鋳 造 株式会社木村鋳造所 -...
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わ が 社 の 素 形 材 技 術 最 前 線
鋳 造
SOKEIZAI Vol.55(2014)No.1
株式会社木村鋳造所
高融点材質用砂鋳型の3Dプリント技術3Dプリント技術で鋳鉄・鋳鋼品の超短期製造を実現
1.開発の目的
世界規模の展開を見せている3Dプリンター技術であるが、当然のことながら鋳造技術においてもその利点を活かした製法の確立が強く望まれていた。とくに、鋳鉄や鋳鋼に代表される高融点材質に対応する砂型の造形技術が求められていた。そこで当社では、3Dプリンター技術の応用でこれらの材質における品質や納期の点が飛躍的に改善できるのではないかと考えた。試行錯誤を経たのち、当社所有のインクジェット式砂積層タイプの3Dプリンター(写真 1)に低熱膨張人工砂を適用した積層造形技術を開発した。
2.開発の内容
既存のインクジェット式砂積層タイプの 3Dプリンターでは、使用可能な砂種が天然珪砂に限られていた。ところが、造形した鋳型を鋳鉄や鋳鋼のような高融点材質に適用すると、鋳物にベーニング欠陥(写真 2)が発生するという不可避的な問題が存在していた。ベーニング欠陥は一般的に天然珪砂の熱膨張に起因すると言われており(図1)、複雑形状鋳物の深部に発生すると後処置が事実上不可能となる(写真 3(左))。天然珪砂(α -石英)は 570℃近辺で相転移が起こり、これに伴う大きな体積膨張が鋳型自身を割れさせてしまう。その割れ目に溶湯が差し込むとベーニング欠陥として現れる。これを
抑制するために、低熱膨張性を示す人工砂と天然珪砂を混合して使用することを試みた。インクジェット式砂積層タイプの3Dプリンターにおいては、予め硬化剤と混練した砂を約0.3mmの均一な層として敷設することが必要となる。そのためには、硬
化剤と混練した状態で一定以上の流動性を持たなければならない。そこで、硬化剤の添加量や砂の混合比率、粒度等を変えた試験を実施して砂の流動性を評価した。次に、最適条件にて積層造形した鋳型へ鋳造後、完成した鋳造品の内部品質の確認と鋳型の熱膨張に関する条件について調査した。鋳造品を切断検証した結果、ベーニング欠陥の発生は一切認められなかった(図 4(右))。また、インクジェット式砂積層タイプの3Dプリンターで高融点材質向けの鋳型を積層する条件を明確にした。
3.開発の成果
ベーニング欠陥を抑制できたことに加えて、3Dプリンターの本来の特性である製品設計の制限解除や超短納期製造という点も十分に活かすことが可能となった。これにより、従来の鋳造技術では対応しにくかった高融点材質の鋳物(写真 4、写真 5)を高品質かつ超短納期で鋳造できるようになった。さらには、当社既存のフルモールド技術や鋳造 CAEとの複合技術も構築することができた。現在、この技術を常用して国内外の鋳鉄や鋳鋼製品の製造・販売を展開している。最短納期については、ソリッドデータが到着してから鋳物を発送するまでを4日間で行った実績がある(表1)。
写真 1 インクジェット式砂積層 タイプの 3Dプリンター
写真 2 ベーニング欠陥
図 1 天然珪砂と人工砂の熱膨張比較
写真 3 鋳造品の内部品質、天然珪砂の鋳型使用時(左)珪砂-人工砂の混合鋳型使用時(右)
写真 4 鋳鋼インペラーの砂型 写真 5 鋳鋼インペラー
表 1 最短納期製造の実績
初日 2日目 3日目 4日目ソリッドデータ到着
3D造型砂型クリーニング 解枠
鋳造CAE 塗型 仕上げ砂型設計 鋳造 鋳物発送
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