2014.9.18
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 小児科
高岡 有理
食物アレルギーの基礎知識
食の安全安心シンポジウム「食物アレルギーに対する取組み」
大阪府庁新別館北館4階 多目的ホール
はじめに
•「安心」 で
•「健康的」かつ
•「楽しい」食生活 を送りたい。
食物アレルギーがあっても
そのためには
•適切な診断・対応
が必要となる。
•社会的な対応
食物アレルギーの臨床型分類
食物アレルギーガイドライン2012
臨床型発症
年齢頻度の高い食物 耐性の獲得
アナフィラキシーショックの
可能性
食物アレルギーの機序
新生児・乳児消化管
アレルギー
新生児期
乳児期牛乳(育児用粉乳) 多くは寛解 (±)
主にIgE非依存型
食物アレルギーの関与する
乳児アトピー性皮膚炎乳児期
鶏卵、牛乳、小麦、
大豆など多くは寛解 (+)
主に
IgE依存型
即時型症状(じんま疹、アナフィラキシーなど)
乳児期~
成人期
乳児~幼児:
鶏卵、牛乳、小麦、
そば、魚類、ピーナッツ
など
学童~成人:
甲殻類、魚類、小麦、
果物類、そば、ピーナッツ
など
鶏卵、牛乳、
小麦、大豆など
多くは寛解
その他の多く
寛解しにくい
(++) IgE依存型
特
殊
型
食物依存性運動誘発
アナフィラキシー(FEIAn/FDEIA)
学童期~
成人期小麦、エビ、イカなど 寛解しにくい (+++) IgE依存型
口腔アレルギー
症候群(OAS)
幼児期~
成人期果物・野菜など 寛解しにくい (±) IgE依存型
即時型食物アレルギーの全国モニタリング調査2501人中53%が1歳以下、5歳まで約80%、20歳以上の成人6%
0歳 1歳 2,3歳 4‐6歳 7‐19歳 20歳以上 合計
症例数 1270 699 594 454 499 366 3882
1位 鶏卵62.1 %
鶏卵44.6 %
鶏卵30.1 %
鶏卵23.3 %
甲殻類16.0%
甲殻類18.0%
鶏卵38.3 %
2位 乳製品20.1 %
乳製品15.9 %
乳製品19.7 %
乳製品18.5 %
鶏卵15.2%
小麦14.8%
乳製品15.9%
3位 小麦7.1 %
小麦7.0 %
小麦7.7%
甲殻類9.0%
そば10.8%
果物類12.8%
小麦8.0%
4位 魚卵6.7 %
ピーナッツ5.2%
果物類8.8 %
小麦9.6%
魚類11.2%
甲殻類6.2%
5位 甲殻類および果物5.1 %
ピーナッツ6.2 %
果物類9.0%
そば7.1%
果物類6.0%
ソバ5.9%
牛乳8.2%
鶏卵6.6%
ソバ4.6%
6位
7位 果物類5.3% 魚類7.4%
魚類4.4%
年齢別原因食物の頻度
食物アレルギーガイドライン2012より
平成20年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果
鶏卵38.3%
鶏卵38.3%
乳製品20.9%
小麦12.1%
ピーナッツ 4.8%
魚卵 4.3%
果物 4.0%
甲殻類 3.9%魚類 2.5%
ソバ 2.4%
木の実 1.7% 大豆 1.5%
その他 3.3%
全年齢における即時型アレルギー反応をきたした原因食物
即時型食物アレルギーにより引き起こされる症状
皮膚症状 かゆみ、じんま疹、浮腫(むくみ)、発赤、湿疹粘膜症状
眼症状 充血・浮腫、かゆみ、流涙、まぶたの腫れ鼻症状 くしゃみ、鼻汁、鼻閉口腔咽頭症状 口腔・口唇・舌の違和感・腫脹、
のどの痒み、イガイガ感消化器症状 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、血便呼吸器症状 のどが絞まった感じ、声枯れ、咳、ぜん鳴、呼吸困難全身性症状
アナフィラキシー 症状が多臓器にわたり、悪化が急速な状態アナフィラキシーショック 極めて危険な状態!!!
国立病院機構 三重病院 藤澤隆夫先生ご提供
西暦年 2006 2007 2008 2009 2010 2011
有害食物による 5 5 4 4 4 5
ハチとの接触 20 19 15 13 20 16
薬物の有害事象 34 29 19 26 21 32
血清による 1 1 0 1 0 0
その他 6 12 10 7 6 18
合計 66 66 48 51 51 71
参考:1~14歳の死因 第1位は不慮の事故で年間約600名
アナフィラキシーによる死亡者数
「厚生労働省 人口動態統計」
乳児・幼児早期鶏卵・牛乳・小麦アレルギーの耐性獲得
・3歳までに約50%・学童まで80~90%
学童期から成人の場合甲殻類・小麦・果物・魚類・ソバ・ピーナッツ等
・乳幼児早期発症例に比べて低い
食物アレルギーの耐性獲得
患者の多くは花粉症を有しており、花粉によく似た抗原を有する生果物、生野菜などが原因となる。
症状は口腔症状が中心で多くは自然に軽快する。
口腔アレルギー症候群
花粉 主な果物、野菜など
シラカババラ科(リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、桃、すもも、アンズ、アーモンド、ビワ、マンゴ、キウイなど)
スギ トマト
イネ メロン、スイカ、トマト、キウイ、オレンジ
ブタクサ ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ)、バナナ
緊急時に備えた処方薬
• 内服薬①抗ヒスタミン薬:皮膚症状、粘膜症状などに有効。効果が現れるのに30分はかかる。②気管支拡張薬:軽度の呼吸器症状に有効。
③ステロイド薬:2相性反応を抑える。効果発現に数時間かかる。
• 吸入薬
気管支拡張薬:内服薬より即効性がある。
• 注射薬
アドレナリン自己注射薬(エピペン®)
アナフィラキシー症状への第一選択薬!!
