関東農政局長賞受賞 npo法人古瀬の自然と文化を守る会 ·...

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昭和40年代の農村を復元し守り伝える 受賞者 NPO法人古瀬の自然と文化を守る会 ほう じん ふる ぜん ぶん まも かい ( 茨 城県つくばみらい市) いばら き けん 地域の沿革と概要 つくばみらい市は、茨城県の南西部、 東京都心から40㎞圏内に位置し、筑波研 究学園都市に隣接している。平成18年に 「伊奈町」と「谷和原村」の2町村が合併 して誕生した。 市内を鬼怒川・小貝川の一級河川が流 れ、小貝川沿いの低地部分には常陸谷原 三万石と呼ばれた広大な水田地帯が広が っている。年間平均気温は14℃前後、 年間降水量は約1,373mmで、1年を通 して穏やかな気候である。 平成17年に開業した首都圏新都市高速 鉄道「つくばエクスプレス」が、市の中 央部を南北に走っており、秋葉原まで約4 0分という立地から、首都圏のベッドダウ ンとして住宅開発が進み、新しいまちづ くりが進められている。 むらづくりの概要 1.地区の特色 「NPO法人古瀬の自然と文化を守 る会」(以下「古瀬の会」という。) の活動拠点となっている寺畑地区は、 市の北西部、小貝川沿いに位置してい る。 江戸時代初期の治水事業により、常陸谷原三万石の新田が開発され、豊か な水と肥沃な土地により、稲作を中心とした緑豊かな農村地帯となった。 2.むらづくりの基本的特徴 (1)むらづくりの動機、背景 むらづくりを推進するに至った動機、背景 第1図 位置図 注:白地図KenMapの地図画像を編集 第1表 地区の概要(古瀬の会地区) 地区の規模 地区の性格 13.6% (内訳) 総世帯数 6,580戸 総農家数 896戸 専兼別農家数 (内訳) 専業農家 81戸 1種兼業農家 112戸 2種兼業農家 514戸 農用地の状況 総土地面積 3,360ha (内訳) 耕地面積 1,610ha 1,270ha 342ha 耕地率 47.9% 農家一戸当たり耕地面積 1.8ha 旧市町村単位の集団等 機能的な集団等 NPO法人古瀬の自然と文化を守る会

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Page 1: 関東農政局長賞受賞 NPO法人古瀬の自然と文化を守る会 · NPO法人城山を(15) 里山づくりや農園整備を・里山保全活動 考える会 行うボランティア団体

関 東 農 政 局 長 賞 受 賞昭和40年代の農村を復元し守り伝える

受賞者 NPO法人古瀬の自然と文化を守る会ほ う じ ん ふ る せ し ぜ ん ぶ ん か ま も か い

( 茨 城県つくばみらい市)いばら き けん

■ 地域の沿革と概要

つくばみらい市は、茨城県の南西部、

東京都心から40㎞圏内に位置し、筑波研

究学園都市に隣接している。平成18年に

「伊奈町」と「谷和原村」の2町村が合併

して誕生した。

市内を鬼怒川・小貝川の一級河川が流

れ、小貝川沿いの低地部分には常陸谷原

三万石と呼ばれた広大な水田地帯が広が

っている。年間平均気温は14℃前後、

年間降水量は約1,373mmで、1年を通

して穏やかな気候である。

平成17年に開業した首都圏新都市高速

鉄道「つくばエクスプレス」が、市の中

央部を南北に走っており、秋葉原まで約4

0分という立地から、首都圏のベッドダウ

ンとして住宅開発が進み、新しいまちづ

くりが進められている。

■ むらづくりの概要

1.地区の特色

「NPO法人古瀬の自然と文化を守

る会」(以下「古瀬の会」という。)

