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三国川ダムの広報活動について
北澤 大輔
三国川ダム管理所 (〒949-6741 住所 新潟県南魚沼市清水瀬686番地59).
「地域に開かれたダム」として年間25~30万人の観光客が訪れる三国川ダムでは、ラジオやマンガとの
メディアミックスによるPR等、多様な広報活動を実施しており、その事例紹介を行う。
キーワード 観光資源、広報活動、メディアミックス
1. はじめに
三国川ダムは、洪水調節や用水供給、発電など必要な
機能の他に、年間25~30万人の観光客が訪れる観光資源
としての側面を強く持つ。 1993年に「地域に開かれたダム」として、ダム湖及び
周辺区域の利用を促進し、地域の活性化を図ることが適
当と認められている。当ダムでは、ダムの役割や魅力を
地域や全国の人々に伝えるために様々な方法の広報活動
を地元と一緒に行ってきた。
図-1 三国川ダム位置図
2. 管理所主体の活動
(1) ダム案内 5月から11月までダム案内を行い、監査廊見学や操作
室の説明、情報館では、ダムの目的や役割、建設時の映
像を視聴する。中でも監査廊見学は人気があり、観光放
流の迫力や屋外とは別世界に歓声が上がる。一般の観光
客から団体の見学希望が地元をはじめ、県外からも来る。
南魚沼市の児童は総合学習の場として毎年見学し、観光
団体としては、バスツアーのコースや地元の温泉旅館の
ツアー、他にも老人会などが訪れる。人数が多い時は、
職員総出で案内し、昨年度は延べ2139名の案内を行った。
図-2 ダム監査廊案内の様子
(2) ホームページ ホームページ更新は職員で行い、イベント情報などを
掲示している。また、動画の配信を積極的に行っており、
小型無人機(ドローン)で撮影した上空からのダムの様
子や、2016年4月には、ダムの非常用洪水吐からの越流
の瞬間を撮影した動画(図-3参照)をアップした。例年
4月中旬に雪どけ水の放流を見ることができ、今回の動
画で貴重な越流の瞬間をとらえることに成功し、大きな
反響を呼んだ。また、ダムのホームページだけでなく、
Youtubeに投稿することで、全世界の人々に動画を配信
することができた。
図-3 越流中プレミアムムービー
3. しゃくなげ湖畔を楽しむ会による活動
2004年に制定された「三国川ダム水源地域ビジョン」
を受け、当ダムを利用した地域づくり活動を継続的に発
展させていく組織として「しゃくなげ湖畔を楽しむ会」
が設立され、様々な活動を行っている。 (1) しゃくなげ湖畔新緑ウォーク・紅葉ウォーク
毎年5月に新緑ウォーク、10月に紅葉ウォークを開催
する。四季が変わる頃に自然を感じながらダム湖を1周するイベントである。ウォーキングが終わると、名物の
ダムカレーを参加者が食して、次回再会を期して終了と
なる。
図-4 ダムカレー
(2) 酒の貯蔵・お披露目会
ダム監査廊内の気温は年間を通して10℃前後に安定し、
酒の貯蔵に適している。そのため、南魚沼市の酒蔵メー
カーが監査廊の一部を利用し、約半年熟成させ、秋には
市民にお披露目するイベントを行っている。
図-5 酒蔵メーカーによる蔵入れの様子
(3) しゃくなげ湖まつり
毎年7月に森と湖に親しむ旬間の活動の一環としてし
ゃくなげ湖まつりを開催している。当ダムでは、案内は
もちろん、特別に巡視船の体験会を行うため毎年人気で
ある。
図-6 しゃくなげ湖まつりの様子
4. 地域と連携した活動
(1) 美女旅とコラボ
美女旅とは、2012年9月から新潟県南魚沼市で制作さ
れている地域密着型観光パンフレットである。「さあ、
素敵な旅のはじまりです。」を合い言葉に、南魚沼市在
住の女性が地域の素晴らしさを紹介するのがコンセプト
である。 当ダムでは、2015年の広報活動として、この美女旅と
コラボし、同年12月に「美女旅×三国川ダム」の観光パ
ンフレットが発行された。このパンフレットは基本的に、
南魚沼市内の観光案内所や飲食店などに設置し、観光客
や地元の人々に提供されている。 パンフレット中では、美女と共にダム周辺の美しい自
然や観光施設の紹介、そして、当ダムの監査廊や操作室
が紹介され、その見学の様子が掲載されている。
