顧客エンゲージメントにとっての プロフェッショナ …...sas、shoppers...

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Forrester Research, Inc., 60 Acorn Park Drive, Cambridge, MA 02140 USA Tel: +1 617.613.6000 | Fax: +1 617.613.5000 | www.forrester.com 顧客エンゲージメントにとっての ビッグデータの重要性 Sanchit Gogia 著、 2012 年 6 月 1 日 ベンダー戦略 プロフェッショナル向け 重要ポイント ビッグデータの存在と顧客エンゲージメントへの影響 企業は、サイロ型のトランザクション指向システムからより総合的な社会意識の高いシステ ムへと移行すると、顧客データに関する課題に直面することになります。「ビッグデータ」は、 データの量、速度、多様性、変動性が大きいことを特徴とします。顧客エンゲージメントの 向上を図るには、企業はビッグデータを効果的に管理するためのソリューションに投資しな ければなりません。 ビジネスリーダーがビッグデータ戦略を主導すべし CIO が支配権を有する一般的な IT プロジェクトとは異なり、ビッグデータプロジェクトでは、 ビジネスリーダーが戦略を主導する必要があります。IT リーダーはプロジェクトを積極的に 支援し、技術の選択と展開を管理しなければなりませんが、ビジネスリーダーは究極的には 基準と KPI を所有します。ビジネスリーダーがほとんどあるいは全く関与しないビッグデー タ戦略は失敗に終わるでしょう。 CIO はビッグデータを総体的に考えるべし 多くの企業は、ビッグデータを超並列処理と同一視し、ビジネスプロセスを再定義する必要 などの他の側面を見逃しています。企業はビッグデータを使用して意思決定を改善するので、 CIO はビッグデータ技術の展開に総体的に取り組む必要があります。やり手の CIO は、ビジ ネスリーダーと連携してデータを探索し、特定のユースケースに的を絞るでしょう。

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Page 1: 顧客エンゲージメントにとっての プロフェッショナ …...SAS、Shoppers Stop、Wipro IT Businessなど、25社を超 えるクライアント、ユーザー企業、ベンダー企業にイン

Forrester Research, Inc., 60 Acorn Park Drive, Cambridge, MA 02140 USA

Tel: +1 617.613.6000 | Fax: +1 617.613.5000 | www.forrester.com

顧客エンゲージメントにとっての ビッグデータの重要性Sanchit Gogia 著、 2012 年 6 月 1 日

ベンダー戦略

プロフェッショナル向け

重要ポイント

ビッグデータの存在と顧客エンゲージメントへの影響企業は、サイロ型のトランザクション指向システムからより総合的な社会意識の高いシステムへと移行すると、顧客データに関する課題に直面することになります。「ビッグデータ」は、 データの量、速度、多様性、変動性が大きいことを特徴とします。顧客エンゲージメントの向上を図るには、企業はビッグデータを効果的に管理するためのソリューションに投資しなければなりません。

ビジネスリーダーがビッグデータ戦略を主導すべしCIO が支配権を有する一般的な IT プロジェクトとは異なり、ビッグデータプロジェクトでは、ビジネスリーダーが戦略を主導する必要があります。IT リーダーはプロジェクトを積極的に支援し、技術の選択と展開を管理しなければなりませんが、ビジネスリーダーは究極的には基準と KPI を所有します。ビジネスリーダーがほとんどあるいは全く関与しないビッグデータ戦略は失敗に終わるでしょう。

CIO はビッグデータを総体的に考えるべし多くの企業は、ビッグデータを超並列処理と同一視し、ビジネスプロセスを再定義する必要などの他の側面を見逃しています。企業はビッグデータを使用して意思決定を改善するので、CIO はビッグデータ技術の展開に総体的に取り組む必要があります。やり手の CIO は、ビジネスリーダーと連携してデータを探索し、特定のユースケースに的を絞るでしょう。

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© 2012, Forrester Research, Inc. All rights reserved. Unauthorized reproduction is strictly prohibited. Information is based on best available resources. Opinions reflect judgment at the time and are subject to change. Forrester®, Technographics®, Forrester Wave, RoleView, TechRadar, and Total Economic Impact are trademarks of Forrester Research, Inc. All other trademarks are the property of their respective companies. To purchase reprints of this document, please email [email protected]. For additional information, go to www.forrester.com.

ベンダー戦略プロフェッショナル向け

このレポートの主旨

消費者が様々な接点を使用して情報を取得し、意見をやり取りし、製品やサービスを購入する現在、企業は、顧客とのコミュニケーションの質を最適化するために、より効果的にシステムを統合しソーシャルテクノロジーを活用しようと努めるとともに、オンラインコミュニティやアプリケーションマーケットプレイス、モバイルデバイスなどの従来なかった接点に対応するために、アプリケーションやプラットフォームに投資しています。そして、こうした投資が、データ量、更新頻度、多様性、変動性が増す、いわゆる「ビッグデータ」をどう管理するかという新しい課題を生み出しています。このレポートは、企業にとってのビッグデータの重要性と問題点、ビッグデータ戦略の展開において企業の意思決定者が果たす重要な役割、ビッグデータの活用によって顧客エンゲージメントの向上を図る企業のためのベストプラクティスに焦点を当てています。ベンダー戦略担当の方は、ビッグデータの需要を押し上げるものは何か、どのような導入パターンが考えられるかをより深く理解するために、このレポートをお役立てください。

