自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナー...

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平成29年度 アクティブ・ラーニング推進校 研究報告書 自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナーを育てる 東京都立本所高等学校アクティブ・ラーニング推進校報告書の発刊にあたり 平成 29 年度 アクティブ・ラーニング推進校 研究報告 アクティブラーナーを育てる ~自律的・主体的に学び続ける生徒に~ 1 研究開発の概要及び成果と課題 2 校内研修 3 先進校視察 4 実践事例 (数学Ⅱ) 5 次年度の取組 都立本所高等学校 アクティブ・ラーニング通信 美術部ボランティア(高齢者認知症防止カフェ) 1・2年合同 プレゼンテーション大会 校長室だより ・・・1 ・・・2 ・・・11 ・・・19 ・・・21 ・・・23 東京都立本所高等学校 Tokyo Metropolitan Honjo High School

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平成29年度

アクティブ・ラーニング推進校 研究報告書

自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナーを育てる

東京都立本所高等学校アクティブ・ラーニング推進校報告書の発刊にあたり

平成 29 年度 アクティブ・ラーニング推進校 研究報告

アクティブラーナーを育てる ~自律的・主体的に学び続ける生徒に~

1 研究開発の概要及び成果と課題

2 校内研修

3 先進校視察

4 実践事例 (数学Ⅱ)

5 次年度の取組

都立本所高等学校 アクティブ・ラーニング通信

美術部ボランティア(高齢者認知症防止カフェ)

1・2年合同 プレゼンテーション大会

校長室だより

・・・1

・・・2

・・・11

・・・19

・・・21

・・・23

東京都立本所高等学校

Tokyo Metropolitan Honjo High School

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東京都立本所高等学校アクティブ・ラーニング推進校報告書の発刊にあたり

校長 堀切 哲弥

本校は、東京都教育委員会より、平成29年度から3年間アクティブ・ラーニング推進校に指定されま

した。次期高等学校学習指導要領や大学入試改革で求められている、協力しながら問題を解決する上で

必要な思考力・判断力・表現力等を育成するため「アクティブ・ラーニング」の手法を活用して、受動

的な学習ではなく、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習方法の開発・普及を図るため

様々な取組を行っています。

主な取組内容は、(1)先進校視察、(2)大学教授等の講師を招いての校内研修、(3)アクティブ・

ラーニング型授業の研究、実施、(4)本校で実施している探求型キャリア教育の可視化、改善策の検

討・実施等です。

研究を始めるにあたり、本所生の学習面や生活面の課題についてのアンケートを全教員に対して実施

しました。その結果から、学習に対して積極性・自主性等が不足しており、こうした力を育成する必要

があると考えました。また、学ぶ主体は生徒であることから、研究テーマを「自律的・主体的に学び続

けるアクティブ・ラーナーを育てる」としました。

(1)先進校視察では、8 校の視察を実施し、その結果を AL 通信としてまとめ、職員会議等で共有

しました。

(2)校内研修では、東京学芸大学教職大学院渡辺貴裕先生と産業能率大学皆川雅樹先生を招聘して、

研修テーマ「主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善」について、アクティブ・ラーニング型のワ

ークショップを行いました。

(3)授業では、研究授業や教員相互の授業参観を行い、様々な取組や工夫を学び合いました。いく

つか例を挙げると、①その授業の目標を、授業開始時に板書等で生徒に明示し、授業終了時のまとめで

再度確認する。②まず一人で考える時間を取った上で、ペアワークやグループワークを行う。③ICT等

の活用により、説明を効率的に短時間で行い、グループワーク等の活動を取り入れる等です。また、発

表活動も、口頭での発表、パワーポイントによるプレゼンテーション、ワークシートやレポート、ポス

ター発表、新聞作成等の様々な形式で取り組みました。「生徒の活動」に重点を置いて授業参観等を行

うことで、教科の壁を越えて互いに参考になる点が多くありました。

(4)探求型のキャリア教育としては、総合的な学習の時間で、一年生は「地域課題研究」、二年生

は「クエストエデュケーション」(企業探究コース)を実施しています。調べ学習、グループワーク、

発表活動等のアクティブ・ラーニング型の学習となっています。今年度は、この発表活動の部分を強化

し、1・2年生合同のプレゼンテーション大会を 3月 1日に実施しました。また、来年度に向けての改

善点としては、新1年生に新教材「エナジード」を導入することを決定しました。また 2年生のクエス

トエデュケーションでは、年度当初からより時間をかけて取り組み、深い学びを目指します。

さらに、生徒自身が学習の PDCAサイクルを回して自律的・主体的な学習を行うことを目指して、新

1年生から eポートフォリオを活用することにしました。

この報告書作成にあたり、校務多忙の中、寄稿を頂いた先生方及び企画・編集等に携わった先生方に

深く感謝の意を表したいと思います。

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平成 29 年度 アクティブ・ラーニング推進校 研究報告書

アクティブ・ラーナーを育てる ~自律的・主体的に学び続ける生徒に~

副校長 玉川 弘文

本稿は、東京都教育委員会に提出した研究報告書の原稿(12 月末現在)に、1 月から 3 月までの教育実践・先進校

視察等を補遺した。

1 研究開発の概要及び成果と課題

(1) 研究開発の概要

ア アクティブ・ラーナーを育てる ~自律的・主体的に学び続ける生徒に~

(ア) 自律的・主体的に学び続ける資質・能力の育成

学習に対して受け身になりがちである生徒たちに、自立性や主体性を身につけさせるための

授業の在り方等を検討する。

(イ) 平成32年度からの大学入試改革に向けた授業づくり

知識・技能のみでなく、思考力・判断力・表現力等や、主体性を持って多様な人々と協働し

て学ぶ態度を育成するための授業づくりを研究する。

(ウ) 先進校視察や校内研修

先進校視察や、大学教授等を講師とした校内研修により、「主体的・対話的で深い学び」の

必要性や取り組み方を学び、授業改善に生かす。

(2) 成果について

ア 各教科の取り組み

各教科とも、校内研修や若手を中心とした授業研究の取り組みにより、授業改善を進めている。

アクティブ・ラーニングの視点を意識した授業改善を行っているかどうかについてのアンケート

を取った結果、10月の段階では本校全体の 48.3%で、12月の段階では 75.0%の実施率となって

おり、100%に近づいた。

イ 教科ごとの取組実績

教科ごとに、今年度の取り組みと次年度に向けた課題や取り組み方を検討した。

(ア) 国語

2 学期に、2 年生現代文Bの授業において、生徒による夏目漱石『こころ』の研究発表を実

施した。4 人 1 組からなる班での活動で、各章ごとに 1 時間で発表をした。B4 版のプリント

を作成(語句・内容に関する発問・章のまとめ)、朗読、問題の説明、質疑応答を行い、発表

班以外は、発表に対する評価(態度、プリント内容について 1~5 で評価、コメント記入)を

自分の班の発表に生かした。

次年度は、俳句、詩を題材にした生徒による研究発表を行う。

(イ) 地理歴史・公民

現代社会は、ワークブックの空欄に該当する語句を、グループワークで話し合わせ発表を行

なった。

世界史は、冬季休業中に『世界史新聞』の作成を課題とし、歴史上の出来事や人物について

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調べ学習を行い壁新聞にまとめた。また、学期末の期間を利用し美術館に赴き、絵画を鑑賞し、

その後レポートにまとめた。

日本史は、教科書を生徒各自が参照し、プリントの空欄部分を自分で考えながら埋め、対話

形式で解答の確認、解説を行った。また、史料&資料を参照し、歴史的事象の背景や原因を考

えさせ文章にまとめ、発表を行った。

地理は、図表に掲載されているグラフなどの資料を参照し、その事象について考えてまとめ、

発表を行った。

次年度は、今年度行った活動を改善しながら継続して実施する。

(ウ) 数学

若手教員を中心に、「明確に理解をすること」「考える力を育成すること」を意識して授業改

善に取り組んだ。定理を学習したり問題を解いたりする際に、むやみに覚えたり言われたとお

りにただ問題を解いたりするのではなく、実感を伴った理解と、粘り強く考えるようになるこ

と目指す過程で、アクティブ・ラーニング型の授業を取り入れた。

次年度も、今年度の方針を継続して授業改善に取り組む。

(エ) 理科

化学は、問題演習を、個人で考えたのちにペアワークやグループで考えを共有し、理解でき

ていない生徒は理解できている生徒に質問し、理解できている生徒は理解できていない生徒に

説明する授業形態をとった。また、ジグソー法等を用いて調べ学習を行った。

生物は、エキスパート活動等を通じて、個別に学んだことをグループで共有・検証すること

を授業に取り入れた。また、導入部分で前時の内容をペアワークで復習してから本時の内容に

入る授業形態をとった。

次年度は、今年度の活動を振り返り改善に取り組む。

(オ) 保健体育

保健は、ペアワークで協力してプリントの空欄に当てはまる語句を考えさせたり、「答えが

複数ある」テーマについて、ペアワークやグループワークにより考えを深めさせたりした。

次年度も継続してこのような活動を取り入れていく。

(カ) 芸術

芸術は、自ら学び、考え、感じたことなどを様々な方法で表現することが目的なので、アク

ティブ・ラーニングの理念の原点になると考える。

美術は、単に教員が評価するだけではなく、生徒が自分自身の「評価基準」を設定し、その

達成に努めた。美術作品をよく見てその意味や情報を自分で引き出す、学習者中心の学習理論

に基づいた「対話による鑑賞」を行い、主体的思考力・コミュニケーション能力の向上を図っ

た。次年度は「対話による鑑賞」のファシリテーターを教員ではなく生徒が務め、生徒が相手

のことを考えて題材を考えていけるよう進める。地域・美術館・博物館と連携し、生徒の活動

とともに生徒自身の視野も拡げられる環境を作っていく。

(キ) 外国語(英語)