の活動拠点となっている寺畑地区は、

市の北西部、小貝川沿いに位置してい

る。

江戸時代初期の治水事業により、常陸谷原三万石の新田が開発され、豊か

な水と肥沃な土地により、稲作を中心とした緑豊かな農村地帯となった。

2.むらづくりの基本的特徴

(1)むらづくりの動機、背景

ア むらづくりを推進するに至った動機、背景

第1図 位置図

注:白地図KenMapの地図画像を編集

第1表 地区の概要(古瀬の会地区)

事  項地区の規模地区の性格農 家 率 13.6%

(内訳) 総世帯数 6,580戸 総農家数 896戸

専兼別農家数(内訳)  専業農家 81戸

 1種兼業農家 112戸 2種兼業農家 514戸

農用地の状況  総土地面積 3,360ha(内訳)  耕地面積 1,610ha

   田 1,270ha   畑 342ha 耕地率 47.9% 農家一戸当たり耕地面積

1.8ha

内   容旧市町村単位の集団等

機能的な集団等

NPO法人古瀬の自然と文化を守る会

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○地域の農業を守り伝える

旧谷和原村は、稲作を中心とした農村地帯であったが、昭和40年代に

住宅団地や工業団地の整備が進み、昭和56年には常磐自動車道が開通、

平成に入るとニュータウンの開発やつくばエクスプレスの開業など、都

市化の波が押し寄せ、「暮らしやすさ」が向上する一方で、農地や里山

など昔ながらの農村風景が失われつつあった。

平成5年、小絹小学校のPTA会長を務めていた小菅新一氏は、学校

の週休2日制導入を前に、子どもたちの地域教育のためにできることを

考え、「地域の農業を守り伝えよう」と、「総合学習の時間」に農業体

験を行うことを学校に提案し、指導を申し出た。

有志6名で農家から休耕田7aを借り上げ、伐採・抜根、あぜや水路

の復元などの整備を行い、田植えと稲刈りの指導を行う中、子どもたち

の生き生きとした姿を見て、活動の重要性を認識した。

イ むらづくりについての合意形成

○地元住民との交流から都市住民との交流

小学校での農業体験の取組が少しずつ知れ渡るようになると、寺畑地

区外の住民からも体験を希望する声が聞かれるようになり、平成7年か

ら新興住宅地の自治会との農業体験による交流が始まった。

平成11年には、活動を聞いた「葛飾区郷土と天文の博物館」からの依

頼により、同館の前にある田んぼで農業体験の指導を始めた。この活動

をきっかけに葛飾区の住民との交流も始まり、古瀬の会の活動に葛飾区

の住民が参加するようになった。

ウ 現在に至るまでの経過等

○有志活動からNPO法人化、古民家を拠点とした活動へと展開

平成8年に、寺畑地区の有志25名で土手と用水路2kmの整備を行い、

「古瀬」と呼ばれる小貝川の旧河川の土手に100本の桜の苗木を植樹し、

地区内の環境整備に取り組む「桜の会」を立ち上げた。

平成12年に、名称を「桜の会」から「古瀬の自然と文化を守る会」に

改め、地域の自然や文化を守り、都市と農村の交流を通じた地域の活性

化へと活動範囲を広げ、農家だけでなく建築業者や会社員等様々な職業

の地元住民46名が会員となって新たな活動を開始した。

さらに、地域活性化と自然環境等の保全活動を広げるため、平成15年

にNPO法人化し、平成20年からは、市の都市農村交流施設「古民家松

本邸」の指定管理者として管理・運営も行うようになり、「古民家松本

邸」を拠点とした活動にも力を入れるようになった。

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(2)むらづくりの推進体制

ア 当該集団等の組織体制、構成員の状況

(組織体制)会長1名、副会長1名、理事7名、幹事2名

(構成員)正会員31名(内寺畑地区14名)賛助会員14名

① 野外体験支援部(13名)

体験時の安全管理、作業指導、体験圃場の管理など野外体験支援

② 農村環境保全部(9名)

農村環境の保全・再生活動

③ 婦人部(7名)

地元野菜の販売や農家料理、味噌づくり等体験支援など

④ 古民家「松本邸」管理部(5名)

