国際税制 改正点 - pwc...global intangible low-taxed income :以下、「gilti」...

経理情報●2018.2.20(No.1504) 42 245 10 Specified 10-percent Owned Foreign Corporation 10 Hybrid Dividends 10 10 10 簿50 【第2回】 国際税制 改正点 国際税制の改正においては、テリトリアル税制の導入や既存の海外留保利益に対 する強制みなし配当課税の導入といった従前から提唱されていた項目に加えて、国外 関連者への使用料等の支払に対して追加課税を行う新税(BEAT)の導入や、CFC税 制におけるCFCの範囲や合算課税対象を拡大する改正が行われている。そのため、 該当する企業においては立法趣旨(課税ベース浸食防止、無形資産の国外移転防止 等)を踏まえた適切な対応が必要となるだろう。 PwC税理士法人  公認会計士・税理士・米国公認会計士 山岸 哲也 PwC税理士法人 ニューヨーク州弁護士 山口 晋太郎 PwC税理士法人 ニューヨーク州弁護士 小林 秀太 PwC米国 公認会計士 徳弘 高明 PwC米国 米国公認会計士  村岡 欣潤 PwC米国 米国公認会計士  有馬 一茂  ≪連載スケジュール予定≫ テーマ 掲載号 第1回 米国内の法人税制の改正点 2018年2月10日号(№1503) 第2回 国際税制の改正点 2018年2月20日号(№1504) 第3回 パススルー事業体・個人税制の改正点 2018年3月1日号(№1505) 第4回 日本企業に与える影響(日本のタックスヘイブン税制・ 会計) 2018年3月10日号(№1506) 第5回 日本企業に与える影響(M&A・ビジネス) 2018年3月20日号(№1507) 米国税制改正法 概要 日本企業 への 影響 米国税制改正法 概要 日本企業 への 影響

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  • 経理情報●2018.2.20(No.1504)42

    テリトリアル税制の

    導入

    ⑴ 海外配当益金不算入制度

    (テリトリアル課税)の創設

    (内国歳入法245条A)

    従前の制度は、全世界所得課税制

    度を採用しており、海外子会社等か

    らの配当は米国で課税されるととも

    に外国税額控除制度により二重課税

    を排除する措置が採られていた。

    改正法においては、米国法人が

    10%以上の株式を保有する外国法

    人(Specified 10-percent Ow

    ned Foreign Corporation

    :以下、「10%

    保有外国法人」、当該法人の株主を

    「米国株主」という)から受け取る配

    当の全額が益金不算入となる。ただ

    し、国内源泉の配当、および配当支

    払外国法人で損金算入されている配

    当(Hybrid D

    ividends

    )は適用除外

    となる。保有期間要件として、配当

    の支払確定日の365日前から起算

    した731日間のうち最低365日

    間において継続して10%保有外国法

    人であることが必要とされている。

    なお、本制度の創設に伴い、当該

    配当に課された外国源泉税、および

    当該外国法人が支払った外国法人所

    得税については直接あるいは間接外

    国税額控除は認められなくなる。本

    制度は2018年1月1日以降に支

    払われる海外子会社配当から適用さ

    れる。

    ⑵ 外国法人株式譲渡に係る

    特則の創設

    海外配当益金不算入制度の創設に

    伴い、改正法では外国法人の株式譲

    渡に係る複数の特則が設けられてい

    る。・海

    外配当益金不算入制度の対象と

    なる10%保有外国法人の株式の売

    却損の計算上、益金不算入となった

    当該10%保有外国法人から支払わ

    れた配当の累積額だけ同株式の税

    務簿価を減額する。したがって、益

    金不算入の配当を事前に行って外

    国子会社の譲渡対価を減額させて

    も、売却損を増やすことはできな

    い。

    ・従前の制度では米国法人が特定外

    国子会社(米国人が50%超の持分

    を有する外国法人、以下、「CFC」

    という)の株式を譲渡した場合、譲

    渡益のうちCFCの留保利益の当

    該米国株主の持分相当額までは配

    当所得とみなされる(内国歳入法

    1248条)。改正法では、当該みな

    し配当についても保有期間要件を

    満たす場合は海外配当益金不算入

    【第2回】国際税制の改正点

    国際税制の改正においては、テリトリアル税制の導入や既存の海外留保利益に対する強制みなし配当課税の導入といった従前から提唱されていた項目に加えて、国外関連者への使用料等の支払に対して追加課税を行う新税(BEAT)の導入や、CFC税制におけるCFCの範囲や合算課税対象を拡大する改正が行われている。そのため、該当する企業においては立法趣旨(課税ベース浸食防止、無形資産の国外移転防止等)を踏まえた適切な対応が必要となるだろう。

