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肝臓専門医

専攻研修カリキュラム(ver 3.2)

2019 年 10 月

一般社団法人日本肝臓学会

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I

目 次

I. 基本的事項

1. 肝臓の解剖・生理学 .............................................................................................................. 1 1)肝臓の基礎 A. 肝・胆道の解剖と機能

① 肝の解剖、区域、亜区域 ② 肝の脈管構造 ③ 肝臓の構成細胞、Zonation ④ 肝細胞の機能 ⑤ 胆道の構造と機能 ⑥ 薬物代謝 ⑦ アルコール代謝(遺伝的素因を含む) ⑧ 胆汁分泌機構

2)肝臓の基礎 B. 病態生理 ① ウイルス肝炎の発症機序(免疫の関与を含めて) ② ウイルス肝炎の臨床像と慢性化(特に B 型肝炎におけるゲノタイプの関与) ③ 肝炎ウイルスの感染様式 ④ HBe 抗原セロコンバージョンの意義 ⑤ 肝炎の再活性化の機序(de novo B 型肝炎含む) ⑥ 急性肝不全の発症機序 ⑦ 肝再生の機序 ⑧ 肝発癌の機序 ⑨ 肝細胞障害機序 ⑩ 肝性脳症の病態 ⑪ 肝線維化の機序 ⑫ インスリン抵抗性と肝疾患 ⑬ 肝硬変の機能評価法 ⑭ 一塩基多型(SNP)の意義と肝疾患診療との関連 ⑮ 門脈圧亢進症の病態 ⑯ 腹水の発生機序 ⑰ 黄疸・胆汁うっ滞の発生機序

2. 臨床症候と対応 ...................................................................................................................... 7

1)黄疸 2)腹水 3)肝・脾腫 4)門脈圧亢進症 5)内臓肥満

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II

3. 救急病態と対応 ...................................................................................................................... 8

1) 腹痛・急性腹症 ① 鑑別診断と救急対応 ② 急性胆囊・胆管炎、胆石発作

2)発熱と腹部症状 3)黄疸 4)意識障害

4. 全身システムと疾患 ............................................................................................................... 10

1)栄養と代謝 2)血液凝固と線溶現象 3)免疫異常、自己免疫性疾患

5. 臨床腫瘍学 ............................................................................................................................. 12

1)がん診療の基礎 ① がん生物学 ② がん病理 ③ 病期分類

2)がん診療における臨床試験 3)がん治療の基本原則

① がん告知と告知後のケア ② 緩和医療と終末期医療

4)がん治療方法 ① がん化学療法 ② 外科療法

6. 先端医療 ................................................................................................................................. 15

1)低侵襲治療(内視鏡下治療・腹腔鏡下治療を含む) 2)臓器移植 3)再生医療、iPS 細胞 4)がんの免疫療法

Ⅱ.肝疾患

1. 検査 ...................................................................................................................................... 17 1)肝機能検査

① 肝予備能評価

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III

② その他の肝機能検査 2)肝炎ウイルスマーカー ....................................................................................................... 18

① HAV 抗体、IgM HAV 抗体、HAV RNA ② HBs 抗原・抗体、HBe 抗原・抗体、HBc 抗体、IgM HBc 抗体、HBc 関連抗原、

HBV DNA、HBV ゲノタイプ、変異株、 ③ HCV 抗体、HCV RNA、HCV タイピング、HCV コア抗原、HCV core 領域アミノ

酸変異、ISDR、DAA 耐性変異 ④ HDV 抗体、HDV RNA(内科) ⑤ HEV 抗体、HEV RNA、IgA-HEV 抗体 ⑥ EBV、CMV(サイトメガロウイルス)

3)免疫学的検査 4)腫瘍マーカー

① AFP、レクチン結合型 AFP、② PIVKA-Ⅱ、③CEA、④CA19-9 5)線維化マーカー

① P-Ⅲ-P、② Ⅳ型コラーゲン、7S コラーゲン、③ ヒアルロン酸、④ M2BPGi、 ⑤オートタキシン

6)尿ビリルビン・ウロビリノーゲン 7)画像診断

① 腹部単純エックス線撮影 ② コンピュータ断層撮影 <CT> ③ 排泄性胆道造影 ④ 直接胆道穿刺法 ⑤ 腹部血管造影 ⑥ 核医学検査(肝胆道シンチグラフィ・アシアロシンチグラフィ) ⑦ 超音波検査 ⑧ 肝硬度評価法 ⑨ 磁気共鳴画像 ⑩ ポジトロンエミッション断層撮影 <FDG-PET> ⑪ 超音波誘導下穿刺・生検(肝生検、腫瘍生検を含む) ⑫ 胆道鏡検査 ⑬ 腹腔鏡検査

8)肝臓の病理診断 9)腹水穿刺検査 10)腹水一般検査 11)肥満度/体格指数 12)経口糖負荷試験、IRI、HOMA-R、HOMA-β

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IV

2. 食事・栄養療法・生活指導 .................................................................................................... 32 1)肝硬変に対する栄養療法

① 就寝前補食(Late eveninng snack; LES) ② 分割食

2)C 型肝炎に対する鉄制限食

3. 薬物療法 ................................................................................................................................. 32 1)肝作用薬(ウルソデオキシコール酸(UDCA)、グリチルリチン製剤) 2)肝不全・肝性脳症治療薬 3)利尿薬 4)分岐鎖アミノ酸製剤、アルブミン製剤 5)インターフェロン製剤・DAA および併用薬

① B 型肝炎に対する治療薬(インターフェロン) ② C 型肝炎に対する治療薬(インターフェロン、DAA、リバビリン)

6)核酸アナログ製剤 ① B 型肝炎に対する治療薬(核酸アナログ)

7)その他(ベザフィブラート、ビタミン C、E、インスリン抵抗性改善剤など) 8)ステロイド治療・免疫抑制薬治療 9)分子標的治療薬 10)予防薬

① 肝炎ワクチン ② 免疫グロブリン製剤 ③ 発癌予防薬

4 . 専門的治療法 ....................................................................................................................... 36

1) 原発性肝癌に対する非外科的治療 ① 肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈化学療法(TAI) ② 持続動注化学療法(HAIC) ③ 経皮的エタノール注入(PEI) ④ マイクロウエーブ凝固療法(MCT) ⑤ ラジオ波焼灼療法(RFA)(適応、偶発症も含めて) ⑥ がん化学療法(分子標的治療薬も含めて) ⑦ 放射線治療

2)原発性・転移性肝癌に対する外科治療(腹腔鏡手術を含む) ① 肝切除術式(葉切除、区域切除、亜区域切除など) ② 肝切除の適応疾患と適応条件 ③ 胆道再建法 ④ 腹腔鏡下肝切除術

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V

3)肝移植 ................................................................................................................................. 37 ① 肝移植の適応条件と適応疾患 ② 脳死肝移植の臓器分配 ③ 生体肝移植ドナーの適応基準 ④ 肝移植の合併症 ⑤ 肝移植後の抗ウイルス療法

4)門脈圧亢進症の治療 ........................................................................................................... 40 ① 食道(胃)バルーンタンポナーゼによる食道静脈瘤治療 ② バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(Balloon-occluded retrograde transvenous

obliteration: B-RTO) ③ 経皮経肝的門脈塞栓術 (Percutaneous transhepatic obliteration: PTO) ④ 経頸静脈的肝内門脈大循環短絡路(transjugular intrahepatic portosystemic shunt

: TIPS) ⑤ 経皮的シャント塞栓術 ⑥ 部分的脾動脈塞栓術・脾摘 ⑦ 内視鏡的治療

5)肝性脳症の治療 6)瀉血療法 7) 血漿交換、血液ろ過透析療法

5. 疾患 ........................................................................................................................................... 44 1)急性肝炎(A 型、B 型、C 型、D 型、E 型肝炎ウイルス、EB ウイルス(EBV)、サイトメ

ガロウイルス(CMV)による) ① 病因・病態・疫学 ② 急性肝炎の症状・重症度 ③ 急性肝炎の治療 ④ A 型急性肝炎 ⑤ B 型急性肝炎 ⑥ C 型急性肝炎 ⑦ D 型急性肝炎 ⑧ E 型急性肝炎 ⑨ EBV、 CMV による急性肝炎

2)劇症肝炎(急性肝不全) 3)慢性肝炎

① B 型慢性肝炎 ② C 型慢性肝炎 ③ 非 B 非 C 型肝炎

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VI

4)その他のウイルス肝炎 ....................................................................................................... 49 5) 自己免疫性肝炎<AIH> 6) 肝硬変(アルコール性、ウイルス性を含む) 7)カロリー病/先天性肝線維症 8) 原発性胆汁性胆管炎(PBC) 9) 原発性硬化性胆管炎(PSC) 10) 肝内胆汁うっ滞(進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)を含む) 11) アラジール症候群/非症候性肝内胆管減少症 ................................................................... 54 12) 先天性胆道閉鎖症 13) 閉塞性黄疸 14) 体質性黄疸 15) 薬物性肝障害 16) アルコール性肝障害 17) Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD) 18) 肝感染症

① 肝膿瘍(細菌性、アメーバ性) ② 肝寄生虫症 ③ リケッチア感染症(ツツガムシ病、日本紅斑熱) ④ Weil 病 ⑤ クラミジア、淋菌(Fitz–Hugh–Curtis 症候群) ⑥ 肝結核 ⑦ 肝梅毒

19)肝囊胞 20)肝血管腫 21)肝血管腫以外の肝良性腫瘍 22)原発性肝癌

① 肝細胞癌 ② 肝内胆管癌(胆管細胞癌) ③ その他の肝悪性腫瘍

23)転移性肝癌 24)門脈圧亢進症(食道・胃静脈瘤を含む) 25)特発性門脈圧亢進症 26)肝外門脈閉塞症 27)Budd-Chiari 症候群 28)肝中心静脈閉塞症 sinusoidal obstruction syndrome (SOS), veno‐occlusive disease

(VOD) 29)代謝性肝疾患

① 糖原病

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VII

② 肝アミロイドーシス ③ ヘモクロマトーシス ④ Wilson 病 ⑤ その他の代謝性肝障害(ポルフィリン症、シトルリン血症) ⑥ 尿素サイクル(代謝)異常症 ⑦ 脂質蓄積症(ライソゾーム病を含む) ⑧ シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞(neonatal intrahepatic cholestasis by

Citrin deficiency; NICCD) 30)放射線肝炎 ........................................................................................................................ 70 31)Reye 症候群 32)肝内結石症 33)全身疾患と肝

① 甲状腺疾患 ② 肝腎症候群 ③ 循環不全 ④ 自己免疫疾患(膠原病) ⑤ 血液疾患 ⑥ 消化器疾患 ⑦ 血球貧食症候群(Hemophagocytic syndrome;HPS) ⑧ HIV 感染症

34)特発性新生児肝炎症候群 35)妊娠と肝

6. 行政と肝疾患診療 ..................................................................................................................... 76

1)肝疾患診療に関する病診連携 ① 肝疾患連携拠点病院ならびに肝疾患診療ネットワーク ② 肝疾患治療パス

2) 肝疾患診療に関連する法律、制度 ① B 型肝炎感染防止対策 ② 肝炎対策基本法 ③ 肝炎治療特別促進事業(医療費助成制度) ④ 臓器移植法 ⑤ 身体障害者福祉法

3)感染症法

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VIII

Ⅲ 胆道疾患

1. 検査 .......................................................................................................................................... 80 1)肝胆道系酵素 総ビリルビン、直接ビリルビン、AST、ALT、γ-GTP、アルカリホス

ファターゼ<ALP>、アルカリホスファターゼアイソザイム 2)画像診断

① 腹部超音波検査 <US> ② コンピュータ断層撮影 <CT> ③ 磁気共鳴画像 <MRI、MRCP> ④ 胆道造影(排泄性胆道造影・直接胆道穿刺法) ⑤ 胆道鏡検査

2.専門的治療法............................................................................................................................ 80 1)胆道ドレナージ

3.外科手術 (腹腔鏡下手術も含む) ......................................................................................... 80

1)胆囊摘出術 2)胆管切開術 3)胆道消化管吻合術 4)肝切除術

4.胆道疾患 ................................................................................................................................... 82

1)良性疾患 ① 胆嚢結石症、胆嚢炎 ② 胆管結石、胆管炎、肝内結石 ③ Alagille 症候群

2)悪性疾患 ① 胆道腫瘍 ② 肝外胆管癌 ③ 胆嚢癌 ④ 十二指腸乳頭部癌

IV. 腹腔・腹壁疾患

1. 特発性細菌性腹膜炎(特発性細菌性腹膜炎も含む) .............................................................. 87

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I. 基本的事項

1. 肝臓の解剖・生理学 1)肝臓の基礎 A. 肝・胆道の解剖と機能 ① 肝の解剖、区域、亜区域

● 到達目標 ■ 肝の区域・亜区域と脈管との位置関係を正しく理解する。

● 知識 ■ 区域・亜区域を理解する。

② 肝の脈管構造 ● 到達目標

■ 肝臓の脈管構造を理解する。 ● 知識

■ 肝動脈、門脈、肝静脈、胆管の分岐様式を理解する。

③ 肝臓の構成細胞、Zonation ● 到達目標

■ 肝臓を構成する細胞ごとの機能、分布域による差異について理解する。 ● 知識

■ 肝細胞の立体構造、細胞表面の構造、細胞内小器官ごとの機能を理解する。 ■ 肝内胆管の亜分類、胆管細胞の構造と機能を理解する。 ■ 類洞内皮細胞の構造、機能を毛細血管と関連を理解する。 ■ Kupffer 細胞、肝星細、ピット細胞の構造と肝障害時の変化を理解する。 ■ 肝幹細胞を理解する。 ■ 肝臓の Zonation の分類、Zone 1、Zone 3 で行われる代謝を理解する。また Zone1、

Zone 3 が主に障害される病態を理解する。

④ 肝細胞の機能 ● 到達目標

■ 肝細胞で行われるさまざまな代謝機能を理解する。 ● 知識

i. 蛋白・アミノ酸・アンモニア代謝 ■ 肝臓における蛋白の合成経路、分解経路を理解する。 ■ 肝臓におけるアミノ酸合成の概要、分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸との代謝の違い

を理解する。 ■ 非代償性肝硬変、劇症肝炎におけるアミノ酸代謝の特徴を理解する。

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■ アンモニアの生成及び分解のしくみ、分岐鎖アミノ酸のアンモニア代謝における役割 を理解する。

■ 高アンモニア血症の原因を理解する。 ii. 糖代謝

■ 肝臓における糖代謝の概要を理解する。 ■ 解糖系の概要を理解する。 ■ クエン酸回路の概要を理解する。 ■ 電子伝達系の概要を理解する。 ■ ペントースリン酸回路の概要を理解する。 ■ 糖新生の概要を理解する。

iii. 脂質代謝 ■ 肝臓における脂肪酸合成の概要を理解する。 ■ 肝臓における脂肪酸分解の概要を理解する。 ■ 肝臓におけるコレステロール代謝の概要を理解する。

iv. ビリルビン代謝 ■ 肝臓におけるビリルビン代謝の概要を理解する。 ■ 高ビリルビン血症をきたす疾患と、それぞれの疾患で上昇するビリルビンの種 類について理解する。

v. 胆汁酸代謝 ■ 胆汁酸の機能について理解する。 ■ 胆汁酸の腸肝循環について理解する。 ■ 胆汁酸代謝の代謝について理解する。

⑤ 胆道の構造と機能 ● 到達目標

■ 胆道の構造と機能の概略を理解する。 ● 知識

■ 胆道を図示し、肝内胆管・肝外胆管・胆管・胆嚢の構造を理解する。 ■ 胆汁の組成と作用を理解する。 ■ 胆汁分泌における胆管・胆嚢・Oddi 括約筋の役割と機能を理解する。

⑥ 薬物代謝 ● 到達目標

■ 肝臓における薬物代謝の目的と主な反応機構を理解する。 ■ 薬物相互作用、プロドラッグ、薬物性肝障害や発癌との関連を学ぶ。

● 知識 ■ 薬物代謝における第 1 相反応と第 2 相反応を理解する。 ■ 薬物相互作用のメカニズムの概略を CYP の誘導や阻害を例に理解する。

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■ プロドラッグの特徴を理解する。 ■ 薬物の代謝産物による肝障害や発癌について理解する。

⑦ アルコール代謝(遺伝的素因を含む) ● 到達目標

■ 肝臓でのアルコール代謝と遺伝的多型の影響、アルコール性肝障害への関連に つき理解する。

● 知識 ■ アルコールの吸収から代謝までの経路について理解する。 ■ 肝臓でのエタノール代謝と肝障害の発生機序について理解する。 ■ 肝臓でのアルコール代謝の特徴について理解する。 ■ アルデヒド脱水素酵素(Aldehyde Dehydrogenase:ALDH)、特に ALDH2 の遺

伝子多型と疾患との関連について理解する。

⑧ 胆汁分泌機構 【Ⅰ-1)-⑤ 胆道の構造と機能の項 参照 】 ● 到達目標

■ 胆汁を構成する主要成分とその分泌機構を理解する。 ● 知識

■ 胆汁の組成と胆汁分泌の意義を理解する。 ■ 胆汁主要成分の構成とその分泌機構を理解する。 ■ 十二指腸への分泌機構を理解する。

2) 肝臓の基礎 B. 病態生理 ① ウイルス肝炎の発症機序(免疫の関与を含めて) ● 到達目標

■ ウイルス肝炎の発症にかかわる免疫応答の働きを理解する。 ● 知識

■ 肝炎ウイルス感染時の細胞障害機序を理解する。 ■ ウイルス肝炎の組織像と肝障害発症機序を理解する。 ■ 肝臓における免疫担当細胞の役割を理解する。

② ウイルス肝炎の臨床像と慢性化(特に B 型肝炎におけるゲノタイプの関与) ● 到達目標

■ ウイルス肝炎の自然経過をよく理解し、病状や病状把握に必要な検査について 理解する。

■ B 型肝炎に関しては、ゲノタイプ別の自然経過を理解する。 ● 知識

■ 急性感染後の経過を理解する。B 型肝炎ではゲノタイプ別に理解する。

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■ 慢性化後の経過を理解する。B 型肝炎ではゲノタイプ別に理解する。 ③ 肝炎ウイルスの感染様式

● 到達目標 ■ 肝炎ウイルスの主な感染経路を理解する。

● 知識 ■ 肝炎ウイルス別に主な感染経路を理解する。とくに、B 型肝炎に関しては、ゲノ

タイプ別の感染経路を理解する。 ■ 各ウイルスに応じて、垂直感染あるいは水平感染の原因を理解する。 ■ 各ウイルスに応じた感染予防法を理解する。 ④ HBe 抗原セロコンバージョンの意義

● 到達目標 ■ HBe 抗原と肝炎の病態との関係を理解する。

● 知識 ■ HBe 抗原の産生について理解する。

■ HBV プレコア、コアプロモーター領域変異と HBe 抗原の関係について理解する。 ■ HBe 抗原の臨床的意義について理解する。 ■ HBe 抗原のウイルス学的意義について理解する。 ■ HBe 抗原セロコンバージョンの臨床的意義を理解する。 ⑤ 肝炎の再活性化の機序(de novo B 型肝炎含む)

● 到達目標 ■ B 型肝炎再活性の機序と病態を理解する。 ■ B 型肝炎再活性化のリスク因子を理解する。

● 知識 ■ B 型肝炎再活性化の機序を理解する。 ■ 非活動性 HBV キャリア、あるいは既往感染者での B 型肝炎再活性化(de novo B

型肝炎)について理解する。 ■ C 型肝炎 DAA 治療時の再活性化を理解する。 ■ 再活性化が起きた場合の予後を理解する。 ■ 再活性化の予防投薬を理解する。 ⑥ 急性肝不全の発症機序

● 到達目標 ■ 急性肝障害が肝不全に進行する機序を理解する。

● 知識 ■ 急性肝不全の概念を理解する。

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■ 広汎(亜広汎)肝細胞死を惹起する機序(過剰免疫・炎症、内因性炎症反応、変異ウ イルス、循環障害)を理解する。

■ 主要な病態(肝性脳症・脳浮腫、血液凝固障害、systemic inflammatory response syndrome、肝再生不全)を理解する。 ⑦ 肝再生の機序

● 到達目標 ■ 肝臓の再生機序を理解する。

● 知識 ■ 肝再生を来たす病態について理解する。

■ 肝再生の際に産生される各種増殖因子及びそのシグナル伝達経路について理解する。

⑧ 肝発癌の機序 ● 到達目標

■ 肝発癌の病因と分子メカニズムを理解する。 ● 知識

■ 肝発癌の原因となる背景疾患、疫学を理解する。 ■ B 型肝炎ウイルス、C 型肝炎ウイルスが肝発癌に及ぼす影響を理解する。 ■ 多段階発癌を学ぶ。 ■ 炎症性発癌の機序、経過を理解する。 ⑨ 肝細胞障害機序

● 到達目標 ■ 肝細胞障害と炎症、線維化の関連について理解する。

● 知識 ■ 肝細胞障害と肝細胞死の関連について理解する。 ■ アポトーシスが多くの肝疾患の病態に関与することを理解する。 ■ アポトーシスの機序と肝線維化、炎症との関係について理解する。 ⑩ 肝性脳症の病態

● 到達目標

■肝性脳症起因物質の由来と肝の生理的解毒機構との関連を理解する。

■症候、検査所見から、臨床病型、昏睡度および誘因を判定し、治療計画を

立案する。

● 知識

■ 発生に関わる因子とその機序を理解する。

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■ 診断方法と昏睡度評価、臨床病型を理解する。 ■ 血液生化学および栄養代謝異常、血中アミノ酸組成の変化を理解する。 ■ 脳 MRI や脳波所見を理解する。 ■ 潜在性肝性脳症を理解する。 ⑪ 肝線維化の機序

