Kobe University Repository : Kernel
タイトルTit le
野菜の共計共販の実態分析(3)(A Case Study on the Cooperat iveMarket ing of Vegetables with Pooling (3))
著者Author(s) 周傳, 照男
掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学農業経済,10:70-102
刊行日Issue date 1974-09
資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文
版区分Resource Version publisher
権利Rights
DOI
JaLCDOI 10.24546/00178111
URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00178111
PDF issue: 2021-05-26
-70 -
野菜の共計共販の実態分析。)
周 博 照、 男
「前号および前々号では単位農協,県経済連が担当する共販の成立発展過程
とその現状につき検討した。本号では,その組織体が郡単位および任意組合に
よるものについて成立ならびに現状を明らかにする」
ト和歌山県那賀郡疎菜出荷組合連合会における玉ねぎの共計共販
1. 調査地域の概況
(1) 調査地の農業生産
和歌山県那賀郡は,県の北部紀の川流域に位置し,北は和泉・ t~城山脈をひ
かえ,南東部は紀伊山脈に連なる山々に狭まれた地域で,平野部は穀倉水田地
帯を形成し,山間部はみかん園として開発されている。郡(打田町,岩出町,
貴志川町,粉河町,那賀町,桃山町)の中央を流れる紀の川に沿って国道24号
線,国鉄和歌山線が走 'J,東は橋本市を経て奈良県五条市へ,西は和歌山市に
続き,京阪神への交通の使も整備されている。
那賀郡琉菜出荷組合連合会(以下那賀そさいと略称する)は,那賀町に事務
所を設け, 10年程前迄は,郡内一円を集荷対象地としていたが,現在,粉河町
那賀町,桃山町,伊都郡かつらぎ町を集荷対象地区としている。
以下,これら 4町の農業生産について概観しておこう。
まず,農家数は 4町で7,400戸,そのうち専業農家は1.997戸 (27.0%)で,
専業率は県平均の19.0%を大きく上回る高い地域となっている o (表 1-1参
照)
野菜の共計共販の実憩分析(3) -71ー
費 1 1 調査地区の専業別農家数 (45年)
! 給関瓦-1-:専業農家 !沼1種兼業 l第 2積兼業
実(粉 河 町 2,276 644 804 828
!那賀町1.1口13 I 33鉛6 I 3泊86 I 3却91
数|桃山町 1,36侃5 I 2幻71 I 46臼3 I 臼
白i かつ ら ぎ 町 2,6臼46 7九46 77九4 1.126
'-"計 7,40∞o 1,9ω97 2,42幻7 I 2,9貯76
粉 河町 100.0 28.3
那賀町 100.0 30.2
桃 山町 100.0 19.9
かつ ら ぎ 町 100.0 I 28.2
計 l 100.0 27.0
住 1970年センサスより
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34.7
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注
45年の経営耕地面積は 4町全体で5,987ha,そのうち水田1,684ha(28%)
果樹園4,187ha(70%) ,畑110ha(2 %)と果樹画面積(かんきつ類)がきわ
めて大きい。農産物販売金額 1位の部門別農家数は,表 1-2に見るごとく,
果樹部門が圧倒的に多く, 73%にも達している。 野菜部門が 1位の農家は2.4
%にすぎず,主ねぎ産地でありながらこのように野菜のウエイトが低いのは,
野菜が主に副合経営の一部門として生産され,その中で玉ねぎの占める割合が
多いということである。部門別農業粗生産額においても,果実が64%も占め,
(表 1-3参照)農産物別に 5位までみても(表 1-4参照)いずれの町も 1
位はみかんで占められ,玉ねぎは,わずか粉河町,那賀町で 4位 5位に見ら
れるだけである O このようにかんきつのウエイトが極めてI高い地域であるが,
水田のある平野部では,かんきつに較べるとわずかであるが,水田を利用した
済経業農学大戸者有-72-
調査地区の部門別農業組生産額と構成比 (45年)
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13,069
45年「農業所得統計Jより
182
1,667
表 1--3
支類
雑 税 豆類
いも類
野菜
果実
花き
工芸作 物
種苗・直木
耕種計
養蚕
高座
合計
米
注
調査地の農産物別農業粗生産額の 5位までの順位 (45年)
I 1位 121ft 3位 I--4位 15位
町 j農産物名 |みかん !雑かん [米 !たまねぎフ。ロイラ{1粗生産額(一川町 1.414! 372 1 299 I 181 I 98
日戸仇 !示、ん :~-I 雑かん-!米 |プロイラベ一一1粗生産額(了ITJfI]) 901 I 141 I 135 I 109 I 63
町{農産物名 !みかん !米 ;もも |かんきつ|雑かん1粗生産額(百巧fLJlI 370 I 219 162 I苗木 125I
かつらぎ町!農産物語 l みかん [かき i米 l鶏卵 i雑かん1粗生産額伺万円 1,4151 404 i 353 262 .
表 1-4
粉千
HJ、、イ
賀
hu
現E
桃
昭和45{1-~ I農業所日統計」より注
きゃベきゅうり,だいこん,すいか,玉ねぎを中心に,野菜作りも行なわれ,
白菜等が主な品目となっている Oペフ,
かんきつ類産地の中に形成された玉ねぎの当調査地区は,以上のことから,
主産地という点に特徴を見るのである。
玉ねぎの生産・出荷の特色(2)
昭和初期に導入されて以来広く普
栽培技術この間,この地域の特産品としての地位を確立してきている O
当地域における玉ねぎ栽培の歴史は古く,
及し,
野菜の共計共販の実態分析(3) 一73-
の聞においても諸種の改良がなされ,その水準も高まっている凸
当地域の玉ねぎ生産は水田の裏作利用であり,水稲 (6月下旬---10月中旬)
←→玉ねぎ 00月中旬---6月中旬)という輪作体系がとられてし品。
きて,玉ねぎ生産の現状をみると表 1-5のようになっており, 45年で総収
穫面積279ha,販売農家数1.428戸であった。玉ねぎの10ア{ノレ当り生産量は 3
トン程度であるから,当地域では約8.400トン程度の生産量となる。(郡内,打
旧,岩出町の作付面積はそれぞれ453ha,263加計716haで玉ねぎ産地の主体を
なしている)
玉ねぎは,その商品的性格のーっとして他の野菜に較べ貯蔵性に優れており
また貯蔵技術の進歩も著るしい。当地域での玉ねぎ出荷は,① 4--6月期の青
切即売玉ねぎ,① 7---10月の短期貯蔵,いわゆるつり玉と呼ばれ,玉ねぎ小康
につるして貯蔵するもの,①11--3月期の長期貯蔵二二冷蔵玉ねぎ,の 3期間に
大別される D 最近では, 10月に発芽抑制剤のMH処理を行うものを分けて考え
る場合もある。
当地域の栽培品種は平生種として貝塚早生,今井早生, OX種が,中生種と
して大阪中高,泉州、i中高, OY種,晩生種として斉藤2号, 0 L種が栽培され
ている O これらの品種は,それぞれ出荷時期を考題して播種されている。(例
えば,冷蔵用には晩生の中玉が良い等)
玉ねぎの出荷主体は,品目的特性である貯蔵性の高-いことから,古くから産
地商人の介在を許し, 現在でも, 那賀そさい, 経済連, 玉ねぎ商業協同組合
(掬協),個人商人という 41レ{トによって出荷されている O したがっていき
おい生産者にとっては少しでも値の良いノレ{トを利用するという傾向を強める
表 1---5
粉河町
那錦町
桃山町
かつらぎ町
計
調査地区の玉ねぎ収穫面積,収穫農家数および販売農家数 (45年)
|収穫面積 (加)IA収穫農家魂 IB販売農家溝 B/A
177 1,000 841 84.1
70 466 317 68.0
15 166 110 66.3
17 824 160 19.4
279 2,456 1,428 58.1
注 1970年センサスより
-74 - 神戸大学農業経済
