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08 応用行動分析その 10
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第 10回:行動的 QOL: ●「生活の質」は定量化できるか?
●「人権」は定量化できるか?
●「権利のボトムアップ」 支援の担い手は誰?
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Choice option 1
Choice option 2
Rejection
共通ミッション:「(正の強化で維持される 行動の選択肢の拡大」
Rejection選択肢によって能力の有無によらずそれは可能
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QOL(Quality of Life)とは何か?
ADL vs. QOL
●特定の個人によって選択された行動内容が満たされているか?
●特定の個人に“聴いてみないとわからない”行動の選択を満たしているか?
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ノーマリゼーション、QOL、行動的観点からの見直し
2.環境的QOL:“規範的”な意味でのノーマル な設定を含んだ物理的・社会的環境設定による
1.主観的QOL:本人の主観的満足度による
3.行動的QOL:正の強化で維持される行動の選択肢の数による →本人の選択(評価)
望月( 2001)「行動的QOL」、行動医学研究、 6, 1, 8-17.
実は行動分析学からのアプローチもあり
5重度の障害のある個人の Happinessの指標
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最も高い(あるいは低い) Preferenceを示した刺激を呈示した場合:
Happiness and Unhappiness
の行動的反応がどう現れるか?
2つのパターンあり
●好きなものでうれしい顔●好きでないものに「つまらん顔」
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客観的指標として通用する?
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Happinessはコントロールできるのか?
行動選択肢を置くことで、幸福指標が増大している。
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好きなものが示された場合には Happyな反応
嫌いなものが示された場合には Unhappyな反応・表情などを見ていれば happyであると言える(?)
・表情は独立に shapingできる
→主観的な指標にのみ頼っていてはダメ
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2.環境的 QOL
生活環境が、一定の社会水準に匹敵するものがある?
・個室がありますか?
・壁紙は新しいですか?
・個人で使える電話はありますか?
一定水準は確保されるが、個人の問題が消えてしまう →ではまた主観的 QOLに逆戻り?
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3.行動的 QOL
・各個人が、正の強化で維持される行動の選択肢がどれほどあるか。
これは、
「個人の行動」(環境との相互作用)を生活(人生= Life) の基本ユニットとして捉える。 ( get vs given)望月昭( 2001 )行動的 QOL :
「行動的健康」へのプロアクティブな援助、 行動医学研究、 6(1) 、 8 ~ 17 、 http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/qol.pdf
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行動的QOLの考え方の特徴とメリット
1)本人の評価(選択)であり環境的要素も同時に併せ持つ2)障害の軽重にかかわらず達成が可能である
3)どのような環境設定の中からでもその改善を計ることができる4)定量化できる(選択肢の数の変化)
問題点:「選択」のみが目的化される恐れもある★「選択肢拡大」について外部的チェック必要
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図1)-8 選択箱に設定された新しい選択肢の累積
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10
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20
25
30
1997/12/13
1998/1/13
1998/2/13
1998/3/13
1998/4/13
1998/5/13
1998/6/13
1998/7/13
1998/8/13
1998/9/13
1998/10/13
1998/11/13
1998/12/13
日付
個数
雑誌/服/毛布靴
りんご
色紙/コップ/おもちゃ
針金 紙袋 ブロックパンフレット
スーパーボール鍵盤/バス/犬のおもちゃ/ラッパ
おもちゃ箱/ひも/段ボールの空箱/台車ラップの芯/ハサミ
プラスチックの玩具
ある居住施設で提供された選択肢
望月・渡部・野崎・小野・織田( 1998 )から
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行動的 QOL の3つの段階(ステップ) (施設の食制度を例に)
1st Stage :正の強化で維持されるが選択できない
「うちの施設では食材に『秀』ランクを使用」
2nd Stage: 提供された選択肢の中から選択「選択メニューから選択できる」
3rd Stage: 既存の選択肢から外れた要求ができる 「何か別の(甘い)ものが食べたい」
( Something new /sweet )既存選択肢の否定:新しい強化子の探索 POP!
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「自己決定」は選択肢をおけばできるというものではない
• 既に紹介した、 Goldiamong の定義にあるように、「選択肢の内容そのもので選ぶこと」を担保した選択機会を設定する。
• そのひとつの方法として、示された選択肢を否定できる行動(選択)機会と、その選択肢を選択する行動レパートリーを教授する必要がある。
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選択反応に分化あり: 「好み」を表明した。
Parsons , M. B., & Reid, D. H., (1990)Assessing food preferences among persons with profound mental retardation. Journal of Applied Behavior Analysis, 23, 183-195.
最重度の障害のある成人に食べ物の好みを表明させることができるか?
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Parsons & Reid (1990)
の実験を、日本の施設で追試してみると・・
重複障害のある施設利用者(成人)の選択結果
望月・野崎( 2001 )
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軽い知的障害のある施設利用者の結果
同年齢の職員の場合
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なぜ交替反応が出てしまうか?
●指示的な社会的関係から?
対象者「本当に好きな方をとってもいいの?」
選択行動(自己決定)を「復活」させる設定は?
その援助設定:「自己決定」の援助設定1)「否定選択肢つきメニュー」2)お金
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実験設定1:否定選択肢つきメニュー
Choice option 1
Choice option 2
Rejection
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否定選択肢つきメニューを長期間使用したら、人間関係が変化する?(自由に選択できる?)