● 到達目標 ■ 肝線維化に関与する各種因子ならびにそのメカニズムを理解する。

● 知識 ■ 肝線維化を来たす原因を理解する。 ■ 肝組織において、肝線維化に関与する細胞とその特徴を把握する。 ■ 肝線維化を促す各種因子と、その相互関係を学ぶ。 ⑫ インスリン抵抗性と肝疾患

● 到達目標 ■ インスリン抵抗性と肝疾患の関係を理解し、検査・治療計画を立案する。

● 知識 ■ インスリン抵抗性の指標と病態を理解する。 ■ 非アルコール性脂肪性肝疾患ならびに C 型慢性肝炎との関係を理解する。 ■ 肝硬変におけるインスリン抵抗性の発生機序を理解する。 ■ インスリン抵抗性を基盤とする肝発癌のリスクを理解する。 ■ 改善のための治療法ならびに生活習慣を理解する。 ⑬ 肝硬変の機能評価法

【 II-1-1)-① 肝予備能評価の項 参照 】

⑭ 一塩基多型(SNP)の意義と肝疾患診療との関連 ● 到達目標

■ SNP が肝疾患の病態、治療効果に与える影響について理解する。 ● 知識

■ SNP とその検出方法であるゲノムワイド関連分析法(genome-wide association study:GWAS)について理解する。 ■ IL-28B 遺伝子近傍の SNP(rs8099917)の意義について理解する。 ■ ITPA 遺伝子の機能的 SNP(rs1127354)の意義について理解する。 ■ B 型肝炎ウイルスの持続感染にかかわる SNP について理解する。(内科) ■ 肝細胞癌に関連する SNP の現状について理解する。 ■ 脂肪性肝疾患に関連する SNP の現状について理解する。(内科)

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⑮ 門脈圧亢進症の病態

● 到達目標 ■ 門脈圧亢進症の原因となる疾患と病態を理解する。 ■ 合併症である食道・胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃症、門脈圧亢進症性腸症、脾機能亢

進症、腹水、肝性脳症の治療法を学ぶ。 ● 知識

■ 門脈圧亢進症の定義(門脈圧 200mmH2O 以上)を理解する。 ■ 門脈圧亢進症の原因となる疾患を理解する。 ■ 門脈亢進症の診断法、治療法を学ぶ。 ■ 門脈亢進症の合併症およびその治療法について概説できる。 ■ 合併症である食道・胃静脈瘤。門脈圧亢進症性胃症.門脈圧亢進症性腸症、脾機能亢

進症、腹水、肝性昏睡の治療法を学ぶ。

⑯ 腹水の発生機序 ● 到達目標

■ 腹水の発生機序とその関連因子を理解する。 ● 知識

■ 肝硬変に伴う腹水の発生機序についてその概略を理解する。 ■ overflow 説、underfilling 説および末梢動脈拡張説について理解する。 ■ 肝硬変腹水発生に関連する諸因子(肝性因子、腎性因子、全身循環動態因子)につい

て理解する。 ■ 肝硬変に伴う低ナトリウム血症について、バゾプレッシンの役割を理解する。

⑰ 黄疸・胆汁うっ滞の発生機序

● 到達目標 ■ 黄疸・胆汁うっ滞の病態と機序を理解する。

● 知識 ■ 黄疸の 3 つの発生機序(ビリルビンの産生亢進・運搬の障害・排泄障害)を理解し、

代表的な疾患とそのメカニズムを理解する。 ■ 肝外胆汁うっ滞と肝内胆汁うっ滞について、それぞれ発症機序を理解する。 2. 臨床症候と対応

1)黄疸 【 I-3-3) 黄疸の項 参照 】 2)腹水 【 I-1-2)-⑯ 腹水の発生機序、II-1-9) 腹水穿刺検査、II-1-10) 腹水一般

検査の項 参照 】 3)肝・脾腫

● 到達目標

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■ 肝・脾腫の原因となる疾患と病態を理解する。 ● 知識

■ 肝腫大をきたす病態と疾患を理解する。 ■ 脾腫をきたす病態と疾患を理解する。

● 技能

■ 身体診察により肝腫大と脾腫を判断できる。 ● 態度

■ 画像診断により脾腫を判断する基準を説明する。 4)門脈圧亢進症 【 I-1-2)-⑮ 門脈圧亢進症の病態の項 参照 】 5)内臓肥満

● 到達目標 ■ 内臓肥満の病態、原因、意義を理解し、治療に結びつける。

● 知識 ■ 内臓肥満の病態を理解する。

● 技能 ■ 身体診察や画像診断により内臓肥満を判断する基準を説明できる。

● 態度 ■ 内臓肥満に対する治療法を説明する。 3. 救急病態と対応 1) 腹痛・急性腹症 ① 鑑別診断と救急対応

● 到達目標 ■ 腹痛・急性腹症の原因、鑑別診断を理解し、適切な治療を行う。

● 知識 ■ 腹痛・急性腹症をきたす疾患を理解する。 ■ 部位別の鑑別診断を学ぶ。 ■ 鑑別に必要な検査を理解する。

● 技能 ■ 身体診察により腹痛のなかから、急性腹症をきたす疾患の鑑別と重症度の判断が

できる。 ■ 速やかに疼痛管理と全身管理ができる。 ■ 診断に必要な血液検査や画像診断を指示できる。 ■ 専門医へのコンサルトも含め、適切な治療法が選択できる。

● 態度

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■ 病態を適切に患者と家族に説明できる。 ② 急性胆囊・胆管炎、胆石発作

● 到達目標 ■ 胆道感染症の診断、重症度判定、初期治療、非観血的・観血的治療について理解す

る。 ● 知識

■ 急性胆嚢炎・胆管炎の原因と胆石の成因を理解する。 ■ 急性胆嚢炎・胆管炎の診断基準と重症度判定基準を理解する。

● 技能 ■ 理学所見(Murphy 徴候、Charcot 三徴など)、画像検査(腹部超音波検査、 CT

MRCP、超音波内視鏡など)、血液検査等から適切な診断を行える。 ■ 適切な初期治療、経皮的・内視鏡的ドレナージ、内視鏡的治療(胆管結石除去術)を

選択・施行すると共に、重症度に応じた非観血的・観血的治療が選択できる。 ■ 重症度を判定し全身管理を行える。

● 態度 ■ 急性期の適切なマネジメント(初期治療・感染コントロール・全身管理)を行う。 ■ 外科的治療のタイミングを逸しない。 2)発熱と腹部症状

● 到達目標 ■ 発熱や腹部症状をきたす病態について理解する。

● 知識 ■ 発熱や様々な腹部症状(腹痛、悪心・嘔吐、吐血・下血、下痢・便秘等)をきたす病

態・原因を理解する。 ● 技能

■ 病態生理を踏まえた鑑別診断を行える。 ■ 理学所見、画像検査、血液検査等から、 急性腹症を適切かつ迅速に診断できる。 ■ 適切な初期治療や感染症の管理ができる。 ■ 適切なタイミングで外科的治療を選択できる。

● 態度 ■ 消化器疾患に限らず、全身疾患の表現型として症状・病態を捉えられる。 ■ 急性期の適切なマネジメント(初期治療・感染コントロール)を行う。

3)黄疸 ● 到達目標

■ 黄疸をきたす病態について理解する。 ● 知識

■ 黄疸・胆汁うっ滞をきたす病態・原因を理解する。

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■ ビリルビンの代謝(産生・運搬・排出・抱合)を理解する。 ● 技能

■ 理学所見、画像検査、血液検査等から黄疸の重症度、緊急度を判断できる。 ■ 原因としての急性肝不全、慢性肝不全を鑑別できる。 ■ 閉塞性黄疸に対して内視鏡的あるいは経皮的ドレナージの適応を判断できる。

● 態度 ■ 黄疸をきたす疾患に関して病態生理を踏まえて鑑別診断を行う。

4) 意識障害 ● 目標

■ 肝性脳症の病態と原因を理解し、他科との連携を含めた適切な対応を行う。 ■ 肝性脳症とそれ以外の成因による意識障害の鑑別診断を学ぶ。

● 知識 ■ 肝性脳症の病態、誘因、特徴的な所見(肝性口臭、羽ばたき振戦など)を学ぶ。 ■ 肝性昏睡度分類を理解する。 ■ 血液浄化療法の意義・適応を理解する。

● 技能 ■ 意識レベルを的確に把握・評価し、肝性昏睡度分類に従って診断できる。 ■ ベッドサイドでできる簡単な意識障害診断のテスト(記号追跡試験など)を説明、実施

できる。 ■ 誘因・原因に応じた治療(生活習慣、食事療法、分岐鎖アミノ酸療法、薬物治療)を行

い、 的確な管理・モニターを行うことができる。 ● 態度

■ 意識障害に対し、転倒ほかの危険回避を行う。 ■ 肝性脳症の病態と原因を患者・家族に説明する。 ■ 肝性脳症の患者の心理的側面に配慮する。 ■ 急性肝不全、特に昏睡型の場合は、迅速に病態を把握し、全身管理、肝臓移植が可能

な専門施設へ搬送する。 4. 全身システムと疾患 1)栄養と代謝

● 目標 ■ 栄養と消化器疾患との関連を理解し、健康時および疾患時におけるに栄養素の消化・

吸収、代謝、および栄養状態の評価法、改善・治療法を修得する。 ● 知識

■ 健康時、疾患時における栄養素の消化・吸収、代謝を理解する。 ■ ビタミン、ミネラル、電解質の役割とそれらの過剰時、欠乏時の病態を理解する。 ■ 特定の栄養素の摂取を制限する必要がある病態・疾患と対応策を理解する。

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■ 特定の栄養素の摂取が必要な病態・疾患と対応策を理解する。 ■ 経口摂取ができない病態とその対策を理解する。 ■ サルコペニアの病態とその対応策を理解する。

● 技能 ■ 主観的、理学的、臨床検査所見から、栄養評価を行うことができる。 ■ 特定の栄養素の摂取を制限すべき、あるいは補充すべき病態・疾患を判断できる。 ■ 経腸栄養、経静脈栄養の適応を判断し、必要な場合、実施できる。 ■ 経皮内視鏡的胃ろう造設術〈PEG〉の適応を判断し、必要な場合、実施できる。 ■ 病態に応じて、適切な経腸栄養剤を選択し経腸栄養を実施できる。 ● 態度 ■ 患者の栄養状態の把握、改善に努める。 ■ 患者・家族に食事療法の重要性を指導する。 2)血液凝固と線溶現象

● 目標 ■ 血液凝固異常、線溶異常が関連する消化器疾患の病態と原因、対処法を学ぶ。

● 知識 ■ 血液凝固と線溶のカスケード、関与する因子を理解する。 ■ 血液凝固異常、線溶異常が関連する消化器疾患、病態を理解する。 ● 技能

■ 病歴聴取(特に既往歴、家族歴)、身体所見から血液凝固異常、線溶異常が関連する病 態を推定し、適切な検査を指示あるいは実施できる。

● 態度 ■ 検査結果に基づき、病態、疾患に応じた薬物療法、補充療法を行う。 3)免疫異常、自己免疫性疾患

● 到達目標 ■ 肝臓における免疫の基礎、免疫異常の病態、自己免疫性肝疾患の病態・原因・診断・

治療を学ぶ。 ● 知識

■ ヒトの免疫機構の概略を理解する。 ■ 免疫異常と関連する肝病態、自己免疫性肝疾患を理解する。 ■ 自己免疫性肝疾患の消化器外合併症を理解する。 ■ 自己免疫性肝疾患の治療を理解する。

● 技能 ■ 病歴聴取、身体所見から免疫異常と関連する肝病態、自己免疫性肝疾患であることを

推定し、適切な検査を指示あるいは実施できる。

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■ 検査結果に基づき、病態、疾患に応じた薬物療法を実施できる。 ● 態度

■ 自己免疫性肝疾患の合併症の早期発見・早期治療のための適切なマネジメントを行 う。

■ 自己免疫性肝疾患の原因、病状、今後起こりうる病態について患者・家族に説明す る。

■ 自己免疫性肝疾患の進展予防のための治療法ならびに生活習慣について、患者・家 族に説明する。

5. 臨床腫瘍学 1)がん診療の基礎 ① がん生物学 ● 到達目標

■ 発がん、増殖、浸潤、転移のプロセスと免疫による制御について学ぶ。 ● 知識

■ 遺伝子の正常の構造とその異常、機能発現の制御(細胞内シグナル伝達、プログラム 細胞死、不死化、血管新生、浸潤・転移のメカニズム)について理解する。

■ がんに関する細胞性ならびに体液性免疫機構を理解する。 ■ 腫瘍の抗原性、免疫調節性の抗腫瘍細胞傷害性、サイトカインの腫瘍への作用など腫

瘍と宿主免疫機構の相互関係を理解する。 ② がん病理

● 到達目標 ■ 病理診断の方法と重要性を理解する。

● 知識 ■ 肝細胞癌の病理分類を理解する。 ■ 胆管細胞癌の病理像を理解する。 ■ 原発性肝癌の病理検査技術(病理学的分子マーカー、免疫組織染色)を理解する。 ③ 病期分類

● 到達目標 ■ 原発性肝癌の臨床病期分類を理解し、実際の患者の臨床病期を正しく判定する。

● 知識 ■ 一般的な癌の病期分類(TNM 分類)を理解する。 ■ 肝細胞癌における T 因子を理解する。 ■ 肝細胞癌における脈管侵襲の評価の仕方を理解する。 ■ 胆管細胞癌における T 因子を理解する。

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2)がん診療における臨床試験

● 到達目標 ■ 臨床試験の意義と研究倫理を理解し、臨床試験のデザインを学ぶ。

● 知識 ■ 臨床試験で主に用いられる統計手法を理解する。 ■ 臨床第 I、 II、 III 相の違いを理解する。 ■ 治験審査委員会の意義を理解する。 ■ 利益相反について説明でき、自らの自己申告ができる。 3)がん治療の基本原則 ① がん告知と告知後のケア

● 到達目標 ■ がん患者一般の精神的・社会的側面を理解し、個々のがん患者およびその家族の状

況を考慮したがんの告知を行うために必要な技能、態度を修得し、実践する。また、告知後の患者、家族の支援システムについて理解し、チーム医療の中で実践する。

● 知識 ■ がん患者の適応障害、うつ病、せん妄について理解する。 ■ がん患者の社会生活の制限、就労支援の制度について理解する。 ■ 終末期ケア、死別のプロセスについて理解する。

● 技能 ■ 患者にとって好ましくないことを伝えるための面接技能を習得する。 ■ 患者の精神的状態に応じて、精神科医あるいは臨床心理士に適切にコンサルトする技

能を修得する。 ● 態度

■ がん患者およびその家族に担当医としてがんの告知を行い、協力して治療に向かう良好な関係を築く。

■ 患者個別の問題点を理解して共感的な姿勢で診療する。 ■ 告知後のがん患者の治療を担当医として行い、終末期医療を行う。 ■ チーム医療のリーダーとして他職種連携を円滑に進めると共に、就労支援、緩和ケ

ア、終末期ケアなどの社会的リソースを適切に利用する。 ② 緩和医療と終末期医療

● 到達目標 ■ 緩和医療について十分に理解し適切に実践する。

● 知識 ■ 終末期の身体・精神症状を理解する。 ■ WHO の疼痛ラダーおよび疼痛に対する薬物療法を理解する。

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■ 症状緩和に関する種々の対処法を理解する。 ■ 緩和ケアスタッフの専門的役割および緩和ケア病棟(ホスピス)を理解する。

● 技能 ■ 疼痛に対する治療を適切に行うことができる。 ■ 緩和ケア医療の適応を判断できる。 ■ 集学的に緩和医療を行うことができる。 ■ 薬物の副作用に対して適切に対応できる。

● 態度 ■ 個々の患者に応じた緩和ケアを適切に行う。 ■ 薬物の副作用対策を適切に行う。 ■ 患者の希望に応じ、緩和ケア病棟(ホスピス)を紹介する。 4)がん治療方法 ① がん化学療法

● 到達目標 ■ がん化学療法について十分に理解し、適切に実施する。

● 知識 ■ 適応、リスクとベネフィットを理解する。 ■ 有害事象共通用語規準(CTCAE)を理解する。 ■ 有害事象をあげ、それに対する支持療法を理解する。 ■ 抗腫瘍効果の評価方法 RECIST(Response evaluation criteria in solid tumors)および

mRECIST(modified RECIST)を理解する。 ● 技能

■ がん化学療法における薬剤の投与量と投与スケジュールの設定ができる。 ■ がん化学療法による有害事象を CTCAE により評価し、適切に対応できる。 ■ RECIST および mRECIST による治療効果判定を行うことができる。

● 態度 ■ 個々の患者におけるがん化学療法の適応を集学的に検討する。 ■ 適応となる標準的化学療法を選択し、安全に遂行する。 ■ 患者の状態に応じて投与量の変更や投与スケジュールの調整を行う。 ■ 治療の有効性と安全性を判定する。 ② 外科療法

● 到達目標 ■ 外科療法の適応と限界について理解する。

● 知識 ■ 適応および合併症を理解する。 ■ 外科療法の役割(病期決定のための手術、根治的手術、姑息的手術、緩和のための手

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術)を理解する。 ■ 他の治療法との優劣および併用を理解する。

● 技能 ■ 手術療法の適応を判断できる。 ■ 患者に対し、外科療法の効果と他の治療法との相違について説明できる。 ■ 治療の有効性と安全性を判定できる。

● 態度 ■ 治療法の選択は、自らの判断を患者に押しつけず、他の治療法の可能性を呈示した上

で最終的な決定は患者自身に委ねる。 6. 先端医療 1)低侵襲治療(内視鏡下治療・腹腔鏡下治療を含む)

● 到達目標 ■ 肝疾患領域における低侵襲治療の現状を理解し、適応と限界および他の治療法との相

違を学ぶ。 ● 知識

■ どの様な低侵襲治療が開発されていて実際の臨床現場で施行可能であるかを理解する。

● 技能 ■ 低侵襲治療の適応と限界および他治療法と比較して理解できる。

● 態度 ■ 低侵襲治療に関する最新の知識を常に獲得する。 ■ 低侵襲治療の利点と欠点を患者に説明できる。 2)臓器移植

● 到達目標 ■ 一般的な治療法では患者の病態が改善できない場合の治療の選択肢として、肝移植を

理解する。 ● 知識

■ 肝移植における適応基準を理解する。 ■ 肝移植後の免疫抑制状態における特殊な病態と対応法を理解する。 ■ 肝移植の前後で起こり得る合併症とその発症機序、対処法を理解する。 ■ 臓器移植法を概説できる。

● 技能 ■ 移植手術担当施設と連携してレシピエントおよびドナー(生体肝移植の場合)の術前

評価ができる。 ■ 移植手術担当施設と移植前後の連携を取ることができる。

● 態度

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■ 肝移植の適応基準と移植適応ガイドラインおよび臓器移植法を説明できる。 ■ 生体肝移植の場合、移植のドナーになることを暗に強制しない。 ■ レシピエントおよびドナー(生体肝移植の場合)の心理状態に寄り添う。 ■ 移植コーディネーター、精神科医師およびその他のスタッフと協力する。 ■ 移植手術担当施設と密接な連絡体制を構築する。

3)再生医療、iPS 細胞 ● 到達目標

■ 再生医療や iPS 細胞における研究開発の現状を把握する。 ● 知識

■ 再生医療と iPS 細胞の倫理的背景を理解する。 ■ 再生医療と iPS 細胞に関する研究開発の現状を理解する。 ■ 再生医療と iPS 細胞医療の利点と欠点を理解する。

● 技能 ■ 再生医療と iPS 細胞の治療応用に関して患者に説明できる。 ■ 再生医療と iPS 細胞がどの様に応用可能か説明できる。

● 態度 ■ 再生医療と iPS 細胞に関する最新の研究に関する情報を収集する。

4)がんの免疫療法 ● 目標

■ がんの免疫療法の基本理論、有害事象を理解すると共に、現行治療の効果と課題を 把握する。

● 知識 ■ 治療理論と方法を理解する。 ■ 有害事象を理解する。 ■ 免疫関連肝障害の診断法、治療法を理解する。

● 技能 ■ 免疫療法について、適応、効果、限界を説明できる。

● 態度 ■ 免疫療法に関する最新の知見、治験・臨床試験の進捗をフォローする。 ■ 免疫療法を希望する患者・家族に対しては、情報を収集して提供する。

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Ⅱ.肝疾患

1. 検査 1)肝機能検査 ① 肝予備能評価(Child‐Pugh スコア、肝障害度)

● 到達目標 ■ 日常臨床に応用しうる、肝硬変の機能評価法の特徴について理解する。

● 知識 ■ Child‐Pugh スコア、MELD スコアの算定方法を理解する。 ■ 肝障害度分類の分類方法を理解する。 ■ 非蛋白呼吸商(npRQ)の定義・基準値・臨床的意義を理解する。 ■ 間接カロリメトリーの代替指標としての、身体計測による上腕周囲長(arm

circumference:AC)による評価を理解する。 ● 技能

■ 画像検査・組織学的検査など血液検査以外に各種検査も含めて、肝硬変の重症度を 適切に評価することができる。

■ 肝硬変に伴う合併症についても適切な検査を立案し、その結果を正しく評価して治療介入の必要性を判断できる。

■ 間接熱量測定(間接カロリメトリー;indirect calori-metry)による栄養評価ができる。

■ 間接カロリメトリーの代替指標として%AC を用いることができる。 ■ 測定結果をエネルギー栄養サポートの適応と治療効果判定に反映させることができ

る。 ● 態度

■ 肝硬変の合併症の早期発見・早期治療のための適切なマネジメントを行う。 ■ 肝硬変の原因、病状、今後起こりうる病態について患者・家族に説明する。 ■ 肝硬変の進展予防病態のための治療法ならびに生活習慣について、患者・家族に説明

