Download - 3.睡眠の機能E3%83%9B%E3%83...Stage2 Stage3 Stage4 ノン レム レム(REM)睡眠 Stage 1:半醒半睡状態あるいは入眠期 ゆっくりとした眼球運動がみられる.
3.睡眠の機能
なぜ眠るのか?
(1) 脳の休息(2) 記憶の定着(3) その他
(1) 脳の休息
ヒトの脳
昭和大学後藤昇氏の成績 (剖検資料)
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 歳
成人の脳重量は1400g前後・・・・ 体重の2~2.5%
脳血流量は750~1000ml/分・・・・ 心拍出量の10~15%
脳は血流に富み、代謝の盛んな臓器.覚醒時の脳は、全エネルギーの約18%を消費.
脳を休ませなければ、良い考えも浮かばない
男女別脳重量
○男 2,812例●女 1,017例
睡眠とは?迅速な情報処理と機能調節を担っている脳を管理する技術発達した大脳をうまく休ませる適応行動生体防御技術
睡眠自体を管理するのも脳― 脳によって脳のために営まれる
脳を発達させた動物の生存のために不可欠横になって目を閉じるという行動上の変化は睡眠の症状
休息と活動の概日リズムを背景にする
( 井上昌次郎 )
ヒトの睡眠深度と脳波の関係
覚醒
レム (REM)
Stage1
Stage2
Stage3
Stage4
ノンレム
レム(REM)睡眠Stage 1:半醒半睡状態あるいは入眠期
ゆっくりとした眼球運動がみられる.以後、眠りが深くなるにつれ、Stage 2~4へ.
REM:眠りはじめてから1時間半~2時間で突然,脳波パターンはStage1へ移行.
覚醒時のような急速眼球運動(rapid eye
movement:REM)が起こる.頤筋などの抗重力筋の緊張が著しく低下する.夢をみているのも、この時期
覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠
覚醒 ノンレム睡眠 レム睡眠
行動
行動
行動
覚醒
ポリグラフ
REM
筋電図脳波
眼電図
外側膝状体の細胞活動
脳内アミン系の活動(NA, セロトニン)
脳内コリン系の活動
脳波のステージ
レム睡眠時、筋電図には活動が見られない.体の動きは抑制されている.
レム睡眠時に抑制
亢進
亢進
レム睡眠行動障害
左眼の動き
右眼の動き
左側脳波
右側脳波
顎の筋電図
腕の筋電図
脚の筋電図
心電図
レム睡眠とノンレム睡眠
レム睡眠:魚類や両生類などの原始的な眠りや爬虫類のやや進化した眠りと共通し身体を不動化させることが最も重要
― 骨格筋の緊張を解き、身体を麻痺状態におく
ノンレム睡眠:意識水準や体温を下げる新技術
― レム睡眠には、ノンレム睡眠と覚醒を結ぶ新たな役割を付与
ノンレム睡眠は大脳を休ませ、回復させる。レム睡眠は大脳をノンレム睡眠の状態から目覚めさせる。
脳の代謝と睡眠
脳は体重の約2~2.5%を占めるに過ぎないが、覚醒時の脳は、全エネルギーの約18%を消費する
・・・ 脳は疲れやすく、休息が必要な臓器である
ノンレム睡眠時には、脳のブドウ糖消費が減少
ヒト ノンレム睡眠(Stage 2+3) 覚醒時より 23%減ノンレム睡眠(Stage 3+4) 覚醒時より 40%減
サル ノンレム睡眠 覚醒時より 30%減
脳のアセチルコリン放出量(ネコ)
覚醒時 ノンレム‐ レム睡眠皮質 2.1 1.0 2.2 ng/分尾状核 1.7 1.3 2.3 ng/分
(2) 記憶の定着
睡眠が記憶の定着に重要な役割を果たすことを明らかにした歴史的な研究
Jenkins JG, Dallenbach KM. Obliviscence During Sleep and Waking. Am J Psychol 605–612, 1924.
正しく想起できた音節の数
意味を成さない音節を提示し、憶えてもらう
睡眠と記憶の定着:視覚識別課題
視覚識別課題 ( Visual Discrimination Task )
覚醒持続
夜間睡眠
識別に要する時間の改善
識別に要する時間の改善
(ms)
徐波睡眠(%)×REM睡眠(%)最初の四半分 最後の四半分
テスト間隔 (時間)
Day 0 のみ断眠毎日、通常の睡眠識
別に要する時間の改善
(ms) (ms)
初回テスト後の日数
Stickgold, R. Sleep-dependent memory consolidation. Nature 437, 1272–1278 (2005).
