栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メ …...11....

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Japan External Trade Organization HONG KONG Aug.2008 栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メソッドガイダンス) 栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メソッドガイダンス) 仮訳元:METHOD GUIDANCE NOTES IB NUTRITION LABELLING AND NUTRITION CLAIMS http://www.cfs.gov.hk/english/food_leg/files/nl_method_guidance.pdf 2008 8 日本貿易振興機構(香港) JETRO Hong Kong (免責事項) 本資料は、日本から香港への食品輸出を行う実需者への情報提供として作成したものです。 政府の規定を基に和訳していますが、執筆後に規則が改定・変更され本資料の内容と異なっている こともあり得ます。この仮訳の正確性の確認と採否はお客様の責任と判断で行ってください。ジェトロ 香港は、この仮訳に起因して発生した損害・不利益等について、一切責任を負いません。 実際の輸出・販売を行う際においては、香港政府の該当機関および各専門家に照会される等、最新 情報の確認をお勧めします。 ※本資料の無断での引用・転載は禁じています。

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Japan External Trade Organization HONG KONG Aug.2008 栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メソッドガイダンス)

栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メソッドガイダンス)

仮訳元:METHOD GUIDANCE NOTES IB NUTRITION LABELLING AND NUTRITION CLAIMS

http://www.cfs.gov.hk/english/food_leg/files/nl_method_guidance.pdf

2008 年 8 月

日本貿易振興機構(香港)

JETRO Hong Kong

(免責事項) 本資料は、日本から香港への食品輸出を行う実需者への情報提供として作成したものです。

政府の規定を基に和訳していますが、執筆後に規則が改定・変更され本資料の内容と異なっている

こともあり得ます。この仮訳の正確性の確認と採否はお客様の責任と判断で行ってください。ジェトロ

香港は、この仮訳に起因して発生した損害・不利益等について、一切責任を負いません。

実際の輸出・販売を行う際においては、香港政府の該当機関および各専門家に照会される等、最新

情報の確認をお勧めします。

※本資料の無断での引用・転載は禁じています。

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栄養表示および強調表示に関わる 手法指導書

食物環境衛生署

食品安全センター はじめに 2008年食品および薬品(成分および表示)(改訂:栄養表示および強調表示の規定)規則

(以下「改訂規則」)は、2008年5月28日に立法会によって制定された。改訂規則は、食品

に表示される2種類の栄養情報、すなわち栄養表示と強調表示を対象とする栄養表示の枠組

み(Nutrition Labelling Scheme、以下「枠組み」)を導入するものである。規則改訂による

規定の変更、特に栄養価の正確さに食品業者が対応できるように、食物環境衛生署の食品安

全センター(以下「CFS」)は、業界および分析試験代行業者と協議のうえ、本手法指導書

を作成した。 注意 2. 本手法指導書は、法律の一部をなすものではなく、枠組みの一般参考資料としてのみ使用

されることを意図している。また、改訂規則を含めた法律と合わせて読まれるべきである。

本手法指導書の情報は漏れなく完璧であるとは限らない。個々の問題はケースバイケースで

検討し、疑わしき場合は第3者から法的アドバイスを求めるべきである。法律解釈の 終的

権限は裁判所にある。 背景 改定規則の目的 3. 栄養は成長や組織修復、健康維持に欠かせない。冠状動脈性心臓病や糖尿病、一部のガン

など慢性的変性疾患の多くは、偏った食生活と関連している。こういった栄養に関連する疾

患は香港を含めた世界の多くで、深刻な国民的健康問題となっている。 4. 食品表示は消費者が個々の食品に関する具体的な情報を得る重要な情報源であるために、

食品に栄養情報を表示することは、バランスのとれた食生活を推進するうえで重要な方法で

ある。 5. 枠組みの導入は、(i) 消費者が十分な情報に基づいて食品を選択すること、 (ii) 食品製造に

健全な栄養原則を適応することを食品製造業者に促すこと、(iii) 誤解を招く、あるいは虚偽

の表示や強調表示を規制すること、を目指している。 定義 6. 改訂規則では一部の用語を以下のように定義している。 • 有効炭水化物(英:available carbohydrates、中:可獲得的碳水化合物)」は、食物繊維