つくばみらい市都市農村交流施設「古民家松本邸」の管理・運営

イ 当該集団等と連携してむらづくりを行う他の組織、団体及び行政との関係

① 連携団体

団体名 構成員(人数) 団体概要 連携活動

NPO法人城山を (15) 里山づくりや農園整備を ・里山保全活動

考える会 行うボランティア団体 ・グリーンツーリズムの開催

青少年育成市民会 市青少年育成支部 次世代を担う青少年の健 ・市民会議の事業の一環として行われる

議小絹支部会 会 全な育成と、その関係者 農村体験イベントの実施協力等

及び団体の活動促進等

東京都葛飾区 生涯学習課 葛飾区郷土と天文の博物 ・田んぼサポーター等の募集

館の事業主体 ・博物館での農村体験、イベント企画等

つくばみらい市 市民サポート課 ・「古民家松本邸」管理

・市内の活動団体への支援

第2図 むらづくり推進体制図

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■ むらづくりの特色と優秀性

1.むらづくりの性格

古瀬の会が関係団体等に呼びかけて平成20年に立ち上げた「つくばみらい市都市

農村交流協議会」は、市内のNPO法人、市民及び行政で構成し、収穫イベントや

そば打ち体験など地域資源を活用した都市農村交流や農業体験による婚活等を実施

し、地域で取り組む団体等と行政の協同活動による、市全体での都市農村交流によ

るまちづくりの推進を図っている。

2.農業生産面における特徴

(1)当該集団等の農林漁業生産、流通面の活動状況

ア 自然とともに生きる農村の知恵と技の伝授

約70aの休耕田を再生した田んぼでの農業体験では、当初から「無農薬

栽培に挑戦し、生態系に配慮した農村環境づくりをしよう」と、アイガモ

農法や雑草を抑えるための米ぬかの散布など、試行錯誤を重ねながら無農

薬栽培を貫いている。

休耕田の復元にあたっては、当時東京農業大学客員教授だった守山弘氏

のアドバイスにより、田んぼに引き込む水路の水は、手作りの足踏み水車

を設置するなど動力を使わない昔ながらの方法を取り入れた。

こうして復元した田んぼには、バッタやアメンボなどの昆虫や、ドジョ

ウやメダカなどの魚、カエルやイモリなどの両生類が繁殖し、それらを餌

にする鳥が集まるなど多様な生物が戻り、子どもたちは豊かな自然環境を

肌で感じながら農業体験を行っている。

イ 伝統的なもち米「太郎兵衛もち」の復活

平成8年には、江戸時代初期から優良なもち米として栽培され、昭和10

年代まで旧谷和原村の特産品だった「太郎兵衛もち」を、休耕地3.3aを借

り受け、無農薬により復活させた。

平成11年には、「葛飾区郷土と

天文の博物館」に隣接する親水公

園に復元された田んぼでの栽培に

ついて相談があり、古瀬の会から

苗を提供し栽培指導を始めるとと

もに、採れたもち米を杵と臼を使

って餅つきするなど、地域を超え

て優良な品種を守り伝えてい

る。写真1 葛飾区で餅つき

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(2)当該集団等による生産力の向上、生産の組織化、生産・流通基盤の整備等

への寄与状況

ア 「古代米」生産による米どころアピール

古くから穀倉地帯である当地は、コシヒカリ栽培が大半を占めているが、

古瀬の会では赤米(阿波赤米)・黒米(朝紫)・白米(宮崎観)なども栽

培している。

稲のノゲや籾の色を乾燥させた観用ドライフラワーや、栽培した黒米を

玄米として地域の直売所などで販売している。玄米は健康食品としても注

目を浴びており、口コミによる個人リピーターも増えている。また、平成

5年頃からは、わら細工用の品種ミトラズも栽培し、わら細工(のら亀)

