人工股関節全置換術 · 2013-11-22 · 人工股関節全置換術 松田病院...

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人工股関節全置換術 松田病院 東北股関節疾患センター 術前準備: (股関節に関するものだけ) 自己血貯血=人工関節(800ml)、短縮骨切り THR と再置換(1200mlDVT 予防=リスクに応じて、術後にはカプロシン投与。全員に術中からのポンプ(東北 股関節疾患センターではフロートロン®)使用 手術計画: 1)単純 X 線両股正面像、(側面像、)スケール入り A-P あるいは P-A 大腿骨像 スケール入り大腿骨(前捻無い位置で)および 両股正面像 2)テンプレートによる作図 OA では屈曲・外旋拘縮があるので、A-P だと内旋して前捻をなくした位置をとりにくく、骨軸が フィルムより離れるので拡大率は 120%くらいになってしまう。腹臥位でやった方が、拡大率が 110くらいになるので non-cemented THR では、作図がし易い。 術前マーキング: 手術前夜、手術側の大腿外側に、マーキング(たとえば「↑ 2/26」などと)する。手術側の左右の 間違いを防止、手術する意思の確認、全身状態などの確認などの意味もある。

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Page 1: 人工股関節全置換術 · 2013-11-22 · 人工股関節全置換術 松田病院 東北股関節疾患センター 術前準備:(股関節に関するものだけ) 自己血貯血=人工関節(800ml)、短縮骨切りTHR

人工股関節全置換術 松田病院 東北股関節疾患センター

術前準備:(股関節に関するものだけ) 自己血貯血=人工関節(800ml)、短縮骨切り THR と再置換(1200ml) DVT 予防=リスクに応じて、術後にはカプロシン投与。全員に術中からのポンプ(東北

股関節疾患センターではフロートロン®)使用 手術計画:

1)単純 X 線両股正面像、(側面像、)スケール入り A-P あるいは P-A 大腿骨像 スケール入り大腿骨(前捻無い位置で)および 両股正面像

2)テンプレートによる作図 OA では屈曲・外旋拘縮があるので、A-P だと内旋して前捻をなくした位置をとりにくく、骨軸が

フィルムより離れるので拡大率は 120%くらいになってしまう。腹臥位でやった方が、拡大率が 110%くらいになるので non-cemented THR では、作図がし易い。

術前マーキング:

手術前夜、手術側の大腿外側に、マーキング(たとえば「↑ 2/26」などと)する。手術側の左右の

間違いを防止、手術する意思の確認、全身状態などの確認などの意味もある。

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人工股関節全置換術の実際 必要物品:物品準備参照 手術器械:股関節セット、3D ガイド 手術後に用意するもの: タオル 2、プレパンツ、T 字帯、外転枕(A-シ-ネ)、ストッキング(手術側用) フロートロンカフ(手術側用) 3D ガイドの刺入: 3D ガイド一式(右図の 1 から 5)、2.4mmφの

K ワイヤー 2 本、マキシ(本体、ヤコブチャック、チャクハ

ンドル)、ピンカッター、穴圧布、消毒一式(綿球、

シャーレ、コッヘル、イソジン液)、当ガーゼ ※術前の説明しておくこと! 仰臥位、左右の上前腸骨棘(SIAS)に印。 カップ挿入の基準になる、左右線(Hilgenreiner 線に

相当する)を決定しておく。

SIAS より 2cm の部分に印をし、ピンの挿入は、これより

近位に行う。 (皮神経損傷を避けるため) K-ワイヤーを 2 本刺入し、3軸ガイドで方向を調節する. A,B,C の読みを記録する(+と-を間違えないこと) K-ワイヤーとベースブロックを残してガイドをはずす。

