネルギー・環境・インフラPPPやコンセッションといった新たな分野への事業機会も期待できるだろう。一方、受注獲得競争の激化など厳しい事業環境も予想されるが、これまでの経験を活かすと共に、国内外の事業パートナーとの連携も強化しながら取り組んでいきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:経済は成長を続けており、さらなる潜在力を秘めている。シンガポール、インドネシア、ベトナムなどでは、現地政府、民間資本、ODAによる大型工事の出件が今後も継続すると見込まれるため。

2. アフリカ理由:ザンビア、ガーナ、モーリシャスで施工中であり、今後もODAの展開が見込まれるため。

3. 中国理由:スピードこそ減速しているが、拡大を続ける経済と国内市場を取り込むための日系・多国籍企業の建設投資は底堅いと見ている。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想当社は長期ビジョン「スマートビジョン2010」において、グローバル事業を重点注力領域と位置付け、長期的に全社事業量の2割を担える体制の確立を目指している。そのために人材育成、強い組織づくり、さらに拠点力の強化に取り組んでいる。また、収益構造の多様化の観点から、日系企業案件・ODA案件に加え、現地企業、多国籍企業案件にも積極的に取り組んでいく。投資開発・環境・インフラPPPなど新規業態への取り組みを図ると共に、政情不安や治安リスクにも十分配慮し、新たな地域へ果敢にチャレンジしたい。

清水建設(株)常務執行役員 国際支店長

北 直紀

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20 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

世界経済は、資源価格の上昇や中国経済の持ち直し、それに伴う米国の生産・輸出の回復により、今後しばらくは引き続き緩やかな回復が続くものと見込まれている。ただし、国際社会においては北朝鮮情勢や、カタール-サウジアラビアほかとの断交問題、保護主義色の強いトランプ政権、エルサレム首都問題、英国のEU離脱問題など、世界経済の不安定化を招くおそれのある懸念材料が複数あり、この先の見通しは不透明な状況にある。 一方、海外の建設市場については、当社の主力市場である東南アジアにおいて、大幅な人口増加や中間層の拡大、都市部への一極集中化などが進展しており、不足している電力・交通インフラおよび住宅供給に関する整備計画が動き出している。将来的に、日本の建設マーケットは国内の人口減少に伴い縮小する傾向にあると見込まれているが、アジア全域に目を向けると、ADBの予測では、アジアにおけるインフラへの必要投資額は2030年までの15年間で26兆ドルにおよぶとされている。こうしたアジアにおけるインフラ需要、不動産開発需要を足掛かりに、当社も海外事業への取り組みをさらに強化していかなければならないと考えている。

b. 今後3~5年の見通し

複雑化する世界経済の動きの中、3~5年先の海外建設市場について見通しを立てることはきわめて難しいが、人口の増加やひとり当たりGDPの成長をキーワードとして見れば、特に東南アジア各国における旺盛なインフラ需要の継続、ならびに中間層増加による国内消費の拡大、それに伴う不動産開発案件の増加などが予想される。また、日系製造業の

海外進出も3~5年のスパンでは、各国での消費拡大と産業振興政策など(例:フィリピンの自動車産業育成政策)による外資誘致に伴い、ASEAN諸国を中心に今後も継続的な直接投資が行われるものと期待したい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア・台湾理由:東南アジア各国においては、公的債務の問題があるものの、発電所や空港、高速道路、地下鉄などの交通インフラ、都市開発の都市整備計画などがいくつも具体的に動いている。また、ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピン、ミャンマーにおける日系製造業の生産、物流、開発拠点としての需要は今後も見込まれ、現地顧客対応を含め、主要マーケットとして今後も取り組みを強化していきたい。台湾では、民間資金による開発案件などが継続して計画されており、引き続き現地優良顧客の案件を中心に、今後も安定した受注の確保に努めていきたい。

2. 南西アジア理由:南西アジア(スリランカ、パキスタンほか)においても東南アジアに次ぎ、空港、発電所、高速道路、都市開発などの大型インフラ案件や都市整備案件が計画されており、これまでの経験を生かして受注の確保に努めていきたい。

3. 中東・アフリカ理由:中東では自国資金による空港、都市交通、発電所案件、アフリカではODAによる「質の高いインフラの整備」関連案件が期待され、新たな受注を目指していきたい。

大成建設(株)常務執行役員 国際支店長

井上 善尊

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212017 12-2018 1

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想日本国内における、少子高齢化の進展、ならびに高いインフラ成熟度を考慮すると、中長期的に国内建設市場が縮小する傾向は避けられないと考える。したがって、事業を安定化させる観点からも、再度、海外事業に注力することは当社にとって重要な課題となっている。政府も、こうしたわが国建設業界を取り巻く環境の変化を踏まえ、官民一体となった「質の高いインフラシステムの輸出」を強力に推し進めている。当社は、政府のこのような方針に則り、注力地域におけるインフラ案件の受注を目指したい。このような環境の下、当社の当面の課題として、

1)人財の育成・確保、2)進出国における現地パートナーとのアライアンスの強化を推進していく必要があると考えている。

1)人財の育成・確保今後増大していくであろう海外の建設需要に対応していくためには、日本人社員のみならず、現地あるいは第三国の人財をいかに育てていくかということが重要であると考えている。 海外からの技能実

習生などを国内で受け入れ、日本の建設技術に習熟してもらい、戻った母国で建設事業に従事してもらえれば人財育成サイクルにも繋がり、それぞれの国での建設業の発展に貢献できると考えている。 

2)現地パートナーとのアライアンスの強化現地パートナーとのアライアンスの強化は、人財の育成、確保に並行して、施工能力や営業力を増強する上で重要であると考えている。

世界の人口は、アジア・アフリカを中心に、2050

年には90億人を突破すると予想されており、発電所、空港・道路など交通インフラの需要の拡大が予想される。また、環境技術やエンジニアリング、都市開発事業などを含め、日本企業が主に国内で蓄積してきた技術やノウハウを活用できる商機が拡がっていくと思われる。したがって、これまで当社が培ってきた技術力、総合力、コーディネート力をグローバルに展開できるよう、政治的・地政学的なリスクに配慮し、また各国・各地域の治安問題などにも十分留意しながら、世界のさまざまなプロジェクトに臨んでいきたいと考えている。

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22 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

米国や欧州から発せられているグローバル化への警鐘、世界的な紛争・テロ・犯罪などによる不安定な治安や政情のなか、直近であっても海外の建設事業の情勢判断はさらに難しい状況になってきていると感じている。政府の成長戦略としての「質の高いインフラ」「アフリカ・インフラ協議会」などに牽引され、膨大なインフラ需要が見込まれるアジアやアフリカ向けには引き続き大型案件の発件が予想されている。海外での受注機会が増える中でも、リスクを見極めながらの取り組みが必要になってくる。

b. 今後3~5年の見通し

日本国内でも、中長期的な経済の動向を見通すことは難しいとされながらも、建設市場の好況は2020年ころまでは継続すると予想されている。その先の建設市場の縮小を見据えて、大手だけでなく中小企業も途上国などの海外へ向かいつつあり、その傾向は一層進んでくると考えられる。

JICAや国交省によるODAの問題点(税金・相手国負担・設計変更)の改善、日本企業が参画しやすいスキーム、官民連携による案件形成や実施の推進など、リスクの軽減や受注しやすい環境は整いつつある。一方で、STEP案件のようにオールジャパン体制のもと、高くても良いものを作りたいという意識が被援助国でどこまで受け入れられるか、事業に向かう姿勢や実力が試されることになるかもしれない。業界を支える技術者や技能者は慢性的に人材不足の状況になってきており、受注・品質・安全にもその影響が出てくることも懸念材料となる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

わが社では主に以下のような市場動向を考えている。1. アフリカ理由:積極的なODA事業の形成が継続され、有償資金も含む大型の案件が期待される。

2. 中央アジア理由:経済の活性化、治政的な重要性から、特に交通網整備事業に関わるODA案件の継続が期待される。

3. 大洋州理由:市場規模は小さいが、安定した治安や地理的な条件からも継続して取り組みたい地域である。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想わが社の経営方針では海外事業の拡大を挙げている。 ODAの基盤を継続しながら、実績のある国などでの大型案件の受注を目指していく。人材の育成や業務の効率化などによる体制の強化策として、日本人のみならず現地や第三国のスタッフなどグローバルな人材登用と育成、現地や第三国の業者との継続的な協力体制の構築が必要と考えている。わが社の強みでもある、現地の技術者や作業員と一緒に汗をかき、指導・教育を通して信頼関係を構築していくことで、社会貢献の一環としての役割にもつながると信じている。 途上国では、社会・経済・治安などに関連する多くのリスクが存在するなか、情報収集や経験、人脈と信頼関係、準備/計画を通して、リスクの検証と縮減・回避を図りながら、工事の安全のみならず、治安対策にも配慮した運営が重要と考えている。わが社は、アフリカ、中東、アジア、大洋州での

ODA工事を中心にして、今までに50カ国以上での建設工事の実績がある。途上国での豊富な経験を活かし、さらなる海外での事業の拡充に向けて、新しいプロジェクト・新しい国への挑戦を続けていく。

大日本土木(株)海外支店 支店長

波多野 秀美

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232017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2020年の東京五輪の開催決定により、鉄道網や高速道などのインフラ整備が加速しており、エンジニアの確保が困難を極めている。その一方で、2019

