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はじめに Cortical bone trajectory(CBT)法は,2009年の San-

toni1)らの報告を嚆矢とする.従来の椎弓根軸に沿った軌道とはまったく異なり,関節突起間部を刺入点とし,椎弓根の内側から外側へ,そして尾側から頭側に向かう軌道であり,screwと皮質骨の接触面積が最大限に得られるのが特徴である.また,従来の軌道では海綿骨用のscrewが用いられるのに対して,CBT法では皮質骨用のscrewを用いて,おもに皮質骨部分で固定されるのが特徴である.昨今,CBT法はわが国のみならず,海外においても急速に広まり,さまざまな応用に関する報告もなされている.本稿では,CBT法の基礎と実際,応用について総説する.

1 .CBT法の基礎CBT法の形態学的検討(軌道についての検討)

 Santoniらは CBT法が従来法に比べて引き抜き強度が約30%増加したことを示し,CBT法の良好な固定性を報告しているが,実際の手技については詳細な記載はされていなかった.Matsukawaらは腰椎精査目的で CTを撮像した 100例,470椎を対象として,CTを用いた CBT

の形態学的検討を行った2,3).それによると,挿入方向は横断面で椎弓根の内外側の中点を,矢状面で椎弓根の上下縁の中点を通るものとした(Fig. 1).刺入点については椎弓根を時計に見立てると,左椎弓根では5時付近(右椎弓根では 7時付近)に近接していた.軌道径は L1から L5まで下位腰椎ほど大きくなる傾向があり,軌道長は高位による有意差を認め,椎体矢状面に対する外側角,椎体横断面に対する頭側角は各椎体高位による有意差はなかった,と報告している.なお Hynesらの軌道は椎体のmiddle columnと posterior columnの間に向かう

のに対し,松川ら4)は椎体のより前方まで向かっている(Fig. 2).CBTはその軌道において皮質骨と大きく 4点で接触していることが示されている(Fig. 3)2).近年,CBTを用いた pedicle screwの挿入時のトルクの in vivo

studyから,CBTの理想的な軌道が,screwが椎弓と最大限の接触と椎体内での十分な長さを獲得するように椎弓根の下縁に沿って 25~30度頭側に向けることであることが報告されている5).すなわち,CBT screwの先端が椎体上縁のより前方に位置することが推奨されている.

CBT法の固定性に関する検討 Spinal instrumentationの固定性を論ずるにあたり,screw単体の固定性と椎体 constructとしての固定性を分ける必要がある.Screw単体の固定性に関して,San-

toniら1)は骨粗鬆症を有する 14椎の屍体標本を対象に従来法と CBTにより挿入した screwの引き抜き強度を検討した結果,有意差はないもののCBT法で挿入された引き抜き強度は従来法に比べて 30%高かったことを報告している.また,Baluchら6)は頭尾側方向の繰り返し荷重(cyclic loading)に対する検討を行い,CBT法が従来法に比べて優れていることを示している. 一方,椎体 constructとしての固定性についてはPerez‒Orriboら7)が 28体のヒト屍体標本を用いて,1椎間固定のモデルを作成し,生体力学的検討を行っている.椎間の処置として,intact disc,direct lateral inter-

body fusion(DLIF),transforaminal lumbar interbody

fusion(TLIF)の 3群に分け,おのおの従来法と CBT法で screwを設置し,固定性を評価している.それによると,intact discにおける従来法の回旋,TLIFにおける従来法の側屈において,CBTに比較してより強固に固定されていた.また,Oshinoら8)はシカの腰椎損傷モデルを作成し,従来法と CBT法で椎体制動性を比較したとこ

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国立病院機構村山医療センター整形外科/Department of Orthopaedic Surgery, National Hospital Organization, Murayama Medi-cal Center連絡先:〒208‒0011 武蔵村山市学園 2‒37‒1 国立病院機構村山医療センター整形外科 朝妻孝仁〔Address reprint requests to:Takashi Asazuma, M.D., Ph.D., Department of Orthopaedic Surgery, National Hospital Organization, Murayama Medical Cen-ter, 2‒37‒1 Gakuen, Musashimurayama‒shi, Tokyo 208‒0011, Japan〕

CBT法の基礎と実際・応用

Basis, Practice and Clinical Application of CBT

朝 妻 孝 仁Takashi Asazuma, M.D., Ph.D.

