臨床輔神薬理20:333-340,2017
症鵬昔
DaTSCANにより確定診断に至ったパーキンソン病によるうつ病
林 眞弘!) 堺 奈々2) 東光太郎3)
抄録:うつ病の薬物療法では,適切な期間,適切な抗うつ薬による治療でも寛解しない治
療抵抗性うつ病の一群がある。これには, うつ病発症の機序がいまだ充分解明されていな
いという生化学・生物学的な面に加え,心理・社会的影響がその背景にあると思われる。
しかしうつ病を来す原因疾患の的確な診断が下されず.有効な治療が行われていないこと
によって生じている症例が,その中に含まれている可能性もある。今回. 2種類の作用の
異なる抗うつ薬でもうつ状態の悪化を呈し、 さらに治療中にパーキンソニズムの合併を認
めた症例を経験した。当初Parkinson・sdisease(PD)を示唆する画像所見がみられず,
薬剤性バーキンソニズムとの鑑別が難しい症例であったが,抗うつ薬の反応性が乏しかっ
たことから,しdopa製剤を主体に薬剤の調整を行い、その結果うつ病・PD症状とも改
善した。DJISCAN画像は約2年後に,線条体での集穣低下があり,その所見と臨床症状
の特徴から, PDによるうつ病との確定診断に至った。臨床精神薬理20:333-340,2017
Keywords:舵α"""esis""de"ess"",""jj@so"bdiseuse,""d"",DaT訂“Ⅳ
種類や選択肢の幅が広がっている。またガイドラ
I.はじめに イン'6.19)によるエビデンスに基づく薬物治療が確
立されてきている。しかしうつ病の治療寛解率は
うつ病の薬物治療において,従来の三環・四環 7割程度7)といわれており,いわゆる治療抵抗性う
系抗うつ薬に選択的セロトニン再取り込み阻害薬 つ病の一群が存在する。
(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込 今回単極性うつ病として診断され,作用の異な
み阻害薬やノルアドレナリン作動性・特異的セロ る2種の抗うつ薬による薬物治療が行われていた
トーン作動性抗うつ薬(NaSSA)も加わり, さら が,経過中にうつ症状の悪化とパーキンソニズム
には非定型抗精神病薬の併用投与など,治療薬の の合併を呈する症例を経験した。70代での初発の
うつ病であり,器質性疾患との関連も疑い画像.
2016年9月26日受理 機能画像検査を施行するも,当初Parkinson.sdiS-
4gggggWWWW"rgp.sdisease,hasbeenmally eaSe (PD)や他の神経変性疾患,血管性障害などdiagnosedwithDFISCANimagings.
l)医撫法人社団浅ノ川桜ヶ丘病院精神科神経科 の所見は得られなかった。しかしPD初期の非運〔〒920-3112石川県金沢市観法寺町へ174) 動症状であるうつ状態も考慮し,薬剤調整を進め
嚇麓:W:M,翫驚卿器撫隠鶏鰄駕た結果.精神症状巡動機能の両面において改善kawa,920-3112,Japan. を得た。また約2年の経過の後,再度施行した'231
2)石川県立高松病院輔神科
M.g5EMEMMofPsychiairyh lshikawaprefecmra] -ionuPaneSPECr(DTSCAN)画像の検討から,′rakamatsuHospital. 原因疾患としてPDの診断に至った。今回,治療3)医療法人社団浅ノ川浅ノ川総合病院放射線科
抵抗性うつ病と考えられた症例の経過や画像所見Koutal・ouHigashi :DepartmentofRadiology,AsanogawaGen-
eralHospital. の結果と,それに対する考察を加え報告する。発
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