を除いた総炭水化物を意味する。

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• 「食物繊維(英:dietary fibre、中:膳食纖維)は、食品および農業の分析手法の検証と

承認に関して国際的に知られている、AOACインターナショナルという独立組織が適用

する公認手法で分析された繊維を意味する。 • 「熱量(英:energy、中:能量)」は、いかなる食品においても、その食品から得られ

る熱量を意味し、 (a) 食品に含まれる有効炭水化物とタンパク質、総脂質、エ

タノール、有機酸から出させる熱量の総量として計算する (b) コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)が

採用した栄養表示ガイドラインに従って計算する • 「栄養素(英:nutrient、中:營養素)」は食品中に存在する物質で、以下の両方を満た

すものとする。 (a) 以下の区分のいずれかに属するか、その成分であるもの

(i) タンパク質 (ii) 炭水化物 (iii) 脂質 (iv) 食物繊維 (v) ビタミン (vi) 無機質

(b) 以下の条件のいずれかを満たすもの (i) 熱量をもつ (ii) 身体の成長、発達、正常な機能に必要である (iii) 不足すると、固有の生化学的あるいは生理的な変

化が起こる原因になる • 「糖(英:sugars、中:糖)」は、食品中に存在する単糖類と二糖類のすべてを意味す

る • 「トランス脂肪酸(英:trans fatty acids、中:反式脂肪酸)」は、非共役型のトランス

二重結合を 低一つもつ不飽和脂肪酸の総和を意味する • 「ビタミンA(英:ビタミン A、中:維他命A)」は食品に含まれる以下の成分の総計

として計算した栄養素を意味する (a) レチノール (b) レチノールに等価換算したベータ・カロチン(ベータ・カロチ

ン6μgは、レチノール1 μg に等しい) 分析試験 分析試験所の選択 7. 製造業者、輸入業者、供給業者、その他関連する当事者は、栄養表示の正しさを実証する

ために実験室試験を行うことを推奨する。香港や海外には栄養表示用に食品を分析する試験

所が数多くある。CFSは、香港認可署(the Hong Kong Accreditation Service、以下

「HKAS」)による香港実験室認定計画(the Hong Kong Laboratory Accreditation Scheme、以下「HOKLAS」)に基づき、ISO/IEC 17025基準の認定を受けた民間の試験所を推奨する。

認定試験所は、HKASの認定試験所要覧で探すことができる。CFSは、HOKLAS認定試験所

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のみを使うことを強制するのではなく、それらを第一候補とすることを推奨する。海外の

ISO/IEC 17025認定試験所も推奨する。 8. 栄養分析を行う試験所は、試料を適切に記録し、保存し、標本抽出を行い、分析し、(必

要に応じて)保管することを保証する品質保証プログラム書に従って分析を行うこと、収集

データの完全性を維持し、分析者は適切な訓練を積み、装置は較正され、適切な方法で正し

さが実証された手法を使い、標準操作手順に従って分析を行い、誤りや結果の合理性をチェ

ックしたデータであることを実証して示すことができなければならない。各々の手法の標準

操作手順には、標準見本、標準物質添加試料(spiked samples)、その他の妥当性確認物質

の使用が含まれていなければならない。 分析手法の選択 9. 規則の執行の目的で、CFSはAOACインターナショナルの公認分析法(Official Methods of Analysis)の 新版、もしくはそれが使えないもしくは適切でない場合は、国連の食糧農

