保証契約における債権者の保証人に対する義務(1) url doi...【説論】...

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Meiji University Title �(1) Author(s) �,Citation �, 74(1): 1-77 URL http://hdl.handle.net/10291/1296 Rights Issue Date 2001-07-31 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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  • Meiji University

     

    Title 保証契約における債権者の保証人に対する義務(1)

    Author(s) 平野,裕之

    Citation 法律論叢, 74(1): 1-77

    URL http://hdl.handle.net/10291/1296

    Rights

    Issue Date 2001-07-31

    Text version publisher

    Type Departmental Bulletin Paper

    DOI

                               https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

  • 法律論叢

    第七四巻

    一号

    (二〇〇

    一・七)

    【論

    保証契約

    における債権者

    の保証人に対す

    る義務

    (1)

    はじ

    めに

    1

    本稿

    の目的

    2

    本稿

    の基本的視点

    根保証人保護

    の法的構成総論

    1

    根保証人保護法理をめぐる問題点

    2

    根保証契約

    の合理的意思解釈

    3

    元保証法五条

    の類推適用

    4

    信義則

    による制限

    5

    債権者

    の保証人保護義務による制限

    6

    複数の制限法理の使

    い分け

    7

    本稿の基本姿勢

    保証契

    約締結

    に際す

    る債権者

    の義務

    1

    1

    保証契約締結に際す

    る債権者

    の義務をめぐ

    る議論総論

  • 2

    特定保証

    の締結をめぐる判例

    の状況

    (以上本号)

    2

    はじ

    1

    本稿

    の目

    わが民法の保証規定は、基本的には旧民法を経由して約二世紀前のフランス民法に由来している。二世紀前に念頭

    におかれていた情義的関係に基づく非近代的保証を前提として、保証規定が構築されているにすぎな

    い。そのため、根

    保証に典型的に見られるように、その後の保証実務の発展に民法の規定が対応しておらず、解釈更には立法による補

    (-)

    また修正が要請されていることは疑

    いがあるまい。確かにわが国の保証法研究は、西村信雄博士による

    一連の研究

    を中心に大きく前進せしめられ、また、根保証を中心とした判例の蓄積によりかなりの判例法が形成

    されている。しか

    し、有償

    「取引」を専ら念頭においた契約法の

    一般原則をそのまま保証契約に適用してよいとは誰も考えま

    いが、錯

    誤など基本的な契約法理が保証法においてどう修正されるべきかについては、必ずしも明確な結論

    は示されていない

    (2∀

    であ

    ん保

    にお

    る情

    特別

    に保

    べき

    いて

    は既

    に明

    にさ

    てお

    の成

    否定

    べき

    では

    い。

    かし

    れを

    に検

    証し

    た上

    一般

    の関

    (消費者保証人などと

    いわれ消

    費者法との連続性もちら

    ついて

    いる)、特

    にどう

    正さ

    かを

    にし

    いく

    必要

    があ

    る。

    の参

    とし

    、近

    椿

    によ

    って提

    た問

    に注

    目し

    みよ

  • 椿寿夫教授は、これまでの保証法理が現代の保証実務に対して必ずしも十分なものではな

    いという

    ことから、二

    (3)

    の観点から注目される問題提起をしている。誤解を恐れずに筆者の消化したなりに示せば、次のよう

    である。

    保証主体に応じた保証法理の多様化

    まず、保証主体に応じた保証法理の多様化の必要性があ

    る。「法人保証」

    という否

    ・的な用語を美

    し、・れまで獣

    情詩

    保証を念題

    で保証法が舞

    で惹

    のに対し、

    q

    る保

    はそ

    のよう

    保証

    のみ

    では

    く、

    存在

    おり

    の保

    、、

    、、

    に法

    いも

    であ

    って

    いはず

    であ

    る。

    「一つ

    の保

    ら多

    な保

    へ」

    いう

    こと

    が言

    であ

    ろう

    る耐

    .多

    係・

    とし

    の保

    た、

    かを

    にす

    い・つ・

    は、

    と主

    関係を基礎としている保証取引において、「保証人と主債務者との関係」に光を当てて考察する必要性を認識させるこ

    とにな奄

    それは・保証取引を霧

    成させ保証契約と保証委託契約とを結びつけて・保証委託契約の失効などが保証

    の者

    契約に影響を及ぼさないか検討を迫ることになる。

    権礁

    本稿は、保証法において最も蓄積

    の見られる領域である根保証をめぐる法律関係を中心として、また、主体として

    ナ捌

    「情義的保証人」を中心として、保証人保護の判例の努力を債権者の保証人に対する義務という観点から分析をし

    に約

    直し、あわせてその妥当範囲の限界付けを多様な保証人類型について考えていこうとするものである。また、保証契

    契証

    約外の主債務者と保証人との関係が債権者の責任にどう影響を与えるかの検討も必要であり、多角的法律関係という

    観点からのアブ・一

    忘れない・・にし発

    注(1)

    西村信雄

    『継続的保証

    の研究』(昭和二七年)、同

    『身元保証

    の研究』(昭和四〇年)、同編

    『注釈民法

    (11ご

    (昭和四〇年)、

    3

    『保証債務の相続

    総合

    判例研究叢書民法

    (14)』

    (昭和三五年)な

    ど。

  • 4

    (2)

    後述するよう

    に、保証をめぐ

    る錯誤

    の議論

    には保証人の多様性、情義的保証人の保護と

    いう

    ことが考慮

    されて

    いな

    い評釈

    が多

    いが、近時は実務家

    により情義的保証が近代的市民社会

    の合理的な

    システ

    ムである契約概念

    とはなじみにく

    いも

    のであ

    り、債権者に保証

    人に対する

    一種

    の安全配慮義務を認めようとしたり、保証契約の解釈は特別に保証人保護と

    いう方向

    で他

    の契約解釈とは

    一線を隠すべきことなどが主張されるよう

    にな

    って

    いる。立法論

    とし

    て、金銭消費貸借に

    ついての連帯保証

    ついても、身元保証法と同趣旨

    の法規制が必要

    であると、「保証

    一一〇番」に関与した弁護士から主張されて

    いることに

    (木村達也

    「保証契約は現状

    でよ

    いか」民事法情報九八号

    (平六)三頁)、耳を貸さねばならな

    い。

    (3)

    法人保証に

    ついては、とりあ

    えず椿寿夫

    「法人保証序説」『別冊2UJピ

    ロρ①日

    法人保証

    の現状と課題』(平

    一二)

    一頁以下、

    多角的法律関係

    については、同

    「民法学における幾

    つかの課題

    (九)」法数二三一二号

    (平

    一二)六七頁以下、中舎寛樹

    「保証

    [

    いわゆる多角関係L『別冊ZuJい昌ρ密

    法人保証

    の現状と課題』

    (平

    一二)

    一九四頁以下

    叢論

    2

    本稿の基本的視点

    律法

    ω

    二つの段階での保証人保護

    先ず、本稿の出発点として、「なぜ情義的保証人を保護すべきか」、また、「なぜ

    根保証の場合に保護の必要性が高くなるのか」について基本的な視点を確認しておこう。主たる債務

    の発生原因たる

    取引と不可分の

    「取引」として契約法の

    一般法理を保証契約に原則的に適用し、また、保証主体の多様性に応じた差

    異を意識せず、いわば

    「勤勉な債権者による担保の取得」として債権者保護に未だ傾

    いている保証法理につき

    (契約締

    結時をめぐる問題について、根保証における保証人の責任制限についての判例の努力は認められる)、次の二点

    から

    「消費者保証

    人」ともいわれる情義的保証人について保証人保護

    へと更に大きく修正することを、債権者の保証人

    に対する義務と

    (1)

