Download - 通信工学概論 コミュニケーション工学B 2016aito/CommunicationB/slide1.pdfこの講義の経緯 コミュニケーション工学B(6セメ)と 通信工学概論(4セメ)の合講義です
通信工学概論/コミュニケーション工学B2016
音声通信伊藤彰則
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このスライドは以下のURLからダウンロード可能ですhttp://www.spcom.ecei.tohoku.ac.jp/~aito/CommunicationB/
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この講義の経緯◦コミュニケーション工学B(6セメ)と通信工学概論(4セメ)の合同講義です◦昨年度までは「コミュニケーション工学B」はアドバンストな話題(応用的で少し難しい話)を扱っていた
◦カリキュラム改訂で、もっと概論的な内容(前提知識なしに聞ける、広い範囲の話題)が必要という結論になった
◦アドバンストな内容は8セメの「データコミュニケーション工学」で扱う
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講義概略(全体)10月7日(金)
10月14日(金)
10月21日(金)
11月4日(金)→1/30
11月11日(金)
11月18日(金)
11月25日(金)
12月 2日(金)
12月9日(金))
伊藤(音声通信)
大町(画像通信)
陳(アンテナ)
末松(無線通信)
山田(光通信)
• 12月16日(金)• 1月 6日(金)• 1月13日(金)
• 1月20日(金)• 1月27日(金)• 2月3日(金)
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講義概略(伊藤担当分)声による通信はいかにして可能になったか◦ 電話登場以前
◦ 人間の聴覚と発話能力
◦ 人間の音声の特徴
◦ 音声のスペクトル
◦ 糸電話と伝声管
◦ 電話の発明
◦ トランスデューサー(振動・電気変換)
◦ ベースバンド通信
◦ 回線交換と機械式交換機
◦ 多重化
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講義概略(伊藤担当分)◦ラジオによる通信
◦ AM変調とFM変調
◦音のディジタル化
◦ PCM符号化
◦線形量子化と非線形量子化
◦ディジタル交換
◦時分割多重化
◦ Voice over Internet (VoIP)
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講義概要(伊藤担当分)◦携帯電話と高能率符号化
◦音声のスペクトルとボコーダ
◦線形予測に基づく符号化
◦インターネットと音声
◦音楽のディジタル化と配信
◦電話で音楽
◦電話の未来
◦自動翻訳電話
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人間の聴覚聴覚器官
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蝸牛:音の分析器官
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基底膜と有毛細胞
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音の大きさの感覚◦人間が感じる音の大きさ=ラウドネス
◦音の大きさの感覚は、音の高さにも依存する
◦等ラウドネスレベル曲線:1kHzの正弦波と同じ高さに聞こえる音の強さを結んだもの
◦ラウドネスレベルの単位:phon(1kHz正弦波に換算したときの音圧の値)
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音の高さの感覚◦音の高さは周波数と関連しているが、比例はしていない
◦ 1kHzの音の高さを1000としたときの音の高さ感覚=メル(mel)
◦音の高さ感覚は周波数の対数にほぼ比例するが、500Hzあたりで傾きが変わる
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音声の生成◦声を生成する器官
◦声帯◦喉頭◦咽頭◦舌◦歯茎◦歯◦口唇◦鼻腔
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音響管モデル◦人間の発声機構は管楽器に似ている
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音響管モデル◦人間の発声機構は管楽器に似ている
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音響管モデル◦人間の発声機構は管楽器に似ている
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声道の長さ個人性の最も重要なパラメータ◦成人男性で約17.5cm
◦成人女性で約15.2cm
◦子供(8歳)で約12.2cm
長い声道長→低い共振周波数(太い声)
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音声の知覚◦通常の音声は8kHzぐらいまでにほとんどの情報が含まれる
◦どこまで情報を削っても良いのか?