業機関(FAO)による食品品質管理マニュアル(the Manuals of Food Quality Control)に記

載された手法やISO手法、BS EN手法、その他の国際標準手法など信頼でき適切である他の

分析手法で示された適切な手法を用いる。ただし食物繊維の試験に関して認めるのは、唯一

AOAC公認法のみである。 10. 可能な限り、CFSはAOAC公認手法を用いるが、それは以下の面で共同評価を受けてい

るからである 正確さ: 試験結果あるいは測定結果と参考値はどの程度近いか 精密さ:規定条件下で出た独立試験の結果あるいは測定の結果はどの程度近いか 選択性: ある手法が混合物あるいはマトリックスの中から、他の要素や同様な行動の干渉を

受けずに、特定の検体をどの程度判定できるか 感応度: 測定系の示度の変化を、測定の対象である値の変化で割った数 直線性:その分析法によって、一定の範囲内において、試料の中から測定すべき検体の量に

比例する、計器反応あるいは結果が得られるか 11. 現在、AOACの公認手法は、全食品のマトリックス(内で関係する栄養素すべてに使え

るわけではないため、表示規定に従うためには、公認手法を修正する必要がある可能性は十

分に認識されている。適切な修正を行えば、現在は適用範囲が限定されているAOAC公認手

法の一部は、他の食品マトリックスにも利用できるようになり得る。元々の手法を修正した

場合には、その精度と正確さを立証しなければならない。通常、精度は反復検定によって検

証することができるが、正確さの判断には、分析する検体の濃度が認証されている試料また

は標準物質が必要である。欧州連合のBCR(Community Bureau of Reference)、同じく欧

州連合の標準物質および計量技術研究所(Institute of Reference Materials and Measurements)、英国のLGC(Laboratory of Government Chemist)、米国の国立標準技

術研究所(National Institute of Standard and Technology)などから入手できるものは、基

本成分および有機栄養素の認証標準物質であり、一部の食品を代表する。 12. 代替手法を推奨するのは、AOAC公認手法や国内であるいは国際的に認識された標準手

法がない場合のみである。代替手法を開発または使用した場合は、その手法の分析手順と特

性が詳細に記述された文書を伴わなければならない。

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13. 個々の栄養素の試験の詳細は付録IのFAQ(よくある質問)を参照。 14. CFSは地元原産の混合食品について実験室試験を行っており、その情報はCFSのウェブ

サイト [http://cfs.fehd.hksarg/english/nutrient/index.shtml]上の検索可能な栄養素データベー

スであるthe Nutrient Information Inquiry Systemによって一般に入手可能である。CFSが現

在使っている分析手法については付録IIを参照。CFSは他の試験所にこれらの手法の使用を

義務付けてはいない。手法が改善されれば、これらの手法の適用方法は随時変更される可能

性がある。 食物環境衛生署 食品安全センター 2008 年 6 月

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付録I

FAQ(よくある質問) 一般 1. 香港で販売されている包装済み食品には、すでに栄養情報を伴っているものもある。そ

の情報をそのまま使うことはできるか 食品に表示されている栄養素に関して他の国では異なる定義がされている可能性があり、供

給業者と輸入業者は香港における栄養表示システムの知識を有しているべきであるため、食

品に示された栄養素に関して製造業者から得た情報の関連性と正確さを確認することは供給

業者あるいは輸入業者の責任である。 2. 包装済み食品の栄養素含有量はどのようにすればわかるか。政府は栄養素の試験にどの

手法を用いるのか 試験所で栄養素を分析することは、包装済み食品の栄養素の含有量を知る も単純な方法で

ある。包装済み食品の栄養素分析を商業的に行う試験代行サービスを使うことができる。

CFSは、どの手法を用いるかの決定に当たって、試験手法に関する 新の動きを考慮するこ

とになる。現時点では、CFSは、栄養素含有量の試験にはAOAC公認手法を用いることにな

るだろう。原材料の栄養情報および調理方法に基づいて計算する方法もある(すなわち間接

的栄養分析である)。しかし、関連業者は栄養情報が正確であることを確認する必要がある。

間接的栄養分析に関する詳細は、『栄養表示および強調表示に関する技術的指導書』を参照。 3. 栄養素含有量の試験にAOAC公認手法以外の手法を用いることはできるか AOAC公認手法はいずれも適用可能な食品マトリックスを規定している。多くのAOAC公認