    いう

    ら考

    いる

    。.出

    とし

    は次

    の二

    の段

    に分

    問題

    アプ

    ロー

    チす

    が可

    であ

    る。

    契約締結段階における保証人保護-

    説明義務など

    「契約自由の原則↓自由な意思に基づいて行

    った契約

    (

  • に拘束されるLということからは、次のようになるはずである。契約締結の意思決定に必要な資料などは自分で収集

    すべきであり、それを怠

    って自分の予期しなかった事情が存在しても、自分の落ち度であり自分がそのリスクを負担

    すべきであり、契約からの解放という形で相手方にリスクを転嫁できない、と。従

    って、この段階

    における保証人保

    (2)

    護には、この原則に対して例外を認めることになり、その根拠づけが必要になる。信託法理から発した契約当事者間

    q

    の信認関係に相手方の利益に対する特別の配慮義務を基づかせる議論があることは、英米法の研究者により紹介され

    (3)

    またわが国

    への導入が試みられている。しかし、保証契約を信認関係の法理で説明するのは無理であり、英米法でも

    (4)

    採用されていない。ここでは、保証契約自体の特殊性にその根拠を求めるしかなく、その具体的内容は以下に分析す

    るが、根本的な要素は次の点にあると思われる。

    無償契約の典型的パターンは当事者間の情義的関係に基づくものであり・給付霧

    を章

    の責任をなるべく軽減

    の儲

    するように配慮がされるべきであるが、ここでの保証契約の無償性には構造的にかなり特殊性があ

    る。即ち、無償契

    ネ確

    約とはいっても保証契約の当事者間に情義的関係があって、保証人が

    「債権者のために」保証契約をしているのでは

    ナ捌

    い。情義的関係が認められるのは保証を依頼する主債務者と保証人の間においてであり、その保証を通じて融資な

    に約

    の利益を受ける

    「主債務者のために」「債権者と」保証契約をしているのである。債権者億、主たる債務者との関係

    契証

    から義理人情で断るに断れない関係を利用して、他人11保証人に自分が負担すべきリスター1債権回収不能のリスクを

    転嫁してい・のであ・

    (実際の事例は多様で・蓋

    ハ型例・念頭に置・て・る)・また・保証人は自分の保証す皇

    者の

    債権者との取引によって

    「自分の利益を図ろうとしていない」のであり、また、主債務者や保証の対象たる取引につ

    いて正確な情報を有していないのが普通である。他方で、保証によって受ける保証人の不利益は、未必性があり特に

    5

    根保証では万が

    一の場合には保証人の生活史にその家族の生活まで破壊しかねないほどのリスクが潜在している。こ

  • の段階での債権者の保証人に対する義務は、説明義務、場合によっては警告義務や適合性の原則に基づく契約回避義

    6

    務にまで至るものであり、根保証契約に限らず特定保証にも妥当するものである。

    この段階の義務違反については、保証契約の効力の全部または

    一部の効力否定という形で、保証契約締結によって

    約に拘束されることを全部または

    一部否定するという保護が探られるべきである。この点につき、義務違反を理由

    としたリスク分配という観点から、錯誤法理を

    一般条項として拡大し活用することを本稿では考えている。

    保証契約締結後の義務

    保証契約締結後も債権者の保証人に可能な限り不利益を受けないように注意すべき

    は存続し・これは特定保証でも担保保存霧

    や適時に主霧

    者から回収すべき義務など特定保証においても問題

    には

    が、

    根保

    いて問

    であ

    る。

    保証

    いて

    は、

    保証

    に転

    スク

    くら

    いに

    は、

    債権

    の行

    にか

    があ

    るか

    であ

    る。

    務者

    の信

    ら、

    スクを

    転嫁

    ばよ

    いか

    と何

    切な

    たな

    いと

    った

    こと

    は許

    いし

    (.連帯」と

    いう

    文字を加えて、連帯

    保証

    にする

    ことにより免れるべきも

    のではな

    い)、

    た、

    に主

    の状

    るな

    の義

    を負

    て、

    法[

    人に保証人としてのリスクを常に意識させて自分の利益を自ら擁護できるさ

    つにし、それを怠

    ったならば寝

    責任と

    することができるようにする必要がある。

    ここでの義務違反は、契約締結段階における毅疵を理由に自分の締結した契約の拘束力の解放と

    いうよりは、過失

    相殺にも似た公平の観点から債権者の保証人に対して請求しうる額の減額、保証人から

    いうと責任

    の減額ということ

    を考えている。

    注(1)

    ちろん情義的保証

    の有用性を全く否定す

    るも

    のではな

    い。担保に供す

    る財産もなく、また、保証料や保証保険料を支払

  • う余裕

    のな

    い者も、知人らに保証人にな

    ってもらう

    ことにより継続的取引を受けることができる

    ことにな

    って

    いる。

    (2)

    消費者契約におけ

    る情報提供義務

    の問題については、横山美夏

    「契約締結過程における情報提供義

    務」

    ュリ

    スト

    一〇九

    四号

    (平八)

    一一〇頁以下参

    照。

    (3)

    三枝健治

    「アメリカ契約法

    における開示義務

    (一)

    (二

    ・完)」早稲

    田法学七

    二巻二号

    (平九)

    一頁以下、三号

    (平九)ハ

    頁以下参照。

    (4)

    木村仁

    「保証契約締結における保証人

    の保護と不当威圧の法理

    (一)

    (二

    ・完)」民商

    一一四巻二号二五五頁、三号四五四頁

    ユ翻

    (平八)、同

    「イギリ

    スにおける保証契約締結時

    の債権者

    の義務」近大法学四五巻二号

    (平

    一〇)

    =

    一頁、同

    「カナダ

    におけ

    る保証契約締結時の保証人

    の保護」近大法学四六巻

    一号

    (平

    一〇)

    二九頁参照。

    秘闘

    ω

    情義的保証に諄

    ・保証人保護の必要性

    人証

    情義的保証に共通の要因

    先ず、根保証

    ・特定保証に共通の、情義的保証人保護を根拠づける要素について

    T)