自己注射型アドレナリン(エピペン®)
誤食について
アレルギーを起こす閾値
も重症な食物アレルギーの場合食物に含まれるアレルゲンタンパク量として
数マイクログラム/g(ml)100万分の1グラム
例えば、牛乳タンパク 10 μg/mlとは、、、
1 リットルの水に、牛乳 ml加えた濃度
資料:牛乳はタンパク含有量3.3%
↓牛乳1mlあたり33mgのタンパクを含む
・生産・輸送ラインでのコンタミ・食器・調理器具からのコンタミ・同じ調理場所でのコンタミ・調理中の湯気,煙,粉塵の吸入
小麦N=18(初発1)
ピーナツN=3(初発1)
その他N=6(初発3)不明N=12
鶏卵N=23(初発3)
乳製品N=25(初発1)
魚N=2(初発1)
原因食材(重複、疑いを含む)
調理形態(重複を含む)
0% 20% 40% 60% 80% 100%
小麦N=9
乳製品N=8
鶏卵N=13
外見上確認できる料理
一部含む(惣菜)
一部含む(菓子、飲料)
混入
5歳以下 6歳以上
0% 20% 40% 60% 80% 100%
小麦N=9
乳製品N=17
鶏卵N=10
初発4例除去と知らずに与えた2例誤配膳5例子供が食べていた3例無症状で摂取歴あり2例
<5歳以下でそのものおよび外見上確認できる料理の原因>
そのもの主体の料理
0
5
10
15
20
25
30
35
自宅 学校・園 飲食店 外出先 未確認
6歳以上
5歳以下
(人)
誤食の起きた場所
対象:2007年1月から2009年7月の誤食緊急受診例
当センターに受診している食物アレルギー児の母親へのアンケート調査3
(不安について【3段階評価】) N=134
(第21回日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会 一般演題 2004)
必ず表示される7品目 (特定原材料)
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに必ず表示される7品目 (特定原材料)
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
表示が勧められている20品目(特定原材料に準ずるもの)
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、 くるみ、さ
け、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、 やまいも、りんご、
ゼラチン、バナナ、ゴマ、カシューナッツ
表示が勧められている20品目(特定原材料に準ずるもの)
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、 くるみ、さ
け、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、 やまいも、りんご、
ゼラチン、バナナ、ゴマ、カシューナッツ
表示されるアレルギー物質
•あらかじめ箱や袋で包装されたものが対象(店頭調理品、対面販売、飲食店では表示義務なし)•小さなもの(包装面積が30cm2以下)は表示しなくてもよい•食品中に該当する原材料が数μg/ml(g)以上で表示。
•あらかじめ箱や袋で包装されたものが対象(店頭調理品、対面販売、飲食店では表示義務なし)•小さなもの(包装面積が30cm2以下)は表示しなくてもよい•食品中に該当する原材料が数μg/ml(g)以上で表示。
<乳そのもの>①ホエイやカゼイン: 牛乳のタンパク質の一種。②乳酸菌飲料: 乳を主原料とし、乳酸菌又は酵母で発酵
させ加工したもの。
分かりにくい表示 ~牛乳を例に~
<ごく微量の乳成分>①乳糖: 糖の一種。ほとんどの人は除去が必要ないレベル。
<牛乳を含まず食べられるもの>
①乳化剤: 卵黄や大豆、牛脂などから作られる。
②乳酸カルシウム
③カカオバター: カカオ豆からできる。バターではない。
④乳酸菌: 漬物、キムチなどに用いられる。
診断と治療血液検査陽性=食物アレルギーではありません!本来は経口負荷テストが必要です。
一般にアレルギー反応は、抗原に対する過剰反応ですので、同じ条件で食べれば常に症状が誘発されます。
卵 :固ゆで卵白、固ゆで卵黄牛乳:生の牛乳、乳成分使用の食パン 魚 :焼き魚 エビ:ゆでたエビ小麦:うどん 大豆:豆腐、味噌 ゴマ:すりゴマ ピーナッツ:ローストピーナッツ
原則日帰り入院で行う。オープンチャレンジ法を基本とする。<目的>診断、耐性獲得の確認、どこまで食べられるかの確認
0 20 40 60 80
0.5 1 2 5 10 20
時間(分)
摂取量(g)
100 300(入院)120(外来)
経過観察
・ 摂取量は、年齢やアレルギーの強さに応じて調整。・ アレルギー症状が出現したら中止し必要な処置を行う。
負荷食品
大阪府立呼吸器・アレルギー医療総合センター小児科
当院での経口負荷テスト
食物アレルギーの治療
必要 低限の食物除去
確かに生体に不利益な反応がある。
印象や恐れを根拠とした除去は避けるアレルゲンとなる食材でも食べられる範囲があれば食べてよい
成長に影響を及ぼさない。栄養面に配慮した代替食
☆薬物療法(DSCG内服、抗ヒスタミン薬)の有効性は必ずしも高くない
症状誘発時の対応
いつでも医療機関を受診できる体制を持つ!
