高熱伝導性アスファルト舗装(低熱性舗装)...
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高熱伝導性アスファルト舗装(低熱性舗装)
技術説明資料
平成 20年 3 月
株式会社イーエスイー
1
目 次
1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2. 新技術の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3. アスファルト舗装の熱による劣化・・・・・・・・・・・・・・・3
4. 新技術の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4.1 交通負荷と夏期における高温・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4.2 交通負荷と冬期における低温・・・・・・・・・・・・・・・・・6
5. 技術的解決策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
6. 施工1:性能把握試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
7. 施工2:道路試験舗装・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
7.1 道路での試験舗装その1・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
7.2 道路での試験舗装その2・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
8. 試験施工箇所の騒音測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
9. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
10. 参照文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
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1.はじめに
ここで御紹介する技術は、舗装構成材料の熱伝導に着目し、保水性舗装と異
なるメンテナンスフリーを目指した温度抑制型舗装工法です。
株式会社イーエスイー(以下 ESE と言う。)社の発案構想からドイツ連邦材料・
技術研究局(以下 BAM と言う。)にて開発プロジェクト(プロジェクト 7115:都
市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適な舗装の開発)が設立され、
BAM と ESE との協同にて 2004 年(平成 16 年)4 月に開発が完成しました。
2004 年(平成 16 年)6 月 BAM によりドイツにて出願され 2007 年 3 月特許が
成立しました。(Nr.102004029869)(図-1 参照)
日本では BAM、ESE にて 2004 年(平成 16 年)12 月に特許を出願しました。
(P2004-368638)、(PCT/JP2004/019076)
この技術を日本のアスファルト舗装に用いるため、2004 年(平成 16 年)8 月
(財)名古屋市建設事業サービス財団において屋外実証実験、さらに同年 9 月
には県道諸輪名古屋線(名古屋市南区鶴見通)にて試験舗装を行い夏期におけ
る路面の温度上昇を緩和する効果が実証されました。
こうした経緯において本技術を「高熱伝導性アスファルト舗装(低熱性舗装)」
と命名し御提案いたします。(以下、低熱性舗装という。)
2.新技術の概要
低熱性舗装は、高い熱伝導率を有する結晶質石英を粗骨材、細骨材およびフ
ィラーとして用いることでアスファルト舗装体の熱拡散を高め、さらに太陽光
の輻射熱を迅速に拡散させることで舗装体内部の温度上昇を抑制することがで
きます。
低熱性舗装を日本のアスファルト舗装に適する開発を行った結果、夏期にお
けるアスファルト舗装路面の温度上昇を抑制し路面のわだち掘れを低減したり、
都市部のヒートアイランド現象の緩和等の効果を有するアスファルト舗装工法
が開発できました。
低熱性舗装は BAM の「都市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適
な舗装の開発」最終報告書(1)および(2)において日本の主要都市での数理
研究や名古屋市での気象データを基に、数理のシュミレーションを行い解析し
た結果、以下のような提言をしています。
①表層には高い熱伝導を有する非常に明るい結晶化した石英を選択すること。
②基層には高い熱伝導と高い熱容量を有し、任意の色の(例えば石英のような)
鉱物骨材を使用すること。
③表層の反射率を向上して輻射のパワーを弱める。
④各層の熱浸透能力を向上して、表層から下部構造へ熱放散を促進する。
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図-1 BAM のドイツ特許
3.アスファルト舗装の熱による劣化
BAM の最終報告書の内容を示します。 日本では舗装工法としてアスファルト
