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薬理学実習書 高知大学医学部 薬理学講座 2013年 9月 学籍番号 氏名

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薬理学実習書

高知大学医学部 薬理学講座

2013年 9月

学籍番号 氏名

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実習項目

ページ 担当

A 腸管律動に影響を与える薬物 5~ 7 清水

B 心臓機能に影響を与える薬物 8~ 9 清水

C 血圧に影響を与える薬物 10~11 谷内

D 中枢神経系の機能に影響を与える薬物 12~15 田中

E カフェインの計算能力に与える効果※ 16~22 田中

(二重盲検法) 班分け 2ページを参照 ※(班長) ※(コントローラー)(実習項目E)

第1班 (22名)

第2班 (22名)

第3班 (22名)

第4班 (23名)

第5班 (23名)

※班長と実習項目Eのコントローラー(コーヒーの飲めない人等)を決めること。

日程

7月29日(月) 13:10~ 実習説明会(*講義棟第1講義室)

9月17日(火) 9:00 小テスト(*臨床講義棟第1・2講義室)

10:30 実習準備(*基礎・臨床研究棟5階西薬理学講座 505

生化学実験室に集合)

10:30 実習 Eコントローラー説明会(*薬理学講座 510 図書室)

9月18日(水) 10:30~ 実習(*講義棟2階 実習室 (ABCD)

~9月25日(水) チュートリアル室 14・15(E))

※9月25日の実習が終わり次第、器機を運搬します。

実習項目

班番号 A B C D E

9月18日(水) 1 2 3 4 5

9月19日(木) 5 1 2 3 4

9月20日(金) 4 5 1 2 3

9月24日(火) 3 4 5 1 2

9月25日(水) 2 3 4 5 1

レポート ❶実習項目ABC から1つ、DE から1つを選んでレポートを2つ

作成してください。

(*各々の表紙に学籍番号と名前を書くこと。)

❷レポートとは別に、実習全体を通しての感想を書いてください。

(*冊子にするため;無記名可。)

締め切り 10月9日(水)17:15まで

(*薬理学講座・図書室前に回収箱を17:15まで出しておくの

で、それに入れて下さい)

* 重要:実習単位修得の認定には、4回以上の出席が必要です。

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薬理学実習を開始するに当たって

薬理学の実習を始めるにあたって、また本書の内容を理解するために考慮するべき点

について述べる。

1.薬物作用を理解するために重要なことは、本書に記載された項目をただ

忠実に実験することではない。薬物作用の機序を考察する上には、このような実験でも

有意義であるということが重要なのである。ここに記載した実験項目は、種々の制限下

においても実施可能なものを、薬理学の最近の進歩と考えあわせてとりあげたものであ

る。

ここで重要なことは、薬物作用に関する多くの先哲の優れた業績は、かならずしも

完備した実験室でなされたものではないことである。薬物作用を理解する上で要求され

る最も重要なことは、実験医学を通じての原則、即ち綿密な注意と観察および実験成績

に対する厳格な反省と批判、ならびにこれを支える解剖、生理及び生化学の知識である。

2.本書においては実験方法に対する解説は比較的くわしく記載してあるが、実験成績

や、その理解に関することは記されていない。どのような実験成績が得られるかあるい

はこれに対してどのような考察をおこなうかなどは、実験を通じて知りかつ考えるべき

ものであり、薬物作用についての先入観を実習書にまで導入すべきではないと考えるか

らである。もし理解、または討論にあたって必要なことがあれば、薬理学の教科書につ

いて学ぶか、または実習指導者の教えにまつべきであろう。

しかし、薬理学の実習に当たり、薬物作用に関して根本的に考えておくべき二、三の

疑問及び原則を述べておくことは有意義であると考える。

3.まず、ほとんど全ての薬物の作用は単一のものではないことである。すなわち作用

部位ならびに作用態度は、ある薬物について唯一または唯一方向のものではない。まず

考慮するべきことは、薬物作用とは薬物が細胞または臓器の受容体 ( Receptor ) との

結合によって始まるが、ある薬物に親和性を示す受容体には多くの種類があると言うこ

とである。しかし、ある薬物の特定の受容体との結合には比較的特異性がある。すなわ

ち親和性の強さには差異があり、この点で重要な意義を有するのは薬物の投与量または

作用濃度である。薬物の用量を無視しては薬物作用を論じ得ないものであることを特に

強調しておく。

4.薬物作用は標本のちがいによって、例えば摘出標本と生体位標本とにおいて必ずし

も同一ではない。特に生体位標本においては薬物の直接作用の効果のみならず、生体の

種々の調節機構を介して間接作用が現れる。したがって薬物作用を介して生体の調節機

構を知ることもきわめて重要な薬理学実習の目的のひとつである。

5.薬物をある標本または動物に投与するとき、薬物作用はただちに現れるとは限らな

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い。一定の生理的、または薬物刺激を与えた時に、初めて薬物作用が現れる場合がある。

