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牛胚の受胎率向上技術
[要 約]
胚移植時の受胎率を向上させるため検討を行った。受胚牛への各種性ホルモン(CIDR、ルテオーゲン、hCG)投与が、移植胚の受胎に及ぼす効果について検討した結果、ルテオーゲンの投与が受胎率を向上させた。また、胚移植時の移植部位について検討した結果、子宮
角深部が浅部より受胎率が高かった。胚の凍結保存性の向上について、胚のガラス化保存方
法における凍結保存液の組成について検討した結果、エチレングリコールとプロピレングリ
コールを混合した凍結液が高い保存性を示した。
[キーワード]牛胚、受胎率、子宮角深部、凍結保存、ガラス化保存法
[担 当 機 関]沖縄県畜産研究センター 育種改良班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
牛の受精卵移植技術においては、全国的に受胎率の向上が必要とされている。本研究で検
討する受卵牛へのホルモン投与、胚の移植部位および胚の凍結方法技術は、胚の受胎率を向
上させることで以下のことを目的とする。
1.受精卵移植の受胎率を60%程度に引き上げることにより、技術の低コスト化を図る。
2.優良種畜の増産・保留を推進して、素牛生産県としての基盤強化を図る。
[成果の内容・特徴]
1.胚移植時の移植部位について検討した結果、従来のカスー式受精卵移植器による浅部移
植での受胎率は 33.3%に対し、カテーテル型移植器を用いて深部移植の受胎率は 53.3%と 20ポイント受胎率が改善された。
2.受胚牛への各種性ホルモン CIDR(膣挿入型プロゲステロン)、ルテオーゲン(筋肉内投与持続型プロゲステロン)、hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の投与が、移植胚の受胎に及ぼす効果について検討した。CIDR とルテオーゲンを比較した試験の受胎率は CIDR区が 57.6%に対しルテオーゲン区は 61.0 %(対照区 56.7%)と有意差はないもののルテオーゲンの投与が受胎率を向上させた。hCG 投与による受胎率を検証した結果、hCG 投与区が47.8%、対照区が 47.4%と両区に差はなかった。3.胚の凍結保存液の組成については,エチレングリコール(EG)とプロピレングリコール(PG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)の組み合わせた凍結保存液について胚の凍結・融解後の生存性について検討した。EG と PG を組み合わせた凍結液では,10 個の胚が凍結前と変わらず生存(100%)したが,EG と DMSO を組み合わせた凍結液では 10 個中 2 個の胚が変成(80%)した。EGと PGを組み合わせた凍結液で凍結保存性が向上した。
[成果の活用面・留意点]
1.カテーテル型移植器は高圧蒸気滅菌器による滅菌が必要である。
2.カテーテル型移植器の使用にはある程度の熟練が必要である。
3.ルテオーゲンの投与により不受胎になった場合発情回帰に時間がかかる。
[残された問題点]
本県における、受胚牛の主な不受胎要因(暑熱や飼養管理)についての検査および対策が
必要である。
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
1.受胚牛への CIDR(膣挿入プロゲステロン)および LUTE(筋内投与持続型プロゲステロン)投与が胚の受胎に及ぼす影響
区分 移植頭数 受胎頭数 不受胎頭数 受胎率(%)
CIDR区 165 95 70 57.6
LUTE区 105 64 41 61.0
対照区 201 114 87 56.7
2.受胚牛へのhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)投与が胚の受胎に及ぼす影響
区分 移植頭数 受胎頭数 不受胎頭数 受胎率(%)
hCG区 46 22 24 47.8
対照区 38 18 20 47.4
3.受胚牛への移植部位の違いが受胎に及ぼす影響
区分 移植頭数 受胎頭数 不受胎頭数 受胎率(%)
深部移植 45 24 21 53.3
浅部移植 48 16 33 33.3
4.凍結保存液の組成が胚の凍結・融解後の生存性に及ぼす影響
30%EP液(EG+PG)を用いた保存成績 30%ED液(EG+DMSO)を用いた保存成績
胚 凍結前 融解後 胚 凍結前 融解後
№ 胚ランク 胚ステージ 胚ランク № 胚ランク 胚ステージ 胚ランク
1 B CM B 1 B CM DG
2 B CM B 2 B CM C
