黒川及び白川の水質 · 熊本県保健環境科学研究所報第34号(2004) 4)...
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黒川及び白川の水質
誌名誌名熊本県保健環境科学研究所報 = Annual report of Kumamoto PrefecturalInstitute of Public Health and Environmental Science
ISSNISSN 13416480
巻/号巻/号 34
掲載ページ掲載ページ p. 50-60
発行年月発行年月 2005年11月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
4)黒川及び白JIIの水質
慶畑 昌章* ノト後康人
要 旨黒JrI及び白川の本流及び、支流の水質について,主要無機イオン成分を中心に調査した。
黒川は, Ca-S04型の水質をもっ幾つかの支流の流入により, Ca-HC03型からCa-S04型の
水質へと変化するとともにふっ素濃度が環境基準を超過した。一方,自JrIは,流下に伴い
Ca-S04型からCa-HC03・S04型の水質へと変化したが,黒川の流入により再度Ca-S04型
へと変化した。両河川とも,その支流の水質は五岳側と外輪山側とで大きく異なり,五岳
側の支流により多くの成分が含まれていた。また,一部の支流において,特異な水質を示
すとともにふっ素濃度が環境基準を超過していた。
キーワード:巣川,白JlI,河川水質,ふっ素
はじめに
熊本県の人口の半数が集中する熊本地域(熊本市及
び周辺15市町村)では,水道水源を100%地下水に依
存するなど豊富な地下水に窓まれているが,近年,地
下水位は低下傾向を示しており 1) 各地で自噴の停止
:黒)11本流
:白)11本流
〉 、黒)11支流
ζ=:>:自)11支流
N
関 1 調査地点函
*現熊本県環境生活部環境保全課水保全対策室
(50)
や湧水量の減少が見られる。その主な原因として,農
地の市街化や水田の転作等といった掴養面積の減少等
が挙げられており,行政をはじめ各方富から様々な対
策がなされているものの有効な対策が取りにくいのが
現状である。今後も水需要が減少するような要素は少
JII
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
なく,これまで同様緬養域面積の減少が続けば,将来
の水需要に備え,新たな水資源の確保が重要な課題と
して浮上してくることが予想される。その新たな水資
源として,白川の河川水利用が考えられる。
白川は,熊本地域の中心部を流れており,地理的に
最も有利といえるが,阿蘇中央火口丘群にその源を発
するが故に特異的な水質を示し,平成15年度公共用水
域水質調査2)においても,ふっ素(以下. F-と略。)濃
度が中流の吉原橋で、0.82mgjCと水質汚濁に係る環境基
準(以下,環境基準と略。)である0.8mgjCを超過し,
県内の他の河川に比べて高い傾向にある。 Fーは,通常
の浄水処理法では除去できないことから,新たな71<資
糠として利用する際の障害となることが考えられる。
しかしながら,白JiIの水質がどのように形成されるの
か調査した例は少ない。そこで,今閤,この白川の水
質がどのように形成されるのかを明らかにするため,
黒川及び8J'1の本流及び支流の主要無機イオン成分を
中心に調査したので報告する。
調査方法
1 調査日及び調査地点
採71<は,一部を除いて平成10年11月8日及び9日に
実施した。
採水地点を臨 1に示した。また,黒川及び白川本流
の採水地点名及び河川名を表 1に,支流の採水地点名
及び河)11名を表2-1及び去2に示した。黒)11及び自JiI本
流では,黒)11については白川に合流するまでの16地点,
白川では黒川が合流するまでの 8地点及び黒川合流後
の2地点とした。一方,支流については,黒J'1及び自
JiIへの合流前 1地点について実施し,計72地点(黒JiI
43地点,自)1129地点)とした。
表 1 黒JII及び自JlI本流の採水地点
河
川
名
市町ヰす名地点
番号採JJ(地点 !日町
村名
地区名
器問一舟智一
町一本一
の二三
門-第-
AA
同
nD-
五時vr-
中坂梨E訴しーの l三聖子山下宮町[手富一一一
1 '字通滋下原B 小倉
小池
内牧
2 内牧翌 I示…一 』一一一ー勾叩骨骨ー一一;ニ i小野
匂 ι 下村
跡ヶ瀬
約石
無間
K叶C
阿
蘇
市
橋一橋一一一一一橋一橋一一一
山ι
倉}矯ι
掠橋愉}
ι
橋一村ι
代…橋一掠橋川一揖機愉
山風一小一町一牧一括犠糊一ニ一戸戸一下一回一内一}ま止一帰
小一新一今一内一新一折…新一下一山山門一大一宙車十
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K一K一K…K一K一K一K一vK瓜一K一五一ν五込
累
川
:~~j~l~~!,一一:::lE:-T-l謹二二
表 2-1 黒川支流の採水地点
地点| 河川|
番号| 名
採水
地点
K-1 1豆本υ 黒川合流前
日 |古都古城小前
K-3 1泉)11 第一古城橋
K-4 1水路 |黒川合流前
