若手福祉従事者の現状と今後の展望 ~若手福祉従...

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若手福祉従事者の現状と今後の展望 1 若手福祉従事者の現状と今後の展望 ~若手福祉従事者の現状と今後の展望のアンケート調査結果をもとに~ ●調査の目的 □若手福祉従事者の業務上の課題や悩み、将来展望を把握する。 □若手福祉従事者の業務上の課題や悩み及び将来展望を整理し、活力ある福祉現場を築き、成 熟した福祉社会を形成するための提案(政策提言)に結び付ける。 ●主な調査項目 □若手福祉従事者の基本属性(性別、年齢、職種等)、業務上での悩みや不安について □福祉に対する考え方(福祉の対するイメージ及び仕事を続けていきたいか等) □これからの福祉の未来について(現在の仕事において求めているもの等) ●調査仕様 □配布方法 ・インターネット法: Web アンケート 日本財団助成団体に対するFAX、日本財団HP掲載、メールマガジン掲載等による周知を実施 ・留置法:調査員(7名)がアンケートを配布し、郵送法による回収 □総回答数 ・892件 □調査期間 ・WEB:平成22年1月26日~6月24日 ・調査用紙:平成22年4月21日~6月24日

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若手福祉従事者の現状と今後の展望 1

若手福祉従事者の現状と今後の展望

~若手福祉従事者の現状と今後の展望のアンケート調査結果をもとに~

●調査の目的

□若手福祉従事者の業務上の課題や悩み、将来展望を把握する。

□若手福祉従事者の業務上の課題や悩み及び将来展望を整理し、活力ある福祉現場を築き、成

熟した福祉社会を形成するための提案(政策提言)に結び付ける。

●主な調査項目

□若手福祉従事者の基本属性(性別、年齢、職種等)、業務上での悩みや不安について

□福祉に対する考え方(福祉の対するイメージ及び仕事を続けていきたいか等)

□これからの福祉の未来について(現在の仕事において求めているもの等)

●調査仕様

□配布方法

・インターネット法: Webアンケート

日本財団助成団体に対するFAX、日本財団HP掲載、メールマガジン掲載等による周知を実施

・留置法:調査員(7名)がアンケートを配布し、郵送法による回収

□総回答数

・892件

□調査期間

・WEB:平成22年1月26日~6月24日

・調査用紙:平成22年4月21日~6月24日

若手福祉従事者の現状と今後の展望 2

●基本属性

□分野別

□職務内容別

□現在の年収

□最終学歴(任意回答)

30.1%

56.6%

3.6% 6.5% 3.2%介護 福祉

医療 子ども

その他

13.6%

32.3%

5.2%6.2%

20.0%

16.9%

5.8% 訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

7.0%

12.8%

13.8%

17.4%

15.9%

20.9%

8.6%2.9% 0.8%

~100万円(未満)

100~150万円(未満)

150~200万円(未満)

200~250万円(未満)

250~300万円(未満)