このような場合には、刺激の性質・強さ・間隔および持続などが発現する薬物作用に重

大な影響を与える。従って刺激条件を適正に与えることが大切である。一般に、ある薬

物が刺激に対する反応を高める場合には、極小または次極小の、刺激反応を抑制する時

には次極大、または極大刺激を用いる。

6.薬物を経口的に与える際には必ずしもその剤形を考慮することは必要でないが、非

経口投与時には、その溶解条件をよく考える必要がある。薬物は多くの場合、生理的食

塩水に溶解して用いられるが、特に精製水や蒸溜水を用いたり、また溶解性の関係から

有機溶媒を用いることもある。それらの溶媒自体によって起こる非特異的影響は標本に

よっては無視してはならないことがある。

7.薬物作用を論ずるにあたって、必ず投与方法と投与量とを明らかにしなければなら

ない。

投与量については生体位では、体重 1 kg または 10 g 当たりの g または mg、試験

管内では、その最終濃度を M (Molar) で示す。

8.最後に、薬物作用には種属差、個性差、臓器差などがあるのみならず、各標本によ

って、かなりの変動を見るものであり、これらは生物学に固有の原則であるとされてい

る。しかし、薬物作用が薬物と細胞の受容体との結合に始まることから考えて、この個々

の薬物作用の偏差も物理化学的に説明されるべきものであることはいうまでもない。

この序論は「薬理学実習(島本・高木・猪木)昭和 39 年 南山堂」より引用した。但し、原文での受容

物質 (Receptive substance) は受容体 (Receptor) に改めてある。

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A. モルモット摘出腸管に対する諸種薬物の作用

実験材料:モルモット摘出小腸(回腸)

※動物:モルモット(Std: Hartley, 6 週令, オス)

実験装置:マグヌス法装置

等張性トランスデュ-サ-

増幅器、記録計

実験方法: まず、栄養液-(A)を調整し、これに空気を吹き込んで酸素を添加する。

ついでマグヌス法に従い、適当な長さに切った小腸片を約 30℃に保温した栄

養槽中に吊す。実験は、小腸片が一定の長さになってから始める。

栄養槽の容量は 50 ml、また、ここに加える薬物溶液の容量は 0.5 ml と

する。したがって、プロトコールに示してある薬物濃度(M)を得るために

は、ちょうど100倍濃厚な薬物の溶液を準備すればよい。なお、薬物は、

栄養液-(A)を用いて溶解、あるいは希釈する。また、実験条件により、別の

薬物ごとに新しい腸管に取り変えることがある。

栄養液-(A)の組成・・・5L調製

*NaCl

KCl

CaCl2

*NaHCO3

ブドウ糖

MgSO4・7H2O

KH2PO4

141.7 mM

4.7 mM

2.5 mM

1.2 mM

12 mM

1.2 mM

1.2 mM

41.5 g

1.8 g

1.4 g

0.5 g

10.5 g

1.5 g

0.8 g

*: 栄養液-(B)と違う点

〔薬液調製法〕・ ・ ・ 別紙を参照して調製する。

分担: 薬物投与

収縮観察

組織洗浄

記録

時間計測

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1) 累積的投与法の例

Noradrenaline 10-9-10-5 M の場合

10-7 M の液を 0.5 ml 注入すると最終濃度 10-9 M となる。

ひきつづき洗浄を行わず

10-6 M の液を 0.45 ml 注入すると最終濃度 10-8 M となる。

以下同様に

10-5 M の液を 0.45 ml 注入すると最終濃度 10-7 M となる。

10-4 M の液を 0.45 ml 注入すると最終濃度 10-6 M となる。

10-3 M の液を 0.45 ml 注入すると最終濃度 10-5 M となる。

薬物溶液を注入するのは、下図のように反応が peak をすぎるか、あるいは反応

がほぼ一定になった時点である。なお、Noradrenaline や Acetylcholine のよう

な薬物に対する反応は 1~2 分以内に現れる。

W

Response

↑ ↑

Time

2) 洗浄法(Wash, W)

1.薬物の入っている栄養液を捨てる。

2.新しい栄養液を満たす。

3.この操作を連続して3回繰り返す。

4.最後の洗浄から 10~15 分後に収縮高が一定であることを確認後、次の実 験

に移る。

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7

実験図表 A腸管(ページ 7)参照

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B. モルモット摘出心房に対する諸種薬物の作用

実験材料:モルモット摘出心房

※動物:モルモット(Std: Hartley, 6 週令, オス)

