マクロ経済動向分析2-3月
中国マクロ経済動向分析2-3月 1
全人代閉幕、課題抱えた「安定成長」実現
1. 2-3月のポイント
2
2017年の全国人民代表大会が閉幕した。新常態への対応を目標に、過剰生産設備の削減目標と金融に潜むリスクの確認と対策についてなどが話し合われた。
2月のPMIは51.6と高水準になった。建設ブームで一連の建材の需要価格が押し上げられており、生産と受注の双方で伸びが加速したためである。一方で自動車販売が失速したため、1-2月の社会消費品小売総額は9.5%増と大幅に減少した。
政府がインフラ輸出を拡大していることが背景に、2月の輸出額から輸入額を引いた貿易収支は91億ドルの赤字となった。単月ベースの貿易赤字は2014年2月以来3年ぶりである。
中国マクロ経済動向分析2-3月
2.今月の目次2016年の振り返り p.2
2017年の展望p.4
生産 p.6
消費・物価p.8
投資 p.10
金融・財政 p.12
貿易p.14
株p.20
3
2-3月中国マクロ経済
中国マクロ経済動向分析2-3月
3. 2016年を振り返って
4
2016年の国内総生産は74兆4127億元で前年比6.7%の成長となり、0.2ポイント低下した。政府目標(6.5~7.0%)は達成したが、2011年から6年連続の低下となった。
2016年は「インターネット+」と国家ビッグデータ戦略が推し進められ、インターネットが社会経済に浸透。工業戦略性新興産業やハイテク産業などの新産業が急成長を遂げた。
インフラ整備も推し進められた。2016年のインフラ固定資産投資は11兆8878億元を超え、前年比17.4%増となった。特に交通網の整備が進み、高速鉄道のレールは全長1903キロメートル、高速道路は全長6745キロメートル、それぞれ増設された。
中国マクロ経済動向分析2-3月
・供給側の構造改革が推し進められた ex. 鉄鋼・石炭の加増生産能力の解消・「ばらまき」型の景気刺激策をやめ、安定成長・構造調整・リスク防止に取り組んだ
一方、中国政府は経済成長の内生的原動力の強化(ex.財政収支の矛盾縮小)、環境汚染(ex.深刻なスモッグ)の改善、その他の面でも大衆への対応がないがしろにされがちな問題(ex.住宅や所得分配)を今後は改善していく必要があると認識している。
4. 2017年の展望
5
貿易では輸出入を安定・好転させ、国際収支の均衡を図る。中国の経済圏構想「一帯一路」を推進し、沿線諸国間の通関業務の効率化を目指していく。
財政収支の矛盾の拡大による経済・金融分野のリスクを政府は認知。中国の金融システムが安定しており、問題に対抗する多くのツールほか、十分なリスクテイク能力をもっており、万一の問題に対して速やかに対応できるとしている。
引き続き生産能力削減に取り組む。鉄鋼生産能力を2017年に5000万トン削減し、設備稼働率は市場経済国と同等の80%にする。今回新たに石炭も1億5000万トン
削減すると明記した。生産能力削減に伴う失業者増加には特別基金や企業へ社会的責任への履行を強く求めていくことで対応する。
中国マクロ経済動向分析2-3月
・秋に党大会の開催を控える重要な年 新常態への適応が大きな目標・2017年の成長目標は6.5%前後と前年から引き下げ、国内の安定を重視
一方、消費者物価率の上昇は3%前後を目標に。農村へのEコマースと宅配便の
普及を促し、実店舗での販売とインターネットショッピングとの融合発展を後押しする。住宅価格は成長率と同水準を目指す。不動産市場の安定かつ健全な発展のために政府が中心となって有効な仕組みを確立させる。
金融体制の改革にも取り組む。金融機関の業務の重心を実体経済に置くよう促し、中小企業や零細企業の資金繰り問題等を支援する。また、多層資本市場の改革を深め、エクイティ市場の規範化と発展に取り組む。また、市場に良い影響をあたえるために2017年の財政赤字は対GDP比3%と昨年から据え置く。
5.生産製造業の指標は軒並み高水準、
粗鋼の伸び目立つ
中国マクロ経済動向分析2-3月
(出所)国家統計局より作成
6
図表1:製造業購買担当者景気指数(PMI)
2017年2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.6と1月より0.3ポイント増加。建設ブームでセメントから鉄まで一連の建材の需要や価格が押し上げられ、生産と受注の双方で伸びが加速した。
49.4
49.0