    PwC税理士法人 公認会計士・税理士・米国公認会計士

    山岸 哲也PwC税理士法人 ニューヨーク州弁護士

    山口 晋太郎PwC税理士法人 ニューヨーク州弁護士

    小林 秀太PwC米国 公認会計士

    徳弘 高明PwC米国 米国公認会計士 

    村岡 欣潤PwC米国 米国公認会計士 

    有馬 一茂 

    ≪連載スケジュール予定≫ テーマ 掲載号

    第1回 米国内の法人税制の改正点 2018年2月10日号(№1503)第2回 国際税制の改正点 2018年2月20日号(№1504)第3回 パススルー事業体・個人税制の改正点 2018年3月1日号(№1505)

    第4回 日本企業に与える影響(日本のタックスヘイブン税制・会計) 2018年3月10日号(№1506)

    第5回 日本企業に与える影響(M&A・ビジネス) 2018年3月20日号(№1507)

    米国税制改正法の概要と日本企業への影響米国税制改正法の概要と日本企業への影響

  • 経理情報●2018.2.20(No.1504)43

    として課税対象とされた部分に対応

    する部分は間接外国税額控除の対象

    となる。

    同制度における税額は、選択によ

    り、図表1の割合で8年間での分割

    納税が可能となる。なお、支払の滞

    納、米国株主の事業の停止などの事

    象が発生する場合には即時支払が必

    要となる。強制みなし配当課税に係

    る税務調査の除斥期間は6年とされ

    ている(通常は3年)。

    ⑷ CFCの定義拡大

    改正法においては、CFCの判定

    上、米国法人の親会社が保有する他

    の法人も当該米国法人によって保

    有されているとみなされる。よっ

    て、日本の親会社傘下にある米国法

    人の兄弟会社である米国外の法人が

    潜在的にCFCと判定される可能性

    がある。一方、上記のみなし保有規

    定の拡大によりCFCと判定され

    ても米国法人が当該CFCの株式を

    直接保有していない限り、合算課税

    の対象とはならない。上記の改正は

    2017年12月31日以前に開始する

    直近の課税年度より適用される。

    なお、内国歳入庁(IRS)は

    2018年1月19日にN

    otice 2018-13

    を発表し、本改正により新たにC

    FCとなる外国法人については、従

    前のCFCと同じForm

    5471による

    情報開示義務を課さないことを発表

    した。

    ⑸ 

    Subpart F

    所得に関する

    改正

    改正法においては、Subpart F

    得に関する改正として次の内容が織

    り込まれており、CFC税制が強化

    される内容となっている。

    制度の対象となる。

    ・従前の制度ではCFCが他のCF

    C株式を譲渡した場合、譲渡益のう

    ち譲渡されたCFCの留保利益の

    持分相当額までは配当とみなされ

    る(内国歳入法964条)。改正法では、

    当該みなし配当については米国株

    主において合算対象とされたうえ

    で、保有期間要件を満たす場合は外

    国配当益金不算入制度の対象とな

    る。

    ⑶ 海外留保所得に係る強制

    みなし配当課税制度の創設

    (内国歳入法965条)

