自分の将来の病気を予測する - tmd.ac.jp遺伝的素因による疾患罹患性予測 ......

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自分の将来の病気を予測する 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 田中

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自分の将来の病気を予測する

東京医科歯科大学 難治疾患研究所

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構

田中 博

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ゲノム・オミックスと病気

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ゲノム・オミックスについて

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始まりとしてのヒトゲノム計画• ヒトゲノム:遺伝子2万数千、当初10万• 1988年から完全解読の必要性、国際組織

(HUGO:Human Genome Organization)• 1990年: 日米欧の研究機関(世界16)

ヒトゲノム計画がスタート

• 1998年: 米Celera社,ショットガン法提案

2001年には全ヒトゲノムの解析完了と発表

• 2000年6月: 粗配列の解読を発表

• 2001年2月両者 Nature, Science誌に特集

2003年4月15日:ヒトゲノム計画精密配列完成

DNA構造発見から50年

グレッグベンター

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Ensembl哺乳類、脊椎動物のゲノム解読も進行中約1000種ゲノム解読

Broad Inst.

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21染色体と遺伝子の位置

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ゲノム・オミックス情報の病気への応用

• 生れ持った先天的ゲノムにおける違い– オーダメイド医療,狭義のゲノム医療– ヒトのゲノムは30 億DNA,1細胞に全長2m– 約99.5%同じ、0.5%の違い– 疾患発症に関係するDNA配列の違いがある– 遺伝病の原因となる疾患原因遺伝子の変異– 成人病などの疾患感受性遺伝子の多型– 疾患発症の遺伝的素因からの予測につながる

• 病気とともに変化するゲノム・オミックス– 狭義のオミックス医療– がんなど、後天的な変異の蓄積– 「わるい遺伝子」の発現– 疾病と関係するタンパク質や代謝物– バイオマーカ– 疾病の予測・進行状態を判断する

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• 「生得的な」ゲノム変異や多型性に

基づいた個別化医療(オーダメイド医療)

– 生得的ゲノムは全細胞/生涯を通じて同一

• 疾患原因遺伝子

– 1980年代の家系調査とDNAマーカ連関解析

• ハンチントン病:CAG(グルタミン)リピート

反復回数40回以上、99%発症

• その他にデシャンヌ型筋ジストロフィー,嚢胞性繊維症など (平衡選択)

• 当時400程度のDNAマーカ ヒトゲノム解読計画へ

• 疾患感受性遺伝子

– 多型性:一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism),1000万箇所

• そのほかに遺伝子コピー数異常など

先天的ゲノムの個人の違いによる医療(1990〜)

A1A3 A2A2

A1A2 A3A2

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疾患関連遺伝子

• 生得的ゲノム変異・多型による疾患発症の生得的リスクの予測– 家系調査解析稀な遺伝病:相対リスク大いずれも遺伝難病で治療手段なし

– 全ゲノム関連解析5%ぐらい頻度の高い多型相対リスク小:1.1– 1.5環境因子:例,喫煙肺がん相対リスク4.8発症予測に効果低い

• 生得的ゲノム変異・多型の疾患予測力?

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NHGRI GWA Catalogwww.genome.gov/GWAStudieswww.ebi.ac.uk/fgpt/gwas/

Published Genome-Wide Associations through 12/2012Published GWA at p≤5X10-8 for 17 trait categories

疾患関連遺伝子のマップ

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疾患とともに変化するゲノム・オミックスによる医療(2000〜)

• 「後天的・疾病依存的に変化する」

(体細胞)ゲノム・オミックスに基づく医療

– 疾患 オミックス病態像: 後天的ゲノム変異・遺伝子発現プロファイル・プロテオーム・メタボローム

– 疾患組織・病態進行に依存:臨床症状や病理変化より早く変化

DNA microarray

mass spectrometry

Next generationsequencer

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疾患とともに変化するゲノム・オミック

スによる医療(2000〜)

• 疾患の進行度の評価

– 進行中の疾病の状態を把握

• 疾患のオミックスプロファイル(網羅的分子病態像)によるサブタイプ分類 “疾患の患者個性“– 臨床・病理的な分類に対して内因的な分類(例,乳がん)

• 疾患の予後予測・早期診断・先制医療

乳がんのオミックスプロファイルと亜型分類と予後・治療

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疾患発症を予測する

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SNPを利用する遺伝学診断全ゲノム関連解析(GWAS)

