違法な業務委託・請負は罰則の適用のほか 労働者の雇用責任 …...2011/08/21...
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Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
職安法・派遣法に違反すると罰則が適用
会社が他の会社に業務委託・請負(本稿では、業務委託か請負かによって法的な結論が異ならないので、以下では単に「請負」と表記します。)をすることは広く行われています。 しかし、他方で職業安定法、派遣法によ
り労働力の供給のみを求めることには規制がなされており、これらの法規を無視して業務遂行の合理性のみを追求することは法的なリスクを生じさせます。偽装請負問題は社会的にも取り上げられており、社会的に非難されるリスクなども考慮しなければなりません。 法的なリスクとしては、まず、職安法、派遣法に違反すると、Q2のとおり罰則が適用されるリスクがあります。個人に対する請負は職安法、派遣法の違反とはなりませんが、労基法、安衛法が適用されると、これらの法違反として罰則が適用されるこ
シリーズ ◆雇用管理のリスクマネジメント◆◆雇用管理のリスクマネジメント◆
~労使紛争リスク回避のポイント~~労使紛争リスク回避のポイント~第15回・業務委託・請負に関するリスク第15回・業務委託・請負に関するリスク
違法な業務委託・請負は罰則の適用のほか労働者の雇用責任を負うリスクなどが 今回は、業務委託・請負に関するリスクについて解説してもらう。業務委託・請負に関する法的なリスクとしては、まず、職安法、派遣法に違反すると、罰則が適用されるリスクがある。個人に対する請負は職安法、派遣法の違反とはならないが、労基法、安衛法が適用されると、同法違反として罰則が適用されることになる。民事上は労働者との間に黙示の労働契約が認められ、雇用責任を負うリスクを負うことがある。このように、職安法、派遣法に違反する業務委託・請負は様々なリスクを生じさせるおそれがあることに注意が必要だ。
◆弁護士・山口 毅(石嵜・山中総合法律事務所)
労働基準広報 2011.8.216
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ととなります(なお、平成22年4月8日付にて個人請負型就業者に関する研究会の報告書が公表されています。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005yde�.html)。 次に、民事上は労働者との間に黙示の労働契約が認められ、雇用責任を負うリスクを負うことがあります。 さらに、個別的な労使紛争だけではなく、合同労組を中心とした労働組合からの団体交渉の申し入れ等集団的な労使紛争へと発展している事件がいくつも見られます。 現時点では可決されていませんが、派遣法改正案には派遣法の適用を免れる目的で請負等の名目で労働者派遣を行っている場合、労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなす規定も設けられています。このように、職安法、派遣法に違反する業務委託・請負は様々なリスクを生じさせるおそれがあることに注意が必要です。
なお、本稿では用語を次のとおりに統一します。請負において仕事を発注する者を
「注文主」、仕事を受注する者を「請負業者」と、労働者派遣において派遣を受ける者を
「派遣先」、派遣する者を「派遣元」と、労働者供給において供給を受ける者を「供給先」、供給をする者を「供給元」とします。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
契約書の形式などではなく実態から判断
請負を事業として行うことについて、労働法規における規制は定められていません。 これに対し、労働者派遣を行うには許可
(一般労働者派遣。派遣法5条)ないし届出(特定労働者派遣。同法16条)が必要とさ
Q1� 業務委託・請負に関するリスクとは?� 6
Q2� 労働者派遣と労働者供給の違いとは?� 7
Q3� 労働者派遣と請負との違いとは?�9Q4� 労働者供給と請負との違いとは?�10Q5� 違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?� 11
Q6� 違法な労働者派遣をしていると、派遣先(契約の形式上は注文主)と労働者(契約の形式上は請負業者の労働者)
第15回・業務委託・請負に関するリスク
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
との間で労働契約が存在していると認められるか?� 12
Q7� 構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?� 13
Q8� 労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?� 14
Q9� 個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?� 15
Q10� 労働者性の判断基準とは?� 16Q11� 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?� 17
労働基準広報2011.8.21 7
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