50.2 50.1 50.1 50.0
49.9
50.4
50.4
51.2
51.751.4 51.3
51.6
48.5
49
49.5
50
50.5
51
51.5
52
前月から0.3
ポイント増加
中国マクロ経済動向分析2-3月
(出所)国家統計局より作成
図表2:工業付加価値生産伸び率(単位:%)
5.生産製造業の指標は軒並み高水準、
粗鋼の伸び目立つ
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2017年1-2月の工業生産は前年同月比6.3増と前月から0.3ポイント増加した。前年同月比6.3%増と、2016年12月より0.3ポイント増加した。中でも粗鋼は5.8%増となり3年2か月ぶりの高水準であった。
5.4
6.8
6.0
6.0
6.2
6.0
6.3
6.1 6.16.2
6.0
6.3
5.3
5.5
5.7
5.9
6.1
6.3
6.5
6.7
6.9
前月から0.3ポイント増加
6.物価・消費消費は11年ぶりに一桁増にとどまる
自動車頼みの消費限界か
2017年1-2月の社会消費品小売総額は前年同期比9.5増と前月から1.4ポイント減少した。10%を下回るのは11年ぶりであり、小型車減税の縮小で自動車販売が失速したことが原因とみられる。
(出所)国家統計局より作成
図表3:社会消費品小売総額(単位:%)
中国マクロ経済動向分析2-3月 8
10.2
10.5
10.110.0
10.6
10.2
10.6 10.7
10.0
10.810.9
9.59.3
9.5
9.7
9.9
10.1
10.3
10.5
10.7
10.9
11.1
前月から1.4ポイント増加
6.物価・消費消費は11年ぶりに一桁増にとどまる
自動車頼みの消費限界か図表4:消費者物価指数(CPI)及び生産者物価指数(PPI)(単位:%)
中国マクロ経済動向分析2-3月 9
(出所)国家統計局より作成
2017年2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.8%増加し、前月から1.7ポイント減少した。比較対象となる昨年の数値が高かったことが影響している。2月のPPIは前年同月比7.8%増となり前月から0.9ポイント上昇した。
1.82.3 2.3 2.3 2.0 1.9 1.8
1.31.9 2.1
2.3
2.1 2.5
0.8
-5.3 -4.9-4.3
-3.4-2.8 -2.6
-1.7-0.8
0.11.2
3.3
5.5
6.97.8
-7-6-5-4-3-2-10123456789
CPI
PPI
7.固定資産投資消費鈍化の中国、2017年は公共投資にさらに依存か
(出所)国家統計局より作成
10
2017年1-2月の固定資産投資は前年同期比8.9%増で民間固定資産投資は前年同期比6.7%増となった。1-2月のインフラ投資は27.3%増と前年から9.9ポイント上昇している。2017年はインフラ投資といった公共投資へのさらなる依存が予想される。
中国マクロ経済動向分析2-3月
10.2 10.7 10.5 9.6
9.0 8.1 8.1 8.2 8.3 8.3 8.1
8.9
6.95.7 5.2
3.92.8
2.1 2.1 2.5 2.9 3.1 3.2
6.7
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
固定資産投資
民間固定資産投資
前月から3.5
ポイント増加
前月から0.8
ポイント増加
図表5:固定資産投資及び民間固定資産投資伸び率(単位:%)
6.金融・財政1月に外貨準備高が3兆ドルを割る、当局の取り締まり強化か
図表6:通貨供給量(M2)の伸び率(単位:%)
11
(出所)国家統計局より作成
2017年2月のマネーサプライ(M2)は前年同月比11.1%増と前月から0.2ポイント減少した。1月末の外貨準備高は2兆9982億ドルであり、約6年ぶりに節目の3兆ドルを割った。2011年2月以来の低水準となった。2月末の外貨準備高は前月から69億ドル多い3兆51億ドルで、8か月ぶりの増加に転じた。
中国マクロ経済動向分析2-3月
13.313.4
12.8
11.8 11.8
10.2
11.4
11.5
11.6 11.4 11.3 11.3 11.1
9.5
10.5
11.5
12.5
13.5
14.5
前月より0.2ポイント減少