を作り地域の直売所やイベントで販売しているほか、イベント等ではわら

細工体験の指導を行っており、1回で平均20人が集まるほど人気がある。

わら細工や玄米等を含めた収入は平成15年度35万円、平成26年度61万円と

着実に伸びている。

イ 田んぼアートで市産コシヒカリをアピール

平成17年には、つくばエクスプ

レスの開業にあたり、米どころを

アピールするため、高架で走るつ

くばエクスプレスの車窓から見え

る田んぼアートを約70aの水田で、

地域の協力を得ながら取り組み始

めた。

田んぼアートにかかる費用は、

1口5,000円の協力費等でまかな

い、協力者には、アート米(田んぼアート周りのコシヒカリ)5㎏もしく

は市内の生産組合が生産した黒大豆1㎏をプレゼントするほか、田植えや

稲刈り・収穫祭などに無料で参加できる。平成17年の協力者は250口で、

地元(農家)と都市側(非農家)がほぼ同じ割合だったが、10回目を迎え

た平成26年には8割以上が都市側の協力者となり、継続して田んぼアート

を行ってきたことにより、都市側のリピーター獲得や交流促進、収入の確

保に繋がっている。

写真2 田んぼアート

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(3)当該集団等の活動による構成員等の経営の改善、後継者の育成・確保、

女性の経営参画の促進状況等

ア サポーター会員の協力

古瀬の会は、20~70歳代の幅広い年代の正会員で構成されており、農業

のベテランが多い70歳代は農業体験の指導者として、若手は得意分野のホ

ームページの作成など、それぞれが持つノウハウを活かしながら活動を行

っている。

また、「葛飾区郷土と天文の博物館」が大人向け農業体験講座として募

集した「田んぼサポーター」は、古瀬の会が行うイベントの準備や体験指

導のほか、農地の管理などを行っており、東京都葛飾区や足立区、神川県

の住民が参加し、平成26年度には13名が古瀬の会と連携しながら活動を行

った。

さらに、同館が募集している子ども向け講座「田んぼ倶楽部ジュニア」

は、1ヶ月に1度寺畑地区等を訪れ農業体験に参加し、古瀬の会が田植え

や稲刈りなどの指導を行うなどして交流を深めており、地元の農家だけで

は維持していくことが困難な農村環境を都市住民と一体となって守ってい

く体制づくりを目指している。

イ 婦人部の活動

平成10年から3名の女性ボランティアがイベント時の昼食準備などの活

動を行っていたが、平成15年から正会員となり、婦人部としてイベント参

加者に地元料理を振る舞うほか、農家に伝わってきた家庭料理づくりや味

噌づくりなどの体験支援を行っている。

また、「葛飾区郷土と天文の博物館」で開催する「農業交流市」で、米

や野菜など地元農産物の販売を行っている。

現在7名が農村女性ならではのきめ細やかな視点とノウハウを活かし、

イベントや直売を盛り上げている。

3.生活・環境整備面における特徴

(1)当該集団等の地域資源整備による生活・環境整備面の取組状況

ア 当該集団等の生活・環境整備面の取組状況

① 里山の保全と整備による地域交流

平成10年頃から筒戸地区の環境整備として、遊歩道作り、間伐、草刈

りなどの里山管理や子どもたちを対象とした里山観察会を行っている。

子どもたちが好きなカブトムシやクワガタが集まってくるよう、間伐

した里山にクヌギやコナラといった落葉樹を植えるなど、子どもたちが

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安心して遊び、地域交流ができる

場所にするための整備・保全に力

を入れている。

② 耕作放棄地解消への取組

休耕地の所有者の了解を得て、

平成19年頃から約4aにコスモスや

ヒマワリなどの景観作物を植栽す

る活動を始め、農村の景観維持に

向けた取組を行っており、花が満

開になる頃には、地域の人々が集う空間となっている。

この取組が評判を呼び、平成26年には地区外に隣接する耕作放棄地1.

