チタンブリッジ
-42-
4 設計検証及び妥当性確認文書の概要
4.1 機器の設計検証及び妥当性確認の概要
4.1.1 物理的、化学的特性
本品の物理的、化学的特性は本添付資料の「4.1.7 性能」に含めて記載しており、本項の記
載は省略する。
4.1.2 電気的安全性及び電磁両立性
本品は医用電気機器ではないため、本項の記載は省略する。
4.1.3 生物学的安全性
本品は JIS H 4600 に適合したチタンのみが使用されている。JIS H 4600 に適合したチタン
は、平成 22 年 7 月 30 日薬食機発 0730 第 10 号「体内固定用ネジ及び体内固定用プレート審査
ガイドラインについて」の別表 1に記載のとおり、体内固定用ネジ及び体内固定用プレートと
しての使用が確認されている規格材料である。本品は、体内固定用ネジ及び体内固定用プレー
トと同様、整形外科領域で使用される機器であり、接触部位(体内植込み機器(組織/骨))及
び接触期間(長期的接触)も同等であると考えられるため、生物学的安全性試験は省略した。
したがって、本項の記載は省略する。
4.1.4 放射線に関する安全性
本品は本添付資料の「2.3 基本要件及び適合性証拠」の基本要件第十一条を適用する機器で
はないため、本項の記載は省略する。
4.1.5 機械的安全性
本品は本添付資料の「2.3 基本要件及び適合性証拠」の基本要件第十四条を適用する機器で
はないため、本項の記載は省略する。
4.1.6 安定性及び耐久性
本品は金属材料(チタン)のみからなり、その安定性は既知である。また、本品は放射線滅
菌される医療機器ではないため、材質劣化することもない。したがって、本項の記載は省略す
る。
チタンブリッジ
-43-
4.1.7 性能
(別添資料 ロ-1-1~11)
総括
チタンブリッジ(以下、「本品」)の性能及び品質を評価するにあたり、本品の原材料である
チタン の 、本品の強度に及ぼすチタンの の影響並びに本品の機械的強
度を試験した。試験方法及び試験結果の一覧を表 4.1.7-1 に示す。
本添付資料の「1.2 開発の経緯」に記載のとおり、本品の治験仕様( )が、国内の医
師主導臨床試験で使用された。治験開始前の臨床研究において、再手術した際に本品の内側の
孔部に破断が生じている例が認められたため、これを改善すべく、治験と併行して設計変更の
検討を行った。 又は が異なる 種類の試験検体を準備し、静的 3
点曲げ試験及び 3点曲げ疲労試験により、内側の孔部の強度を評価することで を承認申
請する標準仕様( )に選定した。
原材料チタンの 試験は、JIS H 4600「チタン及びチタン合金-板及び条」を参考に実施し
た。また、本品を用いた強度の評価の試験では JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」
及び JIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に試験方法を設定した。
表 4.1.7-1 試験方法及び試験結果の一覧
試験項目 試験方法 試験結果 実施 施設 1)
資料番号 (報告書番号)
1. チタンの 試験
本品の素材であるチタン の品質を確認するため、下記の で試験を実施した。
JIS H 4600 に適合 ロ-1-1 ( )
2. 本品の内側の孔部の強度に及ぼすチタンの の影響調査
(1) 静的 3点曲げ試験
治験仕様( )の開大幅 ㎜について、本品の (: 、 : )を変えた
試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した静的3点曲げ試験を行い、本品のチタン を決定した。
オフセット荷重
最高荷重
ロ-1-2 ( )
(2) 3 点曲げ疲労試験
治験仕様( )の開大幅 ㎜について、本品の (: 、 : )を変えた
検体につき、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した3点曲げ疲労試験を行い、本品のチタン を決定した。
最大荷重 : N : N
ロ-1-2 ( )
チタンブリッジ
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試験項目 試験方法 試験結果 実施 施設 1)
資料番号 (報告書番号)
3. のブリッジ部の強度評価(試験検体は であるが、ブリッジ部の機械的強度評価結果は、申請仕様の評価結果として引用可能)
(1) 静的圧縮試験
治験仕様( )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に、本品使用時のブリッジ部への圧迫荷重を模擬することで本品の機械的強度を評価した。
オフセット荷重 N
最高荷重 N
ロ-1-3 ( )
(2) 圧縮疲労試験
治験仕様( )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に、本品使用時のブリッジ部への圧迫荷重を模擬することで本品の機械的強度を評価した。
最大荷重 N
ロ-1-3 ( )
4. 本品の内側の孔部破断リスク低減のための候補仕様( 、 、 及び 、)の強度評価
(1) 静的 3点曲げ試験
候補仕様( ~ )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した静的3点曲げ試験を実施し、本品の内側の孔部の仕様が機械的特性に及ぼす影響を評価し、治験仕様( )の特性と比較した。
オフセット荷重 : N : N : N : N
最高荷重 : N : N : N : N
ロ-1-4 ( )
ロ-1-5 ( )
(2) 3 点曲げ疲労試験
候補仕様( ~ )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した3点曲げ疲労試験を実施し、本品の内側の孔部の仕様が疲労強度に及ぼす影響を評価し、治験仕様( )の特性と比較した。
最大荷重 : N : N : N : N
治験仕様: N
ロ-1-4 ( )
ロ-1-5 ( )
5. 本品の内側の孔部破断リスク低減のための候補仕様( 、申請仕様: )の強度評価
(1) 静的 3点曲げ試験
候補仕様( )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した静的3点曲げ試験を実施し、本品の内側の孔部の仕様が機械的特性に及ぼす影響を評価し、治験仕様( )の特性と比較した。
オフセット荷重 : N
最高荷重 : N
ロ-1-6 ( )
(2) 3 点曲げ疲労試験
候補仕様( )の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に設定した3点曲げ疲労試験を実施し、本品の内側の孔部の仕様が疲労強度に及ぼす影響を評価し、治験仕様( )の特性と比較した。
最大荷重 : N
治験仕様: N
ロ-1-6 ( )
チタンブリッジ
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試験項目 試験方法 試験結果 実施 施設 1)
資料番号 (報告書番号)
6. TS-002(甲状軟骨が短い患者用、幅:3 ㎜)のブリッジ部の強度評価
(1) 静的圧縮試験
TS-002の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に、本品使用時のブリッジ部への圧迫荷重を模擬することでブリッジ部の静的圧縮試験を実施した。
オフセット荷重 N
最高荷重 N
ロ-1-7 ( )
(2) 圧縮疲労試験
TS-002の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に、本品使用時のブリッジ部への圧迫荷重を模擬することでブリッジ部の圧縮疲労試験を実施した。
最大荷重 N
ロ-1-7 ( )
7. TS-002(甲状軟骨が短い患者用、幅: ㎜)の内側の孔部(直径: ㎜)の強度評価
(1) 3 点曲げ疲労試験
TS-002の開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に設定した3点曲げ疲労試験を実施し、内側の孔部の疲労強度特性を評価した。
最大荷重 N
ロ-1-8 ( )
8. TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)(甲状軟骨が厚い患者用)のブリッジ部の強度評価
(1) 静的圧縮試験
TS-003a及びTS-003bの開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に試験検体の長手方向の静的圧縮試験を実施した。
オフセット荷重 : N : N
最高荷重 : N : N