こととなった。このように共販形成には阻害要因として商人の撹乱的行動が与
える影響が大きい点を注意しておかなければなちない。
2. 邦賀そさいの成立経過
1) 共販組織の成立
戦前から玉ねぎ生産地の歴史を持つ当地域では,同時にみかんの大産地でも
あった。戦後, 22年に農業協同組合法の成立があり,郡内にも23農協の出現を
みたが,いずれも小規模で,みかんの取扱を有利に行なうために那賀町の松浦
氏をリーダーとして23年に那賀郡果樹農業協同組合連合会が設立された。この
連合会の結成によりみかんの取扱は有利に行なわれるようになった。みかん生
産者であると同時に他の農産物も生産している農家は,野菜(かぼちゃ,玉ね
ぎ)についても同様の取扱を希望した。
那賀郡果樹農協連としても,取扱品のみかん,村jは10--3月だけであり組合
組織の有効利用の観点から, 4 --9月を出荷対象期とする玉ねぎの取扱に積極
的に取り組むことになった。当時みかん販売の対象市場は主に中小市場(地方
市場)であり,そのため青果物,果実の取扱の区別がなく両者とも同じ人が扱
うことから,取引上の交渉も深かまり,お互に親しみを持つようになるととも
に市場への無理も聞いてもらえみかんと玉ねぎの抱き合せ販売によって有利な
取引を行なえることとなった。このようにして,玉ねぎの取扱がなされるよう
になり順調な進展をみたのだが, 27年に和歌山県果実農業協同組合連合会が成
立し,那賀郡果樹農協連はその那賀支部となった。その際,果実連でありなが
ら玉ねぎを取扱っていることが問題化し,経済連と話し合いの上野菜の取扱を
経済連に譲ることとした。しかし,当時の経済連は販売の実績がなく,特に仕
切の遅い点,出荷の際に集荷労働力の援助がない点が生産者に受入れられなか
った。そこで生産者の強い要望もあって,形式上果実農協連と独立した任意組
合である那賀郡競葉出荷組合連合会が設立されることになり,その業務は従来
通り果実連那賀支部の職員が行なったD このような状態は37年噴まで続いてい
fこ。
2) 共同計算方式導入の失敗
野菜の共計共販の実態分析(3) nt
37年に青果物生産安定資金協会への加入が,経済連,商協とともに行なわれ
た。この時,共同計算方式の検討がなされたが,玉ねぎの出荷組織が多様であ
ることから,農家は出荷先を選択することで有利な販売が実現していると信じ
ており,品種統ーなどの強い規制を伴う制度に協力を示さず,地域一本の共同
計算は成立しなかった。しかし,これを機会に各農協で除々に共同計算体制jの
準備が進み,農協ごとの共同計算が行なわれるようになった。
この頃にはようやく経済連の玉ねぎ販売も軌道に乗り出し,玉ねぎ作付面積
の大きい岩出,打田両町の農協は,経済連,商協,個人商人のノレ{トを専ら利
用するようになり,那賀そさいから離れていった。
また, 39年, 40年には粉河,那賀,桃山,かつらぎの各町において相次いで
農協合併が進み,町一本の農協が成立していった。したがって,那賀そさいは
組合員が 4単協に整理されると同時にその機能にも一大転機を迎えることにな
ったのであった。
3. 那賀そさいの共販成立の諸特徴
郡程度の共計共販主体として,那賀そきいが調査対象に選定されたのである
が,現地調査の結果,郡単位の共計は行なわれていないことが判明したD しか
し,共販成立のー形態として様々の特色を持っているため,これらの諸点を明
らかにしておくことも意味あるものと考えられるo 以下,那賀そさい成立の諸
要閃と特色に簡単にふれておくことにする。
まず,那賀そさいの立地条件であるが,農業所得に占める柑きつ部門の割合
が栢めて高いみかん産地の中にあるまねぎ産地であるということ O すなわち,
主ねぎの産地化は進んでいるが,みかん部門があるため麗家の玉ねぎ生産に対
するウエイトの置き方が相対的に低く,古い産地でもあることから産地商人の
活躍も活発で,生産者をして共販とは逆に,玉ねぎ生産販売の投機性を楽しむ
という側面を醸成している。
第 2に,那賀そきいの大きな特色であるみかんとの抱き合せ販売による地方
市場向出荷が容易であること。もっとも,そのため京阪神大消費地市場を近く
にしながら,競争産地である兵庫県淡路に一歩ゆずり,東日本市場を出荷先と
- 76-- 神戸大学農業経済
しているO
第 3に, 当該品目である玉ねぎは消費需要も強く, 貯蔵能性も相対的に高
い。しかも当地域は栽培技術も高度化している。すなわち,玉ねぎはいわゆる
共計共販に適した品目である。
このような条件に加えて,那賀そさいの成立時には,各農協の規模は零細で
販売を担当する何らかの組織形成が望まれていた。また,その組織として玉ね
ぎの出荷時期に閑暇期を迎える果樹連の職員を有効に利用できる条件が整って
いた。このような諸条件が有機的に結びつき,那賀そさいが形成され,存続し
てきたのである。
しかし,みかん生産の増大とともに,各農協は合併し,その規模も大きく成
長した現在,玉ねぎの位置は,相対的に低下し,その投機的性格は農家の生産
販売の意志統一にマイナスの作用を及ぼしてきた。このことが広域共計共販の
成立を阻害し,また,合併による農協の大型化の時点で,転換期を迎えるべき
であった那賀そさいを今日まで存続せしめる条件のーっとなっている。
4. 那賀そさいにおける共販の現状
1)組織と機能
那賀そきいの組織は図 1-1のようになっており,いわゆる任意組合組織で
ある。その組合員は粉河,那賀,桃山,かつらぎの 4農協で構成されている。
連合会長は 4農協の組合長より選出されることになっていて,事務所は先述し
た如く,和歌山県果実連の那賀支部に設置されている O 現在,那賀そさいの事
務処理業務は,果実連那賀支部8名の職員によって行なわれている。
那賀そさいの事業目標は会則によると次のようになっている。
①会員の生産する疏葉の生産指導および情報連絡に関する事業。
②琉菜の運搬貯蔵および輸出ならびに国内販売に関する事業。
③疏葉の販売に必要なる出荷包装,資材の供給斡施。
③競菜の生産および販売事業に必要なる共同施設の設置。
①琉菜の災害の共済に関する施設の設置。
①前各号の事業に直接付帯する事業。
野菜の共計共販の実態分析(3) 一77-
関 1-1 那賀そさいの組織
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これらの事業目標は,農協合併以前の状況を前提としたものであって,合併
後の農協はそれぞれ着実に発展してきており,今では営農指導も行ない得る程
体制は整備されてきている。したがってこの事業目標は各農協単独ででも行な
い得るものとなったのである口
注)1 調査地区 4農協では,ほぽ70%を越える系統集荷が実現されており,残り30%は
i萄協および個人商人によって集出荷されている。各農協が集荷した玉ねぎは,各
農協の判断で那賀そさい, または県経済連へと利用配分されている。例えば,
46年実績によると那賀町農協は 100%那賀そざい利用であり,粉河町農協では
90%であったO
現在もなお那賀そさいが行っている事業は①の情報連絡に関する事業と,①
の国内販売に関する事業のみとなっている。
その主たる取扱い品目は玉ねぎであるが,その他に, うすいえんどう,とま
と,きゅうり,馬鈴薯を取扱っているものの,量的に少く,みかん,玉ねぎ出
荷の際の積合せで,単に,輸送の便益をはかるにとどまっている。
したがって,那賀そさいにおける大きな機能は,その成立経緯からくる東日
本の中小市場との深い結びつきに依拠する市場情報の収集である。各地方市場
-78 - 神戸大学農業経済
の価格ならびに需要動向が容易に集められるのである凸さて,その共販の具体
的な仕組について次に見ることにしよう。
2) 共販の仕組
C i ) 出荷計画の作成
那賀そさいが作る出荷計画は,毎年4月下旬までに各取引市場の月別年間出
荷希望量を集め,農協からは,農協が独自に作った那賀そさい利用の月別年間
出荷量を提出してもらう。これらの資料を基に,果実連那賀支部8名の職員が
前年,前々年の成果を考慮しつつ月別出荷計岡を作成する。職員は各人ごとに
出荷市場の地域担当が決められており,市場側の情報収集を容易にするように
配慮されているo
この出荷計画案を市場代表,各農協販売主任,那賀そさい職員で構成される
取引会議(出荷計画会議)にはかつて了承をとりつける。
基本的な出荷計画はこのようにして決定されるのであるが, 日々の出荷計画i
は,取引市場との聞に 3日に貨車 1台づっ,又はトラック 1台というような
