建設工事における事故と安全対策について

国土交通省北海道開発局事業振興部工事管理課

工事評価管理官 桑 島 正 樹

目 次

１．建設工事における労働災害の現状

２．事故防止に向けた取組

３．事故事例

４．事故防止への取組み事例

建設工事における事故と安全対策

国土交通省 北海道開発局

事業振興部 工事管理課

工事評価管理官 桑島正樹

平成２２年１０月７日

１．建設工事における労働災害の現状

1

建設業の死亡者数

H5 H15

（建設業労働災害防止協会より）

我が国の工事事故における死亡者の推移

2

建設工事における事故分類毎の死亡者数の推移

363  356  386  374  359  313  296  285  262  239  236  255 203  190  207  172 

152  150 174  178 

127 103  170 

128 89  92  76  83 

70  70  58 54 

134  122 

147  148 

117 

109 110 

112 

98 79  75 

73 

71  67  53 43 

56 45 

38  29 

56 

52 46 

44 

45 46 

26 38 

41  35  35 41 

0 

200 

400 

600 

800 

1,000 

1,200 

H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20

その他

落盤等

クレーン等

取扱運搬等

爆発・火災等

電気

土砂崩壊等

倒壊

飛来・落下

自動車等

建設機械等

墜落

942

総数

9531 ,021 1 ,001

848

725

794

731

644607

548594

497 508461

430

（平成５年～平成２０年）

建設業労働災害防止協会資料より作成

3

年齢階層別死亡者数の比較

4

年齢階層別・工事の種類別死亡者数

（建設業労働災害防止協会資料）

0

20

40

60

80

100

120

140

20歳未満

20～24歳

25～29歳

30～34歳

35～39歳

40～44歳

45～49歳

50～54歳

55～59歳

60～64歳

65～69歳

70歳以上

死亡

者数

（人

）

設備工事

土木工事

建築工事

5

建設業の死傷者数

6

H5 H15

（建設業労働災害防止協会より）

我が国の工事事故における死傷者数の推移

（平成５年～平成２０年）

我が国の重大災害の推移

（建設業労働災害防止協会資料より）

我が国の重大災害の推移

H5 H15

（平成５年～平成２０年）

7

3

5

5

11

12

13

14

27

46

60

0 10 20 30 40 50 60 70

誘導の死角を走行

歩行者の不安全行動

保安機材との接触

作業環境

停止位置での急停止

工事関係者の不安全行動

誘導ミス

運転手の脇見運転

無謀・無知運転

一般ドライバーの誘導無視

（件）

交通誘導員がヒヤットした内容（直轄工事）

・一般ドライバーに関する内容が全体の約７割（誘導無視約３割、無謀・無知運転約２割、脇見運転約１割 等）その他、誘導ミスや工事関係者に関するものも約１割（２７件）ある。

