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H24 二国間二国間二国間二国間オフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジット制度制度制度制度のののの実現可能性調査実現可能性調査実現可能性調査実現可能性調査

最終報告書最終報告書最終報告書最終報告書((((概要版概要版概要版概要版))))

「「「「太陽光発電出力太陽光発電出力太陽光発電出力太陽光発電出力のののの安定化安定化安定化安定化をををを達成達成達成達成するためのするためのするためのするための

ハイブリッドハイブリッドハイブリッドハイブリッド発電発電発電発電システムシステムシステムシステム」」」」

((((調査実施団体調査実施団体調査実施団体調査実施団体::::日立造船株式会社日立造船株式会社日立造船株式会社日立造船株式会社))))

調査協力機関調査協力機関調査協力機関調査協力機関 【国内】みずほコーポレート銀行、ソーラーフロンティア 【ホスト国】Differ/ Eco Power 調査対象国調査対象国調査対象国調査対象国・・・・地域地域地域地域 インドネシア、ニアス島 対象技術分野対象技術分野対象技術分野対象技術分野 再生可能エネルギー 事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの概要概要概要概要 太陽光発電とディーゼルエンジンを組み合わせた数 MW クラスのハイブリッド発電システムを導入し、電力供給事業を行う。本システムの導入により、太陽光発電による発電相当量およびディーゼルエンジンの効率向上分だけ化石燃料の燃焼を回避できる。それに伴い、燃焼を回避した分の CO2 排出量が、本事業による排出削減効果とみなせる。なお、本システムは、太陽光発電の出力変動分を低負荷対応ディーゼルエンジンにより補い、高度な全体制御により、発電最適化と出力平準化を行うものであり、高コストな蓄電池を必要最低限とし、建設コストとランニングコスト(燃料費)の最小化を実現する。 MRV方法論適用方法論適用方法論適用方法論適用のののの適適適適格性要件格性要件格性要件格性要件 技術水準・特性上の適格性要件を、下記(a)~(c)に示す。 (a) 太陽光発電の出力変動を補償する制御ソフトウェアによりディーゼル発電電力を操作し、太陽光発電とディーゼル発電の総発電電力を安定化するもの。特に、その安定化した電力を小中規模系統(MW 以下クラス)のベース電源として利用するもの。 (b) ディーゼル発電機としては、低負荷対応ディーゼル発電機(例えば、バルチラ社製ディーゼル発電機)を採用し、太陽電池モジュールは、CIS 太陽電池(例えば、ソーラーフロンティア製太陽電池モジュール)を採用したもの。 (c) ディーゼル発電機の出力制御部に日本製のソフトウェア技術を適用する事、および CIS 太陽電池の特性により、電力変動緩和のための蓄電池の使用容量を最低限にするもの。 リファレンスシナリオリファレンスシナリオリファレンスシナリオリファレンスシナリオ及及及及びバウンびバウンびバウンびバウンダリーのダリーのダリーのダリーの設定設定設定設定

ニアス島のリファレンスシナリオ(小規模グリッド接続)としては、当面は 100%ディーゼルエンジン発電の継続、近い将来に石炭火力、石炭ガス化、ディーゼルエンジン(基本的に新設は認められないためリプレースのみ)による供給を行うものと考えられる。 算定方法算定方法算定方法算定方法オプションオプションオプションオプション リファレンス排出量の計算に用いるグリッドの CO2 排出係数については、グリッドの規模によって設定方法を異なるものとする。 ここでは、①接続するグリッドの規模、②デフォルト値の利用、の2 つの基準により、算定方法オプションを選択する。 ①については、インドネシアの送配電事業を独占的に実施するPLN が管理・運営している大規模グリッドかどうかを判定基準とする。接続するグリッドが大規模・小規模のいずれであっても、デフォルト値(②)を利用することができる。デフォルト値を利用す

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る場合には、CO2 削減量の計算結果は保守的に小さいものとなる。 デフォルデフォルデフォルデフォルトトトト値値値値のののの設定設定設定設定 大規模グリッドでは、エネルギー鉱物資源省(ESDM)およびインドネシア国家気候変動評議会(DNPI)が、定期的に作成・公表している排出係数を適用する。政府はこれらを CDM での利用のために提供しており、JCM/BOCM においても利用が適切である。 また、小規模グリッドでは、グリッド接続の全ての発電設備が液体化石燃料を用いている場合には、CO2 排出係数としてデフォルト値を用いる。この場合、24 時間連続給電されているミニグリッドの排出係数(0.8 t-CO2/MWh)を適用する事が妥当である。 モニモニモニモニタリングタリングタリングタリング手法手法手法手法 太陽光発電システムからの発電量、ディーゼル発電機からの発電量、リファレンス排出量を算出する為の太陽光発電システムからの発電量、グリッド排出係数およびディーゼルエンジンの燃料消費量のモニタリングを行う。 GHG 排出量及排出量及排出量及排出量及びびびび削減量削減量削減量削減量 4MW ハイブリッド発電設備において、ニアス島の太陽光発電設備の 設備稼働率を 15.39% と想定 し、 排 出係数 と し て 0.7 tCO2/MWh(バルチラ社仕様より概算)を用いれば、GHG 排出削減量は 7,243 tCO2/year と試算された。 第三者検証第三者検証第三者検証第三者検証のののの手法手法手法手法 本 MRV 方法論に基づき、必要な第三者検証を実施可能であることを現地調査において確認した。なお、実施機関は、インドネシア法人の DOE に加え、ISO 認証等を行う機関約 10 社を想定する。 環境影響等環境影響等環境影響等環境影響等 太陽光パネルおよびディーゼルエンジンの設置により、占有することとなる広大な土地開発の影響、本システムのディーゼルエンジンの燃料として、バイオ燃料(特にパーム油)を使用する場合の影響、事業の普及に伴うニアス島内の電力供給能力増強および電化地域の拡大の影響などの考慮が必要である。 資金計画資金計画資金計画資金計画 日本政府による補助金がないケースにおいては、借入返済と金利負担によって収益性は 20 年間の投資に対し IRR5.21%となり、投資対象として検討できる水準となった。補助金があれば、投資者にとって十分な採算性を確保できると考えられる。 ただし、ディーゼル燃料価格、売電価格の変動によるキャッシュフローへの影響が大きいため、実際の投資にあたってはそれらの変動リスクを最小化するよう、長期的なリスク回避方法を検討することが望ましい。 日本技術日本技術日本技術日本技術のののの導入可能性導入可能性導入可能性導入可能性 太陽光発電出力を安定化し、それをベース電源として使用することが出来れば、ニアス島のような電力品質に劣る独立系統には最適なソリューションと成り得る。 また、本システムで採用する CIS 太陽電池モジュールには、インドネシアの様な高温地域でも発電効率の低下が少ない特長があり、地域の特性に合った太陽電池として普及が期待される。 ホストホストホストホスト国国国国におけるにおけるにおけるにおける持続可能持続可能持続可能持続可能なななな開開開開発発発発へのへのへのへの寄与寄与寄与寄与