年をピークに建設市場は縮小し、量から質へと需要転換が本格化すると言われている。 この状況下、弊社としても国内需要の確保が主となり、海外分野は従とならざるを得ない。2018年も17年同様に会社の中期経営方針に従い、営業所のある国を中心に受注を継続し、一定の利益を確保しつつ、若手継承者の育成に努める。

b. 今後3~5年の見通し

国内市場は、震災復興事業、オリンピック関連事業がピークを過ぎ徐々に縮小していく傾向にあり、受注量確保のため、海外事業への取り組みに拍車がかかると思われる。 アフリカ地域のODAは増加傾向にあるが、民間投資の増加は見込めないと思われる。アジア地域はインフラ整備の大型案件がカンボジア、ベトナムを中心に、また、テロなどの脅威を考慮すると、比較的安全で政治的に安定している当該地域には引き続き民間投資が期待できる。 しかし、海外事業においては、テロ、風土病・伝染病、政情不安などにより事業継続に支障をきたすことが予想されるので、営業地域を選別しなければならない。 

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:日本からの民間投資が一定量見込め、アジアンハイウェイに象徴される地域を超えた大型

案件が期待できる。2. アフリカ理由:政情不安、疫病のリスクが多いので営業地域を厳選する必要はあるが、日本のODA案件が増加すると思われる。 

3. その他のアジア諸国  理由:東南アジアの優等生であったタイも労務不足、賃金高騰が顕著となってきており、民間投資はその周辺国へと流れていくと思われる。インフラの整備が不十分な国が多いため、ODA案件の増加も見込める。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想営業所のある国、およびその周辺国で営業を展開し、安定した受注を目指す。海外経験のある若手職員が払底しているので、若手職員の早期育成を目指す。

大豊建設(株)常務執行役員 海外支店長

田村 利和

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24 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

世界経済を牽引する米国では消費が増加基調を維持、欧州でも消費が回復基調を続け、中国も公共投資が景気を下支えしており消費の伸びはそれほど衰えていない様子。ASEAN諸国では経済成長は若干ペースダウンしており、建設市場の成長スピードも鈍化傾向にあるとする見方もあるが、鉄道、空港、高速道路などの交通インフラを中心とするプロジェクトが予定されている。また、ASEAN域内関税撤廃が近隣国への輸出増など域内経済への好影響を与え、消費スタイルの都市化が飲料、小売などの新たな需要を創出し、少子高齢化や生活習慣病増加は医療分野などのヘルスケア需要を喚起すると考える。このような消費動向の変化と共に、中間層の拡大に伴う個人消費が堅調に拡大していくと、建築種別も多様化が進むと予想する。当社の海外建設事業は、東南アジアや既に内需拡大が進んでいる中国、EV(電気自動車)など新たな需要が見込まれる欧州など、既進出地域における事業基盤を強化しつつ、2017年の実績を上回る受注量を見込む。

b. 今後3~5年の見通し

アジアを中心としたインフラ投資や、インダストリー4.0に関わる経済効果が設備投資を底支えし、世界経済の成長は底堅いとみている。併せて世界の建設投資も堅調に推移すると考える。当社の海外受注高は現状全体の10~15%だが、これをさらに引き上げていく。当社の主力地域である東南アジア、中国、欧州を中心に受注の積み上げを図っていく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由: 東南アジアが安定成長を続けている背景には、個々の国々が有する異なる優位性や特徴が、多様な成長ドライバーになっていることが挙げられる。昨年(2017年)の日系設備投資はやや落ち着いた様子であったが、外国投資や中間層の拡大に伴う内需の厚みが増しており、全体の建設市場は堅調で、特に非日系グローバル企業の投資も堅調に推移するとみる。

2. 欧州理由:自動車および輸送部門が最大の産業となっていることに加えて、自動車業界では「EV

シフト」へ大きくハンドルを切り、各メーカーは多車種展開を計画、車種の拡充に伴う市場の伸びが予想されるなか、これに伴う設備投資も増加傾向にある。また、高速道路などのインフラ整備がここ数年で急速に進み、白物家電や航空機など幅広い製造業が集積するなど、近年の安定した経済成長を背景に、生産拠点だけでなく消費市場としても拡大しているため、建設需要も堅調と予測する。

3. インド理由: IMFはインドが2017年7.2%、2018年7.7%の経済成長をする見通しを発表、中間層は2020年に6.2億人にも上るとみられており、その巨大市場のプレゼンスはますます高まる。日本の自動車産業もかなり工場を移し、徐々にモノづくり拠点としての地位を築き始めている。建設市場は、2025

年までに1兆ドルに達し、世界3位の規模になるとの見方もあり、重要視する。

(株)竹中工務店執行役員 国際支店長

澁田 祥一郎

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252017 12-2018 1

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想 アジア、中国、欧州といった既展開地域を中心に受注拡大を図る。強化する市場としては現地企業、グ

ローバル企業、ODA案件などに取り組む。そのために現地スタッフの育成を進め、現地スタッフ中心の運営体制を強化していく。

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26 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年においては、各国各省庁の動向を見極めながら、入札案件への確実な対応と共に、相当量の施工高が予想されている国内市場との調整を適宜行い、適正人員配置を含めた生産体制を準備していく。また各国の首脳や閣僚の交代などに起因するプロジェクトの遅延や優先順位の変動も懸念されるため、日本政府の政策を含めて各国の政権運営を注視すると共に、早期の的確な対応判断を行うための情報収集に努める。

b. 今後3~5年の見通し

東京オリンピック・パラリンピック関連事業や東北復興関連事業の現況を見るに、現在の国内市場については発注量が減衰していくため、各社とも市場を海外に求めることは必然であり、競合関係も厳しくなってくると考えられる。施工高消化のために生産人員が逼迫しているものの、国内市場の好調なこの数年間に3~5年後のプロジェクトの仕込みを行うことは重要であり、人材開発・育成と共にプロジェクトの選択と集中を行いながら戦略的拡大を図っていきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:ASEAN加盟各国を中心とした東南アジア各国では、約半数の国が人口ボーナス期から人口オーナス期への変換期と考えられるが、残りの半数での人口ボーナス期は、今後も10~15年続くと考えられている。その歴史・宗教・風土などによる発展形の差異はあるものの、豊かな労働力と購買力の存在は、世界でも優良な市場としての牽引力を持つものと考える。政変やテロ・戦争、自然災

害などの不確定要因に留意しながら、市場としての組み合わせを検討していきたい。

2. 東欧・中央アジア理由:EU圏とアジア経済圏の狭間にあり、その双方の拡大戦略による急激なインフラ投資は避けられないものと考える。各国の自治能力や自立意識と共に、投資元各国の主権争いの中で、優位性を確立するためには、差別化戦略が必要であると考えられ、中期ターゲットとして市場検証をしていきたい。

3. 東アフリカ理由:世界の中で最後の大市場と言われるアフリカは、歴史上ヨーロッパ各国の植民地であった歴史を持つ国が多く、いまだ内戦状態や戦争状態にある国家運営が不安定な国も多い。その中で比較的安定してきている東アフリカ各国は、各国独自の発展のみならず経済圏としての全体発展も考えられるため、今後は中長期のターゲットとして注視していきたい。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想海外建設事業においては、国内市場規模の減少に伴う事業規模の補完的な観点と共に、人的資源育成のプラットフォームとしての基盤構築を行いたい。国ごとに異なる、あるいは未整備状態の法律・許認可制度・基準などに加えて、各国独自の商習慣・立地・協力会社などの環境を経験させることにより、生産面においては施工計画・管理の原点に立ち戻ることのできる絶好の機会である。さらに、直轄工事においてはプロジェクトマネジメント能力の深耕を、現地法人においては経営管理面での経験を、それぞれ能力開発面でのキャリアパスとして位置付けることができるよう、社内体制の整備を推進していきたい。

(株)竹中土木執行役員 国際支店長

坂井 剛太郎

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272017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年について、中国経済が緩やかに減速すると考えられるものの、ASEANを中心に順調な経済成長が見込まれ、アジア全体では底堅く推移していくものと予想され、米国、欧州においても堅調な景気回復が続くものと考えられる。当社の海外事業の基盤であるアジア・東欧地域において、建設市場は順調に推移するものと見込んではいるが、地政学リスクが各地において生じる不安は拭い去れない。

b. 今後3~5年の見通し

日本国内においては、長期の安倍政権の下、改善基調が続くと想定されるが、建設市場においては、東京オリンピック・パラリンピック関連事業などの発注がピークを過ぎ、特に大都市圏外においては発注量が減少していくものと考えられる。そんな中、海外を視野に入れ、集中と選択を実施し、展開を図っていきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ASEAN諸国理由:チャイナ+1の流れが続くなか、日系企業によるリスク分散のための投資があるものと予想される。経済成長の予測が5%を超える国も多く、ローカル向けの住宅需要も拡大していくと想定される。

2. 中欧・東欧理由:EU経済は年率2%程度の経済成長が予測される中、製造拠点としての優位性は保たれ、今後も自動車関連企業を中心とした投資が続くものと想定される。

3. 中央アフリカ理由:アフリカ地域における日本の存在感を示すプロジェクトが形成され、インフラ整備を中心としたODA案件も増加していくものと予想される。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想国内建設事業の減少に伴う補完的な視点から、新たな雇用を海外に求め、更なる拠点のローカル化を進めると共に、国内部署・海外拠点との交流を深め、会社全体としてのグローバル化を推進していく。