図-7 美女旅の表紙
図-8 ダムの監査廊や操作室紹介ページ
(2) ラジオによるPR
当ダムは、地元南魚沼市のラジオ局である、「FMゆき
ぐに」を利用し、ダムの役割や洪水情報の他、監査廊の
見学希望の案内、ダム周辺で開催されるイベント内容や
日程の告知を行っている。大型連休の期間やイベントが
開催される前に放送することで、より観光客を呼ぶこと
ができる。ラジオは車内など移動しながら聴くこともで
きるため、地元の方はもちろん、放送エリア(図-9参照)
を通行する多数の人にも当ダムの情報を伝えることがで
きる。 また、ラジオによる「美女旅」の紹介もしている。美
女旅パンフレットの紹介CMや美女旅モデルの当ダム撮影
時の印象などを語ったインタビューが放送された。また
「美女旅気分コンテスト」という企画も行い、これは、
実際に美女旅に掲載されている写真と同じアングルで撮
った写真を募集し、FMゆきぐにのフェイスブックで紹介
するという企画である。最優秀賞には美女旅オリジナル
グッズが贈られる。
図-9 FMゆきぐにの放送エリア
図-10 美女旅気分コンテストのポスター (3) ダム×マンガ!? 当ダムは、少年画報社が発行する「ダムマンガ」とい
う作品に取り上げられた。この漫画は、ダムを愛する女
子高校生が日本各地のダムを巡り紹介する物語である。
当ダムは第2巻の12基目として紹介され、前任者をモデ
ルにしたキャラクターが現れ、監査廊を案内している様
子が描かれている。実際の監査廊見学の案内時と同様に
観光放流の様子、ダム周辺施設で提供されているダムカ
レーの情報などが掲載されており、非常に詳しい内容と
なっている。 漫画による宣伝効果として、「伝わりやすさ」が挙げ
られる。どんなダムでどんな見た目をしていて、どんな
特徴や機能があるのかを、見やすい絵と共に読者に伝え
ることができる。地元の方々のみならず、全国に当ダム
の魅力を伝えることができた。
放送エリア
図-11 ダムマンガ第2巻
ⓒ井上よしひさ/少年画報社〔ダムマンガ〕
図-12 三国川ダムの紹介シーン
5. 課題・提案
ここまで、当ダムが行った広報活動を紹介してきたが、
図-13は当ダムの監査廊の見学者数のグラフである。
2011年の東日本大震災や新潟・福島豪雨の影響により減
少した見学者数が年々増加傾向にあることが分かる。こ
のように見学者が増えつつあることは、当ダムが様々な
方法で広報活動をしているためだと考えられる。 観光客が増えることは、ダムが観光資源としての機能
を果たしていることが分かり、非常に良いことだが、課
題も浮き上がってくる。それは、土日祝の見学対応であ
る。通常休日のダム案内は、委託事務員が行う。しかし、
人数が多い団体客が来ると人手が足りなくなる。そのた
め、休日の観光客の団体予約は取らないことにしている。
しかし、広報活動の末、見学に来た人たちを受け入れな
いのは本末転倒である。普段の職員の業務とどう区別し
ていくのか考えなければならない。 そこで、提案するのは、当ダムに農作物の直売所を作
ることである。地元の農家や当ダムに勤めていたOBの方
にボランティアとして直売所を営業してもらう。営業日
は集客が見込める土日祝日とし、当然、利益は販売した
方に振り分けられるが、団体の見学希望が入ったときは、
ダム案内をしてもらうことを条件とする。米や地酒は全
国的にも有名であり、特産品目当てで当ダムを訪問する
方も増えると考えられる。それによって、ダム見学と直
売所の相乗効果で観光客をさらに増やせると期待できる。
図-13 ダム監査廊見学者の年間推移
6. おわりに
ここまで述べたとおり、当ダムは監査廊案内を始め、
美女旅や地元ラジオ局と連携した広報活動を行い見学者
数を増やしてきた。近年、ダム案内では南魚沼市内の団
体だけでなく、他の市町村もしくは県外の団体からも申
し込みがあり、少しずつではあるが、当ダムの認知度が
上がって来ているのではないかと考えられる。地域活性
化に貢献できる広報活動は様々な方法があり、さらに活
動を繋げていくことで、認知度が上がっていくと考えら
れる。地元を代表する観光資源として人が訪れる場所を
担うのが当ダムの役割の一つではないだろうか。
図-14 三国川ダム全景