旧来の慣習と経験による方法が採用されている D 集荷面では,価格が低い時に
は荷物がだぶっき,逆に高い場合には荷物が集まらないといった場合がよく生
じることがあるが,その場合には,各市場につきあいの深さを利用して頼み込
み荷物を引受けてもらうような手段を取っている。したがって,この出荷計画
はあくまで計闘であって,集情面で農協,生産者の意志統ーがなされていない
ため,価格の上下による計画変動は大幅なものとなってくる。また,それに対
応する労働力,通信費もかさむことになっている O
Cii) 集出荷
集出荷の概要は図 1-2に示す通りである O 那賀そさいは,毎日取引市場か
ら入る市況を農協に連絡する O 農協(販売主任〉は生産者から支部機構を通して
出荷量の報告を受け,那賀そさい,経済連向の分荷量を決定し,生産者に集荷
場へ運ぶように指示するか,生産者各戸又は|州場に配車して集めて回る。(こ
の地域はみかんの大産地でみかんの集荷体制は整備されている。したがって玉
ねぎの集荷場には,このみかんの集果場が利用される。)集荷場,または 2つ
-79 -野菜の共計共販の実態分析(3)
那手)に集められた玉ねぎは,前者は主としてトラック,後者はの駅(粉河
貨車で、各市場へ出荷される O
画計送輸¥BJ〆
--EA .,.A ---a r't
、出荷計画が決まると天王寺鉄道局に配車の予約をす輸送の主体は貨車で,
しかし,最近は,集荷量の変動に対応しやすいことと,集荷場に集めた場る。
合ブオ{クリフトの利用が可能となり積込み労働力を省力化できることからト
那賀そさいの玉ねぎ集出荷の仕組
f数料述給
信i患銀ir,信用金庫
)~ ~ t
場
図 I四 2
i開i聾
hm況・4I人段以・金額の連絡
荷出5--6月の青切即売ものは,また,ラック使の利用が増大してきている。
トラックの手配は地区内の業者を急ぐこともあってトラック便の利用が高い。
(例えば,北海道までの 1箱当り運賃は130円程である。)に依存している。
包装荷造選別評価,(iv)
出荷を急ぐ青切即売ものは全て個選である口選別は,イ回選と共選があり,
(早生物はすぐに芽が伸び市場評価が落ち易いことと同時に 5--6月の田植時
7月以降のつり王,冷蔵物については
みかん集荷場に:=Eねぎ用選
期と重なることから出荷が;急がれる。)
農協ごとにやや事情が異なり,那賀町農協の場合,
- 80ー 神戸大学農業経済
果機を導入し,共選を行なっている。冷蔵ものはいずれも 100%共選によるも
のである O 粉河町農協では,機械選果は行なわれていないが農協が選果,包装
荷造作業班を編成して各つり小屋まで派遣して行なう方法が多く採用されてい
るc
この作業班は毎年定まった人々に依頼しているため選果能力は高いのである
が,最近賃金の上昇でコスト高となってきている D 最盛時には 1J~E 5人編成で
10班分を必要としているo (那賀町でも作業班による選果,包装荷造は行なわ
れている。)那賀そさいが取扱うつり玉以降の荷物は,共選30%,イ間選70%の
割合となっている。
評価基準は県の規格標準を採用しており,取扱総量の80%は秀品となってい
るC
包装荷造は,共選の場合は共同で,個選の場合は個人で20kgネット詰めを行
なっている。包装荷造り資材は,那賀そきいが農協を通して経済連にの⑪の
マ{クを印刷したラベルとネットを注文し,農協に配布しておく。(ネット 1
個18円)冷蔵ものの場合は, 20匂入りダンポ{ノレ箱による出荷で, これも同様
のyレートで仕入れる o (1ケ{ス 150円, 45年までは木箱を利用していたが木
箱の入手が困難となり価格的にも変わりがないので46年より全部ダンボール箱
利用にし7こo )
このように農協指導のもとに選別,荷造りされた待物は,駅頭または集荷場
に集められそこで那賀そきいの職員による荷物の確認と個選もの中心に抜取検
査が行なわれる。検査に通らない場合は, もう一度荷造をやりなおす。
(v) 品種統一,品質向上の努力
那賀そさいは,各市場の品種,出荷時期に対する要望を農協に伝達するだけ
で,品種統一,品質向上のための努力は,農協の指導にまかされている現状で
ある D したがって 4農協ごとにそれぞれ指導上に差が生じており統一的な生
産は実現していない。
3) 代金精算の方法
各市場からは,那賀そきいの指定する金融機関に送金される。その内から那
野菜の共計共販の実態分析(3) - 81-
賀そさいの手数量 1%を差引き,各農協へ振込まれる。
各農協はそれぞれ独自の方法で共同計算を行ない必要経費(包装荷造資材費
作業班経費,荷集め経費,運賃,農協手数料)を差ヲ|いて個人に支払われる。
したがって,那賀そさいによる共同計算は突施されていない。そこで,那賀町
と粉河町について農協の共計方式の実態をみておこう。
那賀町農協では,町一本の規格思Ij,出荷期別の共同計算が行なわれ,冷蔵王
ねぎでは,全期一本の共同計算であるD 出荷期の設定は,あらかじめ詳しく設
定しておくと,生産者の投機的行動によって集荷がスム{スに進まない。その
ため 3日間づつの基準出荷期を一一応設定しておき,実情にあわせて決定期を事
後的に定めて精算を行なっている O 個人への支払は,〆切日より約半月後とな
っている。ここで、は,反別1.5万円の内渡し制度も実施されている O 那賀町農
協の決定期別は表 1-6のようになっているO 共計の期間は出荷始めは細分さ
れているが(価格の上下が大きく,一般に高価なため)出荷期末になると月 2
度程に減少する O
表 1-6 那賀町農協の共計期間
(46年)
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
1
2
3
4
5
6
7
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9
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沼
第
第
第
第
第
第
第
第
第
期 間
5月 8日
9 .-10日
11 .-15日
16 .--20日
21 ,......, 25日
26 .-31日
6月 1.--14日
15 --20日
7月 1.-20日
21 --31日
8月 1-- 6日
7 --18日
19 --30日
9月 1--17日
粉河町農協は 5支所あり,支所ごとの規
格別,出荷期別の共同計算が行なわれてい
る。冷蔵:玉ねぎは,全期一本の共計方式で
ある O
出荷期の設定は,那賀町と同じ理由で事
後的に設定される。表 1-7は, 46年のK
支所における期別L級の出荷量と価格を示
してし、る。
4) 販売活動の実態
那賀そきいの取引市場は,前述したごと
くみかんの取引市場でもあり,即売玉ねぎ
の場合46市場に遣している。その分布は表
1-8のごとく東日本の地方市場に重点がおかれている。
冷蔵玉ねぎでは,京果,大阪中央青果,尼崎中央青果,名古屋中央青果,束
- 82- 神戸大学農業経済
表 1-7 粉河農協K支所の共計期間と出
荷数量および平均価格 (46年〉
IHn ctnl数量|価格期|期間
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
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期
期
期
期
期
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1
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第
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第
第
第
第
第
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第
第
第
第
第
第
5月 3日
7--9日
10--12日
13--16日
17--20日
21--23日
24--26日
27--30日
31--6月 1日
6月 2--4日
5--7日
8--10日
11--13日
14--19日
20--22日
22
1,574
3,200
1,800
4,100
8,000
2,150
3,000
4,000
2,000
2,500
3,2∞ 1,500
2,000
1,500
2,000
998
870
1,500
16--21日 1,430:
22--25日 1,000!
