既設橋梁の維持管理に配慮した 橋梁拡幅設計について ~豊田 ...2583~4990...
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既設橋梁の維持管理に配慮した 橋梁拡幅設計について
~豊田新屋立体富山跨線橋~
飯野克宏1・松森亨2・太田一幸3・折谷佳城4
1・2・3・4富山河川国道事務所 工務第二課 (〒930-8537 富山市奥田新町2番地1号)
一般国道8号富山跨線橋は下り線が1974年,上り線が1983年に建設されたJR(現,あいの風
とやま鉄道)を跨ぐ連続高架橋であり,富山外郭環状道路豊田新屋立体事業に伴い既設橋梁に
ON,OFFランプを増設するための拡幅が必要となった(図-1).本論文は,既設橋梁の拡幅設
計において実施した維持管理性の向上及び長寿命化について報告するものである.
キーワード 拡幅設計,維持管理,長寿命化,既設橋梁,縦目地,CIM
1. はじめに
近年,道路橋の高齢化に伴い維持管理費の増大が社会
的に大きな問題となっており,新設橋梁の設計を行うに
あたっては将来の維持管理が容易な構造形式を選定する
とともに,LCC最小を目指した長寿命化が命題となって
いる. 既設の富山跨線橋は既に建設から30年以上経過してお
り,かつ今よりも古い基準(S47道示,S55道示)で設計
された橋梁であったため,新設橋梁だけではなく既設橋
梁の維持管理にも配慮した拡幅設計を行う必要があった.
2. 橋梁の概要
(1) 既設橋梁の概要 跨線部を除くアプローチ部にはPCプレテンション方
式の単純桁形式が採用されている. 既設橋梁(上り線)の諸元を以下に示す. 橋 種:PC単純プレテンション方式T桁橋 幅 員:2.0m[email protected]m+0.5m=9.50m 竣 工:1983年 設計活荷重:TL-20(一等橋)
(2) 新設橋梁の概要 既設橋梁の上部工形式が一体化困難なPCT桁橋であっ
たため,境界部に縦目地を設けて構造を分離する拡幅形
式とした(図-2).橋種には経済性に優れ幅員変化に容
易に対応できるPC中空床版橋(場所打ち)を採用した.
新設橋梁(上り線)の諸元を以下に示す. 橋 種:PC5径間連続中空床版橋(新屋地区),
PC4径間連続中空床版橋×2連(豊田地区) 橋 長:108.833m(新屋地区),174.112m(豊田地区) 幅 員:2.646~2.780m(下図参照) 設計活荷重:B活荷重
図-2 拡幅後標準断面図
新屋地区 豊田地区
あいの風とやま鉄道
上り線
AU1 PU1 PU2 PU3 PU4 PU5
PD6PD4 PD5PD3PD2PD1AD1 PD7 PD8 PD9
上り線OFFランプ橋 L=108.833m
下り線ONランプ橋 L=208.658m
NO.65
N O.7 0
NO.75
NO.80
上り線ONランプ橋 L=174.112m
PU15PU14 PU16 PU17 PU18 PU19 AU2
下り線OFFランプ橋 L=87.072m
AD2PD21PD20PD19PD18
PU20 PU21
NO.85
NO.90
下り線
至 新潟
至 金沢
図-1 平面図
8897
4500 4500
8200
L=51.0m,n=4本
場所打ち杭 φ1000 場所打ち杭 φ1000
L=50.5m,n=4本
8700
20022000
20027002600
50095009500500
22000上り線下り線
下り線 OFFランプ 上り線 ONランプ
3002583~4990
3002646~2780
2000
15000
1100
1100
1000
本線部 ランプ部
4 5 0 5 6 0
( 既設 ) ( 新設 )
3. 維持管理に向けての課題
上り線豊田地区の拡幅構造を対象とし,維持管理に向
けての課題及び対応策について詳述する.
(1) 既設橋梁と新設橋梁との境界部
既設橋梁と新設橋梁は構造が完全に分離しているため,
境界部に縦目地を設けて橋面を連続させる必要があった
が,上部工形式の違いや単純桁と連続桁との違いにより,
活荷重載荷時のたわみ差が縦目地部に発生する(図-3).
図-3 活荷重たわみのイメージ この他,縦目地は経年的な劣化損傷により桁下への漏
水の原因になる恐れがあることや,横断方向に配置され
る伸縮装置との取り合いにも留意が必要であり,たわみ
量の差に追随しながら耐久性及び止水性に優れる縦目地
構造を選定することが課題と考えられた.