各学年コミュニケーション英語の授業は、生徒同士の活動を通してアクティブ・ラーニング

を取りいれている。具体的には各単元の内容を題材にし、発話練習のペアワークやグループワ

ークをさせている。

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次年度は、各学年同じように生徒同士の活動を入れていくが、特に 1 学年の指導においては、

入試体制の変革に対応していけるような、4技能を鍛える活動を検討している。

(ク) 家庭

家庭科学習の目標は、基礎的・基本的な知識と技術を身に付け、それを生徒自身が自身の生

活、人生においてどのように運用していくかにある。今年度は学習の各領域終了ケーススタデ

ィを取り入れ、グループでの話し合い、その内容の発表を行った。1年間の学習のまとめとし

て、家庭生活全般にわたるケーススタディを実施する予定である。

次年度は、まとめた結果を検証して授業改善に取り組む。

(ケ) 情報

1学期は、講義と実習で授業を進め、生徒が講義で理解した部分を実習という形で行った。

2学期は、プレゼンのやり方を取得したあとは、生徒に教科書 2 ページ程度をスライドにま

とめさせプレゼンをペアワークで行い、その後、教員は知識の補強をするという授業スタイル

ですべてを行った。この授業スタイルにより生徒は、教科書の内容を理解したうえでスライド

を作成し、ペアワークでプレゼンをすることによって知識を確かなものにすることができた。

授業に取り組む姿勢がより主体的になるとともに説明し合うことでより深い理解につながっ

た。

次年度は、このプレゼン授業を進めるとともに時間配分や生徒の取り組みの評価方法などを

考えている。

ウ 総合的な学習の時間(1学年は人間と社会)

総合的な学習の時間において、主体的・対話的で深い学びを目指した課題解決・探求型学習を

行った。1学年においては、自分たちが通っている本所高校のある墨田区について深く知ること、

課題解決能力を育むこと、コミュニケーション能力や表現力等を育むことを目的とした、地域課

題解決学習を実施している。また、2 学年では、企業からのミッションを解決しながら、働く意

味や職業観を育むことを目的とした探求型学習を実施している。

エ その他

組織的に授業改善に取り組んでいる先進校の視察内容を、アクティブ・ラーニング通信として

まとめ教科会や学力向上委員会、職員会議において報告し、本校の授業改善に生かしている。

また、視察した教員が中心となり、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を行うこと

で、学校全体で取り組む基礎ができた。

(3) 課題について

・ 「アクティブ・ラーニングの視点による授業改善」は、単に話し合いをさせたり、グループワ

ークを行ったりすれば良いものではない。あくまでも、知識・理解のみに偏らず、学力の 3 要

素を身につけさせることを目標にし、その手段としてグループワーク等の生徒の活動を取り入

れていくことが必要である。それらの理解が不十分であり、生徒の活動自体が目的となってし

まう場面がみられることが課題である。

・ 知識・技能以外の思考力・判断力・表現力等を、どのように評価していくかが課題である。

・ 各教科等で、授業力向上や授業改善のための書籍を購入しているが、どう活用していけるかが

課題である。

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2 校内研修

(1) 実施時期について

4月 19日 9月 1日 9 月 20日 10月 24日 10 月 31日 11月 15日 12 月 7日

(2) 研修内容について

・ DVD 視聴 「これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指して―主体的・対話的で深い

学びの実現―」

・ 「アクティブ・ラーニングは手段」「アクティブ・ラーニングで育てる資質・能力」の理解

・ 次期学習指導要領と高大接続改革との動向の周知

・ 「アクティブ・ラーニング推進校としての取り組み」についての共有

・ 「なぜアクティブ・ラーニングがうまくいかないのか~そこには必要な仕掛けがあった~」に

ついての説明

・ 教員にアンケートを実施して本校生徒の課題を洗い出し、アクティブ・ラーニングを本格導入

するための協力体制を築きながら、生徒の「自律性・自立性」の育て方を共有

・ 東京学芸大学教職大学院渡辺貴裕先生と産業能率大学皆川雅樹先生を招聘して、研修テーマ「主

体的・対話的で深い学びに向けた授業改善」について、アクティブ・ラーニング型のワークシ

ョップを行った。

研修の様子

(3) 授業改善に向けた成果と課題

【成果】主体的な学び、対話的な学び、深い学びのために、アクティブ・ラーニングを本格導入す

ることを全教員で共有し、協力体制を構築した。本校生徒の長所をさらに伸ばす方法や学

習面・生活面の課題を改善する方法を共有した。

【課題】個人から教科での授業改善に向けて、年間授業のどの時期で何を行うか教科会で検討し、

学力向上委員会やアクティブ・ラーニング推進プロジェクトへ報告の後、カリキュラムマ

ネジメントで検証する。

3 先進校視察

(1) 視察校について

① 岡山県立岡山芳泉高等学校

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訪問者:情報科主任教諭 大和雅俊 数学科教諭 信澤 直明

② 広島県立可部高等学校

訪問者:情報科主任教諭 大和雅俊 数学科教諭 信澤 直明

③ 岩手県立花巻北高等学校

訪問者:国語科主幹教諭 渋谷 徹

④ 岩手県立盛岡第三高等学校

訪問者:数学科主幹教諭 清水 達也 英語科主任教諭 三宅 貴之

⑤ 埼玉県立川口北高等学校

訪問者:英語科主任教諭 佐藤 理絵子

⑥ 東京都立芦花高等学校

訪問者:英語科主任教諭 佐藤 理絵子

⑦京都市立堀川高等学校:探求活動の取組

訪問者:家庭科主任教諭 安藤 さよ子

⑧静岡県立韮山高等学校:組織的な授業改善

訪問者:数学科教諭 近藤 悠大 国語科教諭 山口 拓生

(2) 視察内容について

① 岡山県立岡山芳泉高等学校:アクティブ・ラーニングの推進方法と授業実践例

各教科 1 名の推進委員と指導教諭 4名が中心となって授業改善を推進している。年間の計画を

策定し、それに基づいた相互授業、外部講師による研修、授業評価(生徒・教師)、アクティブ・

ラーニング通信などで組織の活性化を図る。グループ学習を中心に、問題作成、他の生徒の回答

の添削、教職員への新聞作り、ふせんの活用、仮説から検証して発表、振り返りなどの指導と助

言を受ける。

② 広島県立可部高等学校:生徒の自主的な活動を促す仕組み

「わかったできた」が実感できる、スモールステップの方法で授業を実践している。その授業

で何を学ぶかを明確にして授業を行い、振り返りによって自分で定着の度合いを認識する「目標

ボード」と「振り返りシート」の活用で授業を展開している。思考力・判断力を問う問題を定期

試験に入れ、その結果をフィードバックして最後に良問集としてまとめている。総合的な学習の

時間やボランティア活動の推進、クラスでレクを決める、表彰や発表の機会を増やすなど生徒の

活躍する場面を設定している。

③ 岩手県立花巻北高等学校:「60分授業」を導入の背景と「総合的な学習の時間」自由研究

「60分授業」は、対話、発信などの言語活動や、協働で知識を構成する活動を取り入れるなど、

授業の枠組みが変わることを目的に導入した。「総合的な学習の時間」自由研究は、各教員に対し

「得意・興味関心のあること」調査を行い生徒に提示し、生徒が任意に決める研究テーマにアド

バイス・相談を行う。生徒は半年かけて調査研究したことを 2 月に発表。優秀者は投票で選ばれ

る(総学バトル)。

④ 岩手県立盛岡第三高等学校:考査問題の工夫と教員へのフィードバック

「校内授業力向上研修会」等を設け、お互いの授業を研究し合っている。職員室内ではなるべ

く学年・教科担当ごとに集まれるように座席を配置し、情報交換が容易にできるように配慮して

いる。「あなたの意見を 50語程度で書きなさい」「○○について、80語~100語であなたの意見と

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その理由を 2 つ書きなさい」といった問いを設け、表現力の強化を図っている。数学の考査問題