27--31日 I 1,300 i
8月 2--6日 I 1,560 I
7 --10日 1660[
11--21日 iL3001
注粉河町農協K支所間取
23--25日
26--7月5日
; 7月 6--11日
12--15日|
1,775
1,100
700
600
550
504
430
392
300
290
278
298
311
314
345
351
390
380
385
370
380
400
430
450
540
表 1-8 那賀そさい即売玉ね
ぎの地域別取引市場数
地 万 市場数
5
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3
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州
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北
東
関
京
信
北
近
九
京中央青果,銚子青果,伊勢崎
総合食品,下館ブノレ{ツの 8市
場で,中央卸売市場のウエイト
が高くなっているo (冷蔵玉ね
ぎ用の施設は,那賀町農協が450
トン,粉河町農協は1,200トンの
冷蔵施設を備え,これもみかん
と共同利用がはかられている)
那賀そさいの地域別,月別販売実績は表 1-9の通りである O 出荷先は東北
信越地方がいずれも30%を越え,ついで関東20%となっている。
月別出荷量は 6月に50%と集中している。淡路産のジェアが高い大阪中央
卸売市場本場の月別平均単価と対比してみると,那賀そさいの方は上下変動が
少くなっているが 5---11月の平均価格では10円程大阪中央より下回ることにな
っている O
野菜の共計共販の実態分析(3) - 83-
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5. 那賀そさいの問題点
那賀そさいの存立条件は,前述したような共販成立の諸条件の変化にともな
って変化し,その機能は昔時に較べると縮少されてきている。
市場対応の側面では,特に中央の評価として品質は最高であるにかかわらず
ぱらつき混入が見られ,規格選別についてもばらつきが多いと言われている。
しかし,那賀そさい自身には,この点を解消してゆく手段を持ち得ない状況に
置かれている口すなわち,みかん取引先の地方市場を主取引相手とするという
メリットを持ちながら,組織商で農協を組合員とするものの任意組合の弱点と
も云うべき制度的裏づけがなく,組合員相互の考え方の異いから統一を欠くこ
とになっている。
したがって那賀そさいにおける問題点とは,なによりも組織をめぐる問題に
つきるのであって,構成メンバ{である各農協が如何なる態度で那賀そさいを
- 84ー 神戸大学農業経済
位置づけるかということにつきるのである O
和歌山県経済連の玉ねぎ共販は,打田,岩出地域を中心に進められつつある
が,那賀そさいを構成する農協は,当然自己の利益を中心に行動している。す
なわち,農協にとってみれば,経済連,那賀そさいの両者があることによって
ある程度の危険分散が可能となり,またお互の販売成果を競争させることによ
って有利な結果を獲得しようとしているのである。このような状態から,各長
協にとっては那賀そさいの問題点とは販売市場の維持獲得が全てとなり,那賀
そさい経営の問題は,その機能(集出荷作業,施設の維持拡大運営)を代替し
ている農協の問題ともなるのである口
このような見地からすれば,那賀そさいにおける問題点は逆にほとんと存在
しないと去えるのかも知れない。しかし,少くとも,共計共販を前提とする出
荷の調整機能を保有する出荷組織育成の観点からかけ離れ,それを達成しよう
とする経済連のマイナス要因となっているのは事実である。
I 奈良県高取町野菜出荷組合連合会におけるきゅうりの共計共販
1 . 調査地区の概況
1) 調査地区の概況
高取町は大和平野の東南端にあり,標高 80m"""""150mのゆるやかな傾斜地に
耕地が存在する中山間農業地域である。しかし,交通の便には恵まれており,
京阪神へは 1時間30分程度で,近年ますます都市近郊的性格が強くなってきて
いる。
当町の総世帯数は45年現在, 2.164戸であり,その内農家は899戸, 4l.1%,
農業就業人口1.064人である D
町全体の耕地面積は473ha(46年)そのうち水田は385加 (8l.4%),畑71!za
(15.0%)樹園地17ha(3.6%) となっている。 また,ここ 5年の聞に総耕地
面積は約1001.削減少している。 専兼別農家の動向を見ると(表][-1)専業率
は極めて低く 4.6%で,奈良県の12.5%,近畿の9.9%を大幅に下回り,また専
業農家の減少率も46.7% (41"""""46年)と著るしい。当地域は古くから大手I~売薬
の本拠地で小規模な製薬業が営なまれていたこともあって兼業形態が多く見ち
野菜の共計共販の実態分析(3) - 85-
表 ]{-1 高取町専兼別農家数の推移
全農家数 !専業農家数 1 第 1閤託業|第三種兼業i専業農家率
)~ Iμ)~~il %
昭 和 41年 940 75 192 673 7.8
4 2年 944 77 195 672 8.2
4 3年 944 77 195 672 8.2
4 4年 899 46 152 701 5.1
4 5年 899 46 152 701 5.1
4 6年 878 40 144 694 4.6
41-46年増減率 ム 6.6% ム46.7% ム25.0% 3.1%
注奈良県農林水産統計年報より作成
れ,その農業経営耕地面積も 1戸当り平均54ア{ノレ,O.5ha未満農家層が67%
を市める小規模経営農家が多い。
2) 野菜生産の位置づけ
当町の農業生産額は,米が第 1位を占め次いで養鶏,第3位に野菜となって
いる口ここ 5年の作目別作付面積の構成と推移をみると表 H-2のようになり
果実(村J,もも,みかん)の伸びが目立つのみであり,野菜作付面積はやや減
少傾向にある。主要な野菜品目は,きゅうり,なす,だいこん,キャベツ, ト
マト, 菜豆等があり, その他少量づつであるが多種類の作付が行なわれてい
衷 1-2 高取町における作自別作付面積と構成比の推移
| 実数件。)______1 構成比(%) 145年/41年l証言ifT44主主了初年下421:F-T4i年|45年[44$-T43年142年141年| 指 数
米 3刊以 3911 判 410M6051 5881 60.91 53.51 75.9
友 9i 10 24i 20! 451 1・41 1・71 3・61 3.11 5.91 20・0
雑殺 Il - - l-ilO 2-11- 0.1loo-o
豆類 4' 9 101
101
291 0.7] 1・51 1. 51 1.51
1 3.81 13.8
いも類 9 16 231 25: 361 1.4: 2.7i 3.51 3.81 4.71 25.0
野 菜叫吋叫叫 2町拍 5|224叫却 3 却 8 肝 3
県実 696562i601411 ・8i10 ・ 9~ 9・3) 9・21 5・21 160.0
工 実作物 1 1, 2 7! --1 0.2: 0.2' 0.3' 1.1
花き 2: --1 0.31
種苗・白木 11, ーへ _', 干 -1 0.2 --
計!586: 598! 598: 650; 7661100.0100.0; 1∞oi100 oi100 O
注奈良県農林水産統計年報より作成
済経業農学大円神- 86-
る。農家の野菜作付規模は兼業農家の多いこともありいずれも零細で,野菜作
専業農家は見られない。
きゅうり生産の概況3)
きゅうりきゅうりの作付面積は表n-3の如く最大時で;24ha程度で、あるが,
の価格変動と競合作目であるとトマトの価格変動の関係によって年次的に大き
な変動をみせている O
一方販売量共計共販量は45年まで増加してきたが46年に減少に転じている。
きゅうり作付農家数と共計共販参加農家は増減の幅が大きく変化も著るしい。
いずれもあまり大きな変化が見られ数の推移は表n-4のようになっており,
ない。
5月中旬"'"1 0月上旬までを収穫期とする
共計共販組合員は収穫期が 6月初旬""7月下旬になるような
当地域におけるきゅうりの作型は,
早播型であるが,
高取きゅうりの作付面積,生産量,販売量ならびに共計共
販量の推移
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B / A x 1 0 0 91.1! 90.9
C/B x 1 00:% 34.2 75.7
98.5
40.0
商取町役場泣ひ~r~石取nlT野菜出荷組合連舟会間取
i布地dliJのきゅうり作付農家数と共計共版参加農家数の推移
きゅうり作付 |きゅうり共計共販|農家数 (A) 宋u用農家数 (B) I
313 )-1 I 80 )i!