K-5 1部11 いちのしよう治議
K-6 1水路 |黒川合流前
ト7 1東岳)11 黒川合流部
K-8 1今町)11 宮の本橋
K-9 1西岳)11 泉川合流前
十10 1花原)11 花原橋
五111駄原)11 駄原橋
心12 1累戸JII 1 ilJ崎橋
ト13 1 甲賀)11 甲賀橋
K-14 1水路 |黒)11合流前
五…15 1水路 |黒川合流前
十16 1乙姫)11 泉)11合流前
K-17 1小}II 小野橋
K-18 1水路 |黒)11合流前 j 臨
K-19 I小川 iうとはし j 帯K-20 1四ツ江川1 1下中村荷
K-21 1水路 [議)11合流前
十22 1 '水路 i黒川合流前
K-23 1 .水路 i祭)11合流前
K-24 1水路 j累)11合流前
K-25 1水路 j蒸)11合流前
任26 1市の)11 げず犠
ル271 .水路 !黒川合流前
K-28 1水路 |黒)11合流前
K-29 1 ;水路 |黒川合流前
五一30 1 '水路 |黒川合流前
必31 1水路 |黒)11合流前
や32 1水路 |黒)11合流前
K-33 1水路 |一黒)11合流前
K-34 1 '水路 |黒)11合流前
K-35 1 ;水路 |黒)11合流前
K-36 1水路 i 黒川合流前
K-37 1ノj、)11 黒)11合流前
K-38 1 J来翻 床瀬橋
K-39 I小)11 援流キャンプ場| 南
-LL611tif-l亙;扇子ジデ喜一ljZ K-41 I濁川 I!笠流キャンプ場| 村
K-42 1 i勇水池 i壁流キャンプ場
K-43 1小)11 蒸)11合流前
(51)
市町村名
r-,srur--I 地区名
村名
中坂梨豆札
三聖子山下
一 i三野ilJ下
2 1手長一一二田T,手野
中退問下Jjj(中通西下河原
i小池
i 15主流町1商小溺
駄原
山崎
山崎
広瀬
下ノ原
登原
小里子
下回代
狩尾
下村
一, jj主小屋議長 i市ノ原
町 i市ノ涼
跡ヶ瀬
跡ヶ提案
市の)11的石
的石
的石
的石
殿塚
然回
無回
無関
無関
牽帰
黒)11黒)11
長 1 f可湯践 i 荷揚キナト一一伊 一
11可湯1 1可錫1 i可陽
第34iラ(2004)
び42の6地点が7.0よりわずかに低い値を示した。
ECは, K-9, 11, 13, 14, 15, 23及び24の7地点
が500μS/cmを超え,特に, K-23は916μS/cmとい
う非常に高い値を示した。幾つかの地点については,
pHが低いほどECが大きい傾向が見られる。
熊本県保健環境科学研究所報
地区名ρ布野村利
町一中巾
採水地点j可)11
名
表2-2
地点
番号
口
鶴
時
開
命
拙
噛
回
開
(km¥Oヨ)
wuujdH司一
山
川
C
F
0
4
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8.5
8.0
7司5
ヱa
7.0
白水村
次に,黒川各支流の各成分の濃度について,図3にNa+,
K+, Ca2+, Mg2+, cr及びN03-の6成分について,圏
4にHC03-,S042-及びSi02の3成分について示した。
K-9, 11~15 , 22~24, 34~36の計12地点で,他
の地点に比べて高い濃度を示しており,特に, K悶 12及
び23では特に高い濃度を示した。 9成分中,調査地点
聞の濃度差が大きかったのは Ca2+及びS042-の2成分
であり,それぞれK-12では92.4mglC及び454mg/.e,
K-23では73.2mg/.e及び370mg/.eと高い濃度を示した。
これら 2成分に対し, HC03-及びSi02には,鵠査地点
間の大きな濃度差は見られず,特に, Si02は40~
60mg/.eの濃度範囲を推移するのみであった。
黒川支流のpH及びモC変化関2
:長陽村
100
分析項目及び分析方法
分析項目は, pH,電気伝導度(以下, ECと略。),
主要無機イオン成分及びSi02である。各項目の分析方
法は,次のとおりである。
.pH:ガラス電極法
2
御手水
8)11
竹崎
竹崎
L__________L無罰
j久木野村 i桑原r-~~J~~----r 祇園i 白水村 ト
i御寺r ---------T~j、牧麦春
;久木野村トi麦春摺尾
j白水村 1)11地後言百 :--~:~~---T 下関 ゆ
両長湯村 ト蘇: ••••• • • L1'田村柿野
岸野
j久木野村 |河陰
i八史木1 )11後回
:長陽村 I喜多見瀬
1-見瀬:久木野村 |見瀬
柏野
|柏野
栃木
栃木
栃木
S-1 1水路 |自)11合流前
S-2 I下の)11 下の)11橋
S-3 1 倶手l訪日羅谷)111白)11合流前
S-4 1 i可併)11 竹崎橋
S-5 1保手谷川 |自)11合流前
シ6 1迫)11 迫前原橋
S-7 1 i高木)11 光照寺橋
S-8 1 j反)11 二本木前様
S-9 1長谷川 1 ;長谷機
S-10 1 湿谷)11 白川合流前
S-l1 1大谷)11 大河原橋
S-12 1滑)11 1 j習尾穣
シ13 1;水口)11 1 I会)11合流前
シ14 I水路 |白川合流前
S-15 I渋谷)11 下回橋
シ16 I 1等木谷)11 I柿野谷橋S-17 1;本谷)11勾 |東屋橋
