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カナダのマニトバ州の州都、
ウィニペグに拠き
ょ
点てん
を置くロイ
ヤル・ウィニペグ・バレエ。ロ
イヤル・ウィニペグ・バレエ・ス
クールはその付属校として1
970年に設立され、以来同
カンパニーをはじめ世界のバ
レエ団で活か
つ
躍やく
する人材を育て
つづけています。
プロのダンサーをめざす生
徒が所属するのは「プロフェッ
ショナル・ディヴィジョン(部
門)」で、このなかにはさらに
ふたつのプログラムが用意さ
れています。ひとつは、レベル
別に7クラスにわかれてフル
タイムでバレエを学ぶ「アカデ
ミック・プログラム」で、対象
年令は11才以上。もうひとつ
は、プロになる一歩手前の上
級者(18才以上)がバレエを学
びつつカンパニーの公演にも
出演するなど実じ
っ
践せん
を積む「ア
スパイラント・プログラム」で
す。どちらのプログラムも、
希望者はまずカナダもしくは
世界各地で行われる1次オー
ディションを受けます(参加不
可能な人はDVD審し
ん
査さ
)。パス
したら2次オーディションと
ロイヤル・ウィニペグ・バレエ・スクールとは
して夏のサマースクールに参
加。そこで合格した人が同年
9月から正式に入学を許き
ょ
可か
さ
れます。
同スクールは学業も重じ
ゅう
視し
。
学校に通う必要のある年令の
生徒たちは、現地の中学校や
スクールと提て
い
携けい
した高校に通
いながら、一い
っ
般ぱん
科目の勉強と
バレエのトレーニングを両立
させています。また、多くの
生徒はスクールと通路で直結
した学生寮り
ょうで生活。食事は3
食とも寮内の食堂で提て
い
供きょうされ
ます。
クラシックのクラス・レッスンは朝8時半から。ロシアン・スタイルのメソッドによる基礎重視の授業です。その後はポアントやパ・ド・ドゥ、モダン、キャラクターや公演のリハーサルなど、日によってさまざまなレッスンが組まれています。
右/スタジオは客席やライトを設置すれば舞台として使用可能(写真提供:綾田真子)
取材協力/アドミッション留学センター
左下写真4点とも©Bruce Monk
ダンスの授業
ロイヤル・ウィニペグ・バレエ・スクールCanada's Royal Winnipeg Ballet School■ 創立:1970年■ 所在地:カナダ・マニトバ州■ 生徒数:約200人(うち日本人留学生5名を含む/2014年12月現在)■ 住所:380 Graham Avenue Winnipeg, MB R3C 4K2 Canada■ TEL:+1(0)204-957-3467■ HP:http://rwb. org/■ おもな輩出ダンサー:アンドレ・ルイス、イヴリン・ハート、
ジェニファー・ウェルスマン、デヴィッド・ペレグリン ほか
左/学生寮のようす
右の写真は入学のための2次オーディションでもあるサマースクールのようす。
ロイヤル・ウィニ ペグ・バレエ・スクールプロフェッショナル・ダンサーを育てるための徹
て っ
底て い
した教育プ ログラムに定て い
評ひょう
のある、カナダのバレエ団付
ふ
属ぞ く
校こ う
を取材しました!第6回
Royal Winnipeg Ballet School
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─
1日のスケジュールは?
起床は6時半。7時から寮の食堂
で朝食をとり、7時半にはスタジオ
へ。寮とスクールが通路でつながっ
ているので便利です。1時間ほど自
分でストレッチをして、8時半から
クラシック・クラス。そのあと1日
交代でパ・ド・ドゥかポアントのクラ
スがあってお昼休みですが、本番直
前だとお昼の前にさらにリハーサル
が入ります。午後は作品やパ・ド・
ドゥなどの練習をするレパート
リー・クラスと、4時半くらいから
モダンやキャラクターなどの授業か
リハーサルがあって、だいたい夕方
6時くらいにスクールは終了。寮に
もどって夕食を食べたら自由時間。
寮ではいま二人部屋をひとりで使わ
せていただいているので、ゆったり
できます(笑)。就し
ゅう
寝しん
は夜11時〜11
時半です。
─
留学してたいへんだったこと
は?
こちらにきてすぐのころホーム
シックに。でも友だちができるにつ
れて元気になり、3〜4ヵ月後には
すっかり楽しくなりました!
─
留学してよかったことは?
基礎をしっかりと身につけられた
ことです。日本にいたころはコンクー
ルが多くて、自分の意識もそちらに
向いていた気がします。ところがこ
ちらにきたら、最初は大きいジャン
プなどもあまりせず、ひたすら正し
い姿勢、正しいポジションを体にし
みこませる訓く
ん
練れん
。少しもの足りなさ
を感じたこともあったけれど、たし
かに軸じ
く
が強くなりました。いろんな
動きに対して「応用のきく体」になっ
てきたかな、と感じています!
「基礎力」と「多た
様よ う
性せ い
」を重視して校長
アーレーン・ミンクホースト
いつも礼れ
い
儀ぎ
正しく、クラシッ
ク・バレエに対して情じ
ょう
熱ねつ
的てき
。「学
びたい」という強い思いをもっ
ていて、ほんとうに一生けんめ
い練習しますね。これはダン
サーとして成功するためにと
ても大切なことです。
そのいっぽうで、先生とど
うコミュニケーションをとるべ
きかわからずにとまどってい
る人も見かけます。おそらく
ここは、日本のお教室とかな
りようすがちがうのでしょう。
できるだけ早くこちらの文化
になじめるよう、英語の勉強
や友だち作りなど、積せ
っ
極きょく
的てき
に
努力する姿し
勢せい
も必要です。
―
バレエ界で、今後
求められるダンサーと
は?
