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小規模建築物の地盤評価について
2016年9月15日ジャパンホームシールド㈱関谷亮三
© 2016 地盤品質判定士会
スウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS試験)
標準貫入試験ボーリング調査
表面波探査試験(物理探査)
ラムサウンディング試験(動的貫入試験)
建築業界での宅地地盤調査として主流
土木業界での地盤調査として主流
現在行われている各種地盤調査方法
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1917年 スウェーデン国有鉄道が不良路盤の実態調査として採用し、その後スカンジナビア半島で広く普及。 ・・・ 約100年の歴史
【日本への導入と普及】1954年 建設省(現国土交通省)が堤防の調査として導入したのが始まり。
その後、日本道路公団等において路線地盤調査などに使用。
1960年 N値とNswの関係性を表した稲田式の登場
(・N=砂質土:2Wsw+0.067Nsw・N=粘性土:3Wsw+0.05Nsw)
1976年 地盤の調査方法としてJIS規格に制定。当初は地盤が悪そうな宅地だけを対象に調査を実施。
2000年 「住宅の品質確保に関する法律」(品確法)が施行
2001年 建築基準法告示1113号(三)式として位置付けられる。⇒ qa=30+0.6Nsw(1m当りの半回転数)
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ポイント①
ポイント②
スウェーデン式サウンディング試験の歴史
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スウェーデン式サウンディング試験機の変遷
全自動機械半全自動機械手回し式
荷重の付加・除去ロッドの回転・カウント
すべて人力
荷重の付加・除去は人力ロッドの回転・カウントは自動
荷重の付加・除去ロッドの回転・カウント
すべて全自動
調査精度 高い低い
省力化 大きい小さい
人力 機械化
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基礎・地盤に関する沈下・傾斜の相談件数
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公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター『住宅相談統計年報2009~2015』
小規模住宅における法整備の拡充や地盤調査機の改良による調査精度が向上しているにも関わらず、地盤のトラブルに関するの相談件数は減ってないのが現状。
東日本大震災の影響
品確法制定から10年目
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使用しなくなった農業用ため池を宅地転用
地盤のトラブル相談が減らない要因:宅地化される土地の品質低下
雛壇造成地の拡大(宅地の3~4方を擁壁に囲まれる)© 2016 地盤品質判定士会
1.0%
1.0%
1.4%
3.3%
4.3%
5.3%
11.0%
19.1%
25.4%
28.2%盛土
擁壁
不適切工事
腐植土
原因不明
地耐力バラつき
調査不備
ガラなど
地耐力不足
その他
盛土
擁壁の埋め戻し
腐植土
JHS調べ
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沈下事故の原因別割合
沈下物件の7~8割が「人工地盤」が関与している。SWS試験で「地盤」を適切に評価できているのか疑問が生じてくる。
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疑問その①:土を見ない「土質の判別」
砂質土 砂質土
SWS試験ではその調査方法の性質上、土質が正確に判別できない。土質は貫入時に聞こえる“音”やロッドに付着した“土”を確認して調査員が推定しているのが実情。
・土質判別 △・調査料金 ◎・所要時間 ◎
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SWS試験では表層から粘性土評価
・砂質土:N = 2Wsw+0.067Nsw・粘性土:N = 3Wsw+0.05Nsw
粘土評価による設計 先端が砂質土評価によるによる設計
51本 31本
改良工事の設計時には、稲田式が用いられ換算N値より計算する。しかし、稲田式換算は土質により異なるため、土質判別が工事の仕様を決める上でも重要な要素となっている。
(同じNswで計算)
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・本来の土質判別は「調査ボーリング」+「土質試験」による判別か「三成分コーン貫入試験」により判別を行うことが理想的。
・簡易的な手法として土壌採取器による「サンプリング」判別も提唱される。
・土質判別 ◎・調査料金 △・所要時間 △
・土質判別 ◎※試料が採取可能できた場合
・調査料金 ◎・所要時間 △
上記2案はコスト面や確実性の面で難が残る。こうした問題の解決策としてスクリュードライバーサウンディング試験(以下、SDS試験)が開発されている。
・土質判別 ○・調査料金 ◎・所要時間 ◎
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「土」が持つ力学的特性の違いを応用して判別する。
C材φ材
〈SDS試験による土質判別概要〉
荷重段階を強制的に変化させて各々のトルク(応力)変化をプロット。
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〈土質の判別例〉
トルクとその他のパラメーターを総合解析することで各々の地層境界や土質判別を客観的かつ細別できる試験。
⇒ 今後の利用率が高まることを期待する。
その他のSDS主要パラメーター
各荷重段階の補正荷重と沈下速度
地盤の硬軟を表す指標 Cp‘
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疑問その②:「許容応力度」の評価
国土交通省告示1113号第2項
(三)qa=30 + 0.6Nsw
小規模建築物基礎設計指針
推奨式qa=30Wsw + 0.64Nsw
WswやNswは平均値として計算することになっており、数字が出やすいのが実情。特異値は除外したり、min値など安全側の値を採用すべきと考える。
L型擁壁高h=1.5m
旧耕作土地盤
(軟弱な自然地盤)
改良地盤
SWS試験結果による許容応力度30kN/㎡の評価で大丈夫?
改良地盤の
圧縮度は?
自然地盤の
圧密度は?
支持層地盤
住宅 住宅
造る側の意識(建設会社や造成会社)
管理・運用する側の要望(建築事業者やお施主様)
異なる評価基準(目線)の為すれ違いが生じる
安く造りたい↓
許容応力度30kN/㎡あれば問題ない
求めるのは安心・安全な建物
京都市南区役所HP
30kN/㎡以上の地盤を造る事
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疑問その③:「沈下量」の評価
SWS試験(WswとNsw)を参考にmv法による圧密沈下量の計算
C=qu/2=(45Wsw+0.75Nsw)/2
〈SWSのメリットも存在するが・・・〉
複数測点による傾斜角や変形角の計算が可能
(ボーリングデータ1点では対応不可)
1キロニュートン以下の自沈が存在する場合
500ニュートン以下の自沈が存在する場合
告示1113号の「ただし書き」について
基礎下-2.0m
基礎下-0.0m
基礎下-5.0m
有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。
確かめる具体的な方法の提示はなく、現場サイドの判断に委ねられているのが実情。
〈苦肉の策の一例〉
SWSによる推定の推定からの沈下量でmm単位の評価は適か?© 2016 地盤品質判定士会
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施工管理のあるべき姿の提言
東北の復興造成地等、規模の大きな谷埋造成地に対して評価を求められるケースが増。
SWS試験による「許容応力度」や換算による「沈下量」の評価基準だけでは対応できない。
様々な制約があるが、造成の規模や内容に応じて適切な評価基準を造成者と構築し、総合的に判断していく必要があると考える。
◎
◎
共通な評価基準のアドバイザーとしての役割を期待
沈下板を用いた沈下量変動図
〈新たな評価基準の提案例〉
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おわりご清聴ありがとうございました。
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