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2015年
アニュアルレポート
九州大学大学院
総合理工学研究院
浜本研究室
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シリカハイメサ導波路を用いた気体濃度計測
李雯穎 外薗裕仁 榎並翔太 姜海松 浜本貴一
高齢社会において小型の健康診断システムへの期待が増加している。人間の呼気には様々な疾
患に関する情報を含み、患部を切開せずにリアルタイムでの呼気診断が可能であるため、日常的
な健康診断のための小型呼気センサーが求め
らている。ハイメサ導波路は、コアを伝搬す
る光が気体と接触し、測定できる構造である
ため、気体計測に使われており、小型呼気セ
ンシングシステムを実現することが可能であ
る[1-2]。私たちは 4.5cm のシリカハイメサ導波
路を用いた CO2度測定の実現に成功した[3]。
図 1は濃度を 40%~80%に変化させたCO2を
測定した結果である。この図より、パルスの
光強度は CO2 濃度が増加するほど速く減少す
る。つまり、シリカハイメサ導波路を用いた
CO2 濃度の検知を実際に行えることを示して
いる。CO2濃度は、CO2がある場合とない場合のリングダウン時間[3]の差を用いることで評価され
る。図 2は、CO2がない場合(b)と濃度 40%の場合(b)の測定結果を示している。CO2がない場合と
濃度 40%の場合のリングダウン時間 5.95μs と 5.74μs を用いると、CO2濃度は 39%と評価される。
他の濃度のリングダウン時間および評価結果を表 1に示す。全ての場合において 2%以内の精度で
測定された。
表 1 シリカハイメサ導波路を用いた CO2測定結果とリングダウン時間
CO2 濃度[%] 測定結果 [%] リングダウン時間 [μs]
CO2なし CO2あり
70 70 11.38 9.47
60 58 10.05 8.93
50 51 16.46 14.28
40 39 5.95 5.75
参考文献
[1] A. Wilk et al., Vol. 402, Issue 1, pp. 397-404, 2012
[2] S. Yano et al., Con. Proc. IPNRA, IWA7, 2007.
[3] H. Hokazono et al., IEICE Electronics Express, Vol. 12, No. 15, pp. 1-8, 201.
1
0.8
0.6
0.4
0.2
00 5 15 20
時間 [μs]
光強度
[a.u
.]
10
(a)
5.95μs
1/e 1
0.8
0.6
0.4
0
0.2
光強度
[a
.u.]
0 5 15 20 10
5.74μs
(b)
1/e
時間 [μs]
図 2 40% CO2 リングダウン波形. (a) CO2なし (b) With CO2あり
光強度
[a
.u.]
0
0.8
0.6
0.4
0.2
0 10 20 15 5 時間 [μs]
図 1 CO2 (40-80%)の計測結果
CO240%
CO250%
CO260%
CO270%
CO280%
1
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Ou
tpu
t p
ow
er [
dB
m]
-10
-20
-30
-40
-50
-60
1555 1556 1557 1558 1559
Fig. 1. Optical spectrum Wavelength [nm]
-60
-50
-40
-30
-20
-10
1555.8 1555.9 1556 1556.1 1556.2
1555.8 1556 1556.1
-10
-40 ~0.12 nm
0 5 10 15 20
Sm
all
sig
nal
res
po
nse
[d
B]
150 mA
Frequency [GHz]
Fig. 2. Small signal frequency response
15
10
5
0
-5
-10
170 mA Calculate
アクティブ MMI-LDによるフォトン・フォトン
共振の理論的モデル化
洪 秉宙 北野 拓也 姜 海松 浜本 貴一
フォトン・フォトン共振(Photon-photon resonance : PPR)現象の利用による高速変調動作を実現する
