Download - 大学に おける 電子書籍の 普及可能性を 探る
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京都産業大学
経営学部・金光ゼミ
チーム KKK大学における電子書籍の
普及可能性を探る
楠 康紀 立入 翔平久保田 豊 熊谷 浩明福永 悠紗小森 綾香
2010 日経 BP マーケティング西日本インカレ
2
電子書籍元年?
iPad の日本版発売:「電子書籍元年」と言われる。
出版業界が大きく変動:日本経済新聞でも新聞の電子版を配信開
始。iPad, iPhone 用の日経 BP Store アプリ
の登場
3
わたしたちの問題意識私たちに
も iPhoneが普及してい
るけど、 iPadっ
て何?
大学生にとってまだ電子書籍は遠い存在だけ
ど、いつになったら身近になる
の?
そもそも電子書籍が普及したら私たち学生にどんなメリットがある
の?
5電子書籍を取り巻く出版業界の構図
NTT- docomo
大日本印刷丸善 ジュンク・
堂GALAXY Tab
KDDI au凸版印刷
紀伊国屋書店SONY Reader
SoftBank雑誌メディア
(Google)
Amazon
日経 BP
GALAPAGOS
Apple iPad
1.研究の背景
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Google の動き:電子図書館化
ハーバード大学、スタンフォード大学などと組み図書館の書籍をスキャンし、全世界に公開していた。
来年から始める電子書籍サービス、Google eBooks では、書籍が無料で閲覧可能。購入もできるように。
1.研究の背景
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1.国会図書館の全400万冊もの書籍などを過去、現在、未来の)を全て電子化し保管。2.電子化データの全文検索が可能。3.検索だけでなく、閲覧可能。
図書館外:有料で貸し出す。
知財立国政策の一環
長尾構想:日本版電子図書館化
国会図書館長の長尾真:「公共性の高い事業を Googleのような私企業に任せられない。」
図書館内:無料でデータを貸し出す
1.研究の背景
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教育現場での iPad
• 京都市北区の大谷大学人文情報学科では、 2011 年4月から学生全員無料 iPad を配布し(授業料に含まれる)、情報教育に役立てる。
• 私たちは実際大谷大学主催のセミナーに参加
大学での電子書籍活用に関する詳しい調査の必要性
情報教育での取り組みであり、電子書籍について語っていない。
1.研究の背景
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大学教育の視点から電子書籍に迫る
• 本は大学生に取って欠かすことはできない存在である。
• 学生にとって身近な大学教育の視点から「電子書籍」の普及可能性を調べる。
• 学生、学者の町(人口の 10%)であり本文化の伝統がある京都で調べることの意義は極めて大きい。
われわれは大谷大学のセミナーのほか大垣書店での佐々木俊尚のトーク、京大での電子図書館セミナーなどに積極的
に参加、また本の「自炊」も体験しました。
2.調査の概要
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調査方法と対象者
1 )学生調査:金光先生の授業の受講者247 人回答。 マークシート解答と第 2次の Web 調査も実施。
2 )出版社調査:京都を中心に関西の出版社調査 32社に調査郵送し、 12 社から回答(比較的協力的)。 回答社の分布:回答社の 1社は図書館に強く学術専門書に強い東京の大手。
また大学出版会、参考書出版社も含まれる。 分野は人文科学(歴史、宗教、文芸、教育、京都もの)、社会科学一般、自然科学(化学)
3 )作家調査:金光先生の学会の知り合いに調査を依頼(京都在住者は多いが、関東も半分)。 Web 調査(Mr. アンケート)。回答者数25 人。ネットワーク分析を専門とする横断的研究者が多い。分野は経営、経
済、社会学、情報工学、物理学、国際政治など多彩。
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学生調査1:学生への浸透は?Q. そもそも興味があるか? かなり興味があり、
すでに端末を持っ(注文し)ている
6%
少し興味があり、端末も使ってみたい。買うかも知れ
ない。51%
聞いたことはあるが、あまり興味がない。買わない。
41%
電子書籍の存在すらほとんど知らなかっ
た1%
学生の 2 人に 1 人が興味を示している。
3.調査結果
18学生調査結果2:学生の好み
Q. どんな電子書籍リーダーをいくらで買うか?
Q. 同価格の場合、どのブランドのリーダーを選ぶか?
1万円以下で電子書籍リーダー機能のみ(書籍専用インターネット機能なし)
20%
1~2万円で電子書籍リーダー機能のみ(書籍専用インターネット機能あり)
28%
2~3万円で電子書籍リーダー機能+
α(汎用のインターネット機能あり)
30%
3~4.5万円で小型パソコン並の機能(ただし iPad
ではない)8%
5~7万円で多種多様なアプリも豊富な小型パソコン並の機能=Apple iPad
14%
低、中機能機種が人気
Apple38%
Amazon
7%
SONY38%
SHARP13%
TOSHIBA3%
サムスン=SAMUSUNG
1%
Kindle は不人気
サムスンも不人気
iPhoneユーザー
1割
3.調査結果
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Q. 普段=現在は Q . 電子書籍になったら
学生調査結果3:電子書籍で教科書購入はどう変わるか?