実験装置:マグヌス法装置

等尺性トランスデュ-サ-

増幅器

記録計

実験方法:まず、栄養液-(B)を調整し、これに 95% O2、5% CO2 の混合ガスを吹き込ん

で酸素を添加する。ついで、マグヌス法に従い、摘出した心房を約 30℃に保温

した栄養槽中に吊す。実験は収縮の高さが一定となってから始める。

栄養槽の容量は 50 ml、また、ここに加える薬物溶液の容量は 0.5 ml とす

る。したがって、プロトコールに示してある薬物濃度(M)を得るためには、

ちょうど100倍濃厚な薬物の溶液を準備すればよい。なお、薬物は、栄養液-

(B)を用いて溶解、あるいは希釈する。

本実験では、収縮高と拍動数それぞれの変化を観察する。

拍動数は 10 秒単位で観察し ( 1 分あたりの値に変換する )、薬物の作用が

終わるまで( 約 5分 )連続的に行う。

栄養液-(B)の組成 ・・・5L調製

*NaCl

KCl

CaCl2

*NaHCO3

ブドウ糖

MgSO4・7H2O

KH2PO4

127.9 mM

4.7 mM

2.5 mM

15 mM

12 mM

1.2 mM

1.2 mM

37.5 g

1.8 g

1.4 g

6.3 g

10.5 g

1.5 g

0.8 g

*:栄養液-(A)と違う点

〔薬液調製法〕・ ・ ・ 別紙を参照して調製する。

分担: 薬物投与

拍動数カウント

組織洗浄

記録

時間計測

持参するもの: 秒付時計

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実験図表 B心臓(ページ 9)参照

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C. 血圧に影響を与える薬物

実験動物: ラット(Slc: Wistar/ST, オス)

実 験 薬 物 : Acetylcholine, Atropine, Hexamethonium, Adrenaline,

Noradrenaline, Isoproterenol, Propranolol, Phentolamine,

Angiotensin Ⅱ

実験方法: あらかじめ Heparin-生理食塩水 ( Heparin 100 U/ml )を満た

したカニューレを用意する。

Urethane(ethyl carbamate) 1.2 g/kg を腹腔内投与してラッ

トを麻酔し、背位に固定する。左右いずれか一側の股動脈および

股静脈をそれぞれ神経、結合組織などから分離し、それらの末梢

端を結紮する。つぎに動脈の結紮部 の 1~2 cm 中枢側をクレン

メ(die klemme) で閉塞する。血流遮断部の血管に糸をまわし、斜

横切開を加える。 用意したカニューレを血管の切開部より挿入し

結紮する。クレンメをはずすと血圧はカニューレに接続した圧ト

ランスデューサーを介してレコーダーに描記される。静脈にもカ

ニューレを挿入し、これを介して薬物を投与する。脈拍数は、心

拍計測ユニットを介してレコーダーに描記される。

観察事項及び分担

観察事項

血 圧:心拍計より読み取る。

脈拍数: 〃

観察は薬物注入直前(コントロール)から、薬物の作用が終るまで

( 約 5 分 )連続的に行う。

分担

1) 薬物投与 :

2) 血 圧 :

3) 脈 拍 数 :

4) 記 録 :

5) 時 間 :

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薬物投与量および順序

[ G-1 ] (µg/kg) [ G-2 ] (µg/kg) 1) Noradrenaline 1 1) Acetylcholine 2

2) 〃 2 2) Noradrenaline 2

3) Adrenaline 2 3) Atropine 10,000

4) Isoproterenol 0.2 4) Acetylcholine 2

5) Phentolamine 1,250 5) 〃 2,000

6) Noradrenaline 2 6) Noradrenaline 2

7) 〃 4 7) Hexamethonium 5,000

8) Adrenaline 2 8) Acetylcholine 2,000

9) Isoproterenol 0.2 9) Noradrenaline 2

10) Propranolol 1,250 10) Angiotensin II 0.5

11) Adrenaline 2

12) Isoproterenol 0.2

投与容量は全て 0.5 ml/kg 体重とし、静脈内に投与する。薬液の調製は、生理食塩水

を用いて行う。

薬液濃度および投与容量の計算

体重 W g、投与量 D µg/kg、投与容量 0.5 ml/kg とする。

実際の投与量は、 W D× (µg) 1000 実際の投与容量は、 W 0.5× (ml) 1000 となる。 従って、調製すべき薬物溶液の濃度は、 W D× (µg) 1000 = D (µg) = 2D (µg ⁄ ml) W 0.5 (ml) 0.5× (ml) 1000