ニアス島の電力供給能力の拡充、電力品質の向上による国内外企業の工場誘致、バイオ燃料の使用によるプランテーション雇用の創出は、まさに当該地域の発展に寄与するものである。

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調査名調査名調査名調査名::::二国間二国間二国間二国間オフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジット制度制度制度制度のののの実現可能性調査実現可能性調査実現可能性調査実現可能性調査

「「「「太陽光発電出力太陽光発電出力太陽光発電出力太陽光発電出力のののの安定安定安定安定化化化化をををを達成達成達成達成するためのハイブリッドするためのハイブリッドするためのハイブリッドするためのハイブリッド発電発電発電発電システムシステムシステムシステム」」」」

団体名団体名団体名団体名::::日立造船日立造船日立造船日立造船株式会社株式会社株式会社株式会社

1.1.1.1. 調査実施体制調査実施体制調査実施体制調査実施体制 【国内】 みずほコーポレート銀行(政策・市場調査、事業性評価)

ソーラーフロンティア(太陽光発電システムの技術的評価) 【ホスト国】 Differ / Eco Power(現地機関のアポイント取得、現地調査サポート)

2.2.2.2. 事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの概要概要概要概要

((((1)))) 事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの内容内容内容内容 インドネシアのニアス島(図図図図 1、スマトラ島北部の西側沖約 140km)に、太陽光発電とディーゼルエンジンを組み合わせた数MWクラスのハイブリッド発電システム(以下、本システム)を導入し、電力供給事業を行う。 本システムの導入により、太陽光発電による発電相当量だけ化石燃料の燃焼を回避できる。それに伴い燃焼を回避した分の CO2排出量およびディーゼルエンジンの効率向上による削減分を、本事業による排出削減効果とみなせる。なお、本システムは、太陽光発電の出力変動分を低負荷対応ディーゼルエンジンにより補い、高度な全体制御により、発電最適化と出力平準化を行うものであり、高コストな蓄電池を必要最低限とし、建設コストとランニングコスト(燃料費)の最小化を実現する。 本システムの導入主体はインドネシア国営電力会社である PLN(グループ)を主に想定するが、IPP 事業も視野に入れるものとする。

((((2)))) ホストホストホストホスト国国国国のののの状況状況状況状況 ① 電力およびエネルギー事情

国有電力会社 PLNが独占的に行っていた電気事業に対し、新電力法(2009年 9月可決)において、中央・州政府に電気事業の許認可権を付与することが盛り込まれた。電気事業への新規参入者の登場を期待されている。 大統領令(NO.5/2006)により、化石燃料は石油から石炭へ比重を移す。また、再生可能エネルギーは増加の傾向である(だだし、バイオ燃料・地熱・水力が主であり、太陽光の優先順位は低い)。 石油の使用量削減(発電コスト低減)のため、ディーゼル発電機の単純な新規導入は原則として認めていない(既設のリプレースは可能)。 インドネシアの電化率(2010年全国平均 67%)は、全国で年平均 2.8%の伸びを示している。2025年 93%が目標である。電力需要は年平均 9.2%で増加している。 インドネシアの離島ではディーゼルエンジンによる発電が中心であるが、発電用燃料の価格高騰に加え輸送費もかさむことから、PLN や補助金で対応している政府の大きな財務的負担となっている。 ② 再生可能エネルギーおよび CO2排出削減に関する状況

GHG排出量は、2020年までに、BAU比で 26%の削減(国際的支援がある場合には 41%の削減)が目標である。 2015年までに、インドネシア全土の 1,000島に(小規模)太陽光発電を導入する計画があり、ニアス島も含まれている。しかし導入計画が大きく遅れており、2011 年現在 35 地点(計画

図図図図 1 1 1 1 ニアスニアスニアスニアス島島島島地形図地形図地形図地形図

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は 100地点)にとどまっている。 Feed-in Tariff制度の太陽光発電への拡張が検討されており、10MW以下は固定買取価格となる見込みである。インドネシア政府は、海外の太陽光パネルメーカーから調達する場合の買取価格を約 2500Rp/kWh、国内の太陽光パネルメーカーの製品を使う場合は約 2800Rp/kWh程度で議論を進めている。 PLNの排出削減への取組みとして、再生可能エネルギーを遠隔地や外島部などで優先利用や地熱のジャワ島やスマトラ島での開発促進などを計画、実施している。 ③ バイオ燃料の利用

本システムで用いるディーゼルエンジンでは、バイオ燃料を使用できるというメリットがある。バイオ燃料としては、パーム油、ジャトロファ油などがあるが、インドネシアでの電力事業を考えると、パーム油が最適である。