体位: 患側上の側臥位 支持器で固定(恥骨結合、仙骨、胸骨、胸椎)。 こ

のとき骨盤の左右の傾斜、前後の傾斜を把握して

おく。MIS では、前方のレトラクタで強く大腿骨

を牽引するので、前倒れになりやすいので、固定

が前倒れにならないように注意する。

無影灯&ビデオカメラ: 手術開始まえに、術野に合うように調整する。垂直層流型のバイオクリー・ルームでは、

天井からの送風が、垂直方向に降りてくるので、手術開始後に、術野の上で作業すると、

ホコリなどが直ちに落下する。ビデオの画面の位置を調整する

その他:

対側の下肢には、ストッキングとフロートロン®を装着稼働する。電気メスの対極板も

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手 術 手 順

皮切の決定 <はじめに> 手術前に、BMI を計測し 30 以上の場合は、皮切を6cm 未満にすることに拘らず、9から 12cm の

充分な長さの皮切で行う。短皮切では深くなるので、“単に困難な中に行っているだけ”に終わり、手

術全体としての得がない。臼蓋コンポネントの位置不良などの原因になりかねない。 <実際の決定方法> 1.前後の位置

大転子頂点(前後の中央)より、20-30mm程度後方 2.方向性(長軸に対して) 30~40 度位後方に傾ける。 皮切を 30 度以下にすると、大腿骨側のトライアル(頚部・骨頭装着)で不自由が更に増大 大殿筋も 20-30 度位で、筋繊維の方向で 肥満気味の人では、皮切が頭側になり易いので注意が必要 3.上下の位置 開始時、大転子頂点より頭側2cm、尾側4cmの合計6cmで 必要に応じて、上下へ1cm追加して、7cmとする。 大腿筋膜張筋は、充分下まで切離する <注意> 短い皮切で行うことが目的ではないので、狭く困難である場合は適宜頭および尾側へ切開を延長する。 図1.右股関節に対する皮切(左が頭側、右が尾側) 長い線は、通常の皮切を示す。