TSUCHIYA(株)執行役員 海外事業本部 本部長補佐

青木 稚治

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28 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

近年新たに事業展開した国(カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ)での基盤ができつつあり、これらの国である程度の成果が出てきている。今後出件される工事案件の中で、得意とする分野については、順次対応していく。さらに来年度以降、インド高速鉄道計画が具体化すれば、こちらも受注に挑戦していきたい。

b. 今後3~5年の見通し

開発途上国の経済成長に伴うインフラ需要拡大は当面続くと思われ、日本政府の「質の高いインフラ輸出」戦略の展開により、日本企業の受注機会も増えると期待している。当社も得意とする交通インフラ工事を中心として積極的に事業展開していきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア(ベトナム、カンボジア、ミャンマーほか)理由:ASEANの掲げる物理的・制度的・人的連結性の強化のため、東西経済回廊・南部経済回廊関連工事など、今後の経済成長に伴う社会基盤(インフラ)整備が不可欠であるため。

2. 南アジア(インド、バングラデシュ、ネパールほか)理由:世界の貧困層の3人にひとりがこの地域に住んでいる現状であるが、経済発展が顕著で中間層が爆発的に増加する期待も大きい。経済成長の基盤となるインフラ整備に期待できる。

3. サブサハラアフリカ(タンザニア、ザンビア、モザンビークほか)

理由:日・アフリカ官民インフラ会議で確認された「質の高いインフラ投資」をアフリカ諸国で展開していく過程で、日本企業の工事受注機会も増

えると考えられる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想営業基盤のある国とその周辺国において当社の得意とする分野に取り組み、受注を目指す。そして新たに受注した工事において、現地企業向けOJTを戦略的に実施したい。今後の海外事業展開には人材確保や育成が重要課題と捉えており、日本人技術者の現地への対応および現地技術者の人材確保・育成で施工体制を強化し、安定的な事業展開を支えていきたい。一方で進出対象地域の優良企業との連携を模索し、協同での事業展開を検討する。また海外勤務者の安全確保については、危機・安全管理に関する常時情報収集と対策の周知徹底を継続強化する。

鉄建建設(株)執行役員 海外事業部長

中川 泰

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292017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

世界経済の堅調な成長を受け、引き続きアジアやアフリカの新興国を中心とした旺盛なインフラ需要が見込まれる。日本政府による積極的なインフラ輸出支援も相まって、当社が得意とする港湾のみならず、電力、上下水、橋梁、道路、鉄道などの分野におけるODA案件は、規模や地域共に拡大していくと考える。

b. 今後3~5年の見通し

欧米における政治的リスクや周辺諸国有事の地政学的リスクの問題により世界経済の持続的な成長に不透明感が残るものの、総じて中長期的には経済成長著しい新興国を中心としたインフラ需要の伸びは変わらず、海外の建設市場の需要は堅調であると期待される。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. アジア理由:今後も堅調な経済成長が見込まれ、建設市場の拡大が期待される。港湾、発電所、橋梁、道路、鉄道といった大型インフラ整備の需要があると共に、日系企業の進出に伴う建築工事も増加していくことが予想される。

2. アフリカ理由:港湾、橋梁、道路といった分野を中心に、ODAによるインフラ整備案件が今後も増加していくことが見込まれる。

3. 中東理由:多くのインフラ関連投資が今後も計画されていると共に、脱資源を目指した産業強化などの将来を見据えた投資も期待できる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想「緩やかな事業規模の拡大を図る」という基本方針の下、適切な利益を確保しながら国際事業を展開していく。具体的には、戦略的活動拠点として(1)

シンガポール・マレーシア、(2)ベトナム・インドネシア、(3)中東・アフリカの三拠点体制を構築し、新興国需要を取り込み、ODAおよび現地資金案件を中心に注力していく。また、当社の得意とする港湾工事や発電所・プラント工事のみならず、陸上土木工事、冷凍冷蔵倉庫や工場などの建築工事にも積極的に取り組んでいくと共に、国際事業本部、国内土木事業本部、国内建築事業本部の三事業本部が三位一体となり推進できるビジネスの構築を目指す。

東亜建設工業(株)取締役執行役員常務 国際事業本部長

石井 誠一郎

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30 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国内のインフラ整備事業に注力していく。海外事業においては主に南アジア、東南アジアをはじめとした道路案件および高速鉄道案件に注目していく。

b. 今後3~5年の見通し

近年のインフラ輸出推進戦略に対応するべく、海外事業への取り組み体制の整備や人材育成に引き続き注力していく。特に、道路案件および高速鉄道案件について注視し、参画の是非を検討していきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 南アジア理由:インド高速鉄道事業をはじめとしたインフラ整備事業。

2. 東南アジア理由:道路整備案件、高速鉄道案件をはじめとしたインフラ整備事業。

3. 北米理由:高速鉄道プロジェクトなど。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想海外工事は非常にリスクが多いため、ターゲットとする案件については、情報収集を徹底して堅実・慎重に事業展開を進めていく。

東亜道路工業(株)常務執行役員 営業本部長

中村 浩

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312017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社の重点市場は東南アジアと南アジアである。手持ちの公共事業に関しては、過年度に受注した本邦ODAであるジャカルタ都市鉄道プロジェクトで、用地や支障物などに起因する遅れの影響、さらには設計変更や物価上昇費用が回収できていないなど、問題山積で、対応に苦慮しながらも、工事は進めている。また、ミャンマーでは、道路橋架け替えプロジェクトで、上部工の最盛期を迎える。バングラデシュでは、ダッカ都市鉄道の車両基地造成工事が主たる地盤改良工事を終え、工事終盤となる盛土工の追い込みに入っている。いずれも2018年が鍵となる。民間事業に関しては、日系製造業の建設投資が急速に回復することは考えにくく、現地顧客の開拓を進めている。いずれの国や地域も、今後の政治・経済の安定が重要で、注視していく。また、東急グループ企業における海外事業の本格再開に呼応して、東南アジアでの開発事業の一翼を担えるよう体制を整備している。今後も、当社の重点地域である東南・南アジア諸国では、依然、インフラ整備需要が旺盛であり、本邦ODAの活用も計画されているため、国内が繁忙を極める中でも、限られた経営資源を、鉄道・道路や空港施設など、当社が競争力を発揮できる分野に集中し、新規案件受注にも継続的に取り組んでいきたい。

b. 今後3~5年の見通し

東南アジア諸国の経済情勢を見ると、全体としては、成長が続くものと思われるが、個別の活況エリアには動きがあり、見極めが重要と思料される。同

時に、新興国・発展途上国においては、引き続き、良質なインフラ整備に対するニーズは高く、本邦ODA

を利用した公共事業と、それを呼び水とした民間需要の高まりの両方が期待できると考えている。したがって、慎重にエリアを選びながら、民間事業と本邦ODAを主体とする公共事業の両方にバランスよく注力していきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ASEAN諸国理由:ASEAN諸国は日本との距離的近接性、経済成長率、内需の高まりなどを背景に、日系も含めて企業活動が活発である。合わせて、メコン流域諸国をはじめ、いずれの国もインフラ整備にかかる需要が旺盛であり、民間投資・公共投資共に確実な需要が見込める。

2. 南アジア理由:人口増加、所得水準の向上など、経済成長の高まりを背景に、公共投資だけでなく、民間企業の進出の面でも注目に値する。インドは言うまでもないが、その他、バングラデシュなどの近隣諸国についても、元来の人口規模、およびその増加率の大きさから推測される成長余力も注目に値する。地域全体として堅調に海外直接投資が増加しており、建設市場の成長が引き続き見られるものと予想される。

3. 北米理由:米国の製造業景況感指数も6年ぶりの水準まで上昇しており、米国経済の先行きに関しては、内需の拡大を中心とした緩やかな景気拡大が続くと見込まれる。また、高速鉄道の輸出をはじめとする米国内のインフラ再整備の大規模プロジェクトも魅力的である。

東急建設(株)執行役員 国際事業部長

酒井 邦登

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32 特集 OCAJI新年アンケート

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想繁忙期にある国内市場との経営資源の配分を考慮しながら、むやみに規模を追求するのではなく、収益性重視で海外建設事業を展開していきたい。すなわち、継続的に利益を創出できる地域、および当社の実績、技術力、マネジメント能力、さらには東急グループの展開や支援などにより優位性を確保できる分野をターゲットに事業展開を図る。また、昨今の海外工事では、適正さを欠く工期設定や著しく片務的な入札条件が散見される。条件の入念な精査によりリスクを検討し、取り組み自体を慎重に検討していく。一方、本邦ODAでは、工事条件の適正化に向けた取り組みに注力いただきたく、

関係各機関にお願いしたい。さらに、中長期的には、請負の対応可能地域を増やす算術級数的な事業拡大にとどまらず、建設周辺の新規関連事業にも取り組み、幾何級数的な事業拡大にも挑戦したいと考えている。そのための経営資源である人材育成にも注力したい。海外建設事業により収益を上げることはもちろんであるが、海外建設事業は人材育成などに有用であり、新たな事業形態、人的ネットワーク形成などの各種ノウハウの地域を超えたシナジー効果も期待できると考えている。今後も堅実かつ積極的に推進していく。