3 B CM B 3 B EB B
4 B CM B 4 B EB B
5 C EB C 5 B EB B
6 A EB A 6 B EB B
7 B EB B 7 A Exp A
8 B EB B 8 A Exp A
9 A Exp A 9 A Exp A
10 A Exp A 10 A Hed A
注)網掛けはランクが低下した胚を示す
A:胚全体に占める変性細胞10%未満 B:10%以上~30%未満 C:30%以上~50%未満 DG:変性死滅
CM:後期桑実胚 EB:初期胚盤胞 Exp:拡張胚盤胞 Hed:脱出胚盤胞
[研究情報]
研究課題名:牛胚の受胎率向上試験
課 題 I D:2005畜 018 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:県単
研 究 期 間:平成 17年度~平成 21年度研究担当者:山城 存、大城正光、運天和彦、砂川隆治、棚原武毅、新田宗博
発表論文等:沖縄畜研研究報告 44号(2006)、45号(2007)、47号(2009)特許取得予定の有無:無
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琉球在来豚アグーのミトコンドリアDNA d-loop領域における母系解析
[要 約]
母系解析技術を用いて,ミトコンドリアDNA(mtDNA)d-loop領域におけるアグーの塩基配
列を決定した。母系解析を行うと東洋系タイプと西洋系タイプとの識別が可能となる。
[キーワード]ミトコンドリアDNA,塩基配列,母系解析
[担 当 機 関]沖縄県畜産研究センター 飼養環境班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
2005年にアグーブランド豚推進協議会(協議会)が設立され,アグーの個体登録を行って
いる。アグーのmtDNA d-loop領域における母系解析により1つのハプロタイプを報告されて
いるが,協議会により登録されたアグーについてはいまだ解析が行われていない。そこで,
協議会アグー種豚を対象にmtDNA d-loop領域塩基配列の解析を行った。
[成果の内容・特徴]
供試豚は協議会が登録したアグー種豚90頭を用いた。DNAの抽出は耳介組織を蒸留水で洗
浄した後,プロテナーゼK(200μg/ml)を含んだDNA抽出バッファーで溶解後,フェノール
クロロホルム処理にて精製し,エタノール沈殿により行った。mtDNA d-loop領域のPCRには
そのDNA50ngを用いた。プライマーには725mtDNA(5’-CGGCCAACTAGCCTCCATCTTAT-3’)およ
び726mtDNA(5’-GCGCGGATACTTGCATGTGTAAT-3’)を使用した。反応条件は94℃30秒,68℃1分
を10サイクルと,94℃30秒,60℃20秒,72℃1分を40サイクルとした。塩基配列はこのPCR
増幅産物とBigDye Terminator v3.1Cycle Sequencing Kit(Applid biosystems社製)を用
いジデオキシ法により決定した。シークエンス用プライマーには,Okumuraらの報告にある
mitL44(5’-CGGCCAACTAGCCTCCATCTTAT-3’),mitH45(5’-TTCAGTGCCTTGCTTTGATA-3’)およ
びmitL11(5’-TACCATGCCGCGTGAAACCA-3’)を使用した。得られたd-loop領域の塩基配列は
Okumuraらの報告によるブタ品種ごとのハプロタイプと照合し,その異同と頭数を調査した。
1.mtDNA d-loop領域1049bpの塩基配列を調べた結果,26ヶ所に塩基置換部位が認められ,
5つのハプロタイプであることが判明した(表1)。タイプ1とタイプ2との間には2ヵ所にお
いて塩基置換部位が認められた(表1)。
2.近隣結合法により系統学的に分類したOkumuraらが報告したmtDNAハプロタイプと照合す
ると,タイプ1およびタイプ2は東洋系タイプと同様で,タイプ3,タイプ4およびタイプ5は
西洋系タイプと同様であった。アグー90頭のうち東洋系タイプの頭数は,供試豚全頭の85.6
%を占めた(図1)。
[成果の活用面・留意点]
現在,アグーの個体登録認定を行う際にはマイクロサテライトマーカーを用いた核DNAの
多型解析を行っている。これに加え,mtDNA d-loop領域における母系解析を活用すると東洋
系タイプと西洋系タイプとの識別が可能になり,登録体制を強化する手法として有効である。
[残された問題点]
特になし
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