むずかしい質問です
ね。それは各カンパニー
のディレクターがどん
なダンサーを求めるか
によりますから。ただ、
私が強く思うのはこう
いうことです。いまは
レベルの高いダンサー
がたくさんいる。何で
も器用に踊れるダン
―
スクールの特と
く
徴ちょうを
教えてく
ださい。
第一にはロイヤル・ウィニペ
グ・バレエ(RWB)で踊るダン
サーを育てることを目的とし
た学校だということ。現在は
同バレエ団の70〜75%のダン
サーがこのスクールの出身で
す。もちろんカナダ全土やア
メリカ、ヨーロッパなどのカン
パニーにもたくさんのダン
サーを輩は
い
出しゅつしています。
教育内容の大半はクラシッ
ク・バレエです。メソッドはロ
シアン・スタイルで、基礎を徹て
っ
底てい
的てき
に身につけていくシステ
ムを組んでいます。とはいえ、
いまはどんなレパートリーで
も踊りこなせる多様性が求め
られる時代。私たちもモダン
などの授業にはかなり力を入
れていますし、キャラクター、
パ・ド・ドゥ、ヴァリエーション、
音楽、ヴィジュアル・アートな
ど、さまざまな科目も用意し
ています。
―
生徒たちの「就し
ゅう
職しょく
活動」の
サポートはどのように?
まずここがバレエ団の付属
校だということじたいが最大
の強みでしょう。RWBのディ
レクターが直接スクールのク
ラスやパフォーマンスを見に
来て、カンパニーに必要な人
材を採さ
い
用よう
するのですから。も
ちろんRWB以外のバレエ団
をめざす生徒たちもできる限か
ぎ
りサポートします。オーディ
ション用のビデオや写真の撮さ
つ
影えい
を手助けしたり、履り
歴れき
書しょ
の
書き方を指導したり。また、
彼らがオーディションのため
に学校を休むことも、その後
もどってきてトレーニングを
継けい
続ぞく
することも認み
と
めています。
―
日本人留学生のようすは
どうですか?
すばらしい生徒ばかりよ!
卒業生にインタビュー!
─
椿井さんはこのスクールを卒業し、
みごとカンパニーに入団しました。
17才で入学して3年間学び、さらに
2年間「アスパイラント・プログラム」
に在ざ
い
籍せき
。その後1年間ロイヤル・ウィ
ニペグ・バレエの研け
ん
修しゅう
生せい
をして、201
2年に正式入団しました。
─
海外で学んで変わったことは?
まず「筋肉をいかにきたえて使うか」
を細かく理解できたこと。こちらには
骨格や柔じ
ゅう
軟なん
性せい
などすばらしい条じ
ょう
件けん
のも
ち主が多いけれど、そのぶん柔らかす
ぎたり芯し
ん
が定まりにくかったり、とい
う面もあるんです。そのためスクール
では筋トレや筋肉の使い方の指導が充じ
ゅう
実じつ
していて、そこで学んだことがプロ
になったいまとても役立っています。
また、世界的なダンサーや先生方か
ら教わるなかで、「バレエ」そのものに
対する意識が変わりました。「好き」と
いう気持ちだけでずっと踊ってきたけ
れど、それでは自分が楽しいだけ。ダ
ンサーとして人に何かを伝えるために
必要なことを、つねに考えつづけなく
ては……と思うようになりました。
─
海外で夢をかなえたい人にアドバ
イスを。
やはり語学はとても大切。先生の注
意を聞き取れないようでは学べる量が
半はん
減げん
してしまうし、つかめるはずの
チャンスも逃の
が
してしまうことがあると
思います。あとは、とにかくあきらめ
ないこと!
私も1年で進級できなかっ
たり、なかなか就職が決まらなかった
りと、つらい時期がありました。けれど、
そこであきらめなかったからいまがあ
ります。これからも自分で選んだ道を
投げ出さず、一歩一歩着ち
ゃく
実じつ
に積み重ね
ていきたいです。
椿つ ば
井い
愛ま な
実み
さん(ロイヤル・ウィニペグ・バレエ、24才)
綾あ や
田た
真ま
子こ
さん(留学3年目、レベル7、19才)
Arlene Minkhorst Directorロイヤル・ウィニペグ・バレエ・スクール プロフェッショナル部門を卒業後、ロイヤル・ウィニペグ・バレエ団で活躍。現在はバレエやポアントクラスのほか、学校公演や教師養成プログラムの指導も行っている。ユース・アメリカ・グランプリ、ローザンヌ国際バレエコンクール、ジャパングランプリ審査員。
留学生にインタビュー!
上から時計回りに:寮のメインラウンジ。よくみんなでテレビや映画を見たりします/毎年サマースクールの最後に在校生が公園の芝生で踊ります。無料なのですごくたくさんの人が見にきます!/レッスン前のスタジオ。クリスマス前でライトや小さなツリーを飾りました
上:クラスメイト。3月に行われたバレエの試験後にぱちり☆
左:私の部屋の机。日本の友だちの写真やプレゼントなどを飾っています
サーもたくさんいる。だから
こそ、求められるのは「自分を
信じる強さ」と「個性」です。
しかしどちらも学校で教えら
れるものではありません。そ
の人が自分の力で手に入れる
しかないのです。
学校公演の機会が多いのもスクールの特徴のひとつ
©Bruce Monk
©Ré
jean
Bra
ndt
左から時計回りに:『くるみ割り人形』でロシアを踊りました/カンパニーの75周年にイヴリン・ハートさんを迎えて作品を踊り、記念撮影/75周年のデフィレにて