また,大規模地震が発生した場合においても床版や橋
脚梁等の主要な部材が衝突により損傷することを防止し,
橋としての機能の回復を速やかに行える状態が確保でき
るように配慮することも必要と考えられた.
(2) 既設橋梁の耐荷力
富山跨線橋は建設当時の設計活荷重がTL-20であるた
め,現行の示方書に示されるB活荷重を載荷した場合,
拡幅前の現況に対してでも主桁や床版において許容値を
満足しない結果となる(表-1).
表-1 主桁応力度(拡幅前)
また,ランプ増設による拡幅に伴い既設橋梁に対する
活荷重の載荷幅が現状よりも増加することから,既設主
桁及び床版の負荷は更に増加し,建設当時の設計活荷重
(TL-20)においてもG10主桁及び張り出し床版の照査で
許容値を満足できない結果となった(図-4).
図-4 拡幅前後の活荷重載荷幅 2012年に実施された橋梁定期点検の結果では,活荷重
に起因する損傷は発生しておらず健全な状態を保ってい
る状況ではあるが,拡幅後の既設主桁に対する中長期的
な安全性確保が課題と考えられた(写真-1).
写真-1 既設橋梁の現状
(3) 既設橋梁の損傷 本橋梁は鉄道を跨ぐ橋であり縦断勾配が3%と急勾配
に設定されていることから,冬期にはスリップ防止のた
めの凍結防止剤が散布される.このため,縦目地の経年
的な劣化損傷に伴い塩化物イオンを含んだ橋面水が漏水
し,直下にある張り出し床版の横締めPC鋼材定着部や橋
脚の梁に塩害損傷を発生させる原因となる恐れがある.
近年、新設橋梁に対しては塩害対策区分Ⅰ相当の鋼材
かぶりを確保することで耐久性の向上を図っているが,
十分なかぶりが確保されていない既設橋梁に対しては,
狭隘なスペースでも定期的な点検や損傷が発生した場合
の補修等が確実に実施できるように配慮することが課題
と考えられた(図-5).
図-5 縦目地付近の詳細
初期引張応力度 (N・mm²)
導入直後プレストレス (N・mm²)
有効プレストレス (N・mm²)
PC鋼材増加応力度 (N・mm²)
曲げ破壊安全度
合成応力度
導入直後 (N・mm²)
死荷重作用時 (N・mm²)
設計荷重時 (N・mm²)
設計時せん断力 (kN)
終局時せん断力 (kN)
終局時平均せん断応力度 (N・mm²)
斜引張応力度(設計時) (N・mm²)
※ 右:発生応力 左:許容応力 ※ 許容値超過
G10桁着目
10.71 < 16.00 -1.58 > -1.80 12.47 < 16.00 -4.15 < -1.80
せん断応力度
コンクリー
ト
240.46 290.14
438.27 562.48
2.702 < 6.000 3.574 < 6.000
0.556 < 1.200 0.838 < 1.200
0.24 > -1.80 17.62 < 21.00 0.24 > -1.80 17.62 < 21.00
4.91 > 0.00 6.92 < 16.00 4.91 > 0.00 6.92 < 16.00
830.3 < 1020.0
938.6 < 1020.0 1003.3 < 1020.0
1.185 > 1.000 1.005 > 1.000
コンクリー
ト
上縁 下縁 上縁 下縁
曲げ応力度
PC鋼材
曲げモーメント (kN・m) 1333.25 1506.00
1270.0 < 1305.0 1270.0 < 1305.0
1074.3 < 1190.0 1074.3 < 1190.0
830.3 < 1020.0
拡幅前(現状)
断面図
活荷重 TL-20(竣工時) B活荷重(最新)
着目桁
梁
柱
フーチ ング
隅角 部
付 け根付け 根
隅角 部
基礎 杭
R C 巻立て 補強 済
増厚補 強済
縦目地の許容移動量
橋軸方向 54mm 地震時 70mm
橋軸直角方向 27mm 地震時 30mm
鉛直方向 27mm 活荷重載荷時 50mm
最大移動量
(4) 既設橋梁の耐震補強
既設橋梁は1998年(H10)に耐震補強工事が実施され
ており,上下線一体のラーメン式橋脚については梁及び
柱のRC巻立て補強が行われている.補強済みの梁及び
柱については,東北地方太平洋沖地震を踏まえ2012年
(H24)に改訂された現行の耐震基準でも必要な耐震性
能は確保されていたが,フーチング及び基礎杭について
は必要な耐震性能が全ての橋脚で確保されていないこと
がわかった(表-2,図-6).
これより,拡幅工事が今後実施する耐震補強工事の妨
げにならないよう配慮することが課題と考えられた.
