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東京国際フォーラム 6 . 施設概要 (1). 概要 東京国際フォーラムは、4 つのホール棟と会議室を備えたガラス棟から構成されるコ ンベンションセンターである。客席型や平土間式の大小 7 つのホールをはじめ、展示ス ペース、ギャラリー、33 の会議室などを有している。施設内には、このほか美術館や店 舗、レストランもある。 (2). 諸元 施設の諸元は以下のとおりである。 1 施設諸元 施設名称 東京国際フォーラム 東京都千代田区丸ノ内 3-5-1 施設用途 会館・ホール 施設構成 ガラス棟、ホール棟(A 棟~D 棟) 利用建物数 2 敷地面積 27,375 m 2 延床面積 145,076 m 2 地上 11 階、地下 3 1996 5 月(開館:1997 1 10 日) 施設所有 東京都 株式会社 東京国際フォーラム 利用設備 維持管理 外部委託 写真提供:株式会社 東京国際フォーラム 1 施設外観

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Page 1: 東京国際フォーラム - MLIT東京国際フォーラム 6 1. 施設概要 (1). 概要 東京国際フォーラムは、4 つのホール棟と会議室を備えたガラス棟から構成されるコ

東京国際フォーラム

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1. 施設概要

(1). 概要 東京国際フォーラムは、4 つのホール棟と会議室を備えたガラス棟から構成されるコ

ンベンションセンターである。客席型や平土間式の大小 7 つのホールをはじめ、展示ス

ペース、ギャラリー、33 の会議室などを有している。施設内には、このほか美術館や店

舗、レストランもある。

(2). 諸元 施設の諸元は以下のとおりである。

表 1 施設諸元

施 設 名 称 東京国際フォーラム

所 在 地 東京都千代田区丸ノ内 3-5-1

施 設 用 途 会館・ホール

施 設 構 成 ガラス棟、ホール棟(A 棟~D 棟)

利用建物数 2 棟

敷 地 面 積 27,375 m2

延 床 面 積 145,076 m2

構 造 地上 11 階、地下 3 階

竣 工 1996 年 5 月(開館:1997 年 1 月 10 日)

施 設 所 有 東京都

運 営 株式会社 東京国際フォーラム

利 用 設 備 維 持 管 理

外部委託

写真提供:株式会社 東京国際フォーラム

図 1 施設外観

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個別循環方式

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2. 雨水・再生水利用状況

(1). 雨水・再生水導入の経緯 施設建設に際しては、施設規模が大きく利用水量が多いため、水資源の有効活用の観

点からまず雨水利用が検討され、さらに、施設内で排出される厨房排水等も雨水・再生

水として利用し、より一層の有効利用を図ることとした。 なお、東京国際フォーラムは、水資源の有効利用だけでなく、エネルギー利用などの

側面でも様々な環境配慮が行われている。

(2). 雨水・再生水利用設備の諸元 雨水・再生水利用設備の諸元は下記のとおりである。

表 2 雨水・再生水利用設備諸元

雨水・再生水利用の方式 個別循環方式(雨水併用)

利用開始時期 1996 年 5 月

原水種類 厨房排水、厨房排水以外の雑排水、冷却塔ブロー水、雨水

処理方式 凝集加圧浮上処理(厨房排水のみ)、活性汚泥処理、濾過処

理、消毒処理

処理能力 厨房排水・雑排水:672 m3 /日 冷却塔ブロー水:雨水の処理系統で処理(雨水の項参照)

自己処理

利用水量 厨房排水・雑排水:96,838 m3 /年 冷却塔ブロー水: 5,369 m3 /年

供給元 -

受水槽容量 -

再生水

供給受

利用水量 -

処理方式 濾過処理、消毒処理

処理能力 917 m3 /日

集水面積 26,400 m2

雨水貯留槽容量 4,950 m3

雨水

利用水量 43,586 m3 /年

補給水量(種類) 14,226 m3 /年 (上水道)