目次

変わりゆく顧客エンゲージメントモデルがビッグデータの成長を推進

入手可能なデータの急増が新たな悩みを生む

ビッグデータを管理するには既存の情報戦略の変更が必要

推奨事項

探索プロセスを通じてビッグデータのユースケースを定義

ビッグデータとは

CIOのオフィスにとってのビッグデータ

ベンダーにとってのビッグデータ

補足資料

注記とリソース

Forrester は、Aircel、Capgemini、Dell、EMC、Essar Group、IBM、IMS Health、Infosys、Mahindra Satyam、MapR Technologies、Microsoft、NetApp、PwC、SAP、SAS、Shoppers Stop、Wipro IT Business など、25 社を超えるクライアント、ユーザー企業、ベンダー企業にインタビューしました。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性ビッグデータ戦略の価値を引き出すにはビジネスリーダーの主導が必須 Sanchit Gogia 著

共著:Michael Barnes、Boris Evelson、Brian Hopkins、Holger Kisker, Ph.D.、Noel Yuhanna、Dane Anderson、Rupika Malhotra

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For Vendor Strategy ProFeSSionalS

顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 2

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

変わりゆく顧客エンゲージメントモデルがビッグデータの成長を推進

拡大する顧客基盤に対応し、あらゆる顧客接点にわたる顧客体験の管理を強化するために、企業は、ERP や顧客関係管理(CRM)、販売管理システムといったサイロ型のトランザクション指向システムから離れ、より総合的な社会意識の高いシステムへと向かっています。この移行は二重の影響をもたらし、企業は、急増するデータの種類と総容量を管理し、さらに大量の複雑なデータをリアルタイムで分析する必要があります。ERP や CRM のような従来のトランザクション型ビジネスアプリケーションからの構造化データの量が増え続ける一方で、CIO(最高情報責任者)は、ソーシャルプラットフォームをはじめとする様々なソースからの非構造化データとマシン同士(M2M)のコミュニケーションからの半構造化データの到来に直面しています。これは、基本的な構造化されたトランザクションにおいても、ビッグデータ手法を補足する従来のビジネスインテリジェンス(BI)手法が必要であることを示しています。Forrester はビッグデータを次のように定義します:

大規模なデータの処理を可能にするテクニックとテクノロジー。

ビッグデータとは、技術と適切な分析スキルを備えた人材を用いて、企業が対応可能な方法で大量のデータを理解できるようにすることです。1 このデータは、いくつかのソースから取得されるので、CIO は情報管理戦略を再考し、データを収集、保存、分析、分散するための新たな可能性やアプローチに投資することが必要となります。

■オンラインプラットフォームおよびオンラインコミュニティは、大量の非構造化データを生み出す。企業は、ソーシャルメディアの拡大するユーザー基盤を活用し、Facebook、LinkedIn、Twitter などのツールを使用して顧客と直接やり取りしています。オンラインコミュニティの例として、モバイルアプリストアやサードパーティ企業の Web サイトで製品をレビューする消費者も挙げられます。AT&T、Carphone Warehouse、Domino’s、Procter & Gamble、Tesco、Unilever などの企業は、こうした様々なプラットフォームを定期的に利用して顧客と関わっています。2 ソーシャルメディアからのデータを元に、企業は消費者の意見を分析し、市場に合わせてアウトリーチプログラムをカスタマイズします。問題は、このデータが十分に構造化されておらず、最悪の場合は全く構造化されていないという点です。

■モバイルや他のデバイスからのデータは、企業の消費者に対する理解を促す。企業は、消費者に情報を提供するためだけではなく、モバイルバンキングやモバイルウォレットなどのサービスを通じて消費者とやり取りする目的でモバイルデバイスを使用することが増えています。利用が広がり続けている他のデバイスには、空港でのチェックインや駐車料金の支払いといった基本的なプロセスを自動化するセルフサービスキオスクやスマートカードなどがあります。例えば、東南アジアのある電気通信プロバイダーは、顧客の携帯電話から定期的に位置情報を収集し、顧客の行動をより的確に把握することで、販売キャンペーンの効果を高めています。

■インテリジェントなシステムは、業務改善に貢献する半構造化データを提供する。通常 B2B 環境で使用される RFID やセンサーネットワークなどのソースは、企業がより的確に経営上の意思決定を行うために役立てるべき半構造化データを提供します。小売業者は、このデータを使用して、自社の製品に対するニーズを見極め、在庫や供給プロセスの管理を強化できます。また、新製品開発にかかわる意思決定を改善し、顧客の体験を向上させることもできます。代表例を挙げると、Cisco Systems では、構築システムの一元的なモニタリングおよびコントロールに IBM のビッグデータ製品を使用し、エネルギー消費の最適化と構築システムの予防・事後保全の自動化を行っています。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 3

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

ビッグデータの活用により競合を大きくリード

データ分析を利用して顧客エンゲージメントを最適化するというのは新しい考え方ではありません。ただ、データソースが変わるにつれ、データ分析のモデルや基準も変化しています。売上のパーセンタイル値などの従来からあるシンプルなセグメンテーションもいまだに大変よく用いられますが、企業は、顧客エンゲージメントをより正確に理解し測定すべく、リアルタイムのデータストリームに基づくチャーン尤度などの高度な予測モデルを採り入れ始めています。顧客をより理解し、新たな収益源を開拓し、競争に勝つためにビッグデータソースを使用している企業として以下が挙げられます。