表1 アグーのmtDNA d-loop領域における塩基置換部位
図1 mtDNA d-loop領域のハプロタイプの系統樹
注 1)系統樹は Okumuraら(2001)が作成した系統樹から引用したもの。2)図中の Aは東洋系タイプの群を示し,Bは西洋系タイプの群を示す。3)分枝上にある数値はブートストラップ値(%)を示す。
[研究情報]
研究課題名:琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立
課 題 I D:2005畜019 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:公募・新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研 究 期 間:平成17年度~平成21年度
研究担当者:島袋宏俊,稲嶺修,仲村敏,大城まどか,与古田稔,美川智,佐藤正寛,
石井和雄
発表論文等:琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(3)ミト
コンドリアDNA d-loop領域における母系解析,沖畜研報,46,2008
特許取得予定の有無:無
塩基置換部位(b)
ハプロタイプ
109
124
131
137
146
154
159
182
242
280
289
295
307
324
391
406
576
693
705
707
741
862
971
978
1028
1049 頭数
タイプ1 C A A - T T G C T T A G T T T T G G G G C T C G C T 23
タイプ2 C A A - T T G C C T A G T T T T G A G G C T C G C T 54
タイプ3 T T G C C C A T T T A A C C C T A G A A T T T A T C 4
タイプ4 T T G C C C A T T C A A C C C C A G A A T C T A T T 3
タイプ5 T T G C C C A C T T G A C C C T A A A A C T T A T T 6
ハプロタイプ1(23頭)
ハプロタイプ2(54頭)
ハプロタイプ4(3頭)ハプロタイプ3(4頭)
ハプロタイプ5(6頭)
ハプロタイプ1(23頭)
ハプロタイプ2(54頭)
ハプロタイプ4(3頭)ハプロタイプ3(4頭)
ハプロタイプ5(6頭)
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アグー識別技術の開発
[要 約]
96個のマイクロサテライト(MS)マーカーの中から選抜した14MSマーカーを利用すると,
アグーと他品種とを高精度に識別することができる。
[キーワード]マイクロサテライトマーカー,アグー,品種識別
[担 当 機 関]沖縄県畜産研究センター 飼養環境班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
アグーの遺伝的特徴を把握するために,大城らおよび島袋らは23個のMSマーカーを用い,
遺伝的多様性が低いことを明らかにし,7つのグループに分類した。しかしながら,アグー
の識別精度については,いまだ十分な検討がなされていない。そこで,アグーの識別精度を
向上させるため,有用なMSマーカーを新たに選抜し,その精度について検討した。
[成果の内容・特徴]
沖縄県アグーブランド豚推進協議会(協議会)が登録したアグー171頭,また県内におい
て飼養されている他品種35頭およびアグー交雑種60頭を材料豚とした。DNAの抽出には耳
介組織を用いた。PCRは94℃9分の熱変成後,94℃30秒,55℃30秒,72℃30秒を40サイクルと
した。PCR産物は,3130xlおよび3730xlDNAアナライザーを用いて泳動し,分離・検出した。
1遺伝子座あたりヘテロ接合度(Ho),多型情報含有値(PIC)およびJaccard係数は,次式を
用い算出した。
n
Ho=1-Σpi(ただし,piはi番目の遺伝子型頻度,nは遺伝子型数)
i=1
n n
PIC=1-Σpi2-Σ2(pipj)2(ただし,piはi番目の遺伝子型頻度,nは遺伝子型数)
i=1 j>i
|A∩B|
Jaccard(A,B)= 0≦Jaccard≦1 (だだし,|A|は集合Aのアリル数)
|A∪B|
1.現在,協議会がアグーの識別に利用している23個のMSマーカー(Aセット)を用いた結
果,供試豚全体の対立遺伝子(アリル)数,HoおよびPICの平均値はそれぞれ5.5,0.40,0.