手法は、同じ栄養素であるが、異なるマトリックスの試験に認められることが判明している。

そのため、正確な結果を得るためには適切な手法を選択することが肝要である。適切な

AOAC公認手法がみつからない食品マトリックスについては、代替手法や修正手法を適用す

ることができる。ただし食物繊維の試験に認められるのは、AOAC公認手法のみである。 4. 食品中の栄養素の検出限界はいくつか 食品資料の検出栄養素には、利用できる 善の技術を使った、妥当に実行可能な限り低い検

出限界値を適用すべきである。『栄養表示および強調表示に関する技術的指導書』で「0」

と規定された栄養素各々について試験代行業の試験所から提供された検出限界は、対応する

「0」の定義よりも低くなければならない。ただし「飽和脂肪酸を含まない(Free of saturated fat)」という強調表示のある食品資料の飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の試験

では、関連する基準は、その食品が含有する飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸は合わせて

0.1gを上回ってはならないとされているために、標準飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の検

出限界は各々100g当たり0.05gを上回ってはならない。 . 5. 許容限度は試験手法の測定の不確実性も勘案されているか 許容限度が設定された際に、試験手法の測定不確実性は考慮されていない。測定不確実性に

は別個に対処しなければならない。 熱量 6. 食品資料の熱量はどのように測定することができるか

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熱量は、有効炭水化物、タンパク質、総脂質、エタノール、有機酸の熱量に各々対応する換

算率を掛けたものを合計して出すことができる。以下の公式で出すことができる。 [4 x 有効炭水化物 + 4 x タンパク質 + 9 x 総脂質 + 7 xエタノール + 3 x 有機酸] 食品100g当た

りkcal 7. エタノール(アルコール)を熱量計算に含める必要があるのはどんな場合か 熱量計算にはエタノールの熱量も含んでいる。ただし食品すべてにエタノールが含有されて

いるわけではない。エタノールの熱量が大きく貢献している場合、特にアルコール飲料、ア

ルコールを含有する菓子やデザートは、その水準を算定して熱量計算に含めなければならな

い。ガスクロマトグラフィー手法によるエタノール測定は一般的かつ有効で正確なアプロー

チである。 8. 「有機酸」の含有量は、滴定によって出すことができるか 「有機酸」については、コーデックスのガイドラインは定義していない。食物の種類によっ

て含有する有機酸は異なる。「牛乳」「食肉」「野菜と果物」の主な有機酸は、各々クエン

酸、乳酸、リンゴ酸およびクエン酸である。しかし果物、果物製品(ジュースを含める)、

野菜(特に酢酸に漬けて保存されたもの)、他の製品(酢、サラダドレッシング、ソフトド

リンク、ヨーグルト)などの包装済み食品の一部には、相当量の有機酸が含まれる。各々の

有機酸の含有量の算定には、AOAC公認手法986.13に似た、液体クロマトグラフ手法が好ま

しい。 9. 糖アルコールに各々熱量換算率を規定している国もある。このような換算率を使って熱

量を出してもよいか コーデックスの「栄養表示に関するガイドライン、CAC/GL 2-1985 (修正1 – 1993、改訂2 -2003)」および中国本土の提案している栄養表示規定によると、糖アルコールには特に熱量

は指定されていない。差によって計算する場合、包装済み食品に含有される糖アルコールは、

有効炭水化物の含有量に含まれるために、炭水化物の熱量換算率を糖アルコールにも適用す

ることになる(質問19を参照)。 10. 水分と灰分に使うのは、何度か。手法により温度が異なり、各々100℃~110℃、 500℃~600℃と幅がある 各国の、あるいは国際的な基準手法により水分と灰の含有量の試験に使う温度は異なってい