Key words:cortical bone trajectory(CBT)pedicle screwspinal fusionminimally invasive surgery

Spinal Surgery 31(3)229‒235,2017

認定医-指導医のためのレビュー・オピニオン

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ろ,有意差はないもののすべての負荷に対してCBT法のほうが可動域を低減させたと報告している. 生体内のCBT screwの固定性についてMatsukawaら9)

は術中に CBT法と従来法による screw挿入時の最大トルクを計測し,報告している.それによると,CBT群の最大トルクは 2.49±0.99 Nmで,従来群の 1.24±0.54 Nm

と比べると約 2倍であり(p<0.01),さらに同一椎体に対して異なる挿入法を行った H群(骨密度 0.80±0.19 g/

m2)における最大挿入トルクは従来群で 1.58±0.44 Nm

であったのに対し,CBT群で 2.71±1.36 Nmと有意に大きかった(p<0.01).

2 .CBT法の実際術前準備と体位の取り方

 術前準備は,通常の脊椎固定術を行う場合と同様である.4点支持台の上に腹臥位とするが,筆者らは術中に

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Fig. 1  Matsukawaらが提唱する CBTの軌道 (文献 2より引用)

a:軌道径.b:軌道長.c:椎体矢状面に対する外方角.d:椎体水平面に対する上方角.

a

c

b

d

Fig. 2 松川らが推奨する軌道Hynesらの軌道に比べて,screwは椎弓根の下縁を通過し,椎体の中央付近まで挿入されている.外方角は 8~9度,上方角は 25度程度となる.

Fig. 3 4点固定理論刺入点は,関節突起間部の最外側の隆起部に近接しており,皮質骨が厚く強度が強い.その結果,本軌道の固定性に大きく関与している.

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X線透視は必須であるとの考えから,X線透過性の手術台および支持台が必要である.術前にmarkingを行い,X線透視で確認する.その際,正確な正面像および側面像が得られていることを確認し,その際の透視装置の刺入角を記録している.皮切から展開

 CBT法で 1椎間固定を行う場合,通常,4~5 cm程度の皮切で十分手術操作を行うことができる.筆者らは展開に際して,棘突起縦割による進入法を用いている.外側の展開は椎間関節までで十分である.また,頭尾側の展開は,固定椎間の頭側椎弓頭側から尾側椎弓の頭側 2

分の 1までで十分である.刺入点の決定

 CBT法の刺入点は Santoniら1)によると,横突起下縁から 1 mm尾側の水平線と上関節突起の交点としている.われわれの方法は,まず直視下で刺入点を決定し,X線透視下で確認し,air drillで刺入点を作成する.その際に,air drillの玉 1個分を椎弓傾斜に対して垂直方向(腹側方向)へ落とし込むようにすることで,椎弓傾斜で滑ることなく,刺入点を作成できる(Fig. 4 a)10).骨孔作成

 われわれの刺入方向は,左椎弓根では 5時から 11時半方向であり(Fig. 4 b)10),外側角は 8~10度を10),頭側角が 25~30度を目安としている2).Screwの先端は,椎体終板の中央部付近まで挿入できる軌道としている3).目指す軌道が決まったら,頚椎用,胸椎用,腰椎用の 3

種の probeを順に用いる 3 step probing法で骨孔を次第に拡大していく.これは徐々に骨孔拡大を行うことにより,刺入点に crackを生じることを回避するためである.

骨孔作成後,tapを行うが,screw径と同サイズの tapを用いる.次いで,screwを刺入するが,screwと screw

headが一体のものでは,先に screwを刺入すると,除圧,椎間操作が不可能であるため,われわれは自家製markerを入れて,除圧,椎間操作が終了してから screw

を刺入している10).なお,Depuy Synthes社のMatrix 5.5

systemは screwと polyaxial headが別々になっている,いわゆる pop‒on systemであるため,除圧,椎間操作の前に screwを刺入し,最後に screw headを取り付けることが可能である.

