development of interlanguage pragmatics on refusals in

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Eruditi 3 (2019), Section 1 (Original Research), 14-28, Beuckmann. 14 日本語の「断り」における語甚論的胜力の発達 Development of Interlanguage Pragmatics on Refusals in Japanese ボむクマン総子 Fusako Beuckmann The University of Tokyo, Center for Global Communication Strategies (Received January 2019; accepted May 2019) Abstract The aim of this study is to investigate Japanese L2 learner’s development of discourse patterns, hedges and reasoning expressions in the Head-Act of refusals. I analyzed cross-sectional data of refusal situations collected by oral discourse completion tests from 13 high-elementary, 19 intermediate and 13 advanced level L2 learners as well as 62 Japanese language native speakers (NS). Results showed that as the L2’s proficiency level advanced, the discourse patterns, hedges and reasoning expressions of the Head-Act became similar to their usages by NS. However, it was also evident that there are some hedges, such as “iya”, “-soo-ni-nai”, “te-iuka”, “kanji”, “dekireba”, which NS frequently use, but L2 learners, even advanced ones, hardly use. Moreover, advanced L2 learners do not distinguish between “node” and “kara” as it should be according to social distance to an interlocutor. Based on these findings, a selection of learning items is suggested to help L2 leaners appropriately and efficiently express refusals according to their proficiency levels. キヌワヌド: 䞭間蚀語語甚論断り語甚論的胜力談話展開パタヌンヘッゞ Interlanguage Pragmatics, Refusals, Pragmatic Knowledge, Discourse Pattern, Hedges

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Eruditi 3 (2019), Section 1 (Original Research), 14-28, Beuckmann.

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日本語の「断り」における語甚論的胜力の発達

Development of Interlanguage Pragmatics on Refusals in Japanese

ボむクマン総子 Fusako Beuckmann The University of Tokyo, Center for Global Communication Strategies (Received January 2019; accepted May 2019)

Abstract The aim of this study is to investigate Japanese L2 learner’s development of discourse patterns, hedges and reasoning expressions in the Head-Act of refusals. I analyzed cross-sectional data of refusal situations collected by oral discourse completion tests from 13 high-elementary, 19 intermediate and 13 advanced level L2 learners as well as 62 Japanese language native speakers (NS). Results showed that as the L2’s proficiency level advanced, the discourse patterns, hedges and reasoning expressions of the Head-Act became similar to their usages by NS. However, it was also evident that there are some hedges, such as “iya”, “-soo-ni-nai”, “te-iuka”, “kanji”, “dekireba”, which NS frequently use, but L2 learners, even advanced ones, hardly use. Moreover, advanced L2 learners do not distinguish between “node” and “kara” as it should be according to social distance to an interlocutor. Based on these findings, a selection of learning items is suggested to help L2 leaners appropriately and efficiently express refusals according to their proficiency levels.

キヌワヌド: 䞭間蚀語語甚論断り語甚論的胜力談話展開パタヌンヘッゞ Interlanguage Pragmatics, Refusals, Pragmatic Knowledge, Discourse Pattern, Hedges

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Eruditi 3 (2019), Section 1 (Original Research), 14-28, Beuckmann.

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1 はじめに 断りは䟝頌や勧誘などず同様将来の行動を玄束する玄束型の発話行為である (Austin 1962, Searle 1976) 。玄束型の発話行為の遂行にあたっおは話し手は自らの行為の目的

を盞手に銖尟よく䌝えるこずが求められる。ず同時に断りは盞手の欲求に応えられな

いこずを䌝える行為であるため盞手のフェむスを脅かす行為(FTA)ずなる(Brown and Levinson 1987)。そこで話し手ず話し盞手ずの良奜な関係維持のためには圓該の発話行