    確認をしておこ、先

    但し、以下に示すのは典型例に過ぎず、実際の事例は多様であり、後述の典型的な例外からその

    中間まで様々なものが考えられる。

    掛け

    主債務者

    ・保証人間の情義的関係を基礎にしていること

    商取引であれば、契約をするのは

    「自由な自己決

    おに

    定」そして

    「自己責任」ということが原則である。契約をするか否かの意思決定のために必要な情報

    は自己責任で収集

    約躾

    し、それを怠り募

    の予期しない結果となったとしても、詐欺や強迫とい・た事情がない限り自己責任として契約の拘

    東力を免れないのが原則である

    (錯誤の位置づけにつ・ては後述する).と・ろ炉

    保証契約簗

    かに債警

    ど憲

    一つ

    「取

    引」な

    いし、

    「取

    に付随

    いえ

    かも

    れな

    が、保

    にと

    って

    「単

    る慈

    の実

    った性

    の行為

    にす

    いと

    いう

    頗性

    があ

    る。

    こに、

    「取

    った

    双方

    を適

    用す

    こと

    は違

    7

    (双務契約

    では、契約リ

    スクは相互的である)。ま

    、情

    的保

    では

    、必ず

    務者

    から保

    保証

    にな

    こと

    11

  • 債権者と保証契約をしてもらうことが依頼されるのであり、これは

    「取引」とは異質な無償契約と

    いう特殊性を有し

    8

    ている。

    このような情義的関係に基づいて保証人側としては、社会生活上の相互の助けA口いの精神

    に基づいたいわば

    慈善行為として保証契約が締結されるのである。保証契約は主債務者と保証人との情義的関係と密接に結びついてお

    り、しかも、このことを債権者も認識しているのである。但し、主債務者と保証人との関係にも種

    々のものが考えら

    れ、それが債権者

    ・保証人の関係にどのような形で反映されるのかも、本稿では考えていきたい。この根拠からは、特

    に保証契約締結段階における、債権者

    の保証人に対する調査

    ・説明義務、また保証意思の確認義務などが導かれよう。

    債権回収不能のリスクを第三者に転嫁するものであること

    また・確かに霧

    者の提供した物的担保であれ

    ば、債務者に問題があ

    っても担保に期待して取引をすることは何ら責められることではないであろう

    (これにより不利

    益を受けるのは、他の債権者であり、ここでは原則として自由競争の原理に基づく勤勉な債権者論が妥当しよう)。しかし、債権者

    が本来自分の負担すべきリスクを、主債務者との情義的関係からやむを得ず

    「無償で11いわば慈善

    行為として」保証

    人にな

    っている第三者に転嫁するという

    のは、ま

    っとうな方法とはいえまい。義理人情でやむを得ず断れない関係に

    法}

    る・とを利用して、主債務者と情義的関係にある第三者に責任を転嫁するとい・つのは公序良俗に違反するとまでい

    わな

    いまでも、社会的に問題ある行為である。義理人情から社会生活は助け合

    いが大切だとはいえても、それによ

    て債権者の行為の問題性が解消されるわけではない。確かに、主債務者が会社でその経営者や親会社が保証をするの

    は自分の利益のためであり、また、そのような関係がなくても、銀行などが主債務者との保証委託契約において有償

    で保証料をと

    って合理的計算の下に保証を行うのであれば、担保として債権者の保護を図るだけでよいであろう。

    の根拠からは、保証契約成立後の債権回収にかかわる問題が規律され、根保証人に対する債権者の主債務者の状況変

    の通知義務、相当期間経過後に追加融資や取引を継続することなどについての保証人の保証意思

    の確認義務、主債

  • 務者からの回収に努力する義務などが導かれる。

    消費者契約という観点から

    後述するように、道垣内教授は、保証契約の締結に際する金

    融機関の保証人に

    対する説明義務を問題にするが、そこで示された両当事者の専門知識の量が大きく隔たるということ、約款による契

    という・と、リスクヘッ・の契約という・とも挙げておいてよいであろ、つ.

    q

    このような情義的保証という非近代的な担保方式は、可能であれば保険や法人による合理的な保証にと

    って代わら

    れるべきであるが・現在のところは依然として裏

    的保証はなくな

    ・てはいない

    (保証人の破産・え・れでは富

    社会問

    る滑

    題とさ・な・ている).情義的な保証人保護のために保証法理を更に修正をして、債権者と保証人との利益を調整する必

    要がある。その調整手段として有用な概念として、本稿では債権者の保証人に対する義務というも

    のを想定し、保証

    の主債務者との関係など種々の事情を総合的に判断して、その霧

    違反に基ぞ

    保証人保護を提案しよ・・とするも

    の者

    のである。

    権韻

    ω

    「根保証」における保証人保護の特別の必要性

    更に、根保証の場合には、保証人保護

    への針を更に傾ける

    要素として、次のような事情が加わることになる。

    こ紺

    過酷性

    根保証の場合には、特に包括根保証の場合には保証期間も保証額も定められていないいわゆる包括

    契証

    根保証にあてはまることであるが、保証人にとり

    「あまりにも責任が過酷」である。限定根保証においても、既に成

    立してい・債権では芝

    発生す・かもしれない債権についてであ・ため、そ琴

    な巨額の債権を現実に保証す・

    いう

    のであれば躊躇するところを、限度額が定ま

    っているとはいえ現在ではそのような額の債権

    が存在していない

    ので・責任を取らさ砦

    ことはな

    いと軽率に応じてしまう可能性があ覧

    特定保証よりも保護する必要性がある・と

    9

    は否

    でき

    い。

  • o

    、王債務者の管理

    .情報取得の期待可能性がないこと

    また、保証人にとって主債務者の経営は自分の責任が

    かかっている重大な問題であるが、①

    「主債務者の経営につき保証人は影響を及ぼしえない」、また、②

    「主債務者の

    経営状況についての情報を得られない、契約後に保証をしたことなど多忙な日常生活の中では忘れがちでさえある」、

    いった点を指摘できる。そのため、主債務者が事業に失敗したのは保証人の自己責任ではなく、

    これは、会社の債

    について保証をした経営者や親会社などの場合と典型的に異な

    っている。

    このような状況にある情義的保証人としては、消費者ともいわれる社会的弱者である保証人に主債務者との情義的

    関係を利用し一

    ・を転嫁し一

    債磐

    には、そ安

    ・漿

    認められ・ためには

    ・信義則上保証人に対

    して可能な限りその利益を守るための義務」を負担させ、この義務を中心として保証人の責任制限法理を構築しよ

    いうのが本稿の目的である。この義務の具体化、そしてその違反に対する保証人保護の法的構成をどの

    ようにする

    かが検討されなければならない。

    (-)

    保証人保護の必要性・

    つ・て詳セ

    は、西村信雄

    ・継続的保証

    の研究』

    (昭二七二

    頁以下・

    (2)

    根保証に限定されな

    いが、長尾教授は、消費者たる保証人の保証意思は、主債務者が与信を受け

    るに

    ついて

    「立会人

    」とし

    て署名する程度

    の認識しかな

    いのであり、

    これを意思表示解釈の名

    の下に、

    これを

    「他人の借金を自分が肩

    がわりをす

    る地

    におかれ

    ることがあること」まで理解していると

    の意味を与える

    ことが、果たし

    て消費者契約

    の正し

    い解釈

    であろう

    かと、

    消費者契約

    の契約解釈の特殊な取り扱

    いを提案し

    ている

    (長尾治助

    「ク

    レジット債務保証人

    の法的保護」同線

    『レンダー

    ・ラ

    イアビリティ』

    (平八)三二

    一一三二二頁)。消費者契約の解釈

    の問題

    であると共に、消費者

    の意識がそう

    であるとすれば、債

    権者側

    の説明義務

    によ

    って矯正す

    ることが必要

    になる。

  • 保証人保護の要請が妥当しない場合

    (「保証主体の多様化」ということからは、根保証につき次のような保証人については特別の保護

    の必要性がないも

    のと考えられる。但し、それ以外にも保護を全く否定しないが、単なる情義的保証人同様の保護ま

    では不要と思われ

    るような多様な中間的事象

    考えられる,・と、既に述べた通りである.

    ω

    個人会社の総営者による保証

    個人事業者が事業を法人化したため、経営者個人の財産

    と会社の財産とが

    分離され・有限責任により誉

    者個人の責任が制限される場合に、金融機関が誉

    者に会社の霧

    につき包括根保証

    る耐

    をさせるのは並・通である.・れは、法人格否認と実質的に同じ結論を実現するための、金融機関

    の畠

    的謹

    である.

    こで

    は、

    の点

    から

    情義

    は異

    る扱

    いが必

    (フラ

    ツスでは多くの論文があるが、わが国では殆

    ど議論

    がな

    い)・

    自己責任

    この場倉

    は・会社と誉

    者との

    ・情義的関係に基づいて保証がされるわけではな5

    、保証人と

    権礪

    レて誉

    者が責任を取らされてもそれは

    、経営についての自己責任・を実質的に意味する・・とになる.