ロ-1-9 ( )
(2) 圧縮疲労試験
TS-003a及び TS-003bの開大幅 ㎜の試験検体を用いて、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及びJIS T 0313「金属製骨接合用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に試験検体の長手方向の圧縮疲労試験を実施した。
最大荷重 : N : N
ロ-1-9 ( )
9. ブリッジ部分の FEM 解析
及び TS-003bの開大幅 ㎜に対し、剛体で模擬した甲状軟骨により負荷を与え、各試験検体の変形特性を 3次元弾塑性 FEM解析により検討した。
で耐変形能を定義した場合 TS-003b: の約 倍
で耐変形能を定義した場合 TS-003b: の約 倍
ロ-1-10 ( )
1)
なお、上記のとおり、各試験において複数の種類の試験検体を用いているため、試験検体の
外観図(代表例)を図 4.1.7-1 に示し、各試験で用いた試験検体について、治験仕様( )
及び内側の孔部の破断リスク低減のための候補仕様との比較を表 4.1.7-2 に示す。さらに、本
申請には、甲状軟骨が短い患者用に設計した、標準仕様( )より幅が小さい仕様(TS-002)、
チタンブリッジ
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甲状軟骨が厚い患者用に設計した蝶番部幅が広い仕様(TS-003a 及び TS-003b)も含まれており、
治験仕様とこれら申請仕様との比較を表 4.1.7-3 に示す。
図 4.1.7-1 試験検体の外観図
表 4.1.7-2 試験検体(治験仕様と内側の孔部破断リスク低減のための候補仕様との比較)
仕様 コード
概要 羽部 内側の孔 本申請に
含まれる仕様
羽部厚さ(A)
孔の数 直径( / ) 形状
治験仕様( )
治験において使用 mm / mm
治験仕様に比べ、
mm / mm
治験仕様に比べ、( )
mm / mm
治験仕様に比べ
mm / 1) mm
治験仕様に比べ、
mm / mm
( )
治験仕様に比べ、( )
mm / mm
1) 。
表 4.1.7-3 試験検体(治験仕様と申請仕様との比較)
仕様 コード
概要 幅(C)1) 羽部厚さ(A)
蝶番部幅(D)
ブリッジ部厚さ(E)
本申請に含まれるタイプ
治験仕様 ( )
治験において使用 mm mm mm mm
治験仕様に比べ、(
)
mm mm mm mm
TS-002 甲状軟骨が短い患者を対象 mm mm 3.02 mm mm ○
TS-003a 甲状軟骨が厚い患者を対象 5.0 mm mm
4.02 mm mm ○
TS-003b 5.02 mm mm ○
1)羽部幅とブリッジ部幅は同じ寸法。
羽部厚さ(A)
羽部
内側の孔
外側の孔
蝶番部幅(D)
直径(B2)
幅(C)
直径(B1)
ブリッジ部厚さ(E)
開大幅
チタンブリッジ
-47-
【考察】
本品で使用されるチタンは、 試験の結果から JIS H 4600 に適合した。
チタンの の影響評価は、内側の孔の破断リスクを軽減することを目的として実施
した。治験仕様( )について、チタン の ( )
及び ( ) した検体 種を用いて、静的 3点曲げ試験及び 3点曲げ
疲労試験により孔部の強度を比較した。その結果、本品を 場合の条件として、
より強度の高い ( ) を規定した。なお、治験に用いた本
品については、 は規定されていなかったため、ロット間でその強度にばら
つきがあったものと推察する。
次に、内側の孔部の破断リスクを軽減するための対応として、内側の孔部の の
異なる試験検体( ~ )を用いて静的 3点曲げ試験及び 3点曲げ疲労試験による評価を行
った。まず、試験検体 ~ を用いて評価した結果、治験仕様( )に比べ、いずれ
の仕様も強度の増大傾向が認められ、 の強度が最も大きかった。そこで、 と
の仕様を合わせた を用いて評価した結果、3点曲げ疲労試験における最大荷重は Nを
示し、治験仕様( )の Nに対して十分な改善効果を認めた。この検討結果に基づき、
を承認申請の標準仕様( )とした。なお、 のブリッジ部の仕様は
と同じである。
一方、甲状軟骨が短い患者用に設計した試験検体(TS-002)については、内側の孔部の強度
を評価し、治験仕様( )と比較した。その結果、TS-002 の孔部の強度は、 より
高いことが確認できたため、孔部の破断リスクの低減効果は TS-002 についても確認できている
と判断した。
羽部に対する非臨床試験では、羽部を治具に固定した状態で実施されている。実際の使用で
は、甲状軟骨に糸で緩みのある状態で固定されるため、羽部への内外喉頭筋や嚥下等の繰り返
し負荷は少なく見積もれる。繰り返し負荷が羽部に加えられたとしても、本品の疲労試験の最
大荷重はそれらの負荷を上回っていることから、臨床上十分な強度を有していることが示され
ている。
羽部は、患者の甲状軟骨の形状に合わせて必要に応じて曲げ加工を行う。羽部への曲げ加工
は、強度試験で加えられた荷重より大きな負荷がかかることが想定される。整形外科分野で使
用される金属製プレートでも一般的に曲げ加工が行われているが、その場合でも強度が低下す
ることから過度に曲げ加工をしないように注意喚起されている。先行臨床研究での羽部破断の
走査型電子顕微鏡(SEM)分析では、曲げ加工部位の内側孔部近傍での疲労破壊であることが確
認されており、術者の曲げ加工の影響は否定できない。
製品化にあたり、破損リスク低減のために治験仕様品に比べて羽部強度を向上させること、
及び、安定した留置のために患者の甲状軟骨の形状に合わせた必要最小限の曲げ加工が行える
ことが重要である。
これらの観点から、治験仕様品よりも強度向上させ、あわせて、整形外科分野で使用される
金属プレートと同様に曲げ加工に関する注意喚起を行っている。
甲状軟骨が短い患者用に設計した TS-002 及び甲状軟骨が厚い患者用に設計した TS-003a(蝶
チタンブリッジ
-48-
番部幅:4.02 mm)及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 ㎜)の各試験検体について、ブリッジ部の
強度を評価する試験を実施した。さらに、甲状軟骨に装着されたときの本品の形状を模擬した
FEM 解析を行い、治験仕様( )及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 ㎜)を用いて、ブリッジ
部分の強度を比較した。その結果、いずれの仕様についても、各部の強度について、必要十分
な強度を有することが確認できたため、これらの仕様も本承認申請に含めることにした。
なお、本品の仕様のうち、ブリッジ部の強度については、次の観点から評価した。まず、本
品のブリッジ部に要求される機械的強度は、甲状軟骨を破壊するほどの荷重が本品のブリッジ
部に負荷されることはないと想定した。文献調査によると、剖検例の甲状軟骨 120 標本(男性
77 名、女性 43名)に対して、徐々に重量負荷をかけてゆき、骨折までの重量負荷を測定した
結果、ほぼ全ての症例で上角基部での骨折が認められ、その際の平均負荷量は 28.5 N(男性:
3.3 kg、女性:2.6 kg)であったと報告されている 18)。また、喉頭外傷例において、甲状軟骨
固定用のネジを用い、ネジの直径と穴の大きさによる引っ張り力の相関を観察した結果では、
穴の大きさ 0.76 mm、ネジの直径 1.5 mm の場合に強度が最も高く、その引張強度は 27.5 N で
あったと報告されている 19)。以上の点から、本品のブリッジ部に要求される強度は、 N以上
であれば十分であると判断した。また、術者が本品を甲状軟骨断端部に挿入する際、本品に過
度な力がかかる操作はないため、甲状軟骨の強度( N)を満たせば、臨床使用上は十分な強
度といえる。
また、本品は、甲状軟骨を正中縦切開後、切開部の上下に挿入され、ナイロン糸で縫合固定
される。このとき、本品は完全に固定される訳ではなく、遊び(余裕)を持った固定である。
甲状軟骨には、喉頭(甲状軟骨含む)内(内喉頭筋)及び外(外喉頭筋)の筋組織があり、
内喉頭筋は声帯の開閉、外喉頭筋は甲状軟骨を上下に動かす働きがあるが、これらの筋肉の作
用により、甲状軟骨に装着された本品のブリッジ部に対する荷重(負荷)は、上記の N より
更に小さい値であることが容易に推察できる。また、本品のブリッジ部にかかる力は、甲状軟
骨の形状を維持する方向(ブリッジ部を甲状軟骨装着部の両側より押す方向)のみである。こ
れに対して、本品のブリッジの強度評価のために実施した圧縮疲労試験は、双方向の振動試験
によるものであり、より苛酷な条件での評価となっている。