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音声の知覚◦ 音声にLPF(低域通過フィルタ)とHPF(高域通過フィルタ)をかけた音声の音節明瞭度[Lipmann, 1996]
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• 低域なら3~4kHz程
度で高い明瞭度が得られる
• 電話の帯域は3.6kHz程度
電話の発明以前17世紀 Robert Hooke(イギリス,1635-1703)◦ フックの法則で有名、顕微鏡の発明者
◦ Acoustic String Phone (1667) いわゆる糸電話
↑Tin can telephone(19C)商用糸電話(19C) →(いずれもWikipediaより) 20
電話の発明以前伝声管 (Speaking Tube)
http://plaza.rakuten.co.jp/shima365/diary/200905030000/
戦艦三笠の伝声管
細い管を通して声を伝える通常の音声よりもずっと遠くまで届く
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「天空の城ラピュタ」より
糸電話や伝声管の声はなぜ遠くまで届くのか?自由空間内の音圧は音源からの距離の2乗に反比例する(球面波)
1次元的に伝搬する振動(糸や管)は距離減衰しない◦媒質の損失による減衰はあるので無限には届かない
距離減衰
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𝑝(𝒓) ∝𝑝0
4𝜋 𝒓 2
空間上で声の伝搬を1次元にするにはパラボラ(回転放物面)を使った音声通信◦仙台市科学館のロビーにあります
平面波(波が広がらない)伝声管と似た効果がある
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空気による音の減衰指数的に減衰する◦𝑝 = 𝑝0 exp −0.1151𝛼𝑥 (ISO9613-1)
◦pは音のエネルギー、p0は音源でのエネルギー
◦αは減衰係数◦周波数、温度、湿度、気圧に依存する
◦音が1m進むとα dB減衰する
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空気による音の減衰◦減衰係数の周波数特性
◦ 20℃、湿度50%、1気圧
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1.00E-02
1.00E-01
1.00E+00
1.00E+01
1.00E+02
1.00E+03
50 500 5000
吸収係数
周波数 (Hz)
声を遠くまで伝えるには◦減衰しない媒体を選ぶ
◦ 100Hzの音、100mの場合
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パイプ(空気減衰のみ)
音圧p 0.034p
100m
銅線(直径1mm)電圧v
スピーカ8Ω21mΩ/m
0.65v
電気通信、始まる◦電線を使う通信:電信
(telegraph)◦ Cf. NTT=Nippon Telegraph &
Telephone
◦ 19世紀初めに発明、1839年事業化
◦電線を通してモールス信号を送る
◦モールス信号 (Morse Code)◦ .と-でアルファベット・数字を表現する
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電話の発明◦電話の発明者はAlexander Graham Bellだと言われているが・・・◦ 1856 Antonio Meucci電話的な装置発明
◦ 1860 Johann Philipp Reis 電話的な装置発明
◦ 1876 Alexiander Graham Bell 電話の特許取得
◦ 1876 Elisha Gray 電話の発明(水マイクロフォン)
◦ 1876 Tivadar Puskás電話交換台の発明
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電話の発明Alexander Graham Bell◦電話の特許取得(1876)
◦電磁式トランスデューサを利用
◦American Telephone & Telegraph社創立(1885)◦ AT&T、米国最大の電話会社
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電話の基本構成◦振動-電気変換器(トランスデューサ)
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音声振動→電気
電気→振動
音声電気
マイクロフォン(microphone)
スピーカ(loudspeaker)
マイクロフォン◦空気の振動を電圧変化に変換
◦空気振動を振動膜(ダイヤフラム)で受け、その振動を抵抗/電圧/静電容量などに変換する
◦マイクロフォンの種類◦カーボンマイクロフォン
◦ダイナミックマイクロフォン
◦コンデンサーマイクロフォン
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カーボンマイクロフォン◦最初の実用的なマイクロフォン
◦黒炭粒子の振動による抵抗の変化を利用
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ダイナミックマイクロフォン◦コイルと磁石で振動を電圧に変換
http://shure.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/742/~/difference-between-a-dynamic-and-condenser-microphone
http://artsites.ucsc.edu/EMS/music/tech_background/te-20/teces_20.html