300万円台

1.0%

14.2%

20.6%

9.3%

49.5%

3.0% 0.1% 2.2%中学校

高校

専門学校

短期大学

大学

大学院修士

大学院博士

若手福祉従事者の現状と今後の展望 3

アンケート結果の考察

若手福祉従事者の現状と今後の展望 4

アンケート結果の考察

□若手福祉従事者が抱く福祉のイメージと生涯仕事を続けたいと思う気持ち

若手福祉従事者の8割以上が「福祉=過重労働・低賃金」とのイメージを抱いているが、生涯

仕事を続けていきたいかとの問いに対しては75%が「続けたい」との前向きな回答であり、うち6

5%は「できれば続けたい」との回答である。

【「福祉=過重労働・低賃金」と思うか?】

【生涯この仕事を続けていきたいと思うか?】

□若手福祉従事者の悩み、不安の大きさ

「やや悩んでいる」「かなり悩んでいる」との回答が 68.5%であり、悩みや不安の大きさは極めて

高い傾向にある。

【総合してどの程度悩んでいるか?】

1.7% 15.2%

48.6%

34.5%

全く思わない

あまり思わない

やや思う

かなり思う

21.3%

65.0%

10.0%3.7%

ぜひ続けたい

できれば続けたい

できれば続けたくない

続けたくない

2.5%

22.0%

17.1%46.1%

12.4%

全く悩んでいない

あまり悩んでいない

どちらでもない

やや悩んでいる

かなり悩んでいる

若手福祉従事者の現状と今後の展望 5

□若手福祉従事者の項目別の悩みや不安

「かなり悩んでいる」について、最も大きいものは、「給与が安くて現在の生活は問題ないが、将

来の生活が不安である。」であり、「給与が安くて生活することができない。」を大きく上回っている。

「働く時間が長く、過重労働である。」及び「休みが尐ない」についても悩んでいる傾向が高いが、

次点で高い傾向にあるのは、「職場が掲げる理念に向かって業務を進めることができない。」とな

っている。

【どの程度悩んでいるか?(項目別)】

0% 50% 100%

給与が低くて生活することができない

給与が低くて現在の生活は問題ないが、将来の生活が不安である

休みが尐ない

働く時間が長く、過重労働である

職場での人間関係がうまくいかない

職場の利用者との関係性がうまくいかない

働く前の福祉のイメージと実際の働いている福祉現場にギャップがある

職場が掲げる理念に向かって、業務を進めることができない

職場に頼れるリーダーがいない

取得した資格が職場の中で活かされていない

全てを勘案して総合的にどの程度悩んでおられますか

全く悩んでいない

あまり悩んでいない

どちらでもない

やや悩んでいる

かなり悩んでいる

若手福祉従事者の現状と今後の展望 6

□分野別の悩みや不安

介護分野の地域密着型と共通分野として居住系サービスの悩みや不安が高い。

なかでも、「給与が低い」「将来の生活に対する不安」「休みが尐ない」「職場での人間関係」

「「職場が掲げる理念に向かって業務を進めることができない」の5つの項目に高い傾向がある。

介護系の居住系サービスについてのみ、「働く前と実際働いてみてのイメージの相違」、「職場に

頼れる上司がいない」、「取得した資格が職場の中で活かされていない。」の3つの項目に高い傾

向がある。

【どの程度悩んでいるか?(分野別)】

□若手福祉従事者が業務上求めること

賃金の値上げが群を抜いて高い。次点に「福祉の専門職が社会の中で評価される仕組み」、

「事務所内の環境づくり」、「チームマネジメントなどの管理力のスキルアップ」が高い傾向にある。

【業務上何を求めるか?】

3.55 3.513.89 4.00

3.54 3.403.75

3.31 3.533.84

3.27 3.38 3.29 3.15

0.000.501.001.502.002.503.003.504.004.50

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

介護 福祉

372

31

36

45

81

36

62

83

38

43

25

14

14

84

90

27

49

127

64

107

103

76

69

47

30

8

92

47

27

49

94

74

65

83

71

84

101

63

25

0 100 200 300 400 500 600

賃金の値上げ(昇給も含む)

