電波をつかまえよう ゲルマニウムダイオードラジオ1 電波をつかまえよう...
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(科学工作6)
電波をつかまえよう
<目 次>
1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.材料集めのための情報やヒント ・・・・・・・・・1
2-1.キット
2-2.材料
3.カリキュラム手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3-1.活動プログラムの流れ(例)
3-2.準備
3-3.工作と実験
4.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
5.科学する心を育てるための具体的なヒント ・・・・9
6.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル
・・・・10
7.この教材を行う(用いる)ことのできる活動団体の
経験年数・・・・10
8.関連項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
8-1.学習指導要領との関連
8-2.活動総覧(活動マップ)
8-3.教材系統図(カリキュラムマップ)
8-4.キーワード
9.補足資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
9-1.補足説明
9-2.導入のための説明図の例
9-3.参考文献等
2006年(平成18年)3月31日 「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会
ゲルマニウムダイオードラジオ
本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った
科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます
ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。
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電波をつかまえよう
- ゲルマニウムダイオードラジオ -
1. ねらい<目的と概要>
電波(電磁波という呼び名ほうが正確ですが、ここでは電波と呼ぶことにします)による通信が
宇宙における通信の主役です。AM放送を受信することのできる簡単なゲルマニウムラジオを作り、
実際に受信して楽しみます。聞こえる音を大きくするために、受信した信号を増幅する回路にも挑
戦します。(増幅回路の工作は除いても良い)
2.材料集めのための情報やヒント
(キットの情報と、キットの情報とは別にゼロから始められるための情報) 2-1.キット
一般にはゲルマニウムラジオキットとして販売されています。例えば「ゲルマラジオキット
(秋月電子通商 http://akizukidenshi.com/ 約 400 円)」があります。(下記の電子部品のなか
のゲルマニウムダイオードやクリスタルイヤホンなどはキットを買って必要な部品を取り出した
方が安くつく場合があります。) 2-2.材料 1)電気部品類 (子供一人あたり)
① ゲルマニウムダイオード(IN60)1個 ② クリスタルイヤホン 1個 ③ 抵抗 各1個
10kΩ,22kΩ,51kΩ,100kΩ,3kΩ,220kΩ, ④ 電解コンデンサ (10μF) 2個 ⑤ 蓑虫クリップ 10 個 ⑥ リード線 25cm×4=1m ⑦ ポリウレタン銅線 10m ⑧ トランジスタ(2SC1815) 1個 ⑨ 電池ケース(1.5V 単3乾電池2本型)1個 ⑩ 電池ケース用(または 006P 電池用)リード線付きスナップ ⑪ 乾電池(1.5V 単3) 2個
これらの部品は電子部品販売店で売っているが通信販売もあります。 <例>:秋月電子通商 http://akizukidenshi.com/ 千石電商 http://www.sengoku.co.jp/ 2)文房具類(子供一人あたり)
① 紙コップ(直径約6cm,スーパーなどにおいてある普通のもの)(3個) ② 両面テープ ③ セロテープ ④ 紙ヤスリ(#100~#150) ⑤ アルミホイル(家庭用のもので良い。A4サイズに切る)(2枚)
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3)リーダー用に用意するもの ① はさみ,セロテープ,両面テープ ② 電卓 ③ ハンダ 子供一人あたり約1m
(参考:リングハンダという比較的安全で便利なハンダもあります。 例:ユニオン技研 http://www.uniongiken.co.jp/j_top.htm)
④ ハンダコテ(リーダーが使用する) ⑤ 道具箱(ラジオペンチ、ニッパ、ピンセットなど) ⑥ アンテナ用のリード線(75mを1本,10mくらいを1本)