るが、水分には105℃、灰分には550℃というのが も一般的に使われている温度である。

したがって、水分と灰分の分析には各々105℃、550℃を使うのが望ましい。 タンパク質 11. ケルダール態窒素の含有量を試験することによってタンパク質を試験することができる

か タンパク質含有量は食品試料の窒素含有量に基づいて算定することができる。その一方で、

窒素含有量は、ケルダール法または燃焼法によって出すことができる。CFSがこの2つの手

法を比較したところ、比較可能な結果が出ることが明らかになった。コーデックスの基準ま

たはその食品に対するコーデックス法で異なる窒素換算率が示されていない限り、窒素含有

量に係数6.25を掛けてタンパク質含有量を出す。一部の生食品に対しては、窒素換算率は

6.38(ホエー・パウダーあるいは牛乳)から5.70(トウジンビエあるいは大豆)と幅がある。

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タンパク質はアミノ酸がペプチド結合してつながった鎖からなるため、加水分解すればアミ

ノ酸に分解でき、それを測定することができる。そのアミノ酸の合計が食品のタンパク質を

代表している。この方法には、窒素換算率を使用しないで済むというメリットがあるが、コ

スト高である。 脂質 12. 総脂質の値として、個々の脂肪酸を換算して出したトリグリセリドの値の合計を使うこ

とはできるか 総脂質とは、通常はトリグリセリド、リン脂質、ろうエステル、ステロール、少量の非脂質

成分の合計を意味する。これらの非トリグリセリド成分は代謝に重要な役割を果たす可能性

がある。 そのため 総脂質には、AOACの重量測定法が認められている。 13. 飽和脂肪とは何か。 飽和脂肪とは、二重結合を有さない脂肪酸の総量を指し、一般的にはC4:0、C6:0、C8:0、C10:0、C12:0、C14:0、C15:0、C16:0、C17:0、C18:0、C20:0、C22:0、C24:0の13の飽和

脂肪酸の合計である。 14. トランス脂肪とは何か。 トランス脂肪は、非共役のトランス型二重結合を少なくとも1つもつ不飽和脂肪酸のすべて

を合わせたものと定義されている。具体的には、トランス配位に、少なくとも1つのメチレ

ン基によって離された非共役の炭素-炭素の二重結合をもつ、一価不飽和脂肪酸および多価

不飽和脂肪酸の幾何異性体すべてを意味し、一般的にはC14:1T(9-trans)、C16:1T(9-trans)、C18:1T(total)、C18:2TT(9,12-trans)、C18:2T(9-cis, 12-trans)、C18:2T(9-trans,12-cis)、C20:1T(11-trans)、C22:1T(13-trans)の合計を指す。 食物繊維 15. 「食物繊維」は手法に依存する試験変数であるため、食物繊維の定義が変わると表示や

強調表示に大きく影響することになる。食物繊維の含有量にはどのAOAC公認手法を用いる

べきか 改定規則によると、適切なAOAC公認手法であればいずれも認められるとされている。 一般的には、CFSは、AOAC公認手法985.29や2001.03を用いて包装済み食品の食物繊維含

有量を計測することになるであろう。必要な場合、CFSは、フォローアップのために製造業

者、輸入業者、供給業者に使用した手法の提供を求めることになる。 16. Englyst法を用いて包装済み食品の食物繊維含有量を出してもよいか Englyst法は世界的に使われているわけではなく、複雑であるために、定期的な分析には適

さない可能性がある。さらに一般的にはEnglyst法を使うと、 AOAC公認手法985.29や2001.03よりも低い値が出る。そのため、AOAC公認手法のみを認めている。一般的にCFSは、AOAC公認手法985.29や2001.03を使って包装済み食品の食物繊維含有量を測定するこ