為によっお生じる䞍調和を緩和すべく䜕らかの蚀語的方策を講じるこずが必芁ずなる。す

なわち断りの遂行にあたっおは話し手は圓該の蚀語行動の目的を効果的に達成する

ずいう指向性ず盞手ずの関係を良奜に保぀ずいう指向性を䜵せ持ち぀぀その蚀語行動を

行うこずが求められるわけである熊谷 1995。 さお日本語における断りの䞭間蚀語語甚論の研究はある蚀語を母語ずする䞊玚孊習

者ず日本語母語話者の日本語を比范したものが倚く日本語のレベル別の研究は管芋の限

りない。そのため断りの語甚論的胜力がどのような過皋を経お習埗されるのかは䞍明で

あり䞊述の぀の指向性がどのように発達するのかに぀いおも未解明である。 そこで本研究では初玚埌半䞭玚䞊玚の日本語孊習者の断りを暪断的に分析する

こずにより断りに関する語甚論的胜力の発達過皋を解明するこずを詊みる。そしお埗

られた結果をもずに指導項目の提案を行う。

2 先行研究ず研究課題

2.1 本研究における぀の分析芳点—先行研究ずの関連から— 本研究では孊習者の断りに関する語甚論的胜力の発達過皋を解明するずいう目的のも

ず断りの䞻芁郚の「䞍可」ず「理由」に焊点をあお次の点を日本語のレベル別に分

析する。 たず「䞍可」ず「理由」がどのような展開パタヌンで発話されるのか぀たりどのよ

うな順序で断りが述べられるのかに぀いお分析を行う。先行研究では「䞍可」ず「理由」

だけでなく断りの蚀語行動に芋られる倚くの方略に぀いお孊習者ず日本語母語話者以

䞋NSずの比范を行いその盞違を明らかにしおいるが展開パタヌンを調べたものは

ない。「䞍可」は蚀語行動の目的を効果的に達成するこずに「理由」は盞手ずの関係を

良奜に保぀こずに関わっおおり䞡者の展開順序を芋るこずで぀の指向性に関わる語

甚論的胜力の発達を分析考察するこずができるず考える。点目ずしお䞻芁郚にどのよ

うなヘッゞ2.3 参照が甚いられおいるのかを分析する。察人関係を良奜に保぀ための蚀

語圢匏ずしおヘッゞの出珟傟向を分析するこずで断りにおける良奜な人間関係のための

蚀語圢匏の発達過皋を解明できるず思われる。点目にどのような蚀語圢匏を甚いお「理

由」の発話が行われるのかを分析する。「理由」を述べる衚珟はカラノデテシなど耇

数存圚する。これら接続蟞の習埗の順序に関わる䞭間蚀語習埗研究は数倚くあるが峯 2008, 高田 2011 など断りの理由述べずいった発話行為に特化した研究ではないため理由述べ

の際に䜿甚される蚀語圢匏間の習埗順序はわからない。 本研究では䞊述の点に぀いお断りの䞻芁郚を察象に分析するこずにした。日本語教

育ぞの応甚にはこのように孊習者の蚀語の特城を幅広く分析し結果を盞互に関連さ

せるこずで教育䞊の有益な瀺唆が埗られるのではないかず考えるからである。

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2.2 断りの方略に関わる先行研究 日本語孊習者の断りの方略に぀いおの先行研究は数倚い生駒・志村 1993熊井 1993藀森 1995カノックワン 1997ルンティヌラ 2004 など。生駒・志村 (1993)は英語を

母語ずする䞊玚日本語孊習者は「代案提瀺」をあたり行わないが「感謝」を NS より倚甚

するず述べおいる。熊井(1993)は孊習者がポゞティブ・ポラむトネスの方略ずしお機胜す

る「情報芁求」「䟝頌の䞀郚繰り返し」「代案提瀺」を倚く甚いるのに察しNS は前眮きな

しで断りを述べその際断定を避けた緩和衚珟を甚いおいたず指摘しおいる。藀森 (1995)によるずNS は芪疎に関わらずたず「詫び」を述べるのに察しお韓囜人孊習者は芪し

い盞手には「匁明」をたず述べる傟向があるずいう。さらにルンティヌラ (2004)はタむ

人孊習者は芪疎で方略を䜿い分けるこずそしお母語の語甚論的転移により NS が倚く甚

いる「決意衚明」を行わないこずを指摘しおいる。 これらの研究は孊習者ず NS の断りの方略の盞違や母語からの語甚論的転移の様盞を明

らかにしおいるがいずれの研究も䞭䞊玚孊習者ず NS の断りを比范したもので蚀語胜力

別の習埗過皋を暪断的にもしくは同䞀孊習者の習埗過皋を瞊断的に扱ったものではな

いため、習埗プロセスは䞍明なたたである。そこで方略に関しおは、「䞍可」ず「理由」

ずいう断りの䞻芁郚を構成する方略に焊点を圓おその展開のパタヌンが初玚埌半䞭

玚䞊玚によっおどのように習埗されおいるのか明らかにする。

2.3 ヘッゞに関わる先行研究 ヘッゞずいう抂念を最初に導入したのは Lakoff (1972)である。Lakoff (1972:195) はヘッ

ゞを「曖昧性を含意する語」ず定矩し“sort of”や“kind of”などをその䟋ずしお挙げおい

る。ヘッゞの機胜は倧きく内容に察する「䞍確実性」を衚す機胜ず話し手ず聞き手

の関係を緩和させるなど人間関係に関わる「埅遇性」の぀があるずされる(Nittono 2003山川 2011)。尚堀田・堀江(2012:3)は前者を「可胜性や皋床性類䌌性など呜題内容の

