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Page 1: 02 11 FromNTT22 NTT技術ジャーナル 2012.2 「Arcstar Unified Communications Services」とは 企業のグローバル化が加速するのに伴い,国際音声通信 市場は著しい伸びを示しています.NTTコミュニケーショ

NTT技術ジャーナル 2012.222

「Arcstar Unified CommunicationsServices」とは

企業のグローバル化が加速するのに伴い,国際音声通信

市場は著しい伸びを示しています.NTTコミュニケーショ

ンズは,こうしたマーケット環境の変化をとらえ,グロー

バルにビジネス展開する企業向けに,国内で提供していた

VoIP(Voice over Internet Protocol)サービスをベー

スとした各種コミュニケーションサービスをワールドワイ

ドに提供する「Arcstar Unified Communications

Services」を展開しています(図1).

ここではArcstar Unified Communications Services

の4つのプランの特徴と構成技術について解説します.

Extensionプラン(拠点間内線通信サービス)

これまで海外との音声通話は,従量料金制の外線接続しか

できませんでしたが,Extensionプランは,日本国内で提

供中のVoIPサービスと組み合わせることで,国内外で内線

通話や海外拠点間の内線接続ができるようになり,海外拠

点間の通話料金の定額制を実現しました.Extensionプラ

ンを実現するために,NTTコミュニケーションズのVoIP基

盤網(VoIP網)とArcstar Universal Oneとの接続装置と

して,転送ゲートウェイ(転送GW)を配備しました.この

特徴的な機能として,以下2つの変換機能が挙げられます.

(1) コーデック変換

Arcstar Universal OneとVoIP網とは,各国のブロード

バンド普及事情や自社で有するバックボーン帯域の差異に

より,使用しているコーデックが異なっています.具体的

には,Arcstar Universal OneではG.729を,VoIP網で

はG.711を使用しています.転送GWは,それら異なるコー

デックのトランスコード技術を活用して,コーデックの差

異を吸収しています.

(2) ニックネーム変換

発着信国が異なっていても,シームレスな内線電話環境

を実現するために,転送GWではNicknameと050番号を

変換する技術を活用して,拠点間の内線通話の呼接続時に

その変換を行うことで,国内外拠点との内線通話を実現し

ています.

SIP Trunkingプラン(低価格な外線通信サービス)

お客さまの海外拠点から,Arcstar Universal Oneを介

して,世界各国から低価格な外線通信を利用可能にしまし

た.前述のExtensionプラン,後述のUCaaSプランと併せ

てご利用いただくことにより,内線・外線の双方でお客さ

まのグローバルビジネス展開を強力にサポートします.

SIP(Session Initiation Protocol)Trunkingプラン

は,ITSP(IP電話サービス事業者)間接続とユーザ接続の

差分を吸収するためSBC(Session Border Controller)

と呼ばれる装置を使用しています(図2).SBCはSIP-SIP

の差分吸収やSIP-H.323のプロトコル変換,および音声用

コーデックの変換機能を提供しています.また,ITSP間接

続については,ソフトスイッチと連携することで,発信

グローバルでシームレスなオフィスコミュニケーションを実現する「Arcstar Unified Communications Services」

from NTTコミュニケーションズ

企業のグローバル展開が加速するのに伴い,電話やメール,ビデオ・Web会議といったコミュニケーションツールをグローバルでシームレスな環境で利用するニーズが高まっています.「Arcstar Unified Communications Services」は,NTTコミュニケーションズの「Arcstar Universal One」等のネットワークサービスを利用して,内線・外線のボイスサービスやWeb会議,メッセージング機能,コンタクトセンター機能など多彩なオフィスコミュニケーションサービスを,国内外シームレスに展開することで,利便性と生産性の向上を図り,お客さまのビジネスをより一層支援するサービスです.

図1 Arcstar Unified Communications Servicesの全体像

オンプレミス

拠点間内線通信サービス Extensionプラン

クラウド

コンタクト センター

ボイス

ユニファイド・ コミュニケーション

低価格な外線通信サービス SIP Trunkingプラン

クラウド型コンタクトセンターサービス Contact Centerプラン

クラウド型コミュニケーション基盤 UCaaSプラン

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ユーザや着信電話番号に基づく重み付けルーティングや

バックアップルーティングを可能とし,一方,ユーザ接続

においては,VLANを用いてユーザを識別することで,

Arcstar Universal Oneとの接続を実現しています.

UCaaSプラン(クラウド型コミュニケーション基盤)

UCaaS(Unified Communications as a Service)

プランは「クラウドによる統合されたワークスペースの提

供」をコンセプトに,音声・会議・データ通信の統合,

利用ユーザ数単位の課金体系,キャリアグレードの設備に

よる高信頼性を実現したサービスです.ネットワークサー

ビス(Arcstar Universal One)からお客さま端末

(VoIP-GW等)まで,NTTコミュニケーションズが一元提

供するため,音声およびデータ通信の統合に伴う構築作業

や通信機器の運用・保守にかかわる稼動を同時に軽減でき

ます.また,海外のどの地域でも,世界同一の業務環境を

実現できます.例えば海外拠点を立ち上げる際に,本社で

利用しているサービスとほぼ同じ環境を迅速かつ安価に導

入することが可能となります.さらに,「内勤型」「オフィ

ス内移動型」「出張型」「外勤型」といったシチュエーショ

ンごとに必要な機能を提供し,かつスマートフォンの活用

など,業態や職種ごとに異なるワークスタイルに合わせて,

必要な定型メニューを用意しています.これらを組み合わ

せることで,必要な機能を必要なときに,各拠点のサイズ

に合わせて利用することが可能です(図3).

