第4回 そらまめ教室リン吸着剤 薬剤ごとの特徴
2017年10月22日
東邦大学医療センター大橋病院薬剤部薬剤師 綿貫陽一
リンって?・三大栄養素
「糖質」「脂質」「たんぱく質」
・五大栄養素
「糖質」「脂質」「たんぱく質」+「ビタミン」「ミネラル」
リンはミネラルの一種で,五大栄養素の一つです.
食事等による摂取が必要である一方,摂取過剰や排泄低下は過剰症の原因となることがあります.
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リンを調節するには?
〇食事療法
〇リン吸着剤
〇透析による除去
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リン吸着剤の種類
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商品名 成分名 剤形
カルタン® 沈降炭酸カルシウム 錠剤・OD錠
フォスブロック® セベラマー塩酸塩 錠剤
レナジェル® セベラマー塩酸塩 錠剤
ホスレノール® 炭酸ランタンOD錠・顆粒チュアブル錠
キックリン® ビキサロマー カプセル
リオナ® クエン酸第二鉄 錠剤
ピートル® スクロオキシ水酸化鉄 チュアブル
リン吸着剤って…飲み方が複雑で飲みにくい…(食直前・食直後)
かみ砕いて飲まなきゃいけないのが面倒…
飲む薬の数が多くて大変…
お腹が張ったり便秘したりして飲みにくい…
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正しい薬の用法とは?
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おもて うら
正しい薬の用法とは?
• 食後:食事後30分ごろ
• 食前:食事前30分ごろ
• 食直後:食事後すぐ(目安5分以内)
• 食直後:食事前すぐ(目安5分以内)
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カルタン®
成分名:沈降炭酸カルシウム
薬の働き:
胃酸によってCa2+イオンとなり,体内でリン酸と結合して消化管からのリン吸収を抑制する.
特徴:
食後の服用では,胃酸が薄まって(専門的には胃内pHが上昇して)本来の薬の力が発揮できない!
よって,食直後に服用する必要があります.
他剤に比べて消化器系副作用が少ない.
Ca含有製剤(後ほど説明致します)7
フォスブロック® レナジェル®
成分名:セベラマー塩酸塩
薬の働き:体内でリン酸と結合してリン吸収を抑制する.
特徴:他の薬剤の吸収を低下させる可能性があるため,食直前で服用します.
体内への吸収が低く,安全性が高い反面,便秘の出現頻度が高い傾向にあります.
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ホスレノール®
成分名:炭酸ランタン
薬の働き:体内でリン酸と結合してリン吸収を抑制する.
特徴:チュアブル錠は必ず噛み砕いて服用する.OD錠,顆粒の登場により服用し易くなった.
炭酸カルシウムと比較してリンの低下効果が高いとされている.
食直後に服用する
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キックリン®
成分名:ビキサロマー
薬の働き:体内でリン酸と結合してリン吸収を抑制する.
特徴:
他剤よりも体内での薬剤の膨潤(膨らみ)が少なく,便秘が少ないと言われている.
他の薬剤の吸収を低下させる可能性があるため,食直前で服用します.
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リオナ®
成分名:クエン酸第二鉄水和物
薬の働き:体内でリン酸と結合してリン吸収を抑制する.
特徴:
鉄が腸管粘膜を刺激して,下痢を起こす場合がある.
黒色便(便が黒くなる)
貧血改善作用がある.
食直後に服用する.
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ピートル®
成分名:スクロオキシ水酸化鉄
薬の働き:体内でリン酸と結合してリン吸収を抑制する.
特徴:
鉄が腸管粘膜を刺激して,下痢を起こす場合がある.
噛み砕いて服用.黒色便(便が黒くなる)
口の中が黒くなることがある
貧血改善作用がある.
食直前に服用する
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こんな時はどうする?①
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〇食事をしなかったら→リン吸着剤は飲まない
〇飲み忘れてしまったら…→食後30分以内ならば直ぐにリン吸着剤を服用する※
こんな時はどうする?②
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〇食事の量にバラつきがある方
〇食事の量に大きな変化があった方
→食事の量に合わせて医師が薬の量を調節します。
受診時に医師へ報告をお願いします。
例:食事摂取量の多い夜に薬を増やす
朝1錠-昼1錠-夕2錠など
リン吸着剤の薬剤調整(参考までに…)
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リンを管理するために大切なことまず第一に,適切な食事管理を行うこと.
薬の添付文書(医療者向けの説明書)にも食事療法等によるリン摂取制限を適切に行うことと記載がある.
それでも不十分なリンの管理を薬で補うイメージです.
リン吸着剤は食事中のリンの吸収を抑える薬で,体の中に取り込まれているリンには作用しません.
→摂取量(これから体に取り込まれるリン)を少なくすることが大切です.
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より良いリン管理のためにリン吸着剤は,服用しづらい薬剤の一つと思います.しかし,二つ前のスライドでもお示ししたように,医師は検査結果に応じて薬の微調整を行っています.
副作用の出現がない限りは,処方通りの服用をお願いいたします.
薬が沢山残ってしまった場合などは,処方医師へご報告をお願い致します.
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