    海外配当益金不算入制度の創設に

    伴い、同制度導入以前に蓄積され

    た未課税の海外利益(A

    ccumulated

    Deferred Foreign Incom

    e

    :以下、

    「累積海外留保所得」という)につい

    ては、同制度導入直前に配当された

    とみなされ(強制みなし配当)、米国

    株主レベルで課税の対象となる。

    すなわち、CFCおよび10%保有

    外国法人(以下、「特定外国法人」とい

    う。ただし、受動的外国投資会社(P

    FIC)は除外)の累積海外留保所得

    のうち米国株主の持分相当額は、海

    外配当益金不算入制度導入の前年度

    (2018年1月1日より前に開始

    する直近の課税年度)におけるみな

    し配当所得として課税される。

    累積海外留保所得は、2017年

    11月2日または2017年12月31日

    時点の米国税法上の留保利益(E&

    P:これまでCFCルールによる合

    算対象とならず、かつ、米国事業に

    も関連しないもの、すなわち米国

    で課税対象となっていないもの)の

    うちいずれか高い額となる。他の

    特定外国法人に税務上の累損(E&P

    deficit

    )がある場合は、累積海外留

    保所得の計算上は相殺することにな

    る。み

    なし配当のうち金銭・金銭同等

    物からなるとみなされる部分は15・

    5%の税率で課税され、それ以外は

    8%の税率で課税される。金銭・金

    銭同等物は2018年1月1日より

    前に開始する特定外国法人の直近の

    課税年度の最終日の数値、または

    2017年11月2日より前に終了す

    る直近2年度の最終日の平均値いず

    れかを用いて算

    定される。金銭

    同等物には売掛

    金、1年未満の

    貸付金等も含ま

    れる。

    特定外国法人

    の支払った外国

    法人所得税のう

    ち、みなし配当

    米国税制改正法の概要と日本企業への影響米国税制改正法の概要と日本企業への影響

    (図表1) 分割払いの場合の税額1年目から5年目 税額の8%6年目 15%7年目 20%8年目 25%

    (図表2) CFCの定義拡大

    改正法によりCFC・Form 5471開 示

    義務なし・CFC合算課税なし

    改正法によりCFC・一定の場合にForm 5471

    開示義務(従前から)・CFC合算課税対象

    従前よりCFC・Form 5471開示義務・CFC合算課税対象

    日本親会社

    日本親会社

    日本親会社

    米国子会社

    米国子会社

    米国子会社

    米国外子会社

    米国外子会社

    米国外子会社

    50%より大きい 50%未満

    50%より大きい(あるいは支配権)

  • 経理情報●2018.2.20(No.1504)44

    外国ベース所得(Foreign base

    income

    )に関するCFC税制

    の適用除外基準のうち、$1、

    000、000のDe m

    inimis

    基準

    はインフレーション調整の対象と

    なる

    従前の議決権の保有率によるCF

    Cの判定基準に加えて、対象となる

    米国株主の定義に10%以上の海外

    子会社の株式時価を保有する米国

    者(US Person

    )を追加

    合算課税要件に係るCFCの30日

    支配要件の廃止

    ・ Subpart F

    所得の判定に関する

    Look-through

    ルールの恒久化

    ⑹ グローバル無形資産低課

    税所得(GILTI)の創設

    (内国歳入法951条A)

    新たに低率課税のグローバル無形

    資産所得(Global Intangible Low

    -taxed Incom

    e

    :以下、「GILTI」

    という)への課税制度が設けられ、

    CFCのGILTIはSubpart F

    得と同様、米国株主において合算課

    税の対象となる。本税制の目的は、

    CFCの課税対象所得(Subpart F

    所得やECI所得)、もしくは、益

    金不算入制度で米国では課税対象外

    となる所得以外の所得のうち、CF

    Cの事業資産から生じる通常レベル

    の所得を超える部分を米国で合算課

    税するというものである。

    2018年1月1日以降開始課税

    年度から2025年12月31日以前開

    始課税年度までは、合算対象となる

    GILTI所得の50%は控除され、

    2026年1月1日以降開始課税年

    度からは控除額は37・5%に減額さ

    れる。個人株主にもGILTIは適

    用されるが、特別控除は設けられて

    おらずその100%が課税される。

    GILTIに係る外国税額はグロ

    スアップされて課税所得に算入さ

    れ、当該外国税額の80%を限度とし

    て外国税額控除が適用できる。GI

    LTIに関する外国税額は、控除限

    度額の計算上は別個のカテゴリーと

    してトラッキングされる。GILT

    Iに対する21%の新税率と上記間接

    外国税額控除、および⑺のFDII

    に関する所得控除を考慮すると、従

    前のCFC税制で課税されていな

    かったCFCの所得のうちGILT

    Iとなる部分は13・125%の税率

    ((1−

    37・5%)×21%)で課税され

    ることとなる。

    本制度は2018年1月1日以降

    に開始するCFCの課税年度の最終

    日を含む米国株主の課税年度から適

    用される。

    ⑺ 外国源泉の無形資産関連

    所得に関する所得控除(FD

    II)の創設(内国歳入法250

    条)