→だめじゃん (同じ選択状況であればやはり交替反応が出てしまった)
●否定選択肢のメニュー(という援助設定)がある場合には、様々な選択反応が示される。
→ 「それがある時には」自己決定が可能になる という環境設定がある!?
実験設定 1) 否定選択肢つきメニュー
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実験設定2:消費(交換)設定
自分の「仕事」で得た金銭を、選択場面で物品との交換に使用する
消費経験( 6 ヶ月)の経験:「学習訓練」の場で、お金を稼ぐ。
そのお金で売店や自販で買い物をする。
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お金を稼ぐ
お金の使用を6ヶ月経験した後で、選択場面に戻る
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濃いメッシュ: お金を使う
選択あり
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1)「自己決定」 (自由に選択する )の困難さは、障害の軽重とは関係なく、社会的関係や選択設定の方法で生じる可能性がある
2)「否定選択肢メニュー」あるいは 「お金」という設定: ある「社会的関係」が既にあっても、 “それがある場合には「自由に」選べる”( 他者とは関係なく「自由」に要求できる )という援助設定を見つけられる場合がある
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“ それがある場合には「自由に」選べる”(他者との関係ではなく「自由」に要求/交換できる ) という設定
→「公正交換指標」 ( Fair Exchanger Marker )(注意:ここだけの造語です。社会的に authorizeされたものではないす)
→その設定と効果を確認することで、当該個人の「権利(人権!?)」を定量化できる。 行動的 QOLの測定に対応:選択肢の否定を伴う 選択行動が「それがある場合」には可能となる
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「人権」はどのように保障されるか
• 1) ルールか?• 2) 意識か?• 3) 行動か?
「自己決定という社会行動を基本ユニットとした人権の行動的ボトムアップ」という発想
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「社会形成フィクション」「人間」であること:・・・譲渡や交換が、ようするに交易が可能であれば、われわれは火星人でも「人間」であると定義して、少しも不都合だと思わないだろう(笠井潔、 1995, p.101 )
交易(交換)という具体的な関係が、相互に「人間であること(人権)」を保証する
具体的社会的行動から人権が発生(権利のボトムアップ)
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フランス人権宣言「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する」
世界人権宣言「すべての人間は、生まれながら自由で、尊厳と権利について平等である」
ルール(契約)による人権の保障
(トップダウンの権利要求)
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●理念や思想として,自己決定(自由)を問題にするのではなく,
●人間関係の問題として,これを操作するのでもなく(トータルな人間関係を作る、あるいは変えるという意味ではなく)
●その時々に(“今”)、「自己決定」(=他者の存在や指示ではなく,選択肢の内容そのものから選択する)という「行動」を生み出す具体的な設定を環境に布置していく
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消費者モデル( consumer model )
消費あるいは「交換」(否定も可能な選択)という具体的な行動を通じた対等な人間関係の創出をはかっていく
人権があるから「消費者」としての権利がある
ではなくて・・・・
昔から言われていることですが・・・
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「社会的援助関係」 のひとつとして福祉や教育の文脈からではなく、権利発生を後押しした別個の援助者が存在する
具体的行動随伴性からの「権利」の発生●施設において選択メニューをスタートさせたのは?
心理職、福祉職? (野崎・望月 ,1993)
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/other/aichi_col/z01/z01020/z0102001.htm● スーパーマーケットで、補助具を使った支払いを、容認、 援助してくれたのは?(赤根 ,1995)●バス通学を見守り支援してくれた人は?(渡部匡隆 , )
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自己決定を基本とした「人権」を保証していくことをノーマリゼーションの実現と考え、それを「今」、実現するためには・・・・
教育・福祉・心理という文脈から
つまり、 Human Servicesというより
より単純な、Service という文脈や 方法を追求すべきかもしれない?
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援助( Service)の基本的機能として
●「知ること」と「援助すること」の違い「デニーズへようこそお客様の平均年収は?」
●「人権」の基本的ユニット
「この商品は、最近若い方に人気ですよ」「地域の住人に心理テストをして未然に 心の病の発現を予防しよう」
対等な「交換」
否定選択肢つきの選択機会の意味 3)
●障害( impairment)の軽重にかかわりな く「援助つきの行動」を保証すること
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被援助者を、「神様」でも「子ども」でもなく、特定のサービスの消費と提供という限定された関係の中で過不足なく援助していくにはどのような設定が必要か?
援助の基本的スタンス
→ベテルの家 ?
→ビッグ・イシュー ?
→FSJG ?
→学生ジョブコーチ ?
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「浦河ベテルの家」
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VTR ベリー・オーディリー・ピープル(第 6 巻)
1)「非」援助論でいう「非」とは何をさすか
2)この集団では「障害」をどのようにとらえているか
3)行動分析学的な用語でこの実践を表現するとどのように表現できるか.
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参考文献 今回の授業の望月らによる研究は、
●望月昭・野崎和子( 2001) 「障害と言語行動:徹底的行動主義と福祉」.浅野・山本(編)「ことばと行動」、ブレーン出版、第 10章 , 213-235.
簡便版は●望月昭・野崎和子( 1988-1999)「講座コミュニケーション指導・再考」( 10回連載月刊実践障害児教育 , 以上の後半
http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/14-Mochizuki(1998-1999).pdf