においては、1 つの問題を異なる 2 つの解法で解かせ、今回の問ではどの方法を用いるのが最も

合理的かを述べさせる問題を出すなどの工夫をして「深い学び」につなげている。生徒には授業

評価アンケートを年 2 回実施している。管理職がアンケートの結果をまとめた上で個票を作成し

て、各教員へ還元している。

⑤ 埼玉県立川口北高等学校:英語におけるアクティブ・ラーニングの取り組み

3年生の英語表現Ⅱの授業は、年間を通して essay writing(自由英作文)を行っている。1・2

年生の時から継続して行っているため、書くことに慣れており 5 分間黙々と書き続ける。essay

の内容を用いてさらに small debate を行うこともある。debate を行い、最後にその内容をふま

えて自分の意見を練り直す、という構成だった。

⑥ 東京都立芦花高等学校:2年生の総合的な学習の時間「QUEST EDUCASTION」

企画を立てる際は、ミッション解釈は深いかどうか、企画にオリジナリティがあるかどうか等

を重視する。声掛けの例としては、「ミッションを分解してみよう」、「オリジナリティが足りない

場合は今の企画のプラスアルファをしてみよう」など具体的な声掛けを心がける。

⑦ 京都市立堀川高等学校:探求活動の取組

総合的な学習の時間において「探究活動」を行って 20 年目となる。1 年入学時から 2 年次前期

までの 1 年半を 3 期に分け、「探求の型(方法)」「探求の術(課題設定と研究方法の検証)」「探

求の道(各自の課題に取り組む)」を段階的に取り組ませる。生徒 10~12 名に対し、2 名の教員

と 1 名の大学院生が就く。探究活動の継続的指導のために、3 年分の指導案とワークシートが冊

子として配布され、研修会や週 2 回の会議を実施。教員が教え込まず、対話を通して生徒自身に

考えさせる姿勢を重視。また、学校目標が明確で学校全体に浸透しており、生徒の自覚と自主性

を促している。

⑧ 静岡県立韮山高等学校:組織的な授業改善

平成 27年度のサイエンス・アドバンススクールに指定された年から AL に取り組み始め、今年

度で 3年目になる。各教科から 1名ずつファシリテーターを選出し、SAP(サイエンス・アドバンス・プロジ

ェクト)チームを結成。SAP メンバーによる会議で出た課題・成果などを各教科に持ち帰り、フィー

ドバックを行っている。また、教科の特性を生かした授業作りを行い、SAP で共有し、他教科で

実践できる組織体制を作っている。

4 実践事例 (数学Ⅱ)

(1) 単元名 「三角関数」

(2) 単元の目標

角の概念を一般角まで拡張して、三角関数及び三角関数の加法定理について理解し、それらを

事象の考察に活用できるようにする。

(3) 指導と評価の計画(18時間扱い)

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<評価規準>

ア 関心・意欲・態度

イ 数学的な見方や

考え方 ウ 数学的な技能 エ 知識・理解

単元の

評価規

三角関数に関心をもつ

とともに、それらを事象

の考察に活用して数学的

論拠に基づいて判断しよ

うとする。

事象を数学的に考察し

たり、思考の過程を振り

返り多面的・発展的に考

えたりすることなどを通

して、三角関数の考えに

おける数学的な見方や考

え方を身に付けている。

三角関数において、事

象を数学的に表現・処理

する仕方や推論の方法な

どの技能を身に付けてい

る。

三角関数における基本

的な概念、原理・法則な

どを体系的に理解し、知

識を身に付けている。

学習活

動に即

した

具体的

な評価

規準

① 三角関数に関する問

いに対して、自ら考え、

数学的論拠を基に答えを

導いたり、理解しようと

したりしている。

② 自らの考えを他者に

説明したり、他者から説

明されて理解しようとし

たりしている。

① 三角関数の性質やグ

ラフ、三角関数を含む式

や定理等について、数学

的に考察することができ

ている。

② 三角関数に関する新

たな問いに対して、既習

事項を基に多面的・発展

的に考えることができて

いる。

① 単位円上の点の座標

を、三角関数を用いて表

すことができている。

② 三角関数を含む方程

式や関数について、変数

の置き換えなどにより考

えることができている。

③ 加法定理や 2倍角の

公式を活用し、三角関数

を含む式について考える

ことができている。

① 弧度法を理解し、度数

法と関連させながら表す

ことができている。

② 三角関数の相互関係

や性質、グラフの特徴を

理解している。

③ 三角関数を含む方程

式、不等式の解き方や考

え方を理解している。

③ (省略)

④ (省略)

<指導計画>

目標(生徒に示す) 学習内容・学習活動 学習活動に即した具体的な評価規準

第 10 時

三角方程式の解き方を

考え、解くことができ

る。

三角方程式の定義を学び、基

本的な問題について解き方を

自らで考える。また、単位円

を用いた考え方を理解する。

(教科書 p120~122)

イ―② 三角方程式を解く際に単位円や

グラフを図示して考察することができる。

(観察)

エ―② 三角方程式の解き方を理解して

いる。(ノート)

第 11 時

(本時)

三角不等式の解き方を

考え、説明をすることが

できる。

三角不等式の定義を学び、基

本的な問題について解き方を

自らで考えたり、他者と考え

たりする。(教科書 p123・プ

リント)

イ―② 三角不等式を解く際に単位円や

グラフを図示して考察することができる。

(プリント)

ア―① 三角不等式について、既習事項を

基に論理的に考えようとする。(観察)

第 12 時

三角方程式・不等式を解

くことができ、さらに、

応用することができる。

三角方程式・不等式の解き方

が定着しているかの確認テス

トを実施し、それを用いて応

用問題を考える。(教科書

p123・124)

エ―② 三角方程式・不等式の解き方を理

解している。(小テスト)

ウ―② やや複雑な三角方程式を、変数の

置き換えなどにより考えることができる。

(ノート)

(4) 本時の指導(全 18 時間中の 11時間目) <短縮 40分授業>

ア 目標

三角不等式の解き方を考え、説明をすることができる。

(三角不等式の解き方を考え、説明をすることを通して、数学的な見方や考え方を身に付ける。)

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イ 展開

時 間 学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価規準

〔評価方法〕

導入

3 分

・ 簡単な問題を解き、前時の学習の内容を確認

する。

・ 簡潔に説明する。

展開

30 分

・ 本時の目標を確認する。

・ 本時の流れを確認する。

・ プリントの課題 1 を解く。〔5 分程度〕

・ 隣の席の人と答えを見せ合い、自分の考え

方についての説明をする。もし、隣同士で

答えが出ていない場合は、2 人で考える。〔5

分程度〕

・ プリントの課題 2 に取り組む。〔10 分程度〕

・ 本時の目標と合わせて、本

時の目的を話す。

・ プリントを配布する。

・ あとで説明ができるよう、

今まで学習してきたこと

を踏まえながら、根拠を持

って解いていくよう声掛

けを行う。

・ どうしても考え方が出て

こない場合、まわりの生徒

からヒントをもらうよう

声掛けを行う。

・ 他の2年生が見ても分かる

よう、最大限分かりやすく

書くよう指導する。

イ―②、ア―

①(プリント

の記述・観

察)

まとめ

7 分

・ 2

1cos ≦ の一般的な解き方を学習する。

・ 振り返りシートを記入する。

・ 色々な方法で解くことが

できるが、単位円を用いた

解き方が一般的であるこ

とを説明する。

・ 単位円を用いた解き方で

ない解き方をした生徒に

は、自らの解き方と、単位

円を用いた解き方の比較

をさせる。

(5) 学習における工夫(「主体的・対話的で深い学び」につなげる手立て)

まずは自力解決の時間を確保し、ある程度時間が経過してから付近の生徒と教え合いながら取

り組むように指導した。既習事項を基に三角不等式の解き方を自らで考えることで、主体的に粘

り強く考えさせることを意識し、また、その考え方を説明させる(解く手順をプリントに書く・

他者に説明する)活動を通して思考の流れを振り返ることで、深い学びを得られることをねらい

とした。

(6)生徒の変容

本時のように、はじめから解き方を与えず、生徒自身に考えさせる場面を多く取り入れた授業

を展開していくことで、定期テスト時等に「単に解き方を覚える」生徒はかなり減り、しっかり

【目標】

三角不等式の解き方を考え、説明することが

できる。

【プリント 課題 1】

2

1cos ≦ を解け。ただし、 2 0 < ≦ とする。

【プリント 課題 2】

課題 1 の解き方を、手順が分かるように説明せよ。

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10

と思考している生徒が増えた印象がある。数学においては外部の模擬試験の上位者が増加してい

ることもあり、生徒の変容からつながっているものと考える。

(7) 成果と課題

【成果】振り返りシートにおいて、「説明

をしなければならないから良く

考えた」「どこまで理解をしてい

て、どこから理解をしていない

か明確になった」などの記述が

あり、深い学びをするにあたり

効果的であったと考える。

【課題】まとめでは 1通りの解き方を提

示したが、実際には別の解き方

で解いている生徒もいた。その

ような生徒の解答を共有するこ

とで、より深い学びにつながったのではないかと考える。

5 次年度の取組

・ 授業改善に PDCA サイクルで取り組み、生徒の学力向上、各教科科目の目標が達成できているか模

擬試験等で検証をする。

・ アクティブ・ラーニングの視点よる授業改善を活性化することにより、自律的・主体的に学ぶ生

徒(アクティブラーナー)を育てる。

・ 教科会や学力向上委員会で、平成 32年度から導入される「大学入学共通テスト」対策を意識しな

がら、思考力・判断力・表現力等や、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を育成する

ための授業づくりやそれらを測るための試験問題等について研究する。

・総合的な学習の時間における探求型キャリア教育を推進する。(可視化、検証、改善)

・評価方法の研究・改善を図る。(考査等問題、パフォーマンス評価、ルーブリック等)

・生徒自身が振り返る力を育成する。(振り返りシート等の活用)

・言語活動能力を育成する。(批判的読解力、書く、話す、話し合う、発表する)

生徒は机を近づけ、相談・教え合える形態

Page 12: 自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナー …必要な思考力・判断力・表現力等を育成するため「アクティブ・ラーニング」の手法を活用して、受動

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第 1号 平成 29年 9月 20日

学びを促す授業づくり

●岡山県立岡山芳泉高校 平成 29 年 9月 11 日(月)