シ18 1 岸谷)11 岸谷下橋
シ19 1牛玉谷川1 1 I当)11合流前
S-20 1垂玉)11 長隊叡
シ21 1小)11 1 8)11合流前
S-22 1柏野谷川 1 8)11合流前
S-23 1晃瀬西川 1 8)11合流前
S-24 1小)11 1 8)11合流前
シ25 I小)11 釘)11合流前
シ26 1小)11 白川合流前
S-27 1小)11 自)11合流前
S-28 I小川白川合流前
S-29 I温泉排水 !白川合流前
80
-::; 60 ¥ 凶
ε
襲40
20
.EC: ECメーター
-主要無機イオン成分
. Na+, K+, Ca2+, Mg2十, F-, Cl二S042-,N03-:イオン
クロマトグラフ法
. HC03-:硫酸潟定法によるpH4.3アルカリ度から計算
. Si02 :モリブデン黄法
黒川支流の 6成分の濃度変化
次に,黒川各支流の?の濃度を留 5に示した。 F-は
K-6, 8, 9, 11~14, 18, 22~24, 29, 32及び35の
計14地点で環境基準である0.8mg/.eを超過しており,
調査した黒川の支流43のうち ほぽ1/3の支流で環境
盟3
(52)
結果及び考察
まず,図 2に黒111各支流のpH及び(ECについて示した。
pHは,大部分の地点が7.0~8.0の範囲内にあったが,
K-7が8.0をわずかに超え, K-12, 13, 18, 23, 38及
支流の水質
1 -1 黒川
1
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
基準を超過していたことになる。なお,最高は, K-23
の6.70mg/eであった。
500
400
気込4
1る300E
制緩 200
O
HCO:i
K-135 7 91113151719212325272931333537394143 認査地点
旬、、
7.0
6.0
5.0
E 4.0 )
襲3.0
2.0
1.0
0.0
関4 黒川支流の3成分の;濃麗変化
Kω1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 2325272931 3335373941 43 調査地点
盟5 黒川支流の F 濃度変化
黒)11各支流の水質を函 6にトリリニアーダイヤグラ
ムで,図 7にヘキサダイヤグラムで表示した。
まず, トリリニアーダイヤグラムでは,大きく 3つ
の水質に分類で、き, 1のアルカ 1)土類炭殻塩裂に18地点,
IVのアルカリ土類非炭酸塩型に 8地点及びVの中間型
に17地点が含まれた。なお Eのアルカリ炭酸塩型及
びEのアルカリ非炭酸塩型の水質は見られなかった。
カチオン,アニオン別に見ると,カチオンの組成にあ
まり大きな変動が見られないのに対して,アニオンの
組成では大きな変動が見られ,特に, Cl の紘成が 5~
15%とほとんど変動が見られないのに対して,日C03-
及びS042一+N03の組成が大きく変動している。
また, F-濃度が環境基準を超過した地点(図 6で着
色した地点)は, IVのアルカリ土類非炭酸塩裂に 7地
点及びVの中間型に 7地点見られた。小笹 3) によれば,
阿蘇管内の地下水でF濃度が環境基準を超過した地点
の水質は,多くが Iのアルカリ土類炭費量塩型及びVの
(53)
中間型に見られており, IVのアルカリ土類非炭駿塩型
を示す地点では, F濃度は環境基準を超過していない。
これは,今自の讃査と異なる結果であるが,慶畑4) に
よれば,阿蘇谷の湧泉の水質は,黒川以南(五岳側)
で多くの地点がWのアルカリ土類非炭殻塩型及びVの
中間型を示し,黒川以北(外輪山側)に比べてF濃度
が高い傾向にあることから これらの湧泉の影響ある
いは温泉排水の影響を受けたものと考えられる。
O L
100 ←Ca2+
100
。。
理費色した地点i主、下車重度が環境基準鎚(O.8mg/lJを超過した地点
CI→ 100
関6 黒川i各支流のトリリニアーダイヤグラム
。
次に,ヘキサダイヤグラムから各地点の水質をみると,
K-9, 1l ~15及び23の 7 地点は,他の地点と異なりより
多くのイオン成分を含むCa-S04型を示した。また, K-22,
24, 34~36の 5 地点は, Na-S04型を示した。しかし,
これら12地点を除く残り31地点の多くがよりイオン成分
の少ないCa-HC03型またはCa-S04型を示した。
なお,地域ごとに見た場合 大きく外輪山側からの
支流と五岳側からの支流とで水質が異なっていた。
外輪山側からの支流には, K-3, 5, 10, 19, 30及び
43のようにCa-HC03型を示す地点が多く,一方,五岳
側から支流にはK-9,12, 23及び29のようにCa-S04
型が多く見受けられる。次に流域別に見ると,調査地
域内の上流域では溶存成分をあまり多く含まない支流
が多いのに対し,中流域では, K“ 9,12, 23及び29の
ように多くの溶存成分を含む支流が多い。また中流域
から下流域にかけてK-22及び34のようなNa-S04型を
示す地点がいくつか見られた。
1-2 白 111
まず,閣 8に自)11各支流のpH及び~ECについて示した。