• ある疾患の患者群とその疾患に罹患していない健常者との間で、~100万箇所の多型(主にSNP)の頻度の分布(差異)を調べ、有意な統計的連関があるかどうか統計的に検定し、疾患関連遺伝子を見出す。

クローン病の易罹患性に関するゲノムワイド関連解析の結果(理研ゲノム医科学センター)

GG GC CC

患者 522 340 138

健常者 340 310 350

-log p 値の

マンハッタンプロット

染色体位置

-log

p

有意水準P偶然にこのような偏った表が出現する確率、偏っている程小さい

イルミナNPアレイ

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NHGRI GWA Catalogwww.genome.gov/GWAStudieswww.ebi.ac.uk/fgpt/gwas/

Published Genome-WideAssociations through 12/2012Published GWAat p≤5X10-8 for

17 trait categories

GWASのデータベースと遺伝的素因による疾患罹患性予測

頻度データ

1.0倍(平均)

0.63倍 2.0倍 3.0倍

遺伝子診断を行った被験者の遺伝子型

1.43倍Hapmapデータを利用(宮野:MYCODE)

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幾つかのDTC遺伝子診断プログラム

• MYCODE– 東大医科研宮野教授とDeNAライフサイエンス– 日本人DNAデータを用いたリスク予測モデル– 選定論文より疾患294,体質148について日本人の疾患リスク予測モデルを構築– 単因子性遺伝疾患、家族性腫瘍、小児疾患、精神疾患などは除く

• GeneQuest– 東大大学院生, Yahooと提携、昨年よりサービス開始– 対象遺伝子5000,疾患罹患性予測200疾患– 相対リスクが提示される

• Genelife– 203遺伝子・70項目に対応する遺伝子検査キット

ソニーP5:Illuminaやエムスリーと新会社「P5」を設立した。シーケンス受託などDTC事業はない因みに米国の23andMeは遺伝子診断プログラムは昨年末停止命令を受けた

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環境・習慣など表現型情報がなければ正確な予測ができない

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疾患理解の進化:失われた遺伝継承性疾病の遺伝継承部分すら説明できない

Teri A. Manolio, Francis S. Collins et al. Finding the missing heritability of complex diseases, vol 461, 8 October 2009

オッズ比

アレル頻度

連鎖解析

GWAS

Missing Heritability

連鎖分析やGWASでは遺伝素因のほとんどを説明できていない

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失われた遺伝継承性に対する我々の見解

大半の疾患は、複数の要因によって発症する

1. 複数の遺伝子の相互作用

2. 遺伝子と遺伝子の相互作用

– 相互作用を1項目のみで評価・

– 他の相互作用項の効果で相殺

単因子性遺伝病 多因子疾患 感染 事故

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幾つかの典型例

• ALDH2が*1*1型の場合はコップ⼀杯の酒でも顔が⾚くなる(フラッシング)• ALDH2の*2型(東洋⼈に特徴的)を持つ場合は、アルコールに弱いほか、

アルコールを飲んだ場合の⾷道がんのリスクが72.86倍⾼くなる。72.86

ALDH2(アルコール脱水素酵素)アルコール摂取量・食道がんリスクの関係

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PTSD事例

• セロトニントランスポーターSLC6A4(STin2, 5-HTTLPR, rs25531)の変異のうち、rs25531においてPTSDとの関連

• 2008年北イリノイ大学銃乱射事件後のフォローアップ調査– Arch Gen Psychiatry. 2012 Jan;69(1):89-97.

• 5-HTTLPR遺伝子型L/Lと不安感受性や子供の頃の虐待についてのGxE効果が観察された– Depress Anxiety. 2011 Dec 21;28(12):1048-57.

