口腔・嚥下の 自主トレーニング口腔 の・嚥下...
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第9回
今回は口腔・嚥下についてのトレーニングです。口腔・嚥下
の機能を維持・向上するための、簡単にできる自主トレーニン
グを紹介します。
高齢者の口腔の特徴
お役立ちツールCD12月号に「口腔・嚥下の自主トレーニング」の動画を収録!※DVDプレイヤーでは再生できません。 CDに記載されている動作環境を お確かめください。
口腔・嚥下の自主トレーニング
唾液の量が少ないと、唾液の粘性が増した
り、口腔内が渇くため食事がしにくくなり、
味覚も低下します。また、ウイルスなどに感
染しやすくなってしまいます。
●唾液の量が減少する
高齢になると、噛んだり飲み込んだりする
筋力が低下するため、硬いものが噛めなく
なったり、誤嚥(食べ物や飲み物が気道に入っ
てしまう)の危険性が高くなったりします。
●噛む力や飲み込む力が低下する
144 月刊デイ Vol.156
嚥下の仕組み
嚥下(食べ物を飲み下す)の仕組みについて理解しましょう。
高齢になり、上肢や体幹の機能、視力などが低下すると歯磨きやうがい、入れ歯の手入れなどが十
分に行えなくなるため、口腔内を清潔に保つことが難しくなります。そのため、食事がおいしくなく
なったり、細菌が増殖しやすくなります。
●口腔内を清潔に保つことが難しくなる
〈 各部位の名称 〉
食べ物を認識して、どのよう
に食べるかを判断する。
食塊(食べ物の塊)を口腔から
咽頭へと送り込む。
① 先行期(認知期) ③ 口腔期
食べ物を口の中に入れて噛み、
食べ物の塊を作る。
② 準備期(咀嚼期)そ しゃく
Vol.156 月刊デイ 145
口 ・ 嚥 下 自 主 ト レ ー ニ腔 の グ の ポ イ ン トン
●体の緊張を緩める
●姿勢を保つ筋肉をつける(上肢や体幹の運動)
●唾液の分泌を促す
●噛む力・飲み込む力をつける
体に無駄な力が入ったままでは運動の効果が得られにくいため、リラックスして行うようにしましょう
嚥下は姿勢の影響を受けます。体操を行うときは、姿勢を正して行うようにしましょう
噛むときに働く筋肉や、食べ物を送り込むときに重要な舌をしっかり動かしましょう
●嚥下反射を促す食べ物を飲み込む際の、“ゴックン”という動作の練習も行いましょう
口を動かしたり、唾液腺のマッサージを行うことで、唾液の分泌を促します
食塊を食道から胃へと送り
込む。
④ 咽頭期 ⑤ 食道期
嚥下の行いにくさは
● 唾液の量が減少する● 噛む力が低下する● 食べ物の塊を咽頭へ 送る役割をもつ舌の 機能が低下する● 嚥下反射の低下● その他(麻痺など)
などが原因となります。食塊を咽頭から送り込む。
このとき、鼻や気管に通じ
る開口部を閉鎖する反射
(嚥下反射)が起こる。
146 月刊デイ Vol.156
口腔・嚥下の自主トレーニング
様
事業所名: 担当:
ウォーミングアップ 骨盤運動
姿勢を正してまっすぐ前を向き、腰に手を添えます。上半身がなるべく動かないように、骨盤をゆっくりと前後に倒します。
3回目安
4回目安
2回目安
体幹の運動
顔の前で両腕を合わせます。息を吸いながら腕を開き、しっかりと胸を張ります。 息を吐きながら元に戻ります。背すじを伸ばすように意識して行いましょう。
目線の高さで、手を組んで前に伸ばします。息を吐きながら体をゆっくりとひねります。息を吸いながら元に戻ります。反対側も同様に行います。
仙骨に体重が乗るように
坐骨に体重が乗るように
1.2(3.4)
※カッコのカウントで 元の姿勢に戻ります
〈 効果:骨盤を動かすことで姿勢を正します 〉
〈 効果:体幹の動きを出して、よい姿勢が保てるようにします 〉
カウント
1.2カウント
3.4カウント
1.2カウント
3.4カウント
5.6(7.8)
カウント
鼻から吸って
口から吐く
口から吐きながら
鼻から吸いながら
Vol.156 月刊デイ 147
鼻から息を吸いながら肩甲骨を上げることを意識して、両肩を上げます。口から息を吐きながら“ストン”と肩を下ろして力を抜きます。
肩甲骨の運動
姿勢を正して肘を軽く曲げ、ゆっくりと胸を広げることを意識して肩甲骨を内側に寄せます。このとき鼻から息を吸って、口から息を吐きながら元に戻ります。
姿勢を正して肘を軽く曲げ、肘で円を描くように腕を後ろへ回します。同様に、腕を前に回します。
鼻から吸って