䞍確かさを衚す機胜」埌者を「情報に察する話し手の捉え方発話態床を緩和させたり

感情や思考などの発話内容を緩和させたりする機胜」ずしおいる。泚意しなければならな

いこずは蚀語圢匏ず機胜が䞀察䞀で察応しおいるわけではないずいうこずである。䟋え

ば「思う」が「あい぀倧孊きおるかな」「はあ来おるず思いたす」ずいう発話で䜿甚

された堎合は前者の機胜を持぀が「也杯したいず思いたす」の堎合は埌者の機胜を持぀

森山 1992。 日本語孊習者のヘッゞを察象にした研究ずしおは山川(2011) ず堀田・堀江(2012) が挙

げられる。山川(2011)はOPI (Oral Proficiency Interview)デヌタを甚いお日本語孊習者の胜

力別にヘッゞ䜿甚を分析しヘッゞの習埗の過皋を明らかにしおいる。山川によるず日

本語胜力が䞊がるに埓っおヘッゞの䜿甚割合が倚くなるだけでなく「䞍確実性」の機胜

を持぀ヘッゞの䜿甚が枛り「埅遇性」の機胜を持぀䜿甚が増えるずいう。尚同様の結果

が堀田・堀江(2012)においおも指摘されおいる。堀田・堀江(2012)はロヌルプレむデヌタ

を甚いお断りの䞻芁郚のヘッゞに぀いお韓囜語母語話者ず䞭囜語母語話者ず日本語母

語話者の䜿甚を比范した。その結果孊習者は䞊玚であっおも日本語母語話者よりヘッ

ゞの数も皮類も少ないこずを指摘しおいる。 本研究ではヘッゞをNittono (2003)山川(2011)堀田・堀江(2012)を参考に「良奜な

人間関係を保぀ため発話内容たたは発話行為を緩和する機胜を持぀語句」ず定矩する。

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そしお断りの䞻芁郚に芋られるヘッゞは断りずいう蚀語行動に察する FTA 緩和ストラ

テゞヌずしお機胜するず考える。先行研究により明らかになった日本語胜力別のヘッゞの

特城が断りずいう蚀語行動においおも同様に芋られるのかを本研究では明らかにし断

り行動におけるヘッゞの習埗の過皋を解明したい。

2.4 理由の衚珟に関わる先行研究 カラノデテなどの接続蟞の習埗の順序に関わる蚀語習埗研究峯 2008高田 2011

ではその習埗順序ず芁因が議論されおきた。峯は暪断研究を行い事実仮定順接

逆接ずいうように思考的負担の少ない衚珟から䜿甚が広がるこずを指摘しおいる。たた

䞻節ず埓属節の埓属床の関係から埓属床の最も䜎いほうから高いほうぞ習埗が進むずし

おいる。尚峯のデヌタでは「テ理由・継起カラノデ」の出珟順だった。高田(2011)は接続蟞の瞊断研究を行い蚀語圢匏に぀いおは「カラケドテナガラノデノニ」

の順意味甚法別では「継起理由≧逆接䞊列付垯」の順に出珟が芋られたず指摘し

おいる。双方ずも理由述べに特化した研究ではないため理由述べの際に頻繁に䜿甚され

るノダずの関連からの分析は行われおおらずたたテが「理由」ず「継起」で分けられ

おいないため1理由のテが果たしおカラやノデに先立぀のかたたカラず同時に出珟す

るのか解明の䜙地がある。

2.5 本研究の目的ず研究課題 本研究の目的は日本語孊習者が断り行動においお断りの䞻芁郚をどのような発達の段

階を経お習埗するのかを明らかにするこずである。具䜓的には音声による談話完成テス

トOral Discourse Completion Test以䞋 Oral-DCTによっお埗られたデヌタを甚いお勧

誘に察する断りず䟝頌に察する断り2における「䞍可」ず「理由」の発話を初玚埌半 13 名

侭箚 19 名䞊玚 13 名を察象に暪断的に分析し次の぀の研究課題を解明する。そしお

埗られた結果から蚀語胜力に応じた日本語教育ぞの瀺唆を行う。 断りの䞻芁郚の展開パタヌンにどのような習埗の過皋が芋られるのか。 断りの䞻芁郚に珟れるヘッゞにどのような習埗の過皋が芋られるのか。 断りの理由の蚀語圢匏にどのような習埗の過皋が芋られるのか。 尚比范ずしお日本語母語話者 62 名のデヌタも分析に甚いる。

3 実隓抂芁

3.1 実隓協力者 デヌタ協力者は郜内倧孊の半幎たたは幎の亀換留孊生である。幎霢は 19 歳から 26歳で平均幎霢 21.2 歳暙準偏差 1.7であった。過去の日本滞日歎は党員ヶ月未満で

調査は日本での留孊が始たっおから週間以内に行われた。

1 峯(2008)では「テ」の埓属節ず䞻節の䞻語が同じかどうかで習埗順序を分析しおいる。 2 本研究では「勧誘に察する断り」ず「䟝頌に察する断り」ずいう状況による違いに分け

ず分析する。

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A 倧孊のプレむスメント詊隓3はレベル初玚前半からレベル超玚たである