財団法人日本学校保健会平成20年3月31日 初版
学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン
保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
厚生労働省 平成23年3月
学校のアレルギー疾患に対する取組みガイドライン日本学校保健会 平成20年3月31日 初版
事前対策 実地対策
食物アレルギー事故の予防
情報収集(書類・面談)患児の詳細な情報把握と
共有
意識改革管理職、現場職員の当事者意
識と知識・能力の向上
環境の充実調理場の整備、
調理職員の教育
対応マニュアルの作成定期的な確認、周知、
シミュレーション
食物アレルギーの対応
家庭の食事においては・・・
原因物質の確定させ、必要 低限の除去を行う。食べられる範囲があれば摂取してよい。
園・学校における給食は・・・
安全面をより重視して、原因物質を確実に除去する。
給食対応は、スタッフ全員で取り組み、簡単・単純な方法から実践する。
• 除去食の確認
複数の目で。複数の場で。
• 混入させない工夫
どのように食べさせるか。給食係は可能か。こぼしたものの掃除はどうするか
アナフィラキシー
保育所・学校生活管理指導表
個別面談
面談者
保護者 ・ 管理職 ・担任 ・ 栄養教諭 ・
養護教諭 など
食物アレルギー対応委員会
食物アレルギー
症状発生時の処置・手順を確認
給食開始
関係職員と保護者でアレルギー対応食などの方法を確認①献立表対応 ②完全・一部弁当持参 ③除去食 ④代替食
医師の記載に基づいた対応
チームとして対応する
自治体内では統一した対応を
単純な方法で安全を確保
よくわかる食物アレルギーの基礎知識2012改訂版 一部改編
給食提供までの過程
教室で注意する場面•給食誤配膳
隣の子が牛乳をこぼした、他の子のものを食べた、食べ物の食べこぼし、食べ物で汚れた手で触ったなどの理由による誤食おやつの時間は卵・乳・小麦を使用することが多くより注意が必要
•製作活動小麦粘土を使った遊び・製作その他牛乳パックや乾燥したマカロニなど
•調理体験(おやつ作りなど)•行事豆まき :大豆やピーナッツ行事やイベントでの飲食物など普段と違う状況ではより注意が必要
口に入れた時口腔内違和感は重要な症状
皮膚に付いた時さわった手で眼をこすらないようにする
眼症状(かゆみ、充血、球結膜浮腫)が出現した時
口から出せるものは出して、口をすすぐ
洗い流す(タオルで拭かない)
洗眼
アレルゲンを誤って口に入れたり身体についてしまったときは、洗い流すのが基本
消化器の症状 ・繰り返し吐き続ける ・持続する強い(がまんできない)おなかの痛み
呼吸器の症状・のどや胸が締め付けられる ・声がかすれる ・犬が吠えるような咳
・持続する強い咳込み ・ゼーゼーする呼吸 ・息がしにくい
全身の症状・唇や爪が青白い ・脈を触れにくい・不規則
・意識がもうろうとしている ・ぐったりしている ・尿や便を漏らす
緊急性の高いアレルギーの症状
一つでもあればエピペンを注射して直ちに救急車を呼ぶ
エピペン®の適応(日本小児アレルギー学会より抜粋)
東京都 食物アレルギー緊急時対応マニュアル
東京都 食物アレルギー緊急時対応マニュアル
社会生活としての場としての食事
• 味わう 目で見て、匂いを味わって、食感を感じて(口、耳)、味わって美味しいという満足感
• 共有 同じものを分け合う
集団に属する確認→安心感
• 会話 リラックスできる場(社会性の向上)
ご清聴どうもありがとうございました。
わからないことはぜひ質問してください。
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター小児科
高岡有理
FAX 072-957-8002
公益財団法人 日本アレルギー協会 http://www.jaanet.org/「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」
(日本学校保健会出版、学校における必読書)「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」
(厚生労働省、保育園における必読書)環境再生保全機構 http://www.erca.go.jp/
「ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギーの基礎知識 2012改訂版」
食物アレルギー研究会 http://www.foodallergy.jp/「食物アレルギーの診療の手引2011」 (医師向け)「食物アレルギーの栄養指導の手引2011」
(栄養士向け、ただし一般の方が参考にできる内容)ファイザー株式会社 Epipen http://www.epipen.jp 東京都アレルギー対応マニュアルhttp://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/07/DATA/など
参考サイト (PDFダウンロードが可能なもの)