((((3)))) CDMのののの補完性補完性補完性補完性 本調査での方法論に基づく JCM/BOCM事業は、以下の CDM事業の問題点を補完する。

① 適用可能な方法論が存在しない

ハイブリッド発電システムに適用できる方法論は CDMには存在しない。

② 追加性の概念にマッチしない これまで太陽光発電は、設備費が非常に高く、なかなか海外においてビジネスケースとみなされてこなかった。CER 売却による年間収益は初期投資額の 0.4-0.5 %程度であり、クレジットの売却益が事業性評価に与える影響は、初期投資費や電力買取価格などが与える影響と比較して小さいものであったと言うことができる。従って、CDMの追加性実証・評価ツールに定められた投資分析においては、クレジット収益の有無を示すことの意義が低かった。 近年は、太陽光発電の設備費低下は著しく、有効化審査から事業実施までのタイムラグを見越した投資分析上の感度分析の変数幅を、保守的に、大きいものとせざるを得ない。すると、クレジット収益が無くても、感度分析上は事業実施可能な領域も結果に含まれる可能性があり、プロジェクトシナリオがベースラインシナリオとみなされ追加性が無いものと判断される恐れがある。 また、CDMの追加性実証・評価ツールの適用に際しては、ステップ 3(障壁分析)よりもステップ 2(投資分析)が重視されていたのが実態であり、本 JCM/BOCMで設定する技術的な適格性要件を、障壁分析の中で用いることが困難である。

③ 事業計画のタイムスパンとマッチしない

CDM事業登録されるまでの時間は長く、上記のように太陽光発電の設備費低下スピードを鑑みると、計画の前提条件およびそれに基づく事業性評価が CDM化プロセスの中ですぐに古いものとなってしまう問題点があった。 結果として、グリッド接続の太陽光発電だけを取ってみても、全世界で登録された案件数が 12 件(通常規模)・39 件(小規模)にとどまり、風力発電の 754 件(通常規模)・235件(小規模)、水力発電の 565 件(通常規模)・620 件(小規模)に比べると極めて少ない。 有効化審査を実施して登録まで到達した割合(登録率)は、グリッド接続についてみれば、12 %(通常規模)、25 %(小規模)にしか至らず、他の再生可能エネルギー事業についての4 割前後よりも極めて低い。 通常のビジネスでは、成果が得られないリスクが 8~9 割程度もあれば、リターンの期待値が小さいと捉え、自社開発コストを支払ってまで CDMを実施しないと判断される。

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3.3.3.3. 調査調査調査調査のののの内容内容内容内容

((((1)))) 調査課題調査課題調査課題調査課題 調査課題および調査方法を表 1に示す。

表表表表 1 1 1 1 調査課題調査課題調査課題調査課題およびおよびおよびおよび調査方法調査方法調査方法調査方法 調査課題 調査方法

MRV 方法論適用の適格性要件

技術的要件の明確化 ・太陽光発電出力の変動 ・ニアス島グリッドの電源品質

サンプリング周期 1秒の日射データが現地気象局には無いため、ニアス島で実際に計測する。 ニアス島のグリッド電源品質を把握するため、現地で電源波形を計測する。 リファレンスシナリオの設定

ニアス島とインドネシア全土での太陽光発電導入計画と進捗状況

現地でのヒアリングや文献調査により、インドネシア政府や PLNの政策・方針を調査する。 既設の太陽光発電設備を訪問し、発電状況や問題点などを調査する。 対象地域の発電設備の現状 既設のディーゼル発電設備の状況、運転方法などを調査する。 デフォルト値の設定

CO2排出係数の設定方法 現地でのヒアリングや文献調査により、排出係数の値や設定方法に関する情報を収集する。 インドネシア政府公表値を用いることの妥当性評価

現地関係者との意見交換。

GHG 排出削減量の定量化

太陽光発電システムの設備稼働率の算定方法

気象局にて、ニアス島およびインドネシア全土の気象データ(日射量、気温など)を入手し、それを用いた評価計算を行う。 バウンダリーの設定

事業実施サイトの確定 現地視察状況や気象情報などから、最適な事業サイトを選定する。 島内の交通・輸送インフラの状況を把握する。 事業活動の実施体制

想定される事業の実施形態およびその問題点

現地でのヒアリングや文献調査により、事業実施形態の種類およびその問題点などを把握する。 資金計画 Feed-in Tariff制度の状況 現地でのヒアリングや文献調査により、Feed-in Tariff制度の状況を把握する その他 バイオ燃料の動向 現地でのヒアリングや文献調査により、バイオ燃料の普及状況、供給事業者、関連補助金などの調査を行う。

((((2)))) 調査内容調査内容調査内容調査内容 調査内容と結果の概要を表 2に示す。

表表表表 2222 調査内容調査内容調査内容調査内容とととと結果結果結果結果のののの概要概要概要概要 調査課題 調査内容と結果の概要 技術的要件の明確化 ・太陽光発電出力の変動 ・ニアス島グリッドの電源品質

第 2 回現地調査で、ニアス島の日射データを計測した。最大日射量は1.2kW/m

2 であり、ニアス島は太陽光発電に適していることが確認された。また日射の最大変化速度は約毎秒 65W/ m2であり、これを踏まえた出力変動補償の制御を考える必要がある。また、長期間の日射データを収集するため、第 3回現地調査以降は連続計測を実施中。 ニアス島での電源計測の結果、周波数変動幅は 49.6Hz〜50.3Hz であり、大規模グリッドよりも相当大きかった。つまり、出力平準化なしでは大規模な再生可能エネルギー電源の導入は困難と考えられる。また、周波数低下が起こる時間帯は夕方の電力需要が急増する時間帯と一致しており、電源容量不足と運転制御の脆弱さが計測データからも確認された。 ニアス島とインドネシア全土での太陽光発電導入計画と進捗状況