する。 ■ npRQ 測定の意義について患者に説明する。 ■ 管理栄養士と協力し、定期的に患者および家族に栄養指導を行う。 ② その他の肝機能検査

血清酵素(AST、ALT、LDH、LDH アイソザイム、ALP、ALP アイソザイム、LAP、γ–GTP、Cholinesterase)血清ビリルビン、血清総蛋白、蛋白分画、アルブミン、 免疫グロブリン、 血清コレステロール、 血中アンモニア、血漿遊離アミノ酸、BCAA/AAA比、血中総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR)、血清胆汁酸、プロトロンビン時間、へパプラスチンテスト、アンチトロンビンⅢ、 Rapid turnover protein (レチノール結合蛋白、プレアルブミン)、 肝細胞増殖因子(HGF)、 セルロプラスミン、 微量元

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素 (Fe、 Cu、 Zn)、ビタミン、α1–アンチトリプシン(α1–AT)、フェリチン、ICG 試験(ICG15 分値、KICG、ICGRmax)、レプチン、血清脂質(TG、 HDL/LDL‐C、空腹時血糖、HbA1c、グリコアルブミン、CRP

● 到達目標

■ 各種血液生化学検査についての意義を理解し、適切な検査と正しい評価を行う。 ● 知識

■ 検査の種類を理解する。 ■ 検査の内容・意義を理解する。

● 技能 ■ 病態に応じて必要な検査指示を的確に行うことができる。 ■ 異常値に関する文献検索・ガイドライン等からの情報収集ができる。 ■ 検査値の程度に応じて重症度・鑑別疾患が想定できる。 ■ 検査値の異常を理解・解釈し、鑑別診断を行うことができる。

● 態度 ■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 結果を患者・家族に適切に説明できる。 ■ 緊急性を要する検査値異常に関して他スタッフとの協調的態度に配慮する(含、多職

種連携)。 2)肝炎ウイルスマーカー

● 到達目標 ■ 各種肝炎ウイルスマーカーの意義を理解する。

① A 型、B 型、C 型、D 型、E 型 ① HAV 抗体、IgM-HAV 抗体、HAV RNA ● 知識

■ HA 抗体の意義について理解する。 ■ IgM-HA 抗体の意義について理解する。 ■ HAV RNA の意義について理解する。

② HBs 抗原・抗体、HBe 抗原・抗体、HBc 抗体、IgM-HBc 抗体、HBV コア関連抗原、HBV DNA、HBV ゲノタイプ、変異株

● 知識 ■ HBs 抗原、HBs 抗体の意義を理解する。 ■ HBc 抗体、 IgM–HBc 抗体の意義を理解する。HBs 抗原陰性・HBc 抗体陽性の意義

を理解する。 ■ HBe 抗原産生のメカニズム、HBe 抗体の臨床的意義を理解する。 ■ HBe 抗原セロコンバージョンの意義を理解する。

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■ HBe 抗原の産生を低下させる変異を理解する。 ■ HBV DNA、HBV コア関連抗原の意義を理解する。 ■ プレコア変異、コアプロモーター変異検査の意義を理解する。 ■ HBV ゲノタイプの意義を理解する。

③ HCV 抗体、HCV RNA、HCV タイピング(セロタイプ、ゲノタイプ)、HCV コア抗原、HCV core 領域(70 番・91 番)アミノ酸変異、ISDR(interferon sensitivity determining region)、DAA 耐性変異

● 知識 ■ HCV 抗体、 HCV RNA の意義を理解する。 ■ HCV コア抗原の意義を理解する。 ■ HCV セロタイプ、HCV ゲノタイプの関係と意義を理解する。 ■ HCV core 領域(70 番・91 番)アミノ酸変異の意義を理解する。 ■ ISDR(interferon sensitivity determining region)の意義を理解する。 ■ DAA 耐性変異(NS3/4A 領域、NS5A 領域、NS5B 領域)と DAA 治療効果との関連

を理解する。

④ HDV 抗体、HDV RNA(内科) ● 知識

■ HDV 抗体の意義を理解する。 ■ HDV RNA の意義を理解する。

⑤ HEV 抗体、HEV RNA、IgA-HEV 抗体 ● 知識

■ HEV 抗体の意義を理解する。 ■ HEV RNA の意義を理解する。 ■ IgA-HEV 抗体の意義を理解する。

⑥ EBV、CMV(サイトメガロウイルス) ● 知識

■ 抗 VCA IgM 抗体、抗 EBNA 抗体の意義を理解する。 ■ CMV 抗原血症検査、定量 PCR 検査の意義を理解する。

上記の項目①から⑥に共通して ● 技能

■ 病態に応じて必要な検査指示を的確に行うことができる。 ■ 異常値に関する文献検索・ガイドライン等からの情報収集ができる。 ■ 検査値の程度に応じて重症度・鑑別疾患が想定できる。

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■ 検査値の異常を理解・解釈し、鑑別診断を行うことができる。 ● 態度

■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 結果を患者・家族に適切に説明できる。 ■ 緊急性を要する検査値異常に関して他スタッフとの協調的態度に配慮する。(含、多

職種連携)

3)免疫学的検査 免疫グロブリン、抗核抗体、抗 DNA 抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体、LKM 抗体、リンパ球刺激試験、免疫複合体、補体、リンパ球表面マーカー

● 到達目標 ■ 各種免疫学検査の内容についての意義を理解し、適切な検査と正しい評価を行う。

● 知識 ■ 各種肝疾患における免疫グロブリンの上昇を理解する。 ■ 各種肝疾患における自己抗体の出現頻度および意義を理解する。 ■ 主に薬物性肝障害におけるリンパ球刺激試験(DLST〉の基本的原理および意義を理

解する。 ● 技能

■ 病態に応じた適切な検査を指示できる。 ■ 検査結果に応じて、適切な診療計画を立てることができる。 ■ 検査値の異常を理解・解釈し、鑑別診断を行うことができる。 ■ 検査値の程度に応じて重症度を想定することができる。

● 態度 ■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 結果を患者・家族に適切に説明する。 4)腫瘍マーカー ① AFP、レクチン結合型 AFP、② PIVKA-Ⅱ、③CEA、④CA19-9

● 到達目標 ■ 腫瘍マーカーの特徴、おおよその感度・特異度と、偽陰性・偽陽性を理解する。

● 知識 ■ 診断に必要な腫瘍マーカー項目を指示しその測定結果を理解する。 ■ マーカーの異常を示す疾患の鑑別に必要な検査を理解する。 ■ 結果に基づいた治療法を理解する。

● 技能 ■ 適切に鑑別のための検査を進め診断できる。 ■ 結果に基づいた適切な治療を行うことができる。 ■ 異常値に関する文献検索・ガイドライン等から情報収集できる。

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● 態度 ■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 結果に基づいた適切な病状の説明、治療について適切に患者・家族に説明する。 5) 線維化マーカー

① P-Ⅲ-P、② Ⅳ型コラーゲン、7S コラーゲン、③ ヒアルロン酸、④ M2BPGi、⑤オートタキシン

● 到達目標 ■ 各線維化関連マーカーの意義、検査結果を理解し、検査値の程度に応じて

鑑別疾患を学ぶ。 ● 知識

■ 検査の種類を理解する。 ■ 追加検査の必要性とその意義を理解する。

● 技能 ■ 病態に応じて必要な検査指示を的確に行うことができる。 ■ 検査値の異常を理解・解釈し、鑑別診断を行うことができる。 ■ 異常値に関する文献検索・ガイドライン等から情報収集できる。

● 態度 ■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 検査値異常を患者・家族に説明する。 6) 尿ビリルビン・ウロビリノーゲン

● 到達目標 ■ 肝胆道系障害と溶血性疾患の鑑別において、それぞれの検査の組み合わせが有用

であることを理解し、その結果を解釈する。 ■ 検査値の程度に応じて、重症度・鑑別疾患を学ぶ。

● 知識 ■ 両検査の意義と目的を理解する。 ■ 肝胆道系疾患と溶血性疾患を鑑別するための追加検査の必要性とその意義を理解す

る。 ● 技能

■ 病態に応じて必要な検査指示を的確に行うことができる。 ■ 検査値の異常を理解・解釈し、鑑別診断を行うことができる。 ■ 検査値の異常の程度から緊急性を判断できる。 ■ 異常値に関する文献検索・ガイドライン等から情報収集できる。

● 態度 ■ 検査値異常を有する患者の症状や疾患背景に配慮する。 ■ 検査値異常を患者・家族に説明する。

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7) 画像診断

① 腹部単純エックス線撮影 ● 到達目標

■ 肝胆道疾患診断の際の腹部単純エックス線撮影の適応と画像所見を把握する。 ● 知識

■ 特徴、他の画像検査との違いを理解する。 ● 技能

■ 検査結果に基づき鑑別診断をあげ、検査計画を立てることができる。 ■ 肝・脾腫に確認、腹水のチェック、腸管ガス像の確認、腹腔内遊離ガスの確認、異

物や石灰化の確認ができる。 ● 態度

■ 肝胆道系の診断はもとより腹部診断全般の把握につとめる。 ② コンピュータ断層撮影 <CT>

● 到達目標 ■ 肝胆道疾患の診断における CT の位置づけを把握し、適応と限界について理解す

る。 ● 知識

■ 他の画像検査との原理、撮影方法の違いを理解し、適応疾患、禁忌を理解する。 ■ 多相造影 CT の質的診断の有用性を理解する。 ■ 造影剤の種類、副作用、禁忌、副作用発生予防法および発生時の対応を理解する。

● 技能 ■ 検査目的に応じた適切な検査を選択できる。 ■ 造影剤の副作用および漏出、疼痛等の合併症に迅速な対応ができる。 ■ 急性肝炎、脂肪肝、肝硬変、Wilson 病、PBC、肝内ガスなどのびまん性肝疾患を診

断できる。 ■ 肝細胞癌、肝内胆管癌、肝血管腫、限局性結節性過形成(FNH)、肝膿瘍などの肝

腫瘤性病変を診断できる。 ● 態度

■ 検査の意義と必要性を適切に説明し、患者・家族から同意を得る。 ■ 検査結果を患者の心情に配慮して適切に説明する。

③ 排泄性胆道造影 ● 到達目標

■ DIC-CT の理論を学び、所見を理解する。 ● 知識

■ 他の画像検査との原理、撮影方法の違いを理解し、適応疾患を学ぶ。

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■ 禁忌の条件を理解する。 ■ 総胆管結石の検出能を理解する。

● 技能 ■ 検査目的に応じた適切な検査を選択できる。 ■ 画像所見より適切な診断ができる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を適切に説明し、患者・家族から同意を得る。 ■ 検査結果を患者の心情に配慮して適切に説明する。

④ 直接胆道穿刺法 ● 到達目標

■ 直接胆道穿刺法手技の概要と偶発症への対策法を理解する。 ● 知識

■ 他の画像検査との原理、違いを理解し、適応疾患を学ぶ。 ■ 検査が必要なタイミングを理解する。

● 技能 ■ 検査目的に応じた適切な穿刺部位を選択できる。 ■ 適切な画像を得るための経皮的穿刺ができる。 ■ 画像所見より適切な診断ができる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を適切に説明し、患者・家族から同意を得る。 ■ 検査結果を患者の心情に配慮して適切に説明する。 ⑤ 腹部血管造影

i. 動脈造影 ● 到達目標

■ 肝臓の血管造影法、解剖学的特徴、撮影目的を理解する。 ● 知識

■ 検査の原理、方法を理解する。 ■ 適応および限界を理解する。 ■ 合併症、禁忌を理解する。 ■ 造影剤の種類、副作用、禁忌、および種々の合併症を理解する。

● 技能 ■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。 ■ 腹腔動脈、上腸間膜動脈、固有肝動脈、右・左肝動脈の選択造影が行える。 ■ 区域診断と破格動脈の有無が判断できる。

● 態度

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■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。 ■ 放射線障害にも配慮する。

ii. 静脈造影 ● 到達目標

■ 肝臓の血管造影法、解剖学的特徴、撮影、治療目的を理解する。 ● 知識

■ 検査の原理、方法について理解する。 ■ 適応および限界について理解する。 ■ 合併症、禁忌について理解する。 ■ 造影剤の種類、副作用、禁忌、および種々の合併症を理解する。

● 技能 ■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。 ■ 大腿静脈または頚静脈から肝静脈の選択造影が行える。 ■ Budd-Chiari 症候群における破格静脈が判断できる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。 ■ 放射線障害にも配慮する。

iii. 門脈造影 ● 到達目標

■ 肝臓の血管造影法、解剖学的特徴、撮影、治療目的を理解する。 ● 知識

■ 検査の原理、方法を理解する。 ■ 適応および限界を理解する。 ■ 合併症、禁忌を理解する。 ■ 造影剤の種類、副作用、禁忌、および種々の合併症を理解する。 ■ 経皮経肝的門脈造影法(PTP) および経皮経肝的門脈塞栓術(PTPE)の適応およ

び手技を理解する。 ● 技能

■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。 ■ 経皮経肝的門脈造影法(PTP) により門脈の選択造影が行える。 ■ 経皮経肝的門脈塞栓術(PTPE)を行える。 ■ 門脈圧の測定や血行動態の解析が行える。

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● 態度

■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。 ■ 放射線障害にも配慮する。

⑥ 核医学検査(肝胆道シンチグラフィ・アシアロシンチグラフィ) i. 肝胆道シンチグラフィ ● 到達目標

■ 肝胆道シンチグラフィの原理を理解する。 ■ 肝胆道シンチグラフィの臨床応用を理解する。

● 知識 ■ 検査の原理、方法を理解する。 ■ 適応および限界を理解する。 ■ 合併症、禁忌を理解する。 ■ 造影剤の種類、副作用、禁忌、および種々の合併症を理解する。

● 技能 ■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。 ■ 急性胆嚢炎、総胆管拡張症、乳児黄疸の鑑別、肝細胞癌、体質黄疸の鑑別、胆汁漏出

の検出、PTCD 内瘻術や胆道再建術後の通過性の評価できる。 ● 態度

■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。 ■ 放射線障害にも配慮する。

ii. アシアロシンチグラフィ ● 到達目標

■ アシアロシンチグラフィの原理を理解する。 ■ アシアロシンチグラフィの臨床応用を学ぶ。

● 知識 ■ 検査の原理、方法について理解する。 ■ 適応および限界について理解する。 ■ 合併症、禁忌を理解する。 ■ LHL15、HH15 などの算出法を理解する。

● 技能 ■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。

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■ 診断能力 ■ びまん性肝疾患、限局性肝疾患などを LHL15、HH15 の値から鑑別できる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。 ■ 放射線障害にも配慮する。

⑦ 超音波検査 ● 到達目標

■ 基礎知識を理解し、超音波を使った診断や治療へ応用する。 ■ 肝疾患に伴う形態の変化から、その病態や病理を理解する。

● 知識 ■ 造影エコーを含む腹部超音波の原理、特徴、他の画像検査との違いを理解する。 ■ 背景肝病変に伴い生じる変化、特に肝臓の形態や肝実質の変化、付随所見(リンパ

節、腹水、側副血行路、脾臓、胆囊を理解する。 ■ ドプラ法の内容・意義を理解する。 ■ 各種限局性病変(腫瘍性)の特徴を理解する。 ■ アンギオエコー・超音波内視鏡を理解する。

● 技能 ■ 超音波検査を自ら実施できる。 ■ 検査結果に基づいて鑑別診断をあげ、次の検査計画を立てることができる。 ■ ソナゾイドを使用した造影エコーを指導医のもとで実施し診療に活用することが

できる。 ■ びまん性肝疾患の病態(質的診断や進行度・重症度)を評価できる。 ■ 腫瘍性肝病変の質的診断を行って鑑別することができる。

● 態度 ■ 患者に検査の意義と必要性を説明する。 ■ 検査結果を患者の心情に配慮して適切に説明する。 ■ 超音波検査にこだわらず、他の画像検査と適切に組み合わせて診療を行う。

⑧ 肝硬度評価法 ● 到達目標

■ 種類と原理を理解する。 ● 知識

■ 肝硬度の評価法の必要性を学ぶ。 ■ 各検査の原理を理解する。 ■ 各検査の特徴を理解し、検査法を選択する。

● 技能

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■ 肝硬度を評価する検査を行う、もしくは介助する。 ■ 検査結果を評価し、それに応じた方針を立案する。 ■ 肝硬度の検査の適応を判断できる。

● 態度 ■ 検査の必要性を患者・家族に説明する。 ■ 結果、治療方針を患者・家族に説明する。

⑨ 磁気共鳴画像 i. MRI (EOB-MRI、 SPIO-MRI) ● 到達目標

■ 患者の病態に合わせた撮像条件や造影剤を選択し、正確な診断をする。 ● 知識

■ 原理、撮像条件および使用する造影剤の特性について理解する。 ■ 各撮像条件および各種造影剤の使用下における正常像と異常像を理解する。

● 技能 ■ 各撮像条件および各種造影剤条件下における肝実質、脈管(動脈、静脈及び門脈)

の見え方の違いを指摘できる。 ■ 各撮像条件および各種造影剤条件下における肝腫瘤の見え方の違いを指摘できる。 ■ 胆嚢(胆嚢胆管および胆嚢頚部・胆嚢体部・胆嚢底部)を指摘し正常像と異常像の

鑑別ができる。 ■ 膵臓および主膵管(膵頭部・膵体部・膵尾部)を指摘し、正常像と異常像の鑑別が

できる。 ■ 胆管・胆嚢・膵臓と周辺臓器(肝臓・脾臓・消化管・血管)との関連を解釈できる。

● 態度 ■ 結果に基づいた適切な治療方針を決定すると共に、病状の説明、治療について適切

に患者・家族に説明する。 ii. MRCP ● 到達目標

■ 患者の病態に合わせた正しい撮像条件や薬剤(造影剤を使用するか否か、鎮痙剤を 投与するか)を選択し、正しい診断を行う。

● 知識 ■ 原理および撮像条件・使用する薬剤を理解する。 ■ 胆管の正常像と異常像を理解する。 ■ 胆嚢(胆嚢胆管および胆嚢頚部・胆嚢体部・胆嚢底部)を指摘し正常像と異常像の

鑑別を理解する。 ■ 主膵管(膵頭部・膵体部・膵尾部)を指摘し、正常画像と異常画像を理解する。

● 技術

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■ 撮像条件および使用する薬剤を適切に設定することができる。 ■ 各撮像条件および各種薬剤の使用条件下における正常像と異常像の鑑別ができる。 ■ 胆管や膵管閉塞の、拡張や狭小化から病変の違いを指摘できる。 ■ 胆嚢(胆嚢胆管および胆嚢頚部・胆嚢体部・胆嚢底部)を指摘し 正常画像と異常

画像の鑑別ができる。 ■ 膵臓および主膵管(膵頭部・膵体部・膵尾部)を指摘し、正常画像と異常画像の鑑

別ができる。 ● 態度

■ 結果に基づいた適切な病状の説明.治療について適切に患者・家族に説明する。

⑩ ポジトロンエミッション断層撮影 <FDP-PET> ● 到達目標

■ 検査の原理、実施法、特徴と限界を理解し、画像を読影する。 ● 知識

■ 検査の原理、方法について理解する。 ■ 適応および限界について理解する。 ■ 合併症、禁忌を理解する。

● 技能 ■ 病態に応じて適切に検査指示を行うことができる。 ■ 得られた画像において異常所見を指摘できる。 ■ 肝細胞癌、転移性肝癌、胆嚢癌・胆管癌、その他の悪性腫瘍の診断ができる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。

⑪ 超音波誘導下穿刺・生検(肝生検、腫瘍生検を含む) ● 到達目標

■ 当該患者における超音波誘導下生検の必要性を理解する。 ■ 検査の具体的な目的、方法、合併症、禁忌を理解する。

● 知識 ■ 当該患者における検査の必要性を理解する。 ■ 検査の具体的な目的を十分に理解する。 ■ 検査の方法ならびに検査前、検査後に必要な処置を理解する。 ■ 検査による合併症への対応を理解する。 ■ 検査の対する禁忌事項をよく理解する。

● 技能 ■ 検査の方法をよく理解し、独力で実施できる。 ■ 検査の合併症に迅速に対応できる。

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■ 慢性肝疾患のおける病因、肝組織評価が診断できる。 ■ 肝腫瘍における悪性病変を診断できる。

● 態度 ■ 検査の必要性、方法、合併症について、患者・家族に説明し、同意を得る。

■ 検査の結果ならびに今後の方針について、患者・家族に適切に説明する。 ■ 検査の結果に応じた方針が立案できる。

⑫ 胆道鏡検査

● 到達目標 ■ 適応を理解し、観察、処置までの一連の流れを学ぶ。 ■ 最近の進歩と今後の課題を学ぶ。

● 知識 ■ 検査の原理、方法を理解する。 ■ 適応および限界を理解する。 ■ 経皮経肝胆道鏡と経口胆道鏡のそれぞれの長所、短所を理解する。

● 技能 ■ 適応と禁忌を判断できる。 ■ 重篤な合併症の発生に際して迅速に対応ができる。 ■ 胆管癌、IPNB 例などの診断ができる。 ■ 原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎合併胆管狭窄などと悪性所見との鑑別できる。

● 態度 ■ 検査の意義と必要性を患者・家族へ十分な説明を行い、同意を得る。 ■ 得られた結果を患者の心情を配慮しながら、適切に説明する。

⑬ 腹腔鏡検査 ● 到達目標

■ 必要性を理解する。 ■ 検査の方法と合併症を学ぶ。 ■ 検査の結果を解釈し、その後の方針を理解する。

● 知識 ■ 当該患者における検査の必要性を理解する。 ■ 検査の具体的な目的を理解し、超音波誘導下生検との違いを理解する。 ■ 検査の方法を理解する。

● 技能 ■ 検査の結果が解釈でき、それに応じた方針が立案できる。 ■ 検査施行時の補助ができる。 ■ 肝表面像から肝硬変の診断ができる。 ■ 特徴的な肝表面像から、自己免疫性肝炎は原発性胆汁性胆管炎が診断できる。