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332017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

引き続きアジアそしてアフリカでは旺盛なインフラ整備需要が続き、低迷していた油価が若干持ち直したことから民間プラントの動きが出てくるものと思われる。当社の主力拠点であるフィリピンでも軌道を中心に数々のインフラ案件整備が予定されていること、堅調な工場建築需要、民間土木案件も動き出してきた。限りある人的・物的資源を有効に活用し、リスクを勘案しながら東南アジア・アフリカ地域で継続的な事業を展開し収益の向上を図っていきたい。

b. 今後3~5年の見通し

より東南アジア域内経済が強まり、企業のASEAN域内への直接投資が日本起点だけでなく同地域内でより活発になると思われる。またそれを支えるインフラ・回廊整備が進み、アジア地域での所得向上により電力ソースのガス化も進むだろう。当社が注力する海上土木分野でもODAによる港湾整備、民間主導のエネルギー関連施設が期待される。一方、アフリカでは、ODAを中心とする物流網がより整備されるだろう。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:日本企業の直接投資も多く、インフラ整備需要が旺盛であり、また民間主導エネルギー関連投資もペースは遅いながらも進みつつある。

2. アフリカ理由:TICAD Ⅵが2016年に開催され、引き続き多くのODA供与が期待できる。当社が注力している大型港湾案件もいくつか計画されており、そ

の動向に注視したい。3. 南西アジア理由:人口が多く今後の成長のためのインフラ需要が旺盛であり、多くのODA供与案件が期待できる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想2018年度は、新3カ年中期経営計画の2年目にあ

たる。国内土木事業、国内建築事業に次ぐ収益基盤の第3の柱としての国際事業運営が求められている。収益力強化のために、組織的リスク管理体制の充実、日本人・現地職員の育成・登用策、パートナー企業の発掘、民間案件取り組み強化など、よりスピード感をもって進めていく。また地域では、当社拠点国・フィリピンでの土木・建築事業の深耕を図っていきたい。

東洋建設(株)執行役員 国際支店長

井上 卓郎

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34 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社の海外事業の基幹市場であるブラジルは、近年、歴代・現役大統領の汚職疑惑といった政情不安が景気に悪影響をおよぼしていたが、自動車生産・販売数が上向くなど、生産・消費共に回復基調にあり、経済は徐々に回復しつつある。ただし、建設市場への波及には時間がかかるため、2018年も受注は横ばい傾向が続くと考えている。 もうひとつの重要市場であるアジア地域は、国ごとに濃淡はあるが、全体として経済は回復傾向にあり、下振れ要因はあるものの、受注は前年を維持・やや上向くのではないかと考えている。

b. 今後3~5年の見通し

建築部門では、これまでの日系企業からの受注だけでなく、現地の優良企業やグローバル企業からも受注可能な体制を構築する。土木部門では、昨年受注したミャンマーおよびスリランカの円借款プロジェクトに全力で取り組む。また、同地域の円借款プロジェクトを中心に営業活動を展開する。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ブラジル・中南米諸国理由:世界的な景気回復基調の中、中南米諸国の一部では政情不安を抱える国もあるが、中南米諸国の政治・経済は、おおむね安定し、消費市場・生産拠点として成長する兆しが見受けられる。当社の拠点であるブラジルを足掛かりとして、ほかの中南米諸国への進出機会を窺っていきたい。

2. アジア理由:タイを中心とした東南アジアは、今後も日本からの一定の投資が見込めると考えられる。ま

た、ミャンマーやスリランカは、インフラ整備需要が旺盛であり、土木部門の受注実績を基盤に今後も注力したい。

3. アフリカ理由:アフリカの旺盛なインフラ需要を基に、当社の施工実績が豊富な西アフリカにおいて、建築ODA案件およびインフラ整備案件に取り組む。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想当社の海外事業の基幹市場となるブラジルと東南アジアの2拠点を中心に、今後も事業基盤の拡充を図る。同時に、海外要員増強のため、国籍、性別、年齢にとらわれない人材採用を行い、組織の活性化、拡充を図っていく。

戸田建設(株)執行役員 海外事業部長

古賀 孝三

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352017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

日本国内では、深刻化する高齢化とそれに伴う建設従事者(熟練工)の不足が顕在化しており、2020年の東京オリンピック・パラリンピック関連プロジェクトが最盛期を迎えることによる人材不足も重なることから、社会全体の上向きの景気に建設業界が水を差す事態にならなければよいと憂慮しているところである。また、これまでに整備してきた各種インフラの維持管理・保全のために多額な資金が必要であるというマスコミからの情報発信が目に付くようになっており、将来の日本のあるべき姿を改めて見直す機運が社会の中で醸成されてくると考える。海外建設市場に目を向ければ、アジアを中心とした各国の建設ニーズは引き続き好調に推移するものと思われ、世界的に広がりつつある自国優先主義やそれに伴う軋轢に注意が必要ではあるが、建設市場の拡大基調に変わりはないと考える。われわれの海外事業を進める上では、世界的な景気の動向、日系企業の投資動向はもとより、為替変動も大きな検討要因となる。今後の世界経済の動向次第で為替が不安定化することは十分考えられ、企業としての海外事業の業績管理に一層の留意が必要になっていると言える。また、中東での過激派組織IS(イスラミック・ステート)の本拠地の多くは奪還されたものの、今後はテロの発生地域が拡散し、一般市民が対象のいわゆるソフトターゲットでの被害発生が懸念されている。より一層、職員・関係者の安全確保を念頭に事業を展開していく必要がある。 当社としては、海外事業の体制強化に着実に取り組むと共に、従来の重要拠点や実績のある地域を中心に将来展望を踏まえて確実な事業を推進していく考えである。

b. 今後3~5年の見通し

 企業としての海外事業体制の強化に繋がる人材育成に取り組み、将来の事業展開に備えて基盤を強化していく。海外事業では世界的な経済・社会動向、各国独自の法体系や突然の法令改正、テロや犯罪、脆弱なインフラシステムなど、国内事業とは異なるリスク・変動要因を念頭に置いた事業展開が必須であり、迅速な情報収集と状況判断を行いつつ、事業拡大に向けて取り組んでいく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:東南アジアは、ASEAN諸国を中心に将来的には大きな経済成長が見込まれ、自由貿易の広がりと共に各国の競争力強化のためのインフラ整備が進み、日系企業の進出も期待できる。一方で、急激な都市化に伴いインフラ整備の遅れが社会問題化しており、安全で迅速かつ高品質な工事への期待がますます高まっている。

2. 南アジア・中央アジア理由:南アジアは急激な人口増大もあり、相変わらず多くの貧困層が存在しており、安全な水と食料の確保や医療・教育施設の整備に向けたODA

プロジェクトが長期的に進展するものと考えられる。また、中央アジアも含め、経済活性化・民間投資促進に寄与する電力・エネルギー整備や道路・鉄道整備事業が期待できる。

3. アフリカ理由:アフリカはわが国からの積極的なODA支援が継続されるものと推測される。さまざまな課題を検証しながら取り組みを進めていくべき分野であろう。

飛島建設(株)常務執行役員 国際支店長

佐藤 新一郎

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36 特集 OCAJI新年アンケート

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想当社では、近年は東南アジアではブルネイを、南アジアではパキスタンを中核拠点とし、それぞれ現地政府による建設プロジェクトとわが国のODA事業を中心に取り組んできた。これらの拠点における組織、人材の有効活用と一層の体制強化を図りつつ、周辺他国も視野に入れたODAとそれ以外への事業展開を並行して進めていく。各国ごとにインフラの成熟度、法制・税制、施工

力などの違いがあることから、個々のビジネス環境を把握しながらの事業展開が求められ、営業・施工体制強化、人材育成を進めることで海外事業体制の強化を図り、今後拡大が望まれる多様な海外事業に対し積極的に関わっていく。なお、地域によっては紛争やテロなども多発しており、突発的な事件の発生への備えも要求される。今後も、職員の安全を第一に事業を展開していきたい。

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372017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社が進出しているASEAN諸国の経済動向は、中国経済の減速に伴い、成長率は鈍化するものの底堅く推移すると思われる。地政学的な緊張状態は不安要因であるが、内需・外需共に成長軌道での設備投資は続くと想定する。

b. 今後3~5年の見通し

土木工事において、香港・シンガポールでは、鉄道・道路・空港の大型インフラ案件が継続して発注される見込みであるが、依然として競争環境が厳しい状況にある。また、タイでは、政府主導のインフラ整備が順調に推移すると考えられ、公共工事への参入を目指す。新興国であるベトナム、ミャンマーおよびラオスでは、日本政府の質の高いインフラ投資の推進の下、ODA案件が多数計画されており、有望な市場と考える。また、このインフラ整備に伴い日系民間企業の進出にも期待している。建築において、民間投資が低迷しているタイでは、政府の発表した新成長戦略を担う新規企業の進出が期待できる。また、民間建築市場が最も大きいマレーシアでは、今後とも比較的安定した外資・日系企業の投資が見込め、ベトナムでも、引き続き日系工場建設が好調と判断される。このように各国個別の動きのある中、当社の優位性が出せる案件を選択し今後、取り組んでいく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ベトナム理由:引き続き輸出の増加とそれに伴う内需の拡大で顕著な成長を遂げている。特に製造・加工の日系・外資系企業の輸出と投資が活発な状況である。