2haの農地に景観作物を植えるなど取組が広がっている。

③ 竹林整備による竹の有効活用

古瀬の会の活動拠点周辺には人が入るのもままならない「竹やぶ」が

増えているが、竹林を整備することにより、たけのこ採りや子どもの遊

び場など新たな地域の交流拠点となるだけでなく、竹を民芸品の材料な

どに活用できると考え、竹林2 aを整備するとともに、「竹細工

(鶴)」作りを始めた。

平成27年4月にたけのこ堀り体験、9月からは、わら細工と共に竹細

工の販売を始め、新たな地域貢献や収入源の確保だけでなく、古瀬の会

の活発化にも繋がっている。

イ 当該集団等による生活条件の改善・整備、コミュニティ活動の強化、都

市住民との交流等への寄与状況

① 「古民家松本邸」を拠点とした都市農村交流の推進

「古民家松本邸」は、常磐道谷和原インターから程近い筒戸地区にあ

り、江戸時代の脇本陣を移築した築約150年の古民家である。

この古民家は、故松本作衛氏が住居としていたもので、松本氏と以前

より交流があった古瀬の会は、ここを拠点に畑作体験などを行っていた。

松本氏逝去後、故人の遺志により松本氏の家屋が市に遺贈され、平成

20年に市の都市農村交流施設「古民家松本邸」として位置づけられ、古

瀬の会が指定管理者として管理・運営することとなった。

家の中には、土間や囲炉裏などが残されているだけでなく、倉庫には

写真3 里山植栽

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唐箕や千歯こき、糸操り車、火鉢

など、昭和初期まで使われていた

木製の農機具や生活用品が残され

ている。

都会から来た親子に松本邸へ宿

泊してもらい、土間掃きやかまど

のすす落とし、ぞうきんがけ、野

菜づくりや落ち葉の堆肥づくりな

どの体験を通して、農村の暮らし

と文化を肌で感じてもらう都市農

村交流活動を行っている。

② 農村文化の継承

正月の伝統行事である「どんど焼き」

は、40年位前に途絶えてしまったが、平

成19年頃に古瀬の会のメンバーが中心と

なって寺畑地区住民と協力し復活させ

た。当初は地元住民のみ50人ほどの参加

だったが、現在は地域内外を合わせて10

0人ほどとなっている。

また、寺畑地区の農家に代々伝わる

「燈籠作り」を子どもたちに体験、継承

して欲しいと、収穫祭後、小貝川に手作

りした燈籠を流すイベントを実施してい

る。100人ほどの参加者が手作りした約

300個の燈籠を流す壮大なものとなって

いる。

地域の伝統行事を通して住民同士の結びつきが強まり、世代間交流を

図ることに繋がっている。

③ 教育プログラムへの協力

「葛飾区郷土と天文の博物館」が開催した農業体験に参加した東京都

立葛飾ろう学校の教員から、学校の授業に取り入れたいという要望があ

り、平成16年から総合学習の一環として寺畑地区で農業体験を行ってい

写真5 どんど焼き

写真4 落ち葉掃き

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る。

約60人の生徒が1年を通じ、手作業

で「田起こし」から「脱穀」までの一

連の流れを体験する他、「唐箕」を使

用した籾の選別と精米作業を学んでい

る。

また、東京都市大学等々力中学校で

も同様の体験を「食育教育(命の育み

プログラム)」の一環として行ってい

る。

さらに、東京大学の大学院生が、

平成19年から寺畑地区で年3、4回

農業実習を行っており、年間延べ約3

5人が参加し、古瀬の会の指導の下、

無農薬栽培の水田管理等を学んでい

る。

ウ 当該集団等の活動による地域への定住促進、女性の社会参画の促進状況

等について記述

① 「みらいコン」開催

平成22年から農業後継者育成と定住促進を目的に、農業体験による婚

活事業「みらいコン」を開催し、これまで6回延べ203人が参加した。

実際に1組が結婚に至っており、農村体験を通して出会いの場を提供す

るとともに、就農を考えている若者や、農業者の交流の場となっており、

農業後継者や若手女性農業者の創出の一助となっている。

写真6 食育教育

(田起こし、唐箕体験)