45であった(表1)。類似度が0.26のときに,アグーと他品種とを識別できる(図1)。
2.新たに選抜した14MSマーカー(Bセット)を用いた結果,供試豚全体のアリル数,Hoお
よびPICの平均値はそれぞれ7.8,0.63,0.63であった(表1)。類似度が0.13のとき,アグ
ーと他品種とを識別できる。アグーを識別する際,BセットはAセットより高精度に識別でき
る(図1)。
[成果の活用面・留意点]
Bセットを用いると,アグーと他品種とを高精度に識別することができる。
[残された問題点]
AセットおよびBセットは,アグーとアグー交雑種を識別することは困難である。
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
表1 各セットごとのアリル数,ヘテロ接合度観察値
および多型情報含有値 (n=266)
図1 各セットごとの系統樹
注1)太線は他品種との識別境界線を示す。
2)類似度が 0の場合,マーカーセットの対立遺伝子が完全に一致する。数値が 0に近づくほど,アグーと他品種との識別精度は高くなる。
[研究情報]
研究課題名:琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立
課 題 I D:2005畜019 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:公募・新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研 究 期 間:平成17年度~平成21年度
研究担当者:島袋宏俊,稲嶺修,仲村敏,宮城正男,佐藤正寛,石井和雄
発表論文等:琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(4)アグー識別技術の開発,沖畜研報,47,2009
特許取得予定の有無:無
No.ofmarkers
No.ofalleles
Ho PIC
23 5.5 0.40 0.45
14 7.8 0.63 0.63
Aセット
Bセット
Name of set
類 似 度
バークシャー種
ランドレース種
大ヨークシャー種Aセット
アグー、アグー交雑種
Bセット
0.27
0.21
0.25
0.26
0.15
アグー、アグー交雑種
0.17
0.130.20 0.30
0.46
0.40 0.50
0.230.13
0.32
アグー交雑種
大ヨークシャー種
デュロック種
バークシャー種
デュロック種
ランドレース種
0.60 0.70
アグー
0.80 1.000.90
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アグー精子の凍結処理工程における精子前処理液と室温静置時間
[要 約]
アグーの凍結精液製造では、採精後素早く精漿を除去し、BTS を添加・洗浄した後、室温静置なしで希釈液を加え冷却・凍結処理を行うことが有効な方法である。
[キーワード]ブタ精子、凍結技術
[担 当 機 関]沖縄県畜産研究センター 飼養・環境班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
豚の精子は牛に比べ、凍結融解処理に伴うコールドショックや細胞障害を受けやすく、障
害を受けた精子では生理学的機能が著しく低下することが知られている。そのため、豚精子
を凍結保存する際は、コールドショックに対する精子の抵抗性を高めるために冷却・凍結前
に精液を室温保存する方法が行われており、広く一般的に利用されている「豚凍結精液利用
技術マニュアル」においても、採精後の精液を数時間静置する方法が採られている。また、
精漿は塩類やコレステロールなどの凍結に悪影響を及ぼすといわれる物質も含まれているこ
とから、室温静置後除去されることが慣例になっている。しかし、アグーでは射出時の精子
性状が極端に劣るため、マニュアルに準拠して凍結精液を作製しても良好な結果が得られて
いない。
そこで、本研究ではアグーに適した精子凍結保存技術の確立を目的として、豚精子の各凍
結処理工程を検証するとともに、アグー精子の凍結保存に適した前処理液と静置時間につい
て検討した。
[成果の内容・特徴]
1.精子処理液は、精漿液(SP)、モデナ液(Modena)、Beltsville thawing solution(BT
S)、D-glucose-PBS(D-PBS)およびCa-and Mg-Free Tyrode solution(mTyrode)を用いた。
2.アグー精子はBTSを用いることで、運動精子率(Motile)、前進運動精子率(Progressi