    改正法においては、R

    ICs

    およ

    びREIT

    s

    を除く米国法人の外国源

    泉の無形資産関連所得(Foreign-

    derived Intangible Income

    :以下、

    「FDII」という)については37・

    5%の所得控除が認められる。GI

    LTIは財源浸食防止対策としてC

    FCの超過収益に課税する制度であ

    る一方、FDII控除は、米国法人

    の事業資産からの経常的な所得を超

    える所得のうち国外で稼得したとみ

    なされる部分をFDIIとして一定

    の税務上の恩典を与えるものとなっ

    ている。

    なお、所得控除額は2026年1

    月1日以降に開始する課税年度から

    は21・875%に減額される。本制

    度は2018年1月1日以降に開始

    する課税年度から適用される。

    ⑻ 外国税額控除計算上の海

    外支店利益

    改正法においては、外国税額控除

    の控除限度額計算上、国外支店に係

    る所得は国外に所在する適格事業単

    位(QBU)に帰属する所得として現

    行制度における既存の受動所得、一般

    所得等とは別個のカテゴリーに分類し

    て外国税額控除限度額を算出する。

    税源浸食への対応

    ⑴ 

    税源浸食濫用防止規定

    (Base Erosion and Anti- Abuse Tax (〝

    BEAT〟))

    (内国歳入法59条A)

    税源浸食防止規定については、下

    院法案(Excise T

    ax

    (物品税)/E

    CI課税)および上院法案(BEAT

    課税)それぞれで独自の提案が織り

    込まれていたが、改正法においては

    上院法案のBEAT課税が採用され

    た。当初の上院法案と同様に法人は

    次の①が②を超える場合、超過額を

    追加の租税負担額として申告する義

    務が生じるが、改正法において適用

    税率が若干修正されている。

    ① 

    調整後課税所得(=通常の課税

    所得に税源浸食的支払を加算した

    額)の10%⑴

    ② 

    通常の法人税額(R&D税額控

    除、エネルギー関連の税額控除など

    一定の税額控除適用前の額⑵)

    ⑴ 

    適用税率は、2018年暦年に開始する課

    税年度は5%、2026年1月1日以降に開始

    する課税年度より12・5%(銀行業または証券

    ディーラーを含む関連グループのメンバーに

    おいては適用税率が1%上乗せされ、それぞれ

  • 経理情報●2018.2.20(No.1504)45

    6%、13・5%となる)