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組合せ特異的遺伝子環境相互作用Idiosyncratic Effect of Combination of GxE factors

• 遺伝的素因と環境の相互作用

• 相互作用の特異的組合せ効果– ハワイの白人、日系人と結腸がん発生– 相対リスクの乗算ではない。Idiosyncratic Effect

CYP1A2 Phenotype≦Median

CYP1A2 Phenotype >Median

Likes rare/medium meat

Likes well-done meat

Likes rare/mediummeat

Likes well done meat

Non-Smoker

NAT2 Slow 1 1.9 0.9 1.2NAT2 Rapid 0.9 0.8 0.8 1.3

Ever-Smoker

NAT2 Slow 1 0.9 1.3 0.6NAT2 Rapid 1.2 1.3 0.9 8.8

L. Le Marchand, JH. Hankin, LR. Wilkens, et alCombined Effects of Well-done Red Meat, Smoking, and Rapid N-Acetyltransferase 2 and CYP1A2 Phenotypes in IncreasingColorectal Cancer Risk, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2001;10:1259-1266

HCA(ヘテロサイクリックアミン, 肉を高温で焼

いた時に生成される発癌物質) HCAを減らすためには、油漬け, 2.電子レンジによる下処理, 3.頻繁に肉を裏返す事が必要

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環境・習慣・臨床項目だけでの疾患発症予測

• Framingham研究:第二次世界大戦終了後の間もない1948年,心血管合併症増加への対応を検討するため,住民28000人の町,Framingham市(Massachusetts州)において大規模前向き研究を実行した。

• 研究目的:米国式都市生活者の心血管合併症に先行する因子と,その自然歴を検討するためのものであった。Framingham研究では同市の住民(29~69歳)の2/3が調査に応じ,さらに志願者も加えられ,冠動脈疾患のない5127例を2年ごとに前向きコホート研究として追跡した。

• 今後20年に脳卒中・心血管障害を発症する確率を予測する式を作製危険因子:喫煙・血圧・血清コレステロールを変量として以下のロジスティク関数によって予測し、予測精度は高かった。

xx

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我が国でも日本人に合わせて作成・利用

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本来の疾患発症予測には環境要因と遺伝要因の2つの相互作用が必要

• 遺伝要因と環境要因の相互作用は加算でも乗算でもない。組合せ特異的効果

• したがってFramingham研究のように前向きコホートで長期にわたって追跡する必要がある

• ただし、遺伝的要因を含めた前向きコホートすなわちゲノムコホートで追跡する必要がある。

• 個別化予防のための基盤としてのバイオバンクの必要性

• 東北メディカルメガバンク計画

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Biobankとゲノムコホート• バイオバンクの目的・機能の変化

– 従来は再生医療ための生体標本や臨床研究の資料保存、

– 近年はゲノム情報の収集が加わる

– ゲノム/オミックス個別化医療、創薬の情報基盤• 疾患型 バイオバンク:全国的・全世界規模で症例の分子(ゲノム)情報と

それに対応できる臨床症例の収集。疾患ゲノムコホート. 臨床治験DBなども

– 個別化予防の情報基盤• Population型 バイオバンク:前向きコホートで健常人の分子情報(ゲノ

ム)と環境情報を集めて追跡するゲノム・コホート

• 最近の動向– UK biobank:

• 50万人の健常者の健診・血液を集め、その健康医療状況を追跡する

– BBMRI(Biobank/Biomole. Research Infrastructure)• 250以上の欧州BioBankを統合

• わが国のBiobank計画– 東北メディカルメガバンク population型コホート

– バイオバンクジャパン, 6ナショナルセンター 疾患コホート

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東北メディカルメガバンク計画

ゲノム配列解析だけではなく31ページに亙る環境・習慣情報収集

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東北メディカルメガバンクの戦略

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遺伝子x環境要因の方法論Butteら18 SNPs5 serum-based

environmentfactors

rs13266634 trans- β-carotene

ジャポニカアレイと環境情報に基いてこそ正確な疾患の発症確率の予測が可能になる

HeatMap法ButteのE-GWAS法

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個別化予防・先制医療

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iPOP (integrated Personal Omics Profiling)

統合個別化オミックスプロファイルの時系列分析(Fourier分析)により統合オミックスの乱れを検知

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慢性疾患の3次予防• 糖尿病の3次予防

– 健康診断による異常 → 病院糖尿病外来– 50%が3か月で脱落 → 10 年後タンパク尿– 一人500万円(個人負担2万円/月)– 年間1兆5000万円 国費負担

• 脳卒中の3次予防– 10%が再発– 肢体不自由– 要介護5– 維持期ケア– 疾患管理の必要性

糖尿病性腎症

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3次個別化医療

• 慢性疾患の重症化予防(3次予防)– 医療経済的には第一次予防より第3次予防の方が効果がある(Science 誌)。

• 糖尿病人工透析 1兆5000億円

– 重症化感受性遺伝子は発症感受性遺伝子と異なるすべての糖尿病患者が合併症を起こす訳ではない

– 糖尿病 発症遺伝子 代謝関連遺伝子重症化遺伝子 凝固線溶系遺伝子

進行機構(合併症)