れ、許可なくして一般労働者派遣事業を行ったときは1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(同法59条2号)、届け出なくして特定労働者派遣事業を行ったときは6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(同法60条1号)との罰則が定められています。 また、労働者供給事業を行うことは原則として禁止されており(職安法44条)、その違反について罰則(同法64条9号。1年以下の懲役又は100万円以下の罰金。)が定められています。 したがいまして、請負、労働者派遣、労働者供給を区別するということは、法規制が定められている範囲を明らかにすることになります。 区別の判断基準は、契約書の形式、当事者の認識が基準となるものではなく、実態が請負であるか、労働者派遣であるか、労働者供給であるかにより判断されます。これらの判断基準を示したのが8ページ図1
になります。 まず、図1①の「労働者派遣」と「労働者供給」との区別は、「労働者派遣」に該当するか否かにより判断されます。なぜなら、職安法4条6号は「労働者供給」について
「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい」派遣法で定めている「労働者派遣に該当するものを含まないものとする」と定められているからです。
派遣は派遣元と労働者との間に労働契約
そこで、「労働者派遣」の定義が重要となり、派遣法2条1号では「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」
<図1>請負・労働者派遣・労働者供給の判断基準
労働者派遣(派遣法2条1号)
労働者供給(職安法4条6号)
請 負(民法 632条)
③
①
②職安法施行規則4条
昭和 61年告示 37号
労働基準広報 2011.8.218
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
と定められています。 労働者供給との区別においては、まず、労働者派遣は派遣元が労働者との間に労働契約を締結していることがポイントになります。二重派遣は当初の派遣元から派遣された労働者を当初の派遣先が次の派遣元となり次の派遣先に派遣するものであることから、次の派遣元(当初の派遣先)と派遣労働者との間に労働契約が締結されておらず、労働者派遣に該当しないので労働者供給となります。 次に、労働者を派遣先に雇用させることを約束していないことがポイントとなります。紹介予定派遣は、派遣先において雇用することが約束されているものではない(派遣先は雇用しないと判断することができる)ので、労働者派遣に該当します。 この労働者派遣と労働者供給との区別は、請負という形式で実態が労働者派遣若しくは労働者供給を行っていた場合でも同様であり、「労働者派遣である以上は、職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当する余地はないものというべきである。」と判断されています(松下PDP事件最判平成21年12月18日)。
このうち、請負という形式で実態が労働者派遣であるものが「偽装請負」と呼ばれており(平成18年9月4日基発第0904001号
「偽装請負の解消に向けた当面の取組について」参照)、派遣法違反が問題となります。これに対し、重畳的に請負という形式で実態が二重派遣であるときは、上記のとおり労働者供給に該当することになるので、事業として行うと職安法44条違反の問題となります。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
請負は業務を相手方から独立して処理
職安法が制定された当初、労働者派遣は労働者供給に含まれるものとして禁止されており、請負と労働者供給とを区別するものとして職安則4条(改正前)が定められていました。その後、昭和61年に派遣法が制定され労働者派遣が法認されることとなったことから、職安法も改正され労働者派遣と労働者供給とが区別されました。さらに職安則4条を基礎として自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること、請負契約により請け負った業務を自己の業務として相手方から独立して処理するものであることを要件とした「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。以下「告示37号」といいます。)が定められました。
労働基準広報2011.8.21 9
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
実務においては、告示37号に基づいて労働行政が運用され、その具体的な解説について「労働者派遣事業関係業務取扱要領」
(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou/index.html)、「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken︲shoukai03.pdf)が公表されています。 許可なくして労働者派遣事業を営んでいた場合、法違反として処分が科せられるのは派遣法で定めている「労働者派遣」を行っていたことです。したがって、派遣法2条1号で定められている「労働者派遣」の定義が重要となります。もっとも、労働者派遣が労働者供給の一つとして禁止されてきたものが法認されたとしても、労働者供給と請負の区別基準である職安則4条の要件