3 .CBT法の臨床成績 CBT法を用いた脊椎固定術が提唱されてからまだ約 8

年であり,当然,長期成績の報告はまだないが,中期成績の報告は散見される.低侵襲に関する評価

 海渡11)は腰椎変性疾患に対して posterior lumbar inter-

body fusion(PLIF)を行った 64例(CBT法群 33例,従来法群 31例)の低侵襲性の評価を行っている.それによると,CBT群で出血量は少ない傾向にあったが,有意差はなく,検査値の中では,術後 7日目の CK値が CBT群で有意に低値であり,腰痛 Visual Analogue Scale(VAS)は術前および術後 1週で両群に差はなかったが,CBT群では術後 1カ月の時点で有意に低値であったと報告している.臨床成績

 CBT法 screwの緩みについて佐久間ら12)は,術後 1年の CTで CBT法と従来法の screwの評価を行い,従来法は 15.5%(54/348本)に screwの緩みを認めたのに対

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Fig. 4 CBTの刺入点と刺入方法(文献 10より引用)a: air drillによるエントリーポイントの作成.まず,椎弓傾斜に対して腹側方向へ drillを押しつけるようにして drillの球 1つ分落とし込む.

b: エントリーポイントと刺入方向.左椎弓根では 5時から 11時半方向への刺入となる.

L pedicle R pedicle

a b

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し,CBT法では 4.8%(14/290本)と有意に少ないことを報告している.またNinomiyaら13)は CBT法を用いたPLIFにおける screw周囲の clear zoneの出現頻度は 109

本の screw中 6本(5.5%)であったと報告している. Takenakaら14)は CBT法と従来法で施行した PLIFの臨床成績(最短術後 1年)を比較し,両群間で臨床成績と骨癒合率に差はなかったが,CBT群で術中出血量,筋組織の損傷,周術期の疼痛が少なかったと報告している. 今林ら15)は CBT法の単椎間 PLIFにおける術後 1年での骨癒合を解析した.その結果,骨癒合率は従来法で15/16例(94%),CBT法で 26/31例(84%)と有意差がなかった.また,術後 CTにおける矢状方向の点数化が骨癒合予測因子として有用であり,CBT法では関節突起隙部から椎弓根の下縁に接する刺入軌道が有利であることを報告した.海渡11)も腰椎変性疾患に対して PLIFを行った 45例,従来法群 18例,CBT法群 27例を比較,検討している.それによると術後 2年の骨癒合率は,従来法群 89%,CBT法群 81%と両群に有意差はなかったが,cage周囲の diffuse cyst signを認めた頻度は従来法群が 6%に対して,CBT群では 37%と CBT群で有意に高頻度であった.また,臨床評価については,JOA

score,JOABPEQの獲得量,有効率とも両群に有意差を認めなかったが,CBT法 PLIFでは diffuse cyst sign陽性が臨床成績・画像成績を有意に低下させていたとしている11). 一方,Sakauraら16)は 2椎間 PLIFを行った変性すべり症の成績を CBT群と従来群で比較し,CBT群ではより侵襲が小さく,臨床成績は従来群と同等であるとしている.このように多くの報告において,臨床成績,画像成績ともにCBT法は従来法に比べて遜色なく,手術侵襲も小さいことが示されている.

Facet violationの評価 Matsukawaら17)は,CBT法を用いて脊椎固定術を行った連続した 202例を対象として上位隣接椎間干渉(supe-

rior segment facet joint violation:FJV)の調査を行い,報告している.FJVの評価は術後 CTの矢状断,水平断,冠状断で評価した.隣接椎間関節の変性は CTによりPathriaら18)の分類を用いて評価した.すなわち,grade

0:正常,grade 1:椎間関節の狭小化,grade 2:椎間関節狭小化+硬化性変化もしくは関節肥厚,grade 3:狭小化・骨棘形成・硬化性変化を伴った高度関節症性変化の4群に分けた.その結果,FJVの頻度は 202例中 39例(19.3%),404本中 48本(11.8%)であり,すべて grade

1であったと報告している.また,screwの刺入に関して,椎間関節下縁と screw刺入点の距離について,FJV

(-)群が 8.1 mm±2.3 mmであるのに対して,FJV(+)群では 3.2 mm±1.0 mmであり,有意に小さかった(p<0.01).また,頭側角は FJV(-)群が 29.9±7.6度であるのに対して,FJV(+)群では 25.8±6.3度,刺入部椎弓と screw headの距離は FJV(-)群が 6.4±1.9 mmであるのに対して,FJV(+)群では 5.6±1.6 mmと有意差があった(p<0.01)としている17).

4 .CBT法の応用仙椎 CBT法〔penetrating S1 endplate screw

(PES)法〕 1 )PES法の概念

 従来,仙椎に対する pedicle screw法は仙椎前方の皮質骨を穿破する bicortical法,仙骨岬部に向けて刺入するtricortical法が一般的であった.しかしながら,いずれのapproachも仙椎前方に位置する血管,神経束を損傷する,潜在的な危険性を常に伴っている.また,仙椎にCBT法を行う場合,仙椎が腰椎に比し,皮質骨部分が少ない点が固定力の面で問題であった.Matsukawaらは仙椎に対する新しい screw軌道である penetrating S1 end-

plate screw(PES法)を提唱した19).この新しい軌道はscrewの先端が仙椎上面の終板を穿破することにより,より良好な固定性と安全性を担保している.