が本研究ではレベルを「初玚埌半」レベル〜を「䞭玚」レベルを「䞊玚」

ずしこの日本語胜力別にデヌタを分析した。協力者の人数は初玚埌半 13 名䞭玚 19名䞊玚 13 名であった衚。たた比范察照ずする NS は過去幎以䞊銖郜圏に䜏ん

でいる孊習者ず同じ A 倧孊に圚孊する孊生 62 名男性 37 名女性 25 名で幎霢は 18〜22 歳平均幎霢 19.3 歳暙準偏差 1.18であった。

3.2 発話の状況 発話行為の堎面は「勧誘に察する断り」ず「䟝頌に察する断り」で䌚話の盞手は「週

日仕事のずきだけ䌚うアルバむトの䞊叞以䞋䞊叞」「郚掻の仲の良い先茩以䞋

先茩」「授業のずきだけ䌚う同孊幎の友人以䞋友人」「仲の良い同孊幎の友人以䞋

芪友」ずし衚の組み合わせで状況を蚭定した。「+」「−」は想定される心的距離芪疎

ず瀟䌚的距離䞊䞋の有無である。

衚 発話の状況ず盞手心的距離瀟䌚的距離

No. 発話行為 状況 盞手 心的距離芪疎 瀟䌚的距離䞊䞋

#1 察勧誘 1 送別䌚参加の誘いを断る 䞊叞  

#2 察勧誘 誕生パヌティヌの誘いを断る 先茩 − 

#3 察勧誘 ラテン語を䞀緒に履修する誘いを断る 友人  −

#4 察勧誘 4 誕生パヌティヌの誘いを断る 芪友 − −

#5 察䟝頌 残業の䟝頌を断る 䞊叞  

#6 察䟝頌 匕っ越しの手䌝いの䟝頌を断る 先茩 − 

#7 察䟝頌 詊隓のためのノヌト貞䞎䟝頌を断る 友人  −

#8 察䟝頌 匕っ越しの手䌝いの䟝頌を断る 芪友 − −

3.3 実隓方法 本実隓は英語で曞かれた状況を䞎えその状況に応じた発話を音声で聞き実隓協力

者はその音声に応答する圢で自らの発話断りを述べるずいう Oral-DCT である。具䜓的

には実隓協力者に(1)の様な状況を提瀺し「曞かれた状況を読み自分ならどういうか想像

3 プレむスメント詊隓は挢字語圙文法SPOT (Simple Performance-Oriented Test)小

林他 1996読解䜜文からなりその結果は総合的に刀断される。

衚 デヌタ協力者

A 倧孊のレベル 人数 本研究のレベル 第蚀語

初玚埌半 13 初玚埌半 英語名䞭囜語名ドむツ語・韓囜語・ポルトガル語・タむ語各名

䞭玚䞋 14 侭箚 英語名䞭囜語名スペむン語名ドむツ語・韓囜語・オランダ語各名

䞭玚䞭 4 英語名

䞭玚䞊 1 韓囜語名

䞊玚 13 侊箚 䞭囜語名韓囜語名英語名

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あなたは日本にいたす。倧孊のキャンパスを歩いおいるずこの䞀ヶ月䌚っおいない仲の良い友達に䌚いたした。あ

なたずその友達はこの幎間同じ専攻で勉匷しおきお過去には䞀緒にレポヌトを曞いたこずもありたすがこの孊

期は同じ科目を履修しおいたせん。友達は自分のずころで開く自分の 21 歳の誕生日のパヌティヌにあなたを誘いた

した。誕生パヌティヌは次の金曜の倜時からです。䞀緒によく遊んでいたけれど今孊期は䌚っおいない友人達もパ

ヌティヌに来るそうなのでその人達ず䌚ういい機䌚だず思いたすし友達の誕生日を祝いたいず思っおいたすが

残念ながらその日は行くこずができたせん。

しおみお䞋さい。盞手の発話を聞き終わったら録音を始めおその盞手の発話に察しお返

事をしおください。発話するずきはそれぞれの状況で自分が必芁だず考え埗る十分な発

話を行っおください」ず教瀺した。そしお盞手の発話ずなる日本語の音声キュヌ(2)参照を聞き終わったあず断りの発話を行っおもらいその発話を録音しおもらった。尚

NS に察する教瀺は日本語で行った。録音は原則 LL 教宀のコンピュヌタの音声録音゜フ

トを甚いお行ったがIC レコヌダヌに録音した堎合もあった。状況を実隓協力者に提瀺す

る際には衚の぀の状況に加え錯乱肢ずしお「䟝頌する」「勧誘する」など蚈 16の状況をランダムに提瀺した。

(1) #4察勧誘誕生パヌティヌの誘いを断る芪友

(2) わヌ久しぶり。元気にしおたあのさちょっず突然なんだけど今埌の金曜日

誕生日でそれで金曜の倜にパヌティヌしようず思っおお来おくれないかな。

3.4 分析察象 断りの方略には䞍可「いけない」など理由「忙しくお」など謝眪「ごめんな

さい」など次回の玄束「もし機䌚があればたた今床ね」などがあるが本研究では

堀田・堀江(2012)にならい断りの「䞻芁郚」ずしお機胜する「䞍可」 で囲った郚分

ず「理由」 で囲った郚分を含む発話文に焊点を圓おる。(3)は䞻芁郚が䞍可のみ(4)は理由のみ(5)は䞍可ず理由による堎合の発話䟋である。 発話文の認定は文単䜍ずした。本研究の䞀発話文は発話䟋(1)〜(3)の「|」で瀺された

箇所が切れ目ずなる。尚本研究では逆接の接続助詞「けど」を䌎った発話が䞻芁郚

に含たれる堎合それが前眮き的な機胜を有する堎合であっおもその埓属節を含み䞀発

話文ず認定した。逆接か前眮きか刀断が困難なものがあったためである。䞀発話文の認定

は筆者ずもう䞀人の日本語母語話者が行い認定に霟霬があった堎合は協議し合意に至っ

たものを採甚した。たた䞍可ず理由は半数の発話に関しお二人が刀断した。䞀臎率

はκ=.967 で信頌床が確かめられたため残りは筆者が䞀人で行った。 (3) NS-M014 #1:察勧誘 1送別䌚参加の誘いを断る䞊叞 あヌ今床のヌ土曜っすかヌ。|土曜日はちょっずヌ残念なんですけどヌ僕出垭できないん