7.貿易輸出減の一方で輸入大幅に拡大、鉄鉱石や原油の需要増が原因か
2017年2月の輸出は前年同月比-1.3%減で、先月の7.9%増から9.2%低下した。輸入は前年同月比38.1%増で、先月の16.7%から大幅に増加した。製鋼所が鉄鉱石や原料炭を旺盛に消費したことが原因と考えられる。
図表7: 輸出の伸び推移(単位:%) 図表8: 輸入の伸び推移(単位:%)
12
(出所)海関総署より作成 (出所)海関総署より作成
中国マクロ経済動向分析2-3月
-11.2
-25.4
11.5
-1.8 -4.1 -4.8 -4.4
-2.8
-10.0
-7.3
0.1
-6.1
7.9
-1.3
-27.5
-22.5
-17.5
-12.5
-7.5
-2.5
2.5
7.5
12.5
-18.8
-13.8 -7.6
-10.9
-0.4
-8.4 -12.5
1.5 -1.9 -1.4
6.7 3.1
16.7
38.1
-25.0
-20.0
-15.0
-10.0
-5.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
8.株2月は本土・香港市場総じて堅調、3月は政治リ
スクの緩和により中旬じり高に上海総合指数(終値) (2017/2/3-2017/3/31)
2月上・中旬
旧年初からの低い資金流動性が回復し、売買代金は少ない日でも4000億元を超えるなど、概ね活況
2月下旬・3月上旬
全人代開幕を受け、小高く推移したものの、外部環境の悪化にともない低下
3月中・下旬
外部環境の悪化に加え、国内の金利上昇、不動産引き締めの強化が嫌気されて
下落
(出所) kabutanより筆者作成
13中国マクロ経済動向分析2-3月
3050
3100
3150
3200
3250
3300
2/3 2/5 2/7 2/9 2/11 2/13 2/15 2/17 2/19 2/21 2/23 2/25 2/27 3/1 3/3 3/5 3/7 3/9 3/11 3/13 3/15 3/17 3/19 3/21 3/23 3/25 3/27 3/29 3/31
8.株2月は本土・香港市場総じて堅調、3月は政治リスクの
緩和により中旬じり高に
ハンセン総合指数(終値) (2017/2/1-2017/3/31)
2月上・中旬
米雇用統計の上振れ、トランプ新政権による金融規制緩和など外部環境で
上昇
2月下旬・3月上旬
企業業績の改善や全人代などを手がかりに、底堅く推移
した
3月中・下旬
中国で発生した債務不履行による買い戻しと米国リスクによる売りが交錯し、一進一退となっ
た
(出所)Searchina Financeより筆者作成
14中国マクロ経済動向分析2-3月
22000
22500
23000
23500
24000
24500
25000
2/1 2/3 2/5 2/7 2/9 2/11 2/13 2/15 2/17 2/19 2/21 2/23 2/25 2/27 3/1 3/3 3/5 3/7 3/9 3/11 3/13 3/15 3/17 3/19 3/21 3/23 3/25 3/27 3/29 3/31
2-3月のまとめ• 2016年は安定成長・構造調整・リスク防止に取り組んだ。2017年は新常態への適応を目指す。成長目標は6.5%前後と前年から引き下げ、国内の安定を重視している。
全人代• 2017年2月の製造業購買担当者景気指数は51.6と1月より0.3ポイント増加。建設ブームでセメントから鉄まで一連の建材の需要や価格が押し上げられ、生産と受注の双方で伸びが加速した。
生産
• 2017年1-2月の固定資産投資は前年同期比8.9%増で民間固定資産投資は前年同期比6.7%増となった。1-2月のインフラ投資は27.3%増と前年から9.9ポイント上昇している。
固定資産投資
• 2017年1-2月の社会消費品小売総額は前年同期比9.5増と前月から1.4ポイント減少した。10%を下回るのは11年ぶりであり、自動車販売が失速したことが原因とみられる。
物価・消費•1月の外貨準備高は2兆9982億ドルと、約6年ぶりに節目
の3兆ドルを割ったが、2月は当局の取り締まりやドル安を背
景に、前月から69億ドル多い3兆51億ドルとなった。金融
• 2月の輸出は前年同月比1.3%減の1201億ドルとなった。輸入は前年同月比38.1%増の1292億ドルと大幅に増加した。鉄鉱石や原料炭の消費の増加が大きく貢献した。
貿易15中国マクロ経済動向分析2-3月