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
K怜刺-斗1(I)伶制K-16沌百s百白 Mω6(1小L制~斗
K-2C一吃て2(1)怜削附刀1行百7芯0>問 [) K-~トk
¥
iω D α」正Jf引勺φ 枠附問3幻7
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〉日 K-2刊向吃引2引1)]) 附問1(l) K-40もD
K-寸7巴 K但訂むミ¥工〉JJ怜-3巳伶糾K-41白Kて-8てr仁E仏¥?れごf叩[])Kω寸白-42位2(]Jh mb mb J卜¥向山
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吋口!315
図7 黒川各支流のヘキサダイヤグうム
pHは,大部分の地点が7.0~8.0の範盟内にあったが,
S-5及び29が7.0よりわずかに抵く,合22及び23が8.0を
わずかに超えていた。全体的により下流側の支流ほど
pHが高くなる傾向が見られた。
ECは,特に, S-29は1.76mS/cmという非常に高い
値を示した。他の地点は S-15が500μS/cmを超えた
が,大部分の地点が100~300μS/cmの範囲内にあった。
また,黒川のようにpHが低いほどECが大きい値を示
すような傾向は見られなかった。
次に,白川各支流の各成分の濃度を図 9にNa+,K+,
Ca2十,Mg2+, cr及びN03-の6成分について,関10に
HC03-, S042-及び、Si02の3成分について示した。
8.5 2000
8.0ト国繍醐時開路線協附(主的¥Oヨ)
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6.0 Iι , , '0 s山 357 9亀 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29
E調査地点
盟8 白JII支流のpH及びEC変化
会13~15及び29の 4地点では,各成分とも他の地点
に比べてより高い濃度を示した。特に, S-29は非常に
高い濃度を示しており,これは,水温が40.30
Cと高い
ことから,付近の栃木温泉からの排水の流入の影響が
あるものとみられる。この温泉の水質はNa-HC03・
幻 4型でありの,その水賓の影響を受け, Na+ (185mg/i),
HC03 -(321mg/ i), S042-(5 79mg/ 1')が特に多く含
まれていた。しかし, これらの 4地点以外の地点では
若干の濃度の違いは見られるものの,大きな違いは見
られなかった。
70
60
50 G込J
E40 襲30
20
。 ξ執ミ語数古漁設時論議ifP-。、。
議室聖地点
図9 自111支流の6成分の濃度変化
10
300
50
250
~ 200 宮、J¥、
j150
鍵100
S-1 2345 67 89 101112131415161718192J剖 22232425 26 27 2829 調査地点
図10 自111支流の3成分の濃度変化
(54)
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
次に,白)I [各支流のFの濃度を図11に示した。 Fは,
S-7でのみ環境基準を超過し, 0.92mg/.eであった。黒
川と比較して全体的に濃度は低く, 14地点で環境基準
を超過していた黒川とは対照的であった。
1.2
1.0
0.2
~ 0.81 ミ |070
~ 0.6~0, 緩 10.51
0.4
朝一
S-l 234567891011121314151617181920212223242526272829 認変地点
図11 自川支涜の F-濃度変化
白川各支流の水質を図12にトリリニアーダイヤグラ
ムで,図13にヘキサダイヤグラムで表示した。
。100 。。←Ca2
+ cr→
関12 自JII各支流のトリリニアーダイヤグラム
まず, トリリニアーダイヤグラムでは,黒川の支流
と異なり, Nのアルカリ土類非炭楼塩型の水質は見ら
れず, 1のアルカリ土類炭酸塩型に16地点及びVの中
間型に13地点が含まれた。黒川!の支流詞様,カチオン
の組成に大きな変動が見られないのに対して,アニオ
ンの組成では大きな変動が見られ,特に, crの組成が
ほぼ10%と変動が見られないのに対して,日C03-及び、
S042-+ N03-の紐成が大きく変動している。
次に,ヘキサダイヤグラムから各地点の水質をみると,
他の地点と大きく異なる濃度を示したS-13,14及び28
の3地点はNa-S04型を示し,また, S-15はより多くの
成分を含むCa-S04型を示した。一方, S-29は,より多
くの成分を含むNa-S04型を示した。しかし, これら 4
地点を除く残り 25地点の多くがよりイオン成分の少な
いCa-HC03型またはCa-S04型を示した。
なお,地域ごとには,黒川同様,外輪山側からの支
流と五岳儲からの支流とで水質が異なっていた。外輪
山側からの支流は, S-4, 10, 12, 16, 19及び22の
ように,多くが漉存成分の少ないCa-HC03型の水質を
