東京都 更新時講習会...東京都 更新時講習会 2019年9月...
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東京都 更新時講習会
2019 年 9 月
森・濱田松本法律事務所
弁護士 小田 大輔
貸金業務の適切性の確保について
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目次
I 貸金業を行う際の視点と諸規制
1.業務運営の適切性・適正性
2.関連する主な規制
3.媒介規制について
II 近時の法務・コンプライアンス関連の課題
1.AML/CFT
2.民法(債権関係)改正
3.その他近時の動向
(1)消費者契約法改正
(2)貸付自粛制度
(3)消費税率の引上げに伴う改正
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I 貸金業を行う際の視点と諸規制
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業務の適切性・適正性の確保
改正貸金業法(平成 22 年完全施行)の柱 ①貸金業の適正化、②過剰貸付けの抑制、③金利体系の適正化、④ヤミ金融対策の強化
貸金業者は、内閣府令で定めるところにより、その貸金業の業務に関して取得した資金需要者等に関する情報の適正な取扱い、その貸金業の業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行その他の貸金業の業務の適切な運営を確保するための措置を講じなければならない。(貸金業法 12 条の 2)
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倫理規範 法規範
社会規範
法令等
適切性・適正性とは
適切性・適正性
>適法性
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関連する主な規制
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禁止行為に該当するおそれの大きい行為
1. 契約の締結又は変更に際して、次に掲げる行為を行うこと。 ① 白紙委任状及びこれに類する書面を徴求すること。 ② 印鑑、預貯金通帳・証書、キャッシュカード、運転免許証、健康保険証、年金受給証等の債務者の
社会生活上必要な証明書等を徴求すること。 ③ 貸付け金額に比し、合理的理由がないのに、過大な担保又は保証人を徴求すること。 ④ 資金需要者等に対し、借入申込書等に年収、資金使途、家計状況等の重要な事項について虚偽の内
容を記入するなど虚偽申告を勧めること。 2. 資金需要者等が身体的・精神的な障害等により契約の内容が理解困難なことを認識しながら、契約を締結
すること。 3. 資金需要者等が障害者である場合であって、その家族や介助者等のコミュニケーションを支援する者が存
在する場合に、当該支援者を通じて資金需要者等に契約内容を理解してもらう等の努力をすることなく、単に障害があることを理由として契約締結を拒否すること。
4. 資金逼迫状況にある資金需要者等の弱みにつけ込み、次に掲げる行為を行うこと。 ① 資金需要者等に一方的に不利となる契約の締結を強要すること。 ② 今後の貸付けに関して不利な取扱いをする旨を示唆すること等により、株式、出資又は社債の引受
けを強要すること。 ③ 貸付けの契約の締結と併せて自己又は関連会社等の商品又はサービスの購入を強制すること。
5. 確定判決において消費者契約法8条から 10 条までの規定に該当し無効であると評価され、当該判決確定の事実が消費者庁、独立行政法人国民生活センター又は同法に規定する適格消費者団体によって公表されている条項と、内容が同一である条項を含む貸付けに係る契約(消費者契約に限る。)を締結すること。
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帳簿の問題事例
○営業店が、債務者との交渉経過の記録について、十分に点検を行っていない事例取締役会は、法定帳簿の備付けについて、「貸付管理規程」を策定し、事務リスク管理部門を主管部署としている。また、交渉経過の記録については、当該規程に基づき、営業店の担当者が端末により作成し、データベースとして保存した後、役席者が内容を点検する仕組みとしている。しかしながら、営業店における債務者との交渉経過の記録についての点検は、十分に行われていない。こうした中、営業店において、債務者との交渉経過を、帳簿に記録していない事例や、交渉の場所や手法の記録が漏れている事例が認められる。また、入金督促に関する書面を FAX 送信しているにもかかわらず、書面の内容を記録していない事例が認められる。
○帳簿の備付けに係る管理態勢について、取締役会は、「貸金業務規則」により統括責任部署を定め、同規則に基づき、貸付けの契約に基づく債権に関する債務者等その他の者との交渉の経過の記録等の事項を記録・保存することとしているほか、延滞者属性表及び延滞管理カードを債務者等との交渉経過を記録する帳簿として運用している。しかしながら、取締役会は、規程の整合性に対する確認等の指示を十分に行っていない。このため、「債権管理・回収マニュアル」において「入金済の属性表は、破棄することができる」としており、「保存する」としている同規則と整合性が図られていない。このため、1 ヶ月未満の延滞債務者(初期延滞債務者)等との交渉の経過について、管理部門は、延滞管理カードは作成せず、延滞者属性表を作成しているものの、入金済みの同表は破棄する運用としており、適切に記録・保存される態勢となっていない。