    情報を把握

    自ら主債務者たる会社を経営しているのであり、主債務者についての情報を債権者より獲得す

    ご細

    るといった必要性はなく、債権者の保証人に対する説明義務といったことは問題にならない。

    契証

    利益を受ける

    また、主債務者と債権者との取引は要するに

    「自分の経営する会社のため」11

    「自分の利益

    のため」であ急

    人のための慈善的な行為では多

    い・・利益の帰す・所に堤

    も帰すを

    い・た原則が当ては

    まるところである

    (法人格否認までされないとしても)。この自分の利益という点である程度近い事例として、主債務者の

    取引先が保証人になるといったように

    (主債務者が支入れる資金の融資を受け取引ができれば、供給をする取引先は

    ユー

    利益を受ける)、臥分σ朴益かわを程度考慮レ℃…むような場合があり、情義的保証との中間的類型とでもいえよう。

  • 2

    以上のような事情から、経営者保証人には責任を全面的に負担させても酷ではなく、根保証人の特別の保護は必要

    1

    ではな

    い。実質個人企業の場合には、法人格否認までしないとしても、主債務と保証債務を

    一体化した扱

    いが取られ

    てもよいほどである。これに対して、経営者といっても、名前だけの場合もあり、実質的な経営者以外をどうするか

    は問題として残される

    (中間的な解決が考えられる)。.なお、経営者ではないが、会社の内部にあり経営に関与している

    どして会社の経営状態について十分な情報を有しているものについては、情報の欠如という観点からの特別の保護

    は必要ではないことになる。単なる情義的保証人同様の保護は否定されるとしても、経営者保証人と同じ程度

    の責任

    を認めるわけにはいかな鹿

    )㊥

    親会社などグループ企業による保証

    また、保証人保護の必要性がない別の類型として、親会社やグ

    ループ

    企業が保証人となる場合が考えられる。この場合には、子会社の経営に影響を及ぼし

    うるのであり、ある程度主債務

    者が倒産する点については自己責任といった側面が妥当する。そして、関連企業であり、主債務者

    についての情報は

    債権者以上に把握しており、債権者の説明義務などとも無縁である。更には、支援している会社がその融資や取引を

    法「

    受けられ収益をあげる・とは、保証をする関連会社や親会社の利益にもつながっている.以上のように、讐

    のよ

    一体化し主債務者と実質的に等しいという状況にまではないが、親会社などの保証の場合にはそれに準ずる関係

    が認められることになる。

     色

    有償保証人

    有償で保証料をとって銀行や信用保証協会が保証する場合には、合理的計算

    の上にそうして

    いるのであろうから、根保証人保護の要請を強調する必要はそれほどないとわれてい冤

    確かに・主債務者の取引自

    体が自分に利益になるというのではなく、以上二つとは異なり保証

    「取引」自体により利益を得ようというものであ

    り、取引の

    一般原則に律することを認めても酷ではあるまい。但し、有償保証といっても、信用保証協会といった公

  • 的保証については、民間の保証料を徴収して保証をすることを業とする事業者と同列には論じ得な

    いし、また、債権

    者たる銀行の設立した保証会社などは債権者との関係からいって更に特別の規律がされてよい。

    (-)

    平右

    ・喜久夫

    木多喜男

    ・纏

    総論

    (第三版三

    平八)四さ

    一塁

    高木).

    D

    (2)

    松本恒雄

    「根保証の内容と効力」『担保法大系第

    5巻」(昭五九)二四八頁は、会社の従業員で経理担当者が会社

    の債務を包

    括根保証

    した事例をめぐる大阪地判昭四九

    ・二

    ・一下民集二五巻八

    一頁を引用して、保証人保護をはかるべき

    であるとする。

    (3)

    松李

    前掲論文二四八先

    耐雄鷹

    根保証人保護の法的構成総論

    学説の状況

    勧権債

    1

    根保証人保護法理をめぐる問題点

    脆訪細

    ところで、判例上最も多く蓄積のあるのは、根保証人の責任制限であるといってよい。そこでは、情義的関係に基づ

    契証

    く根保証人の保護が必要であることは異論がないとしても、その保護の法的構成をどうするか、また、その保護を受

    け・ための基準を享

    ・か蓋

    で箋

    判例による事例毎の具体的肇

    ねを・・ー

    バ・クして

    基準を

    明確化する必要があり、どのような武器を用いて保証人の保護を図るか基本的スタンスを考えておく必要がある。そ

    こで、どのような法的武器により根保証人の保護にアプ

    ローチをするか、ここで総論的な確認をしておきたい。先ず、

    ヨー

    根保証人保護の法的構成については、次の二つの観点から問題を考察することができる。

  •  

    4

    既存の法理または民法規定をとこまで活用できるか

    先ず、詐欺

    ・強迫更には錯誤、また場合によ

    っては契

    1

    の不成立や契約解釈により、契約締結時における問題についてはある程度の解決ができる。これら既存の法理や民

    法規定更には消費者契約法の規定が保証人保護にどこまで活用できるか、その妥当領域を振り分ける基準はどうする

    かといったことを考える必要がある。私見では、錯誤法理の中に相手方の義務違反という要素を取り込むことを考え

    ており、債権者の義務を錯誤法理に取り込んで活用することが考えられる。

     ㊥

    既存の法理

    .規定を超えた根保証人の責任制限

    次に、既存の法理や民法規定によっては規律するのが限界

    と思われる問題領域として・根保証雰

    責任を滋

    に藩

    問題がある・これまで・判例により根保

    人の責任を

    一定限度に限界づけることが努力され、その際に種々の要素が考慮され借地借家法の

    「正当事由」に頚

    した様相を呈している。その要素としては、契約締結に際しての事情のみならず、契約締結後の事情も大き

    く考慮

    されるため、根保証において専ら問題になるが、担保保存義務や主債務者から可能な限り回収すべき義務

    (連帯保証と

    することによって免れ得ない)を認めるなど、特定保証においても問題にならないというわけではない。以下では総論的

    法一

    にご.・での解決の方法論また指針について眺めてお.・、先

    根保証人の責任制限についていえば、これまでにいく

    つかの法的構成が考えられている。根保証人

    の責任の制限は、

    (2)

    被担保債権

    の範囲を限定する質的制限と、その責任の額を制限するという量的制限が考えられるが、そのための法的

    武器ないし手段として、これまで考えられているものは次のようである。

    根保証契約の解釈による被保証債務の範囲の制限

    身元保証法五条の類推適用による制限

    信義則による制限

  • 債権者に保証人に対する義務を認めることによる制限

    契約という当事者の自治法規を解釈によ

    って制限するか、そうではなく、客観的規範によって制限するかが、まず①

    とそれ以外の大きな分かれ目である。そして、後者につき、特定の条文を根拠に求めるか、

    一般規定

    によるかで②と③

    に分かれて、更に規範適用のための実質的根拠を求めようとするのが④と分析することができる。従

    って、これらの

    q

    限の関係については、どれか

    一つの法理によ

    って統

    一的にすべての責任制限を説明すべき選択的関係ではない。契

    務義

    約解釈と規範適用という二つの武器の使

    い分けと、規範適用の

    「規範」をどこに求め、そしてその規範を適用する実

    る耐

    に求

    るか

    、「と

    。た段

    が必

    であ

    る.

    私見

    とし

    は、

    .規

    いては

    信喬

    い・フ

    一般

    こ痴

    項によらざるを得ず、その実質的根拠が重要な判断になるが、この点につき債権者自身に債権回収についての帰責性、

    証人の利益保護についての必要性を忠

    的根拠とし

    (保証人自身の帰資性も考慮し・債奪

    の義務違反ですべてを律し考

    の者

    というものではない)、その帰資性の根拠として債権者の

    「保証人の責任を可能な限り軽減する義務」

    (本稿では保証人保

    権礁

    務と略称す

    る・ともある)

    いと考

    いる

    .

