数値解析 定期試験 '18.07/28 - nanzan university180727.pdf授業コード:53b03-001...

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授業コード:53B03-001 <参照物> ノート:1冊.A4版.体裁不問. 教科書:1冊.何でもよし. 電 卓:1台.通信機能無し. 回収:解答用紙のみ 数値解析  定期試験  '18.07/28 1. 1000 × 1000 行列 1000 次元列ベクトル が与えられたとする. 1) の計算法 の計算量を比較せよ.(10点) 2) z = A 2 x の効率的な計算法を示し,計算量を述べよ.(10点) 2. n 次正則行列 A n 次元列ベクトル b, b 1 , b 2 が与えられている. 1) 方程式 Ax = b を解くLU分解法の計算法と計算量を示せ.(10点) 2) A のLU分解 A = P 1 LU が与えられているとする.このとき,方程式 A A O A x 1 x 2 = b 1 b 2 解く効率的な計算法と計算量を示せ(LU分解の計算量は含めない).(10点) 3.LU分解法における部分ピボット選択の効果を説明せよ.(10点) 4.方程式 f ( x ) = cos x tan x を2分法で解く.解を x = α とする.初期区間を [ a 0 , b 0 ] = [0, π /4] とし, 区間列 {[ a k , b k ]} k 1 を2分法のアルゴリズムに従って作ってゆく. k は分割回数である.このとき,区 間中点を c k = (a k + b k )/2 とする. 1) 区間 [0, π /4] が初期区間として適切であることを示せ.(10点) 2) c k α 10 3 が保証できる整数 k で,最小のものを示せ.(10点) 5.ニュートン法により方程式 f ( x ) = 1 x a (a > 0) を解く.解は x = a 1 ,すなわち a の逆数である. x 0 を初期値としてニュートン法で作られる近似列を {x k } k 0 とし,誤差を e k = x k a 1 と書く. 1) x k から x k +1 を計算する反復式 x k+ 1 = x k (2 ax k ) …①を導け.(10点) 2) 関係式 1 ax k+ 1 = (1 ax k ) 2 …②を導け.(10点) 3) e k+ 1 = ae k 2 を示せ.(5点) 4) {x k } k 0 の収束次数は何次か.(5点) 解説:この逆数計算法は,加減乗算を持つが除算を持たない計算システムで有効である.

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授業コード:53B03-001

<参照物>ノート:1冊.A4版.体裁不問.教科書:1冊.何でもよし.電 卓:1台.通信機能無し.

回収:解答用紙のみ

数値解析  定期試験  '18.07/28

1.1000×1000行列 と1000次元列ベクトル が与えられたとする.

 1) の計算法 と の計算量を比較せよ.(10点)

 2) z = A2x の効率的な計算法を示し,計算量を述べよ.(10点)

2. n次正則行列 Aと n次元列ベクトル b, b1, b2 が与えられている.

 1) 方程式 Ax = bを解くLU分解法の計算法と計算量を示せ.(10点)

 2) AのLU分解 A = P−1LU が与えられているとする.このとき,方程式 A AO A

⎝⎜

⎠⎟x1x2

⎜⎜

⎟⎟=

b1b2

⎜⎜

⎟⎟を

解く効率的な計算法と計算量を示せ(LU分解の計算量は含めない).(10点)

3.LU分解法における部分ピボット選択の効果を説明せよ.(10点)

4.方程式 f (x)= cos x − tan x を2分法で解く.解を x =α とする.初期区間を [a0,b0 ]= [0, π / 4]とし,

区間列 {[ak ,bk ]}k≥1を2分法のアルゴリズムに従って作ってゆく. k は分割回数である.このとき,区

間中点を ck = (ak + bk ) / 2とする.

 1) 区間 [0, π / 4]が初期区間として適切であることを示せ.(10点)

 2) ck −α ≤10−3が保証できる整数 k で,最小のものを示せ.(10点)

5.ニュートン法により方程式 f (x)= 1x−a (a > 0)を解く.解は x = a−1,すなわち aの逆数である.

x0を初期値としてニュートン法で作られる近似列を {xk}k≥0とし,誤差を ek = xk −a−1と書く.

 1) xkから xk+1を計算する反復式 xk+1 = xk (2−axk )…①を導け.(10点)

 2) 関係式1−axk+1 = (1−axk )2 …②を導け.(10点)

 3) ek+1 = −aek2を示せ.(5点)

4) {xk}k≥0の収束次数は何次か.(5点)解説:この逆数計算法は,加減乗算を持つが除算を持たない計算システムで有効である.

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解答

1.1) イ: z = xyT( )xで計算.計算量総計: 2×106 flops

内訳: A = xyT (1000×1000 =106 flops), z = Ax (1000×1000 =106 flops).

ロ: z = x yT x( )で計算.計算量総計: 2×103 flops

内訳: q = yT x(1000 =103 flops), z = xq (1000 =103 flops).

後者の計算量は前者の1/1000である.

  2) z = A(Ax)で計算する.計算手順と計算量は以下の通り.

① y = Ax (1000×1000 =106 flops) ,

② z = Ay (1000×1000 =106 flops) .

計算量合計: 2×106 flops.<解説> z = (AA)x の計算量は約500倍になる.計算手順と計算量は以下のようになる.

① B = AA (1000×1000×1000 =109 flops) ,

② z = By (1000×1000 =106 flops) .

計算量合計:1001×106 flops.

2.1) 計算法:① LU分解: A = P−1LU (13 n3 +O(n2 ) flops).

② LU求解: x = A−1b (n2 flops)(①で計算した P, L,U を使う.)

の2ステップで方程式を解く.計算量は 13 n

3 +O(n2 ) flops である.

2) 方程式をブロック成分ごとに書くと, Ax1+ Ax2 = b1, Ax2 = b2.∴Ax1 = b1 −b2.

ゆえに, x1 = A−1(b1 −b2 ), x2 = A

−1b2. AのLU分解 A = P−1LU を利用する.

(1) c = b1 −b2. : 0 flops.

(2) x1 = A−1cをLU求解で計算. : n2 flops.

(3) x2 = A−1b2をLU求解で計算. : n2 flops.

   で計算できる.計算量は 2n2 flops.

3.① ピボット要素 akk ≠ 0とする.② 計算における誤差の拡大を防ぐ.

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4.1) f (0)= cos0− tan0 =1> 0, f (π / 4)= cos(π / 4)− tan(π / 4)=1/ 2 −1< 0.∴ f (0) f (π / 4)≤ 0. ゆえに,適切.

 2) 29 = 512 < b0 −a0ε

=π / 410−3

= 785.3!<1024 = 210より,

k = log2b0 −a0ε

⎡⎢⎢

⎤⎥⎥−1=10−1= 9 .

5.1) xk+1 = xk −f (xk )ʹf (xk )

= xk −xk−1 −a−xk

−2 = xk − −xk +axk2( ) = xk (2−axk ).

  2) 1−axk+1 =1−axk (2−axk )=1−2axk +a2xk2 = (1−axk )2 .  3) 2)より,

ek+1 = xk+1 −a−1 = −a−1(1−axk+1)=

2)−a−1(1−axk )

2 = −a a−1(1−axk )( )2 = −a −a−1+ xk( )2 = −aek2 .

  4) 3)より, xk+1 −a−1 = ek+1 = a ek

2 = xk −a−1 2 .ゆえに,収束次数は2である.