全く買わない5%
試験やレポートに出る時だけ買う44%
高い教科書は買わないが、ほとんど買う39%
どんな場合でも買う11% それでも全く
買わないだろう3%
選別はするが、買う場合が増える
だろう67%
よほど高い教科書だけ買わない
が、ほとんど買うようになるだろ
う23%
すべて買うようになるだろ
う7%
教科書を今より買うようになる
学生のほとんどが教科書を手にする
3.調査結果
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電子教科書を買うようになる理由を探る
審査員コメントを受けて急遽追加web 調査を行い、今よりも教科書を買うようになる理由を探りました。
典型的な回答:「 重い教科書を何冊も持つよりも 電子書籍で持っていた方が荷物が減って楽だから。 しかし、書き込みをするような教科書の場合には電子版教科書は買わないと思う。 」
学生ニーズのために紙媒体の良さもいかせる出版モデルが必
要!
実際は書き込める
3.調査結果
21
学生調査結果4:教科書以外で購入したい本は?
本の価格が半分になるとした場合 複数回答、3つまで選択
マンガファッション雑誌
スポーツ雑誌小説
パソコンなど趣味の雑誌
グルメ・タウン誌勉強(語学など)
あるテーマの入門・図解本
専門書・教養書
その他専門的でない一般の本
0 20 40 60 80 100 120 140128131
65100
5559
9028
3414
娯楽雑誌系を好む
少ない学習系
3.調査結果
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学生調査結果5:決済と購入金額は?
コンビニなどでの決
済74%
iTunesカードのようなプリペイドカード15%
電子図書券2%
親名義のクレジットカード
9%
○クレジット以外の決済方式○教科書を除き、月にいくらまでなら電子書籍を購入できるか?
1000円以内
23%
1000~3000円以
内55%
3000~
5000円以内
18%
5000~ 7000円以内
3%
7000~ 1 万円1%
3.調査結果
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すでに電子書籍をいくつか出版している。
すでに出版している会社の後を追って電子書籍を出版する準備をすでに整えてい
る。
他の企業の動向をにらみながら将来の電子書籍化に向けて社内で研究している。
将来が不確定な状況で、出版協会などの集まりだけは参加している
電子書籍化は全く考えていない
0 1 2 3 4 5 6
出版社調査結果1:電子書籍への取り組み3.調査結果
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出版社調査結果2:メリットは?
印刷コストの削減
編集の手間の削減
出版社知名度の向上
拡大活字による老年読者層の取り込み
電子ものに強い若年層の取り込み
価格低下による売上増
動画など電子書籍固有の新企画
全国市場での販路拡大
世界市場での販路拡大
絶版書データの再活用
知的財産としての版権の維持・獲得印刷出版との相乗効果
図書館への納入拡大
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
3.調査結果
25
出版社調査結果3:問題点は?
価格決定権が他に移ること
印刷・取次との関係弱体化
編集過程の変容
IT 企業など他業界との競争の激化
芸術作品としての本の価値の衰退
再販制度の衰退・廃止の可能性が高まること
電子書籍人材育成の困難性
電子書籍特有の企画を余儀なくされること
多種類の電子書籍端末への対応
0 1 2 3 4 5 6 7
複数回答、4つまで選択
3.調査結果
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出版社調査結果5:電子書籍が印刷書籍の売上高を上回るのは?
2015 年頃
2020 年頃
2025 年頃
2030 年頃
2050 年以降
0
1
2
3
4
5
6 遅い時期を予測
3.調査結果
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出版社調査結果6:どの端末が主導権を握るか?
iPad(Apple)
Kindle(Amazon)
ソニー・リーダー(SONY)
ガラパゴス (SHARP)
フォリオ (東芝 )
その他のアンドロイド製品
どれでもない
0 1 2 3 4 5 6 7
自然科学系
東京大手
Kindle を評価
Android製品を待ち望
む
3.調査結果
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出版社調査結果7:大学教科書の電子化は?
先陣を切って積極的に取り組みたい
先陣を切った出版社があればすぐに取り組みたい
取り組む出版社がそれなりになったら取り組みたい
他の出版社の多くが取り組みだしたら取り組まざるを得ない
全く取り組むつもりはない
0 1 2 3 4 5 6
3.調査結果
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出版社調査結果8:どのように大学教科書を電子化するか?