    ナ捌

    お、

    の法

    民法

    によ

    って

    、根

    の責

    現す

    でき

    は、

    によ

    る解

    に約

    用す

    べき

    であ

    こと

    いう

    でも

    い。

    る担

    べき債

    の限

    や錯

    誤を

    一部

    (3V

    は取

    った方

    は、

    に活

    用さ

    べき

    であ

    (後述する)。

    注(1)

    消費者契約法

    二条

    一項

    「消費者」の定義そし

    て同三項

    「消費者契

    約」の定義からして、個人が保証人となる保証契約に

    消費者契約法が適用されることは疑

    いな

    い。消費者契約法

    の規定で保証契約に適用できるものをあげると、

    四条

    二項

    の重要

    15

    事項を故意

    に告げなか

    ったことにより、消費者

    が当該事実

    が存在しないと誤認した場合

    の消費者取消権、保証契約書

    の条項

    につき、

    一〇条

    の信義則

    に反する条項と

    いう約款規制とが考えられる。しかし、本稿

    で述

    べる保証人保護の全

    ての問題を消

  • 費者契約

    という

    一般法

    で規律するのには限界があり、特に債権者

    の根保証契約継続中

    の義務に対応する義

    務に

    ついては、契

     1

    .

    約締結

    過程

    の規律や不当条項規制

    から

    はもれてしまう規制

    である。将来

    は、相続性などの問題も含め

    て、保証人保護

    につい

    ての特別立法がされるべきであ

    ろう。

    (2)

    なお、法的構成の問題

    ではな

    いが、大西武士

    「包括保証

    の管

    理」手形研究四

    一三号

    (昭六三)四頁以下は、①被保証債務

    種類による制限、②取引期間による制限、③取引金額

    による制限とにわけ、③を、

    a信義則による制限、b身元保証法

    の類推

    適用によ

    る制限、

    c当事者

    の意思解釈による制限、d主債務者と保証人と

    の関係

    による制限と

    に分けて

    いる。

    (3)

    近時、

    一部取消に

    ついての注目する論稿が公

    にされている

    (道垣内弘人

    「一部

    の追認

    ・一部の取消」「日本民法学の形成と

    課題上』

    (平入)二九三頁以下)

    叢論

    2

    根保証契約の合理的意思解釈

    先ず、保証債務を発生させるとの自治規範である保証契約の解釈により、保証の対象となる債務

    につき合理的な制

    限を設けることが考えられる。後述の伊藤教授もこの方法の必要性を強調するが、他にも古く後述大判大

    一五年

    一二

    二日民集五巻七六九頁の評釈で、末弘教授は意思表示解釈による解決に賛成している。判決は当座貸越契約の根保

    につき、極度超過の貸越がされた場合に、その極度を超える部分の債務については責任がないとしたものであるが、

    (1)

    次のように述べる。「意思表示は

    一般の慣習に従

    って解釈せられるべきものなることは民法自らも之を規定して居る

    (九二条)。従

    って若しも銀行が超過貸付をするにしても濫に放漫な貸出をしないことが取引普通の事例であるならば、

    本件に於けるが如く約定限度の約三〇倍に当る超過貸付に対してまで当該保証人にその責任ありと解するのは意思解

    一般の法則に反するものと言はねばならないコ其意味に於て私は本判決の意思解釈を以てこの場合妥当であると信

  • であ

    るL。

    し、意

    示解

    によ

    は、黙

    示的

    でも意

    「表示

    され

    いる

    こと

    が前

    であ

    り、表

    いな

    示的

    に表

    いるも

    のと

    とは

    擬制

    にす

    い。

    習法

    とし

    て慣

    用す

    いう

    のな

    であ

    が、「慣

    いう

    示」

    があ

    いう

    のも

    同様

    であ

    る。

    かも

    こで

    は契

    約上

    の義

    「補充

    q

    った

    では

    く、契

    で明確

    に表

    され

    内容

    「制

    限」す

    であ

    から

    、裁判

    によ

    る契

    内容

    の修

    務養

    いし

    匹敵

    こと

    る。

    これ

    、意

    る大

    であ

    が、

    「不

    明瞭

    鵬総嫁護黙避擁蕨地織無雑編鞍籠條饗

    貿齢鞍縮糊繍籔

    ているのではないかという疑問を述べておくに止めよ捻

    なお・この方法は特定保証についても妥当するものであ蒐

    .

    (-)

    末弘厳太郎

    ・判批L『判例

    民事法大正

    一五年度』五四葦

    なお、小杉薙

    ・保証債蔑

    ・関す

    一叢

    L阪大法学

    =

    二号六二頁。

    おに

    (2)

    例えば、根保証において担保

    される債権

    「量的」範囲

    の制限

    ではなく、「質的」範囲

    の制限に

    ついては、契約解釈による

    ・・は許され・であろ九

    (3)

    意思表示解釈

    の問題に

    ついては、沖野眞巳

    「契

    約の解釈に関す

    一考察

    (一)

    (三)」法協

    一〇九巻

    二号二四五頁以下、

    四号四九五頁以下、八号

    一二六五頁以下及びその引用文献

    に譲る。

    (4)

    後述

    のよう

    に、抵当権が設定されるという

    ので保証人

    にな

    ったといった場合

    に、抵当権

    の設定を保証契約

    の停止条件

    とす

    るとい

    ったよう

    に、保証契約

    の解釈によ

    って解決す

    る判例

    がある。

    17

  • 18

    3

    」身元保証法五条の類推適用

    ω

    西村博士の提案

    そのため、意思表示解釈以外に根保証人の責任制限のための根拠を求める必要がある。「規

    範」適用による制限としては、あるべき実定法のな

    い法の欠鉄状態であるので、何らかの手がかり

    になる法律規定の

    類推適用によることが考えられる。しかし、民法には手ごろな具体的規定はなく、これまで考えられているのは身元

    保証法五条の類推適用である。西村教授がその提案者であり、昭和四〇年に発行された注釈民法の保証の部分で次の

    (1)

    ような主張をしている。

    「身元保証法は継続的保証の全般の指導法則とみるべきであるから、身元保証以外

    の継続的保証責任の限度を判定

    するに当

    っても、同法五条を類推して、たとい無限的責任の文言があ

    っても、適当な限度に抑えるべきである」。身元

    保証法施行前の判例が、「意思解釈」によったのは仕方ないが、施行後の判例が身元保証法五条の類推適用を考えな

    法一

    ったのは遺憾である、と.

    注(1)

    西村信雄編

    『注釈民法

    (11ご

    (昭四〇)

    一六三頁。身

    元保証法五条自体に

    ついて詳しくは、西村信雄

    『身元保証

    二関

    スル法

    律』

    (昭四八)

    一四五頁以下参照。賛成する学説として、松村俊夫

    「信用金庫取引契約においての新基本約定書差入れ

    の効力

    等」金法六九二号

    (昭四八)

    一六頁。判例

    としては、大阪地判昭五〇年七月

    一五

    日下民集

    二六巻五~八合併号六三二頁がある

    (後述)。

    一般論

    として身元保証法五条

    の類推適用を肯定しながら、事例としては責任

    の制限をしなか

    ったも

    のとして、福岡

    地判昭四五年

    一一月二五日判時六三三号人入頁、東京地判昭五三年二月二七

    日判タ三六九号二四九頁

    がある。

  • ω

    これに対する評価

    消極的評価

    これに対して、伊藤進教授は、身元保証法五条の類推適用では、「責任の額が制限できても、

    (

    保証債務自体の額を減縮できないのであれば、それは、十分に機能し得ない理論といわざるをえな

    い」。「この意味で

    (1

    )