試みが多数行われている[1, 2]。アクティブMultimode interferometer laser diode(アクティブMMI
LD)による PPRが確認されてきたが[2]、アクティブMMI-LD による PPRの解明とモデル化はまだ
十分ではなかった。その中でも非対称アクティブMMI-LD は周波数応答での高周波数領域の PPR
現象を発現するための有用な候補である。PPRを発現する条件は、まず 2つのモードが密接に近
づいていることが挙げられる。アクティブMMI-LD ではキャビティ内に様々なモードが存在し互
いに干渉し合うため、出力ポートでのモードの差異が実際にアクティブMMI-LD による PPR現象
を引き起こす。しかしながら、これまでのアクティブ MMI-LD の分析や小信号伝達関数にはアク
ティブMMI-LD 内での PPR 現象が含まれていなかったため、変数として縦方向の閉じ込め係数を
取り扱うことにより、修正されたレート方程式のモデルは以下の様にアクティブMMI-LD による
PPRピークを含むものとなる[3, 4]。
𝐻(𝜔) =𝜂𝑖𝑒𝑉
𝛾𝑃𝑁𝛥
+1
𝐼1∫𝑑𝛤𝑧𝑑𝑡
(𝛾𝑁𝑁 + 𝑗𝜔)(𝑁𝑃𝑣𝑔𝑔 + 𝑅𝑠𝑝′ )𝛤𝑥𝑦
𝛥𝑒𝑗𝜔𝑡𝑑𝑡
𝑇
0
我々の設計した素子は波長 1555.95 nmで主モード発振をし、主モードと PPR モードの波長差異で
あるΔλは0.12 nmであった。図1の挿入図は発振ピークと近傍のピークの拡大をしたものである。
上式を用いたことによる小信号周波数応答の計算結果と実験結果を図 2に示す。計算されたキャ
リア・フォトン共振(Carrier-photon resonance : CPR)とフォトン・フォトン共振の周波数はそれぞれ
5.7 GHzと 15 GHzであり、実験値に対し近い値を示している。40 Gbps以上の 3 dB 変調帯域幅を
得るためには、35 GHz 以上の PPR周波数が必要であり、これは 0.3 nmの波長差異に相当する。
これを実現するには、共振に影響するキャビティ長の差異を増加させるため素子の全長を 425 µm
に固定し、変調領域の光子密度を高めるためにMMI幅を 9 µmにした素子設計を行うことが可能
性として挙げられる。
参考文献
[1] P. Bardella et al., IEEE JSTQE, 19, 1077, 2013
[2] M. N. Uddin et al., ECIO-MOC, Th4aR7, 2014
[3] A. Laakso et al., Opt Quant Electron, 42,785, 2011
[4] B. Hong et al., MOC, H66, 2015
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Ge光導波路製作のための CHF3ガスを用いた
ICPによるドライエッチング
アハマッド シャハリン イドリス 姜 海松 浜本 貴一
ゲルマニウムは、レーザダイオードや導波路などの能動および受動光デバイスを実現するため
にシリコンプロセスとの互換性のある材料であることが実証されている[1-2]。導波路のエッチン
グに関しては、シリコンフォトニクス[3]のため正確なエッチングに SF6が広く使用されてきた。
しかし、SF 6 を使用したゲルマニウムのエッチングは導波路の幅を減少させるアンダーカットを
もたらす。
ICP 装置で CHF3ガスを用いアンダーカットの改善と垂直に近い側壁の製作により、Ge 導波路
の幅の高精度なエッチングの研究、報告を行った(MOC 2015, Paper: H23)。
図 1 に ICP 装置を用いた CHF3ガスによる Ge エッチング後の断面図を示す。この図より、Ge
光導波路のコア層の厚さと同じ 190nm のエッチングを確認できた。特に ICP パワー800~1200W
ではアンダーカットが発生していない。
我々は 85°と垂直に近い側壁角と比較的高い選択比(5:1)を製作のため、CHF3 ガスを使用し
Geのドライエッチングを行った。この結果、CHF3のガスを使用することにより Ge光導波路のエ
ッチングに正確な幅の制御をもたらすことが示された。
参考文献
[1] J. Michel et al., OFC/NFOEC, PDP5A.6 (2012).
[2] T. Okomura et al., MOC2015, J4 (2015).
[3] S. Grigoropoulos et al., J. Vac. Sci. Tech., B15, 640 (1997).