2. フィリピン理由:経済成長の牽引役であったITサイクル関連の輸出は一服するが、2018年にはドゥテルテ政権下でのインフラ整備が本格的な実行段階に入り、中長期的に成長が見込める。また、これに伴い民間投資の伸びも期待できる。

3. ミャンマー理由:政府が積極的にインフラ整備を続ける条件で、豊富な労働力と日本企業が集積するタイや巨大な人口を抱えるインドに隣接している立地を背景に、徐々に輸出企業の直接投資が増え、輸出主導の経済成長が見込める。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想現在、当社に優位性のあるアジア7カ国に注力し得意分野に集中した結果、一定の事業基盤の構築ができている。さらに、長期的・安定的な収益基盤を構築していくために、「新しい地域への進出」、「新しい顧客の開拓」、「新規事業への参入」の3点に取り組み、今後の海外展開を進める。「新しい地域」とは、フィリピン、カンボジア、バングラデシュ、インドを対象としており、「新しい顧客」は、自動車のEV化に伴う新たな基礎技術のサプライヤーや新規日系企業のみならず外資系企業の開拓を目指す。「新規事業」では、オフィスビルやサービスアパートの管理事業、営繕事業、リース業および工業団地の運営を検討しており、既に工業団地の運営はラオスで開始している。こうした取り組みを行うため、日本人職員には若年層から海外工事を経験させ、ローカル職員には西松マネジメントシステムを習得させ、人材の育成と組織の強化を進めていく。

西松建設(株)取締役 常務執行役員 国際事業本部長

松本 章

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38 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

世界経済は米国経済の安定した拡大を背景に、先進国を中心に緩やかな拡大基調が続くと思われる。中国および欧州経済の下振れなどの不安要因はあるものの、世界の建設需要は増加が見込まれ、当社も既進出地域において着実な受注確保を図っていきたい。

b. 今後3~5年の見通し

北朝鮮あるいは中東などの地政学的リスクはあるが、東南アジアおよびアフリカにおいては旺盛なインフラ需要があり、建設市場は今後も拡大していくものと思われる。当社も豊富な施工実績を持つ道路あるいは空港案件を中心に事業を拡大していきたい。一方で人手不足は深刻な問題となってきており、現地スタッフを含む人材の育成に取り組んでいく必要がある。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア理由:これまでのような高水準の経済成長は見込めないが、ASEAN5を中心に今後も堅調な成長が見込まれ、官民共に建設市場の拡大が期待できる。

2. 東アフリカ理由:基礎的インフラは圧倒的に不足しており、引き続き堅調な日本からのODAの支援が期待できる。

3. 米国理由:トランプ政権は国内回帰の姿勢を変えておらず、大幅な減税も予定されており、民間設備投資の増加が見込まれる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想東京オリンピック・パラリンピック後に国内建設市場が冷え込むことが予想されているが、海外においてはいたずらに規模の拡大を求めるのではなく、会社に安定的に収益で貢献できる体制を確立したい。そのためには、工事においては安定して受注できる人材および組織の育成・構築を図っていきたい。また、新規事業では製造業としてのアスファルト合材事業、あるいは地元会社のM&Aにも積極的に取り組んでいきたい。

(株)NIPPO海外支店長

村田 和之

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392017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社が事業を展開する東南アジア領域においては、ローカル企業、韓国・中国企業の技術力が向上し、価格競争が激化してきている。そのため、建築事業ではシンガポール・台湾を中心に日系企業の有利さを活かし、高品質施工により事業継続を図っていく。また、土木事業は当社保有技術を活用し官民連携を視野に、既進出国に加えミャンマー・韓国・バングラデシュなどに新規参入を目指す。

b. 今後3~5年の見通し

建築事業は既進出国において体制を強化し収益性の改善を目指す。土木事業はシンガポール支店をハブ支店として周辺国への事業展開を目指しており、体制の強化・保有技術の進化により、上記新規進出国にインドネシアなどを加え、海外土木事業の売上比率を高めていきたい。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. シンガポール理由:多くの実績(土建)があり、協力業者も確保できることから、当社保有技術(土木)の展開が比較的容易であり、この地で社員・ローカルスタッフの教育を目指している。

2. バングラデシュ理由:本国(BCSIR)は当社保有技術(土木)への関心が高く連携した取り組みが期待できる。

3. ミャンマー理由:本国(MOC)と協働した試験施工の協議を進めている。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想建築事業は既進出国にて事業継続を目指し、土木事業は保有技術を活用し、新規進出国の現地企業とのアライアンス強化を図り、海外事業の拡大を目指す。

日本国土開発(株)取締役専務執行役員

山本 喜裕

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40 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

アジアおよび欧州・中近東地域における廃棄物発電・水処理プラントの建設と運営に関わるプロジェクトの受注を進めるとともに、さらに幅広く環境、社会インフラ、防災分野における事業領を拡大し、またICT技術の活用による顧客満足度の向上とリスク管理体制の強化を図っていく。

b. 今後3~5年の見通し

世界では人口増加がさらに加速し、新興国の生活レベルも向上していく中で社会的課題として「環境汚染」や「食料・水・エネルギー不足」が一層深刻になっていく。また、世界における政治・宗教的リスクの高まりとそれに付随する経済リスクの先鋭化が予想される。その中で安定して確実に循環型社会を実現、継続していくための技術と事業の可能性が拡大していくと考えられる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア・南アジア理由:人口増加や経済発展に伴う環境対策需要の高まりによって環境分野の事業が拡大すると予測される。廃棄物処理市場におけるAOM・運営事業、RO造水技術や繊維ろ過・取水技術にリース事業のノウハウを組み合わせた水処理・供給事業、さらに社会インフラ・防災分野での日本独自技術を活用した持続可能な防災減災社会の構築が強く必要とされると考えている。

2. 東アジア

理由:将来的な市場規模と日本との関係を考えたときに、巨大な人口と消費市場規模に対応する取り組みを進めていく必要がある。廃棄物・水処理事

業などの環境分野をまずテーマとしてPPP事業への参画などさまざまなかたちで取り組んでいく。

3. 欧州・中近東理由:欧州におけるごみ焼却発電プラント、中近東における大型海水淡水化プラントの対応を進めているが、今後はさらに欧州における環境規制強化によるエネルギー分野の対策需要、中近東における人口増加や工業発展に伴う海水淡水化需要の高まりなどが考えられる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想限りある資源を効率的に利用し、かつ適正な廃棄物処理を行う循環型社会の実現が強く求められる中で、エネルギー事業と水関連事業をコア事業領域として世界における社会的課題に対して解決策を提供する「循環型社会実現に向けたソリューションプロバイダー」でありたいと考えている。

日立造船(株)企画管理本部 経営企画部 理事 海外事業推進グループ長

河津 知則

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412017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年度は、国際支社3カ年計画の最終年度であり、成長ドライバーとして高い目標を掲げている。厳しい状況ではあるが、達成できるものと考えている。

b. 今後3~5年の見通し

後述の通り、グローバル課題は山積し、また拡大する傾向にあり、これらへの価値提供を通して将来的には大幅な拡大を目指している。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ASEAN・中国理由:中間層の所得向上に伴い、優良住宅を求めるようになっており、関連投資が増えるものと考えている。

2. 北アメリカ(米国・メキシコ)理由:日系企業の米国進出が再び勢いを取り戻そうとしているように感じられる。業務提携を含めれば、チャンスは多いと考える。

3. アフリカ・インド理由:旺盛なインフラ需要に対して、日本政府としての支援が手厚く、多くのチャンスが存在している。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想Q1-bに示したように、将来的に目指す方向性に

対して必要な施策を打ち出していくと共に、各エリアがそのエリアの特徴に適合した成長戦略を打ち出すことで、全体と部分のバランスを取りながら成長していくという構想を描いている。

(株)フジタ取締役常務執行役員 国際支社長

菅沼 広夫

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42 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

当社は2004年より地盤改良に特化して東南アジア・米国における事業展開に取り組んできた。これまで積み上げてきた実績やノウハウに基づいて、2018年も引き続き同地区での地盤改良事業を進めていきたい。東南アジア諸国における日本政府の「質の高いインフラ投資」は、日本の建設技術による事業拡大に繋がるものとおおいに期待している。当社は得意とする地盤改良を用いて、これら諸国のインフラ整備において重要となる防災や耐震の分野での受注に取り組む。また、北米ではシェールガス関連計画も今年はさらに加速すると予想されるため、同地区での地盤改良案件の受注を目指す。

b. 今後3~5年の見通し

アジアにおけるインフラ整備事業についての日本政府の積極的取り組みや民間投資が継続される中で、当社の得意とする地盤改良工法はアジア諸国で広範囲に需要が増加していくと考えている。しかし、それぞれの国には多様なカントリーリスクが存在するため慎重な対応と対策が必要である。 特にアジア諸国においては災害に対する対応はインフラ整備における重要な課題と考えられている。国土交通省が進める防災技術の海外展開への取り組みが具体化する中、日本国内で培ってきた軟弱地盤改良技術を生かせる機会が十分にあり、多くの市場が見込まれる。また北米大陸においては、シェールガスに対応した関連施設計画が原油安により一時停滞していたが、トランプ政権の下、関連施設への投資が再開する傾向にある。したがって、今後シェールガス関連施設計画に必要となる地盤改良の需要が増すと考えている。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 東南アジア諸国理由:東南アジアおよび周辺諸国は今後も経済成長が続き、大きなインフラ需要が見込まれている。これらの国々には日本と同様に軟弱地盤が分布する地域があり、また環太平洋地震帯に含まれる地震国も含まれる。インフラ整備の推進には軟弱地盤対策が必要であり、地震対策も欠かせないものである。したがって、これら地域は当社の得意とする地盤改良技術が十分に生かされる市場であると考えている。特に、インドネシア、バングラデシュ、ミャンマーの各国に注目している。