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● 態度

■ 検査の必要性、方法、合併症について、患者・家族に説明する。 ■ 検査の結果ならびにそれに応じた方針について、患者・家族に説明する。 8)肝臓の病理診断

● 到達目標 ■ 各種肝疾患の典型的な病理組織像を把握する。

● 知識 ■ 正常肝組織像について理解する。

■ 各特殊染色について学ぶ。 ■ 新犬山分類について理解する。 ■ 肝疾患に特徴的な組織像について学ぶ。

● 技能 ■ 病理所見から各肝疾患の病態を評価し、治療方針を立案できる。 ■ 病理所見と他の検査結果から、肝臓の病態、肝腫瘍を診断できる。

● 態度 ■ 病理の検査結果ならびに治療方針を、患者・家族に説明する。

9)腹水穿刺検査 ● 到達目標

■ 安全な腹水穿刺の手技を理解し、検査結果を評価する。 ● 知識

■ 検査の方法、合併症、禁忌を理解する。 ■ 診断に必要な腹水検査項目を学ぶ。 ■ 腹壁の血管走行などの解剖学を理解する。

● 技能 ■ 腹水穿刺の適応を判断する。 ■ 検査の方法を理解し、安全に独力で実施できる。 ■ 検査の合併症に迅速に対応する。 ■ 検査の結果を解釈し、それに応じた治療方針を立案する。 ■ 腹水の原因疾患を診断する。

● 態度 ■ 検査の必要性、方法、合併症について、患者・家族に説明し、同意を得る。 ■ 検査の結果ならびに今後の方針について、患者・家族に適切に説明する。 10)腹水一般検査

● 到達目標

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■ 腹水一般検査の種類とその目的を理解する。 ● 知識

■ 滲出性腹水と漏出性腹水を鑑別する。 ■ 滲出性腹水、漏出性腹水のそれぞれの原因となる疾患の鑑別を行う。 ■ 診断に必要な腹水検査項目を理解する。

● 技能 ■ 検査結果を評価し、鑑別に必要な他の検査を考慮する。 ■ 腹水と他の検査結果をふまえ、腹水の原因を鑑別でき、方針を立案する。 ■ 腹水の原因疾患を診断する。

● 態度 ■ 腹水の検査結果と治療方針について患者・家族に説明する。 11)肥満度/体格指数

● 到達目標 ■ BMI(body mass index)の重要性を理解する。

● 知識 ■ BMI を計算し肥満度を評価する。 ■ 肥満と生活習慣病などの合併症について理解する。 ■ 肥満と NAFLD との関連を学ぶ。

● 技能 ■ 肥満とその関連疾患に対する検査計画を実施する。 ■ 肥満とその関連疾患に対する治療を実施する、もしくは専門医にコンサルトする。 ■ 肥満とその関連疾患を診断する。

● 態度 ■ 肥満度を評価し、合併症、治療方針を患者・家族に説明する。 12) 経口糖負荷試験、IRI、HOMA-R、HOMA-β

● 到達目標 ■ インスリン抵抗性・糖尿病に関する諸検査を理解し、日常診療で活用する。

● 知識 ■ インスリン抵抗性・糖尿病の診断に必要な検査を理解する。 ■ インスリン抵抗性・糖尿病の病態を学ぶ。 ■ インスリン抵抗性・糖尿病と肝疾患の関連を理解する。 ■ インスリン抵抗性・糖尿病に対する治療を学ぶ。

● 技能 ■ インスリン抵抗性・糖尿病を診断する。 ■ 糖尿病とその合併症を診断する。

● 態度

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■ 検査の結果ならびに今後の方針について、患者・家族に説明する。 ■ インスリン抵抗性・糖尿病に関して適切に専門医にコンサルトする。

■ 検査の結果を解釈し、それに応じた方針を立てる。 2. 食事・栄養療法・生活指導

1) 肝硬変に対する栄養療法 【 II-5-6)肝硬変の項 参照 】 ① 就寝前補食(Late eveninng snack; LES) ② 分割食

2) C 型肝炎に対する鉄制限食 【 II-5-3)C 型慢性肝炎の項 参照 】 3. 薬物療法

1)肝作用薬(ウルソデオキシコール酸(UDCA)、グリチルリチン製剤) ● 到達目標

■ 肝作用薬の選択ならびに各々の治療方法、治療効果ならびに副作用を理解する。 ● 知識

■ 肝作用薬は、抗ウイルス療法が非適応例あるいは無効例に対して、肝臓の炎症を軽 減させるための治療であることを理解する。

■ 各々の肝作用薬の治療適応、治療方法ならびに治療効果と副作用を理解する。 ● 技能

■ 各々の肝庇護療法における治療適応を理解し、適切な肝庇護療法を選択できる。 ■ 肝庇護療法を実施し、治療効果や副作用出現の程度に応じて、薬剤投与量の調整や

治療の継続あるいは中止・終了の判断ができる。 ● 態度

■ 治療方針とその選択理由について、患者・家族にわかりやすく説明する。 ■ 実施する治療の予測される効果、可能性のある副作用ならびに肝疾患の予後改善

効果について、患者・家族に説明する。 ■ B 型・C 型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会編)を参照する。 2)肝不全・肝性脳症治療薬

● 到達目標 ■ 胸腹水・浮腫、低アルブミン血症、肝性脳症などの肝不全の病態を理解する。

● 知識 ■ 胸腹水・浮腫や低アルブミン血症のその他の要因を除外し、肝性脳症の誘因・増悪

因子などを理解する。 ■ 各種薬物療法を理解する。 ■ 代表的薬物療法について、作用機序、治療上の注意、副作用、禁忌などを理解する。 ■ 薬物療法以外の治療法(食事療法、観血的処置など)を理解する。

● 技能

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■ 浮腫、胸腹水については、各種利尿剤の使い分け、アルブミン製剤、観血的処置(穿 刺ドレナージ、CART など)につき、病態に応じて行うことができる。

■ 低アルブミン血症について、LES を含めた薬物療法を適切に行うことができる。 ■ 肝性脳症を呈する患者の意識レベルを的確に把握・評価し、肝性昏睡度分類に基づ

き診断できる。 ■ 肝性脳症について、肝の重症度および昏睡度を判定し、誘因や増悪因子、臨床病型

および合併症の有無を把握して、病態に応じた治療薬を使うことができる。意識障 害の原因となる他の要因を除外することができる。

■ 副作用の対策や治療効果判定を行うことができる。 ● 態度

■ 浮腫・胸腹水について、病態を患者・家族に説明すると共に改善・QOL の維持に努 める。

■ 肝性脳症の病態と原因を患者・家族に説明すると共に肝性脳症の患者の心理的側 面に配慮する。

■ 肝性脳症の患者の心理的側面に配慮する。病態の変化に応じて、薬物の投与量やス ケジュールを考える。

■ 人工肝補助療法は、急性肝不全あるいは末期肝硬変では肝移植までの bridging therapy のみであることを家族に説明すると共に、劇症肝炎ではタイミングを失するこ

となく、全身管理および肝移植可能な施設に搬送する。 3) 利尿薬

● 到達目標 ■ 肝疾患における利尿剤治療の適応を学ぶ。 ■ 各種利尿剤の作用機序、特徴、副作用を理解する。

● 知識 ■ 肝硬変における体液貯留や電解質異常の機序を理解する。 ■ 各種利尿剤の作用機序、特徴、副作用を理解する。 ■ 肝性浮腫では腎機能の悪化や低ナトリウム血症をきたさない利尿剤の使用が重要

であることを理解する。 ● 技能

■ 腎機能保護を念頭に置いて、利尿剤の選択を行うことができる。 ■ 利尿剤の投与に際しては、治療効果や副作用出現の程度に応じて、薬剤投与量の調

整や治療の継続あるいは中止・終了の判断ができる。 ● 態度

■ 治療方針とその選択理由、効果、副作用について、患者・家族にわかりやすく説明 する。

■ 利尿剤治療に抵抗性がある場合、ヒト血清アルブミン製剤の併用投与、腹水穿刺排 液や CART を考慮する。

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4) 分岐鎖アミノ酸製剤、アルブミン製剤 【 II-5-6)肝硬変の項 参照 】

5) インターフェロン製剤・DAA および併用薬【 II-5-3)①B 型慢性肝炎、②C 型慢性肝炎の

項 参照 】 ① B 型肝炎に対する治療薬(インターフェロン) ② C 型肝炎に対する治療薬(インターフェロン、DAA、リバビリン)

6) 核酸アナログ製剤 【 II-5-3) ① B 型慢性肝炎の項 参照 】

① B 型肝炎に対する治療薬(核酸アナログ) 7)その他(ベザフィブラート、ビタミン C、E、インスリン抵抗性改善剤など)

● 到達目標 ■ 肝疾患における各薬剤治療の適応を理解する。 ■ 各々の薬剤の治療適応、治療方法ならびに治療効果と副作用を理解する。

● 知識 ■ 原発性胆汁性胆管炎では、UDCA で肝機能が改善しない場合、ベザフィブラート併

用が考慮されることを理解する。 ■ 非アルコール性脂肪肝に対する薬物療法として、インスリン抵抗性改善薬や抗酸

化療法(ビタミン C、ビタミン E)が考慮されることを理解する。 ■ 各薬剤治療の方法、効果ならびに副作用を理解する。

● 技能 ■ 肝疾患における各薬剤治療の適応が理解できる。 ■ 薬剤の実施に際しては、治療効果や副作用出現の程度に応じて、薬剤投与量の調整

や治療の継続あるいは中止・終了の判断ができる。(内科) ● 態度

■ 治療方針とその選択理由について、患者・家族にわかりやすく説明する。(内科) ■ 実施する治療の予測される効果、可能性のある副作用ならびに肝疾患の予後改善

効果について、患者・家族に説明する。(内科)

8) ステロイド治療・免疫抑制薬治療 【 II-5-5)自己免疫性肝炎の項 参照 】

9) 分子標的治療薬 【 II-5-22)原発性肝癌の項 参照 】

10)予防薬 ① 肝炎ワクチン

● 到達目標 ■ A 型肝炎ワクチンの適応、接種方法、効果を理解する。

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■ B 型肝炎ワクチンの適応、接種方法、効果を理解する。 ● 知識

■ A 型肝炎ワクチンの接種が必要な対象者を理解する。 ■ A 型肝炎ワクチンの接種スケジュールを理解する。 ■ B 型肝炎ワクチンの接種が必要な対象者を学ぶ。 ■ B 型肝炎ワクチンの接種スケジュールを理解する。 ■ B 型肝炎ワクチンに対するエスケープ変異株を理解する。

● 技能 ■ 抗体価を的確に評価することができる。

● 態度 ■ 低反応、無反応者に対して的確に対応する。

② 免疫グロブリン製剤 ● 到達目標

■ 高力価抗 HBs ヒト免疫グロブリン(HBIG)の適応、接種方法、効果を理解する。 ● 知識

■ 母子感染予防としての HBIG の使用法について理解する。 ■ 曝露後予防としての HBIG の使用法について理解する。 ■ 肝移植後の HBIG の使用法について理解する。

● 技能 ■ 対象者に HBIG の必要性を十分説明した上で適切に投与できる。

● 態度 ■ HBIG が血液製剤であることを知った上で適切に投与する。

③ 発癌予防薬 ● 到達目標

■ 肝発癌予防や実践的モダリティを理解する。 ● 知識

■ 抗ウイルス薬による発癌予防の機序を理解する。 ■ 肝庇護薬及び分岐鎖アミノ酸の発癌予防を理解する。

● 技能 ■ 発癌予防目的の抗ウイルス剤投与を適切に行うことができる。

● 態度 ■ 発癌予防目的の薬剤投与には十分なエビデンスが揃っていないものもあることを、

患者や家族に説明する。

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4 . 専門的治療法 1)原発性肝癌に対する非外科的治療 【 II-5-22)原発性肝癌の項 参照 】

① 肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈化学療法(TAI) ② 持続動注化学療法(HAIC) ③ 経皮的エタノール注入(PEI) ④ マイクロウエーブ凝固療法(MCT) ⑤ ラジオ波焼灼療法(RFA)(適応、偶発症も含めて) ⑥ がん化学療法(分子標的治療薬も含めて) ⑦ 放射線治療

2)原発性・転移性肝癌に対する外科治療(腹腔鏡手術を含む) ① 肝切除術式(葉切除、区域切除、亜区域切除など) ● 到達目標

■ 肝臓の解剖を十分理解したうえで、種々の肝切除術式を学ぶ。 ● 知識

■ 外科的治療について、術式を理解する。 ● 技能

■ 葉切除、区域切除、亜区域切除の術式を説明できる。 ■ 診断能力:各外科手術の適応を知り、内科治療との治療選択をおこなえる。

● 態度 ■ 病名告知に際し患者・家族の心情に十分に配慮する。 ■ 外科手術の必要性や内容を患者・家族にわかりやすく説明する。

② 肝切除の適応疾患と適応条件 ● 到達目標

■ 肝切除の適応疾患やその適応条件を理解する。 ● 知識

■ 肝切除の適応疾患を理解する。 ■ 良性疾患:肝嚢胞、肝血管腫、限局性結節性過形成(FNH)、悪性疾患:肝細胞

癌、肝内胆管癌、転移性肝癌、肝門部・上部胆管癌、胆嚢癌、肝切除の適応条件を理解する。

■ 残肝容量、腹水の有無、総ビリルビン値、ICG 値などにより適応となる術式を理解する。

● 技能 ■ 残肝機能、残肝容量を評価できる。 ■ 画像所見より肝切除の適応疾患が鑑別できる。 ■ 画像所見より肝切除の適応が判断できる。

● 態度

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■ 外科手術の必要性や内容を患者・家族にわかりやすく説明する。 ③ 胆道再建法

● 到達目標 ■ 各種胆道再建法と各再建法の適応、長所、短所を理解する。

● 知識 ■ 胆管空腸吻合、胆管十二指腸吻合、胆管胆管吻合、それぞれの吻合の長所短所を

理解する。 ■ 合併症、吻合部狭窄に対する治療法を理解する。

● 技能 ■ 胆道再建法の術式を決定できる。 ■ 胆管空腸吻合、胆管十二指腸吻合、胆管胆管吻合の適応を判断できる。 ■ 合併症、吻合部狭窄を診断できる。

● 態度 ■ 外科手術の必要性を患者・家族にわかりやすく説明する。 ■ 外科手術の内容を患者・家族にわかりやすく説明する。

④ 腹腔鏡下肝切除術 ● 到達目標

■ 腹腔鏡下肝切除術の適応、長短所を理解する。 ● 知識

■ 腹腔鏡下肝切除術が適する条件を理解する。 ■ 腹腔鏡下肝切除術特有の合併症を理解する。 ■ 腹腔鏡下肝切除術の長短所を開腹肝切除と比して理解する。

● 技能 ■ 腹腔鏡下肝切除術の適応となりうる症例を拾い上げ、外科医にコンサルトできる。 ● 態度 ■ 腹腔鏡下肝切除術の内容と長短所を患者・家族にわかりやすく説明する。

3)肝移植 ① 肝移植の適応条件と適応疾患

● 到達目標 ■ 肝移植レシピエントの適応基準を理解する。

● 知識 ■ 肝移植の適応条件を理解する。 ■ 生体肝移植の適応疾患を理解する。 ■ 脳死肝移植の適応疾患を理解する。 ■ 肝細胞癌に対する適応条件としてのミラノ基準を理解する。

● 技能

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■ 画像診断から移植疾患とその適応を判断できる。 ■ 肝移植について、基本的原理、必要性・危険性、適応・禁忌、効果・副作用を判断

できる。 ■ 適応患者について、コンサルトする時期を判断し、移植専門医にコンサルトできる。

● 態度 ■ 肝移植の概要を患者・家族にわかりやすく説明する。 ■ 具体的な作業は移植専門医にコンサルトしたうえで進める。 ■ 移植手術の内容を患者・家族にわかりやすく説明する。 ② 脳死肝移植の臓器分配

● 到達目標 ■ 肝移植のレシピエントの選択基準を理解する。

● 知識 ■ 適応条件を理解する。 ■ ABO 式血液型、前感作抗体、HLA 抗体、輸送時間など優先順位を理解する。 ■ 医学的緊急性、ABO 式血液型、年齢を考慮することを学ぶ。

● 技能 ■ 適応条件に合致する移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合の優先順位を

決定できる。 ■ 各疾患の医学的緊急性(予測余命)を計算できる。

● 態度 ■ 肝移植の概要を患者・家族にわかりやすく説明する。 ■ 具体的な作業は移植専門医にコンサルトした上で進める。 ■ 移植ネットワークにコンサルトした上で進める。 ③ 生体肝移植ドナーの適応基準

● 到達目標 ■ 脳死肝移植ドナー、生体肝移植ドナーの適応基準を理解する。

● 知識 ■ 脳死肝移植ドナーの適応基準:適応外の疾患または状態を理解する。 ■ 生体肝移植ドナーの適応基準:適応外の疾患または状態を理解する。

● 技能 ■ 脳死肝移植ドナー、生体肝移植ドナーの適応基準をよく理解し、ドナー選定を

行える。 ■ 画像所見、血液生化学データより、脳死肝移植ドナー、生体肝移植ドナーの適応の

判定を行える。 ● 態度

■ 肝移植の概要を患者・家族にわかりやすく説明する。

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■ 特に生体ドナー候補者に心理的圧迫を与えないように配慮して、説明する。 ■ 具体的な作業は移植専門医にコンサルトした上で進める。 ■ 移植手術の内容を患者・家族にわかりやすく説明する。 ④ 肝移植の合併症

● 到達目標 ■ 肝移植後の種々の合併症を理解する。

● 知識 ■ 拒絶反応の超急性、促進型、急性細胞性、慢性の4つの病態を理解する。 ■ 脳死肝移植後の primary graft non-function と生体肝移植後の small-for-size graft

syndrome を理解する。 ■ 術後出血の病態、 肝動脈血栓症、門脈血栓症、肝静脈血栓症を学ぶ。 ■ 術後胆道合併症を理解する。 ■ 細菌感染、ウイルス感染、真菌感染などの術後感染症を学ぶ。 ■ GVHD を理解する。 ■ 肝移植後の免疫抑制薬治療の方法、効果ならびに副作用を理解する。

● 技能 ■ 血液生化学所見から術後合併症の鑑別ができる。

■ ドプラー超音波検査により各血流の観察ができる。 ■ 肝生検を自ら施行し、病理所見より鑑別診断ができる。 ■ 血液生化学、画像診断より鑑別診断を行うことができる。

● 態度 ■ 患者・家族に移植前よりわかりやすく説明する。 ■ コーディネーターなどを介して何度も説明を行う。 ⑤肝移植後の抗ウイルス療法

● 到達目標 ■ 肝移植後の抗ウイルス療法の治療効果と副作用を理解できる。

● 知識 ■ B 型あるいは C 型肝硬変に対する肝移植では、無治療であれば移植肝におけるウイル

ス肝炎は必発であることを理解する。 ■ HBc 抗体陽性ドナーからの肝臓を移植した場合の B 型肝炎発症を理解する。 ■ B 型肝硬変の肝移植における核酸アナログ療法ならびに免疫グロブリン療法を理解す

る。 ■ C 型肝硬変の肝移植における抗ウイルス療法を理解する。

● 技能 ■ B 型あるいは C 型肝炎ウイルス感染者に対する肝移植では、抗ウイルス療法を施行す

ることができる。

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● 態度

■ 肝移植後の抗ウイルス療法の治療効果と副作用について、患者・家族にわかりやすく説明する。

4) 門脈圧亢進症の治療 ① 食道(胃)バルーンタンポナーゼによる食道静脈瘤治療 ● 到達目標

■ S-B チューブ(Sengstaken-Blakemore tube)の概要と適応となる病態を理解する。 ■ S-B チューブの安全な挿入法を学ぶ。 ■ S-B チューブ挿入時における注意事項について理解する。

● 知識 ■ 食道胃静脈瘤出血時において、全身状態が保たれていなければ、ただちに S-B チュー

ブの適応であることを理解する。 ■ S-B チューブの構造について理解する。 ■ S-B チューブの挿入手技について理解する。

● 技能 ■ S-B チューブの適応症例を適切に判断できる。 ■ S-B チューブを確実に挿入できる。 ■ 偶発症を避けるための適切な処置ができる。 ■ 治療中および治療後の偶発症が発生した際の対処法を熟知している。

● 態度 ■ S-B チューブの原理・必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について、患者・

家族および医療スタッフに説明する。 ② バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(Balloon-occluded retrograde transvenous

obliteration: B-RTO) ● 到達目標

■ B-RTO の概要と適応となる病態を理解する。 ● 知識

■ B-RTO の際に必要となる供血路、排血路を理解する。 ■ 適応と禁忌について理解する。

● 技能 ■ B-RTO を確実に施行するための技術を有している(放射線科)。 ■ 偶発症を避けるための適切な処置ができる(放射線科)。 ■ 治療中および治療後に偶発症が発生した際の対処法を熟知している(放射線科)。 ■ B-RTO 時に得られた造影画像を読影できる。

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● 態度

■ B-RTO の原理・必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について患者・家族および医療スタッフに説明する。

③ 経皮経肝的門脈塞栓術 (Percutaneous transhepatic obliteration: PTO) ● 到達目標

■ PTO の概要と適応となる病態を理解する。 ● 知識

■ PTO の際に必要となる供血路、排血路を理解する。 ■ PTO の適応と禁忌について理解する。

● 技能 ■ PTO が必要な症例を選択できる。 ■ 偶発症を避けるための適切な処置を指示できる。 ■ 治療中および治療後に偶発症が発生した際の対処法を熟知している。 ■ PTO 時に得られた造影画像を読影できる。

● 態度 ■ PTO の原理・必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について患者・家族およ

び医療スタッフに説明する。

④ 経頸静脈的肝内門脈大循環短絡路(transjugular intrahepatic portosystemic shunt: TIPS)