表-2 既設ラーメン式橋脚の照査結果
図-6 ラーメン式橋脚正面図
4. 対応策
(1) 縦目地の構造
縦目地は横断方向に設置する伸縮装置と異なり,活
荷重たわみの差により生じる鉛直方向の移動の他に,既
設主桁と新設主桁が橋軸方向にずれる移動及び既設主桁
と新設主桁の遊間が橋軸直角方向に変化する移動を考慮
した構造とする必要があったため,表層のゴム版をダイ
ヤ上に加工することで3次元の移動に追随できる荷重支
持型ゴムジョイントを縦目地構造として採用することと
した(表-3).
なお,縦目地は橋軸方向に長いスパンで設置され通
行車両がジョイントの上を通過することもあるため,排
水性と摩擦抵抗の増大を目的とし表層ゴムにネットを3
層に織り込み,その上にピンを打ちつけた構造とするこ
とで安全性にも配慮した.また,桁端部には縦目地の他
に横断方向に設置される一般的な伸縮装置があるため,
縦目地と伸縮装置を同形式の一体構造とすることで表層
ゴムを連続化し,交差部における止水性の向上を図った
(図-7,写真-2).
表-3 縦目地の移動量
図-7 桁端部の縦目地構造
写真-2 交差部施工事例 1)
(2) 既設橋梁と新設橋梁との遊間 既設橋梁と新設橋梁との床版遊間や橋脚梁の離隔は,
大規模地震時に衝突しないよう適切に設定する必要があ
ったため,既設橋梁を含めた時刻歴応答解析(動的解析)
を実施した.解析により大規模地震時の挙動を把握した
上で190mmの床版遊間を設定し,地震時後に橋として
の機能の回復が速やかに行える状態を確保した(図-8).
図-8 床版及び橋脚梁の遊間
3500 3500 500
500
第1車線 第2車線 側帯路肩1500
ランプ部
9000(既設横目地)
15000
14000 500
5000
1800(定尺)
1400(端尺)
1800(交差部)
拡幅橋梁 既設橋梁
交差部
(3) 既設上部工の補強
ランプ増設による拡幅に伴い,既設橋梁に対する活荷
重の載荷幅が現状よりも増加することから,既設主桁及
び床版の照査を実施した.
a) 主桁の補強
既設橋梁の主桁は,拡幅前の現況にB活荷重を載荷し
た場合でも主桁下縁におけるコンクリートの引張応力度
の照査で許容値を満足しない.
これより,既設橋梁の耐荷力照査要領(案)2)に示す
レーン載荷の考え方を含めた主桁照査を実施した.
〔照査ケース〕
ケース1;TL-20(建設当時の設計活荷重)
ケース2;B活荷重フル載荷(現行道示の設計活荷重)
ケース3;B活荷重レーン載荷
照査の結果,建設当時の設計活荷重であるTL-20でも
拡幅の影響でG10(外桁)が許容値を超過し,B活荷重フ
ル載荷では全ての桁が許容値を超過する結果となった.
一方,実際の交通状況に近い活荷重の載荷方法と考えら
れているレーン載荷の照査では,全ての桁が許容値以内
に収まる結果となった(表-4).
このように既設橋梁部分をレーン載荷で照査すれば既
設主桁の対策は不要と考えられたが,拡幅による荷重増
加の影響を大きく受けるG10桁については,現状よりも
発生応力度が増加しTL-20相当の耐荷力が確保されてい
ないことが解ったため,拡幅工事に合わせてG10主桁の
補強を行うこととした.主桁の補強工法は,鋼板接着工
法や外ケーブル工法を含めた比較検討を行った結果、経
済性及び施工性に優れる炭素繊維シート接着工法(高弾
性炭素繊維シート3層;目付け量300g/m2)を採用した
(図-9).なお,今回補強を実施しない既設主桁(G2~
G9)については,今後の定期点検等により経過観察を行
うこととし,活荷重に起因する損傷が発見された場合は
速やかにB活荷重フル載荷に対応した補強を実施する方
針とした(図-10).