とになる。結果が表示された含有量と一致しない場合、CFSは製造業者、輸入業者、供給業

者にフォローアップのために使用した手法の提供を求めることになる。 17. AOAC公認手法2001.03を使って、食物繊維の含有量を出してもよいか。AOAC公認手

法985.29と2001.03の違いは何か

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AOAC公認手法985.29あるいは991.43は食物中の総食物繊維、すなわち不溶性の食物繊維

(IDF)と水溶性の食物繊維(SDF)を合わせたものを測定する。総食物繊維含有量は、 AOAC公認手法985.29に関しては、IDFとSDFの合計である。一方、AOAC公認手法2001.03は、IDF、高分子量(HMW)のSDFおよび低分子量耐性マルトデキストリン(LMWRMD)

を測定する。AOAC 公認手法2001.03によると、総食物繊維は、IDF、HMWSDFおよび

LMWRMDの合計と定義されている。したがって、AOAC公認手法985.29と2001.03では、結

果が違う可能性がある。違いは、食品試料が、試験にポジティブな結果を与える耐性マルト

デキストリンあるいはその他の炭水化物ポリマーを含んでいるかどうかにかかっている。 18. AOAC公認手法985.29を使うと、包装済み食品が機能繊維を含んでいる場合は、食物繊

維の含有量は低く出されるか 多くの国々で、人間に好ましい生理的効果をもつ、合成製造した、あるいは天然のものを隔

離したオリゴ糖および製造された耐性デンプンは、包装済み食品に含まれ、繊維としての役

割を果たす。AOAC公認手法985.29はこのような物質の試験には適さない。このような炭水

化物ポリマーの試験には、AOAC公認手法997.08、2001.03、2000.11などの特殊な試験手法

が必要である。当機関は、機能繊維の分析には、以下に示したいくつかの試験手法を認める。 機能繊維 商品名 試験手法

Imprime PGG® AOAC 995.16 ベータ・グルカン AOAC 997.08 or 999.03 オリゴフルクトース Raftilose®、 OliggoFiber™ AOAC 997.08 or 999.03 Neosugar、 Actilght® フルクトオリゴサッカライド

(FOS) Litesse® AOAC 2000.11 ポリデキストロース

AOAC 2001.02 ガラクトオリゴサッカライド Yacult(訳注:Yakult(ヤク

ルト)の誤りか?)、 Borculoホエー製品 Fibersol-2 AOAC 2001.03 耐性マルトデキストリン C*Actistar AOAC 2002.02 耐性デンプン

炭水化物(糖を含む) 19. 食品試料の水分および灰分の含有量を試験する必要があるのは何故か 有効炭水化物の含有量は長年にわたって直接分析ではなく、差し引き計算をされてきた。そ

の方法では、関連する食品成分(タンパク質、脂質、水分、アルコール、灰分、食物繊維)

を個々に測定し、合計して、食品の総重量から引いて出された。これは「差し引きによる有

効炭水化物」と呼ばれ、次の公式で計算される。 100 – [タンパク質 + 脂質 + 水分 + 灰分 + アルコール(エタノール)+ 食物繊維] 各々食品

100g当たりの重量(g) 20. 総炭水化物と有効炭水化物の違いは何か 総炭水化物は、有効炭水化物と食物繊維の合計を指す。 21. チューインガムなど不消化物質を含む食品について、炭水化物は差し引き方法で算定す

ことができるか

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不消化物質の含有量がわかれば、差し引きによる有効炭水化物は、不消化物質という追加要