2. 北米

理由:米国のシェールガス関連事業は今後の世界的需要を見越して、2018年にはさらに本格化してくると予想されている。これら関連施設では軟弱地盤対策や耐震化に地盤改良の需要があると考えている。

3. オセアニア地区理由:地震多発地帯であり、またエネルギー関連施設への民間投資が盛んである。従来実施されていなかった耐震対策が一般化してきていることで、これらの地区での地盤改良の重要性が増すものと期待している。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想今後も東南アジア諸国および米国を中心として、日本固有の技術としての軟弱地盤改良技術による海外事業展開を推進させる所存である。このためにはローカル企業との業務提携や技術協力を視野に入れて、日本の地盤改良技術の定着を目指したい。また、当社が有する消波根固ブロック技術・製品の海外展開も積極的に進めていく。

(株)不動テトラ代表取締役執行役員副社長 地盤事業本部長

奥田 眞也

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432017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

日系企業の海外投資は地域に差はあれ、工場などの建設需要は依然として高いと予想される。土木事業に関しては、新興諸国でのインフラ資本整備の必要性に変化はなく、今後とも東南アジアを中心としたインフラ関連建設需要が増加すると思われる。

b. 今後3~5年の見通し

日系企業による海外投資の急激な落ち込みは考えにくい。東南アジアを中心とした各国の政情および為替の動向を注視していく必要はあるが、今後も日系企業による海外進出は継続するものと思われる。また土木事業においても、日本政府の海外インフラ輸出方針に沿った、新興諸国における鉄道、発電所、上下水道施設、空港、港湾などの建設需要が見込まれる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

東南アジア理由:建築事業については、依然、価格競争は厳しいが、今後も日本企業からの民間投資が期待される。また、土木事業についても、日本政府主導のインフラ関連建設需要が今後とも増加すると見込まれ、建築事業同様、価格競争は厳しいが、受注の機会はあると思われる。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想建築事業においては、引き続き、地盤のある現地パートナーとの関係を強化し、請負事業の一層の堅実化を図りたい。さらに投資を伴う開発案件などにも参画していきたい。土木事業においては、利益獲得のため、案件の選別と共に、施工力、交渉力の強

化を図る。また脱請負事業への取り組みにも挑戦していく。今後の海外での事業展開には人材の育成は避けて通れない。そのために日本人職員だけでなく、ナショナルスタッフも含めた海外人材の育成の強化を継続して進めていきたい。

前田建設工業(株)執行役員 国際支店長

藤藁 昭

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44 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

アジア経済の力強い成長は、引き続き世界経済を牽引している。当社は南アジアから東南アジアを主な進出先としているが、アジア全体の2018年の経済成長率は5.5%とされ(国際通貨基金の見通しより)、中でもミャンマー7.6%、インド7.4%が高成長を示し、次いで東南アジア(ASEAN)各国がそれに続く(フィリピン6.7%、ベトナム6.3%、インドネシア5.3%他)。好調な消費と域内外からの投資が成長を促し、成長率の高さは日系製造業の海外進出を誘引する。これに伴う工場・倉庫建設プロジェクトが南アジア・東南アジアで期待される。同様に各国のインフラ整備意欲に応えるODA工事も積極的に取り組む。当社は中期経営計画2016-2018に基づき、800~

850億円規模の安定した受注・施工体制を目指していく。

b. 今後3~5年の見通し

現在の経済状況は、東アジアの地政学的リスクやバブル経済崩壊リスクなど不透明な部分はあるものの、今後数年は好調を継続して行くと思われる。当社は、拠点を置くインド以東の9カ国ならびにプロジェクトベースの数カ国で、引き続き受注、施工に注力していく。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. 南アジア(インド、スリランカ、バングラデシュ)2.ミャンマー、カンボジア3. フィリピン理由:上記はいずれも経済成長著しい発展途上国であり、豊富な労働力に加え製造業やインフラ整備の建設需要が期待されるため。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想「ものづくり企業」として現場力を強化して行く。当社独自の「安全と品質」を管理する活動、PMS(Project Management System)のさらなる展開により安全と品質の確保徹底を図り、それを業績の向上へ繋げていく。同時に内部統制の強化とリスク管理の徹底により、盤石な施工体制・管理体制の構築を行う。加えて、日本人社員・ローカルスタッフの育成は海外事業の基本であり、更に知育し知識を持ったローカルスタッフを、日本人のサポートのみならず日本人職員と同等の業務に登用する人事制度を確立し、現場組織の重層化を図る。昨今の治安の不安定化や感染症発生などに対し適切に対応をするべく準備を怠らず、社員・家族が安心して就労・駐在できる環境づくりに配慮していく。

三井住友建設(株)常務執行役員 国際支店長

辻 良樹

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452017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

海外拠点のあるミャンマー、ベトナム、インドネシアを中心として、発注が見込まれるODA工事を主体に対応していく。

b. 今後3~5年の見通し

ODA工事に対応していくことには変わりはないが、海外拠点のある国に加え、その周辺国にも対象地域を徐々に拡大していく。また、ローカルスタッフの育成・起用を促進し、より一層地域に根付いた企業を目指すことにより、競争力を強化し、受注の増加を目指す。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ミャンマー理由:アメリカの制裁も解除され、大河が多い同国では、今後、多くの橋梁の需要が見込める。複数のODA工事が計画され、現地パートナーとの協業を活かして対応できる。

2. バングラデシュ理由:ODA工事が動き出しており、ミャンマーと同じく大河が多い同国では多くの橋梁需要が見込める。

3. アフリカ理由:東南アジア諸国に比べ遠隔地ではあるが、将来的には、大きな経済発展が期待でき、日本政府も積極的な支援を考えていることから、将来のインフラ整備の需要が見込める。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想引き続きODAの鋼橋工事を主体に展開していく。今後は、現地に根付いた施工体制を取れる国を徐々に拡大し、活動の範囲を東南アジアだけではなく、今後需要が見込める地域などにも展開していく。

(株)横河ブリッジ取締役 海外事業部長

馬場 千尋

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46 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年度の外務省予算概算要求額が7,675億円、そのうちのODA予算が4,897億円となっている。そのうちの1,874億円が無償資金協力の概算要求金額になっており、引き続き国益に資する方向でODA

の拡大が図られていくものと思われる。有償資金協力においても1兆3,600億円の概算要求になっており、引き続き質の高い成長の支援、国際社会の安定と平和のための環境支援、持続可能な開発のためのプロジェクトが強化されるものと考えている。

b. 今後3~5年の見通し

2014年度にODA大綱を開発協力大綱に改め、従来の開発途上国への支援中心からわが国の国益も考慮した相互利益に繋がるプロジェクトへの方向転換を目指している最中だと感じている。約20年間の経済の停滞期間があったが、その脱却を目指した海外へのインフラ輸出対策を含む成長戦略に乗り、アジア地域向け・アフリカ諸国向けの質の高いインフラ投資戦略において、ODAでの円借・無償・技術協力の連携戦略が今以上に動き出す時期に来ているものと感じている。また、近年の無償資金協力においてもプロジェクトの大型化傾向があり、50億円以上の供与も実施されてきている。今後、国益面はもちろんだが、量から質への転換と政策の見直しの方向に移行するものと思われる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. ベトナム理由:ベトナム政府は2020年までに近代的工業国化を実現させる戦略を立てているが、その成否を左

右する鍵がインフラ整備であるとしており、2011年の共産党全国大会で採択された社会経済開発10カ年計画においても、優先度の高い政策課題として掲げられている。日越関係が継続的にステップアップしている状況で、わが国企業の進出、工場の新設、ODA

のさらなる充実、民間のインフラ関係への投資、官民連携によるプロジェクト受注など、わが国建設企業にとって受注の可能性が増大していると感じている。

2. アフリカ諸国理由:アフリカ諸国向け無償資金協力は全体の4割を占めており、今後も同程度と考えている。2016年8月のTICADⅥで開催されたナイロビ宣言で、安倍首相から2016年からの3年間で総額3兆円規模が約束され、現在も進行中のプロジェクトが多種存在している。西アフリカ、東アフリカを中心にして有償・無償案件が継続して発注されると予想する。

3. 中央アジア諸国理由:過激派組織IS(イスラミック・ステート)の問題が下火になりつつあり、計画されていたプロジェクトの発注が徐々に行われてきた感がある。安全がまず優先であるが、弊社の技術を生かせるプロジェクトには積極的に出ていく考えである。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想自社の保有技術・機械を活用し工事施工するにあたり、日本の大手建設企業などの協力会社として参画することが多いが、自らが元請として受注したり(日本企業とのJVを含む)、現地建設企業から下請受注していくことも継続していく考えである。また、自社の技術力を確認した上で、従来取引関係のある日本のゼネコンに対してさらなる海外進出への意欲を伝え、自社の技術力や施工実績、施工管理体制などについて説明し、受注活動を強化する考えである。