● 到達目標 ■ TIPS の適応と治療効果を理解する。

● 知識 ■ TIPS の際に必要となる血行動態を理解する。 ■ 適応と禁忌について理解する。

● 技能 ■ TIPS が必要な症例を選択できる。 ■ 偶発症を避けるための適切な処置を指示できる。 ■ 治療中および治療後に偶発症が発生した際の対処法を熟知している。 ■ TIPS 時に得られた造影画像の概略を説明できる。

● 態度 ■ TIPS の原理・必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について患者・家族およ

び医療スタッフに説明する。

⑤ 経皮的シャント塞栓術 ● 到達目標

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■ いわゆるシャント脳症と呼ばれる疾患群に対する治療法であることを理解する。 ● 知識

■ 必要となる血行動態を理解する。 ■ 適応と禁忌について理解する。 ■ 使用される塞栓物質について理解する。

● 技能 ■ 必要な症例を選択できる。 ■ 偶発症を避けるための適切な処置を指示できる。 ■ 治療中および治療後に偶発症が発生した際の対処法を熟知している。 ■ 経皮的シャント塞栓術時に得られた造影画像の概略を説明できる。

● 態度 ■ 経皮的シャント塞栓術の原理・必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について

患者・家族および医療スタッフに説明する。

⑥ 部分的脾動脈塞栓術・脾摘 ● 到達目標

■ 適応、長所、短所を理解する。 ● 知識

■ 適応や禁忌を正しく理解する。 ■ 治療手技について理解する。 ■ 部分的脾動脈塞栓術や脾摘のそれぞれ特有の偶発症を学び、脾摘後の重症感染症

(overwhelming postsplenectomy infection: OPSI)について理解する。 ● 技能

■ 必要な症例を選択できる。 ■ 術中の偶発症を避けるための、適切な処置を指示できる。 ■ 治療後に偶発症が発生した際の対処法を熟知している。 ■ 部分的脾動脈塞栓術や脾摘時に得られた造影画像の概略を説明できる。

● 態度 ■ 必要性・危険性・適応・禁忌・効果・偶発症について患者・家族および医療スタッフ

に説明する。

⑦ 内視鏡的治療 ● 到達目標

■ 胃食道静脈瘤の疾患概念、内視鏡所見分類、特徴を理解すると共に、内視鏡的治療の理論、適応、合併症を学ぶ。

● 知識 ■ 静脈瘤の血行動態および治療適応を理解する。 ■ 治療法(EIS、EVL、APC)の原理、方法、合併症を理解する。

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■ 内視鏡治療の周術期管理を理解する。 ■ 他の治療法として、B-RTO、PTO、TIPS、外科的治療、また、破裂時の緊急処置と

しての SB チューブ、門脈圧を下げる薬物療法などを理解する。 ● 技能

■ 内視鏡診断や CT による血行動態から、治療の必要性を判断できる。 ■ 破裂などの合併症発生時に適切な対処ができる。

● 態度 ■ 病状やリスクにつき、患者・家族に説明する。 ■ リスクに合わせ、適宜フォローする。

5) 肝性脳症の治療 ● 到達目標

■ 肝性脳症の誘因と増悪因子を把握し、その治療を理解する。 ■ 肝性脳症の薬物療法を理解する。 ■ シャント閉塞術(B–RTO)の適応を学ぶ。 ■ 人工肝補助療法の原理を理解し、その適応を学ぶ。 ■ 肝移植適応基準を理解する。

● 知識 ■ 肝性脳症の誘因および増悪因子を理解する。 ■ 一般的治療(全身管理)と薬物療法を理解する。 ■ 代表的な薬物について、その作用機序、治療上の注意、副作用、禁忌を理解する。 ■ シャント閉塞術(B–RTO)の適応を理解する。 ■ 人工肝補助療法の原理と適応を理解する。

● 技能 ■ 肝性脳症を呈する患者の意識レベルを的確に把握・評価し、肝性昏睡度分類に基づき

診断できる。 ■ ベッドサイドでできる簡単な意識障害診断のテストを説明・実施できる。

■ 肝の重症度および昏睡度を判定し、誘因や増悪因子、臨床病型および合併症の有無を把握して、病態に応じた治療薬を使うことができる。

■ 治療効果の判定と副作用の対策を行うことができる。 ● 態度 ■ 意識障害に対し、転倒ほかの危険回避を行う。意識回復後も乗り物の運転は禁止す

る。 ■ 病態の変化に応じて、薬物の投与量やスケジュールを考える。 ■ 肝性脳症の病態と原因を患者・家族に説明する。 ■ 肝性脳症の患者の心理的側面に配慮する。 ■ 人工肝補助療法は、急性肝不全あるいは末期肝硬変では肝移植までの Brige Use のみ

であることを家族に説明する。

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■ 劇症肝炎ではタイミングを失することなく、全身管理および肝移植可能な施設に搬送する。

6) 瀉血療法 ● 到達目標

■ 瀉血療法の理論と適応を理解する。 ● 知識

■ 肝内の過剰鉄が、細胞傷害、線維化、発癌に関与することを理解する。 ■ C 型慢性肝疾患における瀉血療法の位置づけを理解する。

● 技能 ■ 瀉血療法の適応について適切に判断する。 ■ 瀉血療法の手技を理解し、適切に管理する。 ■ 瀉血療法が必要な病態を判断できる。

● 態度 ■ 患者・家族に瀉血療法の必要性と治療効果、副作用を説明する。

7) 血漿交換、血液ろ過透析療法【 II-5-2)劇症肝炎の項 参照 】 5. 疾患 1)急性肝炎(A 型、B 型、C 型、D 型、E 型肝炎ウイルス、EB ウイルス(EBV)、サイトメガ

ロウイルス(CMV)による) ● 到達目標

■ A 型肝炎、B 型肝炎、C 型肝炎、D 型肝炎、E 型肝炎、EB ウイルス肝炎、サイトメガロウイルス肝炎の特徴を理解し、各種ウイルスマーカーを用いて鑑別診断を行う。

■ 急性肝炎の重症度判定を行う。 ● 知識

① 病因・病態・疫学 肝炎ウイルスによる急性肝炎には 7 種類あることを理解する。 肝炎ウイルスによる急性肝炎発症の機序を理解する。 急性ウイルス肝炎の肝病理所見を理解する。 日本における急性ウイルス肝炎の発生状況の概略を理解する。 ウイルス肝炎の感染経路をウイルスごとに理解する。

② 急性肝炎の症状・重症度 臨床症状を理解する。 重症度を判断する症状、血液検査所見を学ぶ。

③ 急性肝炎の治療 治療の原則を理解する。 抗ウイルス療法を行う適応を理解する。

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④ A 型急性肝炎 主な感染経路を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

⑤ B 型急性肝炎 主な感染経路を理解する。 予後と遺伝子型・遺伝子変異との関係を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

⑥ C 型急性肝炎 主な感染経路を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

⑦ D 型急性肝炎 主な感染経路を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

⑧ E 型急性肝炎 主な感染経路を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

⑨ EBV、 CMV による急性肝炎 主な感染経路を理解する。 血液検査上の特徴を理解する。 診断法を理解する。

● 技能 ■ 診断に必要な病歴を本人や家族から的確に聴取できる。

■ 特徴的な身体徴候を的確に把握できる。 ■ 得られた検査から肝炎の原因を的確に鑑別する。

■ 重症度判断に必要な自覚症状・身体所見を的確に把握できる。 ■ 初期治療の方針を適切に立て、治療効果を適切に判定することができる。 ■ 急性肝不全の合併を的確に判断し、適切な治療に結びつけることができる。

● 態度 ■ 病態と重症度を的確に把握し、十分な説明のもと患者・家族の苦痛を取り除く。

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2)劇症肝炎(急性肝不全) ● 到達目標

■ 定義と病型を理解し、成因を学ぶ。 ■ 肝移植を念頭に置いて全身状態および合併症を厳重にモニタリングする。 ■ 血漿交換、血液ろ過透析療法の意義、適応、基本的な方法を理解する。

● 知識 ■ 定義、病因・病態・疫学、発症様式(急性型・悪急性型)を理解する。 ■ 症候・身体所見、検査所見を理解する。 ■ 治療、予後を理解する。 ■ ステロイドパルス療法の適応、方法、効果、副作用を理解する。 ■ 血漿交換、血液ろ過透析療法のしくみ、適応、合併症を理解する。

● 技能 ■ 肝疾患既往の有無および劇症肝炎の症候を的確に把握し、原因に関連した病歴を

聴取できる。 ■ 発症様式(臨床病型)と検査結果に基づき原因、重症度を判断し、それに応じた検査・治療計画を立案・実施できる。 ■ 重症化症候(感染症状、消化器症状、黄疸、意識障害、出血傾向等)を、肝予備能を

評価しつつ経時的に判断できる。 ■ 肝性脳症重症度を「肝性脳症の昏睡度分類」に則り的確に判定できる。 ■ 人工肝補助療法(血液浄化療法)、免疫抑制療法、抗凝固療法、抗ウイルス療法、高

アンモニア血症対策を他科専門医との連携も含めて実施できる。 ■ 肝機能のみではなく、全身状態や感染などの合併症を厳重にモニタリングして、集中

治療室管理や肝移植が可能な施設に搬送について、的確に判断できる。 ■ ステロイド治療ならびに免疫抑制薬治療を実施に際しては、治療効果や副作用出現の

程度に応じて、薬剤投与量の調整や治療の継続あるいは中止・終了の判断ができる。 ■ 血漿交換、血液ろ過透析の適否を判断できる。

● 態度 ■ 鑑別診断・検査・治療方針(肝移植を含む)を患者・家族に説明しインフォームドコ

ンセントを得る。 ■ 疾患重症度・合併症・予知(予後予測)を患者・家族が理解できるように説明する。 ■ 他科専門医との連携(多職種連携を含む)が適宜できるように配慮する。 ■ タイミングを失することなく、全身管理および肝移植可能な施設に搬送する。 ■ 血漿交換、血液ろ過透析療法の必要性、方法、合併症について、患者・家族に説明す

る。

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3)慢性肝炎 ① B 型慢性肝炎

● 到達目標 ■ ゲノタイプ別に疫学ならびに病態を理解する。 ■ 宿主因子・ウイルス因子を考慮した抗ウイルス療法を理解する。 ■ 治療法ならびにその治療効果と副作用を理解する。

● 知識 ■ 疫学、自然経過、病因、病態をゲノタイプ別に理解する。 ■ 血液検査、画像検査ならびに組織学的検査などにより、適切に診断を行い、肝発癌リ

スクあるいは肝疾患進展リスクを評価する。 ■ 長期予後ならびに増悪因子を理解する。 ■ 炎症や線維化の程度、ウイルスマーカーの推移、肝癌合併の有無などを判定しうる定

期的な検査計画を立案する。 ■ 肝外病変の可能性を念頭に置く。 ■ 治療対象ならびに治療目標を理解する。 ■ 核酸アナログ製剤ならびにインターフェロン製剤の薬剤特性を理解する。核酸アナロ

グ製剤の薬剤耐性変異について学び、変異ウイルス出現時の対応を理解する。 ■ 核酸アナログ製剤ならびにインターフェロン製剤による治療法の利点と欠点を理解

し、発癌抑制効果を学ぶ。 ■ 核酸アナログ製剤中止後の再燃リスクを理解する。 ■ シークエンシャル療法について理解する。 ■ B 型肝炎ウイルス母子感染の病態と予防を理解する。

● 技能 ■ 抗ウイルス療法が適応となる B 型肝炎ウイルス感染者を診断できる。

■ 血液検査、画像検査、肝生検の結果から、肝臓の炎症ならびに線維化の程度が診断できる。

■ B 型肝疾患の各病態において必要な抗ウイルス療法を判断できる。 ■ 患者の病状により治療法を決定し、治療においては治療効果ならびに副作用の経時的

な評価により、適切な治療が遂行できる。 ● 態度

■ 病状あるいは病状把握に必要な検査について、患者・家族に説明する。 ■ 適切に診断を行い肝発癌リスクあるいは肝疾患進展リスクを評価し、治療の必要性を

患者・家族に説明する。 ■ 実施する治療の予測される治療効果、可能性のある副作用、ならびに肝疾患の予後改

善効果について患者・家族に説明する。 ■ 日常生活での留意点、周囲への感染の可能性について、患者・家族に説明する。 ■ B 型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会編)を参照する。

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② C 型慢性肝炎 ● 到達目標

■ 疫学ならびに病態を理解したうえで適切に診断を行い、発癌リスクあるいは疾患進展リスクを評価し、治療の必要性を理解する。

■ 早期の治療導入が必要な高発癌リスク群を認識する。 ■ 宿主因子・ウイルス因子を考慮した抗ウイルス療法を選択する。 ■ 治療法ならびにその治療効果と副作用を学ぶ。 ■ 鉄制限食の意義を理解する。

● 知識 ■ 疫学や自然経過、病因、病態を理解する。 ■ 血液検査、画像検査ならびに組織学的検査などにより適切に診断し、肝発癌リスクあ

るいは肝疾患進展リスクを評価する。 ■ 長期予後ならびに増悪因子を理解する。 ■ 炎症や線維化の程度、ウイルスマーカーの推移、肝癌合併の有無などを判定しうる定

期的な検査計画を立案する。 ■ 肝外病変の可能性を念頭に置く。 ■ 抗ウイルス療法の治療対象と治療適応、ならびに治療法の利点と欠点を理解する。 ■ Direct acting antivirals(DAA)の薬剤耐性変異について理解する。 ■ インターフェロンをベースとした治療法における発癌抑制効果を理解する。 ■ 肝細胞内貯蔵鉄の過剰と疾患の進行の関係を理解すると共に、瀉血療法の効果も含め

て鉄制限食の意義を学ぶ。 ■ 母子感染の病態を理解する。

● 技能 ■ 抗ウイルス療法が適応となる C 型肝炎ウイルス感染者を診断できる。

■ 定期的に血液検査、画像検査ならびに必要に応じた組織学的検査などを実施することで、患者の病状を適切に評価することができる。

■ 病状により治療法を決定し、治療効果ならびに副作用の経時的な評価により、適切な治療が遂行できる。

■ 総エネルギー量、蛋白量、塩分、亜鉛などの栄養素にも配慮して鉄制限食による治療を行うことができる。

■ 血液検査、画像検査、肝生検の結果から、肝臓の炎症ならびに線維化の程度が診断できる。

● 態度 ■ 病状あるいは病状把握に必要な検査について、患者・家族に説明する。

■ 自覚症状はほとんどなく、病状の把握には検査が必要であることを説明する。 ■ 治療方針とその選択理由、予測される治療効果、可能性のある副作用について患者・

家族に説明する。

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■ 肝炎ウイルスの他の人への感染の可能性について、日常生活での留意点を含め患者・家族に説明する。

■ C 型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会編)を参照する。 ■ 鉄制限食の意義について患者・家族に説明するすると共に、患者の食事鉄量について

栄養調査を行い、鉄制限食を指導する。

③ 非 B 非 C 型肝炎 ● 到達目標

■ B 型肝炎ウイルスおよび C 型肝炎ウイルス感染が否定された慢性肝炎の病因別の鑑別診断を行う。

● 知識 ■ 病態は病因により大きく異なるため、病因を同定した上で治療を行うことが重要であ

ることを理解する。 ■ 自・他覚的症状は乏しいが、病因により特徴的な症状や身体所見を呈する疾患がある

ため、診察所見はとくに重要であることを理解する。 ■ 病因により診断基準、診断マーカーが異なるため、鑑別診断には、特殊検査が必要で

あることを理解する。肝生検による組織診断が有用である場合もあることを学ぶ。 ● 技能

■ 肝障害の経過、合併症・既往歴・家族歴・居住歴・食習慣(嗜好品)などを詳細に聴取し、疾患を予想できる。

■ 特徴的な身体所見を確認できる。 ■ 鑑別診断のために必要な検査計画を立案し、説明することができる。 ■ 病因が確定した場合、適切な治療方針を立案し、説明することができる。 ■ 血液検査、画像検査、肝生検結果から、病因診断ならびに肝臓の炎症と線維化が診断

できる。 ■ 各疾患の各病態において治療適応と適切な治療法が判断できる。

● 態度 ■ 患者の病状あるいは病状把握に必要な検査と結果について、患者・家族に説明する。 ■ 病因が確定した場合、実施する治療の予測される治療効果、可能性のある副作用につ

いて、患者・家族に説明する。 ■ 日常生活での留意点について、患者・家族に説明する。

4) その他のウイルス肝炎 ● 到達目標

■ 肝炎ウイルス以外のウイルスによる肝障害を理解する。

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● 知識 ■ 肝炎ウイルス以外のウイルス(とくに、サイトメガロウイルス、EB ウイルス、アデ

ノウイルス、パルボウイルス)によっても肝障害がおこることを理解し、その特徴を把握する。

● 技能 ■ 随伴症状から肝炎ウイルス以外のウイルス感染症を鑑別できる。 ■ 各種血液検査(ウイルス学的検査)や迅速抗原検査を用いて診断できる。

● 態度 ■ 病態・治療・予後について患者と家族に説明する。 5) 自己免疫性肝炎<AIH>

● 到達目標 ■ 肝炎ウイルスマーカー陰性の急性および慢性肝疾患について、診断基準を用いて診断

を行う。 ■ ステロイド治療ならびに免疫抑制薬治療の適応、効果ならびに副作用を理解する。 ■ ステロイド治療ならびに免疫抑制薬治療の併用療法を理解する。 ■ ステロイドと併用薬の薬物相互作用を理解する。

● 知識 ■ 厚生労働省研究班による診断基準ならびに国際診断基準を理解する。原発性胆汁性胆

管炎とのオーバーラップ症候群の存在について学ぶ。 ■ 特徴的な検査所見・肝組織所見を理解する。 ■ 慢性甲状腺炎、Sjögren 症候群、関節リウマチのなどの自己免疫性疾患を合併するこ

とを理解する。 ■ 免疫抑制療法の治療適応、基本治療を理解し、早期中止により再燃することを認識す

る。 ● 技能

■ 肝障害の経過および治療歴などを聴取し、日本の診断指針ならびに国際診断基準を理解し、適切に自己免疫性肝炎の診断の上、肝炎の活動性や肝病変の進展度を判定しうる検査計画を立て、実施できる。

■ 患者の病状により適切なタイミングで副腎皮質ステロイド療法を開始し、治療効果ならびに副作用の経時的な評価により、寛解維持を目指した治療が遂行できる。再燃時には適切に再治療が導入できる。

■ ステロイド療法抵抗例において、アザチオプリン投与の必要性を判断できる。 ■ 急性発症の自己免疫性肝炎を診断できる。

● 態度 ■ 病状あるいは病状把握に必要な検査について、患者・家族に説明する。 ■ 治療方針ならびに予後について、患者・家族に説明する。

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■ 副腎皮質ステロイドの長期投与に伴う合併症と管理について、患者・家族に説明し、具体的な生活指導を行う。

6) 肝硬変(アルコール性、ウイルス性を含む)

● 到達目標 ■ 病因、病態、ならびに診断方法を理解し、適切な治療を学ぶ。 ■ 分岐鎖アミノ酸製剤、アルブミン製剤の適応を理解し、製剤の選択を学ぶ。 ■ 就寝前補食(LES)の適応を理解し、投与量を決定する。 ■ 分割食の臨床的意義を理解する。 ■ 肝性脳症、肝腎症候群などの合併症の病態を理解し、適切に対応する。

● 知識 ■ 病因と病態を理解し、その症候を学ぶ。 ■ 各種血液検査所見、画像所見、肝機能評価方法などを理解する。 ■ 肝細胞癌発癌のリスクを理解する。 ■ 栄養代謝異常を理解すると共に、輸液製剤、経腸栄養製剤、顆粒製剤それぞれの適

応、用法、効果について理解する。 ■ 分岐鎖アミノ酸製剤、アルブミン製剤の作用機序、副作用と禁忌を理解する。 ■ 非代償期肝硬変では、LES が飢餓状態を改善し肝予備能を保持し得ることを理解する

と共に、副作用(血糖値、アンモニア濃度の上昇や肥満)についても学ぶ。 ■ 肝硬変患者における血糖変動の特徴を理解する。 ■ 分割食の効果と副作用を理解する。 ■ 肝性脳症、肝腎症候群などの合併症の病態を理解し、最新の治療法を習得する。

● 技能 ■ 病因追求のため、患者・家族から適切な病状聴取を行い、各種検査を立案し実施す

る。 ■ 画像診断や血液検査、組織学的評価により診断を行い、その成因を特定する。また併

発する他疾患を診断する。 ■ 肝機能を適切に評価できる。 ■ 病態の把握に必要な検査を立案し実施する。 ■ 病態に応じた治療を行い、治療効果を判定できる。 ■ LES・分割食の適応に基づき、1 日あたりの必要栄養素量を設定して治療を行うこと

ができる。 ■ 肝性脳症や肝腎症候群等の合併症に対応できる。 ● 態度 ■ 病態を把握し、原因、病状、今後起こりうる合併症を、患者・家族に説明する。 ■ 各種症状に対して、適切な生活指導と治療導入を行う。 ■ 進展予防のための治療法ならびに生活習慣について、患者・家族に説明する。 ■ 合併症の早期発見・早期治療のための適切なマネジメントを行う。

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■ 病態の変化に応じて薬物の選択や投与量を調節する。 ■ LES・分割食を行う意義について患者・家族に説明する。 ■ 栄養療法施行時は管理栄養士と協力し、定期的に患者および家族に栄養指導を行う。 7)カロリー病/先天性肝線維症

● 到達目標 ■ 単純性肝囊胞以外の囊胞性肝疾患の存在を認識し、併せて先天性肝線維症の疾患概

念、分類、特徴を理解する。 ● 知識

■ カロリー病と先天性肝線維症は、同じ病因であることを理解する。 ■ 嚢胞性腎疾患に合併することが多いことを理解する。

● 技能 ■ 病理所見から先天性肝線維症と肝硬変を鑑別できる。 ■ 画像から肝嚢胞とカロリー病を鑑別できる。 ■ 治療が必要な状態を診断できる。 ■ 合併症発生時に適切な対処ができる。