となる。

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D. 中枢神経系の機能に影響を与える薬物

マウスの行動に及ぼす中枢作用薬の影響を観察する。

実験動物: マウス(Slc: ddY, 7 週令, オス)

実験薬物: Diazepam, Thiopental

実験器具: マウス観察用容器、行動量測定用容器、握力測定器

実験方法: 各群のマウス(5匹)に1~5の番号をつける。投与薬物は 1 回 0.1 ml/10

g 体重として腹腔内に投与する。注射は教員の合図で一斉に行う。行動変化

の観察は投与前(0分)及び投与後 3 分、10 分、30 分及び 60 分に行う。

薬物とその投与量:

A 群

B 群

: Saline

: Diazepam 5 mg/kg

C 群

D 群

E 群

: Thiopental 20 mg/kg

: 〃 80 mg/kg

: Diazepam 5 mg/kg +

Thiopental 20 mg/kg

*溶媒:Diazepam 用 :0.1% Carboxymethyl Cellulose (C.M.C.)

Thiopental 用:Saline

持参する物:秒付時計

観察項目:

I. 行動的側面像 ( Behavioral profile )

1. Open field activity(自発運動量):Open field の中央にマウスを置き 30 秒

間に通過する区画数を数える。

2. Huddling behavior(群居性):マウスを3匹以上同居させると互いに寄り添う

のが正常。

3. Grooming(身づくろい):正常なマウスはしばしば自己の体をなめて身づくろ

いする。

II. 神経学的側面像 ( Neurological profile )

1. Sleep index :正常動物を側位または背位に置くとすぐ起きあがる( Righting

reflex )。睡眠時にはこの反応は消失する (20 秒以上)。

2. Grip strength(握力):水平位にした針金に前肢でぶら下げてマウスが落下す

るまでの時間で調べる。

3. Ataxia(運動失調)の有無

III. 他覚的自律神経症状の有無

Lacrimation (流涙), Salivation (流涎), Piloerection (立毛)

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13

判定基準

投与前(0 分)、ならびに投与後 3、10、30 および 60 分に次の順序に従って観察を行

う。

Righting reflex と Open field activity 以外の各項目の結果の判定は正常を

2 とした次のようなスコアで行う。

1)Righting reflex:

起き上がる迄の時間(秒)を測定する。20 秒を経過しても起き上がらないマウ

スは睡眠状態にあると判定し、20 秒を実験成績とする。

2)Open fie1d activity:(自発運動量)

30 秒間に通過した区画数を測定し、1分間の値に換算する。

3)Grip strength:(握力)

0;3 秒以内 1;20 秒以内 2;20 秒以上

4)Ataxia:(運動失調)

0;認める 1;僅かながら認める 2;認めない(正常)

5)Hudd1ing behavior:(群居性)

0;消失 1;少ない 2;正常

6)Grooming:(身づくろい)

0;消失 1;少ない 2;正常 3;多い

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実験図表 D中枢(ページ 14)参照

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例:Righting Reflex

A: Saline, B: Diazepam, C: Thiopental(20),

D: Thiopental(80), E: Diazepam+Thiopental(20)

0 3 10 20 30 40 50 60 (min) (前)

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E.カフエインの計算能力に与える効果(二重盲検法)

薬物効果は、

1)病状の自然変動(自然治癒など)、

2)患者の心理的要因及び、

3)観察者(医師)の主観などによっても影響される。

そこで薬物効果の検定は被検者に目的の薬、または基準の薬を無作為に割り付けて二

重盲検法にそって行うことが医学的に妥当である。さらに適切な標識特性をもとに患者

群の層別を行うと、いっそう感度の高い試験を行うことができる。被検者に対する倫理

的な配慮も必要である。本実習では Caffeine の暗算作業量に及ぼす影響を指標に二重

盲検法を学生が被検者となって体験する。

課題:

(1)二重盲検が保たれているかどうかを検討する。

(2)Caffeine の自覚症状に及ぼす影響を検討する。

(3)Caffeine が計算能力にどのように作用したかを検討する。

(4)作業量に従い被検者を層別し、Caffeine の効果をそれぞれの層別に検討する。

実験方法:

A.被検者

学生全員参加(当日の体調、その他の理由によりコーヒーを飲めない者は

被検者としてではなく、実習の進行係として参加する。)

B.器具など(一人当たり)

精神検査用紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

(内田・クレペリン精神検査用紙(標準 I型)を本実験用に改変したもの)

