計測工学Ⅰ医療系で圧力と言えばこれ • 水銀柱の血圧計 •...
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計測工学Ⅰ 【第6回】圧力を測る。
今日の内容
• シラバスから • 分銅式圧力計、弾性変形式圧力計、ピエゾ電気圧力計、電気抵抗式圧力計、液柱式圧力計、真空の測定、熱伝導式真空計、電離式真空計などについて学習する。
• 教科書では、P105〜P127です。
医療系で圧力と言えばこれ
• 水銀柱の血圧計 • リヴァロッチの発明 • 水銀柱の高さで圧力を測定
• 水銀の比重:13.6 • (同じ体積の水の重さの13.6倍)
• 1気圧:760mmHg • (水銀(Hg)柱で760mmの高さ)
• コロトコフ音の発生を耳で確認して 測定する。 • → 聴診法
画像引用元:Wikipedia
いわゆる「血圧計」の守備範囲
• 最も測定したいのは、「大動脈圧」 • 上腕動脈の値は、大動脈圧にほぼ等しい。
• 心臓と同じ高さにして測定する。 • 標準テキスト: P
• 「細動脈」 -- 橈骨動脈、足背動脈あたりまで・・ • かろうじて、「細動脈」なら大動脈圧にほぼ相関する血圧が得られる。 • それよりも、血管が細くなると、大動脈圧に相関しなくなる。
• 神経制御の影響を受けて、毛細血管が収縮・拡張するため
• 非観血(間接法):モニター(ベッドサイド)で測定 • 一拍ごとの最高血圧、最低血圧は測定できない。
• 観血式: 橈骨動脈など、動脈に直接穿刺して、圧力トランスデューサで測定する。 • → 一心拍ごとに求められるが、侵襲性が大きいので、オペ中などに限られ
ている。
なかなか定着しない「Pa」(パスカル)
• 教科書P105 • SI単位系での圧力の単位は、Pa (パスカル)
• 血圧の値も hPa(ヘクトパスカル)かkPa(キロパスカル)で表示すべき・・・
• ただ、「血圧の急変」を伝える現場で、「慣れた値」から 変わると、「危険性」が伝わりにくい、という理由で 現実には mmHgの単位が使われ続けています。
• 「血圧が90hPaになりました!」 → これは危険な数値? • 67.7mmHg → かなり下がっていて危険域
• でも、いずれは統一されるべき・・・なんだと思う。
• 1013hPa = 760mmHg • mmHgの値を約1.33倍すると、hPaになる。
• 760mmの水銀柱の比重から、質量を求め、重力加速度より 単位体積あたりの力を求める。
第14回国家試験
【14P76】機械工学 答(3) 空気の圧力が450hPaのとき、おおよその酸素分圧はどれか。ただし、大気圧(1013hPa)のときの酸素分圧を200hPaとする。 1. 20hPa 2. 50hPa 3. 90hPa 4. 200hPa 5. 250hPa
第2回国家試験問題
【02A76】生体計測装置学 答(1) 200mmHgの血圧は国際単位系(SI単位系)ではおよそいくらか。ただし1Pa(パスカル)=1N/m2(1N=1kg・m/s2)である。 なお、重力の加速度を9.8m/s2、水銀の密度を13.6g/cm3として求めよ。 1. 2.7 × 104 Pa 2. 1.3 × 104 Pa 3. 1.3 × 103 Pa 4. 1.3 × 102 Pa 5. 2.7 × 10 Pa
第22回国家試験
【22P86】物性工学 答(3) 120mmHgの血圧はおよそ何kPaか。 1. 0.16 2. 1.6 3. 16 4. 160 5. 1600
• 出題される単位が、Paだったり、hPaだったり、kPaだったり、注意して下さい。
圧力領域と測定方法
• 教科書P106 図3.1 • 真空に近い領域
• 電離式 (最も低い圧力を測定できる)
• 守備範囲が広い測定方法 • 金属ダイアフラム型
• 最も高い圧力を測定できる • 電気抵抗式
分銅式圧力計
• 教科書P106 • 分銅式圧力計
• 分銅式の場合、最も基本的な構造なので、他の圧力計の 「標準」として用いられることがある。
• 直接測定する。 (重さ×重力加速度 / シリンダの断面積)
弾性変形式圧力計
• 高圧領域では、ブルドン管を用いる • 教科書P107
• 内部の圧力が上昇すると、「スパイラル」状に 巻かれた楕円断面管が伸びようとして スパイラルが「広がる」現象を利用する。
• この「笛」と同じ感じ ---->>>>
ピエゾ電気圧力計、電気抵抗式圧力計
• ピエゾ電気効果 = 圧電効果 • 圧電素子を用いる。
• 圧力がかかると歪み、電位が発生する。 • 電圧を書けると歪み、圧力を発生する。
• 圧電素子は、様々な物理量の換算で用いられる。 • センサとしてだけではなく、アクチュエータとして、あるいは両方
• 音圧、血圧測定、超音波結石破砕装置
• 圧電効果の知られている材料 • 水晶、ロッシェル塩、ADP(二リン化アンモニウム) • チタン酸バリウム