■高度な基準を使用し顧客理解を深める通信会社。顧客情報を効率的に管理・分析するために、インドのある通信会社では、全顧客データベースを収録する単一のソースを作成し、単一の企業データウェアハウスプラットフォームに情報を集約しつつあります。この会社は、チャーン尤度などの予測モデルを用いて顧客基盤を積み上げ、個々の顧客に応じたサービスを提供しており、さらに顧客のソーシャルプロファイルと自社の CRM プロファイルの統合を計画中です。Forrester は、従来の 360 度ビューに代わり720 度の顧客ビューを採用することで、企業はソーシャルテクノロジーの価値を最大限に高めることができると考えます。企業は、顧客のプロファイルを管理・分析し、顧客と友人、家族、仲間、取引先のネットワークとの関わりをもっと理解する必要があります。

■データ分析により顧客あたりの利益を増やすリテール銀行。銀行業界におけるビッグデータの革新的利用に取り組む EMC は、Greenplum 製品を使用して、米国拠点のリテール売銀行におけるマーケットバスケット分析と顧客の生涯価値算出を支援し、ユーザーを基準とする提案を実現しています。3 この銀行では、非構造化アクティビティログによってデータを拡充し、その結果を用いて危険な状態にある顧客を特定しています。

■社会的関係を理解することで顧客を維持するクレジットカード会社。ある顧客が製品やサービスから離れると、その顧客と社会的に関係のある他の顧客も離れてしまうことがあります。このことを活かすために、米国を拠点とする金融サービス会社では、POS トランザクションを利用し、カードの利用パターンに基づいてそうした社会的な関係を特定しています。その結果、より的を絞って顧客をつなぎ留めることができ、収益と利益を増加させています。4

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 4

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

B2B業界を含むすべての人に影響を及ぼすビッグデータ

ビッグデータは、小売や通信などの消費者向け業界のみに関連する話題として取り上げられがちです。しかし、製造や行政などの消費者と直接対応しない業界の組織の上級意思決定者と話をすると、ビッグデータが経営上の意思決定に及ぼす影響は大きくなりつつあることがわかります。そうした業界の企業では、オンラインコミュニティやコンシューマーデバイスの重要性が比較的低下していますが、M2M コミュニケーションから生まれる半構造化データから興味深いインサイトを得ることができます。以下がその例です。

■臨床医が患者の健康状態をリアルタイムに診ることで合併症に対処。IBM の支援を受け、オンタリオ工科大学(UOIT)では、合併症の前兆を敏感に察知し、患者の刻一刻の状態を見抜くことが可能になりました。5 UOIT は、医療モニターからデータを取得し、それをリアルタイムに分析して、患者が感染などによる症状を示す前に、潜在的な健康問題を病院スタッフに警告しています。

■リアルタイムの交通情報によって交通管理を改善。スウェーデンの工業大学である KTH の研究者は、多数の車両の GPS 位置データや高速道路の速度測定装置、混雑課金システム、天気予報など、様々なソースからリアルタイムの交通データを収集しています。そしてそのデータに基づいて最新の状況をインテリジェントに判断し、地点間の移動にかかる時間を推測したり、ルートや別の移動方法を提案したりして、大都市圏の交通改善につなげています。

■環境データによりビジネス、研究、市民の安全を促進。環境データをより的確に把握するために、IBMが支援する Marine Institute Ireland では、ゴールウェー湾全域に新しいセンサープラットフォームを導入し、環境状態、汚染度、近海の海洋生物に関するデータをリアルタイムで収集・配布しています。6 ユーザーは、様々なトレンド分析やモデリングをサポートするカスタマイズ可能なポータルを通じて、そのデータにアクセスできます。そのポータルでは、洪水の可能性や汚染の急増といった特定の状況になると警報が通知されるよう、ユーザーが設定することもできます。このソリューションにより、洪水予報および自動警報システムの精度が増し、その結果市民の安全性が向上しています。

■予測分析により山火事から人命と財産を保護。メリーランド大学ボルティモアカウンティー校 (UMBC)の研究者は、気象状況、地形、および歴史的統計を分析し、火と煙がどのように広がるかをリアルタイムに予測して、死亡者や物的損害の発生防止に役立てています。高度な予測分析では、地表、空中、衛星の各センサーからデータを取り込み、山火事のリアルタイムの動きと影響を正確に示します。このソリューションでは、模擬実験の結果に基づき、山火事の発生から 3 日以内に、予報精度を 16%改善することができます。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 5

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入手可能なデータの急増が新たな悩みを生む

企業が新しいアプリケーションやアプローチを採用して従来と異なる接点に対応すると、情報の急増に直面します。このデータ量の増加は、情報管理およびアーキテクチャに関する新たな課題をもたらします。リアルタイムのデータストリームの管理、利用、分析という技術的な課題ですが、これは、IT チームが新しい市場力学に十分すばやく対応して顧客体験を改善することがあまりできていないことを意味します。

上級意思決定者への聞き取り、およびビッグデータの知識または経験を持つ Forrester のクライアント 60 社に最近実施した世界的調査の結果を見ると、従来のデータにおいてもビッグデータにおいても、情報の急増というのは、単なる量の話ではないということがわかります。7 回答者は、ビッグデータソリューションを検討する際の主な理由として量を挙げましたが、変化の速度やデータ形式の多様性、構造の変動性も大きな関心事であるとも答えました。452 名の IT およびビジネスプロフェッショナルを対象に実施した地域的調査