○取締役会は、貸付けの契約に基づく債権に関する債務者等との交渉の経過の記録について、虚偽記載及び記載漏れ等が行われている行為を把握しているにもかかわらず、法第24 条の 6 の 2 に定める届出を行っていない。
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不祥事件届出
貸金業法 24 条の 6 の 2 第 4 号、貸金業法施行規則 26 条の 25 第 1 項 4 号
届出対象 役員又は使用人に ① 貸金業の業務に関し法令に違反する行為があったこと ② 貸金業の業務の適正な運営に支障を来す行為があつたこと ②の例 貸金業の業務に関し、資金需要者等の利益を損なうおそれのある詐欺、横領、
背任等 貸金業の業務に関し、資金需要者等から告訴、告発され又は検挙された行為 その他貸金業の業務の適正な運営に支障を来す行為又はそのおそれのある
行為であって、上記に掲げる行為に準ずるもの(いわゆるバスケット条項)
届出期限 知った日から 2 週間以内
罰則等 当該役職員に対し 50 万円以下の罰金
検査・監督 不祥事件について適切かつ速やかに届出を行う態勢が整備されていない場合には、検査において法令等遵守態勢に問題があると指摘されることや、その問題点が重大であるときは業務改善命令を受けることもある
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II 近時の法務・コンプライアンス関連の課題
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AML/CFTAnti-Money Laundering /Counter Financing of Terrorism
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金融庁ガイドラインの概要
(出典:「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題」(2018年8月金融庁))
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民法(債権関係)改正
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改正のコンセプト
(出典:法務省「民法改正の概要」に一部加筆)
実務への影響あり→ 実質的な対応が必要
実務への影響無し/限定的→ 形式的な対応(契約文
言の置換え等)で可
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その他近時の動向
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消費者契約法の改正
1. 取り消しうる不当な勧誘行為の追加等① 社会生活上の経験不足の不当な利用
a. 不安をあおる告知(第4条第3項第3号)b. 好意の感情の不当な利用(第4条第3項第4号)
② 判断力の低下の不当な利用(第4条第3項第5号)③ 霊感等による知見を用いた告知(第4条第3項第6号)④ 契約締結前に債務の内容を実施等(第4条第3項第7号・8号)⑤ 不利益事実の不告知の要件緩和
2. 無効となる不当な契約条項の追加等① 事業者が自分の責任を自ら決める条項(第8条・8条の2)② 消費者の後見等を理由とする解除条項(第8条の3)
3. 事業者の努力義務の明示① 条項の作成:解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なもの
になるよう配慮② 情報の提供:個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、必要な情報を提供
消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)→ 2019年6月15日から施行
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消費税率の引上げに伴う改正1. 改正の概要
① 令和元年10月に消費税率が引き上げられることに伴い、利息制限法施行令等に定める利息とみなされない現金自動支払機その他の機械の利用料等の額を改正
“ATM手数料は、ATMの保守等に必要な費用として定型的に徴収されるものであり、額が標準化・定額化していることから、金利とは別途の徴収を認めても、借り手から見て費用の妥当性が検証可能であるため、規制の対象外としているという趣旨”に基づく
② 消費税率引上げ分に相当するATM利用料の変更については、貸金業法第17条に規定する契約締結時交付書面の記載事項の変更に係る書面交付を要しないものとする(特例措置)
2. 施行期日• 令和元年10月1日から
1万円以下の額 108円⇒110円1万円を超える額 216円⇒220円
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以上、ご静聴ありがとうございました。
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