さらに、通常の日常生活において、甲状軟骨に負荷が生じる場合として、嚥下時の負荷が考
えられる。嚥下では、咽頭に入った食塊が口腔、鼻腔に逆流しないようにする運動(口蓋筋、
咽頭筋の働き)、喉頭腔に逃げないようにする運動(舌骨上筋,舌骨下筋,咽頭筋の働き)と食
塊を咽頭から食道へ進める運動(咽頭収縮筋の働き)とが協調して行われる。食塊が食道へ送
られる時、気道に入らないように喉頭蓋が後屈して喉頭口を閉鎖するのみではなく、声門も閉
鎖し、一時的に無呼吸となる。嚥下時の咽頭筋の収縮及び舌根の動きにより食塊を食道へ押し
下げるための荷重は、甲状軟骨に装着した本品のブリッジ部を両側の甲状軟骨から押す力とし
て作用するものと推察される。1回当たりの嚥下による荷重は、食塊重量にもよるが ~
N 程度であると想定されることから、本品のブリッジ部の強度評価結果から得られた数値と比
較すると、嚥下による本品への負荷は無視出来る荷重と考えられる。
上述のとおり、本品のブリッジ部には喉頭内外筋及び嚥下等による繰返し応力がかかるため、
圧縮疲労試験を設定した。圧縮疲労試験では、試験検体が繰返し 回に耐える荷重を規格
チタンブリッジ
-49-
値とする。前述の文献調査により示された N は、甲状軟骨の骨折を生じさせる荷重であり、
ブリッジ部の圧縮方向に繰り返される応力は、 N よりはるかに小さいと推定される。また、
圧縮疲労試験で求めた荷重-疲労寿命線図から N となる繰り返し数を外挿すると、 、
TS-002、TS-003a 及び TS-003b について、いずれも を超え、臨床使用上想定される繰返し
数をはるかに上回ることが容易に推察される。
一方、甲状軟骨の強度に比べて本品の強度が強いため、甲状軟骨が挫滅する等の影響につい
て検討が必要である。甲状軟骨に日常的に繰り返しかかる力は、内外喉頭筋及び嚥下等による
小さい負荷であるため、強度の差によって本品が甲状軟骨を挫滅させることもない。本品が甲
状軟骨へ及ぼす影響については、これまでの 19 例の再手術時においても、甲状軟骨組織には異
常が見られなかったことからも説明ができる。
以上を踏まえ、本品のブリッジ部の静的圧縮試験及び圧縮疲労試験における規格値(臨床的
許容強度)は、いずれも N 以上と設定した。本申請品目( 、TS-002、TS-003a 及び
TS-003b)は、いずれの仕様においても、臨床使用上必要とされる規格値に対して十分な強度を
有していることが示されている。
参考文献
18)Bockholdt B, Hempelmann M, Maxeiner H. Experimental investigations of fractures of
the upper thyroid horns. Legal Medicine 2003; Vol.5, S252-S255.
19)Plant RL, Pinczower EF. Pullout Strength of Adaption Screws in Thyroid Cartilage.
American Journal of Otolaryngology 1998; Vol.19, No.3, 154-157.
チタンブリッジ
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4.1.7.1 チタン の 試験
(別添資料 ロ-1-1)
試験目的
本試験は、本品の原材料であるチタン の品質( )確認を目的に実施した。
試験検体
サブサイズ試験片 2体( )1本、 1本)
検体選択の妥当性
本試験検体は、申請品目に用いる原材料のチタン を試験検体とした。本試験は、本品の
素材の品質確認を目的としており、選択した検体は妥当である。
試験方法
JIS H 4600 を参考に、以下のとおり試験を実施した。
試験機:
試験温度:室温( ℃)
: mm
: %耐力まで= mm/min( 速度= /min)
、 まで= mm/min( 速度= /min)
測定項目:
① %耐力: 曲線における ~ MPa の計測値を一次回帰し、 %オフ
セットした直線と 曲線の交点から求めた。
② 強さ
③ : を計測した。
判定基準
本試験はチタン の品質確認を目的としており、判定基準は設けていない。
試験結果
試験検体(チタン )の 値を表 4.1.7.1-1 に、 曲線を図 4.1.7.1-1
及び図 4.1.7.1-2 に示す。また、チタンの各規格(JIS H 4600 及び ASTM F67)における規定値
を表 4.1.7.1-2 に示す。その結果、試験検体は JIS H 4600 に適合し、
。
表 4.1.7.1-1 チタン の 値
試料記号 板厚 (mm)
板幅 (mm)
%耐力 (MPa)
強さ (MPa)
(%)
チタンブリッジ
-51-
図 4.1.7.1-1 チタン の ( )
図 4.1.7.1-2 チタン の ( )
表 4.1.7.1-2 チタン の各規格における規定値
種類 強さ
(MPa) %耐力 (MPa)
(%)
JIS H 4600 1 種 ~ 以上 以上 2 種 ~ 以上 以上
Grade 以上 ~ 以上 Grade 以上 ~ 以上
チタンブリッジ
-52-
考察
上記の試験結果から、本品の材料として使用するチタンは JIS H 4600 であることを確認した。
また、本品をチタン 場合、強度の確保に有用なのは、 (チタン の
)の であると推察した。
チタンブリッジ
-53-
4.1.7.2 本品の内側の孔部の強度に及ぼすチタンの の影響調査
(別添資料 ロ-1-2)
4.1.7.2.1 静的 3 点曲げ試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の静的 3
点曲げ試験方法により、 及び試験検体の特性の関係を確認し、本品の
を決定するために実施した。
試験検体
名称:チタンブリッジ(治験仕様( )、開大幅:2.0 ㎜)
識別符号: ( と : )
( と : )
員数: 本( は図 4.1.7.2.1-1 を参照)
本( は図 4.1.7.2.1-2 を参照)
図 4.1.7.2.1-1 図 4.1.7.2.1-2
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )の開大幅 2.0 ㎜を用いた。本試験は、
チタンの が内側の孔部の強度に及ぼす影響を評価することが目的であるため、選択
した検体は妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の中心線直径を起点にあらかじめ °の変形を加え、試験前に試験
検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の 外側の孔部の中心から mm の位置)まで補助板で押さえ、
試験検体を支持治具に固定する。
チタンブリッジ
-54-
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及び に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) アクチュエータを mm/min の速度で下方に動かし、試験検体に対する荷重-変位線図を
採取する。
7) 試験検体に対する荷重が極大値を示したところで試験を終了する。
8) 上記 1)~7)を繰返し、各試験検体( 及び )を 個使用し、試験を実施する。
判定基準
本試験は、 チタンの が本品の内側の孔部の強度に及ぼす影響を評
価することを目的としているため、判定基準は設けていない。
試験結果
静的 3点曲げの試験結果を表 4.1.7.2.1-1 に示す。本試験では、JIS T 0312 の 3点曲げ試験
を参考とし、支持治具-荷重治具間距離( mm)の %に相当する mm をオフセット値
とした。オフセット荷重は荷重-変位線図から対応する荷重を読み取り、最高荷重は試験検体
に対する荷重が一旦低下する範囲において、最大値を読み取った。その結果、オフセット荷重
及び最高荷重は、 ( )の方が ( )より大きな値を示した。
表 4.1.7.2.1-1 静的 3点曲げ試験結果
識別符号 個体符号 オフセット荷重
(N) 最高荷重
(N)
( )
平均値
( )
平均値
4.1.7.2.2 3 点曲げ疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の 3点曲
げ疲労試験により、 及び試験検体の特性の関係を確認し、本品の を決
定するために実施した。
試験検体
名称:チタンブリッジ(治験仕様( )、開大幅:2.0 ㎜)
識別符号: ( : )
( : )
チタンブリッジ
-55-
員数: 本( 方法は図 4.1.7.2.2-1 を参照)
本( 方法は図 4.1.7.2.2-2 を参照)