    }

    は、身元保証法五条は、さきの合理的責任制限のための判断基準として参考に用いるに止めるべきであろう」という。

    U

    根保証において、保証人の責任を制限すべき事由としては多様なものが考えられ、身元保証法五条ですべてを網羅し

    務養

    るか疑問であり、また、「身元保証」法という特別法の性格からして、

    一般法の規律の下にある根保証に類推適用す

    る滑

    るという

    ことに抵抗感がないわけではない。そこで、やはり他によりよ

    い解決方法があれば、そちらによるべきであ

    ると思われる。このように身元保証法の規定を包括根保証人の責任鮒限のための参考として用いるにすぎないとして

    も・そこには有用な参考資料が含まれている,・とは否定できない・

    の者

    賛成学説

    これに対して、大西教授は、身元保証法を包括根保証に類推適用するにあた

    って基準となるべ

    (

    き事項を次のよう

    に指摘しており、基本的には身元保証法五条

    の類推適用に際して注意すべき事項

    の提示として非常

    (2)

    に参考になる。

    に約

    取引期間については、三年

    (同法一条)ないし五年

    (同法二条)が

    一応の基準となる。

    契証

    被用者の適性、業務等に関する通知義務

    (同法三条)については、主債務者の資力、信用や営業状態、融資額の

    変動等に関す・通知書

    へ藩

    用・鷲

    被用者の監督に関する使用者

    の過失の有無

    (同法五条)は、銀行取引において主債務者の信用状態の把握に関す

    る銀行の過失の有無、債権保全についての銀行の過失の有無に類推適用される。

    19

    身元保証人が身元保証をなすに至りたる事由

    (同法五条)は、主債務者と保証人の関係、保証することによって

  • 20

    保証人が得る利益の有無に類推適用される。

    身元保証人が保証をなすに当り用いた注意の程度

    (同法五条)は、保証人の責任の認識度、保証債務の未必性と

    保証人の軽率性の程度に類推適用される。

    ⑥被用者の任務または身上の変化

    (同法五条)は、銀行取引の種類、形態

    (担保、保証、期間など)、金額の増減、主債

    務者の営業状況

    ・信用状態の変化に類推適用される。

    その他

    一切の事情

    (同法五条)は、銀行が取引上知りえた取引先の秘密等に類推適用される。

    [

    .。,(1)

    『保

    ・人

    担保

    (平

    八)

    二六

    頁。

    (2

    )

    西

    『金

    究』

    (平

    一一)

    五七

    一頁

    下。

    律法

    4

    信義則による制限

    更に、身元保証法五条という具体的規定の類推適用も法解釈論としては難しいとなると、詐欺、強迫、錯誤という民

    に規定のある法理による解決ができない根保証人の責任制限の問題について、最後に残されるのは条理による制限

    または信義則による制限ということになる。最終的には条文の根拠としてはこのような信義則といった

    一般条項によ

    るしかないと思われる

    (この場合の信義則の機能については、後述の内田教授の説明も参照)。信義則によ

    ることが法解釈論

    として可能であるとすれば、問題はその制限の基準作りである。この点では、先の身元保証法五条類推適用説の主張

    の中身には有用な材料が含まれており、ここにその成果を活かすことが可能である。本稿はこの立場からのアプ

    ロー

  • によ

    債権

    の保

    の義

    問題

    にし

    て、

    の違

    いう

    ンク

    ッシ

    ョン介

    いう

    こと

    いる。

    って

    、前

    にも

    たよう

    に、

    の信義

    によ

    ると

    いう

    こと

    と、

    に述

    べる

    債権

    の義

    にす

    いう

    とは

    択的

    はな

    く、

    一方

    は条

    によ

    る判

    の根

    けを

    こと

    、他

    の実質的根拠の提供という・とで、車の両輪の雪

    にいずれも不可欠の蒙

    とい…

    とができホ

    q

    但し、保証人の責任制限の要素は、債権者の保証人に対する義務違反のみを根拠とするのではなく、契約締結時の

    務義

    事情その後の事情変更などを総合的に判断をして根保証人側の保護すべき事情を考えなければならな

    い。その総合判

    る謂

    断の飽くまでも忠

    的要素として、債薯

    に裏

    則上その考

    な根保証殆

    信頼に反しない霧

    を勃霧

    その違反を

    理由として根保証人の責任制限を根拠づけることを考えているにすぎな

    い。

    証礁

    (-)

    なお、保証に

    つ・ても消薯

    ・呼・でも過

    言.ではな文

    近代社ムムのA・理的な

    シスーアムであ・契約馨

    ・は馴染み皆

    い存在

    であることから、契約自由

    の名

    の下に何も規制をしな

    いで放置してよ

    いかは疑問がもたれ、金融機関ならびに消費者

    信用業者等に対して、全国

    ・ク

    レジット

    ・サラ金問題対策協議会

    は、次

    のことの遵守を求めている

    ことが参考になる

    (木村達

    「保証契約は現状

    でよ

    いか」民事法情報九八号

    (平六)三頁)。

    に約

    債権者

    は主

    たる契

    約書

    とは別に、保証契約書を作成し、保証人

    に直接契約書を交付す

    ること。保証

    人の署名は必ず保

    証人・自署させ・ミ

    保証契約書には、債権者名、主債務者名、主債務者

    と保証人との関係、保証内容、保証期間

    保証契約解除

    の条件、方

    法などを

    明記す

    ること。

    債権者

    は保証契

    約を締結するに際し、保証人がその契約

    の保証適格を有するかどうか調査する

    こと。

    根保証契約

    の場合には、期間は二年を限度とし、保証限度額を明記すること。

    1

    債権者

    は、保証人に対し、定期的

    に主債務者

    の返済能力、返済状況などを報告する

    こと。

    2

  • 22

    5

    債権者の保証人保護義務による制限

    ω

    西村博士の提案

    西村博士は、抽象的かつ包括的な義務として、債権者に

    「保証人の負担をなるべく重から

    しめないように注意すべき義務」を認めており、本稿としては注目される学説の提示がされている。そして、以下の

    (1

    )

    ような民法及び身元保証法の規定はこの義務の現れであるという。

    [

    主債務者に対し適時に壁

    ・または執行をすべき霧

    (・五五条)

    担保保全の義務

    (五〇四条)

    保証人に対する通知義務

    (身元保証法三条)

    被保証人を監督す

    べき義務

    (身元保証法五条)

    更には、先

    の一般的義務から、以上に規定されている以外の個別的義務を導き出すことができると考え、次のよう

    法一

    に述べる.

    「各人が自分自身の利益を保全するために注意を払うと否とは原則としてその自由である。不注意のために自ら不

    利益をこうむったとしてもそれはいわゆる

    『自業自得』にすぎず、法律上の義務違反ではない、とされている。しか

    し、注意を欠いたがために

    『自業自得』の限界を越えて累を他人に及ぼす場合には、自己の利益の保全についても法律

    の注意義務がある。過失相殺における過失は……、自己の利益の保全に関する不注意が必然に累を他人に及ぼす結

    果を伴う場合には、それは取りも直さず

    『他人に対する過失』(…)であり、法上の注意義務に対す

    る違反にほかなら

    い。民法第四

    」八条は、債権者が

    一般に債務者に対して右の如き注意義務を負うていることを前提とするものであ

  • (2V

    る」。このように債権者は

    一般に債務者に対してある種の注意義務を負うのであるが、保証人に対し

    ては、①利他性、

    ②保証人の責任は全財産を対象とすること、③無償性、④情義性、及び、⑤未必性ゆえに、普通の債務者に比していっ

    そう高度の注意義務を負うのであり、「保証人が債権者に対して注意義務を負うていると同時に、債権者においても保

    証人の現実的負担を軽からしめる考

    に能

    つ限り大なる注意を警

    があ箪

    D一

    て、

    これ

    保証

    いて更

    に次

    のよう

    に強

    調

    る。

    務礒

    ・かあ

    如く債権者はひを

    保証

    一般を通じて保証人に対する注意義務を魯

    ものと解されるのであるが、とりわ

    け継続的保証にあ

    ・ては、保証責任はその対象においても数額においても又その存続期間においても広汎な範囲に及

    こ却

    ぷのであり、しかも現実には果たしてどれだけの責任を負担しなければならぬか予め測定しがたいのだから、債権者

    証保

    としては

    一時的保証に比して、

    一層高度の、且

    つ複雑な注意義務を負担するものと解さねばならぬ」。根保証の広汎性、

    未必性の度合が高等

    あればあ・ほく

    債権者の注意霧

    も高度のものたらざ・を得な覧

    これらをまとめて、最後に

    「わがくに現行法の解釈として、債権者は保証人に対して

    一般的に注意義務を負担する

    ナ捌

    のと解すべきであ」る。「したがって、注意義務の具体的内容は、前掲諸法条に規定されたものに限局されるもので

    (5)