インドネシアは太陽光発電のポテンシャルは高く、1,000 島への設備導入計画がある。ただし、発電コストが高いため、再生可能エネルギーの中では優先度は低い。

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調査課題 調査内容と結果の概要 第 3回現地調査で、Nusa Penida、Gili Trawangan、Bunakenの 3 ヶ所の既設太陽光発電設備を訪問し、発電状況、施工方法、問題点などを調査した。インドネシアは東部の方が日照環境は良い。また、用地の崩れが見られた設備もあり、雨水対策、周囲環境破壊の防止等も十分配慮が必要。現地施工業者の選定には要注意。 対象地域の発電設備の現状 第 1回と第 2回の現地調査で、ニアス島の既設 PLN発電所を訪問し、設備の状況を把握、運転データ等の入手を行った。既設発電所は、北部のGunungsitoli発電所と南部の TelukDalam発電所の 2ヶ所に大別され、すべてディーゼルエンジンにより電力供給がなされている。メンテナンス状況も悪く、故障や廃止など更なる供給能力の低下が懸念される。自動運転制御は導入されていない。発電設備を追加導入する際には送電線増強の検討が必要となるが、IPP事業の場合、このコストを事業者が負担する必要がある。

CO2排出係数の設定方法 大規模グリッドについては政府公表値、小規模グリッドについては導入機器の類型に応じた値をデフォルト値として利用することの妥当性および保守性について、現地関係者と協議し、問題ない旨確認した。 排出係数のデフォルト値を用いることの妥当性評価

現地関係者より、排出係数を求めるための個別の発電データは、PLN からの入手は困難であり、IPP の場合はなおさら困難なものとなるため、方法論の簡略化の意味でもデフォルト値の使用が推奨された。なお、大規模グリッドの排出係数は、最終的にはインドネシア国家気候変動評議会 NCCC(インドネシア語では DNPI)が承認するものだが、データ自体はエネルギー鉱物資源省のエネルギー局(MEMR/DGE)が作成している。 太陽光発電システムの設備稼働率の算定方法

ニアス島とメダン(北スマトラ)の気象観測所で日照データ(1 時間平均値)と気温データを購入し、PVsyst(太陽光発電設計支援ソフトウェア)を用いて設備稼働率に関する試算を実施。設備設計に反映した。 事業実施サイトの確定 PLNニアスからWalo Beachと Lotu地区を候補地として推薦され、第 2回現地調査で両地点を訪問し比較検討を行った。立地条件(送電線距離、用水、アクセス)の優位性、3 年前に新地区として独立行政を開始したため開発途上で電力不足であること、内陸で標高が高く地盤も頑丈のため地震や津波の影響を比較的受けにくいことから、Lotu地区を選定した。 なお、Lotu地区では、PLNが雑木林を開拓し、石炭火力発電所の建設を計画中である。その用地の一部を本プロジェクトに適用することとなる。

2004 年末のスマトラ沖地震、2005 年 3 月のニアス島沖地震の被害が大きく、島の西側の道路状況は劣悪。東側も島中央の Gunungsitoliから南部へ向かう道路で、日本の援助により、橋梁の耐震補修・架け替え工事が続いている。また、架け替え後の橋梁の通行制限荷重は 20 トンとなる。これらの影響のない地点を事業実施サイトに選定すべきである。 想定される事業の実施形態およびその問題点

現地でのヒアリングにより、EPC(事業主体は PLN)、IPPの 2形態があると考えられるが、電力買取価格が低いことから IPP での事業は日本側のリスクが高いと考えられる。

Feed-in Tariff制度の状況 第 3回現地調査で、太陽光発電に対する新しい Feed-in Tariff制度が近々決定するとの情報を得た。インドネシア政府は、海外の太陽光パネルメーカーから調達する場合の買取価格を約 2500Rp/kWh、国内の太陽光パネルメーカーの製品を使う場合は約 2800Rp/kWh程度で検討を進めている。 バイオ燃料の動向 現地でのヒアリングでは、価格や生産・流通状況から、パーム油を利用することを推奨された。本システムで利用する場合には、供給事業者から直接購入することが有力であり、購入価格は事業者との交渉となる。なお、現状はバイオ燃料に関する政府補助金は、運輸・運送分野のみに適用されており、産業・発電分野には適用されない。

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4.4.4.4. 二国間二国間二国間二国間オフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジットオフセット・クレジット制度制度制度制度のののの事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動についてのについてのについてのについての調査結果調査結果調査結果調査結果

((((1)))) 事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの実施実施実施実施によるによるによるによる排出削減効果排出削減効果排出削減効果排出削減効果 本事業(プロジェクト)では、ハイブリッドシステム(①太陽光発電システム、②ディーゼルエンジン発電)の導入を行う。 太陽光発電システム(①)が発電を行った分について、化石燃料による発電の代替がなされ、それに相当する CO2排出量(リファレンス排出量)がすべて削減されたものとみなす。 ディーゼルエンジン発電(②)が発電を行った分については、リファレンスシナリオにおいて想定する化石燃料による発電とプロジェクトシナリオにおいて用いるディーゼル燃料による発電との排出係数が異なる場合があり、両シナリオの CO2排出量の違いを評価する。(図図図図 2222) なお、本事業で用いるディーゼルエンジンではバイオ燃料(100%)を利用することも可能であり、その場合には、ディーゼルエンジン発電に相当する CO2排出量をゼロとみなす。(図図図図 3333)

図図図図 2 2 2 2 排出削減効果排出削減効果排出削減効果排出削減効果((((バイオバイオバイオバイオ燃料燃料燃料燃料をををを利用利用利用利用しないしないしないしない場合場合場合場合))))

図図図図 3333 排出削減効果排出削減効果排出削減効果排出削減効果((((バイオバイオバイオバイオ燃料燃料燃料燃料をををを利用利用利用利用するするするする場合場合場合場合)))) ((((2)))) MRV方法論適用方法論適用方法論適用方法論適用のののの適格性要件適格性要件適格性要件適格性要件 本方法論は、太陽光発電およびディーゼルエンジンから構成される発電設備において、以下のすべての技術が導入されたプロジェクト活動に適用可能である。

(a) 太陽光発電出力変動を補償する制御ソフトウェアによりディーゼル発電電力を操作し、太陽光発電電力とディーゼル発電電力の総出力を安定化するもの。特に、その安定化した電力を小中規模系統(MW以下クラス)のベース電源として利用するもの。

(b) ディーゼル発電機としては、低負荷対応ディーゼル発電機(例えば、最低負荷 10%での連続運転が可能なバルチラ社製ディーゼル発電機)を採用し、太陽電池モジュールは、CIS太陽電池(例えば、高温地域でも発電効率の低下が少ないソーラーフロンティア製太陽電

