当院における高齢者へのon-line...
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当院における高齢者へのOn-line HDFの効果
(医)清陽会 東岡山ながけクリニック
○ 三宅 よしえ、日野 奈美、山田 美由紀、光岡 香織、藤本 昌子、 櫻本 耕司、西田 典数、長宅 芳男
On-line HDF(以下OL-HDF)の対象は、一般的に若
年者が多い現状にある。しかし、当院では全台OL-
HDF対応機を設置しており、さらにOL-HDFの長所と
される①循環動態の安定②合併症予防を高齢透析
患者に対しても有効に活用している。そのため65才
以上の約4割がOL-HDFを行っている。
今回私たちは、当院の高齢透析患者におけるOL-
HDFの効果を検討したので、報告する。
<はじめに>
当院透析患者のうち、65才以上の56例を対象に、
HD群(33例)とOL-HDF群(23例)の2群に分類し、年
齢、透析歴、栄養状態(MIS、血清Alb値、BMI、n-
PCR、%CGR)、透析条件(フィルター面積、血流量、
Kt/V)、ESA使用量、降圧剤の数、透析前血圧、治
療時間内の血圧関連処置回数、日常生活自立度
を比較検討し、t検定にて分析を行った。
<対象・方法>
透析条件設定内訳 (HD,OL-HDF共にQD=500ml/min)
HD群(33例)
QB ● 認知症 13例
(39.4%)
フィルター種類 ●フィルター面積
OL-HDF群(23例)
<150ml/min 3例
150~200ml/min未満 16例
200~250ml/min 14例
kf-m 1例
FX-S 8例
FDY-GW 5例
FB-Uβ 12例
RENAK-PS 4例
NF-H 3例
≦0.9㎡ 1例
1.0~1.5㎡未満
5例
1.5~2.0㎡未満
20例
2.0~2.5㎡
7例
QB ● 認知症 3例
(13.0%)
フィルター種類 ●フィルター面積
● QF
150~200ml/min未満 6例
200~250ml/min 17例
MFX-S 8例
MFX-E 2例
FIX 5例
GDF 7例
その他 1例
1.5~2.0㎡未満 9例
2.0~2.5㎡ 14例
Pre 22例 6l/h 1例
8l/h 1例
10l/h 1例
12l/h 6例
15l/h 12例
Post 1例 2l/h 2例
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
77.8 63.6 71.3
126.4
HD群 OL-HDF群
P<0.01
P<0.01
患者背景
循環動態安定
8例
合併症 予防
15例 (RLS:2例、アミロイド症:5例、 掻痒感:8例)
(OL-HDF移行理由内訳)
(OL-HDF歴)
1年以上2年未満 6例
2~5年未満 10例
5~10年未満 6例
10年以上 1例
透析条件
150.0
160.0
170.0
180.0
190.0
200.0
180.6 197.8
血流量(ml/h)
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
1.7
1.9
フィルター膜面積(m2)
P<0.01 P<0.01
1.0
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.3 1.4
Kt/V
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
MISスコア Alb BMI
6.5 3.3
21.6
5.7 3.3
21.0
HD群 OL-HDF群
栄養状態(1)
(g/dl)
点数が低いほど栄養状態が良好と評価される
栄養状態(2)
0.50
0.55
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
0.85
0.90
0.75
0.84
n-PCR
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
80.1
139.7
%CGR P<0.05
3000.0
4000.0
5000.0
6000.0
7000.0
8000.0
9000.0
HD群 OL-HDF群
5954.5 6358.7
ESA使用量(週あたり)
(単位)
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
0.8 1.2
降圧剤種類数
P<0.05
0
20
40
60
80
100
120
140
160
147.8
75.6
149.0
75
透析前血圧比較
HD群 OL-HDF群
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
11.8
8.3
処置回数
血圧
(mmHg) (回)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
HD群 OL-HDF群
2.6
1.3
P<0.01 <日常生活自立度> 障害老人の日常生活自立度 1点 J: 自立 2点 A1:介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活
3点 A2:外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活
4点 B1:車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
5点 B2:介助により車いすに移乗する
6点 C: 1日中ベッド上で過ごし、常に介助を要する
点数が低いほど日常生活が自立していると評価
日常生活自立度
OL-HDF群はHD群に比し、年齢が若く、透析歴が有意に長かった。これは、合併症に対する治療法としてOL-HDFが選択され、長期透析患者の合併症予防として、透析条件においてもOL-HDFの効果が十分発揮されるよう「血流量」や「フィルター面積」がHD群に比し、有意
に大きい結果となった。しかし、当院の高齢透析患者のOL-HDFは若年者より比較的マイルドな条件設定であった。
血圧管理においては、 OL-HDF群の方がより多くの降圧剤を併用しているが、 HD群と比較しても血圧コント
ロールに差は認めず、治療時間内の処置回数は少ない傾向にあった。
<考察1>
貧血管理においては両群に差は認めなかった。
栄養状態においては、 OL-HDF群の方がn-PCRが有意に高く、%CGRも高い傾向にあった。 HD群とBMIに差が認められなかったことより、 OL-HDF群はHD群と同程度の
体格であっても、蛋白摂取率が高く、筋肉量が多いことが分かった。そのため、日常生活自立度もOL-HDF群は有意に良好であると考えられた。
高齢者それぞれに合わせた透析条件設定を行い、しっかり透析を行うことは、体格や蛋白摂取量、筋肉量の維持と共に、日常生活が自立して生活できるのみならず、高齢者のQOL向上に繋がることが示唆された。
<考察2>
今後、長期透析患者の高齢化が予想される。その
ため、今後もOL-HDFを積極的に活用して、循環動態
の安定や合併症予防、栄養状態改善などを図ってい
く必要がある。しかし、高齢長期透析患者に対して、
高齢者個々に応じた透析条件設定が必要である。
<結語>
日本透析医学会 CO I 開示
筆頭発表者名: 三宅 よしえ
演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある 企業などはありません。