315 81
320 95
291 94
300 94
293 75
注
表JI-4
B/ AX100
25.6
25.7
29.7
32.3
31.3
25.6
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商取町野菜出荷組合連合会間取注
野菜の共計共販の実態分析(3)
栽培を行なっているo その栽培型は図 ][-1に見る通りである口
2.
1)
図1--1 共計共販組合員のきゅうり栽塙型
J l門¥./2 JJ¥./3H¥........41人.....5!Iヘ.......6IJ",-/7 IJ、.....81J、
o 播
種
d. ~Zラ手労W$A定収
穣期有奇
きゅうり共計共販成立の経過
共販組織の形成
- 87-
高取町は, 昭和29年10月に!日高取町,船倉村,越智岡村の 3町村24部落が合
併し成立した。それ以前, この地域では, 昭和25年頃まで米生産を中体とする
経営であった。 24年に野菜の統制が撒擁され, インフレ経済のもとにあって
換金作物の導入が真剣に考えられるようになってきた。特に野菜生産は積極的
に取り組まれ, しょう iJ~, ふき,すいか, 大根等の栽培が導入された。 (柿も
この頃多く生.産された。〉例えば,船倉村の松山地区では堺の漬物屋の奨めで
生二美の栽培が行なわれ,最盛期には 1戸当り 5--15ア{ノレの規模にも達し,〉由
」網"
の地区の種子代だけで 300万円にも遥したことがあった。その他の地区でも向
じように野菜生産が行なわれた。 このことは生産物の有利な販売に対する農家
の要望を次第に高めることとなった。当時 3町村にあった農協は,いずれも米
以外の販売には消極的で農家の要望には答えてくれない状況であり, このため
農家は, 2--3の部落ごとに出荷組合を形成するようになり,旧高取町,船倉
村,越智岡村それぞれに 4つの出荷組合が成立した。 しかし,販売面では荷口
の小さいこと等組織規模の小さいことから農家の満足し、く販売は実現きれなか
った。 このような状態で町村合併を迎えたのであったが,合併後も依然として
農協のあり方に変化はなく, また農協合併の機運も生じなかった。
そこで30年に 3地区の生産者は高取町野菜出荷組合連合会を結成した。当時
きゅうり栽培に関して高取地区は面積も多くまた技術的にも進んでおり,
ダ{的存在であった。 この頃のきゅうり出荷は,形式的に蝿協販売の型をとり
88 -一 神戸大学農業経済
高取地区は⑤,船倉は⑪,越智岡は⑧の各小EIJをつけて出荷されていたo
しかし 3年程経過した34年頃には船倉,越智岡地区の栽培技術も向上し,量
的にもきゅうり生産が軌道に乗りだし,野菜連合会運営に当って対等な立場を
主張するようになり連合会内部のまとまりは次第に失なわれていった。このた
め,出荷先市場の選択は各出荷組合ごとの判断で行なわれ,連合会の機能は事
実上停止することとなった。ただ,連合会が解散に致らなかった理自の一つは
町より連合会に対して年間 8千円の補助金が/L'Iており,この補助金が表面立っ
た解散防止の効果を持ったようである O 具体的な内粉の契機は荷箱の問題にあ
ったc 当時の荷箱は木製でその入手斡肢は野菜組合連合会長 G高取出荷組合)
が行なっていた。そのためどうしても地元優先となり,他 2地区の荷箱需要は
後まわしにされ反撹を生ぜしめることになった。このような連合会の空白化は
37年まで継続した。船倉,越智岡地区では木箱不足から37年頃にはダンボ{ノレ
箱の使用を始めており, この両地区は,ダンボーノレ箱の利用と同時に出荷先に
ついても相談し協調してゆくことになった。
2) 共同計算方式の採用
37年頃の船倉,越智岡の出荷先は主として大阪中央卸売市場の中央青果であ
った。中央青果のきゅうり担当者は,地区の状態を見て高取きゅうり生産にはt注主}
市場の入荷時期等を考[躍霊して新品種である TY種/'ρハ〆ハへへ"-ヘへd内、¥、、¥、、、
換を強力に指導した O この頃より船倉,越智岡各地区ごとに規格等級別の毎日
共同計算方式が取られるようになってきた。これは品種の統一と栽培基準の祥
及によるもので,生産者に対する両出荷組合のリ{ダーの積械的な説得活動も
大きな役割を果した。
一方,高取地区では既に品種的にも遅れを取っていたこともあって船倉,越
智岡両地区との協調に乗り気になっていた。そこで名前だけになっていた出荷
連合会に実態を備えさせようとする機運が生れ, 39年野菜出荷組合連合会の再
編成は急激に進展した。船倉,越智岡は高取地区に種の斡旋を行ない, 販売
においても 3地区統一のマークベ冶用いることになった。 また,出荷先市¥J
場も大阪中央卸売市場中央青果一本に絞ることとし,出荷市場選択の手数を省
くようにした。しかし共同計算方式は各地区ごとのブ。{ノレ制であった。
野菜の共計共販の実態分析(3) - 89-
性:)高取地区のきゅうり栽培は, 30年-37年まで「八重なり」で, 38年-41年まで rT
Y種J, 42年-44年「日本J, 45年, 46年「促成日本」種であった。 38年以降は大
阪中央卸売市場中央青果の指導助言に基づいて品閣の選訳がなされている。なお,
47年以降には山東系の品種が考慮されている。
3) 共計共販の成立
昭和41年 8月の野菜指定産地制度によって高取町は夏秋きゅうりの指定産地
となった。これを契機に 3地広一本の共同計算方式が検討され,組合員に対す
る栽培技術の普及成果ともあいまって42年より実施されることになった。ここ
でも連合会長(西井氏)を始めとするリ{ダ{達の積極的な生産者への説得努
力は評価しておかなければならない。 42年には野菜指定産地生産出荷近代化事
業により動力噴霧機3台が導入され共同防除体制がとられるようになり, 43年
には同事業により共同育苗施設 4棟 1.105ntが設置され,忌地対策として接木
育苗に大きな効果を上げ,また兼業農家からは育苗の省力化がで、きることで好
評であり,共計共販の上からも品質統一に大きな役割を果すこととなった。
3. 高取町きゅうり共計共販成立の賭要因
これまで高取町-におけるきゅうり共計共販の成立過程を見てきたわけで、ある
が,ここではその成立にはどのような要因がどのように作用したのか若干の検
言、Iをしてみよう。
1) 共販成立の諸要因
生産者の販売意志を統一し,荷口の大型化による市場取引力の強化と,集出
荷の合理化を目的とする共販には,まず生産者の自発的な共販に対する理解な
らびに参加意志が問題となる。高取町の場合,農協販売部門の立遅れがあり,
そのためその機能を生産者が主体的に取組んで組織したことと,その際熱心な
リーダ{が存在したことが共販成立のー要因となっているo しかし,またその
組織は以下の諸要因にも規定されている。
高取町の農業生産は,特定部門に特化することなく,従来の米プラス他部門
という複合経営が中心で,しかも都市に近く多くの兼業農家によって支えられ
ているo そこでの野葉生産は多種類少量で共販を有利に行ない得る要素に欠け
- 90- 神戸大学農業経済
ていた。また,都市に近いことは,生産者の地方市場出荷を容易とし,個人出
荷の気軽さを味あわせることになり共販形成にマイナスの要素となっていた。
このような状況における共販組織の結成であるところから,比較的多く作られ
ていたきゅうりの取扱いが中心となり小規模な組織となったのであるO しかも
この地区で生産されていたきゅうりは,露路栽培方式であったため,慣行的な
生産で各生産者の自立性が強く,共同化という面についてはなおさら困難な品
目であった。産地として特定品目の生産に特化されていない多くの地域におけ