    はなく、個々の場A口の具体的諸事情に応じて多様な展開を示す可能性をも

    つものといわねばならぬ」という。

    証↓

    (主1)

    西村舞

    『継続的保証の研究』(昭一毛

    二耳

    (2

    )

    西村

    ・前

    掲書

    一入

    ~九

    (3

    )

    西村

    ・前

    掲書

    二二

    頁。

    3

    (4)

    西村

    ・前

    掲書

    二二

    頁。

    2

    (5)

    西村

    ・前

    掲書

    二〇

    ~二

    一頁

  • 24

    ω

    これに対する評価

    このような債権者の保証人に対する義務という観点からのアプ

    ローチ

    につき、学説は慎

    重な立場とこれを高く評価する立場とに別れる。

     値

    慎重な立場

    先ず、慎重な立場ないし批判的な評価をする学説として、伊藤進教授は先

    の西村博士の提案

    に対して次のように批判をする。

    確かに債権者は保証人に対して普通の債務者に比して債務者に不利益を及ぼさないいっそう高度

    の注意義務のある

    ことは否定できないが、「ただ、それだからといって、免責や損害賠償を認めて保証人を保護するための一般法理とし

    て承認されるかど かは別問題で・ただちには・結びつか三

    であろ先

    それは基

    本的には・裏

    則に馨

    く法理

    であるといえるが、免責や損害賠償の効果を直接導き出すには、より積極的な保証人の保護が害されたという特別の

    事情が利益の喪失状況の存在が前提にならなければならな

    いのではなかろうか」。「ただ、

    このような

    『保証人の負担

    をなるべく重からしめないように注意する義務』は、債権者の保証人に対する信義則の根底にあり、保証債務では特

    に強調されなければならないわけで、かかる注意義務の解怠から保証人は保護されなければならな

    いとの考えまで否

    法一

    定するものではない。そして、このような場合における保護は、合理的責任制限の理論によって行うのが妥当ではな

    (1

    いだろうか」。

    おそらく最終的には、このような義務を信義則による制限の中心にすえる私見とそう変わるものとは思われないが、

    「一般法理」として債権者の保証人に対する義務を問題にすることを否定し、信義則による

    「合理的責任制限の理論」

    によるべきであるというものである。

     ㊥

    好意的学説

    内田教授は、

    マク

    ニールの関係的契約理論を日本に適用して、わが国におけ

    る関係的契約法

    としての内在的契約規範を実定契約法にこれを吸

    い上げるパイプとして

    一般条項そしてその代表として

    「信義則」を

  • 位置づけ殖

    そして・この意味での裏

    則を・特{疋の内容をも

    つ法原理と結びついたものでもなけ

    れば、髪

    る当事

    の意

    の補

    「実

    の中

    に異

    の規

    一種

    パイ

    理解

    べき」

    て、わ

    が国

    は信義

    がし

    ば活

    用さ

    のは、

    パイ

    の需

    だけ

    いと

    いう

    こと

    であ

    ろう

    いう

    (二三〇

    頁)・その上で・契約規範の相克が信喬

    を軸として磐

    典型的に現れる局面の

    ;

    として継続的保証を取り上げゑ

    q

    身元保証法の制定過程におけるその必要性の指摘につき

    「外在的規範としての民法に対するわが国固有の内在的規範」

    務礒

    の現れであり、この

    「内在的規範は、個々の契約関係の中にあり、予めルールとして明確化するには適さず、柔軟に

    その規範を発見」

    ・る非訟的手続を用意してお一・とが望ましいという、まさに関係的契約の特質の指摘なのである・

    に人

    いう

    (二三四一二三五頁)。

    証保

    更に、継続的保証

    一般について、解釈論として、債権者に保証人に対する特別の注意義務を課する原理の存在を主

    の儲

    張する西村贅

    の議論に注目し、・れを

    .+分説得的である・とし、.しかし、・の繋

    は、契約実践に内在する規範

    の存

    在を

    にし

    理解

    でき

    であ

    ろう

    L

    とす

    る。

    そし

    て、

    のよう

    の内

    の不

    関係

    的契

    けお

    の特

    を表

    いる

    いう

    (二三六頁以下)。

    に約契

    主◎」'

    (1)

    伊藤進

    『保証

    ・人的担保論』

    (平八)二六八頁。

    (2)

    内田貴

    『契約

    の再生』(平

    二)二二九頁以下。引用

    については本文

    にペー

    ジ数をし

    めす。なお、契約締結時

    の義務であるが、

    後述

    の道垣内論文は、積極的

    に債権者

    たる金融機関

    の義

    務を認

    めようとし

    ている。

    またも匿名発言であるが、新潟弁護士会

    『保証

    の実務」(平五)二

    一頁

    では、保証意思確認についてであるが、金融機関

    の金融機関安全配慮義務」を認め、

    それを怠

    った場合

    に金融機関を訴訟で負かしてよ

    いと

    いった趣旨

    のことが述べられている。

    25

  • 26

    6

    複数の制限法理の使い分け

    以上に述べた法理の

    一つだけですべての問題を解決しようとする学説はないといってよいが、それぞれをどう使い

    分けようとするのかは殆ど明言されていない。詐欺、強迫及び錯誤といった民法規定が使える事例

    は、それらによる

    処理がされるのは別として、それらの法理の限界にある根保証人の責任制限としては、保証契約の解釈による手法と、

    則とい2

    般条項とが考えられている・

    )値.伊藤進教授の見解

    先ず、伊藤進教授は、限定根保証人の保護を含めて、二段階で保証

    人を保護すること

    を考えており、次のようにいう。

    意思表示解釈による方法

    「このような保証意思の解釈によ

    って保証人の保護理論は、保

    証の未必性と他人

    性という特質からみて、

    一般の契約における意思表示解釈の問題とは異なり、特に、重要視されなければならな

    い。そ

    法「

    。では、.疑わしきは纏

    者の不利にの原則』を確立してい真

    そして、かかる保難

    論は、包覆

    保証の

    場合に限らず、限度根保証や特定債務保証でも用い得るものである」。

    「合理的責任制限による保護」

    合理的責任制限の理論を法的に根拠付ける根拠はどこにあるかは若干混乱

    がある。契約解釈の問題なのか、保証契約特有の問題なのか明確ではない。「たしかに、合理的責任制限の理論のなか

    には、契約

    一般において認められる合理的解釈による場合も内在しているといえるが、それでは、合理的意思解釈の

    域をでるものではないし、保証意思解釈による保護と区別することはできない。このため、ここでの合理的責任制限

    の理論は、も

    っと積極的な保証人の保護理論であることを認識し、かかる認識の上にたってその適用を考えていかな

  • ければならな

    いといえよう。それは、根保証契約の人的信頼性と責任の広汎性

    ・他人性という特質

    の結果として、信

    義則上認められるところの責任制限理論である。保証契約特有の信義則上の責任制限理論であるとして捉えなければ

    (2)