8

２．事故防止に向けた取組

①事故防止のための取組と技術指針

②適正な安全費の計上

③建設システムにおける好循環

9

国土交通省の安全対策（要領・通達等）

• 公共工事の発注における工事安全対策要綱（Ｈ４．７．４）

• 建設工事公衆災害防止対策要綱（Ｈ５．１．１２）

• 工事事故データベース（ＳＡＳ）の構築（Ｈ５）

• 建設工事事故対策委員会設置（Ｈ１２．２．１０）

• 土木工事安全施工技術指針（Ｈ２１．３）

• 土木工事共通仕様書（Ｈ２２．３ 随時改定）

• 建設工事事故防止のための重点対策の実施（毎年通知）

（時系列順）

①事故防止のための取組と技術指針

10

公共工事の発注における工事安全対策要綱

1. 発注にあたっての安全施工への配慮

2. 設計段階における安全施工への配慮

3. 適正な積算の実施

4. 適切な工期の設定

5. 適正な仮設工及び施工方法の選定

6. 設計図書における施工条件の明示

7. 施工条件の変化への適切な対応

8. 請負業者の施工体制及び作業員の安全訓練の充実への配慮

9. 建設現場の作業環境の改善への配慮

10. 建設現場における連絡体制の充実

11. 工事の安全対策に向けた活動の充実

11

建設工事公衆災害防止対策要綱

1. 総則

2. 作業場

3. 交通対策

4. 軌道等の保全

5. 埋設物

6. 土留工

7. 覆工

8. 補助工法

9. 湧水等の処理

10. 建設副産物の処理

11. 埋め戻し

12. 機械・電気

13. 地下掘進工事

14. 高所作業

15. 型枠支保工、足場工

16. 火災及び酸素欠乏症の防止

17. その他

12

土木工事安全施工技術指針

1. 総則

2. 安全措置一般

3. 地下埋設物一般

4. 機械・装置・設備一般

5. 仮設工事

6. 運搬工

7. 土木工事

8. 基礎工事

9. コンクリート工事

10. 圧気工事

11. 鉄道付近の工事

12. 土石流の到達するおそれのある工事

13. 道路工事

14. 橋梁工事（架設工事）

15. 山岳トンネル工事

16. シールド・推進工事

17. 河川及び海岸工事

18. ダム工事

19. 構造物の取り壊し工事

13

建設工事事故防止対策委員会 概要

委員長：塩井幸武（八戸工業大学 名誉教授）

委員：２６名学識関係：５

建設業団体：８

行政：１１（厚生労働省含む）

発注団体：２

14

建設工事事故対策建設工事事故対策検討委員会検討委員会

本　省本　省

地方整備局地方整備局事故調査委員会事故調査委員会

事故調査事故調査特別委員会特別委員会

現地調査現地調査委員会委員会

工事事務所工事事務所

事　故事　故データベースデータベース

○事故の発生状況・事故　 原因等の調査

○個々の事故要因の分析を行い、再発防　　止に向けた技　　術的提案を行う

○全国の事故データや事故調査委員会の　 報告をもとに、再発防止の手法を探る

○技術基準の改訂等について検討を行う

技術基準等の改訂施工改善等の通知

全国の事故情報

過去の事故事例事故統計・分析等

全国・地整の事故情報

事故報告書

技術基準等の改訂施工改善等の通知

（重大事故の場合）

技術的提案など

情報の流れ

業務上の指示・依頼

情報の流れ

業務上の指示・依頼

事故情報の流れ

15

平成２２年度 建設工事事故防止のための重点対策

Ⅰ 発注者が実施する対策１．交通事故防止重点対策２．足場からの墜落事故防止重点対策３．法面からの墜落事故防止重点対策４．飛来落下事故防止重点対策５．工事事故防止に係る広報活動の推進６．安全活動の評価

Ⅱ 関係業団体が実施する対策１．交通事故防止重点対策○運転者の注意喚起、車両の抑動制止２．重機事故防止重点対策①ステッカー運動の推進②重機との接触事故の防止対策の推進３．足場からの墜落事故防止重点対策①「手すり先行工法等ガイドライン」による設置②足場の施工計画の充実、チェックリスト等の活用、経験者による点検、記録の保存４．法面からの墜落事故防止重点対策①昇降設備の設置の推進②法面施工管理技術者の資格取得③法面工事用仮設設備に関する安全対策５．飛来落下事故防止重点対策○チェックリスト等による点検６．各種事故共通重点対策①現場管理者、技能者、建設従事者等を対象とした安全教育の推進②建設業労働安全衛生マネジメントシステム等の導入の推進③表彰制度の推進④工事事故防止に係る広報活動の推進⑤安全活動に係る創意工夫の成果の提出