雑用系用途利用水量(合計) 175,102 m3 /年

雨水・再生水貯留槽容量 512 m3

利用用途 水洗トイレ洗浄用水、冷凍冷蔵庫用冷却水、植栽灌水、屋

上融雪水

稼働日数 365 日

上水系用途使用水量 70,230 m3 /年 ※冷却塔ブロー水は雨水の処理系統で処理されている。

(2007 年 2 月時点、水量は 2005 年度実績値)

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(3). 雨水・再生水の利用フロー 雨水・再生水の利用に関するフローは下図のとおりである。また、下図中の「写真①」

等は、次ページ以降に示した写真の番号に対応する。

(2007 年 2 月時点、水量は 2005 年度実績値)

図 2 雨水・再生水配水系統図および使用水量 処理系統は、「厨房排水・雑排水処理系」と「雨水・冷却塔ブロー水処理系」の 2 つに

大別できる。 ●厨房排水・雑排水処理系

厨房排水は、凝縮加圧浮上処理(油分除去等)を行った後に雑排水と混合され、活性

汚泥処理、濾過処理を経て、消毒処理の後に雨水・再生水槽へ入る。原水貯留槽の容量

が比較的大きいため、雨水を優先利用している間も、厨房排水や雑排水を貯留しておく

ことができ、利用されずに排水される厨房排水や雑排水はほとんどない。なお、厨房排

水や雑排水を下水道に排出する場合は、凝縮加圧浮上処理、薬液処理を行っている。

広域再生水供給施設 地区再生水供給施設

雨水・再生水槽(14槽)

(容量: 512 m3 )

雨水・再生水利用

(用途:水洗トイレ洗浄用水、冷凍冷蔵庫用冷却水、 植栽灌水、屋上融雪水)

原水 (種類:厨房排水) (種類:雑排水)

(種類:冷却塔ブロー水)

補給水

(種類: 上水道 )

雨水貯留槽(4槽)

(容量:4,950m3 )

余剰排水

自己所有施設

水量: - m3/年

水量: - m3/年

雨水

(集水面積:26,400m2 )

水量:14,226m3/年

水量:175,102m3/年

水量:96,838m3/年 水量:43,586m

3/年

余剰排水

加圧浮上処理

活性汚泥処理

濾過処理 消毒処理 濾過処理

消毒処理

写真①

写真②

写真③~⑧

写真⑩写真⑨

写真⑪

写真⑫~⑯

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●雨水・冷却塔ブロー水処理系

雨水は冷却塔ブロー水と混合後に濾過処理され、消毒処理の後に雨水・再生水槽(下

図中の「再利用水槽」)へ入る。雨水貯留槽のうち 1 槽は、雨水流出抑制施設として位置

づけられていることから、常に空けておく必要があり、このため雨水・再生水原水とし

て、厨房排水や雑排水よりも雨水を優先的に利用している。この運用により、貯留した

雨水はそのほとんどが雨水・再生水として利用されており、利用されずに排水される雨

水はほとんどない。

消 毒

(塔屋) (3 系統)

消 毒

資料提供:株式会社 東京国際フォーラム

図 3 雨水・再生水配水系統図

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資料提供:株式会社 東京国際フォーラム

図 4 雨水・再生水処理系統図

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写真 ① 雨水貯留・排水分岐点

分岐後、右側の配管は雨水貯留槽へ、左側

の配管は公共下水道につながる。配管の上に

見える緑色の制御盤で弁を制御している。

写真 ② 急速濾過機(砂濾過)