端は被覆をはぎ、製作された回路のアンテナ部から出ている蓑虫クリップで捕まえ
られるように、リード線を出しておくと良い。 [あると良いもの] ⑦ マルチテスタ(静電容量まではかれるものがあると便利) ⑧ オシロスコープ(シンクロスコープ) ⑨ 発振器(製作したラジオの動作チェック)
1kHz を発振し、バイアス(乾電池 1.5V で良い)をかけてラジオのアンテナ部(コ
イルの両端)に入力したときイヤホンから音が聞こえればOK。
3.カリキュラム手順
3-1.活動プログラムの流れ(例) 1)導入 ⅰ.ほとんどなにもない宇宙で信号が伝えられる手段は「電波や光」であることを導入する。
(9-2.補足説明図参照) ⅱ.電波って何?(ここで導入実験をはさめると良い)
導入演示実験例(電磁波ではなくても電気の力が空間を伝わることがわかる実験) ①テスラコイルなど(交流高電界)に蛍光管を近づけて光らせる実験 ②人体に誘導している電源電圧をオシロスコープで見る実験
ⅲ.ゲルマニウムラジオの説明 2)工作
ⅰ.ゲルマニウムラジオの製作 ⅱ.増幅回路の製作
3)実験 ⅰ.外に出て AM 電波を受信する(あらかじめアンテナ線を張っておく) ⅱ.雨の場合には屋内にて実験
4)くふうの時間(好きなくふうをする時間を設ける) 5)まとめ
3-2.準備 1)近くのAM放送局の周波数と方向を調べておくこと。周波数fから波長λを算出する。(9
-1.補足説明参照) 2)アンテナ(リード線、波長の1/4程度、仮に1MHz であるとすると75m)を前もって張
っておくこと。(通常はAM波は送信アンテナの立ち方から鉛直方向の偏波となっているの
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で垂直方向に張る方が良いが、そのような場所はなかなかないので水平に張っても良い。こ
の場合放送局の方向に対して垂直にリード線を配置して地面に対して少し斜めに張るように
すると、良く電波を受けることができる。)リード線の端は子供たちの作った回路につなげ
られるように、被覆をはいで、枝分かれさせておくこと。(なお、回路部分をくふうすれば
アンテナ線を短くすることができるが、キットなどを買うと仕組みが研究できる。) 3)上記のリード線を雨の時のために屋内にも張っておくこと(鉄筋の場所をなるべく避ける)。 4)ハンダ付けはリーダーが行なうが、希望者がいる場合にどうするか決定しておく。 5)安全対策をしっかり行なっておくこと。バンドエイドなどを用意する。ハンダのにおいで気
分が悪くなる場合もあるので、換気に注意する。 3-3.工作と実験 1)完成図および部品の準備・確認
ⅰ.図3-3に完成図を示す。アンテナのリード線はあらかじめ張ってある長いアンテナ線に
つなぎます。(もう一方のリード線を接地しても良い。)あらかじめ近くのAM放送局の
周波数を確認しておくこと。この値からコイルの巻数を割り出します。 ⅱ.部品は図3-3.部品(部材)の確認の通り。 ⅲ.両端に蓑虫クリップをつけたリード線を4本用意します。また、クリスタルイヤホンのリ
ード線にも蓑虫クリップをつけます。また、図のように抵抗(10kΩ~100kΩ)の端とゲ
ルマニウムダイオードの端をつけた直列部品をつくります。 これらの部品をつくるためにはハンダ付けが必要となるので、リーダーがあらかじめハ
ンダ付けをして用意しておきます。(特に小学校低学年にはリーダーがあらかじめハンダ
付けしておいたものを用意した方が良い。)リーダーの判断で子供たちにさせる場合には
やけどに注意すること。比較的安全容易にハンダ付けできる便利なリングハンダというも
のもあります(2.材料集めの情報やヒント参照)。 2)コイル作り(図3-3-2参照)
ポリウレタン銅線(またはエナメル線)を用いてコイルをつくります。巻数Nは、ラジオ
局の周波数fが1MHz である場合には約50回巻にして下さい。仮に周波数 f’が 500kHzである場合には、巻数 N’は約 100 回巻になります。すなわち、 N’=(f/f’)N です。詳しくは9-1.補足説明を参照してください。 コイルはなるべく密に巻いた方が良いです。両端は紙ヤスリでみがいて電気が通るように
します。実際の活動の前に、あらかじめ巻き方をいろいろとためして、子供たちが巻きやす
い巻き方や指導法をくふうして下さい。子供の特性の違いで巻き方にも違いが生じます。 3)コンデンサ(キャパシタ)作り(図3-3-3参照) ⅰ.紙コップにアルミホイルを貼ってコンデンサを作ります。アルミホイルを貼った紙コップ
2個を重ねることによってコンデンサになります。アルミホイルは全面に貼らずに貼らな
い面積を残しておきます。2つの紙コップを重ねて回したり少し引き抜いたりすることに
よってコンデンサの静電容量(同じ電圧に対して電気をためられる量)が変化します。こ
れによりラジオ局の周波数に同調をとります。 ⅱ.一度薄い紙で巻いたのち、その型紙(少し扇型になる)をとっておいて、その形に従って