舗装、コンクリート舗装がありますが、施工性や騒音性からアスファルト舗装
が用いられることがまだまだ多いです。
しかし、アスファルト舗装では夏期における路面温度が 60℃にも達するため
路面からの輻射(放射とも言います)があります。その関係を図-2 に示します。
図-2 舗装路面での熱のフローチャート
輻射による熱の影響は、ヒートアイランド現象の要因となったり、また路面
のわだち掘れを促進し冬期には収縮ひび割れ等、舗装の耐久性が低下し易くな
ります。 これら舗装の耐久性の関係を図-3 に示します。
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図-3 異なる外部条件下の舗装内部の応力状況
そのため少なくともヒートアイランド現象の緩和を目的とした保水性舗装や
遮熱舗装などの技術が行われています。
また、わだち掘れなどの対策には高粘度バインダーの使用や表層を明色化(白
色など)する技術が行われています。 従ってアスファルト舗装の耐久性を向
上させるためには、わだち掘れなどを起こし難い高粘度バインダー等の使用や
表層を白色化し下層に熱伝導させない技術が必要となります。
参照文献:
1)「都市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適な舗装の開発」最終
報告書(1)日本における代表的な都市舗装の熱力学性質の数理研究:ドイツ連
邦材料・技術研究局、2004 年 4 月
2)「都市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適な舗装の開発」最終
報告書(2)名古屋における極限の夏期、冬期条件化でのアスファルト舗装につ
いて従来の都市舗装と新しいタイプの都市舗装の温度算出:ドイツ連邦材料・
技術研究局、2004 年 5 月
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4.新技術の特徴
図-4 瀝青舗装の動的熱力学によるヒートアイランド効果を緩和する方策
低熱性舗装の特徴を理解するために BMA のアスファルト舗装に対する考え方
を整理すると以下のようです。
図-4は材料と熱力学から見た対策方法ですが、実際の舗装は交通が伴い状況
により繰り返し負荷により舗装内部の各層に圧力を与えています。
これら舗装材料の疲労により、夏期のわだち掘れやその後の冬季の低温化に
よりひび割れが生じることは日本でも良く知られています。
BAM の実験やシュミレーション解析結果からの見解を夏期、冬期に分けて再録
すると以下のようです。
4.1 交通負荷と夏期における高温:
この研究のポイントは車輪の中心にある舗装内部の応力分布である。交通負
荷による曲げ応力はこの場合に最大値に至る。
上部では圧縮応力、下部では引張応力が増大する。外部温度による負荷が発
生して、高温による応力を見ると、縦方向の温度差が舗装の自重による座屈か
ら均質の曲げ応力を生じさせている。 さらに、高温による舗装の横方向の膨
張が全舗装を通して摩擦による圧縮応力を生じている。
これらの応力が重ね合わさって、舗装の上部の車輪の中心に当たる部分に大
きな圧縮応力が生じてしまう。 粘性と弾性をあわせ持つという瀝青材料の特
性が高温の場合にさらにこの効果を高める。 材料の圧縮限界を超えると、ア
スファルトが応力の小さいところに移動してしまう。
つまり、わだち掘れが発生してしまうことになります。
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4.2 交通負荷と冬期における低温:
気候による応力と交通負荷による応力が反対の方向であるため、ここでのポ
イントは、わだち掘れが発生した後の膨張しなかった部分の応力分布である。
交通負荷が曲げ応力を生じている。夏期の状態と違って、下部では圧縮応力、
上部では引張応力が増大する。
低温による応力をみると縦方向の温度差が舗装の自重による座屈から均質の
曲げ応力を生じさせている。
さらに低温による舗装の横方向の収縮が全舗装を通して摩擦による引張応力
を生じさせている。
これらの応力が重ね合わされて、舗装の上部の膨張しなかった部分に大きな
引張応力が生じてしまう。
その後、応力が材料の引張強さを超えた場合に、表層にひび割れが発生して
しまう。
次の図-5は表層、バインダー層(基層)の熱機械学の性能を向上させる方法
をまとめたものです。
図-5 瀝青舗装の熱機械学によるヒートアイランド現象を緩和する方策
具体的に夏期、冬期のダメージを減少するためには、舗装構造の曲げ強度係
数を向上させる努力と熱による応力を減少させる努力が必要です。
したがって温度膨張率の小さい骨材を使用することが唯一の熱による応力を
減少させる方法です。
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5.技術的解決策
都市におけるヒートアイランド現象を緩和させるために、BMA の実験やシュミ
レーション解析結果からは、使用寿命が長く且つ温度が抑えられるアスファル
ト舗装が望まれています。
ここで推奨される舗装は既存の路盤の上を 2 つの層で覆うというもので、使
用する施工方法と施工機械は全て一般化したもので行っています。
具体的には平均 9.5cm の使用寿命の長いバインダー層の上に、さらに 2~3cm