自社に電子出版部のようなものを設け、取り組む
電子出版技術を持った他社と提携して独自に電子書籍に取り組む
同業他社と提携しながらコンソーシアムのような形で電子書籍に取り組む
学生、大学、研究者=作家を交えた学術コンソーシアムのような形で電子書籍に取り組む
0 1 2 3 4 5 6 7
他社頼み
3.調査結果
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出版社調査結果9:出版社の役割は?(自由回答を分類)
特になし
編集力・企画力
コンテンツの信用保証
宣伝などのエージェント
権利関係の処理代講
ブランド力
資金の投入
著者・執筆者の組織化
0 1 2 3 4 5 6 7 8
編集・企画力に大きな自信
3.調査結果
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作家調査結果1
1)購入していない84%
2)1冊~5冊8%
3)5 冊~ 10
冊4% 4)10 ~ 20 冊
4%
1) すでに持ってい
る(すでに注文
した)33%
2)持っていないが、いろいろ情報を集め購入を検討して
いる。13%
3) まだ時期尚
早で、周りの人が半分くらい持ち出したら購入を検討する。42%
4) 興味もないし、購入もしないだろ
う。13%
Q.端末の所有状況は?
Q. 電子書籍の購入状況は?
電子書籍を購入していない学者
が多い
2/3 が非所有
3.調査結果
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作家調査結果3:(純粋な)研究書を電子書籍として出版することについて
電子出版では業績としての評価が低いので、紙の本
の出版にこだわりたい。8%
紙の本の出版はもちろん大事だが、近い将来研究書の電子出版化は避けられず、電子出版も同時に出してみ
たい。76%
よく分からない。動きを見守りた
い。16%
3/4以上が将来の電子書籍化に興味を示す
3.調査結果
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理想とする配分 現実的な配分
作家調査結果4:利益配分の理想と「現実」
1) 著者 2 :出版社(代理店) 8
2) 著者 3 :出版社(代理店) 7
3) 著者 4 :出版社(代理店) 6
4) 著者 5 :出版社(代理店) 5
5) 著者 6 :出版社(代理店) 4
6) 著者 7 :出版社(代理店) 3
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
1) 著者 2 :出版社(代理店) 8
2) 著者 3 :出版社(代理店) 7
3) 著者 4 :出版社(代理店) 6
4) 著者 5 :出版社(代理店) 5
5) 著者 6 :出版社(代理店) 4
6) 著者 7 :出版社(代理店) 3
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
理想は高く
現実は厳しく
3.調査結果
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理想 「現実」
作家調査6:出版モデルの理想と現実
一般出版社モデル24%
大学出版会代理店モデル
16%教科書出版代理店モデル
32%
純粋電子代理店モデル
16%
電子図書館モデル12% 一般出版社モ
デル33%
教科書出版代理店モデル
25%
純粋電子代理店モデル
38%
電子図書館モデル4%
3.調査結果
38学生にとっての電子書籍
学生の選好は細かく、厳しい(若者消費の特徴)。出版社はこれをほとんど意識していない(端末メーカーも同じ。)学生は高機能機種を必ずしも欲していない。
学生に電子書籍を普及するためには紙媒体とのセット販売は重要かもしれない?(日経新聞型)
学生にとっては教科書代が最も安上がりな電子図書館モデルが有利
大学出版会代理店モデル、教科書出版代理店モデルにもメリット
4.考察:電子書籍はどのように普及していくのか
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作家と出版社の認識比較:大きなズレ
作家 VS 出版社2020 年までを予想
普及の時期 2025 年以降を予想
6:4 程度を希望 利益配分 2 : 8 程度を希望
大学出版モデルを理想とする
出版モデル 一般出版社モデル
iPad が圧倒的 主導端末 Kindle 、 Android
4.考察:電子書籍はどのように普及していくのか
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電子書籍普及の予測のための視座
大学教員にとって作家としては純粋代理店モデルが最も有利大学教員としては大学出版会モデルが理想
出版社にとって一般出版社モデルが最も有利。
1.作家と出版社の利益対立 2.作家の理想と現実とのズレ
4.考察:電子書籍はどのように普及していくのか
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出版モデルの分類
大学出版会代理店モデル
純粋電子代理店モデル
教科書出版代理店モデル
電子図書館モデル
一般出版社モデル
理想
現実
作家有利 出版社有利
シナ
リオ
1
シナリオ2
シナリオ 3
42
3つのシナリオ
シナリオ 1
大学出版会代理店( 電子図書館 )モデ
ルの進化が挫折↓
作家有利な状況↓
純粋電子代理店モデルが普及
シナリオ 2
大学出版会代理店( 電子図書館 )モデ
ルの進化が挫折↓
出版社有利な状況↓
一般出版社モデルが普及
シナリオ 3(京都モデ
ル?)教科書出版代理店モデルの進化
↓作家と代理店の利害調整の成功
↓教科書出版代理店モデルの普及
4.考察:電子書籍はどのように普及していくのか