ve)、精子細胞膜正常率が改善された(図1、2)。
3.アグー精子は室温静置0時間区が、1および2時間区よりMotileおよびProgressiveが高
く維持される傾向を示し、精子細胞膜正常率、精子アクロシン活性および体外受精における
精子侵入率も有意(P<0.05)に高い値を示した(図3、4)。
4.アグー精子の場合は、採精後素早く精漿を除去し、BTSを添加・洗浄した後、室温放置
なしで希釈液を加え冷却・凍結処理を行うことが有効な方法であると示唆された。
[成果の活用面・留意点]
1.一般豚においては、「豚凍結精液利用技術マニュアル」による凍結法が有効であるが、
アグーにおいては、採精後素早く精漿を除去し、BTSを添加・洗浄後、室温放置なしで希釈
液を加え冷却・凍結処理を行うことが有効である
[残された問題点]
周年的な精液性状の調査を行い、その性状に適した希釈液、融解液および技術を開発が必
要である。
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
[具体的データ]
図2 各処理液における精子細胞膜
性状率
*有意差あり(P<0.05)
図3 各室温静置時間における精子細胞膜正常率 図4 各室温静置時間における精子侵入率
*有意差あり(P<0.05) *有意差あり(P<0.05)
[研究情報]
研究課題名:琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立
課 題 I D:2005畜019 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:公募・新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研 究 期 間:平成 17年度~平成 21年度研究担当者:仲村敏、大城まどか、稲嶺修、鈴木直人、吉元哲兵、建本秀樹、渡慶次功、
玉代勢秀正、知念司
発表論文等:琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(1)ブタ凍結精液作製時の室温放置に用いる精子処理液と放置時間の検討、沖縄畜試研報、No.43、2005
特許取得予定の有無:無
図1 各処理液における運動精子率(Motile)および前進精子率(Progressive)*有意差あり(P<0.05)
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膣内粘液電気抵抗値を指標とした発情開始時期および授精適期の判定技術
[要 約]
アグーの受精適期は発情初期であり、発情徴候の発現に乏しいアグーを効率的に繁殖させ
るには、膣内粘液電気抵抗値(VER)法を活用して発情状態を判断し、発情初期に授精を行う方法により受胎率を向上できる。
[キーワード]膣内粘液電気抵抗値、発情判定
[担 当 機 関]沖縄県畜産研究センター 飼養・環境班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
豚の授精適期は通常、陰部の腫脹、発情行動や背圧反応などの発情徴候により判断してい
る。しかし、アグーは発情徴候の発現に乏しく微弱発情や鈍性発情を呈する個体が多いため、
繁殖効率を低下させる原因の一つとなっている。そのため、アグーの生産性を高めるために、
発情判定や授精適期を的確に判定する技術が求められている。
そこで本試験では、発情や排卵時期を可能な限り正確に捉え、アグーの授精適期をより的
確に判断することを目的に、膣内粘液電気抵抗(VER)値の変動と性ホルモンの動態との関連について検討した。
[成果の内容・特徴]
1.VER 値は、発情明瞭豚と発情微弱豚いずれも発情周期と同様な周期的動態を示した。また、VER 値は発情開始 2 日前に最低値を示す傾向が認められ、VER 値を測定することによりアグーの発情開始日を推定できることが示唆された(図1)。
2.VER 値とプロジェステロン(P4)は相関性が高く(P<0.001)、VER 値の動態はホルモンによる卵巣の周期的変化を反映していることが示唆された。
3.アグーは、VER 値の動態、エストロジェン(E2)、P4 動態変化、LH サージの発現時期がランドレースより早いことが確認されことから、アグーの排卵は一般的に飼養されている
西洋豚より早期に誘発されることが示唆された。
4.アグーは LH サージが VER 値の上昇する前の早期に起こることから、授精適期は発情直後であると推察され(図2)、VER 値を指標とした人工授精により受胎率が著しく向上した(表1)。