    ⑵ 

    2026年1月1日以降に開始する課税年

    度では、あらゆる税額控除適用後の法人税額

    適用対象法人は、投資法人(RI

    C)や不動産投資信託(REIT)ま

    たは小規模法人(S Corporation

    )以

    外の法人のうち、過去3年間の平均

    年間総収入が5億ドルを超え、か

    つ、税源浸食割合(Base Erosion

    Percentage

    ⑶)が3%以上(銀行業の

    場合は2%以上)となる法人とされ

    ており、上院法案の4%よりも縮小

    した。

    総収入・税源浸食割合の判定上

    は、米国法人グループベースで行

    われるが、この場合のグループは

    controlled group

    (50%超資本関係、

    外国法人を通じて保有する場合も含

    まれる)をいう点に留意が必要であ

    る。たとえば、日本法人が米国子会

    社2社を直接保有している場合、両

    者は米国連結納税グループを組成で

    きないが、前記の判定上は同じグ

    ループに含まれることとなる。

    税源浸食的支払とは、国外の関

    連者への支払で、総所得(gross

    income

    )から控除(deduction

    )可能

    なもの(償却資産の取得に係る支

    払や支払利子を含む)となる。米

    国税務においては、総所得は「売上

    (Gross Sales

    )−

    売上原価(COGS)」

    と定義されているため、米国税務上

    の売上原価は控除(deduction

    )項目

    ではなく、したがって対象外とな

    る。関連者とは、法人の25%以上の

    持分(議決権または時価)を有する株

    主(25%株主)、25%株主と50%超の

    持分関係で繋がる関連者、および当

    該法人と50%超の持分関係で繋がる

    関連者となる。

    また、BEAT課税の計算に必要

    となる情報の開示義務も新たに設け

    られ、開示漏れによる罰則が通常の

    $10、000から$25、000に

    増額されている。BEAT課税は

    2018年1月1日以降に開始する

    課税年度において発生した財源浸食

    的支払に適用される。

    ⑶ 

    税源浸食割合=当該年度の税源浸食的支払

    の総額

    /当該年度の損金控除総額

    ⑵ 無形資産の定義および評

    価方法の明確化

    従前の内国歳入法482条と関連財務

    省規則で規定される移転価格税制、

    および内国歳入法367条⒟における無

    形資産の定義は、内国歳入法936条⒣

    ⑶Bで規定されている。

    改正法においても、現行制度から

    基本原則は変わらないとしているも

    のの、無形資産の定義が明確化さ

    れ、労働力(W

    orkforce in place

    )、

    内国および国外のれん、および企業

    継続価値(Going Concern V

    alue

    )が

    無形資産の定義に含まれることに

    なった。また、財務省に適切な手法

    を用いて無形資産の評価を決める権

    限を付与することを明確化してい

    る。評価方法に関しては、複数の無

    形資産が移転された場合に総合的な

    評価(A

    ggregate basis approach

    と資産ごとの評価(A

    sset-by-asset approach

    )のいずれが信頼性がある

    手法か判断して適切な評価方法を判

    定することが要求されている。本条

    項は2018年1月1日以降に開始

    する課税年度から適用される。

    ⑶ ハイブリッド取引におけ

    る非適格な関連会社間支払

    の損金不算入制度の創設

    改正法においては、ハイブリッド

    取引(H

    ybrid Transaction

    )におけ

    る、もしくはハイブリット事業体

    (Hybrid Entity

    )を相手先とする一

    定の関連会社間取引(D

    isqualified related party paym

    ent

    :以下、「非

    適格関連会社間支払」という)は損金

    不算入とされる。ハイブリッド取

    引とは、利子と使用料の支払に関し

    て受取法人の居住国で米国税法上と

    異なる取扱いを受ける取引のことで

    あり、ハイブリッド事業体とは、受

    取法人の居住国で米国税法上と異な

    る取扱いを受ける事業体のことであ

    る。非適格関連会社間支払とは利子

    および使用料の支払で次の要件を充

    たすものとなる。なお、Subpart F

    所得は非適格関連会社間支払から除

    外されている。

    ・対応する受取所得が居住国で課税

    を受けていない場合、または

    ・支払が居住国で損金算入されてい

    る場合

    関連会社の定義は現行のCFC税

    制の関連会社の定義(50%超の議決

    権または時価で繋がる資本関係)を

    支払法人に適用することとされてい

    る。また、財務省には、非適格関連

    会社間支払の否認に関するさまざま

    な取扱いを含め、本制度に関連する

    財務省規則またはその他のガイダン

    (図表3) 総収入・税源浸食割合判定上の関連者グループ

    税源浸食的支払

    50%超の関連者グループ

    日本親会社

    米国子会社

    米国子会社

    米国子会社

    米国税制改正法の概要と日本企業への影響米国税制改正法の概要と日本企業への影響

  • 経理情報●2018.2.20(No.1504)46

    村岡 欣潤(むらおか・きんじゅん)PwC米国 マクリーン事務所 ディレクター 米国公認会計士(バージニア州)PwC米国ロサンゼルス事務所日系事業部、ニューヨーク事務所M&A部門、ワシントンDC事務所国税サービス部門を経てPwC税理士法人に出向。主に、米国上場会社の買収案件やストラクチャーを含む日米のクロスボーダー取引に携わる。現在、PwC米国マクリーン事務所M&A部門で日系企業の買収案件に関与。

    有馬 一茂(ありま・かずしげ)PwC米国 ニューヨーク事務所税務ディレクター  米国公認会計士(ニューヨーク・カリフォルニア州)1999年PwC米国ロサンゼルス事務所入所。2006年ニューヨーク事務所に転籍。主に米国の日系企業への税務アドバイス、コンプライアンスに従事。

    徳弘 高明(とくひろ・たかあき)PwC米国 ニューヨーク事務所税務プリンシパル 公認会計士 1981年PwC税理士法人東京事務所入所。1987年PwC米国ニューヨーク事務所に転籍、シカゴ事務所、ロサンゼルス事務所勤務を経て現在はニューヨーク事務所にて日本企業部(税務部門)を統括。米国にて事業を展開する日系企業に対する米国および国際税務アドバイス、コンプライアンスに従事。