(a) (b)
(c) (d)
図. 1. Ge 断面図 ICP power(側壁角 ϴ); (a) 800 W (50), (b) 1000
W (55) (c) 1200 W (85) (d) 1400 W (70)
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光モードスイッチ
リャン・イマンシャ ヒンブル・ルーク 大岩根 寿倫小江 祥太
姜 海松 浜本貴一
我々は、従来の空間光スイッチの空間位置情報をモード情報に置き換え、モード間切り替え動作が実現できる光モードスイッチを世界で初めて提案した。 トレンチ構造導入により一回のドライエッチング工程で pin電流注入構造を実現し、電流注入によるプラズマ効果に基づく屈折率変化により、モード切替え動作を初めて実現した(@60mA, 5.7V)ので報告する。 図 1(a)に試作素子の概略図を示す。光モードスイッチの概略図は図 1(b)に、MMI モードフィルタを図 1(c)に示す。マスク開口幅の違いを利用し、同一基板上であっても異なるエッチングレートが得られることを利用し、1回のエッチング工程で光モードスイッチの導波路形成及び Si 層がわずかに残った位相反転領域を実現させる。このトレンチ pin 構造に p型 Si 領域、純 Si領域、n型 Si 領域の順に Si 層の面方向に沿って電流が流れるような電流注入構造を設け、キャリアプラズマ効果に基づく屈折率変化により、モードの切替えを行う。
試作した素子にλ
=1550n
mの0 次
モード光を入射して電 流注入によるモードの変化について測定し た。図 2 にその結果を示す。注入電流が 42mA に達する時、1 次モードの出力が 0 次モードの出力とほぼ同じとなり、その後急激と変化され、1次モードが 0次モードより 10dB以上の出力があることが確認できた。また、0次モードは注入電流が 58mAの際に出力が最低で、1次モードは注入電流が 62mA の際に出力が最大であることが確認された。これより注入電流が 60mA(5.7V)の時、モード間スイッチング動作が実現され、TEと TM 偏光の依存性がないことが確認できた。
(b) (a)
図 1. デバイス概略図 (a) 試作素子図 (b) 光モードスイッチ (c) MMI モードフィルタ
(a)
(b) (c)
図 2. 電流注入によるモードスイッチング (a)TE モード (b)TM モード
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MMI 導波路構造を用いたモード変換器に関する研究
田邉 和大, 坂田 亮介, 姜 海松, 浜本 貴一
近年の情報通信量の急速な増大を背景に、光伝送容量の大容量化を実現するため、モード分割
多重伝送方式が注目されている[1]。本方式の実現のため、重要な課題の 1 つとして、マルチモー
ド光を発振するモード光源の実現が挙げられる。我々はこれらの中でもマルチモード光源を実現
する手段としてモード変換器の検討および検証を行っている[2-3]。
今回、垂直方向にもMMI導波路構造を用いることにより、垂直方向にもモード変換が可能なモ
ード変換器を提案、製作した。図 1にデバイス構造の概略図、図 2に垂直方向MMI導波路構造の
SEM 画像を記す。デバイス評価としてニアフィールド測定を行った結果、LP01 モードから擬似
LP21 モードへの変換に成功したことを確認した。
参考文献
[1] J. Leuthold, J. Eckner, et. al., JLT, 16(1998)1288-1239
[2] Y. Chaen, K. Tanabe, and Kiichi Hamamoto, MOC, 2013, H8
[3] Y. Chaen, Z. Zhao, Y. Satou, and Kiichi Hamamoto, OECC 2013, TuPL-14
Si
垂直方向
伝搬方向
図 1. 擬似 LP21 モード変換器の概略図
図 図
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0
5
10
15
20
1 2 3 4 5
伝搬損失
[d
B/c
m]
導波路幅 [μm]
通常プロセス
コアエッチング
MMI 型光デバイスにおける過剰損失検討に関する研究
坂田 亮介 田邉 和大 姜海松 浜本 貴一
モード分割多重伝送方式 [1]を実現するためには、高次モード光が必要であり、我々は基本モー
ドを高次モードである LP21 モードへ変換するモード変換器の実現を目標として研究活動を行な
っている。垂直方向のモード拡張を実現するための手法として、段差コア構造を提案し、垂直方