の明色の表層が設置されて、合計の施工厚さは約 12cm になるものです。
図-6にその断面を示します。
図-6 表層、バインダー層(基層)の断面図
このアスファルト舗装は次の特徴を持っております。
① 表層が高い反射率を持つ。
② 高い熱伝導率を持つ。(主に高い熱伝導率を持つ石英の使用による効果であ
る。)
③ 強い曲げ抵抗を持つ。(高い弾性係数(レジリエントモジュラス)、低い塑性
変形、バインダー層が厚く曲げ抵抗が強い)
④ 低い熱膨張係数を持つ。(石英骨材とポリマー改質バインダー使用、バイン
ダー層(基層)に適当な空隙がある。)
仕様、混合物配合、各層の熱性能と機械性能を次の表-1(バインダー層)、表
-2(表層)に示します。
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6. 施工 1:性能把握試験
(財)名古屋市建設事業サービス財団の試験工区 9 工区で 1m×1mの場所に
施工し、その配合および条件は表層配合を表-1、バインダー層(基層)配合
を表-2に示します。
表-1 表層の配合および条件
配合 第 1工区 第 2工区 第 3工区 第 4工区 第 5工区 第 6工区 第 7工区 第 8工区 第 9工区
岩種
(表層種)
珪石
(SMA)*1
珪石
(SMA)*1
珪石
(SMA)*1
珪石
(SMA)*1
珪石
(排水性)
*1A
珪石
(排水性)
*1A
珪石
(排水性)
*1A
砂岩
(SMA)*1
砂岩
(SMA)*1
バインダー 黒
Caribit45*3
白
Mexphalt*4
黒
タフパック M
白
メロウファルトⅡ
黒(カラ-タフ
ファルト)
白
TPS
黒
TPS
白
メロウファルトⅡ
黒
タフパック M
石粉 Mikrosil
type3 *2
Mikrosil
type3 *2
石英
フィラー
石英
フィラー
石英
フィラー
石英
フィラー
炭酸カルシ
ウム
炭酸カルシ
ウム
炭酸カル
シウム
繊維 Technocel Technocel MC*5 MC*5 - - - MC*5 MC*5
添加剤 PrplastS*6 PrplastS*6 PrplastS*6 PrplastS*6 - - - PrplastS*6 -
顔料 - Tio2 - Tio2 - Tio2 - Tio2 -
*1:砕石マスチックアスファルト 8㎜ TOP *1A:10㎜ TOP *2:石英フィラー相当品 *3:高粘度バインダー相当品
*4:高粘度脱色バインダー相当品 *5:セルロース繊維 *6:アスファルト改質材
表-2 バインダー層(基層)の配合および条件
配合 第 1~2工区 第 3~6工区 第 7~9工区
岩種
(表層種)
珪石
(粗粒)*8
珪石
(粗粒)*8
砂岩
(粗粒)*8
バインダー Caribit25 *7 タフパック M タフパック M
石粉 Mikrosiltype3 *2 石英フィラー 炭酸カルシウム
添加剤 - PrplastS *6 -
*7:改質 2 型アスファルト相当品 *8:粗粒配合 20mmTOP
各種混合物の物理的性能及び熱的性状を以下の表-3、表-4、表-5 に示します。
試験工区の状況を写真-1、写真-2 に示します。
写真-1 試験工区の転圧 写真-2 試験工区の完成
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表-3 表層の性能 1(砕石マスチックアスファルト:SMA)
表-4 表層の性能 2(排水性アスファルト)
表-5 バインダー層(基層)の性能
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それらの物理性状を図-7 に示します。
図-7 各工区の物理性状
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熱的性状等を図-8 に示します。
図-8 各工区の熱的性状など
珪石使用し表面反射を良くした場合と砂岩を使用した通常のアスファルト舗
装との温度差は約8 degの温度差が見られており、総合的な差があるようです。
珪石と砂岩の熱伝導率の差では 2~3 degの温度差が見られ熱伝導の良い骨
材を使用することで表面温度差に差を生じることが確認されました。
図-9 新技術舗装の効果の内訳模式図
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これらの結果をまとめたもので、表層面の温度差による模式図を図-9 に示し
ます。
表層にはトータルされた温度差が現れており、今回の試験では基層以下の路
盤、路床での熱環境は同一です。
表層、基層の各舗装での昼間、夜間での温度差異を示したのが表-6 です。
表-6 混合物熱伝導と舗装内部の温度差
2004 年(平成 16 年)8 月 4 日4時 40 分(最低温度時)
2004 年(平成 16 年)8 月 4 日 13 時 30 分(最高温度時)
これを図化したのが図-10 です。
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0 20 40 60 80 100 120 140
舗装深さ(mm)
温度(℃)
ドイツ黒
日本黒
砂岩黒
ドイツ白
日本白
砂岩白
2004.8.4(最高温度時)
図-10 2004 年(平成 16 年)8 月 4 日最高温度時の内部温度
