• オゾン層保護レジーム(モントリオール議定書)におけるHFC
• 気候変動レジーム(京都議定書)におけるHFC
• 2つのレジーム相互の連関と課題
• HFCの国際的規制の動き
• 結びにかえて
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オゾン層保護レジーム(1)
• 1985年 オゾン層保護条約(ウィーン条約)
– 研究・組織的観測などへの協力(3条)
– 法律、科学、技術などに関する情報交換(4条)
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オゾン層保護レジーム(2)• 1987年 オゾン層を破壊する物質を規制する議定書(
モントリオール議定書)– フロンなどオゾン層破壊物質(Ozone Depleting Substances; ODS)を規制
• 規制物質ごとに、定められた期限内に、一定の基準年の消費レベル、生産レベルと比した削減目標を設定
– 例えば、CFCについては、議定書の発効から1年7ヶ月経過後、その消費を1986年の消費レベル以下とする。また、生産国は、1986年の生産レベル以下とする。ただし、年の一人当たり消費量が0.3kgを超えない途上国(5条締約国)には10%まで生産増が可能。その後消費レベル、生産レベルともに削減し、 終的に全廃
• 規制物質や規制物質含有製品の非締約国との貿易を規制
– 改正や調整で規制物質の追加や規制スケジュールの前倒し(4回の改正、6回の調整)
– ODSではないHFCは規制されておらず
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CFCの規制スケジュール
5Source: UNEP, 2009
HCFCの規制スケジュール
6Source: UNEP, 2009
国連気候変動枠組条約(1992年)• 究極的な目的(2条)
– 「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準」で大気中濃度の安定化
• 原則(3条)– 共通に有しているが差異のある責任
• すべての締約国の義務– 排出量と吸収量の目録の作成と提出– 温暖化対策、適応策等を定める国家計画の作成と公表
• 先進国の義務– 政策と措置の実施、情報送付(附属書I国=OECD加盟
国+市場経済移行国)– 途上国への技術移転と資金供与(附属書II国=OECD加
盟国)
• これらの義務の対象からモントリオール議定書規制物質は除外
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京都議定書(1997年)• 国別排出削減目標(3条1項)
– 1990年を基準年として、2008〜2012年の5年間(第一約束期間)の排出量が約束の対象
– 附属書I国(先進国と旧社会主義国(市場経済移行国))のみが負う
– 日本:-6%、米国:-7%、EU:-8%– 6つの対象ガス:CO2、N2O、CH4、HFC、PFC、SF6– 第二約束期間からNF3追加。HFC245fa、HFC365mfcな
ど、HFC、PFCについてはIPCC第4次報告書に記載されているガスも追加(ただし条件つき)
• 京都メカニズム– 市場メカニズムを利用し、国外での削減分・吸収分を排
出枠として獲得して目標を達成できる制度– 共同実施(6条)、クリーン開発メカニズム(CDM)(12条)
、排出量取引(17条)8
主なオゾン層破壊物質と温室効果ガス
9中環審フロン類等対策小委員会第1回資料、2010、久保田・亀山、2012等参照して作成
オゾン層レジームと気候変動レジームの相互連関(1)
• この相互連関は、それぞれの規制対象物質が重複したり,相互に関連していることによる
• オゾン層対策の進展が気候変動対策に貢献
– 2010年までにモントリオール議定書のもとで削減
したオゾン層破壊物質の年間排出量はCO2換算で約10‐12Gトンと推定され、京都議定書第一約束期間の年間排出削減目標の約5‐6倍にあたる(UNEP/WMO, 2010)
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オゾン層レジームと気候変動レジームの相互連関(2)
• 2つのレジームの狭間と矛盾
– 気候変動枠組条約と京都議定書は、いくつかの義務について「モントリオール議定書によって規制されているもの[注:温室効果ガス]」を除いている
– モントリオール議定書は、生産、消費、取引を規制するが排出を規制せず。京都議定書は、排出のみを規制
– オゾン層破壊物質のバンク問題
• 回収は先進国でも容易ではない。ましてや途上国ではその大半が排出されるおそれ 11
オゾン層レジームと気候変動レジームの相互連関(3)
• レジーム間での対策の方向性が矛盾するおそれを示した問題
– CDM事業としてのHFC23破壊事業
• HCFC22の副産物として生じるHFC23削減分にCDMの排出枠が発行されることによって、HCFC22の削減停滞や増産に悪影響が生じるおそれ
• 現行のCDMのルールは、2000年から2004年までの間に3年以上操業している施設以外は対象とせず
– 温室効果ガスであるHFCへの代替の促進策
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13Source: UNEP, 2011
CFC and HCFC consumption (A), HFC consumption (B), and HFC RF (C) for 2000–2050 in developing (A5) and developed (non-A5) countries.