る共販形成の困難性と問題点がここに集約されているようである。
2) 共販を支えている諸要因
前述のような困難な状況の中でようやく成立をみた共販は,成立に尽力した
リ{ダ{の努力に大きく依存していたのであるが,その機能が農協の販売部門
を代替するところから生産者と市場を結ぶノレ{トとして一般に認められていっ
たという実績も要因のーっとして数えられよう。また,大阪中央卸売市場の荷
受会社による産地指導は,生産者に市場の動向を把握した生産を行なわなけれ
ばならないことを認識させた。しかもその荷受会社は零細な出荷量ならひ:"こ市
場対応、の未熟さをカパ{する安定的固定的取引先となってくれた。この荷受会
社との接触が共販進展に及ぼした効果は大きい。
次に,きゅうりの指定産地に組入れられたことであるO この制度によって生
産出荷に関する行政援助を受けることが可能となり,共同防除の実施や共同育
苗施設による栽培の標準化が進められることとなった。このように指定産地制
度による施設化への援助は,任意組合の弱点である施設化による共同意識の向
上と省力化の推進という点に効果が現われている O
3) 共同計算方式採用の動機
当地区の生産者は生産物の販売先および輸送手段については関心を持ってい
たのだが,共同計算についてはほとんど無関心であったと云ってよい。市場価
格の変動は仕方のないものとして受け止め,少しでも高価格で販売できると,
自己の生産技術は優れており,販売にも明るいといった自信を深くする側面が
強かった。このように,共販組織は成立したものの各生産者聞には共同計算に
よって市場価格変動を均等化しようとする発想は出てこなかった。しかし,他
野菜の共計共販の実態分析(3) -91-
方では市場取引量の大型化が要請されるようになり,運搬手段であるトラック
の効率的運用も切実な課題となってきていた。このような時点に,大阪中央卸
売市場の荷受会社の指導を受けることとなり,精算事務の効率化という面から
も1日共同計算方式を採用せざるを得ないようになっていった。
ただこの時は旧村単位の共同計算であったo 41年の指定産地の指定でより外
部的な指導が強められることとなり地区一本の 1日共計が成立したのである。
すなわち,生産者の自発的な採用というより,外部的指導によって共計は成
立したといえる。したがって,採用された共同計算方式は,期間 1日という短
期的なものとなり,共同計算の積極的効果を発揮するには致っていない。しか
し,共同計算採用によって,品質,規格,栽培技術等の標準化は序々に進んで
おり,この商にそのメリットを見出すことができるかも知れない。
4. きゅうり共計共販の現状
1) 共計共販組織の現状
( i ) 機構と構成
高取町野菜出荷組合連合会は,表面上高取,船倉,越智問のそれぞれ3出荷
組合から構成されているが,各出荷組合は組合独自の施設を持っていないため
機能的には連合会長を出している船倉農協と連合会長宅が事務所となり,副会
長を出している高取, 越智岡両出荷組合は副会長宅を事実上の支所としてい
る。 47年 1月より連合会規約を改訂し,名称は連合会のまま組合員を出荷組合
から直接生産者に,また事務所を連合会長選出地区の農協に置くことに改正し
ている O
(ii) 組織の機能と組合員
高取町野菜出荷組合連合会は,きゅうり販売を目的に形成されたのであるが
その他の野菜も取扱っている。この地区の輪作体系は,
一寸享一>きゅうり 一う菜草えんどり
の型が多く,きゅうりの前後作の一寸立,えんどう,架豆もきゅうり同様規格
等級別毎日共同計算を行なっている。しかし,量的にはきゅうりが一番多く,
- 92- 神 戸大学農業経済
葉豆は近時割合多く出荷されるようになって来ているが,一寸豆,えんどうの
取扱は少量である。これら他の野菜生産物はきゅうり出荷時には市場まで積合
せで出荷されているが,その他の場合は各生産者による個人出荷である。
46年の組合員数は80名でこの内きゅうりの生産者は75名でその内専業農家は
30戸である。地区別には高取30名,船倉35名,越智岡20名となっている。生産
者 1 戸当りきゅうり作付面積は船倉地区 9.7 ア ~lレで,一番大きく,また延作
付面積も一番大きいo (表 1-5参照〉
衰 1-5 高取町野菜出荷組合連合会のきゅうり作付農家数と作付面積及ぴ 1戸当り平均作付面積 (46年〉
1 きゅうり作付 1 きゅうり作付 1戸当りきゅ組合員数 面 積 1 うり作付面積| 人 hai
高取 地 区 30 '1 1.6 5.3
船 倉 地 区 35 3.4 9.7
越智岡地区 20 1.5 7.5
計 75 6.5 8.7
注高取町野菜出荷組合調べ
(iii) 農協との関係
高取町にある 3農協は現在も米麦以外の販売は行なっていない。そのため農
協の販売体制は全く不充分と言ってもよく,その補完的機能を高取町野菜出荷
組合が果しているといえる。 3農協の役員も序々に世代交替が進み,販売事業
の必要性を認めつつあるが長期間米麦販売のみ行なっていたため敏速な市場対
応を必要とする自由流通農産物の販売には不安感を持っており積極的に販売部
門の強化に手出しし得ない状態にある。高取町には,高取町野菜出荷組合連合
会以外に農協の販売部門に替わる任意組合組織として,酪農,果樹,養鶏,村t
立,花木の各出荷組合連合会がある。また,これらの連合会が集まって高取農
畜連合会という任意組織を結成し,品評会や技術講習会を開催して地域農業者
間の連けいを深めている。これらの点から,農協の立場はこれら出荷組合連合
会の金融部門及び購買部門を担当している組織とも考えられる。このような関
係かち,農協としても野菜連合会の事務局を受け入れざるを得ないようになっ
ているO ただ,問題点は各種の出荷組合連合会は農畜連といった合同組織を持
ちながら,それぞれの個別性を強く主張し,農協組織の改善を話し会うという
野菜の共計共販の実態分析(3) - 93-
場合,各種連合会の利害が対立し各組合員数が少いため大勢を動かすといった
大きな力になり難い状況になっている。
2) 共計共販の仕組
きゅうり出荷の概要は図 1-2の通りである口以下順にその実態を見てゆく。
図1--2 きゅうり出荷の仕組
中央卸売市場
( i ) 出荷計聞の作成
輸
滋
毎年9月その年の出荷反省会を開催する。反省会には連合会役員,地区生産
者代表,市場関係者,普及所,種苗会社,農協,町産業課の人々を集め,その
年の生産出荷の問題点を摘出し,次年度の課題とする。 11月に組合員より翌年
の作付面積計闘を提出してもらい,種子購入の手配を行なう D この時点で翌年
の作付面積が明らかとなる O 高取町野菜出荷組合連合会の出荷量は小規模であ
ることと,また大阪中央卸売市場の荷受会社である中央青果を中心に国定的出
荷をしているところから,販売担当は連合会長 1人がその任に当っているO 連
合会長は,その経験から(現会長は39年以来その職にある〉作付面積を聞くとお
よその時期別収穫量を頭の中に想定する。次にきゅうりの成育状態を観察して
時期別収穫量を修正し年に応じ大阪中央卸売市場以外の出荷先市場の開拓を考
- 94- 神戸大学農業経済
!覆する白出荷前になされるのは,この程度で,高取野菜連ではいわゆる出荷計
画は作成されない。すなわち,取扱量も少く,また組織機構が整っていないた
め,情報収集,分析を前提とした主体的な出荷計問を作成し得ない現状にある。
Cii) 選別,荷造
選別は各組合員に規格等級表(表1-6参照)を渡し個選を行なう。各生産
者はピヨウ打機を所有しており,個人で荷造も行なう。荷造に要するダンポ{