● 態度 ■ 肝移植が想定される場合、患者・家族に対して説明すると共に、適切な対応をとる。 ■ 治療が必要な場合、その必要性および予後を患者・家族に説明する。 8) 原発性胆汁性胆管炎(PBC)

● 到達目標 ■ 肝炎ウイルスマーカー陰性の急性および慢性肝疾患について、診断基準を用いて診断

を行う。 ■ 病態に応じた治療法を習得する。

● 知識 ■ 厚生労働省研究班による診断基準を理解する。自己免疫性肝炎とのオーバーラップ症

候群の存在ならびにステロイド投与のための診断指針について理解する。 ■ 特徴的な検査所見・肝組織検査を理解する。 ■ 臨床上、症候性と無症候性に分類されること、胆汁うっ滞に基づく皮膚瘙痒が特徴的

であることを理解する。 ■ 重症度判定には原発性胆汁性胆管炎用に修正された Child–Pugh 分類があり、予後予

測には、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルがあることを学ぶ。

■ 門脈圧亢進症や他の自己免疫疾患の合併が多いこと、稀に肝細胞癌の合併もみられることを認識する。

■ 基本治療はウルソデオキシコール酸であり、効果不十分であれば、ベザフィブラートの併用投与であることを理解する。

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■ 肝硬変への進行例に対する肝移植について、その適応を理解する。 ● 技能

■ 肝障害の経過および特徴的な自覚症状などを聴取し、身体所見を取ることができる。 ■ 厚生労働省研究班による診断基準に基づき適切に診断し、活動性や肝病変の進展度を

判定しうる検査計画を立案して実施できる。 ■ 重症度分類や予後予測式などにより予後を評価できる。 ■ ウルソデオキシコール酸やべザフィブラートによる基本治療ができる。 ■ オーバーラップ症候群では、適切に副腎皮質ステロイド療法が遂行できる。 ■ 肝移植専門医へのコンサルトの必要性を判断し、実施できる。 ■ 自己免疫性肝炎とのオーバーラップ症候群、早期原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性胆

管炎、AMA 陰性原発性胆汁性胆管炎を診断できる。 ● 態度

■ 患者の病状あるいは病状把握に必要な検査について、患者・家族に説明する。 ■ 治療方針ならびに予後について、患者・家族に説明する。 ■ 長期予後を見据えた生活指導と合併症管理・指導について、患者・家族に説明する。 ■ 症候性の場合、特定疾患であることを説明し、公費手続きを行う。 9) 原発性硬化性胆管炎(PSC)

● 到達目標 ■ 原発性硬化性胆管炎の特徴を理解し、二次性の硬化性胆管炎との鑑別診断を行う。 ■ 肝移植も含めた治療方針を理解する。

● 知識 ■ 肝内外の胆管の線維性狭窄を生じる進行性慢性炎症性疾患であるが、原因は不明であ

り、慎重な鑑別診断が必要であることを理解する。 ■ 潰瘍性大腸炎の合併や2峰性の年齢分布など、疫学的事項を理解する。 ■ 経過中に胆管癌合併の可能性があることを認識する。 ■ Mayo clinic の診断基準の特徴的な胆管造影所見、血液検査所見、肝組織所見を理解

する。鑑別診断として、IgG4 関連硬化性胆管炎、胆管癌との鑑別点を理解する。 ■ 薬物治療では、胆汁うっ滞に対して対症療法が中心となることを理解する。 ■ 胆管狭窄に対しては、内視鏡的治療が適応となることを理解する。 ■ 肝移植の適応と移植後の予後について理解する。 ■ 小児期の PSC の病態を理解する。

● 技能 ■ Mayo Clinic の診断基準の特徴的な胆管造影所見、血液検査所見、肝組織所見を理解

し、適切に原発性硬化性胆管炎の診断ができる。 ■ 原発性硬化性胆管炎の特徴を理解し、二次性の硬化性胆管炎との鑑別診断ができる。

■ 薬物療法、内視鏡的治療あるいは肝移植が必要な病態を診断できる。 ■ 胆管狭窄に対する内視鏡的治療の適応とタイミングを判断できる。

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■ 肝移植専門医へのコンサルトの必要性を判断し、実施できる。 ● 態度 ■ 患者の病状あるいは診断に必要な検査について、患者・家族に説明する。 ■ 治療方針ならびに予後について、患者・家族に説明する。 ■ 長期予後を見据えた生活指導と合併症管理・指導について、患者・家族に説明する。 10) 肝内胆汁うっ滞(進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)を含む)

● 到達目標 ■ 発生機序を理解し、鑑別診断を行う。 ■ 治療法を選択する。

● 知識 ■ 発症機序を理解し、その特徴を把握する。

● 技能 ■ 各種検査結果を用いて PFIC とそれ以外の肝内胆汁うっ滞を鑑別できる。 ■ 同様の肝障害を来たしうる他疾患を除外することができる。 ■ 肝内胆汁うっ滞による身体所見、合併症を理解し、適切な管理を行うことができる。 ■ 組織像を理解し、肝生検結果(電子顕微鏡所見を含む)を判定できる。

● 態度 ■ 原因、病態、検査、治療法、想定されうる経過について患者・家族に説明する。 ■ 病状に応じて肝移植適応の有無を評価すると共に、患者・家族に対して説明し適切な

対応をとる。 11) アラジール症候群/非症候性肝内胆管減少症

● 到達目標 ■ 基本病態が肝内胆管低形成症であることを理解する。 ■ 新生児期から乳幼児期にかけて肝内胆汁うっ滞をきたす胆道閉鎖症や新生児肝炎との

鑑別を学ぶ。 ● 知識

■ 主要な 5 兆候を学ぶと共に、症候性と非症候性が存在することを理解する。 ■ 常染色体優性遺伝であることを理解すると共に、原因遺伝子の異常と兆候との関連を

学ぶ。 ● 技能

■ 主要な兆候より本症候群を疑い、肝組織所見を行うことができる。 ■ 肝外病変を診断できる。 ■ 胆道閉鎖症や新生児肝炎との鑑別診断を行うことができる。

■ 利胆と皮膚掻痒感を軽減するための薬物治療を行うことができる。

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● 態度 ■ 肝移植の適応がある場合、患者・家族に対して説明ができるとともに、適切な対応を

とる。 ■ 家族がドナーとなる際には、ドナー肝の胆管減少の有無を確認する。 12) 先天性胆道閉鎖症

● 到達目標 ■ 先天性胆道閉鎖症の発生機序を理解し、鑑別診断ができる。 ■ 小児外科施設に適切に紹介できる。

● 知識 ■ 発症機序を理解し、その特徴を把握する。

● 技能 ■ 胆道造影で診断ができる。

■ 各種検査結果を用いてアラジール症候群や PFIC とそれ以外の肝内胆汁うっ滞を鑑別できる。

■ 同様の肝障害を来たしうる他疾患を除外できる。 ■ 患者の病状に応じて肝移植適応の有無を評価できる。 ● 態度 ■ 先天性胆道閉鎖症の原因、病態、検査、治療法に加え、想定されうる経過について患

者・家族に説明する。 ■ 肝移植が想定される場合、患者・家族に対して説明ができるとともに、適切な対応を

とる。 13) 閉塞性黄疸

● 到達目標 ■ 閉塞性黄疸の発症機序を理解する。 ■ 閉塞性黄疸の管理法を学ぶ。

● 知識 ■ 閉塞性黄疸の発症機序を理解し、他の原因による黄疸との違いを理解する。 ■ 閉塞性黄疸の合併症、頻度、対処法を理解する。

● 技能 ■ 各種血液検査・画像検査結果を用いて原因を明らかにし、黄疸をきたす疾患を鑑別で

きる。 ■ 閉塞性黄疸の身体所見、合併症を理解し、適切な管理を行うことができる。

● 態度 ■ 閉塞性黄疸の原因、病態、検査、治療法に加え、想定されうる経過について患者・家

族に説明する。

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14) 体質性黄疸 ● 到達目標

■ 各体質性黄疸のメカニズムを理解する。 ■ 各体質性黄疸の管理を行う。

● 知識 ■ 体質性黄疸の各病型の発症機序を理解し、その遺伝形式、好発年齢、予後を学ぶ。 ■ 非抱合型高ビリルビン血症と抱合型高ビリルビン血症の特徴を理解する。 ■ 核黄疸の発症機序、予防法を理解する。

● 技能 ■ 各種血液・画像検査、ICG 試験、肝生検結果(電子顕微鏡所見を含む)を用いて診断

できる。 ■ 抱合型高ビリルビン血症と非抱合型高ビリルビン血症をきたす疾患を鑑別できる。

■ 体質性黄疸の身体所見、合併症を理解し、適切な管理を行うことができる。 ● 態度 ■ 遺伝形式について患者と家族に説明する。 ■ Crigler-Najjar 症候群では、核黄疸に対する予防法、長期予後、肝移植について患者

と家族に説明する。 15) 薬物性肝障害

● 到達目標 ■ 薬物性肝障害における病態、診断、治療法について理解する。

● 知識 ■ 発症機序を理解し、その特徴を把握すると共に、診断基準を学ぶ。 ■ 薬物性肝障害での各種検査所見の特徴を理解したうえで、ステロイド、免疫抑制剤の

適応、方法、効果ならびに副作用を学ぶ。 ● 技能

■ 肝障害の経過を的確に聴取し、薬物との因果関係を特定するとともに、同様の肝障害を来たしうる他疾患を除外する。

■ 定期的な血液検査、画像検査ならびに必要に応じた組織学的検査などを実施すること で、患者の病状を適切に評価し、重症化が予想される場合には早期に診断する。

■ 患者の病状に応じて適切な治療法を決定し、その治療効果を適切に評価できる。 ■ ステロイド治療ならびに免疫抑制薬治療の実施に際して、治療効果や副作用出現の程

度に応じて、薬剤投与量の調整や治療の継続あるいは中止・終了の判断ができる。 ■ 同様の肝障害を来たしうる他疾患を除外するため、各種検査所見(リンパ球刺激テス

ト(DLST)も含む)の結果も参考にする。

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● 態度 ■ 薬物性肝障害の原因、病態、検査、治療法に加え、想定されうる経過、実施する治

療の予測される効果、可能性のある副作用ならびに肝疾患の予後改善効果について患者・家族に説明する。

■ 定期的な検査を計画し、病状の経過を適切に評価する。 ■ 劇症化が想定される場合、患者・家族に対して説明すると共に、適切な対応をとる。 ■ 被疑薬に対する今後の注意事項について、患者・家族に対して説明する。 16) アルコール性肝障害

● 到達目標 ■ アルコール性肝障害の各病型を理解し、その症候や病理所見、最近の動向などを学

ぶ。 ■ 診断に有用な血液所見を理解し、早期診断による進展予防に役立てる. ■ アルコール性肝障害に伴う様々な合併症を理解する。 ■ 重症化した際の治療法、治療後の精神科医や地域医療・保健活動との連携の重要性を

理解する。 ● 知識

■ 肝臓でのアルコール代謝と遺伝的多型の影響、アルコール性肝障害への関連につき理解する。

■ アルコール性肝障害の診断基準を理解する。 ■ 肝障害の程度を判定し、肝発癌リスクを評価する。

● 技能 ■ 各種検査結果を用いてアルコール性肝障害の各病型、程度を診断できる。 ■ 各病型に対する治療を理解し、実施できる。 ■ アルコール性肝障害の組織像を理解し、肝生検結果を判定する。 ■ アルコール多飲による肝障害、身体所見、様々な合併症を理解・診断し、適切な治療

を行う。 ■ アルコール性肝硬変症例に対し定期的に画像検査を行い、肝細胞癌を早期発見する。

● 態度 ■ 十分な問診により診断の根拠となる飲酒歴を聴取する。 ■ 飲酒に対する指導を行う。 ■ 必要に応じアルコール依存症者の専門病院への紹介、家族の協力、精神科医や地域医

療・保健活動との連携の重要性を理解し、マネジメントする。

17) Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD) ● 到達目標

■ NAFLD に単純性脂肪肝と NASH が含まれることを理解する。

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■ 脂肪肝の疫学(罹患率など)とその成因を理解し、食事・運動療法の基本を把握する。

■ NASH の疫学とその発症機序(parallel hit theory)、予後を理解する。 ■ NAFLD の治療薬とその作用機序を学ぶ。

● 知識 ■ 発症要因・病態生理・疫学、症候・身体所見を理解する。 ■ Brunt 分類と NASH activity score(NAS)を理解する。 ■ 食事・運動・薬物療法を理解する。 ■ 経過・予後を理解する。

● 技能 ■ 体重・腹囲径の変化や食習慣(特に 飲酒量)、食生活の経過について詳細に聴取で

きる。 ■ 腹部超音波検査や必要に応じて腹部 CTを実施し、脂肪肝を診断できる。 ■ 血液生化学検査等で肝線維化の存在、程度を推定できる。 ■ 肝生検(肝組織検査)で Matteoni 分類(type1~type4) および Brunt 分類と NASH

activity score(NAS)に則り病状の把握ができる。 ■ 除外診断を考慮した検査計画を立案・実施し結果を解釈できる。 ■ 食事療法・運動療法を実施できる。 ■ 適切な薬物療法を選択し、実施(含、専門医・多職種連携)できる。

● 態度 ■ 病態・治療・予後について患者・家族に説明する。特に単純性脂肪肝と NASH では

予後が異なることを説明する。 ■ 日常生活上の留意点(食事・運動・生活習慣)を患者・家族に説明する。

■ 背景にある生活習慣病についても併せて治療・指導・管理を実施する。 ■ 診療ガイドライン(日本肝臓学会編)を参照する。 18) 肝感染症

● 到達目標 ■ 主な肝感染症の病態・診断・治療に関する知識を習得する。

① 肝膿瘍(細菌性、アメーバ性) ● 知識

■ 起因菌と感染経路を理解する。 ■ 臨床症状や特徴的な画像所見による診断を学ぶ。 ■ 肝膿瘍の治療と予後を理解する。 ■ 肝膿瘍のドレナージについて適応を理解し、適切に対応する。 ■ 処置の内容を理解し、適応、禁忌、合併症を理解する。

● 技能 ■ 診断に必要な病歴を聴取できる。

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■ 画像診断所見から診断を行い、治療方針を立てることができる。 ■ 経皮経肝ドレナージ、外科治療の適応を的確に判断できる。 ■ 適切にドレナージを行うことができる。 ■ 処置後の患者管理を行うと共に、処置後の合併症に対して適切に対処できる。

● 態度 ■ 基礎疾患も含め患者・家族に適切な問診・説明を行うことができる。 ■ 患者・家族に対して、膿瘍ドレナージの必要性、合併症とその対処法を説明する。

② 肝寄生虫症 ● 知識

■ どのような種類があるかを理解する。 ■ 感染部位と診断方法を理解する。 ■ 治療法を理解する。

● 技能 ■ 診断に必要な病歴を聴取できる。 ■ 確定診断に必要な検査を選択、施行できる。 ■ 適切な治療を行うことができる。

● 態度 ■ 感染の原因も含め患者・家族に適切な問診・説明を行う。

③ リケッチア感染症(ツツガムシ病、日本紅斑熱) ● 知識

■ 感染経路、症状、病態について理解する。 ● 技能

■ 適切な治療が実施できる。 ■ 刺し傷の同定、各種血液検査結果を用いて診断できる

● 態度 ■ 病態・治療・予後について患者と家族に説明する。 ■ 薬物療法について薬剤師と連携してマネジメントする。

④ Weil 病 ● 知識

■ 起因菌と感染経路を理解する。 ■ 臨床症状、診断方法を理解する。 ■ 治療法と予後を理解する。 ■ 臨床的・病理的に類似する疾患を理解する。

● 技能 ■ 診断に必要な病歴を聴取できる。

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■ 黄疸と発熱を伴う疾患の鑑別を系統的に行うことができる。 ■ 確定診断に必要な検査を的確に選択できる。

■ 抗菌薬を的確に選択できる。 ● 態度

■ 感染の原因も含め患者・家族に適切な問診・説明を行う。

⑤ クラミジア、淋菌(Fitz–Hugh–Curtis 症候群) ● 知識

■ 主な感染経路を理解する。 ■ Fitz–Hugh–Curtis 症候群の病態と臨床症状を理解する。 ■ Fitz–Hugh–Curtis 症候群の診断について理解する。 ■ Fitz–Hugh–Curtis 症候群の治療に関して理解する。 ■ 臨床的・病理学的に類似する疾患を学ぶ。

● 技能 ■ 診断に必要な病歴を聴取できる。 ■ 診断に必要な検査を的確に指示できる。 ■ 適切な抗菌薬を選択できる。

● 態度 ■ 他の性感染症の合併を考えて病歴を聴取したり検査を行ったりできる。

⑥ 肝結核 ● 知識

■ 病態と感染経路を理解する。 ■ 症候・身体所見、血液検査上、画像検査の特徴を理解する。 ■ 診断法、治療法を理解する。 ■ 臨床的・病理学的に類似する疾患を学ぶ。

● 技能 ■ 血液検査や微生物学検査を的確に評価できる。 ■ 肝病理所見を適切に解釈できる。 ■ 適切な抗結核薬により適切な治療を行うことができる。 ■ 抗結核薬の副反応に適切に対処できる。

● 態度 ■ 他臓器の結核合併を考えて、病歴を聴取したり検査を行ったりできる。

⑦ 肝梅毒 ● 知識

■ 病態と感染経路を理解する。 ■ 症候・身体所見を理解する。

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■ 血液検査上の特徴を理解する。 ■ 治療法を理解する。

■ 臨床的・病理学的に類似する疾患を学ぶ。 ● 技能

■ 血液検査や微生物学検査を的確に評価できる。 ■ 身体所見を的確に評価できる。

■ 適切な抗菌薬により適切な治療を行うことができる。 ● 態度

■ 他の性感染症の合併を考えて病歴を聴取し検査を行う。 19) 肝囊胞

● 到達目標 ■ 単純性肝囊胞以外の囊胞性肝疾患の存在を認識し、疾患概念、分類、特徴を理解す

る。 ● 知識

■ 種々の成因による肝嚢胞の分類(先天性・後天性)を理解する。 ■ 近接臓器への圧迫症状、門脈圧亢進、胆管炎などを発症する場合があることを理解す

る。 ■ 肝嚢胞の種類によって、胆管癌の発生の可能性も考慮に入れる。

● 技能 ■ 鑑別診断や治療の必要性を判断できる。 ■ 合併症発生時に適切な対処ができる。 ■ 肝嚢胞性疾患の鑑別診断ができる。 ■ 治療が必要な状態を診断できる。

● 態度 ■ 通常は治療が不要であることを患者に説明する。 ■ 治療が必要な場合、その必要性および予後を患者・家族に説明する。 20)肝血管腫

● 到達目標 ■ 血管腫以外の肝多血性腫瘤やその他の肝腫瘤の存在を認識し、疾患概念、分類、特徴

を理解する。 ● 知識

■ 種々の多血性腫瘤(肝細胞癌、肝細胞腺腫、血管肉腫、血管筋脂肪腫、限局性結節性過形成など)の分類を理解する。

■ 画像検査(US、CT、MRI)の所見を学ぶ。 ■ 原則として治療の必要はないが、増大傾向などあれば切除なども検討する。 ■ 破裂した場合、死亡のリスクがあることを認識する。

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● 技能 ■ 鑑別診断や治療の必要性を判断できる。 ■ 破裂などの合併症発生時に適切な対処ができる。 ■ 治療手技(肝切除や肝動脈塞栓術)について患者に説明でき、合併症発生時に適切に

対処できる。 ● 態度

■ 通常は治療が不要であることを患者に説明する。 ■ 治療が必要な場合、その必要性および予後を患者・家族に説明する。 21)肝血管腫以外の肝良性腫瘍

● 到達目標 ■ 肝臓の良性腫瘍の種類とそれぞれの頻度を理解する。 ■ 肝内悪性腫瘍との鑑別が重要であることを理解する。

● 知識 ■ 肝臓の良性腫瘍の種類とそれぞれの頻度を理解する。 ■ 各種画像検査におけるそれぞれの腫瘍の特徴的な所見を理解する。 ■ 非典型例では加療の対象となることを認識する。

● 技能 ■ 鑑別診断に必要な検査を立案できる。 ■ 診断困難例では、放射線科や病理などの専門医に速やかに情報を提供してコンサルト

し、適切な診断指針が立案できる。 ■ 各種画像検査や血液検査により悪性腫瘍を除外し、肝良性腫瘍の診断ができる。 ■ 治療が必要な病態を診断できる。

● 態度 ■ 多くの場合、治療が不要であることを患者・家族に説明する。 ■ 治療の必要性、合併症や副作用について、患者・家族に説明する。

22)原発性肝癌 ① 肝細胞癌

● 到達目標 ■ 肝細胞癌発生のリスクを理解し、それに応じた経過観察や検査の計画を立てる。 ■ 各種治療法の原理、適応、禁忌を理解したうえで、肝予備能、肝細胞癌の進行度など

を考慮して治療方針を立案する。 ● 知識

■ 肝細胞癌の疫学・病因・病態、臨床的特徴を理解する。 ■ TNM 因子による進行度分類にて肝細胞癌の進行度(Stage)を理解する。 ■ 肝細胞癌に対する各種治療法の特徴を理解する。また、肝細胞癌の進行度(Stage)

と肝予備能を考慮した肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムを学ぶ。

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■ ラジオ波凝固療法(RFA)の適応となる腫瘍径、腫瘍個数、用いる機器、治療成績および偶発症を理解する。

■ PEI の適応となる腫瘍径、腫瘍個数, 治療成績および偶発症を学ぶ。 ■ マイクロウエーブ凝固療法(MCT)の適応となる腫瘍径、腫瘍個数、肝機能を学ぶ。 ■ 経血管治療法[肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈化