Velders G J M et al. PNAS 2009;106:10949-10954
©2009 by National Academy of Sciences
Global ozone-depleting substances (ODSs) and HFC emissions (A), global CO2 and HFC emissions (B), and ODS, HFC, and CO2 global RF (C) for the period 2000–2050.
Velders G J M et al. PNAS 2009;106:10949-10954
©2009 by National Academy of Sciences
代替フロン類の排出量
16出典:中環審フロン類等対策小委員会第1回資料、2010
オゾン層レジームでのHFC規制の動き
• 2009年5月:ミクロネシア、モーリシャスによるHFCを生産、消費の段階的に削減するモントリオール議定書改正案
• 2009年9月:米国、カナダ、メキシコ提案• 2012年9月にも同旨の提案
– 対象物質:HFC21物質(HFO‐1234yf、HFO‐1234zeを含む)を新たに追加
– 2005‐08年のHCFC及びHFCの生産量又は消費量(GWP換算)を組み合わせ、その年平均を基準
– HCFCの副生産物として生成されるHFC‐23の排出規制– 気候変動レジームの規定、権限はそのまま
• 途上国から強い反対
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気候変動レジームでのHFC規制の動き
• 気候変動枠組条約の下に設置された作業部会(AWG‐LCA)では、2008年頃から、島嶼国よりHFCなどオゾン層破壊物質である温室効果ガス対策強化の提案
• COP17(ダーバン会議)の決定に基づき開始された作業部会(ADP)で、2020年までの対策強化のオプションとして登場
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長期目標のレビュー
2012年 2015年2014年2013年 2020年
2020年以降の
法的枠組み交渉
2013年〜20年
の取組み
COP
18
COP
21
KP
カンクン合意の実施
遅くとも2015年に採択2012年前半の立ち上げ
IPCC第5次報告書
(2013ー15年)
カンクン合意
条約作業部会(AWG-LCA)
COP18で作業完了
終了
議定書作業部会(AWG-KP)
第1約束期間(〜2012年)
COP18で作業完了
第2約束期間(2013年〜2020年)
ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)
・ 各国による批准
各国が削減目標・行動を掲げ、国際的検証適応策、資金、技術、キャパシティビルディング
2020年新たな法的文書実施までの道のり
環境省作成の図を基に高村作成
全ての国に適用される法的文書発効・実施
第1約束期間遵守評価
文書採択
20
13
10
11
8
Different pledge cases GtCO2e/yr Gap
Under Business-as-UsualGap = 14 GtCO2e/yr
Under different cases of country pledges:Gap = 8 – 13 GtCO2e/yr
Under the most ambitious case:Gap = 8 GtCO2e/yr
Pledges not enough to meet the 2oC climate target
We cannot wait until 2020 to begin stringent emission reductions.
Now: 49 Gt/year
~44 Gt/yearTo be on pathway of staying within 2oC limit
45
55
45
50
2010
Business as usual, Gap = 14
2020YEAR
Total Global Greenhouse Gas Emissions
Peak before 2020
(Gt/year CO2 equiv)
Source:UNEP(2012)
Is their a gap ‐‐ between what we are aiming for and where we are headed in 2020?
Source:UNEP(2012) 22
結びにかえて(1)
• オゾン層レジームと気候変動レジームの相互連関
– 双方に便益をもたらすような対策の強化(コベネフィット)。また、一方の対策の強化が他方の対策の効果を損ねないことが大切
– 国際レジーム間での調整とともに、国際義務を実施する国もこの点に留意して対策を進めることが必要
• 今後温暖化の寄与度が大きいと予測されているHFC規制の強化
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結びにかえて(2)
• 代替物質や代替技術があるものについては代替(生産規制)を第一義的オプションとする– HFCの経験は、それが長期的には も対策の費用
がかからなことを示している
• バンク問題– 市中にあるものは 大限回収
– 何よりもこれからできるだけ市中に出さないことが肝要
– 途上国のバンク問題への対処の必要性。しかし、十分な生産規制が伴う必要。オゾン層レジームと気候変動レジームの連携の必要性
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