(Q4参照)が緩和されたものではないので、
請負との区別においては職安則4条と同等の要件が必要であると考えられます。よって、職安則4条と告示37号の要件を十分、理解しておくことも必要であるといえます。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
単なる肉体的労働力の提供は労働者供給
労働者供給と請負との違いは、職安則4条において定められています。GHQの占領政策により中間搾取や強制労働のおそれのある制度、とりわけ封建的な身分関係を前提とする労働者供給事業が労働の民主化を阻むものとして禁止され、「たとえ契約の形式が請負の形式であっても労働力を主体とする作業は労働者供給事業として禁止せ
<図2>職安則4条による労働者供給に該当しないための4要件
11
22
33
44
作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。
作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資料を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
労働基準広報 2011.8.2110
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズよとのGHQの厳命が出て、GHQ指示メモの通りに1948年2月職安法施行規則を改正し、4つの要件をすべて満たさない限り請負とは認め」ないとされるに至ったとされています(濱口桂一郎「労働法政策」62頁)。 その後、改正当初の要件が緩和され、現在の職安則4条に至っています(10ページ図2参照)。 したがいまして、請負により事業を行うときは労働者供給に該当しないよう、4要件を遵守しなければなりません。ただし、4要件を満たす場合であっても、それが労働者供給事業の禁止該当することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、労働者供給事業としての責任を負うと定められています(同条2項)。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
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Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
違法な派遣も労基法6条には違反しない
労基法6条は「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」と定めており、同法に違反すると1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとされています(同法118条1項)。立法時において、戦前来の親分、現場監督、女衒、人宿、口入屋などによる搾取、ピンハネ行為、人身売買などを排除しようとしたものであるとさ
れています(諏訪康雄 東京大学労働法研究会編「注釈労働基準法 上巻」128頁)。ここにいう「他人の就業に介入して」とは、使用者と労働者の中間に第三者が介在して、その労働関係の開始存続について、媒介又は周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなしていることであると解されています(昭和23年3月2日基発381号等)。 この点、労働者派遣は、派遣先は派遣元、当事者と合わせて労働関係となるもので第三者として介在しないとして、労基法6条に該当しないとの行政解釈が示されています(昭和61年6月6日基発333号)。 これに対し、労働者供給は原則として他人の就業に介入することに該当するが、供給元と労働者との間に労働契約関係がある場合には、該当しないとされています(上記基発333号)。 したがいまして、違法な労働者派遣は労基法6条に違反せず、違法な労働者供給は、供給元と労働者との間に労働契約が締結しているときを除き、労基法6条に違反することとなります。
労働基準広報2011.8.21 11
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
Q6 違法な労働者派遣をしていると、派遣先(契約の形式上は注文主)と労働者(契約の形式上は請負業者の労働者)との間で労働契約が存在していると認められるか?
黙示の合意が成立しているかが問題に
契約は、申込みと承諾という相対立する意思表示が合致することによって成立するのが民法上の原則です。労契法6条は「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定めていますが、これは上記原則を労働契約において具体的に表したものといえます。 労働者と使用者との合意には、明示の合意と黙示の合意があります。明示の合意とは、両者が合意したことを書面、口頭により明らかにしているものをいいます。労働者派遣においては、派遣元と労働者との間に労働契約が存在していること、派遣先に雇用を約束しているものではないこと(Q2参照)が前提となっています。そうすると、派遣先と労働者との間に労働契約を締結する明示の合意がないことが通常です(なお、裁判例においては、派遣法の雇用申込義務(40条の4)は派遣先が申込みの意思表示をしたと取り扱われるものではないと解されています)。 これに対し、黙示の合意とは、合意内容が当事者間において書面で確認されたり、双方によって口頭で明言されたりはしてい