アルミホイルをはさみで切るときれいに巻くことができます。 4)ラジオ作り(図3-3-4参照)(増幅回路なし)
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ⅰ.図のように、コンデンサの導線とコイルの導線およびあらかじめ作っておいたダイオード
と抵抗の直列回路部品の端を図のように結びつけセロテープでとめます(もちろんハンダ
付けしても良い)。 ⅱ.図のように、イヤホンを抵抗の両端につけ、リード線(アンテナにつなぐためのもの)を
コイルとダイオードとのあいだにつけます。イヤホンはクリスタルイヤホンにして下さい。
コンデンサの役目もしています。クリスタルイヤホンでない場合には、イヤホンに並列に
コンデンサをつけて下さい。 ⅲ.増幅回路はついていませんが、ラジオとしてはこれで完成です。電池は要りません。この
ままで、アンテナ側のリード線をあらかじめ張っておいた長いリード線につなげば、ラジ
オの音が聞こえます。(電池がなくても聞こえるというのは、知識のある人にとっては感
動体験ですが、低学年の子供たちにとってはそれほどでもないようです。むしろ、このゲ
ルマニウムダイオードラジオの小さな音を聞かせておいて、次に増幅回路をつないだ際に
とても大きくはっきり聞こえることに感動と自分の作ったラジオへの満足を表すことが多
いですが、今後の研究課題です。) 5)増幅回路作り(図3-3-5参照)
ⅰ.トランジスタ1つを用いた増幅回路(音を大きくするための回路)を作ります。 ⅱ.図を参考にしてあらかじめリーダーが作っておきます。ハンダ付けを子供たちにさせて作
らせる場合には、トランジスタについている金属線は長さが短いのでハンダ付けの際にト
ランジスタが熱くなりすぎないように気をつけて下さい。 ⅲ.増幅回路はユニバーサルボード(電子部品のさせる小さい穴が規則的に並んだ板)の上で
作っても良いし、空中配線で作って紙コップの上にうまく配置しても良いです(両面テー
プでとめる)。 6)実験 ⅰ.あらかじめ張っておいたアンテナ(長いリード線)に蓑虫クリップのついたリード線でつ
なぎます。あらかじめ被覆を剥いでおき、そこから何本か導線をつけておくと複数の子供に
対応できて便利ですが、たくさんつなぐほど音は小さくなります。 ⅱ.コンデンサの紙コップの2つをお互いに少し回したり、少し引き抜いてすきまを作ったり
することによって音の一番大きく聞こえるところを見つけます。これを「同調をとる」と言
います。コンデンサの静電容量を変化させて同調をとっています。 ⅲ.まずは、増幅回路なしで実験をして、とても小さいけれど音が聞こえることを確認します。 ⅳ.次に増幅回路をつないで実験します。 ⅴ.手でアンテナに触ると音の大きさが変わります(人間のからだはコンデンサや導線の役割
をします)。また、コイルの巻き方や巻数を変えることもできます。さまざまのくふうが考
えられますので、いろいろとためしてみて下さい。
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図3-3 ラジオ完成図と部品図
50
回
巻
電波(電磁波)
アンテナ
AMラジオ
中身は
アンテナ
←約6cm→
リード線
ラジオ局
コンデンサ
100~200μF
ゲルマニウムダイオード
1N60
抵抗
10~100kΩ
クリスタル
イヤホン コイル
【 完成図 】
または
リード線 ラジオ局の周波数が
約1MHzの場合
【 部品(部材)の確認 】
紙コップ×3 ポリウレタン銅線 イヤホン ダイオード+抵抗 100kΩ
10m×1
リード線(アンテナ用)×4 紙ヤスリ(#100~150) アルミホイル (増幅回路部分との接続用)
●増幅回路用
トランジスタ 2SC1815×1
電解コンデンサ 10μF×2
抵抗 220kΩ×1,3kΩ×1
乾電池ケース×1
乾電池(単3)×2
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図3-3-2) コイル作り
図3-3-3) コンデンサ作り
約10m
(のばしておく、または
使わない紙コップに巻き
つけておく)
(1)ポリウレタン銅線 (2)紙コップに銅線を巻く
(エナメル線)
約10cm残す
← 約6cm →
(3)すきまのないように密に50回巻く
余りは切り取る
(コンデンサに使う)
(4)コイルの端を
紙ヤスリでみがく
約1~1.5cm
(1)アルミホイルを
紙コップの側面の約半
分に貼る(2つとも)
セロテープ
(2)コイルを作るときに
余った銅線を2つに切り
両端を紙ヤスリでみがく
約1~1.5cm
(3)銅線をアルミホイル
に貼る(2つとも)
セロテープで
ピッタリ貼る
(4)2つの紙コップを
重ねるとコンデンサに
なる
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図3-3-4) ラジオ作り