2 )PES法の実際 術前計画は,腰椎に対する CBT法と同様であるが,単純 X線で screwの先端が,仙椎上面の終板の中点を目指すのが原則であり,CT傍矢状断像から,screwが仙椎のどの位置で終板を穿破するのがよいかを確認する.後方正中縦切開で進入し,型のごとく傍脊柱筋を剝離,展開するが,従来の S1 pedicle screwに比べて,刺入点が内側であるため,L5/S1椎間関節外側縁までの展開で十分である. 刺入点は S1上関節突起の中央線と L5下関節突起下縁より 3 mm尾側で,刺入方向は椎体矢状面に平行かつ,側面で椎体上面の終板の中点である(Fig. 6)19).X線透視下に刺入点を決定するが,透視装置を正面像で仙椎終板に対して平行に設置することが重要である.3 mm径の air drillで刺入点に骨孔を作製した後,側面透視で椎体矢状面に平行に probeを進めていくと仙椎終板の硬い骨性抵抗を蝕知する.そこで先端が鋭の probeで仙椎終板を穿破する(Fig. 7).Sounderで骨性抵抗の中を進んでいること,仙椎終板を穿破したことを確認した後,骨孔の長さを計測する.上位の screwとの配列を考え,通常,骨孔の計測値より 5~8 mm長い screwが選択される20).PES法は従来法に比べて,外側への筋組織の展開

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が格段に少なく済み,低侵襲性において優れている.また,骨盤にいたる long fusionにおいて,PESと S2A

screwとの連結が容易である点も利点の 1つである. 3 )PES法の固定性について

 松川ら21)は,腰仙椎固定術を行った34例の仙椎を対象として PES法 screw 46本と従来法(tricortical fixation)22本の挿入トルクを比較し,PES法の最大挿入トルクは平均 2.71±0.99 Nmであったのに対し,従来法では 1.57

±0.86 Nmと,有意に PES法で大きい(p<0.01)ことを報告している.胸椎 CBT法

1 )胸椎 CBT法の概念 胸椎の解剖学的特徴として,腰椎に比べ皮質骨に乏しく,椎体の形状も腰椎に比べて先細りしており,さらに前方大血管,肺に近接しているため,外側に向かう軌道は血管損傷,肺損傷の危険性があるので注意を要する.Matsukawaら22)は T9‒T12に対して,横突起下縁の水平線と上関節突起外側 3分の 1の交点とし,挿入方向は椎体矢状面と平行に,側面像で椎体上面終板の後方から約3分の 1に向かう軌道として,報告している.また,CT

を用いた形態学的検討の結果,軌道径は T9(5.8 mm±1.1 mm)から T12(8.8 mm±1.4 mm)に向かい,次第に大きくなり,軌道長は T9(29.7±±4.6 mm)から T12

(32.1±2.4 mm),頭側角は T9(21.4±3.3度)から T12

(27.6±3.9度)と下位胸椎になるほど大きくなる傾向を示している22).

2 )胸椎 CBT法の固定性 屍体標本を用いた検討では,screw挿入時の最大トルクは,従来法では平均 0.66±0.15 Nmであるのに対して,胸椎CBT法では平均 1.02±0.25 Nmと有意に大きいこと

が示されている22).谷戸23)は胸椎CBT法の利点として以下の 2点を挙げている.①腰椎CBT法との連結が容易である:特に胸腰移行部ではCBT法の刺入部は直線上に並ぶため連結は容易である,②引き抜き強度が高い:固定上位端では後方に力が加わるため,screwは引き抜く方向に力が働く.従来法では hook systemやwireによる補強を行うが,CBT法では引き抜き強度が高いため有利である.