ワールド開発工業(株)海外事業本部 営業部長

佐藤 邦彦

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472017 12-2018 1

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

政府のインフラ輸出推進策により、官民問わず業界は活気づいている。特にアジアへのODAによる交通インフラ輸出は今後さらに増えると思われる。国別にはインド、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、タイ、フィリピンが有望である。

b. 今後3~5年の見通し

世界経済状況の変化(中国の諸外国への勢力拡大、米国大使館エルサレム移転など新大統領による予測困難な政策、東

南アジア発展途上諸国の諸政策)を見通すことは容易ではないが、経済の基礎的条件が短期間で劇的に変化することは考えにくい。また、現在政府の積極外交姿勢や2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックなど、内外に上向きのベクトルが存在することを考えると、諸条件は少なくとも横ばい、もしくは上向きで推移すると見込まれる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由

1. インド理由:2016年度JICA事業規模1位(2,220億円)、高速度鉄道計画経済成長と人口増大、活発な民間交流。

2. ベトナム理由:2016年度JICA事業規模2位(1,856億円)、活発な民間投資。

3. インドネシア理由:2016年度JICA事業規模5位(419億円)、円借款首都圏東部新港開発2018実施見込み。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想スリランカ、インドネシア、大洋州、ミャンマーなど実績のある地域でODA案件(円借・無償)に、また東南アジアにおける日系企業の民間案件にも取り組んでいく。災害・テロなどの危機管理を強化し、人材育成に努め、持続可能な部門の事業展開を図る。

若築建設(株)国際部長

姫野 雅之

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48 特集 OCAJI新年アンケート

Q1. 海外建設事業の見通しa. 2018年の見通し

2018年の海外建設事業の見通しは、世界経済が、中国の景気減速や地政学的リスクが懸念されるが、米国経済の安定した拡大、堅調な新興国の成長に索引され、緩やかな回復傾向が続き、これに伴い、アジアを中心に旺盛なインフラ需要が見込まれると予想する回答が多く見られた。また、政府が進める『質の高いインフラ投資』の推進に

より、ODAを中心に、わが国建設業の事業の拡大が期待されるとしている。ODAが引き続き堅調に推移ないし拡大するほか、インフラ案件の大型化が見込まれるとしている。海外事業の取り組みについては、着実に現状を維持する、戦略的に取り組む、さらに拡大するとの回答が見られ、将来の展望を踏まえ確実に事業を推進していく姿勢が窺える。

b. 今後3~5年の見通し3~5年の見通しは、アジアを中心にインフラ需要拡大

の傾向が当面続くとしている。また、日系企業からの受注

が堅調に推移するほか、PPP活用の案件や大型インフラ

案件の出件が増大すると予想している。さらに、ODAに

ついては量から質への転換がさらに求められているとして

いる。

c. 今後有望と思われる海外市場(地域)とその理由今後有望とされる市場としては、東南アジアが圧倒的に

多く、ここ数年の傾向となっており、次いで米国となってい

る。理由として、「ASEAN加盟国を中心に、今後も堅調な

経済成長が見込まれ、長期的な市場規模の確保が期待

できる」、「人口増加や急激な経済発展に伴い、インフラ整

備に伴う需要の拡大が見込める」、「日系企業による民間

投資や日本政府からのODA案件に、引き続き期待ができ

る」などの意見が挙げられている。

次に、アフリカに期待する回答が多く得られ、理由として、

「ODAによる積極的なインフラ案件が継続的に期待され

る」、「日・アフリカ官民インフラ会議で示された質の高い

インフラ投資の実現に向け、建設市場の工事受注が増加

していくと思われる」などの回答が挙げられている。

また、アジアでは国別としてミャンマー、インド、ベトナム、

バングラデシュなどが挙げられている。

Q2. 海外建設事業の展開に対する今後の構想今後、国内市場規模が縮小する傾向は避けられないと

予測されることから、海外事業の強化は、さらに重要度を

増すことは必須である。海外事業の安定した取り組みに

とって、収益性重視の念頭に事業体制の強化、得意分野・

拠点地域に特化した取り組み、新規市場の開拓、人材の

確保・育成(第三国などからのグローバル人材を含む)」、コ

スト競争力の強化、「組織・拠点の基盤強化(現地従業員

の確保および育成、現地協力会社との関係構築の向上)」が

今後も海外戦略への必要不可欠な事項とする回答が多

かった。

PPP、M&Aなど、脱請負事業・新規事業への取り組

み強化、持続的な現地企業との関係構築などが重要な課

題に挙げられている。

2018年 新年アンケート 〈総括〉

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492017 12-2018 1

海外受注実績

本邦法人 現地法人 総計 前年総計2014年度 779,879 1,035,465 1,815,344 2013年度 1,602,872

2015年度 600,036 1,082,420 1,682,456 2014年度 1,815,344

2016年度 395,220 1,151,184 1,546,404 2015年度 1,682,456

2016年10月 22,652 100,204 122,856 2015年10月 146,463

2016年11月 14,813 39,600 54,413 2015年11月 197,461

2016年12月 33,601 143,256 176,857 2015年12月 303,473

2017年1月 18,045 96,571 114,616 2016年1月 106,777

2017年2月 26,927 28,715 55,642 2016年2月 60,806

2017年3月 90,173 120,825 210,998 2016年3月 165,355

2017年4月 49,638 68,797 118,435 2016年4月 138,352

2017年5月 49,835 91,311 141,146 2016年5月 79,432

2017年6月 18,759 91,530 110,289 2016年6月 190,250

2017年7月 8,147 55,058 63,205 2016年7月 73,604

2017年8月 175,354 175,580 350,934 2016年8月 241,780

2017年9月 90,116 60,917 151,033 2016年9月 87,604

2017年10月 30,526 39,744 70,270 2016年10月 122,856

2017年11月 75,627 117,782 193,409 2016年11月 54,413

2017年4月~11月 498,002 700,719 1,198,721 988,291

本邦法人 現地法人 総計2014年度 43.0% 57.0% 13.3%

2015年度 35.7% 64.3% ▲ 7.3%

2016年度 ▲ 34.1% 6.4% ▲ 8.1%

2016年10月 ▲ 12.6% ▲ 16.9% ▲ 16.1%

2016年11月 ▲ 85.8% ▲ 57.3% ▲ 72.4%

2016年12月 ▲ 74.5% ▲ 16.7% ▲ 41.7%

2017年1月 ▲ 78.4% 314.4% 7.3%

2017年2月 53.3% ▲ 33.6% ▲ 8.5%

2017年3月 27.6% 27.6% 27.6%

2017年4月 139.0% ▲ 41.5% ▲ 14.4%

2017年5月 160.3% 51.5% 77.7%

2017年6月 ▲ 74.5% ▲ 21.5% ▲ 42.0%

2017年7月 ▲ 58.8% 2.3% ▲ 14.1%

2017年8月 369.5% ▲ 14.1% 45.1%

2017年9月 391.8% ▲ 12.1% 72.4%

2017年10月 34.8% ▲ 60.3% ▲ 42.8%

2017年11月 410.5% 197.4% 255.4%

2017年4月~11月 119.9% ▲ 8.0% 21.3%

月次受注額(2016/10~2017/11) (単位:百万円)

対前年同期比(2016/10~2017/11) (単位:%)

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50

地域別2017年度 2016年度 伸び率(%)

*受注額による件数 受注額 構成比(%) 件数 受注額 構成比(%)

アジア本邦法人 152 439,430 36.7% 126 159,879 16.2% 174.9%

現地法人 798 298,867 24.9% 614 242,150 24.5% 23.4%

計 950 738,297 61.6% 740 402,029 40.7% 83.6%

中東北アフリカ

本邦法人 7 3,146 0.3% 9 7,768 0.8% -59.5%

現地法人 0 0 0.0% 0 0 0.0% 0.0%

計 7 3,146 0.3% 9 7,768 0.8% -59.5%

アフリカ(サブサハラ)

本邦法人 1 1,780 0.1% 8 15,266 1.5% -88.3%

現地法人 0 0 0.0% 0 0 0.0% 0.0%

計 1 1,780 0.1% 8 15,266 1.5% -88.3%

北米本邦法人 8 3,546 0.3% 12 15,046 1.5% -76.4%

現地法人 129 279,030 23.3% 115 457,524 46.3% -39.0%

計 137 282,576 23.6% 127 472,570 47.8% -40.2%

中南米本邦法人 43 27,921 2.3% 43 12,657 1.3% 120.6%

現地法人 35 5,584 0.5% 29 6,865 0.7% -18.7%

計 78 33,505 2.8% 72 19,522 2.0% 71.6%

欧州本邦法人 2 1,371 0.1% 2 2,322 0.2% -41.0%

現地法人 32 6,617 0.6% 15 2,687 0.3% 146.3%

計 34 7,988 0.7% 17 5,009 0.5% 59.5%

東欧本邦法人 0 0 0.0% 0 0 0.0% 0.0%

現地法人 60 42,979 3.6% 27 13,615 1.4% 215.7%

計 60 42,979 3.6% 27 13,615 1.4% 215.7%

大洋州本邦法人 25 20,808 1.7% 34 13,536 1.4% 53.7%

現地法人 20 67,642 5.6% 7 38,976 3.9% 73.5%

計 45 88,450 7.3% 41 52,512 5.3% 68.4%

累計本邦法人 238 498,002 41.5% 234 226,474 22.9% 119.9%

現地法人 1,074 700,719 58.5% 807 761,817 77.1% -8.0%

総合計 1,312 1,198,721 100.0% 1,041 988,291 100.0% 21.3%

地域別海外工事受注実績 (単位:百万円)

