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1 大航海時代の背景 ① オスマントルコの台頭による東方貿易の衰退と希求 15 世紀オスマン帝国が台頭、現在のギリシャからエジプト・アラビア半島、および東地中海を制 し、1453 年にはビザンチン帝国(東ローマ帝国)を滅ぼす。この台頭によってイタリア商人が保持 してきた各地の貿易拠点が失われ、東方貿易が衰退する。しかし香辛料の需要に減少はない。 かくして、高まる香辛料のニーズを満たすため、新たな貿易路を開拓が希求され、冒険航海の時 代が始まる。

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大航海時代の背景

① オスマントルコの台頭による東方貿易の衰退と希求 15 世紀オスマン帝国が台頭、現在のギリシャからエジプト・アラビア半島、および東地中海を制

し、1453 年にはビザンチン帝国(東ローマ帝国)を滅ぼす。この台頭によってイタリア商人が保持

してきた各地の貿易拠点が失われ、東方貿易が衰退する。しかし香辛料の需要に減少はない。

かくして、高まる香辛料のニーズを満たすため、新たな貿易路を開拓が希求され、冒険航海の時

代が始まる。

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② レコンキスタ(国土回復戦争)の終息 広くは、8世紀イスラム教勢力に奪われたイベリア半島を再びキリスト教国のもとに戻そうとす

る運動だが、ことに、11~15世紀、十字軍と呼応したキリスト教国の国土奪回運動をいう。

ポルトガルと、レオン、アラゴン、カスティリャが合併したスペインが、イベリア半島からイスラム

教徒を駆逐する。(1492 年のグラナダ王国滅亡によってレコンキスタは完了する)

732 年

1493 年

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③ 商業と海外進出に活路を求めたポルトガル いち早くレコンキスタを終えたポルトガルは、強大化するスペインの圧迫を退けて独立を保つた

め、活路を商業と海外進出に求める。

まず、ポルトガル商人は海外進出に積極的なエンリケ航海王を支援し、その指揮の下で、

1415 年 アフリカの金の集散地であったセウタ(現モロッコ領)を征服

1418 年からは海洋へ進出してマデイラ諸島を発見、27 年にはアゾレス諸島を発見

1434 年、ついにボジャドール岬を越えてアフリカ大陸を南下し、大航海時代の幕が切って落と

される。

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④ ルネッサンス

ルネッサンス(14~16C)とは

中世の狭隘なキリスト教世界観から抜け出して、現実世界を見直し、経験や観察から得られる

理性的で実証的な人間的真理を重視するようになった精神の動き、またその時代をいう。

背景には、生産性が低く、生きてゆくことが困難で辛苦に満ちた中世から、農業技術の進歩に

よって生産性が向上し、生きてゆくことが少しずつ楽になっていった、12C 以降の社会的経済的

変化がある。

農業生産性の向上による生存条件の向上に呼応して、まず、キリスト教会の中にサン・フランチ

ェスコ(聖フランシスコ 1181~1226)が現れる。サン・フランチェスコは、この世は苦しみと醜さだ

けではない、この世の自然は美しく、自然には神の魂が宿っている、と現世を肯定する新しい宗

教観を説く。つづいて、恋愛の喜びや愛の美しさを謳うことを通して、この世の人間の営みに美を

見いだすダンテ(1265~1321)のような新しい文学が誕生する。さらに、彼らの思想を絵の中で

表現しようとするジョットが現れ、これまでにないリアルな感情表現を伴う絵画を制作する。(プレ・

ルネッサンス)

この、天上から現世への、まなざしの大転換が、地上の自然を観察し、そこに真理を見いだして

ゆこうとする客観的、科学的精神を育む。

15 世紀以降、あらゆる分野で、かつてのギリシャ・ローマのように、自然観察や現実の省察に

基づく知的探求が行われるようになり、新たな発見が為され、新たな「学」が成立してゆく。芸術

分野においても、写実的で劇的で、かつ理想化された、まったく新しい表現が、ダ・ヴィンチ(1452

~1519)やミケランジェロ(1475~1564)などに代表される芸術家によって為されるようになる。こ

の時代をルネッサンスと呼んでいる。

(「ルネッサンス総括」参照)

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ルネッサンス総括

中 世 ルネッサンス

天国と地獄

聖書の中にある真理

聖書の研究と神意の解釈

瞑想性

神秘主義的

観念的

神学

神の秩序の下の人間

宗教の一部である芸術

天上的抽象美

精神的審美観

清浄な精神を表す非肉体的描写

寓意性

平面性 ―線を主体とする描出―

金箔の多用

幽玄性

無署名

職人

神が与えた間接的創造

神と聖人、天国と地獄

神の栄光

地上の世界

自然の中にある真理

自然現象の研究と法則の発見

観察性

合理主義的

現実的

自然科学

自然の中の人間

独立した価値をもつ芸術

古典的構成美

造形的審美観

美しい肉体の描写

写実性

立体性 ―面を主体とする描出―

遠近法

自然の色彩

生命感

署名

芸術家

個人の創造

肖像画・風景画の誕生

人間の栄光

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⑤ 科学と航海術の進歩

1 プトレマイオスの地図の発見と刺激

A 地球を球体とする認識 B 新地図作成技術(緯度と経度の導入)

2 羅針盤(左)、四分儀(右)

3 新しい造船技術

: 北欧型(左)と地中海型(中)の融合(右) + =