Cross trajectory法 重度の骨粗鬆症例,外傷により脊椎の支持性が損なわれている症例に対する cross trajectory法が提唱されている24).Cross trajectory法は同一椎弓根に従来軌道とCBT法の軌道を併用するもので,矢状面,横断面の tri-

angulation効果が得られる点がその長所であるとされている25,26).実際の刺入法は,まず X線透視下でMatsu-

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Fig. 5 従来法と CBT法,および PES法の刺入点(文献 19より引用)

従来法の刺入点 CBT 法の刺入点

L5 L5

PES 法の刺入点

Fig. 6 PES法における骨孔の作成(文献 19より引用)

ハンマー

プローブ

S1L5

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kawaら2)の方法に従い,CBT法による screwを刺入する.この軌道は側面像で椎弓根下縁に沿った軌道であることが,CBT法による screwが皮質骨にしっかり噛み込み,かつ従来法による screwの軌道の spaceを確保する,という点からも重要とされている27,28)(Fig. 7).Cross

trajectory法により刺入された screwは通常,左右 2本ずつ,計 4本の rodにより連結されるが,off‒set connector

を用いて,両側 2本の rodで連結することも可能である27). Cross trajectory法の固定性の検討は,Matsukawaら29)

が有限要素解析を用いて行っている.Cross trajectory

法,従来法,CBT法の 3群について比較,検討している.その結果,Cross trajectory法の固定性は,従来法に比べて屈曲・伸展制動性が約 4.0倍,側屈制動性が約 2.0

倍,回旋制動性が 1.5倍であり(p<0.01),また CBT法に比べても屈曲・伸展制動性が約 3.5倍,側屈制動性が約 3.0倍,回旋制動性が 2.8倍であった(p<0.01)としている.このように,cross trajectory法により,より強固な固定性が得られるため,骨強度の低下例や salvage

手術に有効であり27),固定椎間数を短縮することも可能である.

まとめ CBT法の基礎,実際,応用について総説した.本法は米国で生まれ,日本に導入された後,発展,普及したpedicle screw法の手術手技である.生体力学的研究,あるいは有限要素法による基礎的研究により,その固定力

は従来法に比べて強固であることが示され,短期,中期の臨床成績も従来法に比べて遜色がないことが報告されている.しかしながら,隣接椎間障害の問題など,本手技の評価は長期の術後経過を待たなくてはならない.

文 献 1) Santoni BG, Hynes RA, McGilvray KC, et al:Cortical bone

trajectory for lumbar pedicle screws. Spine J 9:366‒373, 2009

2) Matsukawa K, Yato Y, Nemoto O, et al:Morphometric mea-surement of cortical bone trajectory for lumbar pedicle screw insertion using computed tomography. J Spinal Disord Tech 26:E248‒253, 2013

3) 松川啓太朗,谷戸祥之,根本 理,他:新しい腰椎椎弓根スクリューの刺入法(cortical bone trajectory)―CTを用いた100例の形態学的検討.整形外科 64:6‒11,2013

4) 松川啓太朗:CBTの形態学的検討―そこに軌道はあるのか? 谷戸祥之,松川啓太朗(編):Cortical Bone Trajectory(CBT)法―理想の軌道がここにある.東京,三輪書店,2016,pp2‒6

5) Matsukawa K, Taguchi E, Yato Y, et al:Evaluation of the fixa-tion strength of pedicle screws using cortical bone trajectory:what is the ideal trajectory for optimal fixation? Spine 40:E873‒878, 2015

6) Baluch DA, Patel AA, Lullo B, et al:Effect of physiological loads on cortical and traditional pedicle screw fixation. Spine 39:E1297‒1302, 2014

7) Perez‒Orribo K, Kalb S, Reyes PM, et al:Biomechanics of lumbar cortical screw‒rod fixation versus pedicle screw‒rod fixation with and without interbody support. Spine 38:635‒641, 2013

8) Oshino H, Sakakibara T, Inaba T, et al:A biomechanical com-parison between cortical bone trajectory fixation and pedicle screw fixation. J Orthop Surg Res 10:125, 2015

9) Matsukawa K, Yato Y, Kato T, et al:In vivo analysis of inser-

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Fig. 7  Cross trajectory法による screw挿入法(文献27より引用)

Cross trajectory法は,椎弓根横径 6 mm以上かつ縦径 14 mm以上,おおむね第 10胸椎以下に適用している.CBTは椎弓下縁に沿った軌道(白矢印)とし,従来軌道は椎弓根上縁に沿った軌道(黒矢印)とする.