図 4.1.7.2.2-1 図 4.1.7.2.2-2
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )と同一の仕様である。本試験には、開大幅が最小の品目
(開大幅:2.0 ㎜)を用いた。本試験は、本品の を評価することが目的であり、試
験検体のサイズや内側の孔部の形状が試験結果に影響を及ぼすものではないと考えられる。し
たがって、選択した検体は妥当であると判断した。
試験方法
静的試験と同じ試験治具を用い、以下の方法で疲労試験を行った。
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の中心線直径を起点にあらかじめ °の変形を加え、試験前に試験
検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の 外側の孔部の中心から mm の位置)まで補助板で押さえ、
試験検体を支持治具に固定する。
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及び に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか又は繰返し数が 回に達する
まで試験を行う(試験周波数: Hz、荷重比(最小荷重/最大荷重): )。
判定基準
本試験は、本品の品質確認( の評価)を目的としているため、判定基準は設けて
いない。
試験結果
( )及び ( )の 3点曲げ疲労試験結果を、それぞれ表 4.1.7.2.2-1
チタンブリッジ
-56-
及び表 4.1.7.2.2-2 に、荷重-繰返し数線図を図 4.1.7.2.2-3 に示す。繰返し数が 回に
達した時点での最大荷重(σmax)は、 、 共に Nと同等であった。しかし、短
寿命域では、 の方が より長寿命であった。なお、破断した試験検体は、いずれも
内側の孔部(羽部の内側の孔)周辺から亀裂が認められた。
表 4.1.7.2.2-1 3 点曲げ疲労試験結果
( : )
表 4.1.7.2.2-2 3 点曲げ疲労試験結果
( : )
個体符号 最大荷重 σmax(N)
繰返し数
個体符号 最大荷重 σmax(N)
繰返し数
図 4.1.7.2.2-3 3 点曲げ荷重-繰返し数線図
考察
本品の内側の孔部の疲労強度は、繰返し数約 回までの短寿命域では、 ( )
の方が ( )より長寿命の特性を示した。また、繰返し数 回に達した時点で
の最大荷重(σmax)は、 及び 共に N と同等であった。
上述の静的 3 点曲げ試験及び 3点曲げ疲労試験の結果において、 の方が より高
い強度を示したことを踏まえ、本品の内側の孔部の破断リスクを軽減するための一つの方策と
して、本品の を ( )とすることにした。
チタンブリッジ
-57-
4.1.7.3 治験仕様( )のブリッジ部の強度評価
(別添資料 ロ-1-3)
4.1.7.3.1 静的圧縮試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に、本品使用時の圧迫荷重を模擬した静的圧縮試験により、
本品の機械的特性に及ぼす影響を評価することを目的として実施した。
試験検体
名称:チタンブリッジ(治験仕様( ))
品番: (開大幅: ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
識別符号: 、
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )と同一である。本試験で評価しているのは、ブリッジ部
の強度であり、申請用の標準仕様( )のブリッジ部の仕様は、治験仕様( )と
同一であることより、本試験結果は、 の結果として利用可能である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の連結部(ブリッジ部)の長手方向に圧縮荷重がかかるような押し治具を作製し、
治具に固定した上で試験機にセットする。
3) アクチュエータを mm/min で動かし、荷重と変位を計測・記録する。データの採取頻度は、
回/sec とする。
4) 最高荷重を示した後、荷重が下がり始めたところで試験を終了する。
5) 連結部間隔距離の %に相当するオフセット変位荷重及びその時の変位、並びに最高荷重
及びその時の変位を読み取り、荷重-変位曲線とともに報告書に記載する。
6) 試験後の試験検体の写真を撮影する。
判定基準
本試験は、荷重-変位曲線からオフセット荷重及びその時の変位、並びに最高荷重とその時
の変位の妥当性を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
本品のブリッジ部の静的圧縮試験結果を表4.1.7.3.1-1に、荷重-変位線図を図4.1.7.3.1-1
及び図 4.1.7.3.1-2 に示す。なお、 %オフセット荷重を読み取り、各図中の実線(荷重-変
位曲線)及び破線との交点が、試験検体の %( mm× %= mm)永久変形を与える荷
重を示す。
チタンブリッジ
-58-
表 4.1.7.3.1-1 静的圧縮試験結果
識別符号 オフセット荷重(N)
オフセット荷重時の変位(mm)
最高荷重 (N)
最高荷重時の変位(mm)
破損状況
平均値 標準偏差
図 4.1.7.3.1-1 荷重-変位線図( )
図 4.1.7.3.1-2 荷重-変位線図( )
考察
本試験の結果から、本試験検体のブリッジ部への最高荷重は N であった。
本添付資料の「4.1.7 性能」の考察に記載のとおり、静的圧縮試験及び圧縮疲労試験におけ
チタンブリッジ
-59-
る規格値(臨床的許容強度)は、 N 以上であれば、十分その用途にかなうものであると判断
しており、本品の強度は担保されている。
4.1.7.3.2 圧縮疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に本品使用時のブリッジ部への圧迫荷重を模擬した圧縮疲労
試験により、本品の機械的特性に及ぼす影響を評価することを目的とする。
試験検体
名称:チタンブリッジ(治験仕様( ))
品番: (開大幅:6.0 ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
識別符号(疲労試験条件決定のための静的圧縮予備試験): test1
識別符号: 、 、 、 、 、 、
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )と同一である。本試験で評価しているのは、ブリッジ部
の強度であり、申請用の標準仕様( )のブリッジ部の仕様は、治験仕様( )と
同一であることより、本試験結果は、 の結果として利用可能である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の連結部(ブリッジ部)の長手方向に圧縮荷重がかかるような押し治具を作製し、
治具に固定した上で試験機にセットする。
3) 疲労試験荷重を決定するため、4.1.7.3.1 と同様の手順で、検体 個(test1)を用いた静
的圧縮予備試験を実施し、最高荷重を測定する。
4) 静的圧縮予備試験で得られた最高荷重の約 %に相当する荷重を最大荷重(Pmax)として
圧縮疲労試験を行う(荷重比(最小荷重/最大荷重)= 、波形: 、試験周波数:
Hz)。
5) 以下の場合に試験を終了し、繰返し数を記録する。
繰返し数が 回に達した場合
試験検体の破損が認められた場合
最大荷重時の変位が検体 及び で mm 以上、 以降で mm 以上増大した場合
6) 設定最大荷重と繰返し数の関係から、次の試験検体に付与する最大荷重を決定し、4)以下
の要領にて圧縮疲労試験を繰返し、荷重-繰返し数線図を作成する。
7) 個の試験検体が 回に耐える荷重を求めるとともに、荷重-疲労寿命線図を作成する。
チタンブリッジ
-60-
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.3.2-1 に、荷重-繰返し数線図を図 4.1.7.3.2-1 に示す。なお、2 個の
試験検体が 回に耐える荷重は N であった。
表 4.1.7.3.2-1 圧縮疲労試験結果
識別符号 最大荷重(N) 最小荷重(N) 繰返し数 破損状況
合計繰返し数
図 4.1.7.3.2-1 荷重-繰返し数線図
考察
本試験の結果から、繰返し数 回に耐える最大荷重は Nであった。
チタンブリッジ
-61-
4.1.7 項の考察に記載のとおり、静的圧縮試験、圧縮疲労試験における規格値(臨床的許容
強度)は、 N以上であれば、十分その用途にかなうものであると判断しており、本品の強度
は担保されている。
チタンブリッジ
-62-