26年・27年「思考力・判断力・表現力を育成する指導

法の研究」で国立教育政策研究所指定事業で数学で指定さ

れました。特に「書くこと」答案の作成に焦点おいた研究

をされていた学校です。岡山では 3番手の進学型単位制高

校で NIE や国際バカロレアなどその他にも色々な取り組

みをやっていました。

●授業改善(アクティブ・ラーニング)推進のポイント

①学力向上委員のような組織があり、各教科1名で構成さ

れ、指導教諭が 4名程度おり、授業において OJTが充実

②国立施策研究所の取り組みで ALを取り入れて、模試の

成績(数学)が上がったことにより他の教科へ波及してい

った(アンケートでも有意差)成功例を示すことが大切

③年間計画を配り周知(授業参観・教員研修・公開授業前

期後期・11月外部公開・授業改善の振り返り)

④校内研修(外部の先生、産能の小林教授など刺激)

⑤iPadやプロジェクターなど ICT活用(問題などを黒板

に書く時間を削減、考える時間確保)

⑥外部に授業公開(色々な人からの意見を聞く、そして反

映)

⑦AL 通信によって刺激(AL とは、研修の報告、新聞記

事、研修案内、授業実践など)

⑧授業評価(教員による・生徒による)先生ごとでグラフ

化、更にコメントも有、それを使って教科で授業改善、授

業評価の質問には思考判断や振り返りをやったのかなど

の記述有

⑨教科研修が充実している(研修の時間がある)

⑩教員が自ら授業改善を進めている学校(中心は 4名の指

導教諭や学力向上委員会)

●授業実践事例

・グループ学習

個人で考える→グループで発表→プレゼンにまとめて

発表

・問題作成

生徒に問題を作成させて相互に解く(理解がないと作問

不可)

・新聞作り

生徒が新聞作成して発表(特に社会など)

・答えのない問い

消費税 10%は是か非かなど発問の工夫や討論など

・ふせんの活用

ポイントや重要公式の書き込みや疑問点の洗い出し、

KJ 法

・仮説→思考→まとめ→発表

予想してから検証(特に理科などで)

・振り返りシート・リフレクション

授業の最後に今日のまとめや振り返り

・他人の解答の添削

・ICT活用

本校と環境は同じ、教材を共有して授業で利用

・意思表示

わかっているか右手(○)が左手(×)を挙げさせるな

●先進校視察に行ってみて

数学で各単元の最後に「ペア学習やグループ学習など行

い発表させる」、「全員が考える発問」などを行い、模試の

成績が上がったことにより、その他の教科へ波及しました。

「この成功がなければ進まなかった」と言っていました。

はじめは教科ごとに 2人ずつ位からはじまり、どんどん広

がっていったそうです。生徒が主体的な学習を進めるため

に上記に挙げたように様々な実践がありました。毎回の授

業でこのような実践をしているわけではなく、必要に応じ

て取り入れているそうです。

生徒が深い理解につなげるためには、上記のように型か

ら入るというのは一つの方法ではあります。ただ、型だけ

を追うのではなく、色々な授業実践もその型をいれると生

徒にとって効果的だから取り入れているはずです。生徒同

士で学びあいや発問の工夫などして、生徒が主体的に考え

て授業に参加する場面が増える(思考・判断する)ほど記

憶に残るのです。それがこれからの授業改善で大事なポイ

ントとなると感じました。

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第 2号 平成 29年 9月 20日

学びを促す授業づくり

●広島県立可部高校 平成 29 年 9月 12日(火)

中堅校で「広島学びの変革アクションプラン」(県全体

で取り組んでいる)実践フィールド校に指定されている。

学び直し(中学のつまずきからはじめる)、「わかった・で

きた」を実感できるようにする(スモールステップ)こと

を大切にしている学校。特別進学クラスを設置している。

●学習意欲を向上するために

①3年間の流れ

1 年目

「目標ボード」と「振り返りシート」の推進 その他は、

それぞれの流儀で授業改善、センター研修・他校見学・県

外視察

※振り返り

テスト、ペアで話させる、リフレクションなどを実践

2 年目

思考力・判断力を問う問題を定期試験に入れ、教科で適切

だったか判断、良問集へ

3 年目

ルーブリックの活用、教科横断型授業(1年学習成果発表

会、3年課題解決型)の実践、単元ごとのシラバスの完成

②研究授業

略式指導案を作成し、参観した先生は、授業観察カードに

記入 事前・事後で教科会を開く。これを年 2回行う。他

教科も参観することを必須としている。

③進路関係

・進路カルテ、面接検定、進路研修部(生徒の要望で土日

など部活のない日に勉強会)、進学セミナー

④生徒(主体的に考えて行動するように仕向ける工夫)

・可部ノート(手帳 毎月、目標を決めてその成果を記入、

生徒自身に PDCAサイクル)

・Kabe Breake through(学習目標や見通しを立てて学習

する、考査の目標、記録と振り返り)

・ボランティア活動の推進

・クラスでレクを決める(生徒が企画し、それを実行)

・表彰機会や発表の機会(クラスから全校生徒へ)を増や

・昇降口のディスプレイ活用(学校紹介や部活動や教科で

の生徒の活動など紹介)

・ノーチャイム(2学期以降から)など

●取り組みによる成果

・家庭学習時間の増加(30~60分程度 up)

・模試の偏差値 48 以上が一桁から 2 桁へ(スタサポ 3~

4up)

・ボランティア参加率の向上・地域への貢献度向上

・その他(問題行動の減少・遅刻数の減少・保健室の利用

の減少)

●先進校視察に行ってみて

中学までに「わかった・できた」という実感が多く持て

なかった生徒は自己肯定感が少なく、チャレンジすること

や主体的に動くことがなかなか難しい。本校の生徒と非常

に近い。この学校の取り組みがかなりヒントになるのでは

と感じた。特に「目的ボード」と「振り返りシート」。今

日はこの授業で何が達成できれば良いのか。何を頑張れば

良いのかが明確になるだけで生徒の授業に対するモチベ

ーションは上がる。このような小さなところから進めてい

って試行錯誤していくのが一番の近道なのかも知れない。

この学校も発問の工夫から対話的な学び、更に深い学びへ

とつなげていくことや思考力・判断力を問う問題の開発な

ど高大連携や次期学習指導要領を見据え取り組んでいる

学校でした。これを教員手動で取り組み、成果を上げてい

る学校というのが視察してよくわかりました。

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第 3 号 平成 29 年 10 月 5 日

参加型授業の取組

●岩手県立花巻北高校 平成 29 年 9 月 25 日(月)

県内上位進学校で「総合的な学習の時間」で探求型学習

「自由研究」が特色。学力、地域一番手校で部活動が盛ん。

陸上部は各種目で東北大会出場。ハンドボール部は県準優勝。

「入学時以上に学力伸ばして進学させる学校」として地元

から評価され愛されている。一学年 240 人規模、平成 28

年度進路は国公立に 144 名、私大合格のべ 192 名、短大 9

名、専門・その他 14 名。【目指す学校像】「時代の変化に

対応し、地域、日本、世界で活躍する将来のリーダーをつく

る学校」を掲げる。

【校是】「りっぱな公民を造ることが目的」初代校長

●60 分授業の導入

授業中に、対話、発信などの言語活動や、協働で知識を

構成する活動を取り入れるなど、授業の枠組みが変わるこ

とを目的に導入して 5 年目。AL という言葉が一般的に使

われる以前から「対話」つまり「相互のやり取り」を重視

した授業で授業改善を行った。(観点別評価に則った取組

みの導入)

①授業の振り返り

・前時の復習を隣同士で競わせる形式 ― お互いに問題

を出し合い正答率を競い合う(出題する側も勉強になる)

・漢文の内容確認では人物関係や内容について相談タイム(ペ

アワーク)を取り、その時間を板書に充てるなど工夫。

②ペアワーク

どんな問題も隣同士でのペアワークを基本とし常に対

話で問題に迫る。言葉の意味から歴的な意味等、知ってい

る知識をお互いぶつけ合い真剣に取り組んでいた。古典の

音読もペアワークを利用しており交互にまたは段落ごと

の交代などグループによって工夫して時間の使い方を考

えているようであった。(岩手県内の中学校ではペアワー

クをすでに導入しており、生徒も当たり前のように協力的

に取り組んでいた)

③板書計画

ノートに写す作業が全くないわけではない。上記の①②

を要所要所でサンドイッチしてただ写すだけの板書計画ではな

くしている。生徒は受け身ではなく様々な課題で忙しく作

業を行い、授業中は決して単調ではない。英語に限らず国

語、古文、漢和辞典も机上に用意されており、携帯も胸ポ

ケや机上に置いておらず授業真剣度が高い。(授業規律の

高さを感じた。制服の着こなしもしっかりしている。休み

時間の携帯使用もなかった。)

④互見授業(外部からの授業見学)

校内研修用の授業公開シートを作ってコメントある人は直接授

業者へ提出させる。年 2 回実施。外部からの視察も含めて

「見られることは授業力を向上させるチャンスである」と学校

全体でプラスに捉えるようにしている。

●「総合的な学習の時間」自由研究

卒業まで 2 回の研究発表する機会がある。各教員に対し

「得意・興味関心のあること」調査を行い生徒に提示。生

徒が任意に決める研究テーマにアドバイス・相談を行う。生徒は

半年かけて調査研究したことを 2 月に発表。優秀者は投票

で選ばれる(総学バトル)。また全員の発表展示を文化祭で

行っている(一般向け)。 探求型研究は上級学校進学後に

役に立っているとの卒業生の声。

●「花高活性化プロジェクト」の立ち上げ

毎月 1 回開催(職員会議をすべてアイランド型で行い毎回テ

ーマを設定して課題解決に向けてワークショップを実施)