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512017 12-2018 1

主要会議・行事

謹賀新年。2017年度の海外受注実績は、前年度に引き続き、会員企業の積極的な海外展開を

背景に好調に推移している。 これは、堅調な経済を背景とした米国、またインフラ需要が依然旺盛なアジアを中心に、堅調な受注を得ている。さらに、リスク管理の徹底、国際人材の育成強化、会員各社の積極的な取り組みの結果だと思われる。国内建設市場もまた好調ではあるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の建設市場の縮小化に伴い、ますます海外建設市場の事業拡大が求められることは間違いない。 また、国土交通省の「質の高いインフラ」の支援がより一層強化され、官民一体となって、海外ビジネスチャンスの拡大に向け、わが国建設業の海外進出の追い風となるだろう。来年も引き続き会員各社の受注が伸長し、さらなる利益確保が図られるよう、事務局一同、会員各社への支援活動の充実に努める所存です。また、会員各社の海外部門の関係者、協力会社の関係者、さらにそれぞれご家族の本年のご多幸とご健勝をお祈り申し上げます (OCAJI編集室U)

あとがき

とき ところ 主要会議・行事10月2-3日 カンボジア カンボジア王国における建設法案策定支援事業

10月6日 OCAJI 第3回理事会10月13日 OCAJI RICEとの意見交換会10月18日 OCAJI 海建塾(会計編&一般編)10月19日 韓国 第2回日韓建設協力協議会 事務局会議10月19日 ハノイ 第9回国際建設リーガルセミナー10月20日 OCAJI 第6回契約管理研究会

10月24-25日 OCAJI 第1回海外要員養成講座(プロマネ編)10月25日 フィリピン ASEAN+6 建設フォーラム会議

10月26-27日 OCAJI コミュニケーション講座(クレーム能力強化編)10月30日 OCAJI 海外赴任帯同家族セミナー

11月2日 東海大学校友会館 第27回海外建設協会OB会総会・懇親会11月6-7日 フランス CICA秋季理事会11月13日 OCAJI 第2回調査研究委員会11月10日 東京建設会館 JICA集団研修技術交流会11月15日 OCAJI 3建設業保証委託事業中間報告会11月17日 外務省 安全対策要望11月21日 インドネシア 日本・インドネシア建設会議11月22日 OCAJI 第10回国際建設リーガルセミナー11月23日 フィリピン 日本・フィリピン建設会議11月27日 OCAJI 第7回契約管理研究会

11月27-28日 セネガル 日本・セネガル官民インフラ会議事前ミッション11月28日 OCAJI 第2回海外要員養成講座(基礎編)11月29日 OCAJI 第7回月例セミナー11月29日 カンボジア 第11回国際建設リーガルセミナー11月30日 OCAJI 海建塾(現場管理編/建築設備)

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海外赴任の手引き

本手引きは、海外に赴任する方 (々家族)に赴任準備から赴任中の留意点、帰国後の対応策などをわかりやすく解説したものです。

海外赴任者のメンタルヘルス

本書は、2000年に発刊、2008年に改訂された「海外赴任者のメンタルヘルス」の内容およびデータを、さらに最新の情報に更新した、海外赴任される方々にとって、健康的で楽しい海外生活を送るためのヒントとなる1冊です。

海外赴任者向け手引き

出版物のご案内海外建設協会では、わが国建設業の先進的技術紹介資料、わが国海外建設事業に関する資料、海外赴任に関する手引き書

などの出版物を刊行しています。こちらのご案内は、当協会が出版している書籍のごく一部です。すべての出版物の詳細・ご購入は、OCAJIのホームページをご覧ください。 http://www.ocaji.or.jp/publication

海外建設プロジェクトのリスク管理

本書は、会員企業が実際に海外のプロジェクトで遭遇し損益を悪化させた事例を中心に、その原因分析を行い、さらに遡って「では入札や契約の際に、どのようにしておけばそのリスクを防げたのか」の検討を加えた貴重な資料(2003年 4月発刊)の改訂版です。改訂に当たり 6つの事例を新たに付け加え、また、海外建設工事で広く採用されているFIDIC約款についても、本書発刊以降にMDB2010年版が発行されたことから、同書に言及した解説も加えるなど解説の見直しもしています。

請負者の現場契約管理のための英文レターサンプル集

本サンプル集は、国際建設プロジェクトにおいて、請負者の現場事務所から発注者側(主にエンジニアなどの現場責任者)などに宛てる日報・月報などの日常業務の報告書や工程表・施工計画書・請求書などの定型的なものから、想定外の諸問題についての通知、設計変更、クレームに至るまでさまざまなサンプルレター144例を収録しています。レター作成を現地スタッフや英米系スタッフに委ねるケースも多々ありますが、たとえ自分で起草しない場合でも的確な指示や判断ができることが必要で、この面からも日本人スタッフにとっては有益な 1冊です。「序章」ではレターを書く上での基本的な留意点や参考表現方法を収録しています。

国際建設プロジェクトの契約管理 ◇基礎知識と実務◇

本書は、国際的な建設プロジェクトにおける契約管理(クレーム)能力向上を図るための手引書として 好評既刊の「海外建設工事の契約管理」(第Ⅰ部「基礎知識」、第Ⅱ部「実務」の 2部構成)の全面改訂合冊版です。

海外建設工事の契約管理 第3部 クレームの実例(CD)

本書は、海外建設事業における契約管理能力向上を図るための手引書の実務編です。(※CDによる頒布です)

海外における建設工事紛争の実例

本実例は、外国法律事務所のニュースレターに見る建設工事における紛争の実例とその結果をまとめたものです。

国際建設プロジェクト 契約管理用語 英和/解説(和英索引付)第2版

好評の初版(2007年発行)に、さらに利便性を高めるため〔和英索引〕を新たに追加し、さらに、トレンドも意識して見直しを行った第 2版です。普段見慣れない用語や、一般的な用語でも解釈に注意を要するものが多い入札や契約管理において、それらの用語を正しく理解するとともに、業務の円滑な遂行、リスク回避、スキルアップを期してまとめ上げた関係者必携の1冊です。解説・例文も充実。略語も含む約 2,300語を収録しています。

契約管理

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Japanese Construction Industry, Today(2013)

当協会のホームページ 「世界に誇る先端技術」(http://www.ocaji.or.jp/technology)にも一部掲載されている、わが国建設業の最先端技術や工夫などを実例で紹介する技術紹介資料。ボスポラス海峡トンネルやドバイメトロをはじめ、話題のプロジェクトの技術を紹介しています。

2014 The Japanese Construction Today(DVD)

当協会のホームページ「世界に誇る先端技術」(http://www.ocaji.or.jp/technology)掲載の動画をDVDに収録。わが国建設業の最先端技術や工夫などを実例で紹介します。

技術紹介資料

インドネシアハンドブック

本書は、インドネシアの建設産業における公共および民間事業に係る法制度、建設産業の実態、入札・契約制度、さらに税務、保険などを調査し、取りまとめたものです。インドネシアで活動している企業および今後インドネシア進出を計画する企業にとって、インドネシアでの建設活動に係るマニュアルとして広く活用いただけるものとなっております。

韓国建設企業の海外進出(戦略)に関する調査報告書

本報告書は、韓国建設企業の組織体制、海外受注実績統計、建設企業の海外戦略、人材育成、進出企業の市場展開の特色、進出企業の概要、プロジェクトの資金調達、建設保証制度、海外工事の実態、韓国政府による海外進出への支援、韓国海外建設協会の活動などを調査し、取りまとめたものです。韓国建設企業は、海外事業展開を積極的に行っており、その活動の実態を知ることは、今後の海外建設活動を進める上で大変参考になることと思われます。

ベトナムハンドブック

本書は、2006年に発刊した「ベトナム進出の手引き」の内容およびデータを、同国の建設産業における公共および民間事業に係る法制度、建設産業の実態、入札・契約制度、さらに税務、保険などが大きく変更されてきたことから、最新のものに見直した改訂版。ベトナムで活動している企業および今後ベトナム進出を計画する企業に向けた、ベトナムでの建設活動マニュアルです。

カンボジアハンドブック

同ハンドブックは、海外建設ハンドブックのシリーズ 5として取りまとめたものです。同国の建設産業における公共および民間事業に係る法制度、建設産業の実態、入札・契約制度、さらに税務、保険などを調査しています。カンボジアで活動している企業および今後カンボジア進出を計画する企業にとって現地建設活動に係るマニュアルとして広く活用いただけるものとなっております。

ミャンマーハンドブック

同ハンドブックは、海外建設ハンドブックのシリーズ 4として取りまとめたものです。同ハンドブックは同国の建設産業における公共および民間事業に係る法制度、建設産業の実態、入札・契約制度、さらに税務、保険などを調査し、取りまとめたものです。ミャンマーで活動している企業および今後ミャンマー進出を計画する企業にとってミャンマーでの建設活動に係るマニュアルとして広く活用いただけるものとなっております。

調査研究報告書

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