ですよヌ。|あの䜐藀さんにはお䞖話になっおいたんですけどたあちょっず欠垭ずいうこ

ずでいいですかヌ|

4 発話者の蚘号はNS=日本語母語話者M=男性F=女性番号は発話者番号を瀺す。

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(4) NS-F07 #2察勧誘誕生パヌティヌの誘いを断る先茩 えヌすごくいきたいけど金曜は予定あるんですよ。|すみたせん。|誕生日おめでずうござ

いたす。|

(5) 初玚埌半孊習者韓囜#4察勧誘誕生パヌティヌの誘いを断る芪友 あのヌずおもごめんなさい。|あヌわたしはヌいけないです。|んヌわたしはずおも

忙しい忙しくおあヌテストがありたすからいけない。|ずおもすみずおもごめんなさ

い。|あヌでもあヌ誕生日はずおもおめでずう。|おめでずう。|すみたせん。|

4 結果ず考察

4.1 断りの䞻芁郚の展開パタヌン 本節では研究課題の断りの䞻芁郚の展開パタヌンを芋おいきたい。断りの䞻芁郚の

展開パタヌンは「䞍可のみ」「䞍可→理由」「理由→䞍可」「理由のみ」のみ「その他

䞍可も理由もない断り」のパタヌンが存圚した。図を芋るずNS も孊習者も「䞍

可のみ」や「䞍可→理由」は少なく「理由→䞍可」もしくは「理由のみ」を述べお断る傟

向があり党䜓的な傟向は NS ず孊習者では䌌おいるようにみえる図。しかしこれ

を日本語胜力別にみるず様盞は異なる図。

図に芋られるように初玚埌半䞭玚䞊玚で展開パタヌンは異なっおいる。孊習者

の「䞍可のみ」ず「䞍可→理由」ずいうパタヌンは初玚埌半䞭玚䞊玚の順に少なく

なっおいた。たた初玚の孊習者に倚いパタヌンは「理由→䞍可」「理由のみ」ではあるも

のの「䞍可のみ」ず「䞍可→理由」のパタヌンの者は䞭玚や䞊玚孊習者よりも初玚に倚い。

このこずから「理由」を述べるよりも「䞍可」であるこずを積極的に述べる傟向が䞭玚や

䞊玚の孊習者より初玚孊習者に匷いずいうこずが蚀える。初玚の孊習者は断りずいう蚀

語行動の目的を効果的に達成するためにたず䞍可の発話を行ったりたず䞍可を述べお

から理由を䌝えたりするずいう順序で断りを遂行したこずになる。断りを銖尟よく遂行す

るずいう点においおたず「䞍可」を述べるのは理にかなっおいるが「理由」を述べずに

断るず盞手から䞍満や誀解を招きかねない。すなわち良奜な人間関係を保぀ずいう指向

性からみるず「䞍可」のみでは䞍十分であるずいうわけである。尚, NS も「䞍可のみ」で

断わるケヌスが芋られるが4.2 で述べるヘッゞを䜿甚するこずによっお「䞍可のみ」によ

り生じる䞍調和に察するダメヌゞを解消しおいた。

「理由のみ」を述べお断る傟向は初玚よりも䞭玚ず䞊玚で倚く䞭玚ず䞊玚の「理由

のみ」は NS よりも割合が高かった。「䞍可」の発話を述べず「理由のみ」述べるこずは

「䞍可」の発話を述べるよりも人間関係をより良奜に保おる可胜性が高たる。しかし䞀

方で「理由のみ」では断りの意図が効率的に䌝わらない可胜性もある。それにも関わらず

「理由のみ」の割合が NS よりも䞭玚以䞊の孊習者で倚かったずいうこずは䞭玚以䞊の孊

習者は過剰に察人関係配慮を行う傟向があるのかもしれない。

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4.2 䞻芁郚に珟れるヘッゞ 本節では研究課題の䞻芁郚のヘッゞの分析結果ずその考察に぀いお述べる。本デヌ

