原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル...

17
原子間ポテンシャルについて

Upload: others

Post on 24-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

原子間ポテンシャルについて

Page 2: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

原子間ポテンシャル

ひとたびポテンシャルエネルギーが決定されれば,原子に働く力が計算可能

𝑭𝑖 = −𝜕𝐸𝑡𝑜𝑡𝜕𝒓𝑖

原子系のポテンシャルエネルギーを決定するポテンシャル関数には,材料によって様々なものが提案されている.

𝐸𝑡𝑜𝑡 =

𝑖

𝐸𝑖 通常,各原子のエネルギー𝐸𝑖の総和で書かれる.

𝐸𝑖 = 𝑓 𝒓𝑗 ; 𝒓𝑗 : 𝒓𝑗 − 𝒓𝑖 < 𝑟𝑐 𝒓𝑖から一定距離内に位置する原子群の位置ベクトルの関数

Page 3: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

ポテンシャルの分類

関数の形式による分類• 2体間ポテンシャル (pair potential)

pair-term (2原子間の距離の関数) のみを含む.

𝐸𝑖 =

𝑗

𝜙(𝑟𝑖𝑗)

• 3体間ポテンシャル (three-body potential)

原子間距離だけでなく結合角も考慮.3原子ijkの組を考え,ij, ik間の角度を関数に含める.

• 多体ポテンシャル (many-body potential)

原子iの周囲の原子群より電子密度等の値を求め,それを元にエネルギーが決まる.

ポテンシャルの物理的描像による分類(名称)• Bond-order potential 原子間の結合電子数を規定するもの• Dipole potential原子周りの電気分極を双極子で模擬• Charge-transfer potential電荷移動を考慮

Page 4: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

電子の分極を扱うモデル

Core

Pb Atom

+

Shell

-

Charge

+

Dipole

P. Tangney and S. Scandolo. J. Chem Phys, 117, 8898 (2002)

B. J. Dick and A.W.Overhauser, Phys. Rev, 112, 90 (1958)

Shell model

Dipole model

Page 5: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

ポテンシャルの分類

• 2体間ポテンシャル(LJ, Morse)

• 2体間汎関数(EAM, EMT, FS, glue)

• ボンドオーダー型(REBO, EDIP, Tersoff, BOP)

• ボンド力場(AMBER, CHARMM, OPLS, TraPPE)

• クラスター汎関数(ADP, MEAM)

• クラスターポテンシャル:3体間(SW)、4体間(MGPT)

• 長距離静電型(Born-Mayer, Buckingham, Coulomb)

• 機械学習型(NN, GAP, SNAP)

• 反応力場(COMB, eFF, ReaxFF)

Page 6: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

2体間ポテンシャル

最も簡単なポテンシャルの例(2体間ポテンシャル) 𝐸𝑖 = σ𝑗𝜙(𝑟𝑖𝑗)

𝜙 𝑟 = 𝜀 exp −2𝛼 𝑟 − 𝑟0 − 2 exp[−𝛼 𝑟 − 𝑟0 ]

𝜙 𝑟 = 𝜀𝜎

𝑟

12

− 2𝜎

𝑟

6

𝜙 𝑟 = 𝐴 exp −𝐵𝑟 −𝐶

𝑟6

モースポテンシャル(金属系など)

Lennard-Jones ポテンシャル(van der Waals 力)

Lennard-Jones ポテンシャルをさらに簡単化したBackingham型

Page 7: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

2体間ポテンシャル

2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のため、複数の物性にフィッティングすることが難しい

気体分子などではよく用いられるようであるが、固体のポテンシャルはもっと複雑となる(金属結合、共有結合など、特に近距離相互作用は複雑)

また、Cauchyの関係(𝐶12 = 𝐶44)を必然的に満たしてしまうという致命的な欠陥があることも知られている

Page 8: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

3体間ポテンシャル

3体ポテンシャルでは原子間距離のみでなく,3原子の張る角度(結合角)