[成果の活用面・留意点]
1.VER 値の測定は、市販の膣内電気抵抗測定器(ポーランド、DORAMINSKI 社製)を使用した。
2.VER値は、機種・品種によって測定値が異なることを考慮して利用する。3.測定機器は膣内に挿入することから、使用にあたっては、特に衛生面に留意する。
[残された問題点]
VER 値測定により、発情が不明瞭な個体においても、発情を発見し、受胎率を向上させることができたが、今後はそれらの不明瞭豚の治療や受胎率の向上が必要である。
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
図1 性周期に伴う発情徴候正常豚の VER 値の動態
図2アグーおよびランドレースにおける授精適期
表1 VER値変動パターンを利用したアグーの人工授精成績頭数 受胎率 出産率 妊娠期間 一腹産子数
(%) (%) (平均日±標準誤差) (平均±標準誤差)
対照区 1) 45 27.2 100.0 112.6± 1.0 4.7± 0.6VER値指標区 2) 32 45.8* 100.0 114.1± 1.5 4.0± 0.61)通常管理下で発情状況を確認後、12時間後に 1回目の人工授精、24~ 36時間後に 2回目の人工授精を実施。
2)VER値測定により発情開始日を推定し、発情確認直後に 1回目の人工授精、12~ 24時間後に 2回目の人工授精を実施。*5%の危険率で有意差を認める。
[研究情報]
研究課題名:琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立
課 題 I D:2005畜019 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:公募・新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研 究 期 間:平成 17年度~平成 21年度研究担当者:仲村敏、島袋宏俊、稲嶺修、山内昌吾、吉元哲兵、建本秀樹、
与古田稔、知念司
発表論文等:琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(3)膣内粘液電気抵抗値の変動と性ホルモン濃度の動態との関連、沖縄県畜産研究センター試験研究報告、
No.45、2007特許取得予定の有無:無
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乳酸菌添加剤による暖地型牧草サイレージの発酵品質への効果
[要 約]
暖地型牧草ギニアグラス「ガットン」、ネピアグラス、ディジィットグラス「トランスバ
ーラ」では、サイレージ調製の際に、乳酸菌添加剤を無添加でも十分な乳酸菌増殖が得られ
るとともに、市販の乳酸菌製剤の添加により、さらに優れる発酵品質が確保できる。また、
自家製乳酸菌添加剤も十分活用でき、生産コストの低減につながる。
[キーワード]暖地型牧草、サイレージ、乳酸菌添加剤、発酵品質
[担 当 機 関]畜産研究センター・育種改良班(電話0980-56-5142)
[背景・ねらい]
一般に暖地型牧草は、サイレージ発酵基質となる可溶性炭水化物含量が少なく、寒地型牧
草に比べて乳酸発酵を主体とした良質なサイレージ調製が難しいとされている。そこで、調
製法が異なる乳酸菌添加剤を用いて、乳酸菌添加によるサイレージ発酵特性と栄養価に与え
る効果を明らかにし、暖地型牧草の良質サイレージ生産技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
1.ギニアグラス「ガットン」(Gp)、ネピアグラス(Ne)、ディジィットグラス「トランス
バーラ」(Tr)について、付着乳酸菌発酵液(FJLB区)、乳酸菌N-11株培養液(N-11区)、
市販乳酸菌製剤アクレモコンク(アクレモ区)の添加による乳酸菌数はいずれの草種およ
び処理区でも2日目には108cfu/g以上の値となり、14日目まで十分な乳酸菌数が安定して
維持された(表1)。
2.乳酸菌同定試験では、7日目と14日目のいずれの草種、処理区でもLactobacillus属が優
勢であった(表2)。
3.GpではpH、乳酸含量、V-SCOREが、対照区とアクレモ区で他の処理区に比べ品質が向上
した。また、NeとTrでは処理区間の差はみられないものの、いずれの処理区も品質が向上
た(表2)。
4.暖地型イネ科草種のサイレージ調製は、草種によっては、付着乳酸菌のみで十分な乳酸菌
増殖と乳酸発酵をもたらすが、市販の乳酸菌製剤アクレモコンクの添加は、その発酵の安定