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コンデンサーマイクロフォン◦金属膜でコンデンサーを作り,振動を静電容量に変える
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スピーカー
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◦電気を音に変換する
◦ダイナミック型が多い◦ダイナミック型マイクロフォンと同じ構造
◦ユニットを覆う筐体(エンクロージャー)が必要
ベースバンド通信◦送信者と受信者をつないで音声(に対応する電気)信号を直接送受信する◦方式としては単純→回路構成が単純
◦ 1対の電線で1回線しか通信できない
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◦そのまま長距離伝送すると電線間のキャパシタンスが問題になる
◦𝐿𝐺 = 𝑅𝐶となったとき損失が最小になる→コイルを足してキャパシタンスを増す=装荷ケーブル
装荷ケーブルと無装荷ケーブル
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𝑅
𝐶𝐺
𝐿
インダクタンスLとコンダクタンスGは小さい
装荷ケーブルと無装荷ケーブル◦装荷ケーブルの問題点
◦高周波の減衰が激しい
◦コイルを挟むのではなく途中に増幅器を入れる→無装荷ケーブル◦松前重義による発明(1932)
◦東北帝国大学工学部電気工学科卒・東海大学創設者・衆議院議員
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電氣學會雑誌「長距離電話回線として無装荷ケーブルを用ひたる實驗」より
交換台 (Switchboard)◦初期の電話回線では人間の交換手が電話を切り替えていた
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ステップ・バイ・ステップ交換器
◦縦横方向に動くアームで自動的に接点につなぐ◦受話器から送られたダイヤルパルスで駆動される
◦ 1つのスイッチあたり100回線
◦直列につなぐことで連続ダイヤルに対応
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https://www.youtube.com/watch?v=xZePwin92cI
この部分がスイッチ
ステップ・バイ・ステップ交換器
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◦ネットワーク上に配置されたスイッチ間を接続
◦手前から順番にスイッチを切り替えていく
クロスバー交換器クロスバースイッチによる回線交換◦制御は論理回路による
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各行・各列に対して1カ所のスイッチだけONにする
多重化◦1本の線で1回線しか通話できないのは不経済→1本の線で複数回線を伝送
◦多重化の種類◦周波数分割多重(FDM)
◦時間分割多重(TDM)
◦符号分割多重(CDM)
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CDMとTDMはディジタル通信で使われる
周波数分割多重◦複数のキャリア周波数で入力音声を変調
◦ラジオやテレビ放送と同じ原理
◦ AM変調、FM変調
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f入力音声 f
搬送波(キャリア)
無線による音声通信(アナログ通信)放送用途:ラジオ放送◦AM放送:振幅変調を使う◦FM放送:周波数変調を使う
通信用途◦業務無線(警察、船舶、消防、防災、鉄道、航空、タクシー、等)
◦アマチュア無線◦特定省電力無線(短距離トランシーバ、ワイヤレスマイク等)
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AM(中波)放送◦振幅変調(AM)を利用
◦音声周波数帯域の2倍の帯域幅を必要とする
◦送信・受信設備とも簡易
◦531kHz~1602kHz の周波数を利用◦キャリアは9kHz刻み(つまり音声は4.5kHzまで)
◦20世紀初めに放送開始◦日本では1925年放送開始(東京放送局、現在のNHK)
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AM変調◦搬送波の振幅に情報を載せる方式
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信号𝑦 = cos 2𝜋𝑓𝑡
搬送波𝑦 = 𝐴cos 2𝜋𝑓𝑐𝑡
振幅変調波𝑦 = 𝐴(1 + a cos 2𝜋𝑓𝑡) cos 2𝜋𝑓𝑐𝑡
FM(超短波)放送◦周波数変調(FM)を利用
◦音声周波数帯域の10倍の帯域を使用◦ 高いSN比が得られる
◦ 76.1MHz~89.9MHzを使用◦音声信号の帯域は15kHz◦変調波の帯域は±75kHz◦ステレオ信号を伝送
◦米国では1930年代後半から放送開始◦ 1953年「長岡教育放送」
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FM変調◦搬送波の周波数偏移に情報を載せる方式
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信号𝑦 = cos 2𝜋𝑓𝑡
搬送波𝑦 = 𝐴cos 2𝜋𝑓𝑐𝑡
周波数変調波𝑦 = 𝐴cos(2𝜋𝑓𝑐𝑡 + 𝑓𝑚sin 2𝜋𝑓𝑡 )
短波放送◦振幅変調(AM)を利用
◦3MHz~30MHzまでの周波数を利用◦中波と超短波の間
◦短波は地球の電離層で反射するので遠距離の放送が可能◦世界各地の放送が受信できる
◦デジタル放送がある(日本にはデジタル放送局はない)
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