(1)コンデンサの銅線とコイルの
銅線を互いに結び付ける
(2)さらに、ダイオード+抵抗の
両端のリード線を結びつける
(3)セロテープでとめる
(4)イヤホンを抵抗の両端に、
アンテナをコイルとダイ
オードの間につけて完成
ダイオード 抵抗
セロテープ
セロテープ
ダイオード
抵抗 イヤホン
アンテナ
(リード線)
【参考】回路図 アンテナ ダイオード
抵抗
イヤホン
コンデンサ
コイル
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図3-3-5) 増幅回路作り
+ - - + 4.安全対策(子供に危険を予知させる指導を含む)
事前にリーダーだけで実験して、安全対策に万全を期すると同時に、万が一のための措置や準備
を講じておくこと。 工作の基本的な注意事項や実験時の注意事項は、その活動を始める前の落ち着いた状態で参加者
及びリーダー・指導者全員で確認し合うこと。 必要な場合は保護者にも協力を呼びかける。 本テーマに特有のことを中心に安全対策について記す。
4-1.工具の使用について 1)ラジオペンチやニッパなど、電子工作に必要な工具はリーダーが使用する。子供に使用させ
る場合には、どの程度切れるのか、どの程度力がかかるのかを演示すること。特に部品の端
の導線を切り落とす時に金属の小さな線が飛んで行きやすく危険なので、目を近づけたり、
上に向けて切ったりしないようにする。これも前もってリーダーが演示して見せること。 2)はさみなどの工作用道具の使用については、本教材シリーズの「安全管理」“刃物及び工具
類の使い方”を参照のこと。 4-2.ハンダおよびハンダコテについて
1)ハンダはスズと鉛の合金です(無鉛ハンダもあります)。なめたりしてはいけません。また、
ハンダ付けの際にはにおいが出るので、必ず換気をすること。小さい子供がいる場合には特
に注意して下さい。 2)ハンダコテを使用する場合には、やけどや火事などを防止するために、必ずコテ台を用いる
こと。
ラジオの
抵抗の
両端へ
コンデンサ
10μF
220kΩ
3kΩ
コンデンサ
10μF
イヤホン
3V
音が
大きくなる
B
トランジスタ
2SC1815
C
E
コンデンサ
10μF
トランジスタ
2SC1815
E C B
抵抗
220kΩ
抵抗
3kΩ
黄赤赤
赤 黒 だいだい -
+
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4-3.部品に関して 1)導線の端や、部品の端で指をついたりしやすく、切り傷を作りやすいので、その注意を子供
たちにすること。また、金属のゴミが出るので、そのための準備もしておくこと。 4-4.電気回路に関して
1)増幅回路を用いる場合、電池をショート(短絡)しないように気をつけること。実験が終わ
ったら電池ボックスに電池を入れたままにしないこと。知らずにショートしている場合があ
ります。 5.科学する心を育てるための具体的なヒント
5-1.実験における発見 1)紙コップコンデンサで同調をとるためには、紙コップを回したり引き抜いたりする必要があ
りますが、人間のからだはコンデンサや導線の役割をするので、電子部品にさわったりアン
テナにさわったりすると、音の大きさが変化します。 2)地方では、AM 局が NHK の他には近くに1局しかない場合があると思いますが、その方が実
験は簡単です。この場合、局が近いと、実はコイルとコンデンサによる同調回路は必要あり
ません。電波が強い場合には、増幅回路部分のトランジスタのベースエミッタでゲルマニウ
ムダイオードの代わりができるのでゲルマニウムダイオードも必要なくなります。実験に失
敗したりして思わずこのことを発見する子供が出てくることがあります。 3)長いリード線につなぐと良く聞こえますが、長いリード線につながないとなかなか聞き取れ
ません。電子回路のくふうをする必要がありますが、今回製作した回路では、長いリード線
に変わる金属が必要です。 4)室内で電灯などのスイッチを切ったときに、製作したラジオで聞いていると「ぶちっ」と音
が入ることがあります。これはスイッチを切った瞬間にスイッチまたは回路内で大きな電圧
がかかって放電をしているからですが、同様なことが身の回りにあれば音が聞こえるかも知
れません。 5-2.工作におけるくふう
1)くふうの要素はさまざまにあります。例えば、コイルの巻き方でコイルのインダクタンスが
変化するので、同調が変わります。複数の局が近くにある場合には、コイルの巻数を変える
と違う局に合わせやすくなりますが、混信しやすくもなります。この場合には、回路のQ値
(選択度)を高くする必要がありますが、その方法としては、コイルの巻き方を密にしたり、
抵抗分を小さくしたりする必要があります。アルミホイルを貼った紙コップをもうひとつ用
意して、コンデンサを直列にしたり並列にしたりできます。 2)長いアンテナの位置をかえると受信状態が変化します。 3)回路の各部の抵抗を変えてみることもできます。 4)コイルの中に鉄心(強磁性体)を入れるとコイルのインダクタンスが変化しますので、同調
