農林水産政策学第2講経済学の基...
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農林水産政策学 第2講 経済学の基礎2:市場とは?効率性とは?
2016年4月20日有賀健高
市場とは?
• 「財やサービスの売り手と買い手が、売買や交換ができる制度的な関係全体」
• 買い手(需要側)と売り手(供給側)が価格や取引料について交渉できる関係にあること
• モノ(暮らしの中で衣食住の欲求を満足させる財やサービス(用役))を「お金でやりとり」する活動(取引)
買い手(需要側)の行動
価格
数量
価格が上がると買う量は減るので需要は下がる。
所得の増加や他の財の価格上昇などで全般的に需要が増加すると需要曲線は右に移動する。
需要曲線
売り手(供給側)の行動
価格が上がると生産量は増えるので供給は上がる
価格
数量
技術進歩などによって生産コストが下がることで全般的に供給が増えると供給曲線は右にシフトする。
供給曲線
短期と長期の供給曲線
価格
数量
短期の供給曲線
非弾力的
価格
数量
長期の供給曲線
弾力的
ある生産物の生産のために投入される資源のことを「生産要素」というが、農林水産業では短期的には生産要素の投入量を変化させることは難しい。長期では可能。• 短期的な価格調整困難 ⇒ 供給曲線は非弾力的• 長期では価格調整可能 ⇒ 供給曲線は弾力的
市場均衡
価格
数量
均衡点
需要曲線 供給曲線
均衡が存在しないケース1
価格
数量
需要曲線
供給曲線
ダイヤで作った自動車など費用がかかりすぎて実際の需要に見合う供給が困難な場合。VHSビデオのように需要が減少している場合。
均衡が存在しないケース2価格
数量
需要曲線
供給曲線
空気や太陽の光など価格がゼロであっても供給が需要を上待っている場合
均衡の安定性:ワルラス的価格調整課程
均衡価格
均衡取引量
価格
数量
均衡点
需要曲線 供給曲線
P1
超過供給
均衡の安定性:ワルラス的価格調整課程
均衡価格
均衡取引量
価格
数量
均衡点
需要曲線供給曲線
P2
超過需要
ワルラス的な意味で均衡が安定する場合
需要曲線の勾配 < 供給曲線の勾配
DS
価格
数量
図のように均衡へ近づいていく。
ワルラス的な意味で均衡が不安定な場合
需要曲線の勾配 > 供給曲線の勾配
SD
価格
数量
図のように均衡からどんどん外れて行ってしまう。
均衡の安定性:マーシャル的数量調整課程
価格
数量
正の超過需要価格
需要価格
供給価格
均衡点
買いたいという人々が市場にたくさんいる状況では需要価格>供給価格
均衡の安定性:マーシャル的数量調整課程
価格
数量
需要価格
供給価格
均衡点 負の超過需要価格
買いたいという人々が市場にあまりいない状況で供給価格>需要価格
マーシャル的な意味で均衡が安定する場合
需要曲線の勾配 > 供給曲線の勾配
D
S
価格
数量
図のように均衡へ近づいていく。
マーシャル的な意味で均衡が不安定な場合
価格
数量
D
S需要曲線の勾配 < 供給曲線の勾配
図のように均衡からどんどん外れて行ってしまう。
価格調整か数量調整か?
• 市場の時間軸の長さによる
• 短期で需給調整ができる財(株や為替などの金融市場など需給のラグがない場合) →ワルラス的価格調整
• 長期でないと需給調整ができない財(住宅や自動車市場など需給にラグがある場合) →マーシャル的数量調整
クモの巣原理均衡が安定な場合:供給曲線の勾配の絶対値 > 需要曲線の絶対値
Q1
P1
Q2
P0
P2
Q3
P3
P4
Q4
価格
数量
需要曲線
供給曲線
応用&復習問題
• 以下の二つの場合ワルラス的価格調整とマーシャル的数量調整のどちらの政策が望ましいか?
価格
数量
ケース1 供給曲線が垂直の場合
価格
数量
ケース2 需要曲線が水平の場合
SD
D
S
P0
Q0 Q0
P0
ワルラス的価格調整vsマーシャル的数量調整
• 供給曲線が垂直の場合– 均衡点への調整⇒価格をP0から均衡価格まで押し下げる。– P0では「需要価格=供給価格」よりマーシャル的数量調整は困難。
– 縦軸でみると超過供給あり⇒ワルラス的価格調整可能。
• 需要曲線が水平の場合– 均衡点への調整⇒需要をQ0から均衡取引量まで下げる。– P0では「需要量=供給量」よりワルラス的価格調整は困難。
– 横軸でみるとQ0 では負の超過需要価格あり⇒マーシャル的数量調整可能。
余剰分析:消費者余剰価格
数量
均衡点
需要曲線供給曲線
市場価格
消費者余剰
余剰分析:生産者余剰
需要曲線
価格
数量
均衡点
供給曲線
市場価格
生産者余剰
余剰分析:社会的余剰
需要曲線
価格
数量
均衡点
供給曲線
社会的余剰
社会的余剰=消費者余剰+生産者余剰
余剰分析:社会的余剰
需要曲線
価格
数量
均衡点
供給曲線
市場価格
市場取引量
均衡価格
均衡取引量
均衡価格と市場価格間の社会的余剰の差
市場価格における社会的余剰
市場価格における社会的余剰
市場価格<均衡価格の時、社会的余剰はどうなるか?
需要曲線
価格
数量
均衡点
供給曲線
市場価格
市場取引量
均衡価格
均衡取引量
この場合も緑の三角形の分だけ均衡価格における社会的余剰と比べると市場価格における社会的余剰は小さくなる。
経済学でいう効率性とは?
• 「経済にいる他の誰かの生活水準を引き下げることなく、ある人の生活水準を引き上げることができない状況」を言う。
– このような状況を19世紀の経済学者Vilfredo Paretoにちなんでパレート効率(Pareto efficiency)的である(パレート最適)という。
• 与えられた資源と技術のもとで、経済の中のある人の生活水準を引き上げるためには、必ず誰かの水活水準を引き下げなければならないような状況。
• 経済学では市場の仕組みを使ってこのような効率的な状況を作り出すことを目的としている。
効率化政策
• 「ある政策の結果、得をする人が損をする人の損を保証しても、なお釣りがくるような政策」
市場の失敗
• 市場が効率的な資源配分を実現するように機能しない状況を言う。
• 市場の失敗が生じる原因として経済学では主に次の四つの点があげられている。
–独占による失敗
–外部経済・不経済
–公共財の存在
–情報の非対称性