発電量 ディーゼル

PV 方法論に基づき採用する

CO2排出係数を用いて計算 CO2 排出量

発電量 ディーゼル

PV 方法論に基づき採用する

CO2排出係数を用いて計算

ディーゼル (効率向上の 効果を勘案) CO2 排出量

リファレンス プロジェクト リファレンス プロジェクト

プロジェクト リファレンス プロジェクト リファレンス

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池モジュール)を採用したもの。

(c) ディーゼル発電機の出力制御部に、(a)で説明した日本で開発したソフトウェア技術を適用する事により、電力変動緩和のための蓄電池の使用容量を最低限にするもの(理想的には蓄電池を使わない)。

((((3)))) 算定方法算定方法算定方法算定方法オプションオプションオプションオプション リファレンス排出量の計算に用いるグリッドの CO2排出係数については、グリッドの規模によって設定方法を異なるものとする。 ここでは、①接続するグリッドの規模、②デフォルト値の利用、の 2つの基準により、算定方法オプションを選択する。 デフォルト値を利用する場合には、CO2削減量の計算結果は保守的に小さいものとなる。 算定方法オプションの選択フローを図図図図 4444に示す。

送電先

グリッド規模

発電所単位の詳細データ

発電所単位の詳細データ

計算オプション

1-1 計算オプション

1-2

計算オプション

2-3

化石燃料として液体燃料のみ利用

計算オプション

2-1 計算オプション

2-2

グリッド 接続

オフ グリッド

大規模 (PLN の大規模 グリッドが存在)

小規模

詳細データを利用する

詳細データが 存在しない

No

Yes

* 太字太字太字太字:::: 本方法論本方法論本方法論本方法論のののの主主主主なななな適用対象適用対象適用対象適用対象

計算オプション

3-1

詳細データを利用しない 詳細データを利用する

CDM or BOCM

BOCM

small scale CDM

BOCM

BOCM

BOCM

図 4 算定方法オプションの選択フロー

表表表表 4444 各算定方法各算定方法各算定方法各算定方法オプションにおいてオプションにおいてオプションにおいてオプションにおいて利用利用利用利用するするするする COCOCOCO2222 排出係数排出係数排出係数排出係数 算定方法 オプション CO2 排出係数 種類

本事業(ニアス島) での採用

1-1 排出係数算定ツール(CDM)に準拠してCM(Combined Margin)を計算

計算 該当しない

1-2 イ ン ド ネ シ ア 政 府 公 表 の 最 新 の CM(Combined Margin)を利用

デフォルト値 該当しない

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2-1 排出係数算定ツール(CDM)に準拠してCM(Combined Margin)を計算

計算 該当しない

2-2 グリッド全体で燃料別に加重平均を行った排出係数を計算

計算 該当しない 参考値: 0.83 t-CO2/MWh

2-3 技術タイプに基づく固定値を利用 デフォルト値 0.80 t-CO2/MWh

3-1 上記 2-2 または 2-3 に準拠 計算またはデフォルト値

該当しない

(4)算定算定算定算定のためののためののためののための情報情報情報情報・データ・データ・データ・データ 本方法論においては、以下のデータのモニタリングが必要である。

EGPJ,y y 年において、プロジェクト活動の実施の結果として発電され、グリッドまたは直接需要家に供給されるネットの発電量 [MWh/y]

EGDJ,y y 年において、プロジェクト活動の実施の結果としてディーゼルエンジンにより発電され、グリッドまたは直接需要家に供給されるネットの発電量 [MWh/y]

FCD y y 年におけるプロジェクト活動でのディーゼルエンジンによる化石燃料の消費量 [t/y]

NCV プロジェクト活動でのディーゼルエンジンに用いる化石燃料の発熱量 [TJ/kg]

EF プロジェクト活動でのディーゼルエンジンに用いる化石燃料の排出係数

[kgCO2/TJ] これらのデータを表表表表 5555に整理した。 表表表表 5555 モニタリングモニタリングモニタリングモニタリング項目項目項目項目 情報・データ 変数 整備状況 備考 ハイブリッドシステムに よ る 年 間 発 電 量(kWh)

EGPJ,y 装置建設時に系統への送電メーターを設置 日々の送電量管理を実施

モニタリングは逐次実施可能なシステムとする。買電側の PLN との検頻度は毎月(月累積値、伝票とクロスチェック) 太陽光発電システムによる年間発電量(kWh) (※EGPJ,yの内数)

EGDJ,y 装置建設時に系統への送電メーターを設置 日々の送電量管理を実施

モニタリングは逐次実施可能なシステムとする。買電側の PLN との検頻度は毎月(月累積値、伝票とクロスチェック) ディーゼルエンジンによる化石燃料の消費量 (ton)

FCD y 燃料供給系に流量計を設置 日々の燃料流量管理を実施

モニタリングはリアルタイムで実施可能なシステムとする。 ディーゼルエンジンに用いる化石燃料の排出係数(kgCO2/TJ)

EF 「2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas

Inventories」におけるデフォルト値を利用 同ガイドラインの改訂等に応じて随時見直し

ディーゼルエンジンに用いる化石燃料の発熱量(TJ/kg)

NCV 「2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas

Inventories」におけるデフォルト値を利用 同ガイドラインの改訂等に応じて随時見直し

リーケッジについて検討し、新規設置時の設備運搬に関して、ディーゼル発電設備と太陽光発電設備の船舶による輸送に伴う CO2排出量を概算した。その結果 1MW のハイブリッド発電システムでおよそ 90t-CO2と算出できる。従って、4MW では、保守的に考えて、