ないが、両当事者の行動や態度から見て当該合意が認められる場合をいいます。したがって、派遣先と労働者との間に労働契約が存在していると認められるのは、①労働者が使用者に使用されて労働すること、②使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、両者の間に行動や態度から黙示の合意が成立しているとき、ということになります。そこでいかなる事実が存在していると黙示の合意が成立していると認められるかが問題となります。 上記松下PDP事件最高裁判決においては、②について同事件の控訴審判決における「また、被上告人(註:労働者)がパスコ(註:請負業者)から給与等の名目で受領する金員は、上告人(註:注文主)がパスコに業務委託料として支払った金員からパスコの利益等を除外した額を基礎とするものであるから、被上告人が受領する金員の額を実質的に決定していたのは上告人であったといえる」との部分について、「上告人はパスコによる被上告人の採用に関与していたとは認められないというのであり、被上告人がパスコから支給を受けていた給与額を上告人が事実上決定していたといえるような事情もうかがわれず、かえって、
労働基準広報 2011.8.2112
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズパスコは、被上告人の本件工場のデバイス部門から他の部門に移るよう打診するなど、配置を含む被上告人の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったものと認められるのであって、前記事実関係等に現れたその他の事情を総合しても、平成17年7月20日までの間に上告人と被上告人との間において雇用契約関係が黙示的に成立していたものと評価することはできない」と判断し、黙示の労働契約成立を認めた控訴審判決を破棄しています。 下級審の裁判例においても、サガテレビ事件(福岡高判昭和58年6月7日)では、請負業者が労働者の採用、賃金その他の労働条件を決定し、身分上の監督も行っていたもので、注文主の労務担当代行機関と同一視しうるような形式的、名目的な存在ではなかったとして黙示の合意の成立を否定しています。
派遣元に労働条件判断する実態無い場合
これに対し、黙示の合意の成立を認めたセンエイ事件(佐賀地裁武雄支決平成9年3月28日)では①に加え②として「請負代金は、基本的に、作業に従事した労働者の人数と労働時間とで算出される債権者ら
(註:労働者)を含む光幸商事(註:請負業者)の従業員の受ける賃金の総額と直接関連するものであることを推認することができる上、その額は、実際上債務者(注文主)によって決定されていた」、「債権者らの配置や職場規律の適用等の労働条件の決定に関しても」「これを債務者が行っていたというべき事例がある」、「債務者のみとの関係
で光幸商事が設立された経緯があること」、「職場規律及び福利厚生面でも、基本的には、他の従業員と区別されておらず、その作業に必要な材料、資材等も光幸商事が提供するものではなかった」などの事実を認定しています。 また、同様に黙示の同意を認めたナブテスコ(ナブコ西神工場)事件(神戸地裁明石支判平成17年7月22日)においても、「業務請負としては、専ら、完全親会社であるナブコの工場に対する労働力の供給しか行っていなかったことが認められる。そうすると、採用面接や実技試験においてナブコ産業の従業員が立ち会っていたとしても、ナブコ産業による原告らの採用は、完全親会社であるナブコの採用を代行していたにすぎない」などと認定しています。 以上のことからすれば、違法な労働者派遣において黙示の合意が認められるのは、②について派遣元(請負業者)が採用、人員配置、賃金額の決定など労働条件について独自に判断する実態が無い場合であるといえます。したがいまして、そのような実態がない場合には、①の実態があると、黙示の合意により労働契約の成立が認められるものといえます。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
利用権限などの権利義務関係を明確に
請負業者が注文主の工場内で請負業務を
労働基準広報2011.8.21 13
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
行う構内請負を適切に行うには、まず、人的組織として請負業者の事業所が設けられるようにすべきです。そのためには、ある程度の人数が必要となる程度のまとまった業務を請け負うことが必要となります。請負業者の事業所が設けられれば、請負業者内において人事労務管理が行われ、注文主からの指図、注文を請負業者の責任者に対して行えるようになり注文主が請負業者の労働者に指揮命令をする事態が発生することを防ぐことができます。 次に、注文主と請負業者との間で請負契約書を作成して締結し、請負業者が使用する場所、工具、設備、施設、原料、加工品についての権利義務関係を明確にしておくべきです。構内請負も注文主との間における法律関係は構外請負と同じであり、別会社として権利義務関係、特に使用、利用権限については厳密に考え、検討した結果を契約書に反映しておくことが必要になります。 さらに、注文主、請負業者は共に安衛法を遵守する必要があります。請負業者が事業者として安衛法を遵守することが必要ですが、注文主についても、元方事業者に該