高血圧

高脂血症

高血糖

3次疾患理解1次疾患理解

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Supercentenarian Research Study

Supercentenarians: 110歳以上の⼈たち

http://supercentenarianstudy.com/

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ゲノム医療の普及の状況ー米国の状況ー

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第2のゲノム革命と医療

• 次世代シーケンサを始めとするHigh-throughput分子情報

• 「ゲノム/オミックス情報」の

臨床医療実践の開始

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ゲノム/オミックス医療を取り巻く現状

現 状 米国ではすでに20以上の医療施設で、ゲノム/オミックス医療が病院の日常臨床実践業務として行われている。

NHGRI Working Groupのリスト

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ゲノムオ・ミックス医療の現状の臨床実装Genomic Medicine Implementation

主なゲノム医療1.病因未知の遺伝疾患のWGS/WESによる

原因遺伝子変異の同定2. 難治性のがんのWGS/WESによる

Driver 遺伝子変異の同定3.遺伝性がんの生得的原因遺伝子(BRCA1/2など) の診断

4.薬剤代謝酵素の多型性診断と電子カルテへの実装

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ゲノム配列解読の臨床応用Clinical Sequencing

Nic Volker• 3才の男子。2才のころから、原因不明の腸疾患で、腸のいた

るところに食べると潰瘍が発生

• 130回の外科的切除手術を行うが、再発を繰り返す。これ以上行う治療がなくなった

• Nicの全エキソンの配列を次世代シークエンサ決定

• 見出された16000個のDNA配列異常を慎重に分析

臍帯血による骨髄移植を実施(2010年6月)2010年7月半ばには、食事が取れるまでに回復した。現在は、普通の男子と変わらぬ健康な生活を送っている。

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ウイスコンシン医科大学のゲノム医療

• ゲノム解析プログラム– 候補患者選択

• 従来の検査・診察で診断困難な症例

– 全診療科患者選択委員会で判定– 6-8時間のアセスメントとカウンセリング

• 上記プログラムに登録

– アメリカ病理学会(CAP)および 臨床検査室改善法追補基準(CLIA)によって認定された臨床検査室に外注検査

– 解析:病院内で自らのソフトで• 初, 候補とした変異について調べ• つぎに偶発的所見も含めて精査• アメリカゲノム医学会(56遺伝子の告知義務)

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メイヨクリニック個別化医療(Individualized Medicine)

• 全患者に全ゲノム配列解析あるいはエキソーム配列解析(遺伝子部分のみ)を行う

• 10万人患者(病院診療圏患者のみ)• 国家プロジェクトeMERGE

(電子カルテ+ゲノム)コンソーシアムのメンバー

• 病院内に個別化医療センターここでゲノム配列臨床解析を行う

とくに

難治性がん• 例 胆管がん

原因不明遺伝病• “診断オデッセイ”

eMERGE計画 参加施設

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その他のゲノムシーケンス

• Baylor医科大学

– 全ゲノム検査室 設立

– 病院内で シーケンシング/変異分析

– CAP/CLIA認証検査室での配列解読

– 執行部認証の臨床分子遺伝学者によって解析・結果報告

• そのほか

– Washington大学、Partnerヘルスケア、Gesinger clinic など

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■PREDICTプロジェクト

34項目の薬剤代謝酵素の多型性判定チップ医師の処方オーダ時に警告提示

薬剤代謝酵素多型性のゲノム医療実践バンダービルト大学病院

クロピドグレル処方電子カルテの警告画面

商品名プラビックス:抗血栓剤ステント留置手術の後に処方

CYP2C19の多型性で*2*2の場合は代謝機能が低いので(poor metabolizer) 血栓が凝固する薬剤投与の応答は不十分である

この患者の場合(*2/*2)プラスグレル(商品名エフィエント)に替えるか

分量を2倍にしろと警告している

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医療のビッグデータ時代へ

• 病気のゲノム・オミックス情報– ゲノムなどさまざまな種類のオミックス情報

• 臨床表現型・環境情報– 症状・検査値・画像・生活習慣など

• 学習システム– データからの知識発見, 人工知能– 実践においては、意思決定支援システムも必要要素

クイズ番組jeopady

IBMワトソン有名ながんセンターのゲノム情報・臨床情報のデータベースを探索している

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米国ゲノム医学会の偶然所見リスト

• 偶然的所見: シーケンシングの診断的指示とは明らかに無関連な、慎重な探索の結果として見出された病原的あるいは病原性が推測される遺伝子における変化(alternation)