「Forrester’s Forrsights Strategy Spotlight:日本を除くアジア太平洋地域におけるビジネスインテリジェンスと情報管理、2011 年第 4 四半期」では、企業がデータの種類、複雑さ、量に関する新しい課題に取り組んでいることが明らかになりました(図 1 参照)。4 分の 3 以上(77%)の回答者は、モバイル性と消費化が情報に対する需要を高めるであろうとし、半分以上の回答者は、主な課題として非構造化データの管理と利用(57%)およびデータ量の増大(51%)を挙げました。

従って企業は、ビッグデータを考える際に、volume(量)、velocity(速度)、variety(多様性)、variability(変動性)、value(価値)という 5 つの V を意識する必要があります。8 Forrester の調査データと上級 IT 意思決定者との会話は、以下のことも示しています。

■CIOは様々なアプローチを用いてビッグデータに取り組んでいる。ビッグデータを取り巻く複雑さから、アジア太平洋地域の CIO は、様々なアプローチを組み合わせて戦略を打ち出そうとしています(図 2参照)。20%近くがビッグデータを扱う必要は全くないとし、彼らがビッグデータの問題を解決するアプローチとして最も多く(37%)選んだのは、Hadoop などの最適化されたソフトウェアソリューションの使用、それに僅差で続いたのが、既存のリレーショナルデータベース技術の拡大、およびクラウドインフラストラクチャやサービスプロバイダーの使用でした。このように方法にばらつきがあるのは、CIO にビッグデータを管理する最善の方法についての確信がなく、はじめに既存のアセットを利用したいという願望があることの表れです。Forrester は、既存のアセットの再利用は正しい手段だと考えますが、企業がビッグデータを管理するための総体的なアプローチを採用できないなら、ビッグデータが企業の責務に貢献することは決してありません。

■ビッグデータのベストプラクティスが確立されていない。コンセプトがまだはっきりしていないことから、企業は、業務プロセス、方法、管理、およびセキュリティに関する問題に取り組み続けています。ビッグデータの推進は単独で行うものではないので、企業は、より広範な情報管理アーキテクチャにおいてサイロ化を避ける方法を模索中です。例えば、ビッグデータを利用しようとしているある保険会社では、企業データウェアハウスの管理や既存のアセットの再利用によるリアルタイム分析の方法などの複数の問題に取り組んでいます。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 6

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

■ビッグデータの推進にビジネスリーダーを巻き込むことが当面の課題。上級意思決定者は、企業がユースケースを適切に定義することも基準や KPI を正式に定めることもせずにビッグデータ戦略を打ち出していることを認めています。企業は、ビッグデータに基づく高度な分析モデルによって得られたインサイトを従業員が使用できるようにすることの難しさに気付きつつあります。例えば、ある小売業者では、ビッグデータの価値をより理解するために概念実証(POC)を行っています。CIO がそのプロジェクトを指揮していますが、ビジネスリーダーから積極的なサポートを得、ビッグデータに基づいて測定できる戦略事業単位(SBU)固有の基準を定めることに苦労しています。その小売業者は、そうしたインサイトを経営上の問題に適用する方法をよく理解していないことから、広範な顧客基盤への分析ツールのアクセス拡大という問題にも直面しています。

図 1 ビッグデータが企業にもたらす情報管理の新たな課題

出典: Forrester Research, Inc.72241

「あなたは下記の意見に同意しますか?」(1の「全く同意しない」から5の「全く同意する」までの 5段階のうち、

4または 5と回答したパーセンテージ)

調査対象者:オーストラリア、中国、香港、インド、マレーシア、シンガポールを拠点とする従業員20名以上の企業に勤務する452 名の IT および経営の意思決定者

出典:Forrsights Strategy Spotlight:日本を除くアジア太平洋地域におけるビジネスインテリジェンスと情報管理、2011 年第 4四半期

スマートフォンやタブレットなどのデバイスが普及するにつれ、従業員の情報に対する需要が増えつつある

77%

非構造化データの管理と利用は、私の組織の課題である 57%

増大するデータの管理と利用は、私の組織の課題である 51%

私の組織では、クラウドベースのアプリケーションが構造化および非構造化データの量の増加を促進している

40%

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 7

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

図 2 ビッグデータを扱うために企業が用いる様々なアプローチ

ビッグデータを管理するには既存の情報戦略の変更が必要

企業は、事業価値を高めるために BI のツール、技術、手法をうまく採り入れましたが、主に構造化データに関するニーズに取り組んできました。そしてビッグデータの台頭とともに、現在では従来の情報管理アーキテクチャを使用して新しいタイプのデータを利用、統合、活用しようと努力しています。Forrester では、顧客エンゲージメント改善を実現・サポートするための重要な条件として、IT 意思決定者が BI の焦点を拡大して非構造化および半構造化データに完全対応しなければならないと考えています。9

■構造化データは今も意思決定に不可欠です。多くの CIO が、顧客へのサービスを向上させるために分析を利用したいと考えています。例を挙げると、Asian Paints では、Web ベースの分析を利用し、IP アドレスによって追跡されたロケーションに基づく的確な顧客ターゲティングを実現しています。同社は、分析に基づいて Web サイト体験の様々な段階における顧客の行動を正確に把握し、顧客がサイトを離脱しがちな段階を監視しています。