図-9 既設主桁の補強イメージ
図-10 既設主桁の対策方針検討フロー
表-4 主桁応力度(拡幅後)
主
桁
合
成
応
力
度
(
G
1
0
桁
最
大
時)
建設時と同じ活荷重であるが、拡幅の影
響でG10のみ許容値を満足できない。全ての桁で許容値を超過する。 全ての桁で許容値を満足する。
ケース1(TL-20) ケース2(B活荷重フル載荷) ケース3(B活荷重レーン載荷)
概
要
図
(
活
荷
重
載
荷
図)
照
査
結
果(N/mm2)
許容値 現況 拡幅後G7 9.12 9.04G8 9.47 9.43G9 9.92 9.91G10 10.71 10.73G7 0.08 -0.09G8 0.44 -0.72G9 -1.12 -1.51G10 -1.58 -2.10
上縁 16.00
下縁 -1.80
(N/mm2)
許容値 現況 拡幅後G7 10.43 10.46G8 10.85 10.98G9 11.40 11.63G10 12.47 12.83G7 -1.98 -2.33G8 -2.62 -3.17G9 -3.45 -4.22G10 -4.15 -5.17
-1.80下縁
16.00上縁
(N/mm2)
許容値 現況 拡幅後G7 9.32G8 9.44G9 9.58G10 9.91G7 -0.52G8 -0.74G9 -0.98G10 -0.89
16.00
-1.80
上縁
下縁
赤字:現況→拡幅後で応力度が増加 (-は引張応力度)着色:許容値を超過
P:線荷重(kN/m)
p:等分布荷重(kN/m2)p1,p2:等分布荷重(kN/m2) p1,p2:等分布荷重(kN/m2)
G10桁のみ許容値を超過 全桁許容値を超過 全桁許容値を満足
赤字:現況→拡幅後で応力度が増加 (-は引張応力度)着色:許容値を超過
G 9G 8G 7G 6G 5G 4G 3G 2G 1 G 1 0
変動 5 5 0 0 変動
P ( p )
1 / 2 P ( p ) 1 / 2 P ( p )
7 5 0 0 4 7 5 0
3 5 0 03 5 0 05 0 0 3 2 5 0 1 5 0 0
G 9G 8G 7G 6G 5G 4G 3G 2G 1 G 1 0
変 動 5 5 0 0 変動
p 1 ( p 2 )
1 / 2 p 1 ( p 2 )1 / 2 p 1 ( p 2 )
7 5 0 0 4 7 5 0
3 5 0 03 5 0 05 0 0 3 2 5 0 1 5 0 0
G 9G 8G 7G 6G 5G 4G 3G 2G 1 G 1 0
3 2 5 0 1 5 0 0
4 7 5 0
5 0 0 3 5 0 0 3 5 0 0
7 5 0 0
2 7 5 0変動 変動変 動 2 7 5 0 変 動変動 2 7 5 0 変動
1 / 2 p 1 ( p 2 )p 1 ( p 2 )p 1 ( p 2 )
1000
750
20 710 20
170 100
530
40 160
350
25050 50
100150
100
高弾性炭素繊維シート目付量300g/m x3層(W=250mm t=0.143mm/層)
2
b) 床版の補強
既設橋梁は現在使用されている壁高欄を撤去し床版の
先端に新たに縦目地が設置されることから,拡幅に伴い
G10桁(外桁)における片持ち床版の張り出し長が現状
よりも大きくなる(図-11).床版には横締めのPC鋼材
が配置されているが,床版の付け根に生じる上側引張の
応力度が許容値を満足しない結果となった.
図-11 片持ち床版図 これより,G10桁の片持ち床版については補強工法の
比較検討を実施した結果,既設構造に与える影響(荷重
増,既設の削孔等)が小さく,経済性及び施工性に優れ
る理由より,下面のコンクリート増し厚と上面の炭素繊
維接着を併用した工法を採用することとした(図-12).
なお,舗装の打ち替え等の将来的な橋面の維持修繕に
配慮し,床版上面に接着する炭素繊維には舗装切削時に
損傷のリスクが高い一般的な炭素繊維シートではなく,
強化プラスチック板として加工された炭素繊維プレート
(NETIS;KT-110058-VR)を採用した(写真-3).
図-12 片持ち床版の補強イメージ
写真-3 炭素繊維プレート施工事例(eプレート工法)3)
(4) 狭隘空間の対応
既設橋梁と新設橋梁に挟まれる縦目地直下については,
既設床版の増し厚補強等により狭隘な空間となる恐れが
あったため,主桁の断面形状を工夫することで将来の近
接目視点検や断面補修等の維持管理が可能な空間を確保
した.特に狭隘となる既設床版の横締めPC鋼材定着部付
近については、予防保全対策としてPC鋼材の飛び出し防
止対策及びシラン系含浸材(NETIS;KK-120047-VR)によ
る表面保護塗装を検討し,第三者被害の予防と長寿命化
を図った(図-13).
図-13 維持管理空間の確保
(5) 既設橋脚の耐震補強
新設橋梁の橋脚位置及び形状を決定するにあたっては,
今後必要となる既設ラーメン式橋脚の耐震補強の妨げに
ならないよう配慮した.現況照査の結果,必要な耐震性
能が確保されていない基礎杭については,桁下制限下で
も施工可能な大口径ボーリング工法(場所打ち杭φ1000)
による増し杭補強を想定し,新設橋脚の離隔を決定した.