• 圧電セラミクス: 圧電効果のある材料を「焼結」したもの
圧電素子(再掲)
• 結晶のピエゾ電気効果で、歪みによって電圧が発生する素子、または、電圧をかけると歪みが発生し、歪みによって超音波を発生させる。
• トランスデューサとしても、アクチュエータとしても 用いられる。 • 超音波センサ • 衝撃波結石破砕装置(ESWL)
• 教科書P108
ピエゾ抵抗効果 • 教科書P109
• ごく普通の金属でも、変形すれば「抵抗」が変化する。 • 断面積と長さが変化する。
• マンガニン、金クロム合金 などが用いられる。
http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/pressure_guide_principle.pdf
、液柱式圧力計
• 教科書P113: • 液体の、「容器に合わせて、形を自在に変える事ができる」性質を利用
して、「環境圧」にさらしている液面と、「密封されている」側の液柱の上端の、「落差」と「比重」から、圧力を測定する。
• 代表格は、血圧計
液柱圧力計 図に液柱圧力計の基本形を示す。差圧測定の基本式は、
Ρ1-Ρ2=ρ・g・h
で表される。 ここで、P1:高い方の圧力、P2:低い方の圧力、ρ:液体の密度、図10.液柱式圧力計原理説明図g :重力加速度、 h:液柱の高さ とする。液柱圧力計に使用される液体は、水と水銀が多い。
http://www.daiichikeiki.co.jp/pressure/pressure_p06.html Wikipedia
この原理が、流体の測定、「圧力差」を利用した流速の測定に利用されていたのを、覚えて
いますか?
水銀と水の重さの違い
• 水銀の比重は、13.6 • 水の13.6倍の重さ
• 水銀柱:760mm → 1気圧 • 同じ圧力に釣り合う水柱の高さは、760mm×13.6 = 10336mm
• 10.33mの水の柱ならば、均衡する。 • 水銀柱: 128mmHgの人の血圧を、水柱で測ると、1.74m
• カフをシュコシュコ膨らませながら、174cmの高さから落ちる水柱を読む のに、はしごが必要かも・・・
• 水銀の比重が重いから、血圧計を作ることができた!?
• ダイビングでは、10m潜ると1気圧上昇する。 • 「高気圧療法」が適用されるや「空気塞栓」の原因は、この圧力。 • 厳密には、10.33m • 1気圧をhPaに換算すると、1013hPa
• 1気圧(1atm)を表現するのに、 • 760mmHg, 1033cmH2O, 1013hPaの三つの数字がある。
差圧式流量計(再掲)
• 教科書P93 • 流路にオリフィス(絞り機構)を組み込んで、差圧を求める。
• ベルヌーイの定理 • 標準テキスト 新版P451, 旧版P467 • リリー式
• 金属メッシュを用いる • フライシュ型
• 細管を束ねたもの
• ベンチュリー管 • 間にくびれをつけたもの
http://www.m-system.co.jp/rensai/pdf/r0108.pdf http://www.eco.zaq.jp/env_univ/bernoulli_oyo.html
弾性変形式圧力計 • 教科書P114
• 最も多く利用されている構造。 • 圧力による変形を、変位として取
り出す。 • 変位から圧力を測定。
• 一つのセンサー技術で、センサーの作り方を変える事によって、別の物理量の計測に応用できる。
http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/pressure_guide_principle.pdf オムロン
過去問題
【21A56】生体計測装置学 答(3) ストレインゲージを用いた血圧トランスデューサについて誤っているのはどれか。
1. 半導体ストレインゲージには温度補償回路が用いられる。
2. ダンパを用いて波形の振動を抑制することができる。
3. ストレインゲージの抵抗変化はひずみに反比例する。
4. 受圧膜によって圧力が変位に変換される。
5. ストレインゲージの微小抵抗変化はブリッジ回路で検出される。
コロトコフ音/オシロメトリック法 • 教科書P117
• カフ圧で上腕の動脈を閉塞させる。 • 血圧,は、1拍ずつ「収縮期血圧:Sys」と「拡
張期血圧:Dia」の間を上下している。 • カフ圧>SysBP
• 完全に遮断されているため、血流がない。 → 音も、振動波形も出ない。
• SysBP>カフ圧>DiaBP • 血管内圧がカフ圧をまたいで変化し、血管
が開いたり閉じたりを繰り返す。 • 振動現象や、「開通音」が発生する。
• カフ圧<DiaBP • 完全開通するので、流れは乱れず、音は発
生しない。拍動による振動は、わずかにカフ内圧に乗って来る。