タで認めたヘッゞの数はNS は総数 947孊習者は 434 だった。䞀発話あたりのヘッゞの

数に換算したずころ図の通りずなりヘッゞ数は NS のほうが倚いこずがわかった。

日本語のレベルによる䞀発話あたりのヘッゞの数に぀いお䞀元配眮分散分析を行った

結果1%氎準で有意差が認められ日本語のレベル

が䜿甚頻床に圱響を䞎えおいるこずがわかった

F(242)=23.89p<.01。Tukey の倚重比范を行

ったずころ初玚埌半䞭玚䞊玚いずれも 5%

氎準で有意差が認められた。このこずからヘッゞ

䜿甚数は日本語のレベルに応じお増えるこずが瀺

唆された。ただし䞊玚であっおも NS ほどはヘッ

ゞが芋られなかった。

ヘッゞの皮類はNS では 37 皮類孊習者は 24

皮類でNS のほうが倚かった。衚は本デヌタ

で認定した NS のヘッゞず孊習者のヘッゞを品詞で

分類したものである。尚ヘッゞは出珟回数が倚い順に䞊べおあり「/」は出珟回数が同

じであるこずを瀺しおいる。衚は孊習者の日本語レベル別に䜿甚数が倚い順に䞊べた

衚である。NS の列の網掛けは孊習者に芋られなかったヘッゞ䞊玚の列の網掛けは䞭玚で

は芋られなかったヘッゞ䞭玚の列の網掛けは初玚埌半では芋られなかったヘッゞである。

衚 本デヌタで認定したヘッゞの皮類

品詞 NS のヘッゞ 孊習者のヘッゞ

副詞類

ちょっずどうしおもやたやたあたり倚分やっぱりできれば結構あいにく/残念ながら/䞀応だいぶ/少し/せっかく/なかなか

ちょっず倚分けっこうどうしおもあたりやっぱり/やたやた/れながら

終助詞 かなよねねよなあさわ ねよかななあよねさ

接続助詞 けどが けどが

助動詞動詞類おしたう思うそうにないかもしれないみたい/気がする

思うかもしれないそうおしたうだろう

間投詞類 いや/なんかおいうか なんか

名詞 感じこず ----

助詞 ずかだけは だけは

0,420,83

1,281,56

0,00

0,40

0,80

1,20

1,60

2,00

初 äž­ 侊 NS

図 䞀発話あたりのヘッゞの数

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衚 ヘッゞの出珟順䜍

NS (N=947) 侊箚 (N=199) 侭箚 (N=172) 初玚 (N=63)

1 ちょっず(346) 1 ちょっず(65) 1 ちょっず(65) 1 ちょっず(33)

2 けど(104) 2 思う(28) 2 思う(30) 2 ね(16)

3 かな(62) 3 けど(19) 3 けど(26) 3 けど(5)

4 よね(53) 4 倚分(18) 4 倚分(13) 4 なんかが(3)

5 が(45) 5 ね(13) 5 がね(9) 5 あたり倚分よ(1)

6 おしたう(43) 6 かもしれない(8) 7 かもしれない(7)

7 ね(42) 7 がそう(7) 8 なんか6

8 どうしおも(40) 9 なんか(6) 9 けっこう(4)

9 思う(26) 10 よ(5) 10 よなだろう(1)

10 よ(25) 12 どうしおもな (4) 䞊蚘網掛けは初玚埌半では芋られなかったヘッゞ

11 いやなんか(23) 13 おしたうかな(3)

13 な(21) 15 よね(2)

14 やたやた(20) 16 あたりやっぱりやたやた残念ながらだけはさ(1)だろう (1)

15 そう/そうにない(17) 䞊蚘網掛けは䞭玚や初玚埌半で芋られなかったヘッゞ

16 あたり(16)

17 さ(13)

18 倚分(12)

19 かもしれない(9)

20 おいうか(7)

21 感じ(6)

22 ずか(5)

23 できれば(4)

24 だけは残念ながらあいにく䞀応(2)

25 みたい少しだいぶせっかくなかなかこず(1)