示し,一方,五岳側からの支流は, S-2,5,7及び20
のようなCa-S04型,あるいはS-15及び27のような溶存
成分の多いCa-HC03型が多く見られた。
(meq/C) 202202202
。
S別一→1<J小江 刊 (])S臼刊一4引2引1巳シ日2<]心¥ シ別叩1η川'(])φ ふ叩、b シ討3<J色江剖巳叩 b糾、心 S芥可下h¥S一q'(D 4己c 刊 q斗斗 戸「¥ヲうヲデ2お5
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(meq!l) 105 0 5 10 15
S-29
¥ 〉「¥¥図13 白JII各支流のヘキサダイヤグラム
次に,流域iJlJに見ると,中流域では, S-13及び14に
(55)
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
見られるNa-S04型やS-15に見られるより多くの成分を
含むCa-HC03型など特異的な水質を示す支流が見られ,
また。下流域では, S-27及び29のようなN合 S04型を示
す支流も見られた。
2 本流の水嚢変化
2-1 黒
まず,関14に黒}I1本流のpH及びECについて示した。
pHは,全ての地点が7.0~8.0の範劉内にあり, K-A及
びK-Pを除くと全体的により下流に行くほど徐々にpH
が低くなる傾向が見られた。
ECは, S-A及びK-J~K-Oでは, 400μS/cm程度の
鑑を示したが,その他の地点では 1地点を除いて200
~300μS/cmの範囲にあった。また,黒川の支流の場
合同様,全体的にpHが低い値を示す地点ほどECが大
きい績を示す傾向が見られる。
_"'.0-、'O--o.__Qp--合
、、 捌画語4崎島
f J , ,
、、
, 、
p__O 、ht3J
200:;
=& IJ¥,、、。 ρ向。
同 100~ ¥U0 、3
a 、 〆
7.0 冶,
6.5ト
6βl 。 '0K-A K-8 K-C K-O試-EK-F抗“GK-H K-I怜JK-K K司 LK-M K-N K-O K-P
調査地点
鴎14 黒JII本流のpH及び印変化
次に,黒川本流の各成分の濃度を図15にNa+,K+, Ca2+,
Mg2+, cr及びN03ーの 6成分について,悶16にHC03-,
S042-及び、Si02の3成分について示した。
O
F
B
O
A-
。。。。
ミ25国
E 遍20
緩 15
5 ---o---o--.oーや---0 ---0 ---0---0---0一也
。耳目AK-B K-C K-O K-E K-F K“G K同 HK-I K-J 抗K K-L K-M K-N K同 oK四 p
認変地点
図15 黒川本涜の 6成分の濃度変化
流下に伴う各成分の濃度変化の傾向は,濃度変化が
小さかったK+,N03-及びSi02の3成分と濃度変化が大
きかった他の 7成分との 2つに大きく分けられた。濃
度変化が小さかった 3成分はK-Aを除きそれぞれK+は
5 ~ 6 mg/J!, N03はほぼ 4mg/J!, Si02は 50~
60mg/J!を推移するのみであった。
180
1601-Q
140ト¥
。¥可 HC03-
<>ーーーペ::>__-0ーーぺ:>-__-0_ー吋ご弘
c; 120
E i∞ 塁80
60
40
20 Sul-。
K-A K-8 K-C抗-0K-E托ーFK-G K-H K-I Kサ K司 KK司 LK-M K“純正ーoK-P 調査地点
図16 黒JII本流の 3成分の濃度変化
一方,濃度変化が大きかった他の 7成分については,
その濃度はK-AからK-Dまで一様に減少傾向を示した。
K-E以後は, HC03-のみ異なる挙動を示し,77mg/J!か
ら60mg/J!へと徐々に減少するのみであった。一方,
HC03ーを除く残りの 6成分は, K-Iまで徐々に濃度が増
加し, K-Jまで大きく増加した後,徐々に減少し, K-P
で激減した。このK-IからK-Jにかけて急激な濃度上昇は,
支流K同1l ~15の流入によるものであり, これら支流は,
1-1で述べたとおり, ECが大きく,他の支流に比較し
てより高濃度のイオン成分を含んでいた。
次に,黒JII本流のF-の濃度を閤17に示したo F-は,
K-AからK-Iまで0.3~0.6mg/J!の濃度範罰にあるものの,
K-Jで急増し,0.85mg/J!となり,環境基準を超過した。
これは, K-Oまで続き, K-Oで最高の1.05ロ19/J!を示した。
1.2 1.05
1.0
1 需主塑
襲MlGOMM0.61
0.2 0.3
0.0 K叫 AK同8K-C K-O K-王正也FK-G正也HK-I K-J K同虻 K-LK-M紅白NK-O K-P
認査地点
図17黒川本流の F-濃度変化
(56)
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
黒川本流の水質を図18にトリリニアーダイヤグラム,
図19にヘキサダイヤグラムで表示した。
100
。100 。。
CI→ 100 ←Ca2+
図18 黒川本流のトリリニアーダイヤグラム
まず, トリリニアーダイヤグラムでは,支流と異な
りNのアルカリ土類非炭駿塩型の水質は見られず, 1