出典: Forrester Research, Inc.72241

「ビッグデータ管理に好ましいと思うアプローチがあれば選択してください。」

調査対象者:オーストラリア、中国、香港、インド、マレーシア、シンガポールを拠点とする従業員20名以上の企業に勤務する452 名の IT および経営の意思決定者

(複数回答可)

出典:Forrsights Strategy Spotlight:日本を除くアジア太平洋地域におけるビジネスインテリジェンスと情報管理、2011 年第 4四半期注意:「わからない」という回答は除外しています。

Hadoop などの最適化ソフトウェアのみのソリューション

既存のリレーショナルな技術を拡大

クラウドインフラストラクチャまたはクラウドサービスプロバイダー

インメモリデータベース

ビジネスインテリジェンスアプライアンス

カラム型 RDBMS

ビッグデータを持っていない

ビッグデータに関心がない

まだ決めていない

37%

33%

32%

29%

28%

23%

19%

10%

6%

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 8

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

■非構造化データは顧客エンゲージメントプロセスを推進します。顧客と直接対応する組織、特に病院やサービス業のようにすばやい対応が求められる組織において、非構造化データに対応する必要性を早期に認識することは非常に重要でした。そこで、KLM、Ogilvy & Mather、Weber Shandwick、Edelman、AutoNation、Kodak といった世界中の企業が、Radian6(salesforce.com が買収)のようなクラウドベースのソーシャル分析ツールを導入しました。10 Dell も同様で、専用の Social Media Listening Command Center を開設し、Radian6 を使用して Twitter と Facebook でのやり取りの追跡、監視、応答を行っています。11

ビッグデータの種類が技術選択の鍵

ビッグデータ技術は急速に成熟し、ビッグデータ処理技術がエンタープライズ対応ではなかったり異常に高価だったほんの 2 ~ 3 年前から状況は一変しました。Netezza、SAP HANA、Vertica、その他多くの企業が、大量のデータを瞬時に保存・処理できるようにしつつあります。オープンソースオプションも徐々にエンタープライズ対応になり、今ではビッグデータの話題に Hadoop、HBase、Avro、Pig、ZooKeeper、Apache Commons、Lucene といった名前がよく登場します。

Forrester は、企業が様々な種類のビッグデータを処理するには、様々なテクノロジーを導入する必要があると考えており、これに基づき、1)仮想コモディティハードウェアとワークロード管理に基づくインフラストラクチャサービス、2)水平方向にスケーラブルな分散データ管理サービスおよび分散処理、3)クラウドでの運用に最適化された分析(図 3 を参照)の 3 つを重点とする参照アーキテクチャを考案しました。12 ただし、このフレームワークは、あらゆるビッグデータソリューションがこれらの機能すべてを持っていることを意味するわけではなく、例えば、ストリーミングソリューションおよびバッチ分析ソリューションは、様々な機能や様々なツールを用いて特定のアーキテクチャを実行します。

ビッグデータの典型的なアーキテクチャは、1)複雑なイベント処理に基づくリアルタイムのシナリオ、 2)通常 Hadoop に基づく並列処理/高速ロード、3)インメモリアーキテクチャまたはアプライアンスアーキテクチャに基づく高速クエリアーキテクチャの 3 つに分類されます。企業は、ビジネスニーズに応じて、最適なテクノロジーアーキテクチャを決め、ツールを選択する必要があります。多くの場合、複数のアーキテクチャを組み合わせることが可能です。

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図 3 ビッグデータ処理のアーキテクチャ構成要素

ビッグデータ戦略には総体的なアプローチが必要

企業が既存の投資を補完しビッグデータをサポートする技術を検討するにあたり、既存の情報管理アーキテクチャを判断基準とし、再利用と統合が可能な構成要素を特定することが不可欠です。企業は、重複を避け一貫性を確保するために、単一のシステムで顧客データベースを作成するという基本ルールを守らなければなりません。ビッグデータ戦略には、総体的なアプローチを採用し、ビジネスリーダーと IT リーダーが一緒にすべての要素を取りまとめることが求められます。

■ステップ 1:データ収集プロセスの一元化と見直し。Forrester は、ビッグデータの推進を IT プロジェクトとしてではなくビジネスプロジェクトとして捉えるべきだと考えます。13 従来、IT 対応のビジネスプロセスは、主として CRM や ERP をはじめとするプロセスベースのアプリケーションの構造化データストリームに関連付けて定義されてきました。しかし、外部ソースを加えてデータ取得プロセス(ソースおよびタイプ)を見直すには、これを変えることが不可欠です。企業はビッグデータ戦略をビジネスプロセス層で開始し、経営陣に働きかけて、業務とワークフロー管理を最終的に定義するビジネスイベントに対する理解を深める必要があるでしょう。この段階でビジネスリーダーを巻き込めば、IT リーダーは、SBU 固有の重要基準や KPI の概要をまとめ、ビッグデータを推進して経過観察することができます。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 9

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

出典: Forrester Research, Inc.72241

統合

仮想インフラストラクチャ インテリジェントワークロード管理

インフラストラクチャサービス

ストリーム処理

データ管理

非リレーショナルデータベース

分散ファイルシステムデータストリーム

コモディティ、購入またはレンタルが可能

仮想化の活用

エラスティック、オンデマンド

完全疎結合、分散型、超並列

仮想/分散型コンピューティング

に最適化並列処理による高速データキャプチャ

イベント管理 トランザクションクエリと分析

処理

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■ステップ 2:顧客データベースの管理を強化。顧客データ管理を強化すると、データベースの重複を減らし、個人のデータの精度を上げることができます。14 顧客データ管理のプロセスは、これまで年齢、性別、氏名といった個別の属性に最適化されてきましたが、ビッグデータはこれを根本的に変えつつあります。企業は、顧客データベースにソーシャルネットワーク情報や携帯電話データなどの行動ベースのデータを追加し、これを従来の属性と組み合わせることができるようにする必要があります。また、新しいデータの追加に要する費用によって従来のデータ統合法が高くつき、統合費用が増加する場合があることを見込まなくてはなりません。15

