京都大学€¦ · created date: 2/28/2014 3:45:42 pm

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E「1 1 消費税 財源論は問題のすり替え 政治 行政 の信頼乏しい 国から世界を眺めれば 百年来」 の大判振る舞いとは打って変わり、政策論争の方では、消費税を含む 財源論」が盛んである。時あたかも総選挙間近とあつて、与党 野党間で、マ フェスト で福祉 少子化対策 食料 自給等の政策を争っているのは結構であるが、何時も与党 側は 財源 はどうする」と、まるで水戸黄門の印籠のように持ち出して、財源面の方に 話を持つて行つてしまう。その論点となる、埋蔵金 公務員の無駄 特別会計の実態とな ると、体制側の方がデータを握つているので、国民に判りにくい論戦になるという繰 り返 しが続いている。 母屋ではお粥、離れではスキ焼き」という与党長老の名言も、特別会 計にメスを入れるという方向に国民の 目を向けるには至らなかった。 話 はちょつと寄 り道 になるが、不景気のせいで、 マスコミも金銭のごまかし、その多 額さを重点に報道しがちである。勿論 漢字検定協」のような、公益法人ならぬ 私益優 先」の運営などとんでもないこと、厳しく処置される きである。しかしあの検定に数百 万もの人が押し掛けてきたという事実、 まりは折角の国民の漢字というものに対す る、高い『 向学心』がこんな形でしか満たされて来なかつたことに対して、文部科学省や 教育界から何ら反省の動きもないのは不思議、と思うのは、筆者のみの僻みなのであ ろうか。 さて、財源問題で最もホットなものは消費税 。 これ については、大平 橋本両内閣の 命運に関わる位国民の反発を招いた。以来、政治家には消費税引き上げの発言はタ ブーとなつたが、社保庁の乱脈が表面化して国民が将来不安を募らせる 方、元々少 子高齢化で年金の将来原資が不足するという『広報』が浸透するにつ れ、 福祉限定」 使用なら消費税引き上げもやむを得ないという議論がされるようになつた。その話が 『必要な経費は国民が負担』と言う議論に拡張され、増税の必要を公言する政治家は いかにも勇気ある者であるかのように、 部の評論家やマスコミが持て囃す風潮が形 成されてきた。 その波に乗つて、前述のように、政策を言うなら先ず 財源を示せ」という論法が、政策 中身の議論を封じる時に濫用されるようになつた。そうなると、政策 vs財 源の問題は、 あたかも 鶏が先か卵が先か」の問題、或いは コインの表裏」のようにも見え、またそ のように言われているが、果たしてそうであろうか。 『 日本の消費税率はこんなに低い』と言う説明によく使われる、財務省作成の次の表 を、私は、何度も見入つている。たしかに日本の5%と いうのは最低だが、高い国の名前 を克明に見ていると、何か共通点があるように思える。 概 には言えないけれども、消 費税率の高い国々は、①文化的に成熟度が高い国、②あまり大きくない国、③民主主 義の国。 まりは、国民が政治 行政全体の中身と行動様式を知り易い国という風に思

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Page 1: 京都大学€¦ · Created Date: 2/28/2014 3:45:42 PM

E「 届1 1

消費税・財源論は問題のすり替え

一 政治・行政への信頼乏しい国から世界を眺めれば一

森 一久

「百年来」への大判振る舞いとは打って変わり、政策論争の方では、消費税を含む「財源論」が盛んである。時あたかも総選挙間近とあつて、与党薔野党間で、マニフェストで福祉口少子化対策口食料自給等の政策を争っているのは結構であるが、何時も与党側は「財源はどうする」と、まるで水戸黄門の印籠のように持ち出して、財源面の方に話を持つて行つてしまう。その論点となる、埋蔵金・公務員の無駄・特別会計の実態となると、体制側の方がデータを握つているので、国民に判りにくい論戦になるという繰り返しが続いている。「母屋ではお粥、離れではスキ焼き」という与党長老の名言も、特別会計にメスを入れるという方向に国民の目を向けるには至らなかった。

話はちょつと寄り道になるが、不景気のせいで、マスコミも金銭のごまかし、その多額さを重点に報道しがちである。勿論「漢字検定協」のような、公益法人ならぬ「私益優先」の運営などとんでもないこと、厳しく処置されるべきである。しかしあの検定に数百万もの人が押し掛けてきたという事実、つまりは折角の国民の漢字というものに対する、高い『向学心』がこんな形でしか満たされて来なかつたことに対して、文部科学省や教育界から何ら反省の動きもないのは不思議、と思うのは、筆者のみの僻みなのであろうか。

さて、財源問題で最もホットなものは消費税。これについては、大平口橋本両内閣の

命運に関わる位国民の反発を招いた。以来、政治家には消費税引き上げの発言はタブーとなつたが、社保庁の乱脈が表面化して国民が将来不安を募らせる一方、元々少子高齢化で年金の将来原資が不足するという『広報』が浸透するにつれ、「福祉限定」使用なら消費税引き上げもやむを得ないという議論がされるようになつた。その話が

『必要な経費は国民が負担』と言う議論に拡張され、増税の必要を公言する政治家はいかにも勇気ある者であるかのように、一部の評論家やマスコミが持て囃す風潮が形成されてきた。その波に乗つて、前述のように、政策を言うなら先ず「財源を示せ」という論法が、政策中身の議論を封じる時に濫用されるようになつた。そうなると、政策vs財源の問題は、あたかも「鶏が先か卵が先か」の問題、或いは「コインの表裏」のようにも見え、またそのように言われているが、果たしてそうであろうか。

『日本の消費税率はこんなに低い』と言う説明によく使われる、財務省作成の次の表を、私は、何度も見入つている。たしかに日本の5%というのは最低だが、高い国の名前を克明に見ていると、何か共通点があるように思える。一概には言えないけれども、消費税率の高い国々は、①文化的に成熟度が高い国、②あまり大きくない国、③民主主義の国。つまりは、国民が政治口行政全体の中身と行動様式を知り易い国という風に思

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われる。

日本は上記の三点で上記の「高い国」と大体同じであり、相違点は強いて言えば人口が少々多いということであろう。そのために、議員と役人の数が多いわけだが、国民からみて、透明性が低い,すなわち、収めた税金が、現在も将来も、国民のため国家のためにしっかり使われるという「確信」が全く持てないというのが、日本の置かれた基本的状況であり、その結果の一つが財源口消費税の議論が、非生産的なものに止まつている理由であろう。だから下の表は、消費税率の高低よりも、国民が政府に金をあずけても安心と思つているかどうか、すなわち行政・政治の国民信頼度の比較表と考えるベ

きであろう。

(出典 :財務省ホームページより )

摯崎的な肇すげ{m鬱 412月■1日 本おT〉

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消費税率の国別比較

(著者註)行政・政治への国民信頼度の比較のように見える。

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