大転子頂点

後ろへ2cm 尾側 4cm

頭側 2cm

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1)Moore(後方侵入)皮切

患側上の側臥位にて、皮膚マーク。大転子頂点の後方約 2cm、30~40 度体軸に傾け

て 6cm の皮切を置く。通常の Moore 皮切より後方で、腸脛靭帯の大転子直上の比較的固

い部分より後ろの部分に当たる。ゲルピで開創、皮下の切離を電メスで行う。

2)腸脛靭帯の切開

腸脛靭帯の一部(皮切の中で前方に近いよころで)切開、飯野エレバで持ち上げつつ、

遠位は腸脛靭帯を、近位方向は大臀筋の繊維方向に出来るだけ皮切の奥まで、電メスで

切開。チャンレー開創器で前後に開く。下肢の下に、股関節枕を挿入し、内旋位置で下

肢を保持する。

3)外旋筋・関節包の切開

中臀筋を扁平鈎で前方に避け

ながら、小臀筋と梨状筋腱との間

で外旋筋と関節包を一緒に切離

し、大転子に向かって切離を進め

る。残る外旋筋と関節包も大転子

後面から骨膜下に切離。大転子後

面からの出血は、ボーン・ワック

スで止血する。大腿方形筋の切離

は、頚部の骨切りが出来る範囲までで留める。

4)股関節脱臼と梨状筋窩の清掃

頸部上下に、ジュラルミン鈎細を

挿入し、助手が、下肢を内旋・内転

するのに合わせて、骨頭を脱転させ

る。脱臼しにくいときは、骨頭下と

1cm 遠位の 2 箇所で平行に骨切りし

て、頚部の 1cm 厚の骨片を摘出後に、

骨頭を摘出・脱臼する。梨状筋窩に

付着する、腱の残りを完全に除去・

清掃する。

5)頸部骨切り

頸部上下に、ジュラルミン鈎細を挿入し、ボーン・ソーで骨切りする。骨切りレベル

は、大転子頂点からの距離と同時に小転子基部からの距離で決定する。インプラントの

大腿骨に対する最終的な頚部長は、ラスピングにトライアル頚部と骨頭を装着した時に、

骨頭中心とこれら 2つの距離から、作図と比べて臼蓋の設置高位を考慮して決める。骨

頭は骨鉗子で保持、骨切り部にスパイナル・エレバ挿入し、完全に切り離す。骨切り面

よりの出血は、ボーン・ワックスで行う。

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S -30

S -15

S 0S 15

S 30S 45

S 60C -30C -15

C 0C 15

C 30

C 45

C 60

051015202530354045505560

55-60

50-55

45-50

40-45

35-40

30-35

25-30

20-25

15-20

10-15

5-10

0-5

ステム前捻カップ前開き

10 30

6)頸部前捻の計測

大腿骨頸部の骨切り面から、ステム挿入時の前

捻を大まかに計測する。右の図では、前捻が 25 度

程度と計測される。注意として、頸部を長く残す

とき、骨頭の一部が残っており、前捻の計測を正

しくできないことがある。また、骨棘も同様に、

十分切除して計測する。

7)ステム前捻とカップの前開きとの関係

人工関節のオシレーションを 120 度とすると、股

関節の可動域を、屈曲 120、伸展 30、内転 50、外転

60、内旋 60、外旋 60 度の想定して、カップのステ

ムとの接触(インピンジ)が発生する頻度を見たも

のが、右の図。

カップの前開きが 10 度未満、ステムの前捻が 30

度より大きくなると、インピンジの発生率は増加し

ている。結局、カップ前開き+ステム前捻=45~50

度の大まかな関係にある。(ただし、カップの外転は

45 度とした)

よって、コンピュータで計算した、理想のコンポ

ネントの設置位置は、以下となる。(後方侵入の場合。前方進入では 50 より小さいはず)

ステムの前捻が計測されると、カップの前開きは、45(40)度 - ステム前捻で決定される。

8)関節唇(一部関節包)、臼蓋周辺の軟部組織の切除

頸部前面の関節包を電メスで止血後、スパイナル・エレベータ大で剥離する。臼蓋後方

にホーマン鈎を打ち込む。(後方ホーマン使用時には股関節屈曲は避ける!)有鈎中セ

ッシで把持し、関節唇を上から後方そして下方まで切除する。前方の関節唇の切除は、

大腿骨を単鈍鈎で持ち上げながら行う。後方のホーマンをはずして、臼蓋前方(右股関

節では 2時から 3時方向)に MIS レトラクタと下方にジュラルミン鈎細を挿入、大腿骨

を前方に排除する。きつい時には、事項 9)で前方の骨棘を切除すると楽になる。

ステム前捻+カップ前開き=45 度(女性)、40 度(男性)

ステム前捻≦30 度

カップ前開き≧10 度

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9)骨棘の切除

二次性股関節症では、臼蓋の前外側の欠損状態があり、骨頭の移動にともなって、特に

後方に厚い double floor が出来ている。(1)まず、臼蓋底の最下端部分で、double floor

の 3:7 で後方よりにノミで直径 20mm 程度に骨切除を進めると、下に脂肪組織と更に奥

に tear drop 下端を見出すことが出来る。この部位の骨切除を広げ、脂肪組織を除去す

ると、原臼を確保したことになる。(2)次いで、臼蓋後縁の骨棘(青矢印)部分をノミ

で切除(赤点線)する。(3)更に、臼蓋前の骨棘を、後方にジュラルミン鈎細を挿入し、

前方の血管神経をプロテクトし、上から下方向にノミで切除する。これらの操作によっ

て臼蓋全体のオリエンテーションがはっきりする。残った臼蓋の軟骨を、スパイナル・

エレベータ大で除去後、臼蓋内を洗浄する。

10) 臼蓋骨移植(オプション)

臼蓋の前外側の骨欠損が大きい場合は、切除骨頭を利用して骨移植を行う。骨頭を骨

鉗子で保持し、ボーン・ソーによって、適当な形に整形する。膿盆の上で行うと、落下

予防になり、骨屑も散らかりにくい。

移植骨は、K-ワイヤー2.0mmφ2 本(1本)で仮固定したあと、踝骨用螺子(4.5mmφ)