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1998/00046/contents/063.htm http://image.astamuse.com/image/JP/2007/252/767/A/000005.png
富士山頂では、コーヒーと紅茶、どっち? • 気圧が低いという事は・・・・ • 沸点が低い。
• 標高が高いと,水がすぐに(低い温度で)沸騰するから、お茶を淹れようと思っても、思うように煮出せない。 • 薄味になってしまう・・・。
• これは、コーヒー豆でも同じ。
• 地上(ふもと)から、インスタントコーヒーの瓶を持っていく。 • 防湿のためのシールをはがした瞬間に、中身の粉末が一気に吹き出す・・・。
• (シールの中は1気圧だが、外はずっと低い。) • 穴を開けてから登山しないと、下手をすると、中身が半分以下になったりする。 • → よ〜くシェークしたコカコーラの、瓶や、缶を空けた感じ・・・。
• インスタントコーヒーを持って上がるなら、ふもとで、シールに切れ目を入れておく。
• 紅茶を飲みたいなら、「圧力鍋」と同等の機材が必要。 • ちなみに、私は、コーヒーが好きです。
• インスタントコーヒーは、沸点が低くても溶けるので、無事持って上がれればこちらは、地上と同様に飲める。
真空の測定
• 教科書P118 • マクラウド型真空計
• 管の内圧を外部の圧力と均衡させる。 その状態で水銀を流し込むと、水銀柱の 長さは、測定したい系の圧力と均衡する ところで、とまる。
• ここから、真空側の系の圧力を求められる。 • 熱伝導式真空計
• 気体分子が衝突すると発熱線から熱 エネルギーを奪われる現象を利用して 真空を測定する。
トリチェリの真空
• 大気圧と釣り合う以上の液体の上には、真空ができます。
• 水銀柱の場合には、760mm(76cm = 0.76m)を超えると、その上には真空ができます。 • なぜ、水銀なの?
• 比重の重い、常温でも液体の金属なので、圧力を簡便に測定するのに便利だから。
• なぜ、真空ができるの? • 大気圧が液柱の重さを支えきれないから。 • 大気圧では、それ以上押し上げられないだけの
重さを液体が持っていると、釣り合うところまで しか、液柱は伸びず、そこから上は、何も 存在できなくなってしまうため、真空になる。
http://www.84p.net/tenkiya/column34.html
陽圧と陰圧
• 【呼吸の話】 • 1気圧よりも高ければ「陽圧」、周辺よりも圧力が低ければ「陰圧」となる。 • 自然呼吸では、胸郭の運動のため、肺に「陰圧」が生じる。
• その陰圧によって、外気を「吸い込む」ことができる。 • 陽圧換気では、胸腔内圧とは無関係に、外部から空気を送り込む。
• 見た目がこんな感じの 圧力計は、ブルドン管型
熱伝導式真空計
• 教科書P121 • フィラメントに気体分子がぶつかると「熱エネルギー」を奪う。
• この結果、「真空度」に応じて「熱エネルギー」の放散量が変化し、温度変化の結果抵抗値が変化する。
• ピラニ真空計
電離式真空計
• 教科書P123
• 真空管と同じ構造 • 真空中を電子が飛行して、電流が流れる。 • ダイオードの極性の名称(Cathode, Anode)のうち、Cathode(イギリス
式表記だとKathodeで、K)は「陰極」の意味で、電子を放出する側を指す。
• カソードから放出された熱電子が、空気中の分子を電離し、電離された陽イオンが「陽極」側に流れ込んで、電流となる。
• 電流が、真空度に比例する。
熱力学の第2法則
• 気体の分子運動などで、エントロピーが増大する。 • エントロピーの増大とは
• 「赤インクを水に垂らすと、拡散して全体に散ることはあるが、全体に散った赤インクが一カ所に戻る事はない。」
• 熱エネルギーは、高い方から低い方に移動する。これによって、接している系のエネルギーの差は縮小する。
• ところが、経済学では逆の現象が起きる。 • 「お金は、持っていない人から持っている人の側に移動する。」
• 経済現象が熱力学現象と同様に働くなら、「お金は持っている人から持っていない人に移動する」はずなのだけれど、人間は、物理現象に沿った存在ではない、とい
うことなのかも・・・
今日のまとめ
• 今日の範囲では、直接的に国家試験で出題されたような問題はあまり多くありませんが、圧力測定という意味では、「血圧測定方法」の話や、呼吸の圧力計(ブルドン管)、呼吸流量の計測法(復習)などについては、臨床工学分野で重要な概念になると思います。
• 特に、血圧測定では血圧の変化と、カフ圧とがどんな関係があるか、など理解して下さい。
• また、生体計測関連での、計測装置の原理を、改めて整理して欲しいと思います。
次回予告 【第7回】温度の計測(1)
• シラバスから • 高温の計測、非接触式測定、接触式測定、熱電効果(ゼーベック効果)、補償導線、熱放射、プランクの黒体放射などについて学ぶ。
• 教科書では、P127〜P141です。