素を加味することによって、計算できる。 あるいは、デンプンおよび総有効糖分の含有量の合計、また測定されているかその食品に添

加されている場合は、有効オリゴサッカライド、グリコーゲン、マルトデキストリンをさら

に加えて出すこともできる。 22. 糖アルコールは炭水化物に分類されるか 糖アルコール(多価アルコール(ポリオール)としても知られる)は炭水化物を水素化し、

そのカルボニル基(アルデヒドまたはケトン)が 第一あるいは第二ヒドロキシ基に還元さ

れたものである。一般的に糖アルコールは炭水化物の成分として分類される。 23. 糖に関して、単糖類と二糖類をいくつ試験すべきか 国際的な傾向に従うと、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトー

ス、スクロースはは一般的に試験される変数である。 24. 糖に関して、単糖類と二糖類の代わりに還元糖を試験することはできるか 糖類は、食品に存在する単糖類と二糖類のすべてを意味する。食品試料に還元糖の一形態の

みが含まれている場合は、その還元糖の試験結果は高性能液体クロマトグラフによる分析結

果と比較可能であろう。しかし一形態以上の糖分が含まれている場合は、還元糖の試験結果

は法律に規定されているような、試料の糖分の含有量を正確には反映できないであろう。 ビタミン類と無機質 25. アルファカロチンはビタミンAに分類されるのか プロビタミンA活性をもつカロテノイドには、アルファ・カロチン、ベータ・カロチン、ガ

ンマ・カロチン、アルファ・クリプトキサンチンが含まれる。コーデックスのガイドライン

に従うと、換算率は6 μgのベータ・カロチンに対して1μgのレチノール当量(RE)であり、

改訂規則はビタミンAのためのREの計算においては、カロテノイドのなかではベータ・カロ

チンのみを認識し、同じ換算率を適用する。BS EN12823:2000 1部および2部は、食品中の

各々レチノールおよびベータ・カロチンの測定に適した方法である。 26. 食品には何種類のビタミンDの形態があるのか 食品によくみられるのは2種類のビタミンD、すなわち、 コレカルシフェロール(ビタミン

D3)およびエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)である。ビタミンD3は幅広い食品(魚

油、脂肪分の多い魚の組織、卵、バター、クリーム、チーズなど)に含まれ、ビタミンD2は魚油とキノコ類に低濃度で天然に存在する。一部の食肉には25-ヒドロキシ・コレカルシ

フェロールがビタミンD活性に寄与する濃度で含まれているため、ビタミンDとしてもみな

される。食品に含有されるビタミンDの測定にはBS EN 12821:2000を使うことができる。 27. アルファ・トコフェロールはビタミンEと同等なのか ビタミンE活性は、構造的にトコフェロールとトコトリエノールに基づく8つの物質に示さ

れる。各々のビタマーはアルファ・トコフェロールとは異なるビタミン活性をもち、それは

一次構造と考えられている。したがって、好ましい分析手法は異なるビタマーすべてを別個

に測定するものである。食品に含有されるトコフェロール類の測定手法には、BS EN 12822:2000が適している。FAOによると、ビタミンEの天然形態を含有する混合食品のアル

ファ・トコフェロール当量は、アルファ・トコフェロール、ベータ・トコフェロールのグラ

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ム数に0.5を掛けたもの、ガンマ・トコフェロールに0.1を掛けたもの、デルタ・トコフェロ

ールに0.01を掛けたもの、アルファ・トコトリエノールに0.3を掛けたものの合計として推

計することができる。 28. エリソルビン塩酸はビタミンCとして計算することがきるか ビタミンC活性を示す物質は2つある。Lアスコルビン酸と、それが酸化されて 初にできる

物質、デヒドロアスコルビン酸である。抗酸化剤として食品に添加されるD-異性体(エリソ

ルビン塩酸)は非活性である。したがってビタミンCは Lアスコルビン酸とデヒドロアスコ

ルビン酸のグラム数の合計を指す。 29. ナイアシンはニコチンアミドと等しいのか 「ナイアシン(ビタミンB3)」はニコチンアミド、ニコチン酸、ニコチンアミドの生物活