雨水、冷却塔ブロー水の主な処理設備の 1つ。自動的に逆洗するシステムを採用してい

る。

写真 ③ 加圧浮上槽

厨房排水中に含まれる油分等の除去を行う

装置。凝集剤を利用し、発生した汚泥は写真

中の矢印方向へ排出される。

写真 ④ 凝集剤留槽槽

加圧浮上処理に関する各種凝集剤がそれぞ

れ個別のタンクで貯留されている。

写真 ⑤ 凝集加圧浮上処理後の処理水槽

この時点で薬剤処理が行われ、公共下水道

に排出できる水質が確保される。

写真 ⑥ 限外濾過機

厨房排水、雑排水の主な処理設備の 1 つ。

原水を加圧し、膜を通過させ濾過する。

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写真 ⑦ 循環水槽

処理後の水質をセンサー等でチェックする。

問題の発生を事前に検知できる。

写真 ⑧ 循環水槽内の水

無色透明、無臭の再生水ができている。

写真 ⑨ 雨水・再生水槽

雨水、冷却塔ブロー水、厨房排水、雑排水

がそれぞれの工程で処理され、消毒処理後こ

こに一括して貯留される。

写真 ⑩ 上水貯留槽からの補給

上水貯留槽の一つには災害時用に上水が蓄

えられ、そこから上水道を階下の雨水・再生

水槽へ補給できるようになっている。

写真 ⑪ 再生水加圧給水ポンプ

雨水・再生水槽から各利用施設に給水する

ための4基の加圧ポンプ(調査時1基整備中)。

写真 ⑫ 水洗トイレ洗浄用水への利用 見た目には上水道と見分けがつかないほど

きれいな水である。

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写真 ⑬ 施設内飲食店製氷機

製氷機の稼動状況を検知し、必要な時にの

み冷却水を供給するよう、制御弁を設置。

写真 ⑭ 施設内飲食店冷蔵庫

この冷蔵庫への冷却水供給冷却水の配管は

天井内にある。

写真 ⑮ 植栽灌水

敷地内の植栽の根元にそれぞれパイプが張

り巡らされており、パイプに空けられた穴か

らじわじわと処理水が滴下されるようになっ

ている。

写真 ⑯ ガラス棟天井

天井のガラスが雪の重みで破損しないよう、

降雪時には、屋上に再生水を融雪水として流

す。融雪水はその後、中央の柱(2 本)を通

って回収され、雨水処理設備へ送られ、再処

理される。

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3. 雨水・再生水利用施設の特徴や運用上の工夫など ●雨水抑制槽からも雨水が利用できるよう工夫

4 槽ある雨水貯留槽の 1 つ「雨水抑制槽」は、流出抑制機能を担保する目的を持ち、

非常に容量が大きく、施設の雨水貯留容量全体の大半を占める。通常、雨水抑制槽は基

本的に空の状態になるように運用する必要がある。従来は、この雨水抑制槽からの雨水

利用は行われておらず、専ら一時的な雨水の貯留と下水道への排水による運用が行われ

ていたが、この雨水抑制槽に貯留された雨水を優先的に雨水・再生水として利用できる

よう施設を改造した。これにより、利用されずに公共下水道へ排水される雨水の量を大

幅に減らすことに成功した。 ●災害時用に蓄えている上水も雨水・再生水の補給水として無駄なく活用

近年、節水対策が功を奏し、雑用系用途使用水量が節減されたことで上水補給量も節

減することができた。これにより、補給水を含む施設全体の上水使用量が大幅に節減で

きた。このため、2 槽ある上水貯留槽の 1 つを災害時用の水槽に転用し、ここに常に一

定量の上水を貯留することにした。災害時用の水も、衛生上定期的な入れ替えが必要で

あるが、この入れ替えにより排出される上水を、雨水・再生水の補給水として利用でき

るよう施設を改造した。これにより、災害時用の水が確保されるとともに、その水を無

駄にすることなく雑用系用途に活用できるようになった。

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年3月

使用量(㎥)

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降水量(mm)

水洗トイレその他

冷却水

月別降水量

月別平均降雨量:128.8mm

注:株式会社東京国際フォーラムの資料を基に作成。水洗トイレその他には、融

雪用水や植栽灌水用水を含む。降水量はアメダスデータ(地点:東京)による。 図 5 雨水・再生水利用用途別使用水量(2005 年度実績値)

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使用量(㎥)

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降水量(mm)

冷却塔ブロー処理水

雨水処理水量

排水処理水量

上水補給量

月別降水量

月別平均降雨量:128.8mm

注:株式会社東京国際フォーラムの資料を基に作成。降水量

はアメダスデータ(地点:東京)による。 図 6 雨水・再生水利用水量に対する原水ごとの内訳水量(2005 年度実績)