→「学校の強みと課題を踏まえて目指す学校像、職員像を

全職員でデザインする」 ※テーマは「学校経営計画に則り校長

が用意」

●指導力向上

【学校・地域・保護者が総がかりで行う AL 推進プロジェ

クト】

AL の推進は単に学習効率を高める授業手法の工夫を目指すだけで

なく、現代社会を生き抜くための汎用的な能力の育成や、従来の学

校空間、教員文化の変容という視野を持つ必要がある。・・・以下略

生徒の変容:海外に目を向ける、対外活動、地域参加する生徒の

増加教師集団の変容:職員室内の対話の増加 地域・保護者の

変容:生徒の自主的活動の支援、保護者と学校のパートナーシップの強

化。 学校評価:楽しそうに授業を行う教師が増加。生徒の顔色

が明るくなった。

●先進校視察に行ってみて

校門を入り事務で受け付けを済ます。広い校地にゆった

り感、よく清掃の行き届いた落ち着いた雰囲気を感じた。

授業ではまず寝ている生徒がいない、各教室整頓されてお

り黒板もきれい、これが学校全体を包む「落ち着いた雰囲

気」だと思った。学力レベルは本校より上だが、それ以上に

生徒を在学中にあらゆる面で伸ばす意欲に満ちた学校だ

と感じた。総合的な人間力アップを目指しているといった感

じであった。60 分授業の目的は「対話を活性化させるた

めのものであり一方通行の授業改善からスタート」。生徒の主

体的な活動や対話を取り入れること、つまりそれだけの時

間が必要であるとの判断から導入されたものである。

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第 4号 平成 29年 10月 6日

生徒主体の学びづくり

●岩手県立盛岡第三高等学校 平成 29年 9月 25 日(月)

校訓 随処為主(ずいしょいしゅ)

鴻鵠之志(こうこくのこころざし)

・・・主体性や大きな志を重んじる校風

広い敷地に 5 階建ての校

舎。校舎内は木のぬくもり

を感じさせる明るい造り

になっている。

●アクティブラーニングを導入した経緯

校長の「結果は出ているが、生徒も教員も疲れ切ってい

る。大丈夫か?」という問いかけから始まり、「経営企画

課」を創設。これを各分掌の上に位置づけ、改革の中心と

した。

まずは図書室に自主学習スペースを設けるような、小さ

なことから始めながら、参加型授業(後のアクティブラー

ニング)への構想を深めていった。このようにして実績を

作っていき、教員内での経営企画課への信頼度を上げてい

った。軌道に乗るまで約 10年の年月を要している。

←各教室にある

黒板の左右には

ホワイトボード

を設置。時間割

や宿題などが書

かれている。

●アクティブラーニングはゴールではない

「どういう生徒にしたいのか」「どういう学校にしたい

のか」がゴールであり、アクティブラーニング自体はその

ための方法に過ぎない。例えば、考査には思考力を問う問

題を入れている科目もあるが、それは、各科でのゴールが

設定されているからこそのものである。

●成果をできるだけ外へ発信

ディベートの発表を中学生体験入学時に、課題研究発表

を文化祭に・・・というように、アクティブラーニング型

授業での成果物を、できるだけ学校の外に発信できるよう

にしている。こうした活動によって、後輩達は先輩達の活

躍を見ているので、翌年、翌々年に自分達が何をするか、

何を求められているかを理解している。

また、そのためのカリキュラムを工夫している。(例:「ア

プライド英語(1 年次 1 単位)」・・・年間を通じて英語プ

レゼンの手法等を学び、それを実践する。)

こういった活動により、平成 23年度に文科省より SSH

(スーパーサイエンスハイスクール)指定。平成 29 年度

からはそれを引き継ぐべく、SRH(サイエンスリサーチハ

イスクール)として活動している。

●行事や特別活動にも力を入れる

体育祭 3日間、文化祭 3日間、修学旅行 4泊 5日。他校

同様、学校行事にも力を入れている。

部活動へは全員入部。運動部・文化部両方で実績を残し

ている部活動も多く、文武両道を実現している。19時に完

全下校となるまで活動している。生徒はそれから帰宅し、

勉強をしている模様。

●生徒の時間を保障

朝、昼、放課後の補習や呼び出しは行わない。これによ

り生徒自身の時間を保障し、部活動の活性化、自主的な学

習の後押しとしている。

朝は 6時半に開門(これだけ早いのは地域特有の交通の

便の問題解消という意味もある。)早朝に登校して自習を

している生徒もいる。職員室の前には机が置かれており、

そこで先生に質問をしながら勉強をすることが可能(ただ

し、これが「自主的な学習」になっているかどうかは賛否

両論あるとのこと。)

●コース

2年次から文系・理系に分かれる。

理系に「理数探究コース」を1クラス設置。海外研修に

も赴き、提携している大学において成果発表を英語で行う

など、積極的な学びを後押ししている。

←発表のた

めに作成し

たポスター

(すべて英

語)

●教員へのフィードバック等

授業公開時は、どの授業へも、少しの時間でも見学可能。

「校内授業力向上研修会」等を設け、お互いの授業を研究

し合っている。職員室内ではなるべく学年・教科担当ごと

に集まれるように座席を配置し、情報交換が容易にできる

ように配慮している。

生徒には授業評価アンケートを実施(年 2 回。)管理職

がアンケートの結果をまとめた上で個票を作成して、各教

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員へ還元している。

●授業内容について

・ほとんどの英語の授業はオールイングリッシュで行って

いるわけではなかった。

・英語の活動内容に特異なものはなかったが、答えをすぐ

に与えるのではなく、「個人で考える」→「隣同士で話し

合う・確認し合う」→「全体で確認」の流れがどの授業で

も共通していた。

・教室の黒板にはタイマーが設置されており、必ず時間を

設定して活動を開始していた。

・1、2年生の数学の授業では、オーソドックスな講義型の

授業が多かったが、折に触れ「隣の人同士で確認してくだ

さい」、といった投げ掛けを入れ、受け身一辺倒の授業に

ならないような工夫をしていた。また、問題を解くときは

必ず制限時間を設け(タイマーを活用)、3分や 5分といっ

た時間の感覚が身につくような指導を行っていた。

・2年生のあるクラスの数学の授業では、前半 25分を

プロジェクターを使った説明にあて、後半 25分を 4~

5 名のグループを作っての問題演習にあてていた。最初は

個々に解いているが、そのうち早く終わった生徒がわから

ないでいる生徒に教えたり、お互いに相談し合ったりしな

がら、最終的に全員が解き終わっていた。

←ペアワークが多いせ

いか、教室の机の配置

は机同士をくっつけて

いる教室が多かった

(学年の方針とのこ

と。)

→携帯電話についてのルールは

生徒会が作成した。教員は携帯を

触っているところを見ても何も

言わないという。

「科学と人間生活」の授業風景

●考査の内容

アクティブラーニングの内容を考慮した考査・・・「あ

なたの意見を 50語程度で書きなさい」「○○について、80

語~100 語であなたの意見とその理由を2つ書きなさい」

といった問いを設け、表現力の強化を図っている。

数学の考査問題においては、1つの問題を異なる2つの

解法で解かせ、今回の問ではどの方法を用いるのが最も合

理的かを述べさせる問題を出すなどの工夫をしている。

●受験に対する意識

約 7割の生徒が国公立大学に合格していることが、彼ら

の勉強への動機づけとなっているところがある。3 年生の

教室がある階の廊下には、受験を後押しする言葉が書かれ

たホワイトボードが置かれていた。

●盛岡三高が参加型授業に取り組む理由

(1)学力の 3要素(思考力・判断力・表現力)をバラ

ンスよく育むため。

(2)教育目標(「瞳輝くリーダーを育てる」、「生徒個々

の夢を叶える学校」)を実現するため。

(3)育てたい生徒像(自主性に富んだ人間、社会の未

来を創造する人間、友愛に満ちた人間)を実現するた

め。

(4)サイエンス リサーチ ハイスクールを通して、

求められる資質・能力を育むため。

●先進校視察に行ってみて

学校全体としてアクティブラーニングに取り組み、成果

を上げるまでになるのは、一朝一夕にはいかない、と強く

思いました。経営企画課を中心に、教員の共通理解を得た

うえで、どうすれば参加型授業がうまくいくのかを毎年検

討・実践し、各教科においても授業改善のための努力を教

科全体で続けていく体制ができています。

また、そういった成果を分かち合うシステムがあり、毎年

内容も充実してきていることがよくわかりました。

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第5号 平成 29 年 10 月 16 日

学ぶ力の獲得を目指して

●埼玉県立川口北高等高校 平成 29 年 10 月 3 日(火)