のアルカリ土類炭駿塩型 (6地点)及びVの中間型(10
地点)の 2つの水質に分類できた。支流同様,カチオ
ンの組成にほとんど変動が見られないのに対して,ア
ニオンの組成では支流ほどではないものの大きな変動
が見られ,特に, crの組成がほぼ10%と変動が見られ
ないのに対して, HC03-及びS042-+N03の組成が大き
く変動している。
(meq/l) 202 20220 2
立プGCD刊ぐKK-B cl>阿川 Kγト¥十CCI)やlCIJγト¥K-D CI> γト¥K-Plli K-E CDγゎ¥肝 Dγへ
圏内巣)11本流のヘキサダイヤグラム
次に,ヘキサダイヤグラムから各地点の水質をみると,
K-Aで、はやや極端なCa-HC03型を示し, K-BからK-D
にかけて徐々にイオン成分濃度が低下していくものの,
K-Fまで基本的にCa-HC03型を示した。これは, K-D
まで流入する外輪山側からの支流が,イオン成分の少
ないCa-HC03型を示すことによる。 K市GからK-Iにか
けては,硫酸イオン濃度が増加し, K-J以降はCa-S04
型を示した。このK-Jでの大きな水質の変化は,先に述
べたように支流K-11~15の流入によるものである。支
流K-11~15は, K“ 12を示したように極端なCa-S04型
であり,流量が少ないもののその極端な水質のために
黒)11の水質をCa-HC03型からCa-S04型へと変えたも
のといえる。
。2-2 自
まず,悶20に自)11本流のpH及びECについて示した。
pHは,全ての地点が7.0~8.0の範鹿内にあり, K-A及
びK-Pを除くと全体的により下流に行くほど徐々にpH
が低くなる傾向が見られた。
ECは, S-AからS-Gまで250μS/cm程度の値を示し
たが,黒川の合流によりS-Hで448μS/cmまで上昇し
た後, 350μS/cm程度の値を示した。他の地点は, S-
15が500μS/cmを超えたが 大部分の地点が100~
300μS/cmの範囲内にあった。
8.5 500
8.0
、
入、代7F F r
, , ,,Aφ V
。。。。曹。句。
司 ---0 事事
300謀畿日事
200~ (/) 、、、
1001
400
7.5
ヱa
7.0
6.5 固6.0 。
&A &日号-C &D &-壬 &F S-DトH 剖 EトJ議査地点
圏20 白川本流のPH及びEC変牝
次に,白川本流の各成分の濃度を図21にNa+,K+, Ca2+,
Mg2+, cr及びN03ーの 6成分について,国22にHC03-,
S042-及びSi02の3成分について,さらに図23にFーにつ
いて示した。
黒川とは対照的に,上流からS-Gまでほとんど大きな
濃慶変化を示さなかった。これは,白川本流の水量が
大きいため,流入する支流の水質が白川本流の水質に
大きく彰饗されないということのみならず,むしろ類
似した水震をもっ支流が流入することによるものであ
(57)
S-Iでは,多くの成分がS-Gでの各成分の濃度近くまで
減少しているが,これは黒JIIの合流による。しかし, F-
のみが異なる挙動を示しており, S-Hまで0.4~0,5mg/R
の濃度であったものが. S-IでO.72mg/Rまで急増した。
このS-Iでの?濃度の急増は 黒川により多くのF-が含
まれているためである。ただし,黒川の白川合流麗前
のK-PにおけるF一濃度は0.61mgfRしかなく, この濃度
では,自JII本流のF-濃度をS-Hの0.41mgfRからS-Iの
O.72mg/Rまで、上昇させることはできない。このK-Pに
おけるF濃度が0.61mgfRしかないにも関らずS-Hにお
けるF同濃度がO.72mgfRまで、上昇している原因は,念日
とS-Iの間に,黒川発電所からの排水が流入しているこ
とによるものと考えられる。黒川本流のKωNとKωOとの
開,詳継には黒川支流Kω36とKω37との障で,黒川本流
の一部は発電用水として分離され,黒JII本流の流入地
点よりも下流側で合流している。今回はこの発電所か
らの排水の水質を測定できていないが,黒川から取水
している地点の前の測定地点であるK-Nでは, F-濃度は
0.94mgfRであることから この発電所からの排水も間
程度の濃度と考えられ,この排水の流入により, S-Iの
F濃度が0.72mg/Rまで上昇しているものと考えられる。
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
ると考えられる。実際,上流からS-Gまでに流入する支
流のうちS-13. 14及び15を除いて,その水質は大きく
異なるものではない。
n
U
F
O
n
u
凋
斗
の
d
q
d
とど 25 "" 言20
終 15
5
。S-A S-B s-c S…D S-E S-F S-G S→ S-j S-J
調査地点
圏21 白JII本流の6成分の濃度変化
140
120 P
/'外去、
HC03 i 司 4..._-0-
100 、,E80 襲60
Si02
40 'ω
S04"
20
。S-A S喝 S-C S向。 シE S-F S-G S-H 剖 EトJ
調変地点
図22 由JII本涜の3成分の濃度変化
S-Hでの各成分の挙動は,濃度変化が小さかったF-.