性をもつ誘導体を指す。 30. 食品の葉酸の含有量は、食用葉酸当量(Dietary Folate Equivalent、 DFE)で示すこと

ができるか 食品と共に摂取される葉酸は85パーセントが吸収されるが、食品葉酸の吸収率は50%に過

ぎないため、食品と共に摂取する葉酸の方が85÷50(すなわち1.7)倍、吸収率が高い。そ

のため、天然および合成の葉酸を含む混合食品における葉酸当量を推計する場合は、食品葉

酸と合成葉酸のマイクログラム数を合計したものを1.7倍して、μgDFEの単位で示すことが

できる。 31. カルシウムとナトリウムの含有量を算定するのに、AOAC公認手法985.35以外のAOAC公認手法を使うことはできるか カルシウム分析には、試料と標準にランタンを使用しないと、リン酸塩や硫黄のようなアニ

オン化学干渉やアルミニウムの干渉が存在することはよく知られている。したがって、ラン

タンを使用してアニオン化学干渉を減少するその他の手法は分析に適している。 フレーム原子吸光分析あるいは誘導結合プラズマ発光分析によるナトリウムの分析では、一

部がイオン化し間接的に吸収感度に影響を及ぼす。その他のアルカリ塩が試料に存在すると、

このイオン化が削減されるため、分析結果の数値は高くなる。ナトリウムのイオン化を抑制

する効果は、ナトリウム対カリウムの比率が10未満であると小さい。食品中のその他のアル

カリ塩によって値が高くなる現象は、試料と標準溶液の両方に余分なセシウムを加えること

によって安定させることができる。そのため、セシウムを使ってイオン化抑制効果を削減さ

せる他の手法は、ナトリウムの分析に適している。さらに、試薬ブランクも分析して、緩衝

原液のナトリウム不純物を調整しなければならない。

Japan External Trade Organization HONG KONG Aug.2008 栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メソッドガイダンス)

Page 12: 栄養表示および強調表示に関わる手法指導書(メ …...11. 現在、AOACの公認手法は、全食品のマトリックス(内で関係する栄養素すべてに使え

付録 II

香港の地場の混合食品の栄養素含有量を算定するために現在CFSが使っている試験手法の

リスト 栄養素 参考手法 テクニック

AOAC 922.06 (総)脂肪 酸加水分解後抽出 全窒素 AOAC 928.08 あるいは ケルダールあるいは燃焼法に

よる窒素 AOAC 992.15 ISO 1442:1997 105°C で乾燥後、重量測定 水分

ISO 936:1998 550°Cで乾燥、炭化、焼却

後、重量測定 灰分

AOAC 996.06 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸 SP2560 100m x 0.25mm、

0.2μmのフィルム・カラム

を使った毛細管ガス・クロマ

トグラフィー

酸分解後にICP-OES ナトリウム AOAC 969.23あるいは

AOAC 985.35 カルシウム AOAC 969.23あるいは

AOAC 985.35

酸分解後にICP-OES

コレステロール AOAC 994.10 直接鹸化後に毛細管ガス・ク

ロマトグラフィー 食物繊維

AOAC 985.29 タンパク質および炭水化物を

脱脂、酵素加水分解後に重量

測定

糖 (単糖類とニ糖類すべて)

AOAC 980.13 (HPLCカラムと移動相を修

正)

水抽出後にHPLC-RI

注: 本指導書で引用したAOAC公認手法すべてに関しては、AOAC Official Method, 18th Edition, Current Through Revision 2, 2007 AOAC INTERNATIONALを参照下さい。 ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)を指す。 HPLC-RIは、高速液体クロマトグラフィー-示差屈折率検出器(high performance liquid chromatography – refractive index detection)を指す。 ICP-OESは、誘導結合プラズマ‐発光分光分析(inductively coupled plasma – optical emission spectrometry)を指す。 CFSは上記の試験法を用いるために他の試験所は必要としない。

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