近年飛躍的に大学合格実績が向上している高校であり、

2017 年度は国公立 63 名、早慶上理 19 名、MARCH102

名の合格者を出す。全人教育、リベラルアーツに学校を上

げて取り組んでおり、「大学合格のための学び」ではなく

「知性と高い志を育むための学び」の獲得を目標としてい

る。55 分制授業、土曜授業は行っておらず、希望者は土

曜講習を受講することができる。部活動も盛んであり、近

年では水泳部、男子バスケットボール部がインターハイ出

場、囲碁将棋部が全国大会出場といった成績を残している。

目指す学校像は、「知性と教養を身に付けるとともに、高

い志と品格を備え、互いに高め合い敬い協力し合う、日本

及び国際社会の進展に貢献する生徒を育成する」。

●キャリア学習

「他者とのかかわりの中で課題を見つけ、自ら学び続け

る探究心を育む―発見・創造・実現-」をテーマに、3 年

間を見据えた指導を行っている。各学年にキャリア教育用

のテキスト(学校作のもの)が存在し、生徒はこの 1 年間

のキャリア教育で何を学び自分がどうなっていくのかを

容易に描くことが出来る。このテキストの中には「進路希

望調査」(ミシン目付で記入後切り

取って提出できるようになってい

る)、「担任との面談シート」等も含

まれている。キャリア教育・進路実

現に向けた取り組みの全てを網羅

した内容であり、完成度が非常に高

い。

キャリア教育は校内のキャリア教育委員会主導で行わ

れており、メンバーには事務、養護教諭等も含まれている。

二月に 1 回程度キャリア便りを発行(教員向け)。

●進路指導

「チーム川北」…教科・分掌・委員会がそれぞれ一丸とな

り、校内全員で進路指導に取り組んでいる。10 年前まで

は専門学校進学者が 40 名弱いたが、現在は 5 名前後であ

る。ただし「大学進学を目標とする」といった指導は一切

していない。土曜講習において年間 10 回程度実施される

「リベラルゼミ」を通し、様々な分野に目を向けさせるな

ど、バランス良く指導を行うための工夫をしている印象。

●指導力向上に向けて

指導主事を定期的に授業見学に招く、週 1 回教科会、教

科内担当者会を持つなど指導力向上に励んでいる。また、

偏差値同レベルの周辺の高校何校かでグループを組み、情

報交換や授業見学を行っている。

●ALへの取り組み(英語)

(ねらい)「生きる力へとつながる『学ぶ力』の獲得」

・英語理解(3 年生・選択)

いいずな書店「change the world」を使用。deforestation

を扱った題材。大学入試レベル程度の英文に関する設問に

答えた後、その題材を扱った様々な生きた英語に触れさせ

る。この時間中だけでも、youtube、インターネットのホ

ームページからの抜粋(最新の deforestation の状況が分

かる資料)、雑誌からの抜粋と、多くの英語に触れること

ができる。授業はペアワークやグループワークの時間がほ

とんどである。生徒たちは日本語で会話を交わしているが、

output は完全に英語で行う。分からない単語や表現は言

われなくても辞書を使用して調べて何とか英語で output

しようと試みていた。授業者の先生は上智大学の池田真先

生の影響を受け CLIL の研究をされており、「英語を通し

て知識を獲得する」ことを毎時間に目標とされていた。読

んだ英文をただ summarize して終わり、retelling を行っ

て終わりではなく、そこから reproduction へとつなげて

いる。この時間の最後の活動は「今までに得た知識を活用

して、deforestation の解決策を考える」、生徒たちは”to

try to substitute other materials for timber”など、それ

ぞれの考えを英語で示していた。

・英語表現Ⅱ(3 年生・必修)

3 年生の英語表現の授業は年間を通して essay writing

を行なっている。今回のテーマは”Should Japanese high

school students go abroad on school excursion?” である。

essay writing に関しては 1、2 年生の時から継続して行っ

ているため、生徒たちは英語で何かを書くことに慣れてい

る様子。5 分間黙々と書き続けており、手が止まる生徒は

ほとんどいなかった。この日は essay の内容を用いてさら

に small debate を行っていた。affirmative opinion と

negative opinion をそれぞれ一つずつ考えて debate を行

い、最後にその内容をふまえて自分の意見を練り直す、と

いう構成だった。

●最後に

7 月に行われたベネッセコーポレーション「東京都英語

指導研究会」の場で講師としてお話をされていたのがこち

らの英語科の先生で、それをきっかけに今回学校訪問をお

願いしました。英語の授業を中心に見学させていただいた

のですが、「学ぶ力を如何に獲得するか」というテーマは

どの教科にも共通した課題ではないかと感じました。川口

北の先生方は学力観に関して明確な見解を持っています。

その上で、全員がチームとなって前向きに学ぶ集団作りに

向けて日々研鑽に励んでいました。お話を伺った進路指導

主事(主任に当たる)の先生が、「うちの生徒はこうしな

きゃいけない、こうならなきゃいけない、といった目標は

全く設定していない。」とおっしゃっていたのが印象的で

した。学校が設定した目標ではなく、生徒が各々設定した

目標に向けてのびのびと取り組んでいる印象を受けまし

た。

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都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第6号 平成 30 年 2 月 7 日

堀川高校「探求活動」の取組

●京都市立堀川高等高校視察 平成 30年 1月 17日(水)

府内公立のトップ校。SSH、SGH の研究指定を受けて

いる。普通科、人間探求科、自然探求科があり、各 2 クラ

ス 1 学年約 240 名規模の学校である。2007 年から 30 人

以上の現役京大合格者を輩出していることから、全国的に

その学習方法が注目されている。「総合的な学習の時間」

で行われる「探求基礎」の授業が特色。校長先生のお話で

は、近隣の学校との差別化を重視しているとのこと。偏差

値ではなく、「堀川高校で学びたい」と受験生に思わせる

ことによってミスマッチが減り、入学後も頑張る生徒が入

ってくるようになる、と分析されていた。

【学校目標】「自立する 18 歳の育成」を図る

(左)外観

(右)校舎中央

のアトリウム。

垂れ幕は、3 学年

のもの。

入学時、学年

ごとに校長先生

から漢字一字が

贈られる。

●堀川高校における探求活動

答えが用意されていない問題に自分なりの答えを出し、

他者に伝えることを目的とした活動。質の高い研究成果が

目的ではない。しかし、質の高い研究をしようとする過程

で、課題を生み出す着眼点・データ収集・理論性などの点

において様々な困難を解決しなければならない機会が増

えることから、結果的に質の高い研究を目指す指導が行わ

れている。大学のゼミ、卒論の取り組みに近い印象である。

●探求基礎の流れ

1 年前期~2 年前期までの取り組み。1 年次 2 単位、2

年次 2 単位の計 4 単位。実際に生徒が自身の力で探求を

すすめるのは 2 年生前期の「JUNP」であり、準備段階と

して 1 年生前期の「HOP」、後期の「STEP」がある。HOP

は「探求の『型』を学ぶ」、STEP は「探求の『術』を身

に付ける」、JUNP は「探求の『道』を知る」という位置

づけ。

●HOPの授業(1年前期)

4 人(SSH、SGH の加配により人数の多い科)で 2 ク

ラスの生徒を担当。クラス単位授業。グループワーク中心

の演習を通じ、探究活動の進め方、クリティカルシンキン

グ、論理的推論、情報収集の方法、探究課題が満たすべき

要件と課題設定、成果論文を発表することの意義とその方

法を学ぶ。印象に残ったのは「ツッコミシャワー」。他者

が提案した課題に対し、できるだけ多くの問いを投げかけ

る。問いに対しての答えを想定したり、様々な視点から問

いを作るワークシートが用意されている。HOP 終了時に

は「JUNP」探求基礎発表会(ポスター発表会)を見学。

その後の研究のヒントとしている。

●STEP の授業(1 年後期)…今回はここを見学

約 11 分野のゼミに分かれての活動。10~12 名の生徒に

対し、教員 2 名、大学院生 1 名での授業展開。視察は各

自の課題設定の時期であり、ゼミにより授業形態は異なっ

ていた。言語・文化ゼミと国際文化ゼミは図書室で各自必

要な文献を集めながら、教員・大学院生による個別面談。

教員や大学院生との対話を通し、生徒の思考を深めていく

やり取りが多くみられた。人文社会ゼミでは、テーマの設

定理由、研究方法の発表会。発表後の質疑応答では様々な

視点からの意見や指摘があり「ツッコミシャワー」の学習

が定着していることが窺えた。発表者は、それらを基に課

題設定の再検討を行うとのこと。生物ゼミは実験に時間が

かかるためテーマはすでに決定しており、実験方法につい

ての議論が教員を含めた 6 人のグループで行われていた。

STEP での課題設定が探求学習最大の難関ということ

で生徒の発想だけに任せず、教員が流れを前もって把握し、

授業に当たっているとのことであった。

●JUNP の授業(2 年前期)

論文作成に向け、生徒それぞれが探究活動計画を作成。

実験・調査活動を行い、ゼミでの中間発表報告会やポスタ

ー発表会で多方面からアドバイスや指摘を受ける。受けた

指摘を含め論文の手直しを行い、最終論文提出をして 1

年半の探究活動が終了となる。

●探究活動を継続するために

人的流動性があるものの探究活動は約 20 年間形を変え

ずに継続されている。そのために、誰でも探究活動の指導

が行える体制が整えられている。研究部が設置され、年間

計画、指導計画、ワークシートの作成を行う。1 年半の活

動内容・資料を冊子にまとめ研修を行う。授業計画につい

ては、研究部会議、授業担当者会議の 2 回が毎週開かれる。

●その他

「自立する 18 歳」がキャッチフレーズとなり、学校全

体が同一方向を目指して教育活動に取り組んでいる。また、

行事や学校説明会、海外研修(行程の半分)を生徒に任せ、

修復可能な失敗はさせるとのこと。教員、生徒共に多忙な

印象を受けたが、解消のために年 5 回 17 時完全施錠の日

を設け、学校外の時間を設ける工夫もみられた。

1 年半に及ぶ『探究活動』は生徒の「根」を養う土壌で

あり、自分で学ぶ姿勢を身に付けた生徒は自ら育っていく

のではないかと思われた。全てを生徒任せにはせず、ガイ

ドラインを用意し、統一した指導がなされることで 20 年

間ぶれない教育が可能になり、現在の堀川高校がある。一

方で、手法は教えるものの教員が教え込まない姿勢が、精

神と学力の向上に繋がるのではないかと思われる。

高校 3 年間で身に付けさせたい力を明確にすることの

大切さを改めて感じた視察であった。

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体育

地歴公民

国語

英語

理科 数学

都立本所高校 アクティブ・ラーニング通信 第 7 号 平成 30 年 2 月 7 日

組織的な授業改善

●静岡県立韮山高等高校 平成 30 年 1 月 24 日(水)