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4×88.9=355.6t-CO2

20 年間での CO2削減量 144,860t-CO2に対し輸送に伴う CO2排出量は約 0.25%程度であった。従って、十分に無視できるレベルである。

((((5))))デフォルトデフォルトデフォルトデフォルト値値値値のののの設定設定設定設定

CO2排出係数について、デフォルト値を設定する。対応する計算方法オプションは表表表表 6666の通りである。また、原則として、CDM と比較して、デフォルト値を利用するなど開発者にとって負荷の小さい方法を採る場合には、GHG 削減量の計算は保守的でなければならない。すなわち、この場合、リファレンスシナリオの CO2 排出係数を小さく設定すべきということになる。表表表表 7777に、デフォルト値を利用する場合に保守的となることを示す。

表表表表 6666 デフォルトデフォルトデフォルトデフォルト値値値値をををを設定設定設定設定するするするする計算計算計算計算オプションオプションオプションオプション 算定方法 内容 算定方法 1-2 (大規模グリッド)

エネルギー鉱物資源省(ESDM)およびインドネシア国家気候変動評議会(DNPI)が、定期的に CM(Combined Margin)を作成・公表している。政府はこれらを CDM での利用のために提供している。JCM においても利用が適切である。 算定方法 2-3 (小規模グリッド)

グリッド接続の全ての発電設備が液体化石燃料(fuel oil、diesel oil)を用いている場合には、CO2排出係数としてデフォルト値を用いる。本調査の対象サイトであるニアス島も、発電設備がすべてディーゼル発電機のみであり、24 時間連続給電されているミニグリッドの排出係数(0.8 t-CO2/MWh)を適用する事が妥当である。

表表表表 7777 デフォルトデフォルトデフォルトデフォルト値値値値のののの利用利用利用利用とととと保守性保守性保守性保守性のトレードオフのトレードオフのトレードオフのトレードオフ 算定方法 オプション 説明

1-2 � インドネシア政府が公表する大規模グリッドの CO2排出係数は、CDMにおける排出係数計算ツールをもとにした CM(Combined Margin)である。

� 計算の基になるデータや詳細な計算方法は未定ながら、OM(Operating Margin)と BM(Build Margin)とが 50%ずつの重み付けがなされていると考えられる。

� しかし、排出係数計算ツールにおいては、風力発電および太陽光発電の場合に、OM(Operating Margin)の重み付けが 75%、BM(Build Margin)の重み付けが 25%と定められている。

� 従って、OMが BMより大きいグリッドにおいては、本 CMは排出係数計算ツールを厳密に適用した場合に比べて小さいものとなり、保守的とみなすことができる。

� 各大規模グリッドにおいて、インドネシア政府が CMのみならず OM、BMを併せて公表すれば、さらなる保守性を担保することができる。 ここで

EF y = EF OM , y × wOM + EF BM , y ×wBM

但し

EF y CM:Combined Margin(y年)

EF OM , y OM:Operating Margin(y年)

EF BM , y BM:Build Margin(y年)

wOM OMの重み係数(-)

wBM BMの重み係数(-)

2-3 � デフォルト値は、近代的な水準の値であるとされており、保守的とみなすことができる。

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算定方法 オプション 説明

� 実際に、本調査対象サイトのニアス島のグリッドでは、最新のデータに基づく計算の結果、グリッド全体で燃料別に加重平均を行った排出係数が 0.83

t-CO2/MWhであるのに対し、適用するデフォルト値は 0.80 t-CO2/MWhであり、保守的である。

((((6))))リファレンスシナリオリファレンスシナリオリファレンスシナリオリファレンスシナリオ及及及及びびびびバウンダリーのバウンダリーのバウンダリーのバウンダリーの設定設定設定設定 ニアス島において、当面必要となる供給能力増強 15MW に対し、現地調査により得られた計画は表表表表 8888の通りである。現在は 100%の供給をディーゼルエンジンがまかなっているが、これに加え、追加的に安価な石炭を利用する計画が立てられている。また、老朽化したディーゼルエンジンのリプレースや、太陽光発電の計画も並存する。 従って、ニアス島のリファレンスシナリオ(小規模グリッド接続)としては、当面は 100%ディーゼルエンジン発電の継続、近い将来に石炭火力、石炭ガス化、ディーゼルエンジン(基本的に新設は認められないためリプレースのみ)による供給を行うものと考えられる。 プロジェクト実施前の CO2排出係数の算定にあたっては、100%ディーゼルエンジン発電として算定方法オプション 2-2(グリッドの加重平均)または 2-3(デフォルト値)を採用する。また、ディーゼル燃料以外の化石燃料を用いるようになれば、プロジェクト実施後の計算として、算定方法オプション 2-2(グリッドの加重平均)を利用する。

表表表表 8888 ニアスニアスニアスニアス島島島島におけるにおけるにおけるにおける今後今後今後今後のののの電源開発計画電源開発計画電源開発計画電源開発計画

No. 計画の内容 進捗状況 情報源 種類 規模 その他

1 石炭火力 7MW x 3 IPP、グヌンシトリ、ベース電源 2015年予定 PLNメダン事務所

2 石炭ガス化 4MW x 2 レンタル、ニアス北地区、ピーク電源

2013年予定 PLNメダン事務所

3 ディーゼルエンジン

不明 リプレース 不明 PLNメダン事務所

4 太陽光発電 不明 家庭用オフグリッド電源が中心 2015年まで PLNメダン事務所

((((7))))モニタリングモニタリングモニタリングモニタリング手法手法手法手法 モニタリングの項目は、CDM 方法論 ACM0002 及び、AMS-I.Dに準じ、これらの算出に関わる情報、データのモニタリングが必要である。

①太陽光発電システムからの発電量(MWh) ハイブリッドシステムの中で、太陽光発電設備から創出された発電量をディーゼル発電機から創出された電力と区別し、電力取引メーターにて継続的にモニタリングを行う。この電力取引メーターは SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)と呼ばれる監視制御システムにて常時モニタリングを行うことが可能である。

②ディーゼル発電機からの発電量(MWh) ディーゼル発電機からの発電量も同様に、SCADAを使用し常時モニタリングを行う。

③リファレンス排出量を算出する為の太陽光発電システムからの発電量 ニアス島の小規模系統に実際に送電された電力量(A 点:電力取引メーター)の値から、ディーゼルエンジンによる発電量(B)を差し引いた電力量を、太陽光発電システムからの発電