性を保証するための技術として有用である。また、良質サイレージ調製のための生産コスト
の低減には、付着乳酸菌発酵液のような自家製乳酸菌添加剤も十分活用できる。
[成果の活用面・留意点]
1.暖地型牧草を利用したサイレージ調製時に、乳酸菌添加剤を選択する際の一助となる。
2.本成果はパウチ法による実験室レベルの評価であり、参考資料として活用する
[残された問題点]
刈取り間隔の違いに伴う調製サイレージの品質評価及び、地域ごとに発酵に関与する成分
を比較検証し、発酵品質の地域間差が引き起こされる要因の解明など、暖地型牧草サイレージ
の調製技術を高める研究を展開する。
畜産業分野
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畜産業分野
[具体的データ]
表1.サイレージ調製14日後のサイレージ中の微生物組成
1)log cfu/g FM、2)平均値±標準偏差
表2.草種の違いによる V-SCORE及び優勢菌割合
1)( )括弧の数値は同処理区20株中において確認された優勢菌株の割合(%)
2)V-SCORE評点:80点以上は良、60~80点は可、60点以下は不良(14日目の値)
3)Gp:ギニアグラス,Ne:ネピアグラス,Tr:パンゴラグラス・トランスバーラ
[研究情報]
研究課題名:新規導入草種の刈取時期に伴うサイレージ品質の評価
課 題 I D:2008畜 003 研究区分:実用化研究
予 算 区 分:受託・温暖化対策プロジェクト受託事業
研 究 期 間:平成 20年度~平成 21年度研究担当者:稲福政史、川本康博(琉球大学農学部)
発表論文等:なし
特許取得予定の有無:無
草種 処理名 乳酸菌1) 酵母菌1) 好気性細菌1)
対照区 8.43±0.042) - 1.22FJLB区 9.10±0.10 - 0.91アクレモ区 8.57±0.06 - 1.20N-11区 9.07±0.21 - -対照区 8.54±0.11 5.06 2.28FJLB区 8.86±0.29 2.98 -アクレモ区 8.61±0.03 5.34 1.99N-11区 8.59±0.19 2.74 0.84対照区 8.72±0.13 3.71 0.92FJLB区 8.83±0.05 3.10 2.92アクレモ区 8.95±0.07 2.66 1.55N-11区 8.61±0.14 3.65 -
Gp
Ne
Tr
草種 処理 pH乳酸含量g/kgDM
V-score2日目 7日目 14日目
Streptococcus(50)
Lactobacillus(50)
FJLB区 5.89 0.34 57.7 Lactobacillus(79)
Lactobacillus(95)
Lactobacillus(58)
アクレモ区 4.15 0.93 99.3 Streptococcus(71)
Lactobacillus(95)
Lactobacillus(100)
N-11区 5.91 0.29 68.0 Streptococcus(100)
Streptococcus(65)
Lactobacillus(85)
対照区 4.41 2.45 100.0 Streptococcus(90)
Lactobacillus(60)
Lactobacillus(79)
FJLB区 4.22 2.38 100.0 Lactobacillus(68)
Lactobacillus(100)
Lactobacillus(70)
アクレモ区 4.23 2.70 99.9 Streptococcus(63)
Lactobacillus(89)
Lactobacillus(100)
N-11区 4.52 2.11 99.8 Streptococcus(100)
Lactobacillus(90)
Streptococcus(75)
対照区 3.78 6.46 99.9 Streptococcus(100)
Lactobacillus(94)
Lactobacillus(73)
FJLB区 3.71 7.39 99.6 Streptococcus(55)
Lactobacillus(100)
Lactobacillus(100)
アクレモ区 3.73 6.41 99.9 Streptococcus(100)
Lactobacillus(95)
Lactobacillus(94)
N-11区 3.69 7.54 99.7 Streptococcus(100)
Lactobacillus(80)
Lactobacillus(70)
Streptococcus(86)1)
Streptococcus(67)5.05 2.27 99.4
Gp
Ne
Tr
対照区