学療法(TAI)、肝動注化学療法]の内容を理解し、適応、禁忌、合併症、治療成績を学ぶ。

■ 持続肝動注化学療法(HAIC)の手技の実際、血流改変の必要性、またカテーテル埋め込みによる短期的・長期的合併症を理解する。

■ 抗がん剤による効果、副作用を学ぶ。 ■ 分子標的治療薬の作用機序、治療効果、有害事象を理解する。

■ 放射線治療の原理、効果、副作用、適応を理解する。 ■ 癌免疫応答の概要と理論を理解する。 ■ 癌免疫療法の理論と内容を理解する。

● 技能 ■ 慢性肝疾患における発癌リスクをおおまかに予測できる。 ■ Dynamic CT あるいは Dynamic MRI などの画像検査により、早期肝細胞癌の診断が

できる。 ■ 種々の画像検査における腫瘤性病変の鑑別診断ができる。 ■ TNM 因子による進行度分類にて進行度(Stage)を診断できる。

■ 肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムを用いて、各病態に必要な治療ができる。 ■ 外科的切除の場合、適切な術式を選択してその内容を説明できる。

■ RFA、PEI、MCT の適応となる症例を選択し、起こり得る偶発症に対する適切な処置ができる。

■ 患者の病態に応じて肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈化学療法(TAI)、肝動注化学療法を選択できると共に、合併症に対して適切に対処できる。

■ 分子標的治療薬投与開始後、副作用を十分に観察し適切な減量・休薬を行う。 ■ JIS(Japan Integrated Staging score)などを用いて、患者の予後予測ができる。 ■ 放射線治療の適応を診断できると共に、合併症に対応できる。 ■ 病態に応じて分子標的治療薬の適応を決定する。

● 態度 ■ 病状について、患者・家族に説明する。病名告知に際しては、患者・家族の心情に十

分に配慮する。 ■ 専門的治療の必要性、治療方針と選択理由、合併症や副作用、治療後の再発の可能性

について、患者・家族に説明する。 ■ 患者・家族に分子標的治療薬の作用機序、治療効果、起りうる副作用を説明する。

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② 肝内胆管癌(胆管細胞癌) ● 到達目標

■ 腫瘍マーカーや画像所見に基づいて肝内胆管癌(胆管細胞癌)を診断し、適切な治療法を学ぶ。

● 知識 ■ 肝内胆管癌(胆管細胞癌)の疫学・病因・病態を理解する。 ■ 各種画像診断における特徴的な所見を理解し、肝細胞癌や転移性肝癌などとの鑑別診

断を学ぶ。 ■ 肝内胆管癌(胆管細胞癌)の外科治療の適応ならびに治療後の予後を理解する。 ■ 切除適応外の場合の適切な化学療法を学ぶ。

● 技能 ■ 臨床症状の経過とともに、感染症状・腹部症状・黄疸などの自覚症状の有無を聴取で

きる。 ■ 腫瘍マーカー、画像診断をもとに、鑑別診断を考慮して検査計画を立案できる。 ■ Dynamic CT あるいは Dynamic MRI などの画像検査や腫瘍マーカーなどの血液検査

により、肝細胞癌や転移性肝癌など鑑別し、胆管細胞癌の診断ができる。 ■ 外科治療の適応となる胆管細胞癌の診断ができる。 ■ 胆管細胞癌の病態に応じた予後予測ができる。

● 態度 ■ 病状について患者・家族に説明する。病名告知に際しては、患者・家族の心情に十分

に配慮する。 ■ 治療の必要性、合併症、副作用、治療後の再発の可能性について、患者・家族に説明

する。 ■ 治療方針の決定に際して、消化器外科、放射線科などの専門医に速やかに情報を提供

してコンサルトし、適切な治療方針を立案する。

③ その他の肝悪性腫瘍 ● 到達目標

■ 原発性肝癌のなかで、肝細胞癌、肝内胆管癌以外の腫瘍について、分類、特徴、頻度を理解する.

● 知識 ■ 日本の「原発性肝癌取扱い規約」における原発性肝癌の分類のうち、肝細胞癌、肝内

胆管癌以外の腫瘍の種類、頻度を理解する。 ■ 肝腫瘍についての WHO 分類を理解する。 ■ 各種画像検査におけるそれぞれの腫瘍の特徴的な所見を理解する。

● 技能 ■ 臨床症状の経過とともに、感染症状・腹部症状・黄疸などの自覚症状の有無を聴取で

きる。

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■ 腫瘍マーカー、画像診断、組織検査などで、肝細胞癌、肝内胆管癌以外の腫瘍の鑑別診断が可能であり、検査計画の立案と指示ができる。

■ 各病態に応じた予後予測が理解できる。 ● 態度

■ 病状について、患者・家族に説明する。病名告知に際しては、患者・家族の心情に十分に配慮する。

■ 治療の必要性、合併症や副作用、治療後の再発の可能性について、患者・家族に説明する。

■ 治療方針の決定に際して、消化器外科、放射線科などの専門医に速やかに情報を提供してコンサルトし、適切な治療方針を立案する。

23)転移性肝癌

● 到達目標 ■ 腫瘍マーカー、画像所見、現病歴の聴取などにより、肝細胞癌や肝内胆管癌などの原

発性肝腫瘍と鑑別し、適切な治療法を立案する。 ● 知識

■ 転移性肝癌の疫学・病因・病態を理解する。特に、肝臓は肺に次ぐ癌転移の好発臓器であり、全ての悪性臓瘍が肝転移の可能性を有することを理解する。

■ 各種画像検査における特徴的な所見を学ぶ。 ■ 転移性肝癌が疑われ、悪性腫瘍の既往がない場合、原発巣が存在する可能性を念頭に

した検査の必要性を理解する。 ● 技能

■ 腫瘍マーカー、画像診断をもとに.鑑別診断を考慮して検査計画の立案できる。 ■ 各種画像検査や血液検査により転移性肝癌の診断ができる。 ■ 転移巣の外科的治療が有効な病態を診断できる。 ■ 治療方針の決定に際して、消化器外科、放射線科などの専門医に速やかに情報を提供

してコンサルトし、適切な治療方針が立案できる。 ● 態度

■ 病状について患者・家族に説明する。病名告知に際しては、患者・家族の心情に十分に配慮する。

■ 治療の必要性、合併症や副作用、治療後の再発の可能性について、患者・家族に説明する。

24)門脈圧亢進症(食道・胃静脈瘤を含む)

【 I-1-2)⑮ 門脈圧亢進症の病態ならびに、II-4-4)の門脈圧亢進症の治療の項 参照 】

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25)特発性門脈圧亢進症 ● 到達目標

■ 病態を理解し、典型像、臨床徴候を理解する。 ● 知識

■ 病因・病態・疫学を理解する。 ■ 身体所見・診断法・治療法を理解する。 ■ 「門脈血行異常症の診断と治療のガイドライン」(2007 年)で定められた、重症度

分類によって、重症度が 5 段階に分類されることを理解する。 ■ 合併症およびその予後を理解する。

● 技能 ■ 特発性門脈圧亢進症を診断するための適切な診察ができる。 ■ 検査や画像そして病理検査の結果から正しく鑑別できる。

■ それぞれの病態に応じた治療法を立案できる。 ● 態度

■ 病状、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに適切に説明する。

26)肝外門脈閉塞症

● 到達目標 ■ 肝外門脈閉塞症を理解し、病態に応じた治療法を学ぶ。

● 知識 ■ 病因・病態・疫学、病態に応じた治療法を理解する。 ■ 身体所見・血液生化学所見・腹部画像所見(閉塞部位による相違)および病理所見を

理解する。 ■ 合併症およびその予後について概説できる。 ■ 血液検査や画像検査、病理検査の結果から正しく鑑別する。

● 技能 ■ 確定診断するための適切な診察が出来る。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について、患者、家族、および医療スタッフに

説明する。

27)Budd-Chiari 症候群 ● 到達目標

■ Budd-Chiari 症候群を理解し、病態に応じた治療法を学ぶ。 ● 知識

■ 疾患の病因・病態・疫学を理解する。

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■ 身体所見・血液生化学所見・腹部画像所見(閉塞部位による相違)および病理所見を学ぶ。

■ 病態に応じた治療法を理解する。 ■ 合併症およびその予後について概説する。

● 技能 ■ 診断するための適切な診察が出来る。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案できる。 ■ Budd-Chiari 症候群を、検査や画像そして病理検査の結果から正しく鑑別できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説

明する。

28)肝中心静脈閉塞症 sinusoidal obstruction syndrome (SOS), veno‐occlusive disease(VOD)

● 到達目標 ■ 肝中心静脈閉塞症を理解し、病態に応じた治療法を学ぶ。

● 知識 ■ 疾患の病因・病態・疫学を理解する。 ■ 身体所見・血液生化学所見・腹部画像所見および病理所見を学ぶ。 ■ 病態に応じた治療法を理解する。 ■ 合併症およびその予後について概説する。

● 技能 ■ 肝中心静脈閉塞症の診断するための適切な診察ができる。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案できる。 ■ 肝中心静脈閉塞症を、血液検査、画像検査、病理検査の結果から正しく鑑別できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説

明する。

29) 代謝性肝疾患 ① 糖原病 ● 到達目標

■ 肝型糖原病の病型と特徴を理解しる。 ● 知識

■ 肝型糖原病の合併症を理解する。 ■ 各病型の遺伝形式を理解する。

● 技能 ■ 詳細な問診、視診、触診から他の肝疾患を除外する。

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■ 各種血液・画像検査、肝生検結果(電子顕微鏡所見を含む)を用いて診断する。 ● 態度

■ 遺伝形式について患者と家族に説明する。 ■ 栄養士との連携の重要性を理解し、食事療法を指導する。

② 肝アミロイドーシス ● 到達目標

■ 肝アミロイドーシスの病態を理解する。 ● 知識

■ 診断、治療法について理解する。 ● 技能と診断能力

■ 各種血液・画像検査、肝生検結果を用いて診断する。 ● 態度

■ 治療法について患者と家族に説明する。

③ ヘモクロマトーシス ● 到達目標 ■ ヘモクロマトーシスの診断と適切な管理法を学ぶ。 ● 知識

■ ヘモクロマトーシスの病態と合併症を理解する。 ● 技能

■ 詳細な問診、視診、触診から他の肝疾患を除外できる。 ■ 各種血液・画像検査、肝生検結果を用いて診断できる。

● 態度 ■ 瀉血療法について患者と家族に説明する。

④ Wilson 病 ● 到達目標

■ Wilson 病の診断と適切な管理法を理解する。 ● 知識

■ Wilson 病の遺伝形式、病態、病型、合併症を理解する。 ● 技能

■ 各種血液・画像検査、肝生検結果を用いて診断できる ■ Wilsonian fulminant hepatitis を診断できる。 ■ 服薬指導、食事療法を実施できる。

● 態度 ■ 病態・治療・予後・遺伝形式について患者と家族に説明する。 ■ 薬物療法、食事療法について栄養士や薬剤師と連携してマネジメントを行う。

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■ 病型を把握し、肝移植の選択肢を説明する。 ⑤ その他の代謝性肝障害(ポルフィリン症、シトルリン血症)

● 到達目標 ■ 肝性ポルフィリン症の診断と管理法を学ぶ。

■ シトルリン血症、とくに成人期発症シトルリン血症Ⅱ型(CTLN2)の診断と 管理法を学ぶ。

● 知識 ■ 肝性ポルフィリン症の病型を知り、肝外症状について理解する。

■ CTLN2 の食事療法、肝移植療法の有用性を学ぶ。 ● 技能

■ 各種血液・尿・便検査を用いて診断する。 ● 態度

■ 対症療法、増悪因子について患者と家族に説明する。

⑥ 尿素サイクル(代謝)異常症 ● 到達目標

■ 尿素サイクル異常症の病態と適切な管理法を理解する。 ● 知識

■ 尿素サイクル異常症の病態、合併症、遺伝形式を理解する。 ● 技能

■ 高アンモニア血症による脳症を診断できる。 ■ 各種血液尿検査から他の急性肝不全をきたす疾患を除外できる。

● 態度 ■ 病態・治療・予後・遺伝形式について患者と家族に理解する。 ■ 食事療法、薬物療法について栄養士や薬剤師と連携してマネジメントを行う。 ■ 病型を把握し、肝移植の選択肢を患者と家族に説明する。

⑦ 脂質蓄積症(ライソゾーム病を含む) ● 到達目標

■ 脂質蓄積症の病態と適切な管理法を学ぶ。 ● 知識

■ 脂質蓄積症の病態、合併症、遺伝形式を理解する。 ● 技能

■ 詳細な問診、視診、触診から脂質蓄積症を鑑別診断にあげることができる。 ■ 各種血液・尿検査、肝生検結果から脂質蓄積症を鑑別診断にあげることができる。

● 態度 ■ 病態・治療・予後・遺伝形式について患者と家族に説明する(内科)。

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⑧ シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞(neonatal intrahepatic cholestasis by Citrin deficiency; NICCD)

● 到達目標 ■ NICCD の病態と適切な管理法を学ぶ。 ■ NICCD と成人期発症シトルリン血症Ⅱ型の関係を理解する。

● 知識 ■ NICCD の病態、遺伝形式、特異な食癖を理解する。

● 技能 ■ 詳細な問診、視診、触診から NICCD を疑うことができる。 ■ 各種血液尿検査、画像検査、肝生検結果から NICCD を診断することができる。

■ 低血糖時に必要な輸液内容を指示できる。 ■ 高アンモニア血症に合併した脳浮腫の治療薬を選択できる。 ■ 適切な食事指導を指示できる。 ● 態度 ■ 病態・治療・予後・遺伝形式について患者と家族に説明する。 ■ 低血糖時の対処法を患者と家族に説明する。 ■ 食事療法について栄養士と連携して患者と家族に説明する。 30)放射線肝炎

● 到達目標 ■ 病態と放射線治療における肝臓の耐容線量を理解する。

● 知識 ■ 肝臓への放射線照射の影響と、その後の経時的変化を理解する。 ■ 各種臨床検査の所見を学ぶ。 ■ 肝臓における放射線の耐容線量を理解する。

● 技能 ■ 肝腫瘍性病変に対する放射線治療後の肝臓に対する影響を想定し、治療計画を立てる

ことができる。 ■ 各種画像ならびに検査所見の変化を的確に判断し対応する。 ■ 放射線治療歴と発症までの期間、各種検査結果より診断する。また同様の肝障害を来

たす他疾患と鑑別する。 ● 態度

■ 原因・検査計画・治療方針を含め、今後想定される経過について患者・家族に適切に説明する。

■ 定期的な検査を行い、その経時的変化を的確に評価する。 ■ 患者の肝予備能を踏まえ、放射線肝炎のリスクを検討した上で、肝腫瘍性病変に対す

る放射線治療について適切にマネジメントする。

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31)Reye 症候群 ● 到達目標

■ Reye 症候群について理解し、臨床的・病理学的に類似する疾患を学ぶ。 ● 知識

■ 様々な代謝疾患によって Reye 様症候群がおこることを理解する。 ● 技能

■ 詳細な問診、視診、触診から Reye 症候群とその類縁疾患を鑑別疾患にあげることができる。

■ Reye 症候群を発症する薬剤を判断できる。 ■ 各種血液画像検査、髄液検査、随伴症状から Reye 症候群とその類縁疾患を鑑別でき

る。 ● 態度

■ 病態・予後・予防について患者と家族に説明する。 32)肝内結石症

● 到達目標 ■ 肝内結石の成因と病態背景を理解する。 ■ 肝内結石の症候と診断法ならび治療法と予後を理解する。

● 知識 ■ 病因、病態、特徴的症候、身体所見を理解する。 ■ 血液生化学、腫瘍マーカーを理解する。 ■ 結石存在診断、肝内胆管拡張の有無による胆汁うっ滞の画像所見を学ぶ。 ■ 肝内胆石治療のフローチャートに従い、治療法と予後を理解する。 ■ 内科的結石除去術(経皮経肝胆道鏡下結石除去術、経十二指腸乳頭的胆道鏡下結石除

去術、体外衝撃波結石破砕療法)の適応と限界を理解する。 ● 技能

■ 病歴、身体所見から病態を判断できる。 ■ 胆管癌の存在を念頭においた検査を指示できる。 ■ 各種画像診断(US、MRI、CT、DIC-CT、 ERC、PTC、IDUS など)で部位診断、

治療の要否、癌合併の有無を判断し、治療方針について決定できる。 ■ 胆道ドレナージについて方法を理解し、タイミングを判断できる。 ■ 内科的結石除去術の適応を判断できる。

■ 肝切除の適応が判断できる。 ■ 適切な術式を選択して、その内容を説明できる。

● 態度 ■ 胆石症診療ガイドラインを参照する。 ■ 病状および治療の選択について患者・家族に説明する。 ■ 各種検査実施前に患者・家族に検査の内容、必要性、合併症について説明する。

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■ 治療前に患者・家族に治療の内容、必要性、合併症について説明する。 33)全身疾患と肝 ① 甲状腺疾患

● 到達目標 ■ 機能亢進でも低下でも肝障害を起こすことを理解する。 ■ 肝硬変や自己免疫性肝疾患、脂肪肝に合併することが多いことを学ぶ。 ■ C 型慢性肝炎のインターフェロン治療中に高頻度に併発することを理解する。

● 知識 ■ 機能低下症・亢進症およびインターフェロン治療によるものと分けて、病因・病態・

疫学を理解する。 ■ 病態に応じた肝障害の身体所見、血液生化学所見、画像所見を学ぶ。 ■ 病態に応じた肝障害の病態に応じた治療法を理解する。 ■ 甲状腺疾患に伴う肝障害の合併症およびその予後について概説する。

● 技能 ■ 甲状腺機能低下症・亢進症およびインターフェロン治療による肝障害を鑑別するため

の、適切な診察ができる。 ■ 病態に応じた甲状腺疾患に伴う肝障害の治療法を立案、実施できる。 ■ 機能低下症を、身体所見、検査、画像そして病理検査の結果から正しく鑑別できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説

明する。

② 肝腎症候群 ● 到達目標

■ 肝腎症候群の病因と病態を理解し、予防策を学ぶ。 ● 知識

■ 疾患の病因・病態および疫学を理解する。 ■ 身体所見・尿所見・血液生化学所見および画像所見を理解する。 ■ 診断基準により他の疾患を除外する。 ■ 病型が病状の進行と血清クレアチニン値によって、1型と2型に分かれる事を学ぶ。 ■ 病態に応じた治療法を理解する。 ■ 合併症およびその予後について理解する。

● 技能 ■ 肝腎症候群を診断するための適切な診察ができる。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案・実施できる。 ■ 肝腎症候群を、身体所見、検査および画像から他の疾患と正しく鑑別できる。

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● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説

明する。

③ 循環不全 ● 到達目標

■ 虚血性肝炎とうっ血肝の発症機序、データ変化を理解し診断する。 ● 知識

■ 循環不全による肝障害には、虚血性肝炎とうっ血肝があることを理解する。 ■ 虚血性肝炎の病因・病態・検査所見を理解する。 ■ 虚血性肝炎の治療法は、循環動態の安定による事を理解する。 ■ うっ血肝の病因・病態・検査所見・画像所見および病理所見を学ぶ。 ■ うっ血肝の病態に応じた治療法を理解する。 ■ 合併症およびその予後について概説する。 ■ フォンタン術後関連肝疾患の病態を理解する。

● 技能 ■ 虚血性肝炎とうっ血肝を診断するための適切な診察ができる。 ■ 病態に応じた治療法を立案・実施できる。 ■ 虚血性肝炎とうっ血肝を、身体所見、検査および画像から他の疾患と正しく鑑別でき

る。 ● 態度

■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説明する。

④ 自己免疫疾患(膠原病)

● 到達目標 ■ 肝障害の発症機序、血液データ異常を理解しその診断法を学ぶ。

● 知識 ■ 肝障害には、自己免疫疾患そのものによる場合と、使用薬剤による場合があることを

理解する。 ■ 各種自己免疫疾患に伴う肝障害のおおよその発生頻度を学ぶ。 ■ 治療中に、HBV 再活性化による肝障害が起こりうることを理解する。 ■ 肝障害の成因に応じた治療法を理解する。

● 技能 ■ 自己免疫疾患そのものと、使用薬剤による肝障害の鑑別ができる。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案・実施できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族に説明する。

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⑤ 血液疾患 ● 到達目標

■ 血液疾患に伴う肝障害の機序を理解し、その診断と治療法を学ぶ。 ● 知識

■ 血液悪性腫瘍の肝浸潤に基づく肝障害を理解する。 ■ 輸血による肝障害の機序を理解し、治療法を学ぶ。 ■ 移植片対宿主病(GVHD)に伴う肝障害の病態を理解する。 ■ 血液疾患治療中に、HBV 再活性化による肝障害が起こりうることを理解する。

● 技能 ■ 肝障害の成因を正しく鑑別できる。 ■ それぞれの成因に応じて治療法を立案・実施できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族に説明する。

⑥ 消化器疾患 ● 到達目標

■ 肝疾患と関連する消化器疾患の臨床像を理解する。 ● 知識

■ 肝疾患が消化管や胆嚢などの消化器病変の原因になりうることを理解する。 ■ 消化吸収障害や下部消化管の炎症などをきたす消化器疾患が、肝疾患を惹起すること

を理解する。 ■ 潰瘍性大腸炎と原発性硬化性胆管炎のように、同一機序の関与が考えられる関連疾患

があることを理解する。 ● 技能

■ 肝疾患と他の消化器疾患との関連を念頭に置き、必要に応じて検査や治療を立案することができる。

● 態度 ■ 肝疾患と他の消化器疾患を併発している場合、その関連性について患者に説明する。

⑦ 血球貧食症候群(Hemophagocytic syndrome;HPS) ● 到達目標

■ 肝障害の原因の1つとしての病態を理解し、診断、治療に結びつける。 ● 知識

■ 発症要因、病態生理、疫学を理解する。 ■ 続発性 HPS の基礎疾患とその頻度について理解する。 ■ 症候・身体所見の特徴について理解する。 ■ 肝生検の組織像について理解する。 ■ 治療方針の概要について理解する。