紙コップ、スプーン・・・・・・・・・・・・・・・・各 1

*各自用意するもの

筆記用具(鉛筆・ボールペン等)

計算器(ルート(平方根)計算ができるもの。スマホを使うときも同様。)

*進行係用ストップウオッチは、薬理学講座で用意。

C. コーヒーの処方(砂糖・クリープを自由に加える。)

インスタントコーヒー(カフェイン有または無) 3.0 g

※カフェイン有の場合、一杯当たりカフェイン含量 60~80 mg

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17

D.実験の手順

(1) 被検者は、前日 21:00 より Caffeine を含む飲料(コーヒー、紅茶、緑茶、コ

ーラ等)をとらない。

(2) 精神検査用紙を用い、無作為に並んだ2桁の数字を隣り合わせに加えてその下

2桁の値を求め記入する。

例) 63 89 16 …記載してある数字(ア)。

152 105 …(ア)の隣同士の和。下線の数字が記入する値。

進行係の合図によりこの暗算を 60 秒ずつ3回行い、記入した答えの数を作業量

とする。

(3) 合図により第1時点から第5時点まで暗算を反復して行う。その間の行動につ

いてはとくに制約を設けない。

(4) 第5時点の計算終了後、第5時点までの 各自の作業量の合計を調べ担当教員

に報告する。

(5) 無作為に Caffeine (+), (-)を割り付けたカップのコーヒーを飲用する。

(6) 予想 : コーヒー飲用直後に Caffeine 含有の有無についての予想

( Prediction )を行う。

(7) 合図により第6時点から第 10 時点までの暗算を反復して行う。

(8) 自覚的評価 : 暗算終了後、コーヒーが計算作業に影響したと感じたかどうか

自覚的評価を行う。

(9) 暗算の結果を隣の人と交換し、各時点での正解数を調べる(進行係が正解を読み

上げていく)。各時点の正解数の総計を報告用紙に記入する。

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時間 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

(min)

時点 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩

予想 自覚的評価

コーヒー飲用

作業量集計 正解数調べ

各時点の内容(①~⑩)

0分 2分 4分 10分

時 間

(sec) 60 sec 60 sec 60 sec 60 sec 60 sec 300 sec

1 回目 休み 2 回目 休み 3 回目 休み

暗算 暗算 暗算

E.計算

(1) 課題 (1) について: 二重盲検が保たれているかどうかを検討する。

Caffeine の有無とその予想との間に関連があるかどうかχ2 検定を行う。

(2) 課題 (2) について: Caffeine の自覚的評価(コーヒーを飲んで計算能力が

上がったと思うかどうか)に及ぼす影響を検討する。Caffeine の有無との間

に関連があるかどうかχ2 検定を行う。

(3) 課題 (3) について: Caffeine が計算能力にどのように作用したかを検討す

る。 第7、8、9、10時点の正解数の和から、第2、3、4、5時点の正

解数の和を引いた数値について、 Caffeine(+)、 Caffeine(-) の 2 群比較を

行う(平均値 ±SE を出して計算し、その平均値の有意性について t検定を行

う)。

(4) 課題 (4) について: 作業量の大小に従い被検者を層別し、Caffeine の効果

を各層毎に検討する。

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二重盲検法報告用紙 (見本)

番号 氏名

実施年月日 20 年 月 日

コーヒー、緑茶、紅茶、その他 ・・・・・

カフェイン飲料の常用の有無

+

-- (○で囲む)

カップ番号 性別 M F (○で囲む)

層別 実際のカフェインの有無 + - (○で囲む)

(1)予想 (prediction)

飲んだコーヒーにカフェイン

が入っていると思いますか?

(入っていない)

(入っている)

(○で囲む)

(2)自覚的評価

コーヒーを飲んで計算能力

が上がったと思いますか?

はい

いいえ (○で囲む)

(3)他覚的評価

カフェインが計算能力に影響を与えたか否か

飲用前

総作業量

時点 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩

正解数

( ⑦+⑧+⑨+⑩ ) - ( ②+③+④+⑤ ) =

注 ( 珠算の経験(級)など )

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例:

課題(1)χ2検定

予想

カフェイン入り カフェイン無し

カフェイン

(+)

カフェイン

(ー)

χ2cal =

χ2tab =

自由度

結論

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例:

課題(2)χ2検定

自分の服用したコーヒーの効果に対する判断

効果(+) 効果(ー)

カフェイン

(+)

カフェイン

(ー)

χ2cal =

χ2tab =

自由度

結論

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課題(3)t検定

データ

カフェイン(+)

カフェイン(ー)

平均値±SE

カフェイン(+): ±

カフェイン(ー): ±

tcal : 自由度

ttab :

結論