䞊蚘網掛けは孊習者に芋られなかったヘッゞ

衚から䞊玚で䜿甚頻床が䜎いヘッゞは䞭玚では芋られず䞭玚で䜿甚頻床が䜎いヘッ

ゞは初玚で芋られないずいうようにヘッゞの䜿甚には習埗の順序があるこずがわかる。

尚NS で䜿甚頻床が䜎いヘッゞは孊習者で芋られないずいう同様の傟向があるが「いや」

「行けそうにない5」などNS で䜿甚頻床が盞圓数あっおも孊習者に䜿甚が芋られない

ヘッゞも存圚した。初玚に䜿甚が最も倚く芋られるのは呜題の前に぀く副詞「ちょっず」

でありその次に呜題の埌ろに぀く終助詞「ね」が倚かった。初玚に芋られないのは「思

う」「かもしれない」ずいう掻甚が䌎う呜題の䞭で䜿甚されるヘッゞである。他方䞭玚で

は皮類は限られおいるが呜題の前埌だけでなく䞭に぀くヘッゞも䜿甚しおいた。しか

し「どうしおも」「おしたう」「かな」ずいう発話態床や発話内容を緩和する機胜を持぀「埅

遇性」山川 2011に関わるヘッゞの䜿甚は芋られなかった。 たずめるずヘッゞの習埗は図のようになる。䞀番䞋は日本語レベルが䜎い孊習者

が䜿甚するヘッゞで「ちょっずねけどがなんか」がそれに圓たる。これらは呜

題の頭か埌ろに付加するが NS の䜿甚頻床も高い。䞭玚孊習者はこれに加え「思う」「か

5 ただし様態の「そうだ」は孊習者の発話においおも芳察された。

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図 蚀語胜力䜍眮機胜統語ずヘッゞの習埗の関係

䜎・孊習者のヘッゞ

NS のヘッゞ

䞭・孊習者のヘッゞ

高・孊習者のヘッゞ

【難易床】 䜍眮 機胜 統語

高 呜題の䞭 埅遇性 圢態的 呜題の埌 䜎 呜題の頭 䞍確実性 語圙的

もしれない」ずいった呜題の䞭で甚いられるヘッゞを䜿甚し始める。日本語レベルがさら

に高くなるず「かな」「おしたう」「よね」を䜿甚し始める。䞭玚の孊習者が䜿甚し始める

「思う」「かもしれない」はNS の䜿甚頻床が高くなく「かな」「おしたう」「よね」より

もその䜿甚が䜎い。「思う」「かもしれない」が䞭玚で䜿甚されるのはこれらが「かな」「お

したう」「よね」よりも構文的に耇雑ではないためその䜿甚が先に珟れるのだず考えられ

る。他方「かな」は「行けないかなず思う」ずいう圢で䜿甚されるこずが倚く同様

に「よね」は「よ」ず「ね」の組み合わせであるため意味・統語的にさらに耇雑化する。

「おしたう」は初玚の孊習項目であるが断りの談話で甚いられるずきは「埅遇性」山

川 2011の機胜の堎合が倚いためその習埗が遅れるのだず考えられる。このようにヘ

ッゞの習埗の順序は発話䞭の䜍眮や統語的な耇雑さずその機胜が関わっおいる。

NS での䜿甚頻床が高いにも関わらず䞊玚でも芳察されなかったヘッゞのうち「いや」

は断りの発話の最初に甚いられ盞手の欲求に応えられないこずを瀺すヘッゞである。

Al-Gahtani and Roever (2018)は䞊玚英語孊習者であっおも英語母語話者がよく䜿甚する “well”の䜿甚が芋られなかったこずを指摘しおいるがこれず「いや」が䞊玚でも芋られな

かった点はよく䌌おいる。本デヌタの孊習者は滞圚歎が 1 ヶ月未満の者で目暙蚀語に関

する瀟䌚化(language socialization) (Schieffelin and Ochs 1984) が進んでいないこずがその芁

因であるず思われる。

4.3 理由の蚀語圢匏 本節は研究課題に぀いお怜蚎する。理由の蚀語圢匏にはカラノデテシず

それらの接続蟞なしの「蚀い切り終助詞」䟋「できたせん」「むずかしいですね」

などが芋られた。図からも明らかなように党䜓的な傟向ずしおは日本語レベルが

䞊がるに぀れノデずテの䜿甚が増える。逆に「蚀い切り終助詞」は次第に枛る。

カラの䜿甚は初玚埌半から䞭玚にかけお䞊昇し䞊玚で枛る。ノダには本デヌタでは倉化

は芋られない。尚理由は人が぀の理由を述べるこずが倚いが䞀人の話者がいく぀

かの理由を述べおいる堎合は各々぀ずしお数えた。 盞手による䜿い分けはNS では比范的はっきり行われおいる図。ノデ栌子は

䞊叞ず先茩に䜿甚されおいるが「友人」ず「芪友」には䜿甚されない。カラ斜めの網掛

けはその逆で「先茩」ぞの䜿甚は倚少あるが「䞊叞」に察しおは䜿甚されおいなかった。

シは友人に察しおのみ䜿甚されおいたがこれは発話の状況による「履修の誘いを断る」

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「ノヌトの貞䞎のお願いを断る」ものであるず掚察される。「甚事があっお」などの䞀般

的な理由ではなく具䜓的な理由を述べなければならなかったためシが出珟したものず考

えられる。日本語胜力別では初玚埌半ず䞭玚では盞手に察する理由衚珟の䜿い分けは

行われおいなかった。初玚図では「蚀い切り終助詞」の割合が䞀番倚く次

いでカラノデ及びノダの順の䜿甚割合になっおいた。尚テによる理由説明は䟋の

みだった。䞭玚図ではカラの䜿甚割合が最も倚く次いで蚀い切り(+終助詞)ノデテノダの順だった。このカラノデテ理由の䜿甚割合の順は垂販の初玚

教科曞の提出順ず笊号しおいる坂野他 2011)など。 䞊玚の理由の衚珟の傟向(図)は初玚ず䞭玚に比べるずカラの䜿甚割合がどの盞手

に察しおも枛少しおおり芪友に察するノデの䜿甚割合が少ないテの䜿甚割合は初玚

ず䞭玚に比べ倚くなっおいるずいう点で NS に近づき぀぀ある。ただし次の点で䞊玚ず

NS は異なる。それはNS ずは違いカラずノデの盞手に察する䜿い分けが䞊玚におい

おも行われおいないこずそしおNS に比べ蚀い切り(終助詞)の䞊玚の䜿甚割合が倚

いこずである。 日本語初玚教科曞にはノデはカラよりも「䞻芳を盞手に抌し付ける印象が少なく控

えめに意向などを衚すのにふさわしい」文化倖囜語専門孊校線著 2000113ずいう蚘述

やノデは話し手の考えを和らげる効果があるので理由を゜フトに蚀うずきに䜿われ

るスリヌ゚ヌネットワヌク 199887ずいった蚀及がある。教垫甚指導曞においおも

同様にカラは䞻芳的ノデはより客芳的ずいった蚘述がなされおいる庵他 2000。しか

し本研究の調査結果で芋られたような状況に応じおどのような衚珟を甚いるかずいった

スピヌチスタむルの点からの蚀及は坂野他(2011273)の「ノデはカラより少しフォヌマ

ルなスタむルである筆者蚳」ずの蚘述があるのみである。ただしこの説明だけでは孊

習者がノデずカラをどのように䜿い分ければいいのか刀断するのは難しい。そこで䞀般

に普通䜓が甚いられる状況では理由を述べるずきにカラの䜿甚が蚱容されるが䞁寧䜓

が甚いられる状況ではカラは䜿甚されずノデが䜿甚されるず説明するほうがより蚀語䜿甚

実態を反映しおいるず思われる6。

6 普通䜓たたは䞁寧䜓が甚いられる状況に぀いおは鈎朚(1997)が詳しい。

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図 理由の蚀語圢匏:NS

NS

図 理由の蚀語圢匏党䜓

0%10%20%30%40%50%60%

ノデ テ

ノダ

カラ シ

蚀い切り

+終助詞

その他

初玚埌半(n=86)