2本で固定する。ドリルと螺子は前方に向けないようにする。(右股関節では、1時半か

ら4時半の 90 度の範囲に相当する)

固定に、Zimmer 社の吸収性の Osteotrans plus の踝骨用スクリューを使ってもよい。

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<セメント非使用の場合の手順> 11) 臼蓋のリーミング

38mm リーマーから開始し、移植骨からトリミングを始

める。セメント THR では臼蓋底の外板のレベルまで掘削

する。非セメント THR では、術前の作図にもよるが、外

板より 2~3mm 深いレベルまで掘削する。掘削方向は臼蓋

のオリエンテーション方向。リーミングは予定のカップ

径より 2mm 小さいサイズまで。

12) カップトライアル

3Dガイドに指示器を装着する。カップホルダーにも支持棒をつける(この時、予

定の前開きの角度を左右間違えずに設定する)。予定カップと同じか、あるいはリーミ

ングしたものと同じサイズのトライアル・カップを挿入し、カップの位置や骨棘、移

植骨の大きさを確認する。トライアル抜去後、洗浄する。

13) カップの打込みと螺子固定

カップをホールダーにねじ込み、ハンマーで臼蓋に打込む。フレキシブルドリルで穴を

作成し、螺子 2~3本で固定する。

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14) トライアルライナーの挿入

止血も兼ねて、カップに合うサイズのフラットライナートライアル(茶色)を挿入する。

15) 大腿骨のリーミング

10 ㎜直ノミで、大転子の基部の、余計な骨を切除。スターター・リーマー(T字ハンド

ル)で、リーミングの方向を設定、大転子リーマー(バッテリー・リーマー)、次いで、

8mm からリーミング(バッテリー・リーマー使用)を開始し、必要なサイズまで、0.5mm

おきに太くしてリーミングを続ける。

16) 大腿骨のラスピング~仮整復

大腿骨のラスピング。予定より 2 サイズくらい下から始める。たとえば、9mm、10mm そ

して 11mm などと大きくする。

ラスプに、トライアル・ネックと骨頭をつけて、試しの整復をし、安定性を確認する。

17) インプラントおよび骨のインピンジのチェック

外旋+伸展+内転、屈曲+内旋+内転、移植骨を行った時には、外転位で、インプラント同

士(カップとステム)、インプラントと骨あるいは骨盤と大腿骨など骨同士がインピンジ(接

触する)がないか十分確認する。 骨のインピンジがあるときは、その部分の骨切除をお

こなう。骨面よりの出血は、ボーン・ワックスで止血する。ラスプおよびトラーアル・ラ

イナーを抜去して、洗浄する。

18) ライナーの打ち込み

ライナーを打込む。打ち込みを十分にするため、骨頭用の打ち込み器でも行う。ライナ

ーの縁部分の隙間をデプスゲージで調べる。固定用のリングが動くようになっているか、

細セッシで確認する。

19) ステムの打込み(本物)

ステムを打込みで、ゆっくり打ち込む。必要なら、トライアル骨頭を使って、再度整復

の確認をする。内反位にならないように注意する。

20) 骨頭打ち込み(本物)