UCaaSプランのアーキテクチャを構成するコンポーネン

ト群を図4に示します.この中で特徴的なのは,サーバベン

ダとストレージベンダの協業スキームにより認定された信頼

性の高いマルチベンダプラットフォームをパッケージ化して

活用している点です.UCaaSのアプリケーションをインス

トールする仮想化サーバとそれらを収容するブレードサーバ

群,データセンター内の機器・配線を効率的に接続するネッ

トワーク機器,お客さまのデータ等やアプリケーションを保

管するストレージとSAN(Strage Area Network)をマル

チベンダ環境で統合し,最適化を図ります.そのうえで十

分な検証を実施し,キャリアグレードの信頼性を確立して

います.以上を活用することにより,UCaaSプランの迅速

な導入とお客さまの規模・利用アプリケーションの増減に

よる拡張性が容易になり,UCaaSプランのコンセプトであ

る「リソースの仮想化・共有化・最適化」を実現しています.

図2 SIP Trunkingのネットワーク構成と主要機能

海外ITSP (SIP)

海外ITSP (H.323)

SIP⇔SIPの差分吸収

ITSP認証 トラフィックルーティング

CDR生成

SIP⇔H.323の プロトコル相互変換

名 称 主要機能

SBC・ SignalingおよびRTPの中継 ・ SIPの差分吸収 ・プロトコル相互変換(SIPおよびH.323)

ソフトスイッチ ・ Ingress ITSPの認証 ・トラフィックルーティング ・ CDRデータ生成

VLANおよび仮想インタフェース によるユーザ識別

UCaaSプラン ユーザ

Extensionプラン ユーザ

Global IP Network (GIN)

ソフトスイッチ

SBC

Arcstar Universal One

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Contact Centerプラン(クラウド型コンタクトセンター)

Contact Centerプランは,コンタクトセンター業務に

必要な機能となるPBX(構内交換機),IVR(音声自動応答),

ACD(自動着信呼分配),通話録音,コールフロー作成な

どの機能を,クラウド型で提供するコンタクトセンターサー

ビスです.コール数の変動やビジネス規模の変化に応じて,

席数増減などの柔軟な対応が可能となっています.また,

システムの冗長化と24時間365日の監視体制によって高

い信頼性を確保し,お客さまのビジネス継続に重点を置い

てサービスを提供しています(図5).

コンタクトセンターにはあらゆる問合せの電話が飛び込

んできます.内容はさまざまですが,お客さまからの注文

や故障の問合せのような重要な電話が多く,クラウド型コ

ンタクトセンターシステムには「常につながる信頼性」が

要求されます.信頼性技術としては「機能分散」と「冗長

構成」があります(図6).

機能分散は,呼処理,コールフロー,レポート,ソフト

フォン,通話録音の各種機能部を,物理的に別々のサーバ

筐体に分散し,故障発生時にも故障影響を局所化するよう

機能配備しています.

すべての機能部は冗長構成になっており,3種の冗長技術

NTTコミュニケーションズ

APP OS

APP OS

APP OS

APP OS

ESXi ESXi

図4 UCaaSプランのコンポーネント群

仮想化サーバ(仮想化アプリケーション) 仮想化サーバ(仮想化アプリケーション) 仮想化サーバ(仮想化アプリケーション)

ブレードサーバ群

ネットワーク機器

SAN

ストレージ

・・・

・・・

図3 UCaaSプランのサービスイメージ

ワークスタイルに合わせ,ID単位でご利用可能

オフィス内移動型 外勤型

ワークスタイル

定型メニュー

エントリーボイス

ビジネスボイス

アドバンスビジネス

アドバンスプロフェッショナル

アドバンスコラボレーション

機能

モビリティ

主に社内の自席で仕事をする人

主に社内の異なる場所や複数のオフィスで仕事をする人

主に社内と出張先の両方で仕事をする人

主に一日中外回りなどの仕事をする人

内勤型 出張型

from

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を用いています.

① 呼処理とコールフローの連携では,独自の技術で各

機能部が正常または異常の状態遷移を把握し,故障時

にも常に正常系を利用するようにコンタクトセンター

の利用形態に合わせた最適な動作を実現しています.

② レポート閲覧やカスタマコントロール画面操作では

ロードバランサを用いてサーバを振り分けています.

③ 状態遷移データや通話録音データは,メモリやデータ

ベースを高可用性クラスタ技術でACT系SBY系を同期

させて運用して,高い稼働率を確保しています.

今後の展開

Arcstar Unified Communications Servicesは,NTT

グループ初のグローバル音声プラットフォームとして,

2010年12月からExtensionプランを皮切りに提供開始し

ました.今後も,技術革新やお客さまニーズ,マーケット

環境の変化に柔軟に対応するプロダクトとして,継続的な

開発を続けていきます(写真).

◆問い合わせ先NTTコミュニケーションズボイス&ビデオコミュニケーションサービス部TEL 03-6700-9036FAX 03-3581-5036E-mail arcstar-ucs-vv ntt.com

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エンドユーザ データセンター

コンタクトセンター プラットフォーム

コールセンター

図5 Contact Centerプランのサービスイメージ

Arcstar Universal One

VoIP

PSTN

国内拠点

海外拠点

コールセンターには端末とネット ワークを準備.PBXは不要.

フリーダイヤル等

PBX ACD

カスタマコントロール

API

CTI

IVR 録音

図6 機能分散と冗長構成技術

コールフロー コールフロー

①状態遷移連携  独自技術

呼処理 呼処理

ソフトフォン ソフトフォン

通話録音 通話録音

レポート処理 レポート処理

各機能部の 状態管理

各機能部の 状態管理

各種機能部を サーバ筺体に分散

③高可容性クラス技術 ②ロードバランス技術

データベース ACT

SBY

レポート閲覧

レポート閲覧

ロードバランサ

ロードバランサ

写真 開発コアメンバ


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