侭箚 (n=149)

侊箚 (n=134)

NS (n=440)0%

20%

40%

60%

80%

100%その他

シ

テ

ノダ

ノデ

カラ

図 理由の蚀語圢匏初玚埌半

0%

20%

40%

60%

80%

100%その他

テ

ノダ

ノデ

カラ

蚀い切り+終助

詞

0%

20%

40%

60%

80%

100%その他

シ

テ

ノダ

ノデ

カラ

蚀い切り+終助詞

図 理由の蚀語圢匏䞭玚

図 理由の蚀語圢匏䞊玚

0%

20%

40%

60%

80%

100% その他

シ

テ

ノダ

ノデ

カラ

蚀い切り+終助詞

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5 たずめず日本語教育ぞの応甚

本研究の分析の結果次の点が明らかになった。 【䞻芁郚のパタヌン】 (1) NS に最も倚いパタヌン「理由→䞍可」は日本語レベルが䞊がるに぀れ倚くなる。 (2) 「䞍可のみ」述べるパタヌンは初玚→NS→䞭玚→䞊玚の順に少なくなる。 【䞻芁郚のヘッゞ】 (3) 日本語レベルが䜎いず「できたせん」「むずかしい」などヘッゞなしの蚀い切りで䞍

可が衚珟されるこずが倚い。しかし日本語レベルが䞊がるに埓い䞻芁郚に珟れるヘッ

ゞの数ず皮類が倚くなる。 (4) ヘッゞの出珟には日本語レベルに応じた順序がある。 (5) NS は䜿甚するが䞊玚になっおも䜿甚されないヘッゞがある。 【理由の衚珟】 (6) 日本語レベルが䞊がるに぀れおノデテの䜿甚が増え逆に蚀い切り終助詞は

次第に枛る。䞀方カラの䜿甚は䞭玚にかけお䞊昇し䞊玚で枛る。 (7) NS に比べ蚀い切り終助詞の䜿甚割合が䞊玚においおも倚い。 (8) カラずノデの盞手に察する䜿い分けは䞊玚においおも行われおいない。 䞻芁郚のパタヌンを芋るず圓該の蚀語行動の目的を効果的に達成するこずず盞手ず

の関係を良奜に保぀ずいう 2 ぀の指向性のうち前者の指向性は初玚の段階から達成され

おいるこずそしお埌者の指向性は蚀語胜力が発達するに぀れお埐々に習埗されるこず

がわかる。同様に前者の圓該の蚀語行動の目的を効果的に達成するこずに関する衚珟は

習埗段階が初期の頃から達成されるのに察し埌者の盞手ずの関係を良奜に保぀こずに関

する衚珟は蚀語胜力が発達するに぀れ埐々に習埗されるこずは䞻芁郚のヘッゞの出珟傟

向にも珟れおいる。぀たりヘッゞの数ず皮類が日本語レベルが䞊がるに埓い増えるずい

うこずはこの蚌巊であるず蚀えよう。 さお䞊述の結果を基にしお日本語教育ぞの瀺唆を考えたい。たず展開パタヌンに

぀いお蚀えば初玚の段階から「理由→䞍可」のパタヌンで緎習するのが肝芁だろう。「䞍

可」のみの堎合盞手ずの関係を良奜に保぀ためにヘッゞも䜿甚しなくおはいけなくなり

難易床が高くなるためである。 ヘッゞに぀いおは初玚から呜題の前や埌に付く比范的䜿甚が簡単なヘッゞ「ちょっ

ず倚分けど」を䜿う緎習をするず共に「思う」や「かもしれない」など掻甚を䌎う

動詞助動詞の䜿甚を積極的に取り入れた緎習をする。䞭玚では「どうしおも」「行き

たいのはやたやたなんですが」「残念ながら」ずいったそうしたいけれどもできない事情

を説明するヘッゞのバリ゚ヌションを増やす。たた「行けないかなず思う」「甚事が

できおしたっお」ずいった衚珟も積極的に緎習する。䞊玚ではNS はよく䜿うが孊習者

には䜿甚されにくいヘッゞ「ぜひできればせっかくいやかな」を䜿うよう促す。 理由の説明は初玚から「蚀い切り終助詞」ではなく理由であるこずを瀺す蚀語圢

匏テノダの䜿甚を促すずいいだろう。そしお初玚ではカラやノデではなくテで緎習

をするず匁解がたしくない理由説明ずなる。䞭玚以降はノデずカラの察話者の䞊䞋によ

る䜿い分けを説明しその緎習を行う。

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6 今埌の課題 今埌の課題ずしおは同様の方法で瞊断研究を行うこずたた断り以倖の蚀語行動に

぀いお孊習者の発話を分析するこずである。

付蚘 本皿は、科孊研究費助成事業・基盀 C「日本語孊習者の留孊における語甚論胜力の習埗に関

する研究」研究代衚者 ボむクマン総子の助成を受けおいる。

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