4.1.7.4 内側の孔部の破断リスク低減のための候補仕様( 、 、 、 )の強度
評価
(別添資料 ロ-1-4、ロ-1-5)
4.1.7.4.1 静的 3点曲げ試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の静的 3
点曲げ試験方法により、本品の内側の孔部の形状が機械的特性に及ぼす影響を評価し、本品の
治験仕様( )の特性と比較することを目的とする。
試験検体
名称:チタンブリッジ( 、 、 、 、いずれも開大幅: ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
試験検体の識別符号を表 4.1.7.4.1-1 に示す。
表 4.1.7.4.1-1 試験検体の識別符号
形状符号 静的圧縮試験
個体符号 個数
各 計 )
各 計 )
各 計 )
各 計 )
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )に比し羽部の のみが異なる検体(内側の孔
部の破断リスクを軽減するための候補仕様)である。本試験では、この差分が本検体の機械的
特性に及ぼす影響を評価することが目的であるため、選択した試験検体は妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の中心線直径部を起点に、あらかじめ °の変形を加え、試験前に
試験検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の 外側の孔部の中心から mm の位置)まで補助板で押さえ、
試験検体を支持治具に固定する。
チタンブリッジ
-63-
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及びブリッジ部に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) アクチュエータを mm/min の速度で下方に動かし、試験検体に対する荷重-変位線図を
採取する。
7) 変位が mm に達したところで試験を終了する。
8) 上記 3)~7)を繰返し、各試験検体( 、 、 及び )を
個使用し、試験を実施する。
判定基準
本試験は、荷重-変位曲線からオフセット荷重及びその時の変位、並びに最高荷重とその時
の変位の妥当性を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.4.1-2 に示す。なお、本試験では、JIS T 0312 の 3 点曲げ試験を参考と
し、支持治具-荷重治具間距離( mm)の %に相当する mm をオフセット値とし、対
応する荷重を読み取った。
表 4.1.7.4.1-2 静的 3点曲げ試験結果
形状符号 個体符号 オフセット荷重
(N) 最高荷重
(N)
平均値
平均値
平均値
平均値
考察
本品の治験仕様( )に対し、内側の孔部の が異なる 4種の試験検体( 、
、 及び 、開大幅はいずれも ㎜)を用いて静的 3点曲げ特性を評価した。
その結果、試験検体 、 及び の最高荷重は同等であった。試験検体 の最
高荷重は、 、 及び より N 程度高い値が示されており、これらの試験検体
チタンブリッジ
-64-
の中では の強度が最も高いと判断した。
なお、本試験は各試験検体( 、 、 及び )の内側の孔部の
破断リスクを軽減するための候補仕様のスクリーニングのために実施したものである。
4.1.7.4.2 3 点曲げ疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の 3点曲
げ疲労試験方法により、本品の内側の孔部の形状が疲労強度に及ぼす影響を評価し、本品の治
験仕様( )の特性と比較することを目的とする。
試験検体
名称:チタンブリッジ( 、 、 、 、いずれも開大幅:2.0 ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
各試験検体の識別符号を表 4.1.7.4.2-1 及び表 4.1.7.4.2-2 に示す
表 4.1.7.4.2-1 試験検体の識別符号
( 及び )
表 4.1.7.4.2-2 試験検体の識別符号
( 及び )
形状符号 疲労試験
形状符号 疲労試験
個体符号 個数 個体符号 個数 各
(計 ) 各
(計 ) 各
(計 ) 各 (計 )
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )に比し羽部の のみが異なる検体(
)である。本試験では、この差分が本検体の疲労強
度に及ぼす影響を評価することが目的であるため、選択した試験検体は妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の中心線直径部を起点にあらかじめ °の変形を加え、試験前に試
チタンブリッジ
-65-
験検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の 外側の孔部の中心から mmの位置)まで補助板で押さえ、
試験検体を支持治具に固定する。
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及びブリッジ部に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか、又は繰返し数が 回に達す
るまで試験を行う(試験周波数: Hz、荷重比(最小荷重/最大荷重): )。
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.4.2-3~表 4.1.7.4.2-6 に 及び の荷重-繰返し数線図を図
4.1.7.4.2-1 に、 及び の荷重-繰返し数線図を図 4.1.7.4.2-2 に示す。繰返し数が
回に達した時点での最大荷重(Pmax)は、 で N、 で N、
で N、 で Nであった。破断箇所は、試験検体 では、
で認められた。
表 4.1.7.4.2-3 3 点曲げ疲労試験結果
( )
表 4.1.7.4.2-4 3 点曲げ疲労試験結果
( )
個体符号 最大荷重Pmax(N)
繰返し数 個体符号 最大荷重 Pmax(N)
繰返し数
注)
表 4.1.7.4.2-5 3 点曲げ疲労試験結果
( )
表 4.1.7.4.2-6 3 点曲げ疲労試験結果
( )
個体符号 最大荷重Pmax(N)
繰返し数 個体符号 最大荷重 Pmax(N)
繰返し数
注)
チタンブリッジ
-66-
図 4.1.7.4.2-1 3 点曲げ荷重-繰返し数線図( 及び )
図 4.1.7.4.2-2 3 点曲げ荷重-繰返し数線図( 及び )
考察
本品の治験仕様( )に対し、内側の孔部の が異なる 4種の試験検体( 、
、 、 、開大幅:いずれも ㎜)を用いて 3点曲げ疲労特性を評価した。その
結果、 に比し、繰返し数が 回に達した時点での最大荷重は で同等、
及び では N高い値を示し、 では N 高い値を示した。当該試験検体の中では、
内側の孔部の強度について が最も高いと判断した。さらに、各試験検体( 、
チタンブリッジ
-67-
及び )に対する静的 3点曲げ試験結果を踏まえ、これらの試験検体の中では試験検
体 の強度が最も高いと判断した。
なお、本試験は各試験検体( 、 、 及び )の内側の孔部の
破断リスクを軽減するための候補仕様のスクリーニングのために実施したものである。
チタンブリッジ
-68-
4.1.7.5 内側の孔部の破断リスク低減のための候補仕様( )の強度評価
(別添資料 ロ-1-6)
4.1.7.5.1 静的 3点曲げ試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の静的 3
点曲げ試験方法により、本品の内側の孔部の形状及び厚さが機械的特性に及ぼす影響を評価し、
本品の治験仕様( )の特性と比較することを目的とする。
試験検体
名称:チタンブリッジ( ( )、開大幅: ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
試験検体の識別符号を表 4.1.7.5.1-1 に示す。
表 4.1.7.5.1-1 試験検体の識別符号
形状符号 静的圧縮試験
個体符号 個数
各
(計 )
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )に比し内側の孔部の のみが異なる
検体である。本試験では、この差分が本検体の機械的特性に及ぼす影響を評価することが目的
であるため、選択した試験検体は妥当である。なお、本試験検体が承認申請に含まれる品目で
ある。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の中心線直径部を起点にあらかじめ °の変形を加え、試験前に試