前 後
鼻から吸って
口から吐く
口から吐く
1.2
3.4
首の運動
姿勢を正し、首を前後に無理のない範囲でゆっくりと動かします。
後ろから見たとき
注意
5回目安
前に5回、後ろに5回
目安
5回目安
2回目安
〈 効果:肩甲骨の動きを出して、よい姿勢が保てるようにします 〉
〈 効果:首を動かすことでよい姿勢が保てるようにします 〉
1.2.3.4カウント
1.2(3.4)
カウント5.6(7.8)
カウント背中が曲がっている方は、首をそらさず前向きのところで止めましょう。
148 月刊デイ Vol.156
姿勢を正して、後頭部が後ろへ引っ張られるようなイメージで顎を引きます。 その位置で首の前側の力を抜いて3数えます。
顎の下のマッサージ
両手の親指で顎の下を押さえます。
次に、顎の下から耳の下まで骨に沿うようにして押さえます。
顎下腺の刺激
口・顎の運動
「あー」と言いながら、しっかりと口を開きます。
「うー」と言いながら、口を前に突き出します。
「いー」と言いながら、口を横に広げます。
「うー」と言いながら、口を前に突き出します。
5回目安
5回目安 5回×
3セット
目安
通して2回目安
1.2.3
あー うー いー うー
次に、ゆっくりと後ろを振り向くように首を動かします。反対方向へも同様に行います。
2回目安1.2
(3.4)
カウント5.6(7.8)
カウント
〈 効果:唾液腺を刺激して唾液の分泌を促します 〉
〈 効果:口の周りの筋肉を伸ばしたり動かしたりすることで嚥下の機能改善を促します 〉
Vol.156 月刊デイ 149
頬の運動
両頬を膨らませたり、へこませたりします。 次に右側と左側の頬を交互に膨らませます。
舌の運動
舌を上下に動かします。 次に、左右に動かします。
発声
「ぱぱぱぱ・たたたた・かかかか・らららら」と発声します。
次に、「ぱたぱたぱたぱた・からからからから」と発声します。
音階に合わせて「あー…」と発声します。低い音から高い音へ、高い音から低い音へと発声しましょう。
左右交互に4回
目安
左右交互に4回
目安
上下交互に4回
目安
4回目安
2回目安
2回目安
膨らます へこます 右頬 左頬
〈 効果:舌の筋肉を伸ばしたり動かしたりすることで嚥下の機能改善を促します 〉
〈 効果:舌やのどの筋肉を動かし発声することで嚥下の機能改善を促します 〉
〈 効果:頬の筋肉を伸ばしたり動かしたりすることで嚥下の機能改善を促します 〉
上 下 左 右
ぱぱぱぱ・たたたた・かかかか・らららら
ぱたぱたぱたぱた・からからからから あー…
150 月刊デイ Vol.156
レ ー ニ ン グ の 注 意 点ト● 痛みのない範囲で無理なく安全に行いましょう● 体調不良や痛みが出る場合は体操を中止してください● イスを使用する場合、体格に合った安定感のあるものを使用してください● 運動を制限されている方は体操を控えてください● なるべく姿勢を正した状態で行いましょう● トレーニングの回数・秒数はご利用者の体調に合わせて設定しましょう
●コピーしてご利用者にお渡しし、自主トレーニング用として活用してください。●実施する各トレーニング右上の□にチェックを入れて、ご利用者に合わせたトレーニング内容を提供してください。
ページの活用法
お役立ちツールCD12月号に「口腔・嚥下の自主トレーニング」の動画を収録!※DVDプレイヤー等では再生できません。CDに記載されている動作環境をお確かめください。
空嚥下
のど仏に片手を添えます。唾を“ゴックン”と飲み込みます。飲み込んだとき、のど仏が上に動くのを意識して行いましょう。
口を閉じて咳払いをします。 次に口を開けて咳をします。
空咳
深呼吸(口すぼめ呼吸)をします。姿勢を正して鼻から息を吸いながら両手を上げます。口をすぼめて「ふー」と息を吐きながら、腕を伸ばした状態のまま下ろします。
クールダウン
鼻から吸って
口から“ふー”と吐く
1.2.3.4
5.6.7.8
3回目安
3回目安
3回目安
3回目安
ゴックンエヘン エヘン
〈 効果:実際に嚥下することで嚥下の 機能改善を促します〉
大笑い
「ワッハッハー」と大笑いしましょう。
3回目安
ワッハッハー
〈 効果:のどや頬の筋肉を動かすことで 嚥下の機能改善を促します〉
〈 効果:口すぼめ呼吸で深呼吸して リラックスを図ります〉
〈 効果:咳をすることで誤嚥しないようにして 嚥下の機能改善を促します〉
Vol.156 月刊デイ 151