休日の数

職場での理念の形成

職場での人間関係の円滑化

福祉の専門的資格が社会の中で評価される仕…

研修や資格取得による介護や支援のスキルアップ

チームマネジメントなど、組織・チームの管理力…

利用者へ充実した介護・福祉を提供するための…

他の事業所、関係機関と連携・協力した地域の…

他業種や地域住民と連携・協力した地域作り

福祉をより良くしていくための勉強会や社会・行…

同業種の悩みや不安を共有するネットワーク作り

その他

1位

2位

3位

若手福祉従事者の現状と今後の展望 7

□年次別の業務上での悩みや不安

1年目の悩みや不安は低いが、2年目の伸び率は突出して高い。2年目以降~5年目まで微増

し、7年目が最も高い悩みや不安となる。

【どの程度悩んでいるか?(年次別)】

3.09

3.373.45

3.483.56 3.56

3.68

3.53

3.29

3.49

3.653.69

3.62 3.60

3.19

3.00

3.10

3.20

3.30

3.40

3.50

3.60

3.70

3.80

1年生

2年生

3年生

4年生

5年生

6年生

7年生

8年生

9年生

10年生

11年生

12年生

13年生

14年生

15年生

若手福祉従事者の現状と今後の展望 8

~若手福祉従事者を対象としたアンケート調査から~

「活力ある福祉現場を築き、成熟した

福祉社会を形成するために(提案)」

若手福祉従事者の現状と今後の展望 9

「活力ある福祉現場を築き、成熟した福祉社会を形成するために(提案)」

~若手福祉従事者を対象としたアンケート調査から~

□居住系サービスの処遇改善の必要性

若手福祉従事者の業務上での不安や悩みに関するアンケート項目に関して、介護・福祉分野

共通して「居住系サービス」の総合的な不安や悩み且つすべての項目に関して高い傾向にある。

とりわけ、下記表にあるように、「理念どおりに業務が進められない」「頼れる上司がいない」の2つ

の項目に関しては他の領域に比べると突出して高い。また、フリーアンサーからは、不安や悩み

の高さが具体的に表現されている。

障がい者や高齢者の地域生活支援を支える要となる居住系サービスはキャリアがない若手福

祉従事者がサービス提供者の役割を担うことが多く、彼らのストレッサーは極めて高い。そのから

くりは明解である。サービス報酬単価の設定が低いため、人件費のかからない若手福祉従事者

が提供者を担い、専門性が高くなければならないサービス提供を負担に感じ離職等につながる。

居住系サービスの報酬単価を引き上げることにより、居住系サービスの従事者の処遇改善及び

地域生活支援の充実を高めることが必要である。

【若手福祉従事者の業務上での不安や悩み:「職場が掲げる理念に向かって業務を進めることができない」】

3.19 2.97

3.89

2.633.14 3.30 3.25

2.76 3.053.55

2.77 3.01 3.11 2.82

0.000.501.001.502.002.503.003.504.004.50

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

介護 福祉

<提案>

□居住系サービスの処遇改善の必要性

□キャリアアップ研修の仕組みの形成と処遇改善

□新たな福祉の価値観の形成に向けた情報発信(自ら理念を創出)