N03-及びSi02の3成分と濃度変化が大きかった 7成分
との 2つに大きく分類された。濃度変化が小さかった 3
成分について,まず.F及びN03-は, S-Hで大きな変化
を示さず, S-AからS-Jまで減少するのみであった。次に,
Si02はS-Hで76.49mg/Rを示したが,他の地点での60~
65mg/Rに比べるとさほど大きな変化で、はなかった。
これら 3成分に対し,残りの 7成分については. S-H
で大きな濃度変化を示し S-Gにおける濃度の約2倍の
値を示した。特に, Na+及び、S042“の 2成分は大きな濃
度変化を示し,それぞれ.12.27mg/R, 32.43mgfR.
43.52mg/Rから100.60mg/Rまで2倍以上の濃度となっ
ている。これは. Na-S04型の水質をもっ支流S-29の流
入による。さらに. S-29はNa+及び、S042以外にも多く
の溶存成分を含み,水量的には白川本流よりも少ない
ものの,各成分の濃度が大きいため,自J11本流にこの
ような大きな水質変化をもたらしたものといえる。
1.2
1.0
pa p均一v
ハυ
nu
no nU
06
氏V
A
-
AU
内
υ
ハυ
(旬、E)制緩
0.72 0.70
0.2
。。S決§召 Sベ:; s-o Sモ号ヂ S-G S山 H S-I S-J
議査地点
図23 白川本流の f濃度変化
白川本流の水費を国24にトリリニアーダイヤグラム,
図25にヘキサダイヤグラムで表示した。
まず, トリリニアーダイヤグラムでは,黒JII及び白川
支流と巽なり Vの中間型の水質しか見られず,カチオン
及びアニオンの組成にほとんど変動が見られなかった。
次に,ヘキサダイヤグラムから各地点の水嚢をみると,
S-AからS-Gまでは, Ca-S04型から徐々にCa-HC03・
S04型へと変化しているが,その変化は小さかった。
しかし. S-Hでは,全成分とも増加し,他の地点とは大
きく異なるNa-HC03'S04型べと水質が変化した。こ
れは,前述したようにS-GからS-H間に流入する支流S-
(58)
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
29の水質が,よりイオン成分を多く含むNa-S04型で
あることによる。その後, S-I及びS-Jでは, Ca-S04型
の水質を示す黒JiIの流入により, Ca-S04型を示した。
100
。 。100 。。 cr→ 100 ←ci+
函24 白川本流のトリリニアーダイヤグラム
色小
S-Aili
シBぐb
図25 自JlI本流のヘキサダイヤグラム
3 中央火口氏側支流と外輪山側支流との水質の
棺違
2で述べたように,黒JII及び白JIIともに外輪山側か
らの支流と五岳側からの支流とで水質が大きく異なっ
ていたことから,中央火口丘側の支流と外輪山側の支
流について成分ごとに比較した。
表 3に阿蘇谷及び中央火口丘側支流と外輪山側支流
の各成分の平均績を示した。黒JiI支流の各成分の平均
値と白J11支流のそれとを比較しでも, HC03及びS042-
以外にはあまり大きな差は見られなかった。 S042ーは黒
J 11支流の方が大きく,その差は29.25rng/fと大きかった。
また,日C03では白JiIの方が大きく,その差は18.08mg/f
であった。 Fについては,濃度差は小さかったものの
黒川の方が0.91mg/fであるのに対し,自J11は0.31mg/f
と黒川の4割弱程度であった。
表3 阿蘇谷及び中央火口丘僻支流と外輪出慨支流の各
成分の平均値
河川名 黒JlI 自}II
河川i帰属 五岳:外輪山 平均 五岳外輪山 平均
河川数
73ぉ3花0:;:722臼18D1ii734必0.23|||ii i 13:
16 29
pH 7.42 7.75 7.60
EC 0nS/cml 429 151 276
Na' (mg/e) 20.. 49: 15. 72 18.27 32.17・8.27 18. 98
K' (mg/e) 5.95 4.0.1 5.0.4 7.79 : 2.83 5.0.6
Ca" (mg/e) 33. 65: 13. 53 24.29 29.51 13.2応 20..54
M!f (mg/e) 16.45 8. 12 12.57 15.42 : 4.24 9.25
H叫 (開g/e) 52.0.7・61.36 56.39 93.47: 59.0.4 74.47
ド (凱g/f.) 1. 38 ; 0..37 0..91 0..51 : 0..15 0..31
cr (mg/e) 18.82 7.97 13.78 16.33 4.28 9.68
記D3 (担g/e) 3.62 1.96 2.84 4.28 4.19 4.23
so.t (阻g/e) 128. 0.3: 43. 13 88.54 110..78: 17.44 59.29
SiU:1 (回g/e) 57.27: 52.99 55.28 72.61: 47: 40. 58. 70.