向へのMMI干渉の実現を目指している。この構造の実現には、ドライエッチングによるコア上部
の直接エッチングを行なうため、これは導波路の過剰な損失を引き起こすことが危惧される[2]た
め、この過剰損失についての検討を行った。
損失評価の結果、通常プロセスの導波路の伝搬損失は導波路幅が狭まるにつれて増大している。
コア上部エッチング導波路の損失は通常プロセスで作製した導波路と比較して大きいが、導波路
幅の減少と伝搬損失の増加の関係の傾向は通常プロセスの導波路と一致している。コア上部のド
ライエッチング加工により過剰損失として 8.4dB/cmの過剰損失を確認した[3]
図. 損失測定結果
参考文献
[1] J. Leuthold, J. Eckner, et. al., JLT, 16(1998)1288-1239
[2] G. S. Oehrlein, Journal of The Electrochemical Society (Impact Factor: 3.27), Vol. 132, 6, (1985)
[3]R. Sakata et. al., MOC2015, H52 (2015)
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拡張 OAM モードを用いた MCF 伝送による
伝送容量増大に関する研究
外薗裕仁 Hatem El Serafy 坂本穂岳 姜海松 浜本貴一
光ファイバの伝送容量増大に向け、マルチコアファイバ(MCF)による空間多重方式の研究が盛
んに行われているが、さらなる伝送容量増大のため、OAM(Orbital Angular Momentum)モードより
基本モーメント角を小さく設定した拡張OAMモードを用いたMCF伝送によりコア数以上のチャ
ネル数を設定できる可能性がある。図 1に拡張 OAMモードの 6コアMCF伝送を示す。ローラン
ド円のスラブ導波路により拡張 OAMの各モードの位相関係を生成・合波し、その位相関係をMCF
の各コアで保持しながら伝搬させる。また、同じローランド円のスラブ導波路により分波できる
と考え、その検討を行っている。
モード合分波の重要な問題の一つはクロストークである。図 2 にシリカ材料を用いたローラン
ド円のスラブ導波路による拡張OAMモードの 6コアMCF伝送におけるクロストークと最大チャ
ージ数依存性を示す。MIMO技術によるモード間クロストーク-4dBの信号が保障されることを前
提とすると、現時点では理論上使用可能な最大チャージ数が 5となり、11チャネル伝送が可能と
なる。これはコア数の約 2 倍に相当するが、更なる伝送チャネル数増大のため、クロストークの
改善が必要不可欠となる。また、最大チャージ数が 5 の場合の伝送量を図 3 に示す。クロストー
クの悪化の要因として、一般に波長多重分割等で用いられる AWG ではアレイ導波路数は約 100
本であるが、我々が提案する伝送方式ではアレイ導波路数はコア数 N に制限されるため、位相情
報が不足する。また、図 3 に示すように合分岐を行う場合に-11.7dB の損失が生じる要因として、
合波側で光を 6 コアに分岐する場合に生じる漏れ光が大きいからだと考えている。我々はこの問
題の解決策として、ローランド円のスラブ導波路の再設計、及び、位相制御によって位相情報を
追加し、擬似的にアレイ導波路数を増やすことを検討している。
参考論文
[1] H. Hokazono, et.al, APC, 2014, JT3A.18. [2] R. Tanaka, et.al, OPE, 2014, 225, pp. 127-132
図 1.拡張 OAM モードの 6 コア MCF 伝送
2��
�×1
2" #
$×$
NコアMCF
出力導波路入力導波路
スラブ導波路
…
l
-101
…
…l
-101
…
スラブ導波路2� �
�×2
図 2.拡張 OAM モードの 6 コア MCF 伝送における
のクロストークの最大チャージ数依存性
Mux charge number lmax0 1 2 3 4 5 6 7
Cro
ssta
lk[d
B]
-16
-12-10
-8-6
-20
-4
-14
Possibility of
MIMO processing
図 3 .拡張 OAM モードの 6 コア MCF 伝送における
伝送量のチャージ数依存性(lmax = 5)
0
-10
-40
-20
-30
Tra
nsm
itta
nce
[dB
]
4.2 dB
Charge number l-4 -2 -1-5 -3 2 4 51 30
-11.7dB-4.5dB