□悩みや不安、将来を語り合うことができるネットワーク組織の形成

□マスメディア等における新たな福祉の価値観のポジティブな情報提供

若手福祉従事者の現状と今後の展望 10

【若手福祉従事者の業務上での不安や悩み:「職場に頼れる上司やリーダーがいない」】

【自由回答(抜粋)】

グループホームをはじめ、介護現場で起こる虐待等の事件や事故は、職員個人の資質などの問題ではなく、私は

2.95 2.71

3.783.25

2.94 3.05 3.002.37

2.803.28

2.533.01 2.91 2.82

0.000.501.001.502.002.503.003.504.004.50

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

訪問系

通所・日中系

居住系

地域密着型

施設型

相談支援

その他

介護 福祉

グループホームをはじめ、介護現場で起こる虐待等の事件や事故は、職員個人の資質などの問題ではなく、私

は労働環境に多くの問題があるのではないかと考えます。賃金だけではなく、労働時間や労働形態、労働内容

にも目を向け、社会全体で考えるべきだと思います。

3年間認知症のグループホームで介護士として働きました。しかし、そこでの労働環境の悪さ、仕事のきつさ、そ

して無理解・やる気の無い職員など、職場に対する不満やストレスを感じる日々に耐えかね、今年の3月に辞め

ました。

障害者のグループホームで世話人をやっております。なかなか家に帰ることができず大変です。自分で何とかし

なければと思うのですが誰にも相談できず、どうすればよいのかわかりません。

介護職員2年目です。給料は介護業界の中では高い方ですが、仕事量を考えると全く割に合わず。「休日」とされ

ているものも夜勤と早番にはさまれているから眠るだけ。有給はシフトに勝手に入れられている(捨てるよりましで

しょうが・・・)。 どんなに残業しても超勤は出ない。人が足りずに常に一人体制、なにかあっても自分の判断のみ

で相談できず。 自分だけだと排泄や食事で勤務時間いっぱいいっぱいなので、利用者は放置状態。イライラし

た利用者に「退屈ね、アンタ楽な仕事ね」と言われ続ける毎日。 しかしレクなんてする余裕はなく。罪悪感で自

分が嫌になり、ストレスで体調を崩しました。介護は好きだけど、毎日の心と体の疲労に耐えられる気がしませ

ん。

若手福祉従事者の現状と今後の展望 11

□キャリアアップ研修の仕組みの形成と処遇改善

福祉現場において、十分なキャリアパスがなされないままに若手福祉従事者が「サービス管理

責任者」や「ユニットリーダー」「事業所の管理者・責任者」を任せられることが多い。若手福祉従

事者が現場の中で重要な役割を担うことは仕事のモチベーションを高めることにつながる等、悪

いことばかりではない。しかしながら、十分な経験や教育を受けていない若手福祉従事者にとって、

そのことを重荷として感じることは尐なくはない。人材不足のなかにあって、キャリア構造を見直す

ことは容易ではないとすると、現状のキャリア構造に見合った研修等を組み立てる必要性が急務

である。「研修等はやっている。」との声に基づいた熱心な法人等が存在するのは事実であるが、

フリーアンサーからみる若手福祉従事者の声からは、そうした法人は尐ないように思われる。法

人に問題があることは否めないが、彼らの声は、人手不足のため「研修に行きたくても行けな

い。」、「研修手当が出ない。」「実費負担ができない。」が圧倒して多い。こうした声から、積極的に

研修を受けたいと感じている若手福祉従事者に対し、研修手当を補助することや現場の代替がき

かない状況を回避するためのシフト体制構築に対する補助などの取り組みが求められると感じる。

既に厚生労働省は、平成19年度社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する

基本的な指針」(平成19年厚生労働省告示第289号)に基づく様々な施策が講じられている。私

たちはこうした施策を有効活用するとともに、現場に即した運用体系となっているか等、しっかりと

点検しなくてはならない。なぜならば、処遇改善は彼らの生活水準を高めることばかりではなく、

福祉現場の質を向上することにつながるからである。

【自由回答(抜粋)】

職場に自分より長いキャリアのワーカーがいないことや、上司も専門職ではないのでケースについて自分で判断

をしなければいけないことが多い。また、この歳にして管理職になってしまったため、経営についての管理や授産

事業についての経営のスキルも必要になってきており、さらなる勉強が必要。これらの管理的な業務と、個別ケ

ースへの対応、作業を一緒にやる時間の両立が難しい。また、歳が離れた後輩が何人もいて、それぞれの個性

に合わせた指導や教育が非常に難しく悩む事が多いものの、上司に相談してしまうと後輩のできなさや欠点を告

げ口するような形になってしまわないか気になって相談できる人がいない。

職場内で、自分がリーダーとしてやっていかなければならいが、自分の裁量がまだ不足しており、サービスの質

の低下になるのでは?と不安を感じている。

介護に関わる専門職のレベルが年々落ちてきているように感じる。自己研鑽のための研修など実費でいければ

まだいい。休みすらとりにくい状況。介護職のキャリア形成と言っているが、ファーストステップ研修なども現場で

はまだ認識されていない。

現場においては、4年目の私が来年ユニットのリーダーを任されることになりました。リーダーへの不満が募り、

職員同士の連携に悩んでいた時期が続いていましたが、次は私の番です。先行き不安は大いにあります

若手福祉従事者の現状と今後の展望 12

【キャリア構造に応じた研修システム(案)】

悩み度の高い従事年数2年目から5年目までの研修システムを以下のように提案する。なお、提

案する研修については、様々な関係機関と連携を図り、実証的モデル事業として取り組みたい。

2年目:福祉・介護の現場における時代を切り拓いてきたパイオニアから福祉思想を学ぶ。

3年目:現在従事している上司や学生時代の恩師のほかに、自分が行き詰っている悩みや不安を

解消できる現場や新たなメンター(助言者)との出会いを提供

4年目:職場の中で求められるコーディネーターとしての役割を担うための、コミュニケーション力

やマネジメント力を育成する研修

5年目:サービス管理責任者やユニットリーダーとしての役割を担うためのコーチング力及び自分

自身、事業所の将来設計のデザイン研修

□新たな福祉の価値観の形成に向けた情報発信(自ら理念を創出)