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量(F)とみなす。

④グリッド排出係数

GHG 排出量の定量化を図る為には、ニアス島の発電設備の構成によりデフォルト化されたグリッドの排出係数を用いる事の可否が決まる。 従って、発電設備の新設、更新計画を半年毎程度ごとにモニタリングする事が必要である。また、発電所が新設、更新された際には、発電所ごとの詳細データを用いたCMを計算する事が可能か確認する。または、エネルギー鉱物資源省(ESDM)が排出係数の公表を行うか否かも確認する事が必要である。

➄ディーゼルエンジンの燃料消費量 ディーゼルエンジンに設置された燃料流量計のデータを監視制御システムへ入力し、常時モニタリングする。

((((8)))) 温室効果温室効果温室効果温室効果ガスガスガスガス排出量及排出量及排出量及排出量及びびびび削減量削減量削減量削減量 ここでは、①太陽光発電システムによる CO2削減量の計算を行う。②ディーゼル発電による CO2削減は、本システムによる排出係数(tCO2/MWh)およびリファレンス排出係数(0.80 tCO2/MWh)との差分により計算される。

リファレンス 排出量

REy = EGPJ,y × EF y

REy リファレンス排出量(tCO2) EGPJ,y y年のプロジェクト活動によるグリッドへの正味供給電力量(MWh) EF y グリッドの CO2排出係数(tCO2/MWh) プロジェクト 排出量

PEy = PEFF,y

PEFF,y y年の化石燃料(ディーゼル燃料)の燃焼によるプロジェクト排出量(tCO2) EFD y y年のバルチラ社のディーゼル発電機の排出係数(tCO2/MWh) リーケッジ Ly =0

リファレンス排出量

REy = EGPJ,y × EF y=35,040 × 0.8=28,032 tCO2/y

EGPJ,y=4MW × 24h/d × 365d/y = 35,040MWh

EF y=0.8 tCO2/MWh (デフォルト値使用) 太陽光発電量

4MW * 24h/d*365d/y *15.39%注)(Gross PLF) = 5,392MWh (ニアス島の太陽光発電設備の設備稼働率を 15.39%と想定) プロジェクト排出量

EGDJ,y = EGPJ,y-太陽光発電量=35,040-(5,392-50)= 29,698MWh (ハイブリッド発電所内の電力消費量を 50MWh/year と想定) ディーゼル 1MWhの発電量にたいして 必要な燃料発熱量=3,600(MJ)/0.378=9,523MJ 必要な燃料量 =9,523MJ/42.7(MJ/kg) /0.86(kg/l)/1,000=0.259kl 従って

EFD y = 0.259(kl) × 2.71(tCO2/kl)=0.70 tCO2/MWh

(50%負荷でディーゼルを運転するとし、燃費 37.8%とする(補機分を含め))

PEy = PEFF,y=EGDJ,y × EFD y=29,698×0.7=20789 tCO2/y

リーケッジ排出量

Ly =0 CO2削減量

ERy=REy – PEy-Ly=28,032 tCO2/y-20,789-0=7,243 tCO2/y

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□太陽電池による CO2削減量

=太陽光発電による発電量× EF y=5,340×0.8=4,272 tCO2/y 太陽光発電による発電量

=4MW × 24h/d×365d/y ×15.39%(Gross PLF)-50MWh= 5,340MWh (ハイブリッド発電所内の電力消費量を 50MWh/year と想定) (ニアス島の太陽光発電設備の設備稼働率を 15.39%と想定)

□ディーゼルエンジンの交換に伴う CO2排出削減量

=EGDJ,y × (EF y - EFD y)= 29,698*(0.8-0.7)= 2,970 tCO2/y

((((9))))排出削減量排出削減量排出削減量排出削減量のののの第三者検証第三者検証第三者検証第三者検証

モニタリング項目 ・ (4)の項目についてモニタリングを行う。

第三者検証 ・ 第1回現地調査に於いて、ホスト国インドネシアにも DOEの設立準備が進められている事を確認している。 ・ それに加え、ISO認証等を行う機関約 10社が存在し、必要な第三者検証を実施する事が可能である。

((((10))))環境環境環境環境十全性十全性十全性十全性のののの確保確保確保確保 本システムの導入による悪影響と懸念される事項について、これらを回避する方法を調査した。 太陽光パネルおよびディーゼルエンジンの設置により、占有することとなる広大な土地開発の影響 ・ 整地に伴う地崩れが発生しないよう十分な排水機能を持った土木工事を実施する。 ・ 森林を開拓する場合はパネル下地面に芝生等をしき、環境保全や局所的気温上昇を避ける努力をする。 ・ 保護すべき動物が生息する場合には影響を与えないよう食料となる植物を残したり、施設内に動物の通り抜けられる通路を設けたり、影響が最小限となる努力をする。

本システムのディーゼルエンジンの燃料として、バイオ燃料を使用する場合の影響(ジャトロファ、パーム油、廃食油等) ・ バイオ燃料の使用にあたっては食料との競合をさける。具体的には品質の低い安価な原料や廃食油等を優先的に使用する。 ・ バイオ燃料栽培プランテーション開発は環境保全のためホスト国方針を厳守して開発に当たる。

その他 ・ 事業の普及に伴うニアス島内の電力供給能力増強および電化地域の拡大の影響については、ホスト国政府と十分に協議する必要がある。

((((11))))利害関係者利害関係者利害関係者利害関係者のコメントのコメントのコメントのコメント 当該事業の実施に関する利害関係者は、関係政府機関(エネルギー鉱物資源省、環境省など)、電力公社(PLN 本部、PLN 北スマトラ、PLN ニアス)、地域住民(ニアス島サイト建設予定地の地域関係者)などである。いずれも当該事業に期待するコメントであった。 特に北ニアス地区郡長は、発電所の建設を歓迎しており、発電事業そのものにも関心が高い。面談時には、地区としての電化促進のため積極的に協力をするとの申し入れを受けた。また、PLNに対しても当該事業を認可されるよう支援すると表明された。