睡眠と記憶の定着:Finger-Tapping
4-1-3-2-4 というような簡単な数字の列を出来る限り速く、かつ正確に打ち込む
30秒で打ち込んだ数
30秒で打ち込んだ数
睡眠 睡眠 睡眠
練 再習 試
行
練 再習 試
行
練 再習 試
行
改善の度合
睡眠時間の最初の四半分におけるStage 2 ノンレム睡眠の割合
覚醒/断眠昼寝/通常の睡眠
覚醒
断眠
昼寝
通常の睡眠
断眠
日中 夜間 48時間後
睡眠と記憶の定着:回転適応課題
●を目指してマウスを操作
初めのカーソル位置
実際にカーソルが動く方向
標的 エラー角度
朝練習8 hr後
夜の睡眠7~8 hr
エラー角度の改善(%)
エラー角度の改善(%)
カーソルが思う通りに動く時と比較した徐波の出方の差
右頭頂葉における徐波の増加(%)
昼寝も有益起きている
昼寝
28人 13 2人
13 17人
昼寝なし
60分昼寝
90分昼寝
識別に要する時間の改善
(ms)
15
10
5
0
-5
-10
-15
徐波睡眠 (-)REM睡眠(-)
徐波睡眠 (+)REM睡眠(-)
徐波睡眠 (+)REM睡眠(+)
Mednick, et al. Nature Neurosci.
2003; 6: 697 - 698 .
徐波睡眠とREM睡眠を両方とも含むような昼寝が識別時間の改善をもたらす。昼寝の時間の長短は、大きな意味を持たない。
さらに ...
睡眠は、免疫記憶の形成にも重要な役割を果たしている
睡眠の時相やステージと生理活性物質
覚醒REM睡眠ステージ1ステージ2
ステージ3
ステージ4徐波睡眠
REM睡眠
23 0 1 2 3 4 5 6 7 時
アセチルコリン
ノルアドレナリンセロトニン
コルチゾール
神経活動や全身の代謝に影響を及ぼす物質
アセチルコリン
ノルアドレナリンセロトニン
コルチゾール
成長ホルモン
前半 後半
Besedovsky et al. Pflugers Arch. 2012; 463: 121–137.
A型肝炎の予防接種
0 1 2 4 8 10 12 16 18 20 52
A型肝炎ウイルスに
特異的なT細胞(%)
睡眠
断眠
初回接種後の週数
0.01
0.04
0.08
0.10
0.20
A型肝炎ウイルスに特異的なT細胞(%)
0 .1 .2 .3 .4 0 .1 .2
徐波活性
8
6
4
2
8
6
4
2
徐波睡眠
抗原 抗原提示細胞
コルチゾール成長ホルモンプロラクチン
IL12
ヘルパーT細胞
抗原情報の受け渡し
細胞傷害性T細胞
B細胞
抗体
細胞表面に提示された抗原
記憶機構にあてはめると 記憶の固定暗号化 想起
次回の抗原曝露時に
速やかに抗体を産生し
T細胞を動員する
IL12産生細胞
20 24 4 8 12 16 20時
60
40
20
0
断眠
睡眠
(3) その他
創造的な活動と睡眠
偉大な発見や作品は眠っている間に生まれる?
Nature 2004;427: 304-305.
Kekule
ベンゼン核の構造
Loewi
神経伝達機構
Howe
ミシンの発明
Mendeleev
周期律の発見
Hilprecht
楔形文字の解読
Stevenson
「ジキル博士とハイド氏」の一場面の着想
Coleridge
叙事詩「Kubla Khan」の詩想
Tartiniバイオリンソナタ「悪魔のトリル」
の作曲
Benson詩
「The Phoenix」
Massenet
幾つかのオペラの作曲
昼寝とnon-REM/REM睡眠、記憶に伴う情動
休息のみ 昼寝 昼寝non-REM REM
問題解決能力
情動の記憶
Cai, et al: PNAS 2009
心地よい 嫌な 中立的
Walker,et al: NYAS 2009
睡眠 断眠
創造的な睡眠REM睡眠を伴った昼寝の後は創意工夫を要するような問題解決能力の向上がみられた。同じ昼寝でもREM
睡眠を伴わなければ、あるいは休息のみで眠らないでいれば、このような効果は見られなかった。
改善の程度
(%)
記憶内容に伴う情動の影響断眠時には、心地よい/中立的な気分は残り難い。一方、嫌な気持ちは残りやすい。夜、物事が悪く感じられても、翌朝は、それほどでもないと思われることが多いのは、眠ることで、心地よい気分も定着するからかも知れない。
記憶が残っている程度
睡眠相と思考の内容
Hobson & Pace-Schott Nature Reviews Neuroscience 2002; 3: 679-693.
まぶた
あたま
覚醒
NREMREM
1 2 3 4 5 6 7 時
首尾一貫した思考 幻覚・妄想100
80
60
40
20
0
報告された頻度
100
80
60
40
20
0活動 入眠 REM
安静 NREM
活動 入眠 REM
安静 NREM
% %