16

請負工事費の積算体系と安全費

17

②適正な安全費の計上

共通仮設費の内訳

• 運搬費

• 準備費

• 事業損失防止施設費

• 安全費

• 役務費

• 技術管理費

• 営繕費

• それぞれの項目について、率分と積上げによる計上分がある。

18

安全費の積算

• 安全費として積算する内容は次のとおり

1. 交通管理に要する費用

2. 安全施設等に要する費用

3. 安全管理等に要する費用

4. １～３．に掲げるものの他、工事施工上必要な安全対策等に要する費用

19

安全費の積算

• 共通仮設費率に含まれているもの

① 工事地域内全般の安全管理上の監視、あるいは連絡等に要する費用

② 不稼働日の保安要員等の費用

③ 掲示板、標識、保安燈、防護柵、バリケード、照明等の安全施設類の設置、撤去、補修に要する費用及び使用期間中の損料

④ 夜間作業を行う場合における照明に要する費用（大規模な照明設備を必要とする広範な工事を除く）

⑤ 河川、海岸工事における救命艇に要する費用

⑥ 長大トンネルにおける防火安全対策に要する費用

⑦ 酸素欠乏症の予防に要する費用

⑧ 粉塵作業の予防に要する費用（但し粉塵ガイドラインによるトンネルの粉塵対策は仮設工で計上）

⑨ 安全用品等の費用

⑩ 安全委員会等に要する費用20

安全費の積算

• 積上げする項目

① 交通誘導員及び機械の誘導員等の交通管理に要する費用

② 鉄道、空港関係施設等に近接した工事現場における出入り口等に配置する安全管理員等に要する費用

③ バリケード、転落防止柵、工事標識、照明等のイメージアップに要する費用

④ 高圧作業の予防に要する費用

⑤ 河川及び海岸の工事区域に隣接して、航路がある場合の安全標識・警戒船運転に要する費用

⑥ ダム工事における岩石掘削時に必要な発破・監視のための費用

⑦ トンネル工事における呼吸用保護具（電動ファン付粉塵用呼吸用保護具等）に要する費用

⑧ その他、現場条件により積み上げを要する費用21

安全に対する評定

※Ｈ２２．３．３１ 一部改正 22

③建設システムにおける好循環

事故に係る業者へのペナルティ等

事故等の発生

↓

指名停止・文書注意等の処分

↓

工事成績への反映

↓

総合評価の加算点へ反映

受注機会の減少

指名停止

工事実績として認めない

23

指名停止等の行政処分と工事成績の関係

過失の程度 被害状況 公衆災害 工事関係者

死亡（複数） ４～６ヶ月 ２～４ヶ月

死亡（１人） ３～４ヶ月 １～２ヶ月

重傷 ２～３ヶ月 １ヶ月

軽傷 １～２ヶ月 ２Ｗ～１月

物損重大 ２～３ヶ月 －

物損 １～２ヶ月 －

死亡（複数） ３～４ヶ月 １～２ヶ月

死亡（１人） ２～３ヶ月 １ヶ月

重傷 １～２ヶ月 ２Ｗ～１月

軽傷 １ヶ月 ２Ｗ

物損重大 １～２ヶ月 －

物損 １ヶ月 －

文書注意 文書注意

口頭注意 口頭注意安全管理は適切

直轄発注工事における事故と指名停止の関係

（この他に一般工事における処分もある）

著しく安全管理義務を怠った

安全管理の措置が不適切

行政処分工事成績の減点

３ヶ月以上 -20

２～３ヶ月 -15

１～２ヶ月 -13

２Ｗ～１ヶ月 -10

文書注意 -8

口頭注意 -5

その他（不問） -3

行政処分と工事成績の関係

24

安全工事へのインセンティブ

• 優良工事等施工者（安全対策）表彰

• 安全管理優良請負者表彰（関東地整）

• 工事成績への反映

総合評価の加点

受注機会の増大

25

３．事故事例

26

切梁とバックホウに挟まれ事故

27

重機の転倒

28

バックホウ掘削により通信線を切断（事前調査、立会をキッチリ実施することが重要）（事前調査、立会をキッチリ実施することが重要）

29

有線放送ケーブルをアームで切断

30

（（架空線の接触防止措置が不十分架空線の接触防止措置が不十分））

31

ダンプトラックの荷台で通信線を切断（（車両の走行前に荷台等の確認が重要車両の走行前に荷台等の確認が重要））

32

肩掛け式草刈り機により飛び石（（防護ネットを高くして飛散防止をはかる防護ネットを高くして飛散防止をはかる））

本来のルート近道

33

作業員が法面からいきおいがつき落下（近道行動をしてしまい！）（近道行動をしてしまい！）

34

もらい事故による死亡事故（後方から追突される）（後方から追突される）

４．事故防止への取組み事例

35

ハインリッヒの法則（１：２９：３００）

軽傷・・・２９件

重傷・１件 表に出るのは氷山の一角

災害を伴わないもの・・３００件

「不安全行動」「不安全状態」・・・数千件

悲惨な事故を無くすには、「無駄」や「バカらしい」と云われようが、地道で不屈な取組みが必要

36

事例 交通規制を光により気づかせる工夫（視認性の向上）

ﾊﾞﾙｰﾝﾗｲﾄ

電光式矢印板

電光式ｶﾞｰﾄﾞﾏﾝ

37

事例 気づかせる工夫（体感により知らせる）

体感マットにより「脇見・居眠り運転」を気づかせる工夫

速度センサー付き警報器によりスピードの出し過ぎを気づかせる工夫

38

事例 守る工夫（人的災害防止策）

ＬＥＤガードマンロボットにより人的災害を防止する工夫

39

事例 安全仮設備等の工夫（墜落災害防止）

昇降口に人感センサー付き看板を設置し、音声にて安全帯使用を促す40

事例 安全仮設備等の工夫（安全帯の使用練習台）

高所作業による墜落転落災害防止のため、地面に安全帯使用の訓練台を設置して、訓練を実施し墜落転落の意識を向上

41

事例 安全仮設備等の工夫（重機との挟まれ防止）

夜間舗設作業に伴い、転圧機械と作業員との接触事故防止のため、センサー付きの照明を設置

42

事故発生の原因 責 任

施工業者

コンサルタント地質調査会社

だけ・・ですか？

↑契約上は全て業者の責任

コンサルタント地質調査会社

43

建設事故の防止

• まとめ

ヒューマンエラー

知識／技術力の不足によるもの

モラルの欠如によるもの

技術力の向上

組織力（現場力）の向上

倫理観の向上

44

まとめ（労働災害防止に向けて）

• 発注者責任として

生産システムの好循環にむけての取組

インセンティブとペナルティ

事故防止対策

適正な安全管理費の計上

ヒューマンエラーの防止

45