頸部をガーゼなどで保持、骨頭を打ち込み、整復する。

21) 洗浄・止血・ドレーン留置

抗生剤入りの生食で洗浄。関節内外に1本づつドレーン留置

22) 外旋筋の縫合

外旋筋を中臀筋および大転子に縫合する。

23) 腸脛靭帯~大臀筋縫合

24) 皮下、皮膚縫合

25) 体位変換

タオル(大腿、臀部)、プレパンツ、T字帯装着後、外転枕装着し、仰臥位にもどる。

手術側下腿に、弾力包帯(ククロン)を巻き、フロートロンカフを装着する。

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<セメント使用の場合の手順> 11) 臼蓋のリーミング

38mm リーマーから開始し、2mm づつサイズを大きく

する(下図)。リーマーの内部に貯まった骨屑は、後

で移植骨として使う可能性があるので、生食ガーゼ

に包んで、保存しておく。

セメントカップ40mmの時は 48mmまでリーミング。

予定の径より6~8mm大きいサイズまでリーミングす

る。

12) 臼蓋トライアル

カップトライアルでカップのサイズを決める。

13) 固定用アンカー・ホール作成

アンカー・ホール用ドリル(上図)で、臼蓋に 6~8 ヶ所穴を作成する。穴の内部は、

鋭匙で掃除、洗浄する。

14) オ-ジーカップのトリミング

オージーカップでは、帽子のツバが付いているので、臼蓋の形に合わせて、万能はさみ

(緑色の柄)で整形する。まず、青の試し用プラスチックスで作成し、その後に実際の

インプラントを切る。

15) セメントの攪拌

骨セメントのシリンジを保持台に設置、陰圧吸引のチューブを接続、モノマー(液)1 本

を混合、1 分くらい攪拌の後、ボールに搾り出す。生食ガーゼ(骨セメントが手袋に粘着

するのを防ぐ)で手袋を濡らした後、適度な固さになるまで待つ(4分くらい)。

この間、助手は、臼蓋の血液を、繰り返しガーゼで拭いとる。(血液で濡れていると、セ

メントの固着力が弱くなる)

16) カップのセメント固定

臼蓋に骨セメントを押込み、術者が強く圧迫。次いで、カップ+保持器を、押棒(茶)

で臼蓋に押込む。この時、臼蓋の前開きおよび外方開角を予定通りに挿入する。更にハ

ンマーで十分奥まで叩き込む。はみ出たセメントは、鋭匙、エレバおよびセッシで除去

する。6 分ほどして、適度に固まってきたら、保持器(青)に代えて、カップ周辺、特

に下側の余分なセメントを除去する。

17) 大腿骨のリーミング

10 ㎜直ノミで、大転子の基部の、余計な骨を切除。スターター・リーマー(T 字ハン

ドル)で、リーミングの方向を設定、大転子リーマー(バッテリー・リーマー)、次い

で、9mm からリーミング(T 字ハンドル使用)を開始し、必要なサイズまで、1mm おき

に太くしてリーミングを続ける。

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18) 大腿骨のラスピング

大腿骨のラスピング。予定より 2 サイズくらい下から始める。たとえば、0#、1#

そして 2#などと大きくする。

ラスプに、トライアル・ネックと骨頭をつけて、試しの整復をし、安定性を確認す

る。場合によっては、トライアル・ステムとトライアル骨頭を使って試す場合もある。

19) インプラントおよび骨のインピンジのチェック

外旋+伸展+内転、屈曲+内旋+内転、移植骨を行った時には、外転位で、インプラント同

士(カップとステム)、インプラントと骨あるいは骨盤と大腿骨など骨同士がインピンジ(接

触する)がないか十分確認する。 骨のインピンジがあるときは、その部分の骨切除をお

こなう。骨面よりの出血は、ボーン・ワックスで止血する。

20) セメントプラグのサイズ決定~セメントプラグ挿入

プラグサイザー保持器(T 字)に、先端の計測部分(丸い、3,4,5….)を取付け、セメ

ントプラグの大きさを決める。髄腔内を洗浄後、予定のセメントプラグを挿入する。セメ

ントプラグを装着するとき、手で直接触れないようにする。

21) セメント攪拌+髄腔の吸引

骨セメントを攪拌し、適当な粘性が出てきたら(開始後、3~4 分後)、セメントガンで

髄腔へ直接挿入する。一方、助手は、髄腔内を吸引チューブで吸引しながら、ガーゼを交

換し、ドライに保つようにする。

大腿骨側へのセメント挿入では、血圧降下などに注意する。

22) ステムのセメント固定

セメント挿入後、引き続いてステムを挿入する。

余分なセメントは、鋭匙、エレバやセッシなどで除去する。

23) トライアル整復

必要に応じ、トライアル骨頭(-3、±0、+3)を使って、整復確認する。

24) 本物の骨頭の打込

<以下は、セメント非使用の手順に同じ>