薬の包装シートの誤飲事故 1錠ずつ切り離した薬を
包装シートごと飲み込んでしまう事故が後を絶ちません。
Number
299
包装シートごと飲み込んでしまうと、自力で取り出すことは難しく、X線写真にも写りにくいため、内視鏡などで取り出すことになり、身体への負担も大きくなります。あわてていたり、ついうっかりして誤飲する例が多くなっています。
「PTP包装(Press-Through-Package)」と呼ばれる、
プラスチックにアルミなどを貼り付けた薬の包装が
普及しています。薬を清潔なまま取り扱うことがで
きる、錠剤が包装の外から見える、管理がしやすい
などのメリットがあります。
1996 年以前の PTP 包装は、縦横にそれぞれミ
薬の包装についてシン目が入って、1錠ずつ切り離せる構造でしたが、
PTP包装ごと誤飲してしまう事故が頻発したため、
1996 年 3月に業界団体の自主申し合わせにより、
ミシン目を一方向のみとし、1錠ずつに切り離せな
いような構造になりました。
1
事故を防ぐために
1 1 錠ずつに切り離さないこと
PTP 包装に横又は縦の一方向のみミシン目が入っているのは、誤飲を防ぐためです。ハサミなどで 1 錠ずつに切ってしまうと、誤飲を招きやすいサイズになる上、切った角が鋭くなり、誤飲した場合に体内の組織を傷つける危険があります。1錠ずつに切ることは避けましょう。
2 高齢者の事故が目立ちます。家族など周りにいる人も気を配りましょう
特に高齢者や、1回分の薬の量が多い場合は、
PTP 包装のままの錠剤に気付かないこともありま
す。周りにいる人も気を配ることが事故を防ぐ上
で重要です。
●本内容は、独立行政法人国民生活センターホームページ内の「くらしの危険」コーナーにてダウンロードできます。
http://www.kokusen.go.jp/kiken/index.html
●本内容について、詳細は、独立行政法人国民生活センターホームページに掲載しています。
http://www.kokusen.go.jp/
「くらしの危険」は、全国の消費生活センター、協力病院等から収集した情報をもとに、被害や事故の未然防止・拡大防止のために作られています。
特定の商品・サービス等を推奨するものではありません。商品やサービス、設備によって起きた事故の情報を最寄りの消費生活センターにお寄せください。
無断転載はお断りいたします。
〒 108-8602 東京都港区高輪 3-13-22 TEL.03(3443)1208 ● 2011 年 1 月発行
3 飲み込んだかもしれないと思ったら
ただちに診察を受けましょう 消化管などを傷つけ、場合によっては切り裂いてしまうなど、重い症状につながることもあります。誤飲したと思ったら、すぐに専門医を受診してください。自覚がない場合でも、薬の服用後に喉や胸などに違和感がある場合は、受診を考えてみましょう。
4 1 回分ずつの薬を袋にまとめて入れる「一包化」を活用しましょう
1回に複数の薬を服用する場合、1回分の薬をま
とめて袋に入れる「一包化」を活用することも飲
み忘れや誤飲の防止に役立ちます。薬剤によって
は一包化が行えない場合がありますので、薬剤師
等に相談してください。
4 デザイン=花村デザイン事務所/イラスト=ヒラヤマ ミワ
1
薬を包装ごと誤飲し、
病院で検査を行った結果、
声帯の陰に包装が見つかり内視鏡で取った。
現在も妻が 1 錠ずつに分けているが、
角が鋭いと危険なので全ての角を丸く切っている。
最初から角が丸い、あるいは柔らかい素材に変えてもらいたい。
(80 歳代 男性)
こんな事故が起きています
処方された薬を包装ごと飲みこんだ。
喉が痛く救急車で病院に行ったが、
喉仏の裏側に薬が引っかかって
レントゲンでは見つからず、
数時間かけて内視鏡で取り出した。
(80 歳代 男性)
薬の包装の危害に関する相談の概要危害情報システムには、PTP 包装によると思われる危害が 2000 年度から 2009 年度までに 100 件
近く寄せられています。
◉年度別件数10 年間の推移を見ると、年間 10件前後の件数が寄せられていることがわかります。
◉相談者の傾向
貧血検査のため内視鏡を飲んだところ、
十二指腸球部に PTP 包装が刺さっていた。
取り出したが穿せん
孔こう* しており、手術した。
(80 歳代 男性)
*:胃や腸などに完全に穴のあくこと、またはその病態
ケース3
薬の包装を朝昼晩の分に分けて小さく切っている。
小さいので薬だと思い、そのまま包装ごと飲んでしまい、
喉に刺さった。(80 歳代 女性)
行政、業界の動き◉厚生労働省国民生活センターの公表を受け、各都道府県、保健所を設置する市及び特別区に「PTP 包装シート
誤飲防止対策について」を発出し、日本薬剤師会にも関係者に通知するよう依頼しています。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000rwgy.html
◉日本薬剤師会厚生労働省から関係方面へ注意喚起の通知が発出され、調剤時には可能な限り PTP 包装シートを
1錠ずつ切り離さないようにする等、会員に対して特段の注意喚起が行われるよう都道府県薬剤師会
宛に連絡したとのことです。http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/100922_2.pdf
女性が約 70%、男性が約 30%であり、
女性に多い傾向があります。
年代別にみると、70 歳代が最も多く、
80 歳代、60 歳代と合わせて全体の 8割を
占めており、高齢者の事故が多いことがわ
かります。
◉危害部位最も多いのは「食道」で、次いで「腹部」、
「鼻・咽喉」が目立っています。
◉危害程度ほとんどの事例は軽症で済んでいます
が、中には入院を要する事例も複数件寄せ
られています。
ケース1
ケース2
ケース4
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
6 6
12
7 7 7 7
15
9 10
20
15
10
5
0
(件数)
(
年度)
1-3 歳1 件(1.2%)
40歳代1 件(1.2%)
90歳代1 件(1.2%)
0-1 歳3 件(3.5%)
20歳代3 件(3.5%)
50歳代8 件(9.3%)
60歳代17 件(19.8%)
80歳代23件(26.7%)
70 歳代29件(33.7%)
●●図1. 年度別危害件数
●●図2. 年代別危害件数
くらしの危険 No.299/2011年1月発行 32