    L。

    ω

    関係的契約規範によ・銃

    口的規律

    先の内田教授の関係的契約理論によれば、三

    ・では内在的規範が裏

    U

    を通して現れてきているものであり、この信義則は当事者の意思の補充ではないとされている。そうすると、契約解

    務義

    の名目による保証契約内容

    への介入ではなく、内在的な関係的契約規範を具体化する信義則によ

    って

    一元的に規律

    る桝

    されることになろ先

    但し、その関係的規範の内容が多様だとすれば、関係的契約規範によ

    っ三

    元的説明をすると

     

    しても、それは多様な関係的契約規範を裁判規範とするフィルターの問題すぎない。その意味で、多元的な根拠を関

    係的契約規範の中に認めれば・

    =兀的か多元的かは説明の上

    の差異にすぎない・

    の儲

    (1)

    伊藤進

    『保証

    ・人的担保論』

    (平八)二六二一三頁。

    るけ

    (2)

    伊藤進

    『保証

    ・人的担保論』

    (平八)二六四頁。

    賜襯

    7

    稿

    の基

    本姿

    ヨー

    ッパ

    の民

    が国

    の行為

    とし

    て取

    れる

    こと

    は、

    「子

    に大

    の服を

    せる

    よう

    こと」

    (旧商法

    7

    がわが国

    の慣習を無視してヨー

    ロッパ法原理を導入しよう

    としたことに対す

    る批判)

    であ

    った。

    かし

    、近

    の仲

    2

    に、わ

    われ

    の社会

    も変

    ことも

    期待

    て、即

    ち先

    の表現

    って言

    「服

    に合

    う成

  • 8

    と」が期待されていたのである。しかし、泰西主義に対して財産法の分野でも、末弘博士によりわが国のローカルカ

    2

    ラ!が強調されるようになり、

    ヨー

    ロッパ法の研究

    ・模倣だけでなく、法社会学的なわが国の実態調査が財産法の分

    でも必要なことに気がつかれ、そのような研究も実際行われるようになる。では、実際に行為規範としてわれわれ

    を規律している規範はどのようなものであろうか。かつては封建的色彩が残っており、保証という

    ものが大きく不合

    理な制度とは考、託られていなかったかもしれないが、現在ではわが国でも状況はかなり変わ

    ってきて

    いるはず

    である。

    この点は、判例

    の蓄積により判例からも社会意識が読み取れるようになってきている。これを関係的契約規範と呼

    ひと

    まず

    おく

    (裏

    則を通・

    て実現できると

    いう璽

    なも

    のかも)・そ

    の現

    の規

    の要

    明ら

    にし

    そし

    て・

    それをどう実定法の解釈として実現するかが問題である。また、どう保証人の救済を図るかという結論の落としどこ

    で大きく学説上争

    いがあるとは思われず

    (判例にはかなり異なる立場が見られる)、それを実現する解釈論的方法論が問

    題にされているのである。柔軟性をそなえた明文規定があればその適用、即ち実定法の適用により解決がされるが、そ

    れがない同法の欠鉄があるのをどう解決するかが問題である。特に九二条があるにもかかわらず、慣習を直ちに裁判

    法「

    規範として適用する・とに裁判官は穰

    的では守

    、また慣習となるとその妻

    認定が必要になり

    ・のような方法に

    期待することはできない。そこで、①実現されるべき規範を実質的に適用して解決したに等しい方法として、契約解

    釈の名目で契約関係に干渉するか、または、②信義則という

    一般規定により法の適用の形をとりな

    がらも柔軟な解決

    を可能にするかになる。私見としては次のように二段階の思考に分けてアプ

    ローチをすることを考

    えている。

     

     ユ 

    契約解釈

    先ず、保証契約の解釈という、事実認定及び評価の問題において保証人の保護を考えることがで

    きる。①契約書の条項と異なる合意を当事者がすることは可能なのであり、当事者がそのような合意をしていること

    を事実認定できれば、その合意の認定によ

    って保証人を保護することができる。②また、保証契約書

    の条項の内容が問

  • にな

    った

    場A口に、

    がど

    こま

    で含

    明確

    でな

    い場

    には、

    保証

    に有

    に解

    こと

    が可能

    であ

    (当事者

    の主観的意思

    の追

    及ではなく、当事者が主観的

    に合意していな

    い事項

    につきどのよう

    に規律する

    べきかという規範的解釈)。

    は、

    証契

    約書

    の内

    にも

    に、保

    の合

    に予

    でき

    る範

    に解

    の名

    で制

    限す

    いう

    (2)

    ことくらいまでは、契約解釈の名による保証契約の内容に対する裁判所による介入として許される

    であろう。これは

    G

    特定保証にも妥当する方法である。しかし、私見としては、契約解釈があまりにも幅を利かせることには違和感を持

    いるので・契魏

    釈という作業は蟹

    になすべきであり・なるべ孟

    裁に次の契約外の規範適用

    による解決による

    る耐

    べき

    であ

    ろ、つ

    (関係的契約規範

    の信藷

    を通、て

    の適用・ま

    では

    いわな

    いが、信喬

    を通

    、たあ、べき任意規範

    の適用を止同定す、).

    ω

    契約外の規範適用

    先に分析した実質的根拠から、債権者が保証人に対して自分が負担すべき債権回収不

    のリスクを転嫁できるのは、その置かれた状況などから可能な限り保証人の利益に配慮すべ杢

    般的霧

    (保証人保

    務)を負わせ・それが尽くされた揚A。にま寒

    くされた限度でのみである・逆にいえば、その具体化された個々の

    権礪

    義務の違反が認められる場A口に、保証人

    へのリスク転嫁を否定するという形での解決を考えている。これを法解釈と

    て構成する段階では、故意的な場合には詐欺や強迫による保護が考えられ、保証人の錯誤をもたらす場A口には錯誤

    こ細

    が考えられ、

    一部無効

    ・取消といった形で保証人の責任を制限することは可能である。しかし更に契約締結後の債権

    契糀

    の霧

    違反については・れらの法理は適用できない.また、契約締結段階においても、。れらの法理ですべてをカ

    H

    できる蕩

    ではない.そ・で、・れ・の鐘

    の・バと

    え三

    領域を忠

    ・して、債権者にど

    の考

    な霧

    を保

    人保護のために設定できるか、また、その義務違反による根保証人の責任制限をどう説明するかは、信義則という

    一般条項によらざるを得な

    いと考えている。

     2

    以下

    には、契約締結段階の義務とその後

    の義務とに分けて考察をしていくことにしたい。

  •  3

    (1)

    意思表示が、意味の発見と意味の持込

    の両者を含むこと

    につき、穂積忠夫

    「法律行為の

    『解釈』

    の構造と機能

    (一)

    (二V」

    法学協会雑誌七七巻六号

    (昭三六)六〇三頁以下、七八巻

    一号

    (昭三六)二七頁以下参

    照。

    (2)

    客観的な表

    示の意味と両当事者

    の主観的な意思とが異な

    る場合に、契約解釈はどうあるべきかについては学説には微妙な

    がある。①

    一つには、契約

    における表示

    の客観的意味

    により契約内容を確定す

    ると

    いう

    ものである。

    これによれば、両当

    事者とも客観的意味と異なる別

    々の理解をしていれば、

    両当事者ともに錯誤が問題にな

    る。②

    これに対して、主観的な意思

    が異なる場合

    には、

    いずれの理解を優先

    させるかと

    いう