最高気温時ではドイツ白(珪石、表面白、SMA)が基層下面(路盤上面)で最
も低い温度となっています。
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これは総合的に熱拡散が最も良いことを示していると言えます。
次の図-11 は最低気温時の舗装深さ別の温度です。 ここでは表層の色に関係
なく材質、粒度の物理的な差が現れています。
ドイツ白、ドイツ黒(いずれも珪石、SMA)が基層下面(路盤上面)で最も低
い温度となっています。
砂岩を使用したものは、前日の熱エネルギーがまだ十分に伝達拡散されずに
残っており約 5degドイツより高くなっています。
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0 20 40 60 80 100 120 140
舗装深さ(mm)
温度(℃)
ドイツ黒
日本黒
砂岩黒
ドイツ白
日本白
砂岩白
2004.8 .4(最低温度時)
図-11 2004 年(平成 16 年)8 月 4 日最低温度時の内部温度
したがって、砂岩を使用した場合、表面は日中に高温になり易く、路盤には
まだ前日の熱が残っています。
反対に珪石は熱が残り難く、熱拡散が機能していると言えます。
以上から性能把握試験において日本の材料でも以下に示したように十分に効
果が得られることが分かりました。
①珪石使用し表面反射を良くした場合と砂岩を使用した通常のアスファルト舗
装との温度差は約 8 degの温度差が確認されており、総合的な差がある。
②珪石と砂岩の熱伝導率の差では 2~3 degの温度差が見られ熱伝導の良い骨
材を使用することで表面温度差に差を生じることが確認された。
③ドイツ白、ドイツ黒(いずれも珪石、SMA)が基層下面(路盤上面)で最も低
い温度となり熱拡散に優れていることが確認されました。
参照文献:
熱伝導に着目した温度抑制舗装の検討:近藤守、高木茂樹、武井真一、第 26 回
日本道路会議、2005 年 11 月
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7. 施工2:道路試験舗装
7.1.道路での試験舗装その 1
性能把握試験において十分な効果が確認できたことから公道での試験舗装を
行いました。 表-7 にその概要を示します。
表-7 道路試験舗装の概要
路線名 県道諸輪名古屋線
場所 名古屋市南区鶴見通 6 丁目
規模 延長 60m、3 工区、各 20m、幅員 4m
工事時期 2004 年(平成 16 年)9 月
測定項目
路面温度 表面、中間、舗装下
気象データ 気温、日射量、風速、他
施工状況を以下の写真に示します。
写真-3 転圧時の状況 写真-4 完成後の工区
試験施工の工区の舗装構成を図-12 に示します。
図-12 試験工区の舗装構成
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今回の試験では比較部分の従来舗装、黒色高熱伝導舗装が表層、バインダー
層(基層)合わせて 10cm、明色高熱伝導舗装(ドイツ仕様)は 12cm で明色部分
2cm は磨耗層としています。
路盤は比較部分で 15cm、明色高熱伝導舗装では 13cm の再生ソイルアスファル
トを使用しています。 試験舗装工区の配置図を図-13 に示します。
図-13 試験舗装工区の配置図
2.2. 試験舗装の測定値
試験舗装工区では施工直後(9 月)と 6 ヵ月後(3 月)に計測しました。
まず色の 3 属性、アルベド(反射率)測定結果を表-8、表-9 および図-14、図
-15 に示します。
表-8 試験舗装工区の色の 3 属性測定結果
表-9 試験舗装工区のアルベド性測定結果 図-14 色の 3 属性測定結果
図-15 アルベド測定結果
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代表的な測定例を図-16 に示します。
図-16 施工直後の施工工区各層の温度変化データ
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図-16 の最高温度時の試験工区比較を図-17 に示す。
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0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280
舗装深さ(mm)
温度(℃)
従来(17日)
試験1(17日)
試験2(17日)
従来(18日)
試験1(18日)
試験2(18日)
2004.10.17~18(最高温度時)
図-17 施工後の試験工区最高温度時の各層の温度変化
図-17 では試験工区 1 のドイツ仕様が最も熱拡散が良いことを示している。
同様に図-16 の最低温度時の試験工区比較を図-18 に示す。
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0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280
舗装深さ(mm)
温度(℃)
従来(17日)
試験1(17日)
試験2(17日)
従来(18日)
試験1(18日)
試験2(18日)