社会福祉士や介護福祉士は国家資格であるにもかかわらず、医師や看護師などから比べると

社会的な地位は向上しない。私たちの求められる専門性は、そのことを悲観的に嘆くのではなく、

自らが自らの取り組みを自らの地域で根気強く且つ丁寧に発信していくことではないだろうか。そ

うした取り組みが地域に、そして社会認められていくことが、新たな福祉の価値観を形成し、社会

的な地位を向上することにつながると考える。

また、若手福祉従事者のフリーアンサーの声は、不安や悩みばかり発されるものばかりではな

い。新しい時代へ向けた意欲的な声も多々ある。この仕事を続けたいという思いも、その意欲の

現れの一つであると思う。アンケートを整理して、すべての若者の声に応えようとアンケートを何度

も読み返したが、先人が行ってきた「福祉」の歴史が表現された回答はひとつもなかった。いうな

れば、今の時代をどのように生きていくか、という声ばかりなのである。そこで感じたのは、「温故

知新」という言葉であった。新しい価値観を生むのであれば、昔のことをよく知る必要があるという

ことである。今の若手福祉従事者は史実を軽視しているのではなく、それを知る機会がないので

はないだろうか。私たちが新しい価値観を生んでいくためには、昔のことをよく知る仕掛けが必要

である。

【自由回答(抜粋)】

専門資格をもっていても、評価を受けることが尐ないということは、資格保持者の向上心を損なう。資格者自身に

もアピールは必要だと感じるが、全体的な動きの必要性もあると思う。

尐しでも人材確保できるような、仕事を理解してもらえるような社会を作って欲しい。 介護福祉士や社会福祉士

は国家資格であるにも関わらず、資格手当が尐ない。 上記の資格を持っていなくても働ける人はいるが、金銭

面での違いはほとんどない。

若手福祉従事者の現状と今後の展望 13

□悩みや不安、将来を語り合うことができるネットワーク組織の形成

若手福祉従事者は業務上、様々な悩みや不安を抱えている。その大きさは先述してきたとおり

である。抱えた不安や悩みがひとつの要因となり、離職へとつながるケースもある。どの仕事にお

いても悩みや不安はつきものである。福祉職に限られたことではない。福祉職が離職へつながっ

てしまうのは、不安や悩みから生まれる「孤独」や「自信の喪失」などかもしれない。「心が折れる」

とよく耳にする。不安や悩みを事前に予防していくことも必要であるが、不安や悩みに陥ったとき、

同年代の仲間たちと語り合い、想いを共有していくネットワークの果たすべき役割は大きいように

思う。若者にとってそうした機会が重要であるとすると、若者が従事する組織の理解が極めて必

要とされる。「そんなところに行くなら…」など閉鎖的な事業所も多々ある。ネットワークが存在しな

がらも必ずしも若手が参加しやすい構造になっていない。そうした状況を鑑みると各自治体で若

手ネットワークをサポートするような施策の実行も一つの方策として考えられる。

北海道「福祉・介護人材サポートネットワーク構築事業」

大学機関等の専門職養成校と福祉施設等が積極的な連携を図り、卒業生による身近な支援を行

うとともに、本道の広域性に対応するため、福祉・介護人材をサポートするネットワークの構築を

図り、福祉専門職の定着を支援します。

【自由回答(抜粋)】

重要だと思うのは、福祉の専門資格が初回的に評価される仕組みを形成することだと思います。福祉職は誰で

も行える等と、いくら人出不足でも、あまり敷居を低くするのは良くないと思います。

職場の人間関係の悩みを、尐ない人材の中で話すことはほんと難しく…プライベートで友達と話すしかありませ

ん。 この悩みを抱えて職場を離れる人が多いと思う中、自分はそうなりたくはありません。 しかし、悩みを抱え

たままの仕事は楽しさも半減…なんとか持ちこたえている感じです。 全国の人がどのような環境、どんな思い

で仕事をしているのか…興味深いものです。

「ネットワーク」って重要だと思う。いろいろな人と話すことで喜びや悩みを共有し、刺激を受けられる。一人じゃ

ないと思えると心強い。また明日からがんばろう!って前向きになれたりするので、視野を広げるって大事だと

思う。

地域の仲間と共に「誰もが暮らしやすいまちづくり」に取組んでいきたい!! 私は若い頃、素直に「人の役に

たてるような仕事がしたい」と思ったり、「地域をよくしていきたい」と思っていたが、今の時代の若者も同じような

思いを持っているはずなので、 もっと福祉の現場の若者に夢や学びの場を与えてほしい!! 自分たちは継

続した努力を積み重ねていく思いがありますが、自分たちの努力だけでは解決できないことを国には求めていき

たいです。

若手福祉従事者の現状と今後の展望 14

□マスメディア等における新たな福祉の価値観のポジティブな情報提供

本アンケート調査の「マスメディア等が伝える福祉=過重労働・低賃金というイメージがその通

りと思うか?」という問いに対して、8割以上が「その通りである。」と回答した。しかしながら、「生

涯この仕事を続けたいか?」という問いに対して、8割以上が「続けたい。」と回答している。調査

結果が明らかにしているように、マスメディアが伝えている報道に間違いはないのであろう。しかし、

福祉の現場に従事する若手従事者たちの8割が将来に対して前向きな気持ちを抱いているという

ことはなかなか報じられることはない。ここで誤解されたくないのは、マスメディアを批判している、

ということではない。マスメディア等に対して、私たちが積極的に自らの実践も含めて、福祉の仕

事の豊かさなどポジティブな情報発信をしていかなくてはならないという強い思いなのである。

私どものような小さな介護事業所ではその日の仕事に追われ(提出書類の煩雑さ)なかなか向上するような勉

強会やグループ作りができません、地域や行政で悩みや勉強会をもっとやっていただきたい。