• 米国ゲノム医学会のリスト(56遺伝子)

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生涯的健康管理

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Dr. John HalamkaProfessor at Harvard Medical School

• PGP#2– 患者に薦める前に自分

で「人体埋め込み用RFID」を体験し、あらゆる面から調査

– 米粒ほどの大きさで、電波を使って外部の装置と情報をやり取り可能

– データベースと照合することで、同RFIDを埋め込んだ人の医療情報などが取り出せる

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Larry Smarr, PhD

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エアマット

家庭内端末

健康計測トイレ

・体脂肪・尿塩分量・尿糖

データセンタ

健康マット・心拍・呼吸・体動

統一無線プロトコルで接続

血糖値計

脂肪厚計

・NON-PC

・小型

・QVGA表示

・匿名化通信・経路探索保護・個人認証

・わかり易い解析指標・危険度の推定・検診データとの連携

生活リズム計測

・生活リズム・運動量

携帯情報端末

小型運動能力計

・筋力・筋持久力・心肺持久力

血圧計体重計

ホームヘルスケアのための健康測定機器システム

医療福祉機器研究所

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1979年から1997年のサッチャ-=メジャ-保守党政権の医療費抑制政策のため医療崩壊

1997年ブレア政権で5年間で医療費1.5倍 わが国医療費削減政策4回連続して施行

2002年 NPfIT(National Project for IT) 総額1.2兆円 7年から10年 イングランドを5地域

2004年からCFH(Connecting for IT) 186億ポンドから310億(3兆7千億円~6兆1千億円)

N3(the new Nationwide Network for NHS) 医療専用ブロ-ドバンドネットワ-ク

Spine (N3ネットワーク)はGP, Trust など19,000の全イングランドの診療施設のネットワーク連結を完了

Choose and Book(予約, 使用実績施設率92.1% ) 患者基本情報サービス (PDS, 39.6%実績率)

電子処方箋 (EPS, 使用実績施設率24.3% ,同上) PACS (72.9%) 5億枚以上の画像を蓄積して成功

Care Record service 各クラスター内での診療施設の要約情報搭載と詳細情報の病院へのリンクは遅れている(GP to GP 7.6%)

診療情報の相互運用性に完全に実現されていない50

英国の医療IT化プロジェクト► 2002年から国家的大規模Project

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• 医療はレギオンが責任をもち医療は無料

• ‘00年代に国家政策として国民規模で健康医療情報を共有

• 国民的健康医療電子記録

EHR: Electronic Health Record• EHR情報センター組織 MedCom• 患者医療情報ポータル sundhed.dk

• 健康医療に関する助言を受領

• 自らの診療情報にアクセス

• 電子署名でのログイン

• プライバシー保護が厳格

• 医師も治療関係にある患者しか

• アクセスできない(救急例外)

• 医療関係者がアクセスしたときは

• 患者でメールで連絡される

• 高齢者対策も自立的支援を理念に居宅系介護

デンマークの地域医療連携とEHR

NIFTY, Shogaukan資料より引用

一人で暮らすことのできない高齢者用施設

高齢者センター(住居の集合体)-自治体運営

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生涯健康医療・個別化ケアのIT化• すべてのデジタル生命医療情報を含んだPHR• 生涯健康リスク管理(PHR)における

ゲノム情報などとの統合– 全ゲノム解析(WGS)の低廉化– 来年度1000ドルゲノム化– 遺伝子情報にも基いて生涯健康リスク管理– DoITyourself 型ゲノム解読

DIY genomics• 慢性疾患の要因としての

遺伝―環境相互作用発症相対リスク評価「ゲノム情報を含めた生涯健康記録」

– 東北メディカルメガバンク計画

• 生理量、デジタル解剖Imageと連動したデジタル医学

• 自分が自ら健康医療情報を収集し管理する

Nanopour型シーケンサ

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