当するときは、請負業者、同社の労働者に対して安衛法またはこれに基づく命令に違反しないよう必要な指導、違反しているときは是正のための指示をしなければならない(同法29条)などの定めを遵守しなければなりません(詳細については「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針について」平成18年8月1日基発0801010号をご確認下さい)。 労働災害発生の増加は、偽装請負における問題点として「事業主責任の所在があいまいになり、必要な措置が図られず、死亡災害を始めとする重篤な労働災害の発生等労働者の安全衛生・労働条件確保上の問題が顕在化している」と指摘されているところです(前記「偽装請負の解消に向けた当面の取組について」)。そうすると、注文主として請負業者を選定する条件として、安衛法を遵守することができるだけの人的物的組織があることを含めておくべきです。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
派遣先は派遣労働者に対する義務を負う
使用者の労働者に対する安全配慮義務は、労働契約に基づいて認められるものです(労契法5条)。そうすると、労働契約が締結されていない注文主と請負業者の労働者との間には、注文主に請負業者の労働者に対する安全配慮義務が存在していないのが原則となります。
労働基準広報 2011.8.2114
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
しかし、最高裁は三菱重工業神戸造船所事件(平成3年4月11日)において、請負業者の労働者が注文主の管理する設備、工具等を用い、事実上注文主の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も注文主の労働者とほとんど同じという事実関係においては、注文主は請負業者の労働者に対して安全配慮義務を負うと判断しています。 したがって、注文主と請負業者の労働者との間に明示・黙示の労働契約が成立していない場合であったとしても、上記のような指揮命令関係が存在していると安全配慮義務を負うことがあるということになります。 この点、労働者派遣における派遣先と労働者との間においても労働契約が締結されていませんが、派遣先は安全配慮義務を負うものと考えられています(菅野和夫「労働法〔第9判〕」221頁) 。 さらに、Q9以下において説明する個人への業務委託、請負においても、建築会社と一人親方との契約関係について「典型的な雇用契約関係であったとは到底認め難く、また、典型的な請負契約関係であったともいえないが、請負契約の色彩の強い契約関
係であった」としたが、「実質的な使用従属関係があった」ことを理由として、建築会社に安全配慮義務違反があることを認めた裁判例(藤島建設事件浦和地判平成8年3月22日)もあります。 なお、注文主が請負業者の労働者に対する安全配慮義務を負っていない場合であっても、安衛法の義務を怠りそれに因って事故が発生し請負業者の労働者に負傷又は疾病が生じたときは、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任が生じるものと考えられることには注意をしておくべきです。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
実態が労働契約なら労働関係法規が適用
会社が個人と業務委託契約、契約上の形式を請負契約として締結した場合、実態が労働契約であるときは、労基法、安衛法、労契法などの労働関係法規が適用されることになります。すなわち、会社と個人が、当事者の合意により労働関係法規の適用がないとすることはできません。 例えば、労基法の「労働者」(同法9条)に該当すると労基法が適用されることになります。労基法が適用されると、労働時間の規制、割増賃金の支払いなどが必要となり、さらに労基法上の労働者に適用されると定められている安衛法(同法2条2号)、最低賃金法(同法2条1号)なども適用されることになります。
労働基準広報2011.8.21 15
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズ
労契法における「労働者」(同法2条1項)についても、労基法上の「労働者」とほぼ同一であると考えられています(荒木尚志 菅野和夫 山川隆一著「詳説 労働契約法」69頁)が、労契法の適用があると業務委託、請負契約の解除に解雇権濫用法理が適用されることになります。 労組法における「労働者」(労組法3条)に該当すると、会社は労働組合と団体交渉義務を負い、不当労働行為を行うことが禁止されます(同法7条)。 この他にも、労働保険(雇用保険、労災保険)、社会保険(健康保険、厚生年金)の被保険者に該当すれば、会社は加入手続を義務づけられることになります。
したがいまして、個人と業務委託、請負契約を締結するときは、その実態に照らして労働法規が適用されるものであるか否かを判断し法違反が生じないようにしなければなりません。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
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Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