【自主性を重んじる教育】

モットーである「自ら思考し、自ら実

践する」の実現を目指し、特別活動、

放課後の諸活動をできる限り、生徒の

自主的、自発的活動にゆだね、自主自

立の精神を陶治しています。また、ノ

ーチャイム制で、自ら主体的に行動す

る原則を貫いています。

【サイエンス・アドバンススクール

(平成 27 年度から 3 年間指定)】

学力向上、進路指導等について先進的な方策を用い、計画

的・組織的に実践することによって、生徒の学力、教員の

授業力、学校の教育力等を効果的に向上させる方法を研究

することを目的としています。

主な取組としては以下のとおりです。

① 課題解決学習と発信力…課題研究及び校内研究発表

会/サイエンスダイアログ(英語による講義)

② ICT活用と言語活動…ICT 活用、言語活動を積極的に

取り入れた授業(論文作成)の研究

③ 入試改革を見据えた授業改善…学習活動評価指標(ル

ーブリック)の作成/授業中の活動評価に基づくアク

ティブラーニング/カリキュラム・マネジメントの研

④ 大学訪問…東京大学・東北大学等訪問/卒業生との交

流、研究の模擬体験

⑤ 地域との連携…反射炉・富士山・ジオパークに焦点を

当てた地域学習及びボランティア活動等

【進路実現をサポートする指導とキャリア教育の推進

(平成 28 年度文部科学省表彰受賞)】

3 年間を見通した計画的な進路指導(進路シラバス)の徹

底を図り、生徒の進路実現を強力にサポート。また、面接

を通して、一人一人の生徒をよく理解した上で、的確な助

言指導を行っています。

●進路指導

「韮高方式」と呼ばれる、3 年間の進路シラバスに従った

計画的な進路指導を行い、難関国公立・私立大学に多数合

格。

(平成 29 年度版 静岡県立韮山高等学校 学校概要より一部抜粋)

【学校としての取り組み】

本格的に学校として AL に取り組み始めたのは平成 27 年

度のサイエンス・アドバンススクールに指定された年から。

今年度で 3 年目。各教科から 1 名ずつファシリテーター

を選出し、SAP(サイエンス・アドバンス・プロジェクト)チームを結成。

SAP メンバーによる会議で出た課題・成果などを各教科

に持ち帰り、フィードバックを行っています。また、教科

の特性を生かした授業作りをし、SAP で共有し、他教科

で実践できる組織体制を作ってます。

【教員研修】

平成 28 年度は 6 回の教員

研修を行っている。SAP メ

ンバーによる会議で出た課

題・成果を研修で改善・反

映をさせています。

そして、教員研修での成果

や改善点を日頃の授業や授

業公開週間で実践していま

す。

平成 29 年度は 7 回実施。

写真は日本教育新聞 第 6109 号(日本教育新聞社

平成 29 年 7 月 17 日発行)に掲載された記事。

(平成 28 年度 静岡県立韮山高等学校

教員研修資料より一部抜粋)

【数学・国語の授業を見学】

数学科・国語科の SAP メンバ

ーの授業を拝見しました。数学

(数学Ⅲ)は 50 分間通してグ

ループでの授業で、先生がポイ

ントを説明し、わからない問題

などをグループ内で自由に教

え合う授業スタイルで活気が

ありました。国語(現代文・古

文)は筆者の考えたことや漢文の白文の読み方をペアワー

クで話し合っていました。(写真は古文のペアワークを撮

影したもの)

【先進校視察に行ってみて】

韮山高校では新聞委員による学校新聞『龍城学報』で AL

型授業が取り上げられるほど生徒から見ても、教員の授業

が飛躍的に変わっていったそうです。

SAP

自己分析と計画

言語活動・論文作成

論理・プロセス

論述指導・知識活用

[SAP①]

本校の現状と将来

[教員研修]

指導主事・評価に

ついて

[授業公開週間]

評価を意識した授業

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美術部ボランティア(高齢者認知症防止カフェ) 主任教諭 森田 真理子

日時:12/14(木)14:00~15:30

会場:墨田区ほんわカフェ(向島 3-33-13)

参加者:美術部10名 対象:高齢者23名

【主な内容】

●アイスブレイク(自己紹介)

●対話による鑑賞

●歓談

経緯・ねらい

墨田区ではいくつかの「高齢者カフェ」があり、一人暮らしの高齢者や認知症介護者といった地域

の方々が集い食事やお話を楽しむ場を提供するというもので、住民が主体となって企画している。

本校美術部は今までに、絵手紙や工作などのボランティアとして訪問してきたが、今回は私が授業

にて力を入れている「対話による鑑賞」を行うことにした。これは、一つの作品を見ながら発言をし、

鑑賞者同士が対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく鑑賞方法で、問題解決能

力や主体的思考力、コミュニケーション能力などの知的能力の育成も期待できることから、現在多く

の美術館博物館などでも取り入れられている。

こうめ高齢者総合支援センターの齋藤ゆかり氏と相談を重ね、本所高校美術部の「美術による脳ト

レ体操」を企画した。

事前準備(基本方針の検討)

期末考査後、午前授業のみの12/13(水)、部員で集まり、顧問によるデモンストレーション。話

し合った結果、「スライドは高齢の方には見にくい」「小さいアートカードよりやりやすそう」という

ことで、手元に作品コピーを用意し、世代間交流が目的の「対話による鑑賞」を行うことにした。

事前準備(生徒の実践練習)

各々好きな作品を選び、まずは自分自身で対

話。気付いたことをどんどん付箋に書いていき、

様々な回答を予測した(これは高校生にもやり

やすかったようで、一人で30枚以上も書いて

いる生徒もいた)。

その後、3人ほどのグループで順番にファシリテー

ターとなり、意見交換。

「ゆっくり」「はっきり」「相手の意見を尊重する」

「敬意」「楽しく」「笑顔」「感謝」に気を配った。

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顧問は作品をB4~A3サイズに拡大コピー、5枚ずつ準備した(コンビニのカラー印刷はかなり

の金額になったので、次回は時間に余裕のある時にパソコン室などを利用できるとよいだろう)。

当日の様子

翌14(木)、生徒2~3名・利用者3~4名のグループに分かれ、3分間作品を見てから緊張とと

もに開始。すぐに打ち解け、互いに笑顔が見ら

れるようになった。

1作品20分ほど話した後、何人かの生徒は

最後に「タネ明かし」として絵の作者や作画の

背景等が明らかにし、詳細を説明。出された意

見について、その発想の面白さを共有していた。

↑自分の作品を使っての対話。

折しも出品中であった展覧会の宣伝も行えた。

生徒の感想

・参加した方々に楽しんでもらえて、前日からどの

絵を持っていくか準備した甲斐があった。

・一緒にお話ししたおばあちゃんから貴重なお話を聞けた。

・楽しかった。またやりたい。

参加者の声

・美術館にはよく行くけれど、こんなにじっくり作

品を見たのは初めて

・本当に楽しかった!またやってほしい。

・自分一人ではなく、いろんな人の意見が聞けて面

白かった。いろんな絵を見られて勉強になった。

高校生が高齢者の立場になって考えることは容易ではない。現時点では話すスピードや話術も未熟

であるし、さらに深めて対話をしていくこと、企画段階から関わらせることも可能だと思われる。

また、少しずつ、“どうすれば相手に喜んでもらえるか”“相手はどういう心境でいるか、環境はど

うか”“社会はどうなっているのか、そのために自分は何ができるか”と視野を拡げてゆくことが出来

れば理想的である。

現段階では反省点も多々あるが、それを教員が話して理解させるのではアクティブ・ラーニングと

は言い難い。

次の回が更に良くなるように、「生徒主体で」気付くよう、努力していきたい。

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1・2年合同 プレゼンテーション大会

日時:3/1(木)5・6時間目

●プレゼンテーション(教室)

第1ターム 13:15~13:25

第2ターム 13:25~13:35

第3ターム 13:40~13:50

第4ターム 13:50~14:00

第5ターム 14:05~14:15

第6ターム 14:15~14:25

●全体会(第1体育館)14:45~15:05

経緯・ねらい

本所高校では、「総合的な学習の時間」の時間内で、各学

年とも異なるテーマの「課題解決学習」に取り組んでいる。

まず 1学年において、本校が存在する墨田区が、今から

8年後にどうなっていたらワクワクするか、そしてそれを

実現させるにはどうしたらいいかを考える「地域課題解決

学習」に取り組む。NPO 法人 THOUSAND-PORT が実施してい

る FUTURE MAKING DIALOGUEを通して、チームでのディスカ

ッションやブレインストーミング、副区長との対話といっ

た活動を経験することによって、未来を創造する力やチー

ムにおける協調性を養うことを目標として指導している。

さらに2学年においては、6社の企業(NTTドコモ、大和ハウス、Panasonic、富士通、テレビ東京、

クレディセゾン)のインターン生として、企業から与えられた課題に対する提案をチームで考案する

「企業課題解決学習」に取り組む。全20回の授業を通して、チームでの話し合いの進め方や企画案

の立て方を学ぶとともに、自身の職業観を育成し、社会の中で自分が担う役割について考える機会と

する。(株)教育と探求社によるクエストエデュケーション(企業探求コース)を採用し、校内でのブ

レインストーミングや情報収集、校外でのアンケート調査といった活動を通して実際の企業活動に触

れることで企業の個性を知り、自らの職業観を育むことを目標としている。

指導計画(1学年)