2004.10.17~18(最低温度時)
図-18 施工後の試験工区最低温度時の各層の温度変化
図-18 でも熱拡散の良い試験工区 1 では熱が残らない特性を示している。
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7.2 道路での試験舗装その 2
他の公道(県道)での試験舗装を行いました。 表-10 にその概要を示します。
表-10 道路試験舗装の概要
路線名 県道一宮川島線
場所 一宮市大宮5丁目
工事時期 2007 年(平成 19 年)10 月
施工状況を以下の写真に示します。
写真-5 表層敷均し 写真-6 表層転圧状況
写真-7 1 レーン終了 写真-8 反対レーン敷均し状況
写真-9 反対レーンの転圧状況 写真-10 転圧終了後の路面状況
低熱性舗装は、従来の施工方法においても支障なく施工できました。
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8. 試験施工箇所の騒音測定
(1)測定場所
名古屋市南区鶴見通 6 丁目の試験施工区間
3 工区、:従来工法(密粒表層)
BAM 提案白色表層(工区 1)
BAM 提案黒(工区 2)
(2)測定結果
従来工法の騒音値を基に工区別の騒音測定による従来工法との差による騒音
低減の具合を図-20 に示す。
-3.0
-2.5
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
従来工法 従来工法-白(工区1) 従来工法-黒(工区2)
工法(工区)
騒音差(db)
30km/h
40km/h
50km/h
60km/h
図-20 従来工法との騒音差(平成 16 年 10 月末 名古屋市環境局交通公害対策課測定)
図-20 から工区 1 の BAM 提案舗装の白色表層(工区 1)の騒音は、従来工法
(密粒表層)より 30~60km/h走行では-1.6~-2.4dbの騒音低減がみられ、特
に 50~60km/h走行時では平均-2.2dbの騒音低減がみられた。
同様に BAM 提案の粗粒度の工区 2 では-0.3~-1.2dbの騒音低減がみられた。
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9. 試験舗装のまとめ
(1)性能把握試験
性能把握試験において日本の材料でも以下に示したように十分に効果が得ら
れることが分かりました。
①珪石使用し表面反射を良くした場合と砂岩を使用した通常のアスファルト舗
装との温度差は約 8 degの温度差が見られており、総合的な差がある。
②珪石と砂岩の熱伝導率の差では 2~3 degの温度差が見られ熱伝導の良い骨
材を使用することで表面温度差に差を生じることが確認された。
③ドイツ白、ドイツ黒(いずれも珪石、SMA)が基層下面(路盤上面)で最も低
い温度となり熱拡散に優れていることが分かりました。
(2)試験施工
試験施工においては以下の結果が得られました。
①珪石を用いたアスファルト混合物は物理性状、施工性の面では従来舗装と同
等の性状を示すことから、問題ないと考えられる。
②舗装体の温度測定結果より表層面で珪石を用いることにより 2.5℃deg 程度、
珪石を用いて色調を白くした場合には8℃deg程度の路面温度低減が確認された。
③以上の結果は平成 16 年 7 月に実施された温度抑制舗装の舗装体温度に関する
調査のために実施した試験施工と同様な結果となっている。
④BAM 提案舗装の白色表層(工区 1)の騒音は、従来工法(密粒表層)より 50
~60km/h走行時では平均-2.2dbの騒音低減がみられた。
(3)既存工法との性能比較
試験舗装などの調査データより、既存の温度抑制舗装技術と高熱伝導性舗装
(低熱性舗装)との比較を表-13 に示す。
表-13 高熱伝導性舗装(低熱性舗装)と既存温度抑制舗装技術との比較
工 法 特 徴 効 果 耐久性
高熱伝導性舗装
(BAM)
明色の高熱伝導骨材を使用
して、熱の反射や伝導効果に
より、路面温度を下げる。
7~9℃ 素材の耐久性がある
限り効果は安定的に
持続。
保水性舗装
舗装体に保水材を充填し、保
水機能を持たせることで、水
分の蒸発潜熱により路面温
度を下げる。
10~15℃
降雨・打水時
保水材の存在により
効果は持続するが、
水分の補給が不可欠
である。
遮熱性舗装
舗装表面に遮熱材を塗布す
ることで、赤外線の反射効果
を高め路面温度を下げる。
10℃程度 表面のはがれ等で効
果減少。
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10.参照文献
1)「都市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適な舗装の開発」最終
報告書(1)日本における代表的な都市舗装の熱力学性質の数理研究:ドイツ連
邦材料・技術研究局、2004 年 4 月
2)「都市舗装におけるヒートアイランド効果の緩和に最適な舗装の開発」最終
報告書(2)名古屋における極限の夏期、冬期条件化でのアスファルト舗装につ
いて従来の都市舗装と新しいタイプの都市舗装の温度算出:ドイツ連邦材料・
技術研究局、2004 年 5 月
3)熱伝導に着目した温度抑制舗装の検討:近藤守、高木茂樹、武井真一、第 26
回日本道路会議、2005 年 11 月