をも含んだ関数として表現される.共有結合などでは角度依存が顕著なため、必須となる

• S-W(Stillinger-Weber)ポテンシャル溶融のエントロピーや液体の構造因子などをよく再現する

• Tersoffポテンシャル主としてシリコン系のシミュレーションに非常によく用いられる発見的な Bond order ポテンシャル

• Brennerポテンシャル(REBO: Reactive Empirical Bond Order)Tersoff-BOPの改良型カーボンナノチューブのシミュレーションにもよく用いられる

• B-H (Biswas-Hanmann) ポテンシャルアモルファス構造などをよく再現する

Page 9: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

多体ポテンシャル

2体間,3体間ポテンシャル等では電子密度分布がバルクとは著しく異なる

表面や粒界,あるいは異相界面,結晶欠陥部での原子に働く力を求めるのには不十分であり,多体効果を含めることが提案された.

• EAM (embedded atom method) ポテンシャル多体ポテンシャルとして最も広く知られている.金属に適するモデル.金属では電子雲中に原子核(イオン)が埋め込まれていると考え,その原子核(イオン)を挿入する際のエネルギーを考慮系の全エネルギー 𝐸tot は次式のように電子密度非依存項と依存項の和で表される.

𝐸𝑡𝑜𝑡 =1

2

𝑖≠𝑗

𝜙𝑖𝑗(𝑟𝑖𝑗) +

𝑖

𝐹𝑖𝐸𝐴𝑀( ҧ𝜌𝑖)

𝐹𝑖𝐸𝐴𝑀( ҧ𝜌𝑖)は電子密度 ҧ𝜌𝑖を持つ位置にある原子の埋め込みエネルギー,

𝜙𝑖𝑗(𝑟𝑖𝑗)は原子間の中心斥力を表す.電子密度は

ഥ𝜌𝑖 =

𝑗≠𝑖

𝜌(𝑟𝑖𝑗)

で与えられる.

Page 10: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

Stillinger-Weber potential

3体項が比較的簡単微分が簡単な形となりコーディングも容易

Page 11: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

Tersoff potential

3体項が複雑微分が難しく、コーディングもやや困難

Page 12: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

Siせん断:ポテンシャル比較

J Godet, L Pizzagalli, S Brochard and P Beauchamp

Journal of Physics: Condensed Matter, 15, 6943 (2003)

Page 13: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

ADPポテンシャルSiCへのフィット

Angular-Dependent Potential (ADP)

i

i

i

i

i

i

i

ii

iji

ijij FrΦE2

,,

2

,

2

,

tot6

1

2

1

2

1

2

1

Embedded Atom Method (EAM)

ij

ijijiji rru

Multipole Expansion

(Angular-Dependent Terms)

ij

ijijijiji rrrw

ii

Dipole Vector Quadrupole Tensor:, ji Atoms in system

:, Cartesian component

Functions to Optimize

ijij rw ijij rΦ ijij ru iji r iiF

ij

ijji r :

*) Y. Mishin et al., Acta Mater.,

53 15 (2005)

Page 14: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

3C-SiC

st

e

ADPポテンシャルSiCへのフィット

Critical tensile stress

vs. transverse stressStress-strain curves

Page 15: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

カットオフについて

Truncate & Shift 微分が滑らかに接続されない

カットオフ周辺でattenuation functionをかける方法

Page 16: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

カットオフについて

一階微分(力)は滑らかに接続されるが近距離まで影響が出る二階微分以上は滑らかでない

高階まで微分は滑らかだが新たな調整パラメータが入る

Page 17: 原子間ポテンシャルについて...2体間ポテンシャル 2体間ポテンシャルは関数が極めて単純(パラメータ数は3つのみ)のた め、複数の物性にフィッティングすることが難しい

ポテンシャルの微分とコーディング

ポテンシャル関数の微分(各原子の位置ベクトルに関して)の手計算は、時に極めて煩雑となり、MDコーディングの際の大きなハードルのひとつ。例:Tersoffポテンシャル

http://molmod.github.io/yaff/dg_backprop.html

Back-propagationアルゴリズムを応用した効率的なコーディング法などが提案されている(MDコーディングの経験者向き情報)