験検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の まで補助板で押さえ、試験検体を支持治具に固定する。
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及びブリッジ部に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) アクチュエータを mm/min の速度で下方に動かし、試験検体に対する荷重-変位線図を
採取する。
7) 変位が mm に達したところで試験を終了する。
8) 上記 3)~7)を繰返し、試験検体を 個使用し、試験を実施する。
チタンブリッジ
-69-
判定基準
本試験は、荷重-変位曲線からオフセット荷重及びその時の変位、並びに最高荷重とその時
の変位の妥当性を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.5.1-2 に示す。本試験では、JIS T 0312 の 3 点曲げ試験を参考とし、支
持治具-荷重治具間距離( mm)の %に相当する mm をオフセット値とし、対応する
荷重を読み取った。
表 4.1.7.5.1-2 静的 3点曲げ試験結果
形状符号 個体符号 オフセット荷重
(N) 最高荷重
(N)
平均値
考察
本品の治験仕様( )に対し、内側の孔部の 試験検体( 、
開大幅: ㎜)を用いて静的 3点曲げ特性を評価した。その結果、試験検体 の最高荷
重は、内側の孔部の 試験検体 、 及び に対する試験結果より大き
く、試験検体 (最高荷重: N)と同等の強度を有していると判断した。
4.1.7.5.2 3 点曲げ疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の 3点曲
げ試験方法により、本品の内側の孔部の が疲労強度に及ぼす影響を評価し、本品
の治験仕様( )の特性と比較することを目的とする。
試験検体
名称:チタンブリッジ( ( )、開大幅: mm)
材質:純チタン JIS H 4600
チタンブリッジ
-70-
試験検体の識別符号を表 4.1.7.5.2-1 に示す。
表 4.1.7.5.2-1 試験検体の識別符号
形状符号 疲労試験
個体符号 個数
各 (計 )
検体選択の妥当性
本試験検体は、治験仕様( )に比し内側の孔部の のみが異なる検体であ
る。本試験では、この差分が本検体の機械的特性に及ぼす影響を評価することが目的であるた
め、選択した試験検体は妥当である。なお、本試験検体が承認申請に含まれる品目である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
3) 試験検体の内側の孔部の を起点にあらかじめ °の変形を加え、試験前に試験
検体を撮影する。
4) 試験検体の内側の孔部の まで補助板で押さえ、試験検体を支持治具に固定する。
5) アクチュエータを適当な位置まで下げ、 本のピンで試験検体の ( )
を荷重治具に固定する。ピン及びブリッジ部に隙間が生じないように下側のピンの位置を
調整して固定する。
6) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか、又は繰返し数が 回に達す
るまで試験を行う(試験周波数: Hz、荷重比(最小荷重/最大荷重): )。
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
本品の試験結果を表 4.1.7.5.2-2 に、荷重-繰返し数線図を図 4.1.7.5.2-1 に示す。繰返し
数が 回に達した時点での最大荷重(Pmax)は、 Nであった。治験仕様( )の
最大荷重が N であったことより、 では N 高かった。破断箇所は、いずれも内側の
孔部の中心から若干外側に寄った箇所で認められた。
チタンブリッジ
-71-
表 4.1.7.5.2-2 3 点曲げ疲労試験結果( )
個体符号 Pmax (N)
繰返し数
注)
図 4.1.7.5.2-1 3 点曲げ荷重-繰返し数線図
考察
本品の治験仕様( )に対し、内側の孔部の が異なる試験検体 (開
大幅: ㎜)を用いて、3 点曲げ疲労特性を評価した。その結果、 に比し、 の
疲労特性は N 高い値を示した。
内側の孔部の が異なる試験検体( 、 、 、 )に対する 3 点
曲げ疲労特性の評価では、試験検体 の疲労特性が最も高く Nであった。試験検体
の疲労特性は Nであり、試験検体 よりも高い強度を示した。
上述のとおり、内側の孔部の が異なる試験検体( 、 、 、 、
)に対する静的 3 点曲げ試験結果及び 3点曲げ疲労試験結果に基づき、いずれの試験にお
いても最も強度が高かった試験検体 を、申請品目の標準仕様( )とした。
チタンブリッジ
-72-
4.1.7.6 TS-002(幅:3 mm)のブリッジ部の強度評価
(別添資料 ロ-1-7)
4.1.7.6.1 静的圧縮試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に設定した静的圧縮試験により、本品の TS-002(幅:3 mm)
の試験検体を使用し、ブリッジ部の機械的特性を評価する。なお、TS-002 は、甲状軟骨が短い
患者を想定した仕様である。
試験検体
名称:チタンブリッジ(TS-002、開大幅:6.0 ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
図面番号:
識別符号: 、
検体選択の妥当性
試験検体は申請品目と同一であり、試験検体として妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の長手方向に圧縮荷重がかかるように押し治具を使用する。
3) アクチュエータを mm/minの速度で動かし、荷重及び変位を測定する(測定頻度: 回/sec)。
4) 最高荷重を示し、荷重が下がり始めたところで試験を終了する。
5) ブリッジ部の長さ( mm/羽部間の距離)の %に相当する荷重をオフセット荷重と
し、オフセット荷重時の変位を読み取る。また、最高荷重及びその変位を読み取り、荷重
-変位曲線を記載する。
6) 試験後、試験検体を撮影する。
7) 上記 3)~6)を繰返し、試験検体を 個使用し、試験を実施する。
判定基準
本試験は、荷重-変位曲線からオフセット荷重及びその時の変位、並びに最高荷重とその時
の変位の妥当性を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
本品の試験結果を表 4.1.7.6.1-1 に、各試験検体の荷重-変位線図を図 4.1.7.6.1-1 及び図
4.1.7.6.1-2 に示す。図中の荷重-変位曲線(青色)及び %オフセット直線(緑色)との交
点が、試験検体の %( mm× %= mm)の永久変形を与える荷重を示す。
チタンブリッジ
-73-
表 4.1.7.6.1-1 静的圧縮試験結果
識別符号 オフセット荷重 最高荷重
破損状況 荷重 (N)
荷重時の変位 (mm)
荷重 (N)
荷重時の変位 (mm)
平均値
標準偏差
図 4.1.7.6.1-1 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
図 4.1.7.6.1-2 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
チタンブリッジ
-74-
考察
本試験検体(TS-002、3 mm 幅)のブリッジ部に対する最高荷重は Nであった。 mm 幅で
ある治験仕様( )の最高荷重は Nであったのに対して、当該仕様は N低く、本
品のブリッジ部に対する荷重は本品のブリッジ部の幅に比例して小さくなった。
4.1.7 項の考察に記載のとおり、本品の臨床的使用の観点から、規格値(臨床的許容強度)
は N 以上であれば、十分その用途にかなうものであると考えられることから、TS-002 につ
いて、必要な強度は担保されている。
4.1.7.6.2 圧縮疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に設定した圧縮疲労試験により、本品の TS-002(幅:3 mm)
の試験検体を使用し、ブリッジ部の機械的特性を評価する。なお、TS-002 は、甲状軟骨が短い
患者を想定した仕様である。
試験検体
名称:チタンブリッジ(TS-002、開大幅:6.0 ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
図面番号:
識別符号: 、 、 、 、 、 、 、