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tional torque during pedicle screwing using cortical bone tra-jectory technique. Spine 39:E240‒245, 2014

10) 谷戸祥之,朝妻孝仁,今林英明:CBT(cortical bone trajec-tory)による椎弓根スクリュー法.脊椎脊髄 25:657‒664,2012

11) 海渡貴司:術後症例の評価―骨癒合・弛み.谷戸祥之,松川啓太朗(編):Cortical Bone Trajectory(CBT)法―理想の軌道がここにある.東京,三輪書店,2016,pp60‒73

12) 佐久間毅,小谷俊明,赤津 務,他:Cortical bone trajectoryスクリューにおけるルースニングの発生率とその危険因子の評価:従来の椎弓根スクリューと比較して.J Spine Res 6:1489‒1492,2015

13) Ninomiya K, Iwatsuki K, Ohnishi Y, et al:Clear zone formation around screws in the early postoperative stages after posterior lumbar interbody fusion using the cortical bone trajectory technique. Asian Spine J 9:884‒888, 2015

14) Takenaka S, Mukai Y, Tateishi K, et al:Clinical outcome after posterior lumbar interbody fusion:comparison of cortical bone trajectory and conventional pedicle screw insertion. Clin Spine Surg 30:E1411‒1418, 2017

15) 今林英明,松川啓太朗,谷戸祥之,他:Cortical Bone Trajec-tory(CBT)法の単椎間腰椎椎体間固定術における術後 1年での骨癒合解析.J Spine Res 6:1551‒1554,2015

16) Sakaura H, Miwa T, Yamashita T, et al:Cortical bone trajectory screw fixation versus traditional pedicle screw fixation for 2‒level posterior lumbar interbody fusion:comparison of surgi-cal outcomes for 2‒level degenerative spondylolisthesis. J Neu-rosurg Spine 10:1‒6, 2017

17) Matsukawa K, Kato T, Yato Y, et al:Incidence and risk factors of adjacent cranial facet violation following pedicle screw inser-tion using cortical bone trajectory technique. Spine 41:E851‒856, 2016

18) Pathria M, Sartoris DJ, Resnick D, et al:Osteoarthritis of the facet joints:accuracy of oblique radiographic assessment. Radiology 164:227‒230, 1987

19) Matsukawa K, Yato Y, Kato T, et al:Cortical bone trajectory for

lumbosacral fixation:penetrating S1 endplate screw tech-nique. J Neurosurg Spine 21:203‒209, 2014

20) 松川啓太朗,谷戸祥之,加藤貴志,他:新しい仙骨椎弓根スクリューの刺入法―Penetrating S1 endplate screw(PES)法.脊椎脊髄 28:73‒80,2015

21) 松川啓太朗,谷戸祥之,今林英明,他:Penetrating S1 end-plate screw(PES)法によるスクリュー挿入トルクの検討.J Spine Res 6:1510‒1514,2015

22) Matsukawa K, Yato Y, Hynes RA, et al:Cortical bone trajectory for thoracic pedicle screws:a technical note. Clin Spine Surg 30:E497‒504, 2017

23) 谷戸祥之:胸椎 CBT法―胸椎 CBTの実際.谷戸祥之,松川啓太朗(編):Cortical Bone Trajectory(CBT)法―理想の軌道がここにある.東京,三輪書店,2016,pp96‒99

24) Matsukawa K, Yato Y, Imabayashi H, et al:Biomechanical evaluation of cross trajector y technique for pedicle screw insertion:Combined use of traditional trajectory and cortical bone trajectory. Orthop Surg 7:317‒323, 2015

25) Jiang L, Arlet V, Beckman L, et al:Double pedicle instrumenta-tion in the osteoporotic spine:a biomechanical feasibility study. J Spinal Disord Tech 20:430‒435, 2007

26) Ueno M, Imura T, Inoue G, et al:Posterior corrective fusion using a double‒trajectory technique(cortical bone trajectory combined with traditional trajectory)for degenerative lumbar scoliosis with opsteoporosis:technical note. J Neurosurg Spine 19:600‒607, 2013

27) 松川啓太朗:Cross trajectory法.谷戸祥之,松川啓太朗(編):Cortical Bone Trajectory(CBT)法―理想の軌道がここにある.東京,三輪書店,2016,pp115‒119

28) 松川啓太朗:PPSと CBTスクリューの連結のコツと工夫.日本MISt研究会(監):MISt手技における経皮的椎弓根スクリュー法―基礎と臨床応用.東京,三輪書店,2015,pp69‒72

29) Matsukawa K, Yato Y, Imabayashi H, et al:Biomechanical evaluation of fixation strength of lumbar pedicle screw using cortical bone trajectory:a finite element study. J Neurosurg Spine 23:471‒478, 2015

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