次に,黒JII及び白JIIの支流を流下してくる方向すな
わち中央火口丘側と外輪山側とに分類してその水質を
比較した。
まず,両河JiI内で中央火口丘側からの支流と外輪山
側からの支流とで比較すると,黒JIIのHC03ーを除いて,
全ての成分が,外輪出側よりも中央火口丘側に多く含
まれていた。特に, S042ーで顕著であり,中央火口丘側
では100mg!.eを超えるのに対し,外輪山側では黒川で
43.1mg/f,白)11で17.4mg/fと少なかった。また,
Ca2+についても閤様の傾向が見られ,中央火口丘側で
はほぼ30mg/fであるのに対し,外輪山側では13mg!.e
程度であった。また, Fは黒川の中央火口丘側で
1.38mg/fであり,非常に高い濃度で含まれていた。
次に,南河川の中央火口丘側及び外輪山側同士で比
較すると,中央火口丘側では顕著ではないが,外輪山
側では, N03-以外は全て白JiIよりも黒JiIの方により多
くの成分が含まれていた。
中央火口丘側により多くの成分が含まれる理由として,
河川の水源となる湧水の水質が挙げられる。先に慶1:Is4,6)
は阿蘇地域の湧水の水費について報告した。その中で,
黒JII及び自J11を境にして,中央火口丘側に位置する湧
水の水質と外輪出側に位置する湧水の水質とが大きく
異なることを報告している。中央火口丘側ではCa-S04
型,外輪山側で、はCa-HC03型を示す湧水が多く,中央
火口丘側の湧水により多くの成分が含まれていた。こ
のことから,地域的な湧水の水質が,河川の水嚢に反
映されているものと考えられる。
(59)
熊本県保健環境科学研究所報第34号 (2004)
また,自JIIでは, Na+及びHC03“の 2成分が,中央
火口丘側により多く含まれていたが,これは,主にNa-
HC03・S04型を示すS-29の影響による。
4 水道水源としての活用に関する検討
今問の白川本流の調査結地点のうち最も下流域にあ
るS-J地点では, F-は0.70mg/i!と,環境基準同様,水
道水質基準を満足しており, F-だけをみた場合に,水
道水源としての可能性が示唆される。しかしながら,
これまでの謂査結果では F叩は環境基準及び水道水質
基準を超過した例が報告されていることから,季節的
な変動,その他の原国によるEγ濃度の上昇も考えられ,
水道原水として利用するにはよりFωの低減を回る必要
がある。
白JII本流のFーは,黒)I [の合流によりS-HからS-1にかけ
て0.41mg/fから0.72mg/i!へと怠増しており,黒JIIのFー
が白)iI本流の?濃度に大きく寄与しているものと判断さ
れる。黒川本流は, K守IからK-JにかけてFーが0.53mg/i!
から0.85mg/i!へと急増しており,その後K-Oまで0.85
~1.05mg/fと環境基準及び水道水質基準を超過している。
このことから,黒)I [本流のK叩IからK-Jにかけて流入する
支流のF-除去処理により,黒川本流のみならず白川本流
のF濃度の低減が間られ より水道水源としての利用の
可能性が高められるものと思われる。
今後,本流及び各支流の水量の測定により,支流の
F-除去処理による黒JII及び白)iI本流の水質の変化につ
いてのシミュレーション等の検討が必要である。
まとめ
黒川及び白)11の本流及び支流の主要無機イオン成分
を中心に調査した。
1)黒)I[は,幾つかの支流の流入により, Ca-HC03型
からCa-S04型の水質へと変化するとともにF濃度が
環境基準を超過した。
2)一方,白川は,流下に伴いCa-S04型からCa-HC03・
S04型の水質へと変化したが,黒川の流入により再
度Ca-S04型へと変化した。
(60)
3)自JII本流では, Fは, 0.41 ~O.72mg/i!の範囲内に
あり環境基準を超過していなかったが,黒)11では,
K-J~K-O地点まで,環境基準を超過し 0.85~
1.0 5 mg/fの値を示した。
4)再河川とも一部の支流において,特異な水質を示
すとともにFーが環境基準を超過していた。特に,黒
)11の一部の支流では,非常に高い濃度を示した。
5) 黒川i及び白)11ともに外輪山側からの支流と五岳側
からの支流とで水質が大きく異なり,黒)11のHC03
を除く全ての成分が,外輪山側よりも中央火口丘側
に多く含まれていた。
6)黒)iI本流のK-1からK-Jにかけて流入する支流の水
質浄化 (F-除去処理)により,黒川本流のみならず
白川本流のF濃度の低減が密られ,より水道水源と
しての利用の可能性が高められることが示唆された。
謝辞
トリリニアーダイヤグラム作成プログラムは, 2003
年度末に本県を退職された塘詞穣氏が以前作成された
ものであり,ここに謝意を表します。
参考文献
1)熊本県・“平成8年度熊本の水資源 p91-92.
2)熊本県:“平成15年度公共用水域水質調査 p70.
3)小笹康人:熊本県保健環境科学研究所報, 33, 43,
(2003).
4)慶熔昌章:熊本県保健環境科学研究所報, 25, 54,
(1995).
5)熊本県衛生公害研究所:“熊本県鉱泉誌第E巻.. 95,
昭和53年 3月.
6 )慶畑昌主義:熊本県保健環境科学研究所報, 26, 64,
(1996).