ノレ箱は,農協と業者の 2Jレ{トから仕入れ,生産者に配布されるO その年の天
候によって雨天が多いと予想される場合には,経費が高くついても厚いダンボ
ーノレ箱を使用する等の配慮がなされる。(雨などで箱が傷んでいると市場の評
価は極めて低くなる。)
46年の箱代は生産者渡し 8勾入 1個41円で,10kg箱は廃箱の利用とした。
表n---6 高取町野菜出荷組合連合会のきゅうり規椛等級別基準表(促成日本種)
l 数量 l 長サ( 重 サ
110.9' 15本X3十11本56本......., 65本 28cm......., 33cm
150タ 16本X3+7本⑤ L L
909 19本X4+2本
120[1 20本x4 80本--84本 25c初"" 30cm ⑤ L
⑤ M 88本......., 92本 i 21cm,....., 25cm 85[1 22本x4
90.9' 23本x4
⑧ L 25cm ......., 30cm 秀Lの梢々曲り
⑮ M 21 cm "" 25cm 秀Mの梢々曲り
@ 曲り及び太10K入
③ 140.9' 200.9'
(iii) 集荷と出荷
生産者に対する出荷指令は出されず,生産者は毎日伝えられる市況を参考に
野菜の共計共販の実態分析(3) - 95-
出荷量を自分で決定する。もっともこの時期のきゅうりは収穫日が 1日遅れる
と成育が進み,市場評価が落ちるため市況が出荷経費をまかなえない程落込ま
ない限り出荷せざるを得ない。すなわち,出荷量は弾力性に乏しく,気象条件
に作用されるところ大となる D
集荷場は高取2ヶ所,船倉,越智岡に各3ケ所あり,そこまで生産者がテ{
ラ~軽自動車等で運び込む。集荷場は専用の施設ではなく肥料倉庫,生産者
の納屋,農協の軒下等を利用している。集荷場に集められた荷は,個人別等級
規格別に記録されて出荷される。
(iv) 共同計算方式
きゅうりの等級規格別出荷数量および金額は船倉農協に集められ, 日別に規
格等級別 3地匹一本で共同計算される。販売代金の支払は,農協に依頼しそ
の事務処理上の都合もあって月末払い制をとっている。
46年では 6月末 7月末の 2回に各農協の生産者口座に 1月分一括振込まれ
ている。農協は口庫振込による預金額の増大というメリットがあるものの,共
計事務を行なっている船倉農協では,事務処理面で職員の労働を強化すること
になっていてその改善が望まれているD
(v) 品質規格の維持方法
共同育苗施設,共同防除を通じて生産段階における品質標準化の努力はなさ
れているが,出荷段階では個人選別にゆだねられており,一応組合役員による
検査制度は取られているものの毎日抜取検査を実施するところまで人手がな
い。そのため時には個人によって選別が不充分な場合が生じてくる。そこで市
場からのクレ{ムを処理するため生産者に番号をつけ,出荷される箱には必ら
ず隠し番号を打つようにしている。市場からのクレ{ムがあれば,番号を確認
してその生鹿者に対して組合検査員が選別の指導を重点的に行なうことにして
いるO
3) 販売活動の実態
一般に小規模任意組合の弱点で、ある事務処理機能の不備は,高取町野菜出荷
組合連合会にも該当し,決算が終わると資料は散逸してしまれそのため当調
- 96- 神 戸大学農業経済
査で得られた販売に関する資料は46年分のみであった。以下, 46年の販売実績
に関して若干の検討を試みよう。 (41年以降の販売量については表1[-3を参
照〉
46年の高取町野菜出荷組合連合会共計共販取扱量は約267トンであり,その
他に等外品を愛知県の漬物会社に94トン販売している。出荷市場別等級規格別
数量は, 表1[-7のようになっている。規格別にみると秀品は出荷量全体の
85.4%を占めている。また,出荷量の61%が価格の良い秀Lとなっている O 構
表H-7 高取町きゅうり共計共販の出荷市場別規格別数量と構成比 (46年)
等級規格 | 秀 f"'"a(' _1~ a=:J
i出u荷市場一¥一¥一一一一J一一正“L 一瓦 → M ( 優 太 良 i 計計.
突[大飯中央本場 I1附 8 7犯丸町5弘υ,7応52 附 04引I 7,880 丸ω 悶 OU|肌“
l大阪中央東部 5,80ω8 7九4,536 19,16οιI 8,35臼2 2,20∞o 9,6貯70I 119.7η26
空?l五以〈都中央市場| 8削O∞Oω363M,A6O8| 一 一 一!〕1川 4
竺! 計 23,496163,224 41,072 1 16,232 4,240 此 250! 266,514
鰯i大阪中央本場 13.0 58.5 14.1 I 6.1 1.6 6.61 100.0
昆型!大阪中央東部 4.9 62.3 16.0 7.0 1.8 8.0 i 100.0
工程1 京都中央市場 4.6 74.6 20.8 一 一 100.0
P訟の 計 8.8 61.2 15.4 6.1 1.6 6.8' 1∞.0 一一一一一一一一一一一一一一一一一
螺大阪中央本場 71.9 46.4 44 . 6 ! 48.5 48.1 47.0 48.6
箆型大阪中央東部 24.7 45.7 46.6, 51.5 51.9 53.0 i 44.9
I場京都中央市場 3.4 7.9 8.8 6.5
%のi 計 I 100.0 100.0 1∞.0 100.0 100.0 100.0 100.0
注高取町野菜出荷組合連合会の仕切伝票より作成
成比 lによると京都中央市場へは 100%秀品を,大阪東部市場へは本場よりや
や多く秀品を出荷している O 京都中央は46年から取引を始めたので評価を得る
ため秀品のみの出荷となった。構成比 E表では,秀LLの出荷に市場開の特色
が見られる。出荷量全体では大阪本場が東部市場を上回っているが,秀LLは
本場の方が東部市場より約3倍多く出荷きれている O これは市場の好みに対応
して出荷されたものである。
さて,高取共計共販きゅうりは価格商においてどの程度有利な販売を実現し
ているのであろうか。表1[-8は高取町きゅうりの市場別旬別平均単価および
市場占有率の推移を示している。図 n-3,図1[-4は市場別にこれらの推移
- 97-野菜の共計共販の実態分析(3)
中旬の平均価格は市場平均価
収穫最盛期となる 6月下旬以降は市場平均より低くなっ
を図示したものであるo 高取きゅうりの 6月上,
格を上回っているが,
1-::1:: îU~ r.þã]ð_~F í1i-I-].:~j.2月上旬 中 旬 下 旬 i 上旬中旬 下旬
央本場 1 119 89 55 I 33 31 41
央東部 198 88 52(37 42 45
央市 場 i-一一一 十 31 44 34
154 120 62 1 33 31 41
137 120 58 I 37 42 45
31 44 34
43 48 59
35 45 58
高取町きゅうりの市場別旬別単価の推移と市場占有事の推移 (46年)袈 1-8
中
中
中
阪
阪
都
全
大阪中央本場
大阪中央東部
京都中央市場
描
秀
平均単価
高取町きゅうり
中央卸売市場の i大阪中央本場
全入荷騒の平均;大阪中央東部
単価 引/勿) I 京都中央市場
高取きゅうりの l大阪中央本場
市場占有率 |大阪中央東部
(%) I京都 中央 市場
118 104
110 87
(円/匂)
1.4
2.4
5.6
7.1
高取町野菜出荷組合連合会仕切伝票及び大阪中央卸売市場月報より作底
6.7
9.0
4.7 I
8.5
3.8
6.5
0.8
1.9
f主
高取町きゅうりの旬別
単価の推移 (46年)
(大阪中央卸売市場本場)
、、. 、、、、
t IliJ同'I'-r,)Ip_f出, , , , 、 ,、'、 . ...