((((12))))事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの実施体制実施体制実施体制実施体制 事業・活動の実施体制を図図図図 5に示す。 インドネシア政府では、大量の太陽光発電所導入計画があるが、進捗状況は芳しくない。その理由のひとつが、特に島嶼部における系統の脆弱性と推察される。 我々がニアス島で実施した電源計測の結果から見ると、特に朝夕の電圧変動が激しく、現状で

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は 1MWクラスの太陽光発電所単独での系統連系は困難と判断される。 そこで、日本の高度な制御技術と、低負荷対応ディーゼルエンジン、太陽光パネルをハイブリッドシステムとしてセット納入し、発電所出口における系統に対する外乱要因を排除し、自然エネルギー拡張と系統安定化の相反する目的を両立させる。 しかし、単純なディーゼル発電に比べて建設費が割高になる為、当該システムと仕組みの拡販においては、日本政府による設備費の一部拠出または(および)クレジット購入を伴う仕組みが不可欠である。 以上の実施体制により、1号案件につづく当該システムの継続納入、本邦技術の拡販が図れる。

図図図図 5555 事業事業事業事業・・・・活動活動活動活動のののの実施体制実施体制実施体制実施体制

((((13))))資金計画資金計画資金計画資金計画 ここでは、4MWのハイブリッド発電システムを想定しキャッシュフローを検討した。 表表表表 9999のように、4MW出力設備への初期投資コスト 15億円のうち、30%(4.5億円)を自己資金で拠出し、その他部分について補助金の使用可能割合に応じて 3 ケースに分けて想定。それぞれの設備耐久期間である 20年のキャッシュフローを分析した。

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表表表表 9999 ファイナンスのファイナンスのファイナンスのファイナンスの想定想定想定想定パターンパターンパターンパターン ケース 自己資金 日本政府系 補助金

銀行借入 計 ケース 1 30% 0% 70% 100% ケース 2 30% 33% 37% 100% ケース 3 30% 50% 20% 100%

・ ケース 1において、日本政府系機関からの補助金は想定せず、自己資金の拠出分以外は全て銀行借入によって設備投資資金を賄うこととするが、CO2削減量に応じて排出権売却収入を得られるものとしてキャッシュフローを計算している。 ・ ケース 2およびケース 3においては、日本政府系機関からの補助金をそれぞれ 33%(初期投資金額の 3分の 1)、50%(同じく 2分の 1)の割合で利用する場合を想定している。この場合、CO2削減量に応じて生じる排出権は無償で日本側に譲渡されるものとし、売却収入は考慮しない。

なお、売電収入は PVによる発電部分については、外国製品を対象とした FIT 買取価格であるIDR2500/kWhを、ディーゼルによる発電部分については、実勢小売価格は IDR700/kWhであるが、政府による政策的補助金を考慮した IDR2000/kWhを適用した。

キャッシュフロー分析により、計算された IRRは表表表表 11110000のとおりとなった。

表表表表 11110000 IRR のののの計算結果計算結果計算結果計算結果

ケース 1 ケース 2 ケース 3

IRR 5.21% 12.28% 18.61%

・ 日本政府による補助金がないケース 1においては、借入返済と金利負担によって収益性は20年間の投資に対し、IRR5.21%となっている。安定的な電力供給力を確保できるという観点において、十分に投資対象として検討できる水準であると言える。 ・ ケース 2、ケース 3では IRRが 10%を超え、投資者にとって十分な採算性を確保できる魅力的なプロジェクトといえる。 ・ ディーゼル燃料価格、売電価格の変動によるキャッシュフローへの影響が大きいため、実際の投資にあたってはそれらの変動リスクを最小化するよう、長期的なリスク回避方法を検討することが望ましい。

((((14))))日本製技術日本製技術日本製技術日本製技術のののの導入促進策導入促進策導入促進策導入促進策 「離島における風力・太陽光発電設備の連系について」(九州電力)によれば、離島おける風力・太陽光発電の許容出力変動幅は、系統周波数面で許容できる瞬時の出力変動幅として定義され、離島の日負荷最小需要に対し 10%以下である。 本システムでは、日本で開発したソフトウェア技術を適用する事により太陽光発電電力を安定化するとともに、それをベース電源として使用することによりディーゼル発電機の発電能力と同等程度の太陽電池を導入可能とする。 ディーゼル発電機としては、バルチラ社(フィンランド)の低負荷対応ディーゼル発電機を想定している。この発電機は、連続運転可能な負荷帯が 10%(A 重油使用)~100%=90%と非常に広く、太陽電池を効率的に導入できる点が特長である。 また、本システムで採用する CIS 太陽電池モジュールには、インドネシアの様な高温地域でも発電効率の低下が少ない特長があり、地域の特性に合った太陽電池として普及が期待される。

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((((15))))今後今後今後今後のののの見込見込見込見込みとみとみとみと課題課題課題課題

2013年2月頃に、ニアス島地方政府およびPLNからのサポートレターを入手予定となっており、現地サイドからの設備導入要望は強くなっている。 設備の建設期間には、約 1年 6ヵ月を見込んでおり、事業化の際にはこれを考慮する必要がある。また、ディーゼルエンジンの燃料として通常のディーゼル油かバイオ燃料を用いるのかを決めたうえで、早期に事業の実施体制を確立することが課題として挙げられる。

5.5.5.5. 持続可能持続可能持続可能持続可能なななな開発開発開発開発へのへのへのへの貢献貢献貢献貢献にににに関関関関するするするする調査結果調査結果調査結果調査結果 ホスト国の持続可能な開発に貢献する事項としては、以下の項目があげられる。 ・ ニアス島の電力供給能力の拡充 ・ 電力品質、信頼性の向上による国内外企業のニアス島への工場誘致 ・ バイオ燃料を使用によるニアス島でのプランテーション雇用の創出 本システムで用いるディーゼルエンジンには、バイオ燃料を使用できるというメリットがあるため、ニアス島でのプランテーションにおいて雇用の創出も期待されるため有望であるとのコメントが各所で得られた。


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