■ステップ 3:データウェアハウス環境の最適化。ビッグデータの分析モデルを実行するには、企業は、超並列処理(MPP)をサポートする技術に投資する必要があります。16 Forrester は、上級意思決定者にとって重要なのは、既存のアーキテクチャを完全に置き換えることなく現在の投資を補完するような技術を選択することだと考えます。最終的な目標は、異種の処理装置一式ではなく、データウェアハウスの要件すべてを満たす単一のプラットフォームです。しかし一方で、ほとんどの企業にとって、従来の企業データウェアハウス、データウェアハウスアプライアンス、ビッグデータ処理機能という、データウェアハウスアーキテクチャの 3 大要素を支配することが必要になります。

■ステップ 4:分析モデルと予測への投資による経営への貢献。ビッグデータを分析するには、大規模なデータ要素の索引付けを可能にし、それらの要素間の関係をより理解するための関係分析に対応する、新しい分析モデルとアプローチを採用することが必要です。17 ロケーションベースのデータやソーシャルネットワーク情報、通信ユーザーの詳細情報などのビッグデータソースを活かすことで、企業はデータ要素間の関係を確立できます。ビッグデータソースをリアルタイムに分析すれば、企業はターゲティングやメッセージングに役立つインサイトを得ることができます。ただ、この新しいビッグデータのリアルタイム分析は、過去のデータを見る余裕も傾向分析を行う時間もなく、方向性を示すインサイトを提供するだけなので、幾分相違が生じることを見込むべきです。一方、リアルタイム処理を必要としない従来のデータソースは、経営に役立つ正確なインサイトを提供しやすい傾向にあります。企業にとっては、どちらのタイプのデータについてもユースケースを適切に定義することが重要で、両方のタイプのデータから得られるインサイトを経営上の意思決定に活かすことに価値があります。さらに、企業は、ビッグデータの時系列分析を行い、最初に決めた基準と KPI に基づく予測を可能にするリソースに投資する必要があります。

■ステップ 5:可視化ツールを使用して情報と従業員の関連性を維持。上級意思決定者は、データを利用する従業員のレベルやタイプと情報を関連させておくのは大変だと言います。Forrester は、可視化ツールを使用し、必要としている人に最も関連性の高いデータを抽出することが企業にとって不可欠だと考えます。例えば、ある電気通信プロバイダーでは、可視化ツールを使用して従業員のレベルごとに情報を階層化し、従業員の職務にとって最も重要なデータへのアクセスを提供することで関連性を確保しています。このツールを使用すると、勤続年数や職位、職務に基づいてデータへのアクセスにフィルターをかけることもできます。コンテキストを追加するために、このプロバイダーは、経営陣に企業レベルの KPI を監視させ、すべての SBU にデータを掘り下げさせていますが、SBU 長に他の SBU の KPI を監視することは許していません。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 10

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推 奨 事 項

探索プロセスを通じてビッグデータのユースケースを定義

ビッグデータ戦略を計画している企業は、データ探索プロセスから始めてユースケースのシナリオと様々な種類のビッグデータの処理に必要な関連技術を定義すべきです。ビッグデータ戦略には総体的な計画が必要であり、企業はプラスの業績をもたらすよう段階的な展開を計画しなければなりません。CIO は、以下のアプローチを使用してビッグデータ戦略を最大限に活かすべきです。

■IT リーダーとビジネスリーダーが連携しながらも、ビジネスリーダーが主導。CIO のオフィスは、ビッグデータ戦略の実質的な主導者であるビジネスリーダーに助言を求め、既存のデータとリアルタイムのデータストリームの両方の大規模なプールから価値を引き出すことができる機会を見出そうとするビジネスリーダーを支援する必要があります。基準や KPI の概要をまとめ、ビッグデータを推進して経過観察することが、ビッグデータ戦略成功の鍵を握ります。正式なユースケースを定義せずに打ち出されたビッグデータ戦略は失敗に終わるでしょう。

■新しいデータのソースとタイプに対応できるよう情報管理戦略を変更。既存のアーキテクチャの再利用を目的として、企業は現在の投資を補完するビッグデータ技術の採用を計画しなければなりません。さらに重要なことには、CIO のオフィスは、これらの新技術によって事業と最も関連性の高いビッグデータのタイプを管理(および分析)できるようにしなければなりません。どのようにデータを取得および使用しようとしているかに基づいて新しい投資を判断することをお勧めします。

■小さく始め、サイロ化を避け、ビッグデータ戦略を徐々に展開。ビッグデータの推進には、ビジネスリーダーの高い関与が求められ、従って細心の計画が必要になります。CIO には、12 ~ 18 ヶ月かけてビッグデータを推進し、様々な転換点で進捗状況と成果を測ることをお勧めします。大切なのは、小さく始めて既存のインフラストラクチャの構成要素を再利用し、選択されたユースケースを解決することです。これによって、企業は戦略をより的確に管理し、サイロ化を避け、継続的に成果を測定することができます。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 11