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"
---98ー 神戸大学農業経済
図 1--4 高取町きゅうり旬別単価の雌移 (46年)
(大阪中央卸売市場東部市場)
ドJ/岡 1
1!""lU
Ji取町(秀品)
11附
,'" diJ品、1'1'1犠!画
~,()
高取町
!i 11
)11) !1111.' ト;ι1-j,' I : ' ~'l:
ている。秀品 (LL,L, M規格)の平均単価についても同様の傾向が見受け
られる。このような結果は以下のように理解できるであろう。すなわち,近年
きゅうりの消費は周年化され,露路ものの最盛期にはとまと等の代替品が出回
り,きゅうりの消費需要は弱含みとなる。したがって 6月中旬までは,市場占
有率が低くてもよい価格が突現されるのであるが, 6月中旬以降は,市場取引
力の強い大量出荷組織が有利な価格を実現することになる。高取町野菜出荷組
合連合会の当商する問題の一つはこの点,すなわち市場取引力の弱さに求めら
れよう。ただ,高取町の生産者は,高価格の実現を望まないのではないが,取
引市場を固定することによって,価格は少々低くても安定した取引をより強く
望んでいる側面がうかがえる O この相反する 2つの点は,将来のきゅうり共計
共販の方向づけに大きな問題となるであろう。
なお,市場の規格別, 日次別データーが得られないため高取町だけの日別出
荷量と実現価格を秀Lについて市場別に参考までに示しておく(図 n-5,図
H-6参照) 0
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野菜の共計共販の実態分析(3)
岡1-5 高取きゅうり秀Lの日次別入荷数量まと平均単価
(461手大阪中央本場)
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高取きゅうり秀Lの日次別入荷数量と平均単価
(46年大阪中央東部市場)
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-100ー 神同大学農業経済
5. きゅうり共計共販の問題点
ここでは,共計共販が現時点で内胞している問題点と高取共計共販の将来性
を考慮した場合の問題点等について整理してみよう。
まず第 1は,組織事務機構の整備が必要であること O 生産指導体制,市場対
応、にも整備された情報のスム{スな利用は不可欠である。第 2に,収穫労働の
省力化は無理としても,現在行なわれている個選を共選にもってゆき,選別荷
造の省力化と同時に,より品賀規格の水準を向上させ市場評価を高めることで
ある。第 3にそれと同時に生産に関する共同化をより推進すること,現在の共
同育苗,共同防除体制の強化。第4に有利な市場価格を実現するため(今より
早い)新作型の導入を検討すること。これらの諸点については早急に解決され
る必要がある O
また,当面の課題でもあるが将来方向として共計共販組織の事務機構の整備
をどうしてゆくのか考えなければならなL、。これは,農協の販売部門の整備と
いう形で野菜出荷組合の編成変えを考慮しでもよかろう。つぎに,編成変えが
なされるにせよ野菜販売における有能なスタップの育成である。現状では連合
会長 1人に頼っている面が強く, 市場対応にはどうしても機敏性を欠いてい
る。もう 1つ大きな問題がある O 高取野菜出荷組合は,共販規模的にみて量的
過小性が問題である O 高取町内の生産者拡大への努力もなされなければならな
いが,兼業地域であるため規模拡大は望み少く農家の異質性も強く困難が予想
される O したがって,きゅうり指定産地である桜井市,明日香村,高取町を A
本にした出荷体制を考慮し組織化に着手するのも一方策である。とりあえず,
明日香村と協同すれば,作付面積で;401za近くなり,これらの荷が一括されれば
対市場取引において大きな力を持つことが可能となろう。
E むすび
これまで 3品目 4共販組織についてその実態を明らかにしてきた。これら
の4組織類型別に,共販成立発展の要因と特色を,①生産者および共販組織に
おける主体的要因,②立地に関する要因,①当該生産物に関する要因,④市場
表1-1
野東の共計共販の実態分析(3)
共販成立発展の諸要悶とその特色
-101ー
高取町きゅうり l北阿万農協玉ねぎ l那賀そざい玉ねぎ l奈良県促成いちと
共計共版|共計共販|共 版 l共 計 共 版
主体的
側面
生産者は農協の販売機能に替わる販売組織を求めていた。献身的なリ{ダ{が存在していた。
成立時には良いリ{タがあった。みかん生産の発展にともない生産者は玉ねぎ販売の投機性を楽しむ側面が見られる。
農協に有能なリ{タマ{があった。このリ{タ守{により生産者をより強力に組織化することができた。
に玉神
o
そが
地の阪い…'人。
躍ら京近~く商る。
大か
o的
一
高
地
い
調
のく地較一性産て唱
ん古産比一能めしは
かるぎは一蔵た在要
みあねへ一貯の介需
一用なのい一そが
一
利
ら
ぎ
て
'
人
。
一をなねし一く商た。
一船ぱ玉中一高地い調
一はれら集一性産て堅
一へけかが域能めしは
場なのく路地蔵た配要
一市しい古生た一貯の介需
一作の郊模露結出コ吋
一なも近規一き花くの不
一要る市小一播開かめは
一主れ都の
o
一早¥知たル
一にわ'帯臆一なでがの[
一外いい地生一的情間整ロ
一以とな業菜一般栽期調ト
一米自が液野一一地実荷ン
一
泊
回
附
面
-
立
側
商
側
市場的
側面
場
あ
せ
市
で
拾
寸
i蛇
宮
村
れ
地
院
の
の
目
と
本のん。
日心。か亮
一県中るみ版
心(削)り
中
は
あ
場
標
力
市
商
努
売
で
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卸
荷
立
央
出
確
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受けす
荷受と
場を場
市噂市
央指引
中の取
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m川陀ゐ
4L
,。
大会るる
先!抱的な生産者グノレ{フ。の結成があったζ と。経済連が積極的な援助にのり出したこと。
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近年消費需要の高まってきた品目である。貯蔵性低く,そのため貯蔵法開発中
京阪神中央市場中心の販売である。関東,北海埴へも進出。
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指定産地近代化資!指定産地近代化資農協には指定産地金の援助あり。共!金の援助あり,冷 l近代化資金援助が同宵苗施設共同防 l蔵施設集荷センタ|あり,冷蔵施設を除用噴溝機導入 I .ー設立 |持つも,当組織に
は援助なし。
等級規格別 1F[共等級規格別附間郡単位の共計は実[お?守山信義i共計 施されていない。|別共計(冷蔵は全期共計)J I3月以降は 1週間
|共計
制度的
側面
共同計
算方式
に関する要因,①生産技術に関する要因,③制度的援助等に関する要因の 6側
面について整理すると表 01-1のようになる。
各共販は,それぞれ成立発展の諸要閃によって現状を規定されている。
とりわけ,高取町と那賀郡の場合は,いわゆる系統農協組織によるものでは
なく任意組合の型をとっている。そのため組織運営にともなう事務処理機構に
一一 102- 神戸大学農業経済
不備があり,生産地域全体に及ぼす強い影響力を持ち得ない。
他方,系統農協においては,強固な組織機構を活用して生産指導を強力に推
進でき,また,資金面においても,自己資金,並びに行政的援助を充分活用で
きることとなっている。
系統組織と任意組合組織における組織上から生ずる格差は歴然たるものであ
る。もっとも弱少な単協においては同様な点が見られるのである。
数少ない調査結果からではあるが,一般に主産地の形成→共販の成立という
メカニズムには,生産者の主体的努力,とりわけ有能な人材, リーダ{が不可
欠である。それと同時に新技術の開発,又は新製品の開発が,例えば奈良県の
ように従来大規模共販が成立しにくいと云われている地域にも産地形成→共販
形成が見られるように,生産者の意志統ーを容易にする。
さらに,農業生産構造や流通技術ならびに市場条件の変化が激しいとこから
変化に対応できる人材の確保は云うまでもなく,施設,機械に依存する割合が
高くなってきている O そのため投下資本の調達を如何にするかという課題が産
地形成を大きく左右する要素となっている O 促成いちご共販の成立はこの例に
も該当するであろう O
主産地を形成するためには,特に近哉のような農業生産構造のもとでは,当
初から販売体制を確立して新しい作目を導入してゆくという方法に意味がある
ように考えられる。他方従来の産地においては,集出荷の省力化を主柱に集荷
悶を拡大する方向で対処されなければならないであろう O もっとも,後者につ
いては産地として生産が集中している地域は近議には少い。そのため,このよ
うな方法はより困難となるであろう。
このように考えてくると,近法においては指定産地の拡充が,相当な効果を
期待できると云えるのである。
最後に,本稿では共販参加者である生産者についてほとんど触れられなかっ
た。この点について充分な検討がなされなければならない。
(付記)
本稿は,近畿農政局「野菜の共計共販体制実態調査報告書J47年として取りまと
めたものの一部である。今回で共計共販の実態分析についての報告を終えたい。