1.チームで考えることについて / 墨田区について知る 2時間

2.高野副区長との対話 / インプットとアウトプットについて 2時間

3.ミライについて考える 4時間

4.墨田区インターネット配信ニュース記事作成 6時間

指導計画(2学年)

1.活動準備(企業エントリー、新人研修) 3時間

2.インターンシップ(アンケート調査、ミッション受け取り) 4時間

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3.ミッション解決(企画会議) 5時間

4.プレゼンテーション(プレゼンテーション研修、プレゼンテーション実施) 8時間

なお、本校代表として、1学年の1チームが「高校生ドリームプランコンテスト」に、2学年の1

チームが「クエストカップ 2018 ポスターセッション部門」にそれぞれ出場した。

プレゼンテーション大会

1学年は、ミライの墨田区ネットニュースのプレゼン、

2学年は各企業からのミッションに対する提案をプレゼ

ンすることをそれぞれにテーマとし、行った。1学年は

1チーム10分のプレゼンを1回、2学年は2回行い、

自分達のプレゼン以外の時間は会場を巡り他チームを見

学した。1学年は模造紙を使って新聞を作成、2学年は

パワーポイントを使用してプレゼンを行った。他クラス

の友達や違う学年の生徒を前にして最初は少し戸惑った

ようだったが、生徒は自分達で時間をかけて考えたアイデ

ィアを、自信を持って発表していた。メモを見ながら話し

続ける生徒が多い中、話す内容を整理しながら自分の言葉

で相手に伝えようとしている生徒もおり、練習の成果がう

かがえた。

また、当日の進行・運営は2年生のチームリーダーが担

当した。全体を指揮し、動かしていく難しさを感じたであ

ろうリーダーたちには、一層の成長を期待したい。

講評(外部講師の方より)

・社会人になると、大勢の意見を一つにまとめて誰かに伝える力が必要な場面が多くある。そのた

めの学習だと思って取り組んでほしい。

・「プレゼンテーション」は「プレゼント」。誰かに何かを「与える」気持ちでプレゼンに取り組も

う。聞く側の人の心を動かすようなプレゼンを。

・ひとつの取り組みから色々派生して拡がっていくような大人顔負けのものもあり、一昨年、昨年

と少しずつ学びが深まっていると感じています。

1・2学年の全チームが各教室で同時にプレゼンを行うのは初めての試みだった。テーマとしては、

①全員が取り組むプレゼンテーション大会にする ②進行は全て生徒(2年生のプレゼンリーダー)

が行う ③お互いのプレゼンテーションから学び合う 以上の3つを設定したが、課題を感じる点も

多くあった。今後の指導に生かしていきたい。生徒にとっては5か月間の学びの成果を確認する良い

機会になったと思われる。特に1年生にとっては、2つの課題解決学習を経て様々なスキルを身に付

けた先輩の姿を目の当たりにして、1年後の自分に向けての良い刺激となったのではないだろうか。

変化していく社会に柔軟に対応できる人間として生徒が成長できるよう、さらにこのような機会を設

定していきたい。

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校長室だより 第5号

平成 29年 9月 1日

校長 堀切 哲弥

<2学期始業式での話>

おはようございます。本日より新学期が始まりました。皆さんの元気な顔を見ることができ

て、とてもうれしいです。今年の夏休みは、計画通りに過ごせたでしょうか。充実していたと

いう人もいれば、やることを先延ばしにしている内に、あっという間に時が過ぎてしまったと

いう人もいることでしょう。未消化の分はこれからも継続し、その成果を実らせてください。

私も夏休み中、様々な講演会で話を聞いたり、関連する本を読んだりしました。中でも、刺

激的だと感じたのはコンピュータ関係、AI(人工知能)の急速な発展です。コンピュータの世

界では、ムーアの法則という「半導体の集積率は 18か月で 2倍になる」という経験則があり

ます。つまり、コンピュータの性能が 1年半で 2倍と「指数関数的に上昇する。」ということ

です。その結果、これからの世の中は変化がさらに早くなります。現在の職業の多くは、今後

なくなっていき、「子供たちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就く」とい

うことも言われています。

多くの仕事が自動化され、人間とコンピュータが共存する社会においては、新しい価値を作

り出せる「独創性」や「創造力」がますます重要です。受け身で知識を習得するだけの学習で

はなく、自ら問題意識をもって、自ら学び、他の知識と結び付けて考えを深めたりする「主体

的な学び」が求められます。また、他の人と協力して問題を解決するためには、自分の考えを

伝える「表現力」も必要です。

本校において総合の時間で行う、1年生の「地域課題研究」、2年生の「クエストエデュケ

ーション」(企業探究コース)は、まさにこうした力を伸ばすための「探究型」の学習です。

こうした学習に積極的に取り組むとともに、普段の学習においても、指示されたことだけをや

るという受け身の姿勢ではなく、興味をもったことを本やインターネットで調べて、深める。

行事においてはオリジナリティを追及するなど、前に一歩を踏み出してほしいと思います。

2020 年東京オリンピック・パラリンピックまで、3 年ということで様々な報道やイベント

がありました。東京都民、皆さんがホスト役であるということです。オリンピック・パラリン

ピックに向けても、選手として参加する、観客として応援する以外にも、ボランティアとして

参加する方法もあります。例えば、外国の方に日本の良さを伝えたい、障害者の方にとっても

暮らしやすい共生社会を目指して心のバリアフリーを進めたい、持続可能な社会づくりを進め

たいなど、自分のやりたいこと、貢献したいこと、進めたいことなどを考えて、自分のテーマ

を持って、そのためにこんなことをしようと考えて臨んでほしいと思います。例えば、東京都

や墨田区等で開かれている「おもてなし講座」に参加する、東京都で行っている使わなくなっ

た携帯電話から金属をリサイクルしてメダルをつくる取組に協力する、自らアイデアを提案す

る等、様々あると思います。

さて、2学期は文化祭を始め、様々な行事があります。また、3年生は進路決定に向けた取

組が本格的に始まり、忙しい毎日になるでしょう。是非、毎日の学習等への取組みとともに、

体調管理に努め、充実した2学期のスタートを切ってください。

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校長室だより 第6号

平成 29年 12月 1日

校長 堀切 哲弥

本所高校は、本年度からアクティブ・ラーニング推進校に指定されています。本

所高校では、「自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナーを育てる」をテ

ーマに掲げ、先進的に取り入れている学校への視察、研修、授業研究等に取り組ん

でいます。

アクティブ・ラーニングが必要とされる背景は、グローバル化の進展や人工知能

(AI)に代表されるICTの急速な発展などにより、社会が急速かつ大規模に変

化していることにあります。激しく変化する社会を生き抜いていくためには、「生

涯を通じて学び続ける力」、「創造力を発揮し多様な人々と協働する力」や「答えの

ない課題に挑戦し新しい価値を生み出す力」などが必要とされます。

こうした力を身に付けるためには、「何を学ぶか」だけではなく「どのように学

ぶか」ということが重要になります。総合の時間で行う、一年生の「地域課題研究」、

二年生の「クエストエデュケーション」(企業探究コース)は、まさにこうした力

を伸ばすための「探究型」の学習です。各教科の授業でも、思考力を求める課題や、

生徒同士の教え合い、ペアワーク、グループワーク、発表活動などを取り入れてい

ます。学習を振り返る力をつけるために、その時間の学習目標を明示した上で、授

業の最後に自己評価や学習のまとめを各自が書くように求められる授業も増えて

いるでしょう。

大事なことは、アクティブ・ラーニングをするのは生徒の皆さんだということで

す。目的を理解し積極的に取り組むことで、学習の効果も高まります。自ら課題意

識を持って主体的に学び、その結果を振り返ることで自分自身の成長を実感し、さ

らに上の目標にチャレンジする意欲を高めていってほしいと思います。

Page 26: 自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナー …必要な思考力・判断力・表現力等を育成するため「アクティブ・ラーニング」の手法を活用して、受動

編集後記

今年度からアクティブ・ラーニング推進校として、学校全体で深い学びに向けた研究を

行っています。視察校や大学の先生、教育庁指導部には御教導・御教示を賜り感謝申し上

げます。

本校にはまだ多くの教育実践があり、次号以降では紙面を工夫してご紹介いたします。

次期高等学校学習指導要領や大学入試改革に向けて始動しておりますが、今後も関係各位

の御指導・御鞭撻・御支援の程、お願い申し上げます。

平成 30 年 3 月 副校長 玉川弘文

平成 29 年度 アクティブ・ラーニング推進校 研究報告書

自律的・主体的に学び続けるアクティブ・ラーナーを育てる

発行日 平成 30 年 3 月 25 日

編 集 東京都立本所高等学校 アクティブ・ラーニングプロジェクトチーム

(玉川 弘文、澁谷 徹、大和 雅俊、信澤 直明、近藤 悠大)

発行者 東京都立本所高等学校

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東京都墨田区向島3丁目37番25号

Tel 03-3622-0344

印 刷 有限会社 福本印刷所

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