検体選択の妥当性
試験検体は申請品目と同一であり、試験検体として妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の長手方向に圧縮荷重がかかるように押し治具を使用する。
3) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか、又は繰返し数が 回に達す
るまで試験を行う(試験周波数: Hz、波形:正弦波、荷重比(最小荷重/最大荷重): )。
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.6.2-1 に、荷重-繰返し数図を図 4.1.7.6.2-1 に示す。
チタンブリッジ
-75-
表 4.1.7.6.2-1 圧縮疲労試験結果
試験検体 最大荷重 (N)
繰返し数 破壊箇所
注)荷重比(最小荷重/最大荷重)=
図 4.1.7.6.2-1 圧縮疲労試験の荷重-繰返し数図
考察
繰返し数が 回に達した時点での本試験検体(3 mm 幅)の荷重(耐久限)は Nであ
った。5 mm 幅の試験検体である治験仕様( )の荷重(耐久限)は Nであり、 N
低い値であった。
4.1.7 項の考察に記載のとおり、本品の臨床的使用の観点から、規格値(臨床的許容強度)
は N 以上であれば、十分その用途にかなうものであると考えられることから、TS-002 につ
いて、必要な強度は担保されている。
チタンブリッジ
-76-
4.1.7.7 TS-002(幅:3 mm)の内側の孔部(直径: ㎜)の強度評価
(別添資料 ロ-1-8)
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」を参考に確立した本品の 3点曲
げ試験方法により疲労強度特性を評価し、TS-002 の試験検体と治験仕様( )及び申請
用の標準仕様( )の特性を比較する。なお、本試験検体(幅:3 mm)は、甲状軟骨が短
い患者を想定した仕様である。
試験検体
検体名:チタンブリッジ(TS-002、開大幅: ㎜)
材質:純チタン JIS H 4600
図面番号:
識別符号: 、 、 、 、
検体選択の妥当性
試験検体は申請品目と同一であり、試験検体として妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の内側の孔部の中心線直径部を起点にあらかじめ °の変形を加える。
3) 試験機上方のアクチュエータに荷重治具、下方の試験機テーブルに支持治具を取り付ける。
4) 補助板を用い、試験検体を支持冶具に固定する。
5) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか、又は繰返し数が 回に達す
るまで試験を行う(試験周波数: Hz、荷重比(最小荷重/最大荷重): )。
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
試験結果
試験結果を表 4.1.7.7-1 に、荷重-繰返し数図を図 4.1.7.7-1 に示す。なお、試験検体の破
壊箇所は、いずれも内側の孔部の中心から若干外側に寄ったところで認められた。
表 4.1.7.7-1 3 点曲げ疲労試験結果
試験検体 最大荷重
(N) 繰返し数 破壊箇所
注)荷重比(最小荷重/最大荷重) =
チタンブリッジ
-77-
図 4.1.7.7-1 3 点曲げ疲労試験の荷重-繰返し数図
考察
本試験検体の繰返し数が 回に達した時点での最大荷重(耐久限)は N であった。
この値は標準仕様( )の荷重より N 低く、治験仕様( )の荷重より N
高かった。本試験検体の荷重(耐久限)は標準仕様( )の荷重より劣るものの、治験仕
様( )の強度より十分大きな荷重を示しているため、甲状軟骨の長さが短い患者用
(TS-002、3 mm 幅)について、十分な強度が担保されている。
チタンブリッジ
-78-
4.1.7.8 TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)のブリ
ッジ部の強度評価
(別添資料 ロ-1-9)
4.1.7.8.1 静的圧縮試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に設定した静的圧縮試験により、TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)
及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)の試験検体を使用し、本品のブリッジ部の機械的特性を評
価する。なお、蝶番部幅4.02 mm及び5.02 mmの仕様は、甲状軟骨が厚い患者用(標準仕様( )
の蝶番部幅 3.02 ㎜では甲状軟骨に蝶番部分が装着できない場合を想定して設計した仕様)で
ある。
試験検体
材質:純チタン JIS H 4600
名 称 チタンブリッジ
(TS-003a、開大幅: mm)
チタンブリッジ
(TS-003b、開大幅: mm)
図面番号
識別符号 、 、
検体選択の妥当性
試験検体は申請品目と同一であり、試験検体として妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の長手方向に圧縮荷重がかかるように押し治具を使用する。
3) アクチュエータを mm/min の速度で動かし、荷重及び変位を測定する(測定頻度: 回
/sec)。
4) 最高荷重を示し、荷重が下がり始めたところで試験を終了する。
5) ブリッジ部の長さ( mm/羽部間の距離)の %に相当する荷重をオフセット荷重と
し、オフセット荷重時の変位を読み取る。また、最高荷重及びその変位を読み取り、荷重
-変位曲線を記載する。
6) 試験後、試験検体を撮影する。
7) 上記 3)~6)を繰返し、各試験検体を 個使用し、試験を実施する。
判定基準
本試験は、荷重-変位曲線からオフセット荷重及びその時の変位、並びに最高荷重とその時
の変位の妥当性を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
チタンブリッジ
-79-
試験結果
各試験検体(TS-003a 及び TS-003b)の試験結果を、それぞれ表 4.1.7.8.1-1 及び表
4.1.7.8.1-2 に示す。また、TS-003a の荷重-変位線図を図 4.1.7.8.1-1 及び図 4.1.7.8.1-2
に、TS-003b の荷重-変位線図を図 4.1.7.8.1-3 及び図 4.1.7.8.1-4 に示す。なお、各図中に
示される荷重-変位曲線(青色)及び %オフセット直線(緑色)との交点が、試験検体の
%( mm× %= mm)の永久変形を与える荷重を示す。
表 4.1.7.8.1-1 TS-003a の静的圧縮試験結果
識別符号 オフセット荷重 最高荷重 破損状況
荷重(N)
荷重時の変位(mm)
荷重 (N)
荷重時の変位 (mm)
平均値
標準偏差
表 4.1.7.8.1-2 TS-003b の静的圧縮試験結果
識別符号 オフセット荷重 最高荷重 破損状況
荷重(N)
荷重時の変位(mm)
荷重 (N)
荷重時の変位 (mm)
平均値
標準偏差
図 4.1.7.8.1-1 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
チタンブリッジ
-80-
図 4.1.7.8.1-2 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
図 4.1.7.8.1-3 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
図 4.1.7.8.1-4 静的圧縮試験の荷重-変位曲線(試験検体: )
チタンブリッジ
-81-
考察
本試験検体 TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)は、甲状軟骨
が厚い患者用に設計した仕様で、蝶番部幅が標準仕様( 、蝶番部幅: mm)より大
きい。TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)の試験検体におけるオフセット荷重及び最高荷重はそれ
ぞれ N及び Nで、TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)の試験検体におけるオフセット荷
重及び最高荷重はそれぞれ N 及び N であった。
4.1.7 項の考察に記載のとおり、本品の臨床的使用の観点から、規格値(臨床的許容強度)
は N以上であれば、十分その用途にかなうものであると考えられることから、蝶番部幅 4.02