    山口 晋太郎(やまぐち・しんたろう)PwC税理士法人米国タックスデスク パートナーニューヨーク州弁護士米国連邦裁判所勤務を経て、2006年よりニューヨークを拠点に、国際法律事務所、大手会計事務所にて米国税務コンサルティング業務に従事。2017年よりPwC税理士法人パートナー。ニューヨークにて、米国系多国籍企業のクロスボーダー M&A、組織再編、グローバルタックスマネージメント等のプロジェクトを数多く手掛け、豊富な米国税務経験を有する。ディープ・スプリングス・カレッジおよびスタンフォード大学(B. A.)卒業。イェール大学ロースクール(J. D.)およびニューヨーク大学ロースクール(LL. M. in Taxation)修了。

    小林 秀太(こばやし・しゅうた)PwC税理士法人米国タックスデスク シニアマネージャー ニューヨーク州弁護士 PwC米国ニューヨーク事務所の国際税務部にて8年間の勤務後、2016年2月よりPwC税理士法人に出向。米国勤務時は、米国多国籍企業や日系企業に国際税務のアドバイスを提供する。特に、グローバルな組織再編、クロスボーダー M&A、税務デューデリジェンス、買収ストラクチャーの構築支援、海外子会社の統合などの経験を有する。Harvard Law School LL.M.修了。

    山岸 哲也(やまぎし・てつや)PwC税理士法人国際税務アドバイザリーグループ/米国タックスデスク パートナー公認会計士・税理士・米国公認会計士(イリノイ州)1999年PwC税理士法人へ入所。2004年より2007年までPwC米国シカゴ事務所へ出向。現在、PwC税理士法人M&Aタックス部門のヘッドとして培ったM&Aおよび国際税務に関する豊富な経験に基づき、ストラテジック・バイヤー、フィナンシャル・バイヤー双方にデューデリジェンスや買収ストラクチャリングを中心としたM&A税務サービスを提供するとともに、国内外のさまざまな企業に対して国際税務プランニング、クロスボーダー組織再編に関する国際税務アドバイスを提供している。イリノイ大学アーバナシャンペーン校会計学修士課程修了。

    スを発布する権限が与えられてい

    る。本

    制度は2018年1月1日以降

    に開始する課税年度から適用され

    る。

    ⑷ DISCルールの継続

    従前の制度上は、一定の要件を充

    たす法人はD

    omestic International

    Sales Corporation

    (以下、「DIS

    C」という)として法人所得税が免税

    となるとともにDISCの株主は

    課税の繰延が可能となる。Interest

    Charged DISC

    (以下、「IC―DI

    SC」という)においては

    繰延期間

    に利息が課されるため課税繰延のベ

    ネフィットは無効となるが引き続き

    法人レベルの課税を回避することが

    可能となる。

    上院の当初改正案においてはDI

    SCおよびIC―DISCの廃止が

    織り込まれていたが、12月2日に可

    決された上院法案では廃止条項は削

    除され、改正法においても引き続き

    従前の制度が適用される。

    国際税制改正の

    考え方

    BEAT、GILTI、FDII

    といった一連の新しい国際税制の背

    後には、従前の税制のもとで行われ

    ていた米国から海外関連会社への無

    形資産や製造活動の移転を抑制し、

    国内移転を促進する目的がある。す

    なわち、米国外の関連者が無形資産

    (以下、「IP」という)を保有してい

    た場合の米国法人からの使用料支払

    はBEATの対象となり、IP保有

    者がCFCであった場合にはGIL

    TIの対象となる。他方で、グロー

    バルIPを米国法人で保有し、海外

    から使用料収入を得ていた場合には

    FDIIとして軽減課税の対象とな

    る。

    (図表4) 国際税制の新制度と実効税率

    無形資産から生じる超過収益

    使用料

    使用料

    無形資産から生じる超過収益

    日本親会社

    BEAT(10%)

    BEAT(10%)FDII(13.125%)

    GILTI(10.5%~13.125% +α)

    IP

    米国子会社

    米国外子会社(CFC)

    IP

    IP

    新税制による税負担が大きい場合

    には、こうした点を踏まえて全世界

    規模でのサプライチェーン、研究開

    発/IPポリシーの再検討が必要と

    なるものと考えられる。

    米国税制改正法の概要と日本企業への影響米国税制改正法の概要と日本企業への影響