労働基準法研究会報告が判断基準示す
労働者性の判断基準については、各法律における労働者を統一的に考えるか、それ
<図3>昭和 60年報告の判断要素概要
Ⅰ 「指揮監督下の労働」に関する判断基準 ⅰ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無 ⅱ 業務遂行上の指揮監督の有無 (a) 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無 (b) その他 ⅲ 拘束性の有無 ⅳ 代替性の有無-指揮監督関係の判断を補強する要素-
Ⅱ 報酬の労務対償性に関する判断基準
Ⅰ 事業者性の有無 ⅰ 機械、器具の負担関係 ⅱ 報酬の額 ⅲ その他
Ⅱ 専属性の程度
Ⅲ その他
② 「労働者性」の判断を補強する要素② 「労働者性」の判断を補強する要素
① 使用従属性に関する基準① 使用従属性に関する基準
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◆雇用管理のリスクマネジメント⑮ シリーズ
◆雇用管理のリスクマネジメント⑮シリーズぞれ相対的に考えるかという問題があります。 現在の裁判実務では、個別的労働関係(労基法、労契法など)と労働組合法とを相対的に考えられており、厚生労働省の労使関係研究会において「労働組合法上の労働者性の判断基準」案が検討されています(平成23年7月4日現在。基準案については次のURLにてご参照下さい。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ebyd.html)。 本稿は、個別的労働関係について説明をしていますので、その判断基準となる労基法上の労働者性の判断基準について説明をします。 労基法上の労働者性の判断基準については、昭和60年に労働省(現厚生労働省)の労働基準法研究会が「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(以下「昭和60年報告」といいます)を発表しています。限界的事例については「使用従属性」の有無、すなわち「指揮監督下の労働」であるか、
「報酬が賃金として支払われている」かどうかを判断するに当たり、「専属性」、「収入額」等の諸要素をも考慮して、総合判断することによって「労働者性」の有無を判断せざるを得ないことを前提とし、「現在の複雑な労働関係の実態のなかでは、普遍的な判断基準を明示することは、必ずしも容易ではないが、多数の学説、裁判例等が種々具体的判断基準を示しており、次のように考えるべきであろう」として判断基準を示しました(16ページ図3参照)。 現在の裁判例においても、昭和60年報告であげられている判断要素とほぼ同様の要
素を用いられているとされています。そこで、実務上、現在においても重要な昭和60年報告で示された労働者性の判断基準の内容を理解することが重要と考えられます。
Q1 業務委託・請負に関するリスクとは?
労働者性の判断基準とは?
Q2 労働者派遣と労働者供給の違いとは?
違法な労働者派遣、労働者供給は労基法6条、中間搾取の排除の規定に違反するか?
労働者派遣と請負との違いとは?
労働者供給と請負との違いとは?
構内請負で業務を行うときに注意すべき点は何か?
労働契約が存在していなくても安全配慮義務が認められる場合とは?
個人に業務委託、請負で業務を遂行してもらうことの問題点とは?
Q3
Q4
Q5
Q6
Q7
Q8
Q9
Q10
Q11 個人と業務委託、請負契約を締結する際に気を付けるポイントは?
内定取消しが有効と認められる事由とは?
外国人採用に関するリスクとは?
Q12
Q13
Q14 株式譲渡による企業買収をしたときに、労働契約、労働条件はどのようになるのか?
Q15 実務上の就業規則に基づく不利益変更の手続とは?
Q16 教育訓練を実施しないことが違法となることはあるか?
Q17 業務命令で出向を命じることができるのはどのような場合か?
Q18 出向命令が権利濫用と認められるのはどのような場合か?
Q19 出向中における出向元、出向先の労基法上の責任はどのようになるか?
Q20 出向中における出向先における労働契約上の権利義務はどのようになるか?
労働者性が認められるリスク少なくする
まず、労働者性が認められるリスクを少なくして契約を締結することがポイントです。「指揮監督下」であると評価されないよう、契約において業務の内容、場所、遂行方法を定めておくことが必要です。契約を書面で締結しておくことも重要です。また、事業者性が認められるため、業務を遂行するための手段(機械、器具。例えば、運転手のトラック、大工の工具など)に自己資本を投下していることも重要です。 次に、個人に業務遂行に関するリスクは自ら負うことを認識させること、リスクを回避する手段は自ら用意させることがポイントになります。個別的労働関係において労働者性が争われた多くの裁判例は、業務委託、請負契約の解除、業務中の負傷又は疾病の発生を発端としています。そこで、前者については契約締結に際して契約の解除事由を明示して確認をすること、後者については傷害保険、所得保証型の保険に加入することを契約の締結条件とすることにより紛争が発生するリスクを抑えることができます。
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