mm 及び 5.02 mm の各試験検体において、必要な強度は担保されている。
4.1.7.8.2 圧縮疲労試験
試験目的
本試験は、JIS T 0312「金属製骨接合用品の曲げ試験方法」及び JIS T 0313「金属製骨接合
用品の圧縮曲げ試験方法」を参考に設定した圧縮疲労試験により、TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)
及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)の試験検体を使用し、本品のブリッジ部の機械的特性を評
価する。なお、蝶番部幅4.02 mm及び5.02 mmの仕様は、甲状軟骨が厚い患者用(標準仕様( )
の蝶番部幅 3.02 ㎜では甲状軟骨に蝶番部分が装着できない場合を想定して設計した仕様)で
ある。
試験検体
材質:純チタン JIS H 4600
名称 チタンブリッジ
(TS-003a、開大幅: ㎜)
チタンブリッジ
(TS-003b、開大幅: ㎜)
図面番号
識別符号 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
検体選択の妥当性
試験検体は申請品目と同一であり、試験検体として妥当である。
試験方法
1) 試験は室温の大気中で行う。
2) 試験検体の長手方向に圧縮荷重がかかるように押し治具を使用する。
3) 荷重治具を荷重制御で振幅させ、試験検体が破壊するか、又は繰返し数が 回に達す
るまで試験を行う(試験周波数: Hz、波形: 、荷重比(最小荷重/最大荷重):
)。
判定基準
本試験は、試験検体が破壊して試験の限度に達するか、又はあらかじめ規定した繰返し数(
回)に耐える荷重を評価する試験であるため、判定基準は設けていない。
チタンブリッジ
-82-
試験結果
各試験検体(TS-003a 及び TS-003b)の試験結果を、それぞれ表 4.1.7.8.2-1 及び表
4.1.7.8.2-2 に、荷重-繰返し数図を図 4.1.7.8.2-1 に示す。
表 4.1.7.8.2-1 TS-003a の圧縮疲労試験結果( )
識別符号 最大荷重(N) 繰返し数 破壊箇所
注)荷重比(最小荷重/最大荷重)=
表 4.1.7.8.2-2 TS-003b 圧縮疲労試験結果( )
識別符号 最大荷重(N) 繰返し数 破壊箇所
注)荷重比(最小荷重/最大荷重)=
図 4.1.7.8.2-1 TS-003a 及び TS-003b の圧縮疲労試験の荷重-繰返し数図
チタンブリッジ
-83-
考察
本試験検体 TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)及び TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)は、甲状軟骨
が厚い患者用に設計した仕様で、蝶番部幅が標準仕様( 、蝶番部幅: mm)より大
きい。本試験検体の繰返し数が 回に達した時点での長手方向の最大荷重(耐久限)は、
TS-003a(蝶番部幅:4.02 mm)の試験検体で N、TS-003b(蝶番部幅:5.02 mm)の試験検
体で Nであった。
4.1.7 項の考察に記載のとおり、本品の臨床的使用の観点から、規格値(臨床的許容強度)
は N 以上であれば、十分その用途にかなうものであると考えられることから、蝶番部幅 4.02
mm 及び 5.02 mm の各試験検体において、必要な強度は担保されている。
チタンブリッジ
-84-
4.1.7.9 ブリッジ部分の FEM 解析
(別添資料 ロ-1-10)
試験目的
本試験は、治験仕様( )及び甲状軟骨が厚い患者用に設計した TS-003b に対し、剛体
で模擬した甲状軟骨を用いて試験検体に負荷を与え、両試験検体の変形特性を3次元弾塑性FEM
解析により検討する。
試験検体
材質:純チタン JIS H 4600
名 称 チタンブリッジ
( 、開大幅: ㎜)
チタンブリッジ
(TS-003b、開大幅: ㎜)
図面番号
検体選択の妥当性
本試験は、治験仕様( )に対して、甲状軟骨が厚い患者用に設計した蝶番部幅が異な
る仕様を追加したことの妥当性を検証することが目的であり、蝶番部幅が最大である規格の試
験検体(TS-003b)を選択したことは妥当である。なお、 は、評価対象としたブリッジ
部の仕様が申請用の標準仕様( )と同じである。
試験方法
1)本試験にあたり使用したソフトは、以下のとおりである。
・ ( )
・ ( )
2)対称性を用いた / モデルにより解析を行った。
3)各試験検体の羽部を °に曲げ、解析モデルを作成した(図 4.1.7.9-1 参照)。
4) 負荷前の解析モデルの応力・ひずみを ( )とした。
5)剛体で模擬した甲状軟骨を配置した。
6) 甲状軟骨に変位(δ)を与え、負荷荷重、各試験検体に生じる応力・ひずみなどを算出した。
なお、変位(δ)は最大 mmまでとした。
a)治験仕様( ) b)甲状軟骨が厚い患者用(TS-003b)
図 4.1.7.9-1 解析モデル(解析領域:水色)
チタンブリッジ
-85-
判定基準
試験検体で使用されている純チタン 種の物性値(表 4.1.7.9-1)をもとに各試験検体の変
形特性を検証する試験であるため、判定基準は設けていない。
表 4.1.7.9-1 純チタン 種の物性値と機械的特性
部品名 材質 ヤング率 (GPa)
ポアソン比 (-)
降伏応力 (MPa)
強さ (MPa)
チタンブリッジ JIS H4600 (純チタン 種)
試験結果
1) 荷重-変位線図
治験仕様( )及び TS-003b の荷重-変位線図を図 4.1.7.9-2 に、本試験から得られた
特性を以下に示す。
①両試験検体の 線図は、領域(A)、領域(B)及び領域(C)からなる。
領域(A):ほぼ弾性変形している。
領域(B):明確な塑性変形が開始し、変形量の増大に伴い荷重も増大する。
領域(C):変形量の増大に伴い荷重が減少する(急速に塑性変形が進行する領域に対応)。
②同一変位量で比較した場合、全領域において TS-003b の方が よりも荷重が高い(変
形能が高い)。
また、各試験検体の耐変形能の比較結果を表 4.1.7.9-2 に示す。
図 4.1.7.9-2 治験仕様( )及び TS-003b の荷重( )-変位( )線図
チタンブリッジ
-86-
表 4.1.7.9-2 と TS-003b の耐変形能比較
仕様コード TS-003b 荷重比(TS-003b/ )
N N ( )
N N ( )
2) 相当塑性ひずみ分布及び Mises 応力分布
各試験検体の相当塑性ひずみ分布図を図 4.1.7.9-3 に示す。当該分布図から以下の特性が認
められた。
①各試験検体とも 負荷時には、塑性変形は生じていない(最大で ( )程度の
わずかな相当塑性ひずみは発生)。
②各試験検体とも最大荷重( )負荷時では塑性変形が発生した(中央連結部以外は塑性変
形せず、弾性変形のみである)。
③変形の進行に伴い、塑性域の拡大及び塑性ひずみの増大が認められた。
④解析範囲内では、中央連結部のみに塑性変形が発生した(中央連結部以外は弾性変形のみ
である)。
a)治験仕様 b)甲状軟骨が厚い患者用(TS-003b)
図 4.1.7.9-3 相当塑性ひずみ分布図
チタンブリッジ
-87-
また、各試験検体の Mises 応力分布図を図 4.1.7.9-4 に示す。当該分布図から以下の特性が
認められた。
① 応力も中央連結部で大きかった(図中: )。
②相当塑性ひずみと同様、 応力も変形の進行に伴い増大した。
( 負荷時に 応力が生じているが、これは弾性域の応力である。)
a)治験仕様 b)甲状軟骨が厚い患者用(TS-003b)
図 4.1.7.9-4 応力分布図
考察
本品の治験仕様( )及び甲状軟骨が厚い患者用に設計した TS-003b(蝶番部幅:5.02
㎜、ブリッジ部厚さ:0.56 ㎜)に対し、剛体で模擬した甲状軟骨により負荷を与えた 3 次元弾
塑性解析を行い、各試験検体の耐変形能を比較した。その結果、荷重( )-変位( )線図から、
本試験では 3つの領域(A: ほぼ弾性変形する領域、B: 明確な塑性変形が生じ最大荷重を示す
領域、C: 変形量の増大に伴い荷重が減少する領域)が認められた。弾性範囲上限に相当する荷
重( )で耐変形能を定義した場合、TS-003bは治験仕様に比べ約 倍の耐変形能を示し、
荷重( )-変位( )線図上の最大荷重( )で耐変形能を定義した場合、TS-003b は
に比べ約 倍の耐変形能を有することが示された。
チタンブリッジ
-88-
4.1.8 効果及び作用機序
本品の効果及び作用機序に関しては、臨床試験で確認されているため、本項の記載を省略す
る。
4.1.9 使用方法
本品の使用方法は、臨床試験で確認されているため、本項の記載を省略する。