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● 技能 ■ 必要時の肝生検を含め、適切に検査計画を立案、実施することができる。(内科) ■ 臨床症状から HPS を推定できる。 ■ 他の肝障害を来たす疾患を鑑別できる。

● 態度 ■ 病状や検査の必要性について他科専門医とも連携して、患者、家族に説明する。(内

科) ■ 診療ガイドライン(HLH–2004)を参照する。

⑧ HIV 感染症 ● 到達目標

■ HIV 感染症に伴う肝疾患の概要を知り、専門医との連携のもと適切な診療を行う。 ● 知識

■ 主な感染経路を知り、肝疾患との共通性について理解する。 ■ B 型肝炎、C 型肝炎と合併した場合の影響について理解する。 ■ 診断法を理解する。 ■ 治療、肝炎の治療との関係について理解する。 ■ 治療による肝機能異常について理解する。

● 技能 ■ 感染症専門医と相談の上、診断を行うことができる。 ■ 感染症専門医と相談の上、肝疾患を適切に管理できる。 ■ 診断に必要な病歴を聴取できる。 ■ 診断に必要な検査を的確に選択できる。

● 態度 ■ 検査の必要性を患者に納得してもらい、実施することができる。 ■ 検査結果の説明、陽性の場合の感染症専門医への紹介を患者のプライバシーに配慮し

ながら適切に行うことができる。 34) 特発性新生児肝炎症候群

● 到達目標 ■ 特発性新生児肝炎症候群は除外診断であり、特に胆道閉鎖症と鑑別を行う。

● 知識 ■ 肝門部空腸吻合術は禁忌であることを理解する。

● 技能 ■ 詳細な問診から診断できる。

● 診断能力 ■ 各種血液検査、肝病理所見から原因を理解できる。

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● 態度 ■原因について患者と家族に理解する。(内科)

35)妊娠と肝 ● 到達目標

■ 妊娠中の肝機能障害を鑑別する。 ● 知識

■ 妊娠中における肝障害を分類し、その病態を理解する。 ■ 急性妊娠性脂肪肝、妊娠性胆汁うっ滞、HELLP 症候群を適切に診療する。 ■ B 型肝炎ウイルスならびに C 型肝炎ウイルスの母子感染の特徴を理解する。

● 技能 ■ 妊娠中の肝機能障害の発症時期からその状態を把握できる。

● 態度 ■ 妊娠中の肝機能障害の状態を、他科の医療従事者と連携しながら診療する。 ■ B 型肝炎ウイルスキャリア妊婦の妊娠中や分娩後の肝機能の変化を説明する。 6. 行政と肝疾患診療 1) 肝疾患診療に関する病診連携

① 肝疾患連携拠点病院ならびに肝疾患診療ネットワーク ● 到達目標

■ 肝疾患診療レベルの均てん化のため、どのような体制が構築されているか理解する。 ● 知識

■ 肝疾患連携拠点病院の肝炎対策事業を理解する。 ■ 肝疾患連携拠点病院、肝疾患専門医療機関、かかりつけ医の肝疾患連携ネットワーク

を学ぶ。 ● 技能

■ 肝疾患連携ネットワークを利用して、肝疾患患者に対する適切な診療体制を整える。 ● 態度

■ 患者・家族に対して、肝疾患連携拠点病院と肝疾患連携ネットワークの仕組みとその有用性について説明する。

② 肝疾患治療パス

● 到達目標 ■ パスの内容を理解し、肝疾患専門医療機関とかかりつけ医との連携により質の高い肝

疾患診療を提供する。 ● 知識

■ 肝炎ウイルス患者の治療適応、治療継続について連携パスを用いることにより、専門

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医療機関とかかりつけ医が情報を共有し、均てん化された肝疾患診療を提供できるこ とを学ぶ。

● 技能 ■ 連携パスを利用して、肝疾患診療を行う。

● 態度 ■ 患者・家族に連携パスによる情報の共有により、質の高い肝疾患診療が可能になるこ

とを説明する。 2) 肝疾患診療に関連する法律、制度 ① B 型肝炎感染防止対策

● 到達目標 ■ B 型肝炎ウイルスの母子感染・水平感染の重要性と予防法を理解する。

● 知識 ■ B 型肝炎の母子感染防止の歴史と現況を理解する。 ■ 感染防止の対象となる出生児への対応を学ぶ。 ■ ユニバーサル HB ワクチンの運用について学ぶ

● 技能 ■ 抗 HBs ヒト免疫グロブリン(HBIG)と HB ワクチンの投与法を適切に行うことがで

きる。 ● 態度

■ 母親・家族に B 型肝炎ウイルスの母子感染・水平感染の可能性を説明する。 ■ 母親・家族に出生児への HBIG と HB ワクチンの投与法と起こりうる副作用について

説明する。

② 肝炎対策基本法 ● 到達目標

■ 現行の肝炎対策が法律に基づいて進められていること、および、その歴史的背景についても理解する。

● 知識 ■ 肝炎対策基本法成立の歴史的背景を理解する。 ■ 肝炎対策の推進に関する基本的指針を学ぶ。

● 技能 ■ 肝炎ウイルス患者を適切にフォローアップすることができる。 ■ 肝炎ウイルス検査の促進、啓発活動を行う。

● 態度 ■ 患者・家族に肝炎対策は法律に基づいて行われていることを説明する。 ■ 肝炎ウイルス検査未実施者にその必要性を説明する。

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③ 肝炎治療特別促進事業(医療費助成制度) ● 到達目標

■ 医療費助成制度を熟知し、患者への適切な医療の提供、ならびに医療費負担の軽減を図る。

● 知識 ■ 肝炎ウイルス治療において、どのような治療・検査が医療費助成制度の対象となるか

理解する。 ■ 患者の自己負担額の上限を理解する。

● 技能 ■ B 型肝炎に対する核酸アナログ製剤、またはインターフェロン療法に関連する医療行

為が、医療費助成制度の対象であることを理解し適切に運用することができる。 ■ C 型肝炎に対するウイルス駆除を目的とした抗ウイルス療法に関連する医療行為が、

医療費助成制度の対象であることを理解し適切に運用することができる。 ● 態度

■ 患者・家族に肝炎ウイルス治療における医療費助成制度の内容について説明する。

④ 臓器移植法 ● 到達目標

■ 脳死下臓器提供の法的要件を理解する. ■ 旧法である臓器移植法から改正法への改正点を理解する。

● 知識 ■ 臓器提供の要件として、改正法では本人の臓器提供の意思が不明であっても、遺族が

これを書面により承諾した場合も臓器提供が可能となることを理解する。 ■ 改正法では 15 歳未満でも家族の書面による承諾があれば、臓器提供が可能となるこ

とを学ぶ。 ● 技能

■ 臓器提供を受ける者に、あらかじめ日本臓器移植ネットワークに移植希望登録をする必要があることを説明できる。

● 態度 ■ 移植外科と連携し、脳死肝移植登録について検討する。

⑤ 身体障害者福祉法 ● 到達目標

■ 身体障害者福祉法の理念を理解し、肝疾患患者の肝障害度を適切に判定する。 ● 知識

■ 肝臓機能障害の認定基準を学ぶ。 ■ 身体障害者手帳の申請は、都道府県知事もしくは政令指定都市、中核都市の市長が認

定した医師のみが作成できることを理解する。

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● 技能 ■ Child-Pugh C の肝疾患患者に対して、身体障害者の認定申請を行うことができる、

もしくは指定医師に依頼できる。 ● 態度

■ Child-Pugh C の肝疾患患者・家族に身体障害者の認定申請について説明する。 3) 感染症法

● 到達目標 ■ 感染症法上報告の義務付けられている肝疾患と報告時期を把握する。

● 知識 ■ 肝炎に関しては、経口感染症は 4 類に、その他のウイルス性肝炎は 5 類に分類される

ことを理解する。 ● 技能

■ 4 類感染症である A 型肝炎、E 型肝炎は、診断後直ちに保健所に届け出る。 ■ その他のウイルス性肝炎については診断後 7 日以内に保健所に届け出る。

● 態度 ■ 患者・家族に、感染症は保健所に届け出が必要であることを説明する。 ■ 患者・家族に、肝炎ウイルスの周囲への感染の可能性について説明する。

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Ⅲ 胆道疾患

1. 検査 1) 肝胆道系酵素 総ビリルビン、直接ビリルビン、AST、ALT、γ-GTP、アルカリホスフ

ァターゼ<ALP>、アルカリホスファターゼアイソザイム 【 II-1-1) 肝機能検査の項 参照 】

2) 画像診断 ① 腹部超音波検査 <US> 【 II-1-7) ⑦ 超音波検査の項 参照 】 ② コンピュータ断層撮影 <CT> 【 II-1-7) ② コンピュータ断層撮影の項 参照 】 ③ 磁気共鳴画像 <MRI、MRCP> 【 II-1-7) ⑨ 磁気共鳴画像の項 参照 】 ④ 胆道造影(排泄性胆道造影・直接胆道穿刺法)

【 II-1-7)③ 排泄性胆道造影の項、II-1-7) ④ 直接胆道穿刺法の項 参照 】 ⑤ 胆道鏡検査 【 II-1-7) ⑪ 胆道鏡検査の項 参照 】

2.専門的治療法

1)胆道ドレナージ ● 到達目標

■ 減黄治療としての胆道ドレナージについて、様々な手技の種類と適応を理解し、手技を学ぶ。

● 知識 ■ 経皮経肝、経乳頭的ドレナージに加えて、経胃など高難度手技についても理解し、最

良の治療法の選択を学ぶ。 ● 技能

■ 胆管閉塞と末梢胆管の拡張を画像診断で診断できる。また胆汁うっ滞を血液検査データで推測できる。

■ 経皮経肝ドレナージのほか、経乳頭的ドレナージを選択することができる。(内科) ● 態度

■ 閉塞性黄疸の病態・治療・予後について患者と家族に説明する。(内科) ■ 胆道ドレナージ術のリスクとベネフィットについて患者と家族に説明する。(内科) ■ 病態を把握し、内科的処置のみならず、外科治療の選択肢についても説明する。 3.外科手術 (腹腔鏡下手術も含む)

1)胆囊摘出術 ● 到達目標

■ 胆囊摘出術の適応と限界を学ぶ。 ● 知識

■ 消化器外科医に紹介する適切な時期を理解する。(内科) ■ 開腹および腹腔鏡下手術の適応と限界を理解する。(外科)

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● 技能 ■ 手術適応を判断し、適切なタイミングで外科医に紹介できる。(内科) ■ 全身のリスクを評価し、適切な術式により手術を施行できる。(外科) ■ 術前・術後管理を適切に行える。(外科)

● 態度 ■ 外科手術の必要性を患者・家族に説明する。 ■ その際、患者・家族の心情に十分配慮する。 ■ 必要に応じ、消化器外科医に相談する。(内科)

2)胆管切開術 ● 到達目標

■ 胆管切開術の適応と限界を学ぶ。 ● 知識

■ 消化器外科医に紹介する適切な時期を理解する。(内科) ■ 開腹および腹腔鏡下手術の適応と限界を理解する。(外科)

● 技能 ■ 手術適応を判断し、適切なタイミングで外科医に紹介できる。(内科) ■ 全身のリスクを評価し、適切な術式を提案できる。(外科) ■ 術前・術後管理を適切に行える。(外科)

● 態度 ■ 外科手術の必要性を患者・家族に説明する。 ■ その際、患者・家族の心情に十分配慮する。 ■ 必要に応じ、消化器外科医に相談する。(内科)

3)胆道消化管吻合術 ● 到達目標

■ 胆道消化管吻合術の適応と限界を学ぶ。 ● 知識

■ 消化器外科医に紹介する適切な時期を理解する。(内科) ■ 開腹手術の適応と限界を理解する。(外科)

● 技能 ■ 手術適応を判断し、適切なタイミングで外科医に紹介できる。(内科) ■ 全身のリスクを評価し、適切な術式を提案できる。(外科) ■ 術前・術後管理を適切に行える。(外科)

● 態度 ■ 外科手術の必要性を患者・家族に説明する。 ■ その際、患者・家族の心情に十分配慮する。 ■ 必要に応じ、消化器外科医に相談する。(内科)

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4)肝切除術 ● 到達目標

■ 肝切除術の適応と限界を理解する。 ● 知識

■ 消化器外科医に紹介する適切な時期を理解する。(内科) ■ 開腹および腹腔鏡下手術の適応と限界を理解する。(外科)

● 技能 ■ 手術適応を判断し、適切なタイミングで外科医に紹介できる。(内科) ■ 全身のリスクや肝機能・予定残肝容量を事前に評価し、適切な術式を提案できる。

(外科) ■ 術前・術後管理を適切に行える。(外科)

● 態度 ■ 外科手術の必要性を患者・家族に説明する。 ■ その際、患者・家族の心情に十分配慮する。 ■ 必要に応じ、消化器外科医に相談する。(内科) 4.胆道疾患

1)良性疾患 ① 胆嚢結石症、胆嚢炎 ● 到達目標

■ 胆嚢結石症と胆嚢炎の診断を速やかに、かつ的確に実践する。 ■ 外科手術や胆嚢・胆道ドレナージについて、手技と適応を理解し、処置も学ぶ。

● 知識 ■ 胆嚢結石症と胆嚢炎の腹部所見を理解する。

■ 手術の適応を判断でき、胆嚢・胆道ドレナージ術について理解して最良の治療法を学ぶ。

● 技能 ■ 胆嚢結石症と胆嚢炎の症状やマーフィー徴候など特徴的な所見を理解し、血液検査デ

ータ、画像検査で予後を推測できる。 ■ 経皮経肝胆嚢ドレナージを実践できる。また経乳頭的胆嚢ドレナージについても処置

できることが望ましい。 ■ 胆嚢癌の存在を念頭においた検査を指示できる。

● 態度 ■ 胆嚢結石症と胆嚢炎の病態・治療・予後について患者と家族に説明する。 ■ 胆道ドレナージ術の必要性、手術適応について的確に説明し、各々の手技のリスクと

ベネフィットについて患者と家族に説明する。

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② 胆管結石,胆管炎,肝内結石 ● 到達目標

■ 胆管結石は有症状例が多く,治療が必要となることが多いことを理解する。 ■ 胆管炎の病態、治療方針を理解する。 ■ 肝内結石の病態を理解し治療方針を学ぶ。 ■ 肝内結石が胆管癌の高危険群であることを理解する。

● 知識 ■ 胆管結石・胆管炎の病態,特徴的な身体所見、血液生化学検査異常を理解する。 ■ 結石存在診断,胆管拡張の有無による胆汁うっ滞の画像所見を学ぶ。 ■ 胆道ドレナージが必要な病態を理解する。 ■ 胆管結石除去法とその後の有石胆嚢の扱いについて理解する。 ■ 原発性と続発性の肝内結石の病態について理解する。 ■ 原発性肝内結石と胆管癌の関係について学ぶ。

● 技能 ■ 病歴・身体所見から病態を判断できる。 ■ 腹痛の鑑別に必要な検査を必要に応じて適切な順序で指示できる。 ■ 胆汁うっ滞を,血液生化学検査成績,US 所見から判断できる。 ■ EUS、MRCP、CT 所見を解釈できる。 ■ 急性胆管炎の病態,治療方針について判断できる。 ■ 重症例での特殊治療可能な施設への搬送の是非が判断できる。 ■ 胆道ドレナージのタイミングを判断できる。 ■ 胆管癌の存在を念頭に置いた検査を指示できる。

● 態度 ■ 胆道炎の診療ガイドラインを参照する。 ■ 病状および治療の選択について患者・家族に説明する。 ■ 各種検査実施前に患者・家族に検査の内容,必要性,合併症について説明する。 ■ 専門的治療について患者・家族に治療の内容,必要性,合併症について説明する。 ■ 必要に応じて消化器外科医にコンサルトする。

③ Alagille 症候群 【 II-5-11)アラジール症候群の項 参照 】 2)悪性疾患 ①胆道腫瘍 ● 到達目標

■ 胆道腫瘍の成因を理解し、画像診断上の特徴を把握する。 ■ 胆道腫瘍には、胆管癌[肝内胆管癌(=胆管細胞癌)と肝外胆管癌]、胆嚢癌、乳頭

部癌の総称であることを理解する。

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● 知識 ■ 疫学、特徴的症候・身体所見を理解する。 ■ 血液生化学特徴、腫瘍マーカーを学ぶ。 ■ 画像所見上、良性疾患との鑑別診断を理解する。

● 技能 ■ 各種画像診断(US、ERC、MRC、CT)などで良性疾患との鑑別診断ができる。 ■ 血管造影にて脈管浸潤の有無を判断できる。 ■ 各種画像所見(US、CT、MRI、PTC、ERC、EUS)から部位診断ができる。 ■ 胆道ドレナージの必要性とタイミングを判断できる。

■ 手術適応、化学療法、放射線治療について適応を判断できる。 ■ 画像診断より術式を決定できる。 ■ 肝切除、胆管切除、リンパ節郭清、胆道再建術の内容を理解する。

● 態度 ■ 病状および治療の選択について患者・家族に説明する。 ■ 各種検査実施前に患者・家族に検査の内容、必要性、合併症について説明する。 ■ 治療前に患者・家族に治療の内容、必要性、合併症について説明する。 ■ 外科手術の必要性・内容を患者・家族にわかりやすく説明する。

②肝外胆管癌 ● 到達目標

■ 肝門部・上部胆管癌、中下部胆管癌の的確な診断ができる。 ■ 胆管癌に伴う症状、身体所見を理解する。 ■ 黄疸、肝胆道系酵素上昇、肝内胆管拡張などが発見の契機となることを学ぶ。 ■ 治療として閉塞性黄疸、胆管炎のコントロール並びに外科切除などの抗腫瘍療法が必

要であることを学ぶ。 ● 知識

■ 肝外胆管癌と他の良性胆管狭窄を来す疾患との鑑別診断を学ぶ。 ■ 胆管癌の高危険群を理解する。

● 技能 ■ 各種画像診断所見から胆管癌の発生部位、進達度、病期を判断できる。 ■ ERCP の適応を判断できる。 ■ 胆道ドレナージの必要性とタイミングを判断できる。 ■ 手術適応について判断できる。 ■ 化学療法・放射線療法について適応を判断できる。

● 態度 ■ 必要に応じて胆道癌診療ガイドラインを参照する。 ■ 専門的な診断・治療技術が必要であることを患者・家族に説明する。 ■ 黄疸・胆管炎のコントロールが難しい疾患であることを説明する。

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■ 必要に応じて専門家・消化器外科医にコンサルトする。

③ 胆嚢癌 ● 到達目標

■ 胆嚢癌の的確な診断を学ぶ。 ■ 胆嚢癌に伴う症状、身体所見を理解する。 ■ 黄疸、肝胆道系酵素上昇、肝内胆管拡張などが発見の契機となることを知る。 ■ 治療方針を的確に立案する。

● 知識 ■ 胆嚢癌の高危険群を理解する。 ■ 早期胆嚢癌を疑う所見を理解し、他の胆嚢内隆起性病変との鑑別診断を学ぶ。

● 技能 ■ 各種画像診断所見から胆嚢癌の進達度、病期を判断できる。 ■ ERCP の適応を判断できる。 ■ 胆道ドレナージの必要性とタイミングを判断できる。 ■ 手術適応について判断できる。 ■ 化学療法・放射線療法について適応を判断できる。

● 態度 ■ 必要に応じて胆道癌診療ガイドラインを参照する。 ■ 専門的な診断・治療技術が必要であることを患者・家族に説明する。 ■ 黄疸・胆管炎のコントロールが難しい疾患であることを説明する。 ■ 必要に応じて専門家・消化器外科医にコンサルトする。

④ 十二指腸乳頭部癌 ● 到達目標

■ 的確な診断を学ぶ。 ■ 症状、身体所見を理解する。 ■ 黄疸、胆道系酵素上昇、肝内胆管拡張などが発見契機となることを学ぶ。 ■ 治療方針を的確に立案する。

● 知識 ■ 特徴的な内視鏡所見を理解する。 ■ 他部位に発生する胆道癌との臨床的違いを学ぶ。

● 技能 ■ 超音波内視鏡所見について判断できる。 ■ 各種画像診断所見から進達度、病期を判断できる。 ■ ERCP の適応を判断できる。 ■ 内視鏡的乳頭切除術適応、手術適応について判断できる。 ■ 化学療法・放射線療法について適応を判断できる。

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● 態度 ■ 必要に応じて胆道癌診療ガイドラインを参照する。 ■ 専門的な診断・治療技術が必要であることを患者・家族に説明する。 ■ 黄疸・胆管炎のコントロールが難しい疾患であることを説明する。 ■ 必要に応じて内視鏡治療医・消化器外科医にコンサルトする。

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IV. 腹腔・腹壁疾患 1. 細菌性腹膜炎(特発性細菌性腹膜炎も含む)

● 到達目標 ■ 定義と病態を理解し、的確な診断法を学ぶ。 ■ 易感染宿主に合併した予後不良な感染症であることを理解し、腹水コントロールを含

めた全身管理を理解する。 ● 知識

■ 病因・病態および疫学を理解する。 ■ 診断は、肝硬変以外の原因による腹水を除外した上で、腹水中好中球数 250/μl 以

上、細菌培養が陽性で持続性腹膜炎が除外されたものであることを理解する。 ■ 病態に応じた治療法を学ぶ。 ■ 合併症およびその予後を理解する。

● 技能 ■ 診断するための適切な診察ができる。 ■ それぞれの病態に応じた治療法を立案・実施できる ■ 身体所見、検査および画像から他の疾患と正しく鑑別できる。

● 態度 ■ 適切な病状の説明、治療法そして予後について患者、家族、および医療スタッフに説

明する。