が変わります。 5-3.その他の楽しみ
1)このラジオは同調回路(アンテナ、コイル、コンデンサの部分でラジオの周波数を選ぶとこ
ろ)、検波回路(ダイオードと抵抗とクリスタルイヤホンの静電容量の部分でAM変調され
た信号から音声信号を取り出すところ)、増幅回路(音の信号を大きくする(電力増幅にな
るので電池が必要になる)とから成っています。目には見えないけれど身の回りの空間に飛
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び交っている電波という不思議な存在をイメージできると楽しくなります。また、オシロス
コープがあれば、アンテナ部分を発振器につないでオシロスコープで回路の各部を見れば、
つかまえた電波の変化の様子を見ることができます。 2)ラジオ局の送信アンテナを見学に行って、電波が出てきているところを想像します。
6.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル
小学校低学年でも対応は可能である。但し、ハンダコテは中学生以上が安全である。リーダー
がつく場合でも、ハンダコテの使用は小学高学年までが目安。
7.この教材を行う(用いる)ことができる活動団体の経験年数 結成したばかりの団体でも実施できるが、リーダーは必ず事前に製作して、工作のノウハウ、
工具の使い方、安全対策の必要な部分、実験のノウハウなどを把握しておくこと。 8.関連項目 8-1. 学習指導要領との関連:
中学校編:第1分野(1)身近な物理現象、(3)電流とその利用 高等学校編:物理分野
8-2.活動総覧(活動マップ):「人工衛星」分野 8-3.教材系統図(カリキュラムマップ):上級水ロケット 8-4.キーワード:鉱石ラジオ、ゲルマニウムダイオードラジオ、
電波、電磁波、同調、増幅 、検波 9.補足資料
9-1.補足説明 1)電磁波の波長λ[m]、周波数f[Hz]、電磁波の速度(光の速度)c[m/s]について
c=fλ (1) の関係が成り立つ。電磁波の真空中の速度(空気中もほぼ等しい)cは c=2.99792458×108 ≒3.0×108 [m/s] (2) です。ラジオ局の周波数がわかれば波長λは式(1)から導出できます。 そうすれば、アンテナの長さ(リード線の長さ)はその波長λの 1/4 として計算できます。
2)コイルの自己インダクタンスL[H]は、コイルの巻数をN、コイルの断面の半径をa[m]、 コイルの長さをb[m]、長岡係数をK(0<K<1)とすると、 L=K×4×10-7π2a2N2/b [H] (3) として求められます。長岡係数は1以下で、今回のコイルの寸法では約 0.5 です。本実験のコ
イルのインダクタンスは約 180 [μH]です。 3)コンデンサの静電容量Cは、2つの電極の面積をS[m2]、電極間の距離をd[m]とすると、
空気中は真空中とほぼ同じだとして、 C=8.854×10-12×S/d [F] (4) として求められます。本実験の紙コップコンデンサの静電容量は約数 100[pF]になります。
4)ラジオ局の周波数f[Hz]、コイルの自己インダクタンスL[H]、コンデンサの静電容量C[F]の 関係は、
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(2πf)2=1/LC (5) です。式(3)(4)(5)から、コイルの巻数Nは N=1.5×108×bd/(π2afK1/2S1/2) [巻] (6) として求められます。
9-2.導入のための説明図の例
爆発 光は見える!
音は聞こえない!
宇宙で伝わるのは何?
宇宙では 音は伝わらない。 伝わるのは 光や電波(電磁波)。 だから宇宙では・・・通信に電波を用います。
電波って何?
銅線の中の電気の粒
(電子)が 行ったり来たり動くと
電気を動かす力が真空中を伝わってゆき
電気の力を受けて 電気の粒が動く =信号が伝わった!
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9-3.参考文献等 「宇宙を目指すきみへⅠ・Ⅱ」(宇宙開発事業団、(財)日本宇宙少年団)
教材提供 :日本宇宙少年団おおいた分団 高橋徹氏 大分工業高等専門学校 電気電子工学科
助教授 本木智幸氏
追記、編集:「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会
教材開発グループ
お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団
TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870
e-mail [email protected]
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