© 2012, Forrester Research, Inc. Reproduction Prohibited 2012 年 6 月 1 日

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ビ ッ グ デ ー タ と は

CIO のオフィスにとってのビッグデータ

企業が従来型と非従来型の両方の接点に対応すべくバックオフィスとフロントオフィスのアプリケーションを統合して顧客エンゲージメントの形を変えるにつれ、IT チームはデータの量、速度、多様性、変動性の急増に直面することになります。やり手の CIO は、ビッグデータと呼ばれるこの新種のデータと組織の基準とを結び付けることの必要性を今後ますます感じるでしょう。ビジネスリーダーはビッグデータ戦略を押し進め、CIO のオフィスはビジネスリーダーと連携して、この新種のデータを用いて解決できるユースケースを特定しなければなりません。ビッグデータ戦略の中核となるのは MPP ですが、成熟した企業はそれだけに注力するわけではなく、新しい分析モデルと可視化ツールの必要性やデータ収集プロセスを定義することの必要性を含め、プロジェクトをもっと総合的に見ることになります。

ベンダーにとってのビッグデータ

ビッグデータがビジネスにもたらす価値をより多くの企業が認識するようになり、ベンダーは POC を行う機会が世界的に増えていることに気付きつつあります。ベンダーが今後 2 ~ 3 年にわたりビッグデータの牽引力増加を経験するであろう一方で、収入増と成長を促す鍵は、経営基準と業績をビッグデータプロジェクトに直接結び付けることにあるというのが、Forrester の所見です。しかし、ほとんどのベンダーにとっての課題は、ビッグデータのことを知らなかったり、知識が不十分なためにその業績、特に顧客エンゲージメントへの直接的な影響を見逃している、見込みのある企業のビジネスリーダーをプロジェクトに参加させることでしょう。結局、CIO のオフィスは、ビッグデータプロジェクトを促進する役割を果たすだけで、ビッグデータソリューションの主要提供者やユーザーにはなりません。

補足資料

ForrsightsStrategySpotlight の方法

「Forrester の Forrsights Strategy Spotlight:日本を除くアジア太平洋地域におけるビジネスインテリジェンスと情報管理、2011 年第 4 四半期」は、オーストラリア、中国、インド、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、韓国を拠点とする従業員 20 名以上の中小企業(SMB)および大企業に勤務する452 名の IT 幹部と技術意思決定者、経営意思決定者を調査対象としました。本調査は、Forrester’s Forrsights for Business Technology の一環として、2011 年 7 月から 2011 年 8 月にかけて実施されました。

Forrester’s Forrsights for Business Technology では、毎暦年、北米、南米、ヨーロッパ、および先進・新興 アジアの 17 を超える国で B2B 技術の調査を実施します。品質管理のために、職位および職務によって回答者を慎重に選出します。Forrester’s Forrsights for Business Technology の最終調査母集団には、チームまたはグループの予算を直接監視しながら IT 製品およびサービスの企画、資金調達、購入に大きく関与する人のみが含まれるようにします。また、データ分散を制御し、Forrester の分析に基づいて算出されたIT 支出を調整するために、企業規模(従業員数)および業種または職務内容に応じて定員を設定します。Forrsights では、最高のデータ品質を確保するために、優れたデータソースと高度なデータクリーニング技術のみを使用します。

本書で説明したのは調査結果の一部のみです。追加料金を支払って全データ結果をご覧になりたい方は、[email protected] または Forrester のアカウントマネージャーまでお問い合わせください。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 12

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このレポートのためにインタビューした企業

Aircel

Capgemini

Dell

EMC

Essar Group

IBM

IMS Health

Infosys

Mahindra Satyam

MapR Technologies

Microsoft

NetApp

Pentaho

PwC

SAP

SAS

Shoppers Stop

Wipro IT Business

脚注1 極めて大規模なデータの場合、従来のデータ管理およびビジネスインテリジェンス(BI)が実用的ではなくなり、

企業は業績の向上に必要なインサイトを得ることができない。ビッグデータを利用すれば、企業は大規模なデータ

を処理し、コスト効率よくデータから価値を引き出すことができる。しかし、CIO はこれが通常の業務ではないこと

を理解しておく必要がある。実際、ビッグデータは、データ管理と IT 展開についての基本的考えを変えることでデー

タ管理の展望を混乱させる。時間をかけてビッグデータとそれがもたらす影響を理解し、謳い文句に踊らされるこ

となく熟考してバランスの取れたアプローチを開始すべきである。2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータで

デジタルの世界を拡大』を参照。

2 これらの企業は、様々なオンラインコミュニティ、プラットフォーム、およびソーシャル Web サイトを使用して定

期的に顧客とやり取りしている。

3 出典:André Münger 著『Nouvelle Génération de l’infrastructure Data Warehouse et d’Analyses』、EMC、2011 年 11 月

(http://suisse.emc.com/campaign/global/forum2011/pdf/suisse/suisse-forum-2011-track-1-greenplum-andre-muenger.pdf)。

4 詳しくは、2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタルの世界を拡大』を参照。

5 出典:『University of Ontario Institute of Technology』、IBM(ftp://public.dhe.ibm.com/common/ssi/ecm/en/odc03157usen/

ODC03157USEN.PDF)。

6 出典:IBM(http://www.ibm.com/developerworks/data/library/dmmag/DMMag_2009_Issue3/SmarterIs/index.html)。