フーチングについては,増し杭に必要な拡幅と合わせて
上面の増し厚補強を想定し,横断水路や地下埋設物の付
け替え計画に反映させた(図-14,15).
図-14 橋脚正面図(増し杭補強後)
既設
舗装
厚上
り線
80mm
下り
線50mm
10
拡幅
後舗
装厚
上り
線70mm
下り
線40mm
床版
樹脂
50mm×2mm ctc150
炭素繊維プレート
床版上面ブラスト
不陸修正(耐熱用 樹脂 )
防水層
190
1130250
1100
600
250
PC鋼材定着部
維持管理空間
飛び出し防止対策
表面保護塗装
下り線下り線 OFFランプ
上り線上り線 ONランプ
15000
場所打ち杭φ1000
L=51.000m N=14本
8897
4500 4500
8200
8700
20022000
20027002600
400
200
160
40
155
輪荷重
80
405
アスファルト舗装 t=80
635 190
P=100.0kN/輪(BT)既設壁高欄
コンクリート増し厚
75
320
250
560
110150300
250
85
横締めPC鋼材 1S19.3@500
400
260 190 455
635
375 905
縦目地
床版上面補強
炭素繊維プレート
250
1000 395 375
1770
設置ピッチ:@150mm高弾性 幅50mm×厚さ2.0mm炭素繊維プレート
樹脂モルタル t=10mm
定着長
床版上面ブラスト
2000(現橋路肩幅)
655
3207
0
増し厚
6000
1100
0
2000015000
2500
25002500
2500
図-15 増し杭配置図
5. CIMの活用
様々な計画及び検討の妥当性を視覚的に確認するため,
富山跨線橋全体をモデル化した3次元CIMデータの作
成を行った.既存構造物の台帳(既設橋梁,地下埋設物
等)や国土地理院の基盤地図情報,測量データ,航空写
真を基に作成した現況モデルに,拡幅に必要な構造物の
設計図面データ(CAD)を取り込み,拡幅後の形状が
表現できる程度のレベルでCIMデータを作成した
(図-16).
CIMを活用することで既設橋梁と新設橋梁との取り
合いや維持管理空間の確保等,維持管理や長寿命化に配
慮し計画した構造形式を3次元的に可視化することがで
き,妥当性の確認及び課題解決に向けてのフィードバッ
クを行うことが可能となった(図-17).
図-16 拡幅後の全体鳥瞰(新屋地区)
図-17 既設橋梁との取り合い確認
また,既存の地下埋設物や横断水路等をモデルに取り
込むことで,拡幅工事及び将来実施予定の増し杭工事の
支障となる箇所を事前に確認することができ,移設に向
けての関係機関協議等に活用した(図-18).
図-18 地下埋設物との取り合い確認
6. まとめ
今回の拡幅設計では,H24道示で新たに追記された
『設計の基本理念』に準拠し,維持管理の確実性及び容
易さに配慮した様々な検討を実施した.特に,新設橋梁
と同等の高い性能が確保されない既設橋梁に対しては,
耐荷重性能や耐久性能を向上させるための補強や長寿命
化対策を行った.また,将来の点検や補修が容易に実施
できるような対策を行うことで,新設橋梁と同等の耐用
年数を目指した設計を行った.
ただし,既設橋梁に対して実施する今回の対策は優先
度の高い部分的なものであり,新設橋梁と同等の性能が
橋全体で確保されるわけではない.
これより,既設橋梁については,点検等による定期的
な経過観察や経年劣化に対する速やかな補修・補強を継
続的に行うとともに,大規模地震に対する耐震性能の強
化を図り,新設する拡幅部の橋梁と同等の寿命が全うで
きるように維持管理する必要がある.
また,現況の日交通量が40,000台を超える重要路線で
あることから,既設橋梁の補強及び近接施工となる新設
橋梁(拡幅部)の施工に際しては,現道交通の確保や施
工時の安全性確保に留意しながら,早期供用に向けて取
り組むことが必要と考えられる.
道路橋の高齢化に伴う維持管理費の増大が社会的な問
題となっているなか,既設橋梁を有効に活用した道路改
良工事において今回の報告が一助となれば幸いである.
参考文献
1) 日本橋梁工業株式会社:ホームページ製品紹介から引用 2) 財団法人道路保全技術センター:既設橋梁の耐荷力照査実施
要領(案),1996.3 3) 国土交通省:新技術情報提供システム(NETIS)から引用