7 Forrester は、2011 年 6 月に実施した Global Big Data Online Survey のデータを付随するレポートの中で発表した。

2011 年 9 月 20 日付レポート『Forrester のクライアントはどのようにビッグデータを使用しているか』を参照。

8 2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタルの世界を拡大』を参照。

9 IT 意思決定者は、様々なビジネスインテリジェンス(BI)ツールを利用し、顧客エンゲージメントプロセス全体に

わたって、構造化と非構造化の両方のデータのアクセス、解釈、利用を効率的に行う必要があるだろう。IBM は、

Asian Paints との仕事の中で、Web 分析を使用して同社のコンテンツとキャンペーンを顧客のエンゲージメントレ

ベルに基づいてパーソナライズし、このことを実証した。2012 年 3 月 28 日付レポート『新たな技術の活用により、

顧客エンゲージメントをレベルアップ』を参照。

10 出典:Radian6(http://www.radian6.com/about-us/customers/)。

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顧客エンゲージメントにとってのビッグデータの重要性 13

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11 Dell は、毎日 25,000 を超えるオンラインでの会話を生み出す世界的ブランドである。そのボリュームを維持するの

は簡単ではないが、同社は Social Media Listening Command Center を利用して作業を管理し、顧客から学び、顧客

とやり取りしている。Dell はどのようにそれを行っているのか?ソーシャルメディアのベストプラクティスとリス

ニングプラットフォーム技術について従業員を教育し、決められたデータ収集および報告プロセスを使用して、組

織全体にインサイトを広げているのである。2011 年 7 月 1 日付レポート『Case Study: Dell’s Social Media Listening

Command Center Builds Customer Relationships』を参照。

12 収益を改善する機会は大量の情報の中に存在する。しかし、データの規模が極度に大きくなると、そこからインサ

イトを得ることは困難になる。新しい技術では、企業が情報を使用して競合する方法を変える新しいツールとテク

ニックを提供し、分散型の仮想コンピューティング機能を大規模データの問題に適用する。ビッグデータ処理は経

営と IT のどちらにとっても重要な問題を提起する。今すぐそれらに取り組み、機が熟したら投資できるように準備

すべきである。2011 年 5 月 18 日付レポート『ビッグデータの大きな可能性』を参照。

13 IT チームはビジネスチームと連携して機会とソリューションを見出す必要がある。ビッグデータのコンセプトは、

一部の企業の経営者にはすぐに理解できても、大多数にとっては聞き慣れないものだと思われる。最新情報を把握

し戦略的パートナーとみなされている CIO は、投資を正当化し新たな利益を得ようとする経営者を助けるのに適す

るであろう。逆に、ビッグデータソリューションは通常の業務ではないので、事業戦略に参加していない CIO は苦

労するかもしれない。2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタルの世界を拡大』を参照。

14 多くの企業は、成果を確信してアプリケーションの中核に中央データベースを配置し、1 つの一貫した真理を浮き

彫りにする。このアーキテクチャは データの規模が極度に大きくなると機能しないという真理である。その代り、

ビッグデータや NoSQL などの技術を使用し、即時の一貫性を犠牲にしてスケーラビリティ、可用性、耐障害性を

得るような設計が出現している。これらの企業は、大規模なデータを運用する機能を他のニーズよりも重要視し、

部分的真理、相対的真理をどのように扱うかを学んでいる。2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタ

ルの世界を拡大』を参照。

15 データ形式の数が増えると、ルールを個別に作らなければならないことから、統合費用が増加し、統合プロセスの

変更と再デプロイが必要となる。また、新しいデータフィードの追加に要する費用によって従来のデータの統合費

用がかさむことになる場合もある。2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタルの世界を拡大』を参照。

16 ビッグデータ処理は、超並列の分散型アーキテクチャを利用して大規模な生データを取得、保存、インタラクティ

ブに選別することで限界を打破する。2011 年 5 月 18 日付レポート『ビッグデータの大きな可能性』を参照。

17 保存されたデータは並列処理フレームワークによって分析が可能である。例えば、データ科学者は、数行のスクリ

プトを書くのと同じように簡単に数ペタバイトのデータのリフティングおよび変換を行い、マイニング技術を試す

ことができる。並列計算フレームワーク最上位の高度なツールを使用すれば、ビジネスエキスパートは分析アプリ

ケーションを迅速に構築できる。2011 年 9 月 30 日付レポート『ビッグデータでデジタルの世界を拡大』を参照。

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Forrester Research, Inc. (Nasdaq: FORR) is an independent research company that provides pragmatic and forward-thinking advice to global leaders in business and

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Forrester がフォーカスするベンダー戦略プロフェッショナル

購買者の行動、マクロ経済要因、および技術の採用における変化の理解を通して、テク

ノロジー産業の混乱を予測し数値化することで、会社の短期および長期戦略の計画を立

てています。Forrester の専門知識と、この職務についての深い理解は、先を見越した

戦略の策定、商機対リスクの評価、正当な判断の証明、そして個人、チーム、会社の業

績の最適化に役立つはずです。

Victor Scott、クライアントのベンダー戦略プロフェッショナル代表

Forrester について調査と顧問のグローバル企業、Forrester は、経営陣にインスピレーションを与え、

よりよい決定に導く情報を提供し、世界有数の企業が変革の複雑性をビジネスの

利点に変えるお手伝いをします。以下のものを有していることから、当社は企業

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